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特開2023-7755DC/DCコンバータ、電力変換システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007755
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータ、電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230112BHJP
【FI】
H02M3/155 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110804
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】岡松 昌志
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD04
5H730DD16
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FF09
5H730FG05
(57)【要約】
【課題】安定した制御が可能なDC/DCコンバータを実現する。
【解決手段】直列接続された第1スイッチング素子(Q1)と第2スイッチング素子(Q2)を含み、第1直流電源(SB1)と第1平滑コンデンサ(C1)に対して並列接続される第1アームと、直列接続された第3スイッチング素子(Q3)と第4スイッチング素子(Q4)を含み、第2直流電源(Bdc)と第2平滑コンデンサ(C2)に対して並列接続された第2アームの中点にリアクトル(L1)が接続される。制御部(21)は、第1直流電源(SB1)の電圧と第2直流電源(Bdc)の電圧が均衡状態になることを回避するように、第1スイッチング素子(Q1)-第4スイッチング素子(Q4)を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を含み、第1直流電源と第1平滑コンデンサに対して並列接続された第1アームと、
直列接続された第3スイッチング素子と第4スイッチング素子を含み、第2直流電源と第2平滑コンデンサに対して並列接続された第2アームと、
前記第1アームの中点と前記第2アームの中点に接続されたリアクトルと、
前記第1直流電源の電圧と前記第2直流電源の電圧が均衡状態になることを回避するように、前記第1スイッチング素子-前記第4スイッチング素子を制御する制御部と、
を備える、DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1直流電源の電圧と前記第2直流電源の電圧との差が閾値以下になると、前記第2直流電源の電圧の電圧指令値を、前記第1直流電源の電圧と前記第2直流電源の電圧との差が設定値より大きくなるように補正する、請求項1に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1直流電源から前記第2直流電源に電力を供給する場合において、前記第1直流電源の電圧と前記第2直流電源の電圧との差が前記閾値以下になると、前記第2直流電源の電圧の電圧指令値に所定値を加算する、請求項2に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2直流電源から前記第1直流電源に電力を供給する場合において、前記第1直流電源の電圧と前記第2直流電源の電圧との差が前記閾値以下になると、前記第2直流電源の電圧の電圧指令値から所定値を減算する、請求項2または3に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1直流電源から前記第2直流電源に電力を供給する場合において、
前記第1直流電源の電圧が前記第2直流電源の電圧より低い状態では、前記第1スイッチング素子を常時オン状態、前記第2スイッチング素子を常時オフ状態に制御し、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子をPWM(Pulse Width Modulation)制御して、前記第1直流電源の電圧を昇圧し、
前記第1直流電源の電圧が前記第2直流電源の電圧より高い状態では、前記第3スイッチング素子を常時オン状態、前記第4スイッチング素子を常時オフ状態に制御し、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子をPWM制御して、前記第1直流電源の電圧を降圧する、請求項1から4のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1直流電源に前記第2直流電源から電力を供給する場合において、
前記第1直流電源の電圧が前記第2直流電源の電圧より低い状態では、前記第1スイッチング素子を常時オン状態、前記第2スイッチング素子を常時オフ状態に制御し、前記第3スイッチング素子と前記第4スイッチング素子をPWM制御して前記第2直流電源の電圧を降圧し、
前記第1直流電源の電圧が前記第2直流電源の電圧より高い状態では、前記第3スイッチング素子を常時オン状態、前記第4スイッチング素子を常時オフ状態に制御し、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子をPWM制御して、前記第2直流電源の電圧を昇圧する、請求項1から5のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記第1直流電源は、蓄電部である、請求項1から6のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ。
【請求項8】
蓄電部と直流バスの間に接続された請求項1から7のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータと、
前記直流バスと電力系統の間に接続されたインバータと、を備え、
前記蓄電部が前記第1直流電源であり、前記直流バスが前記第2直流電源である、電力変換システム。
【請求項9】
蓄電部と直流バスの間に接続された請求項1から7のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータと、
太陽電池と前記直流バスの間に接続された別のDC/DCコンバータと、
前記直流バスと電力系統の間に接続されたインバータと、を備え、
前記蓄電部が前記第1直流電源であり、前記直流バスが前記第2直流電源である、電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、双方向に昇降圧可能なDC/DCコンバータ、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電システムや、蓄電システムと太陽光発電システムを連携させたハイブリッド蓄電システム(創蓄連携システムとも)が普及してきている。従来、蓄電ユニットと直流バスの間に接続されるDC/DCコンバータとして、昇圧チョッパ型双方向コンバータ(図3参照)を採用する例が多かった。
【0003】
昇圧チョッパ型双方向コンバータでは、蓄電ユニットの電圧が、直流バスの電圧以下の状態を前提としているため、高電圧の蓄電ユニットを使用する場合、直流バスの電圧を高く制御する必要がある。その場合、部品の耐圧などの条件から、使用できる蓄電ユニットの機種が制限される。また、直流バスの電圧と系統電圧の差が大きくなるため、インバータの変換効率が低下する。
【0004】
そこで4つのスイッチング素子を使用したHブリッジ型双方向コンバータを採用することが考えられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-191413号公報
【特許文献2】特開2015-162951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Hブリッジ型双方向コンバータを採用した場合、蓄電ユニットの電圧と直流バスの電圧が近似する領域では、昇圧モードと降圧モードが頻繁に切り替わり、制御が不安定になっていた。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、安定した制御が可能なDC/DCコンバータ、電力変換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のDC/DCコンバータは、直列接続された第1スイッチング素子と第2スイッチング素子を含み、第1直流電源と第1平滑コンデンサに対して並列接続された第1アームと、直列接続された第3スイッチング素子と第4スイッチング素子を含み、第2直流電源と第2平滑コンデンサに対して並列接続された第2アームと、前記第1アームの中点と前記第2アームの中点に接続されたリアクトルと、前記第1直流電源の電圧と前記第2直流電源の電圧が均衡状態になることを回避するように、前記第1スイッチング素子-前記第4スイッチング素子を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、安定した制御が可能なDC/DCコンバータを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係るハイブリッド蓄電システムの全体構成を示す図である。
図2】太陽電池用のDC/DCコンバータの構成例を示す図である。
図3】蓄電部用のDC/DCコンバータの第1構成例を示す図である。
図4】蓄電部用のDC/DCコンバータの第2構成例を示す図である。
図5図5(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの昇圧放電モードの制御を説明するための図である。
図6図6(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの降圧放電モードの制御を説明するための図である。
図7図7(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの昇圧充電モードの制御を説明するための図である。
図8図8(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの降圧充電モードの制御を説明するための図である。
図9】制御部による、バス電圧補正機能付きの充放電制御の基本処理を示すフローチャートである。
図10】制御部による、バス電圧補正機能付きの放電制御時の処理例を示すフローチャートである。
図11】制御部による、バス電圧補正機能付きの充電制御時の処理例を示すフローチャートである。
図12図12(a)-(b)は、バス電圧補正機能付きの放電時制御と充電時制御における、電池電圧とバス電圧の推移例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態に係るハイブリッド蓄電システムの全体構成を示す図である。ハイブリッド蓄電システムは、太陽電池PV1、蓄電部SB1及び電力変換システム1を備える。電力変換システム1は、太陽電池PV1用のDC/DCコンバータ10、蓄電部SB1用のDC/DCコンバータ20、インバータ30及び主制御部40を備える。
【0012】
太陽電池PV1は、直列接続された複数の太陽電池モジュール(太陽光パネル)を含む。各太陽電池モジュールは、直列接続された複数の太陽電池セルを含む。太陽電池セルは、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接、直流電力に変換することができる。太陽電池セルとして、ヘテロ接合太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、薄膜シリコン太陽電池、化合物系太陽電池などを使用することができる。
【0013】
太陽電池PV1は、DC/DCコンバータ10と接続され、発電した電力を電力変換システム1に出力する。DC/DCコンバータ10は、太陽電池PV1と直流バスBdcとの間に接続され、太陽電池PV1から出力される直流電力の電圧を調整して直流バスBdcに出力するコンバータである。
【0014】
図2は、太陽電池PV1用のDC/DCコンバータ10の構成例を示す図である。図2に示すDC/DCコンバータ10は、昇圧チョッパ型単方向コンバータで構成される例である。図2に示す昇圧チョッパ型単方向コンバータは、第1コンデンサC1、リアクトルL1、ダイオードD3、スイッチング素子S4、第2コンデンサC2及び制御部11を備える。
【0015】
太陽電池PV1の出力配線のプラス配線とマイナス配線間に、第1電圧センサV1と平滑用の第1コンデンサC1が接続される。太陽電池PV1の出力配線のプラス配線にリアクトルL1が挿入される。太陽電池PV1の出力配線のプラス配線上に電流センサA1が設置される。なお、電流センサA1はマイナス配線上に設置されてもよい。
【0016】
直流バスBdcのプラス配線とマイナス配線間に、第2電圧センサV2と平滑用の第2コンデンサC2が接続される。直流バスBdcのプラス配線とマイナス配線間に、スイッチング素子S4とダイオードD3が直列に接続される。スイッチング素子S4とダイオードD3との間の接続点に、太陽電池PV1の出力配線のプラス配線が接続される。ダイオードD3は、昇圧チョッパ型単方向コンバータの出力側(直流バスBdc側)からの電流の逆流を防止する。第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2には例えば、電解コンデンサを使用することができる。
【0017】
スイッチング素子S4には、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を使用することができる。スイッチング素子S4と逆並列にダイオードD4が形成または接続される。スイッチング素子S4にNチャネルMOSFETを使用する場合、ソースからドレイン方向に形成される寄生ダイオードを、ダイオードD4として使用することができる。スイッチング素子S4にIGBTが使用される場合、ダイオードD4として外付けダイオードが接続される。
【0018】
第1電圧センサV1は、太陽電池PV1の出力電圧を検出して制御部11に出力する。第2電圧センサV2は、直流バスBdcの電圧を検出して制御部11に出力する。電流センサA1は、リアクトルL1に流れる電流を検出して制御部11に出力する。第1電圧センサV1と第2電圧センサV2はそれぞれ、例えば、分圧抵抗と誤差増幅器を含んで構成される。電流センサA1は例えば、CTセンサやホールセンサを含んで構成される。
【0019】
リアクトルL1は、スイッチング素子S4のオン/オフに応じて、太陽電池PV1からの出力電流に基づくエネルギーの蓄積と放出を行う。制御部11は、スイッチング素子S4のオン時間とオフ時間の比率(デューティ比)を制御することにより、昇圧比を制御することができる。
【0020】
制御部11は、第1電圧センサV1で検出された太陽電池PV1の出力電圧と、電流センサA1で検出された太陽電池PV1の出力電流をもとに、太陽電池PV1の出力電力(発電電力)を検出する。制御部11は太陽電池PV1の出力電力が最大になるように昇圧チョッパ型単方向コンバータをMPPT(Maximum Power Point Tracking)制御することができる。制御部11は、太陽電池PV1の出力電圧と出力電力の関係をもとに、太陽電池PV1の出力電力を最大にするための電圧指令値を生成する。
【0021】
制御部11は例えば、山登り法にしたがい動作電圧を所定のステップ幅で変化させて最大出力動作点を探索する。具体的には制御部11は、太陽電池モジュールのP-V曲線の最大出力動作点の低圧側では、現在の動作電圧を高圧側にシフトさせるための電圧指令値を生成し、最大出力動作点の高圧側では、現在の動作電圧を低圧側にシフトさせるための電圧指令値を生成する。制御部11は、最大出力動作点を捉えると最大出力動作点を維持するように電圧指令値を生成する。スイッチング素子Q4は、生成された電圧指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0022】
図1に戻る。インバータ30は、直流バスBdcと分電盤3との間に接続される双方向インバータである。インバータ30は、直流バスBdcから入力される直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を分電盤3に出力することができる。分電盤3には、電力変換システム1の他に、商用電力系統(以下、単に系統2という)と負荷4が接続される。負荷4は宅内の負荷の総称である。インバータ30は、系統2から分電盤3を介して供給される交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バスBdcに出力することもできる。
【0023】
主制御部40は電力変換システム1全体を統括的に制御する。主制御部40は、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働、またはハードウェア資源のみにより実現できる。ハードウェア資源としてアナログ素子、マイクロコントローラ、DSP、ROM、RAM、ASIC、FPGA、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源として、ファームウェアなどのプログラムを利用できる。
【0024】
主制御部40はインバータ30の基本制御として、直流バスBdcの電圧が目標値を維持するようにインバータ30を制御する。具体的には主制御部40は、直流バスBdcの電圧を検出し、検出したバス電圧を目標値に一致させるための電流指令値を生成する。直流バスの電圧が目標値より高い場合はインバータ30の出力電力を上昇させるための電流指令値を生成し、直流バスBdcの電圧が目標値より低い場合はインバータ30の出力電力を低下させるための電流指令値を生成する。インバータ30は、生成された電流指令値に基づく駆動信号に応じてスイッチング動作する。
【0025】
直流バスBdcの電圧の目標値は、系統2の電圧より高く、かつ系統2の電圧に近い値に設定されることが望ましい。インバータ30の入力電圧と出力電圧の差が小さいほど、インバータ30の変換効率が高くなる。例えば、系統2の電圧がAC200Vの場合、直流バスBdcの電圧の目標値はDC330Vに設定されてもよい。
【0026】
蓄電部SB1は電力を充放電可能であり、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池などの蓄電池を備える。蓄電部SB1は定置型の蓄電池であってもよいし、電動車に搭載された車載型の蓄電池であってもよい。なお蓄電部SB1は蓄電池の代わりに、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタを備えていてもよい。
【0027】
蓄電部SB1は、DC/DCコンバータ20と接続され、DC/DCコンバータ20により充放電制御される。DC/DCコンバータ20は、蓄電部SB1と直流バスBdcとの間に接続され、蓄電部SB1を充放電するための双方向DC/DCコンバータである。DC/DCコンバータ20は、DC/DCコンバータ10、インバータ30及び主制御部40と同じ筐体内に設置されてもよいし、蓄電部SB1の筐体内に設置されてもよいし、それらから分離された独立した筐体内に設置されてもよい。
【0028】
図3は、蓄電部SB1用のDC/DCコンバータ20の第1構成例を示す図である。図3に示すDC/DCコンバータ20は、昇圧チョッパ型双方向コンバータで構成される例である。図3に示す昇圧チョッパ型双方向コンバータは、図2に示した昇圧チョッパ型単方向コンバータのダイオードD3を、スイッチング素子Q3に置き換えた構成である。
【0029】
制御部21は、蓄電部SB1から直流バスBdcへ昇圧動作で電力を伝送する場合、正方向の電流指令値を設定し、リアクトルL1に流れる電流の計測値が、当該正方向の電流指令値を維持するようにスイッチング素子S3とスイッチング素子S4をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。反対に、制御部21は直流バスBdcから蓄電部SB1へ降圧動作で電力を伝送する場合、負方向の電流指令値を設定し、リアクトルL1に流れる電流の計測値が、当該負方向の電流指令値を維持するようにスイッチング素子S3とスイッチング素子S4をPWM制御する。
【0030】
蓄電部SB1のCC(Constant Current)充電またはCC放電を行う場合、制御部21は、リアクトル電流の電流指令値を所定値に固定する。蓄電部SB1のCV(Constant Voltage)充電またはCV放電を行う場合、制御部21は、第1電圧センサV1で検出される蓄電部SB1の電圧が一定値になるように、リアクトル電流の電流指令値を変化させる。
【0031】
蓄電部SB1から直流バスBdcに放電する場合、制御部21は、スイッチング素子Q3をオフ状態にスイッチング素子Q4をオン状態に制御して、蓄電部SB1からリアクトルL1にエネルギーを蓄積する。制御部21は、スイッチング素子Q3をオン状態にスイッチング素子Q4をオフ状態に制御して、蓄電部SB1とリアクトルL1の両方からエネルギーを直流バスBdcに放出する。この2つの状態を繰り返すことにより、蓄電部SB1の電圧を昇圧して、蓄電部SB1から直流バスBdcに電力を伝送することができる。
【0032】
蓄電部SB1に直流バスBdcから充電する場合、制御部21は、スイッチング素子Q3をオン状態にスイッチング素子Q4をオフ状態に制御して、直流バスBdcと蓄電部SB1の電圧差を利用して、直流バスBdcから蓄電部SB1に向けて電流を流す。その際、リアクトルL1にエネルギーが蓄積される。制御部21は、スイッチング素子Q3をオフ状態にスイッチング素子Q4をオン状態に制御して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーを第1コンデンサC1で平滑化して蓄電部SB1に放出する。この2つの状態を繰り返すことにより、直流バスBdcの電圧を降圧して、直流バスBdcから蓄電部SB1に電力を伝送することができる。
【0033】
系統2の電圧がAC200Vの場合、直流バスBdcの電圧は、DC330V~430V程度の範囲に設定されることが多い。図3に示した昇圧チョッパ型双方向コンバータは、蓄電部SB1の電圧を降圧することができないため、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より高くなる可能性があるアプリケーションでは基本的に使用できない。近年、定置用途でも車載用途でも電池容量が増加する傾向にあり、電池容量の増加に伴い電池電圧が上昇する傾向にある。
【0034】
図4は、蓄電部SB1用のDC/DCコンバータ20の第2構成例を示す図である。図4に示すDC/DCコンバータ20は、Hブリッジ型双方向コンバータで構成される例である。図4に示すHブリッジ型双方向コンバータは、第1コンデンサC1、リアクトルL1、第1スイッチング素子Q1-第4スイッチング素子Q4、第2コンデンサC2及び制御部21を備える。
【0035】
蓄電部SB1のプラス配線とマイナス配線間に、第1電圧センサV1と平滑用の第1コンデンサC1が接続される。蓄電部SB1と第1コンデンサC1に対して並列に、直列接続された第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2を含む第1アームが接続される。直流バスBdcのプラス配線とマイナス配線間に、第2電圧センサV2と平滑用の第2コンデンサC2が接続される。直流バスBdcと第2コンデンサC2に対して並列に、直列接続された第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4を含む第2アームが接続される。
【0036】
第1アームの中点(第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の接続点)と第2アームの中点(第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の接続点)との間にリアクトルL1が接続される。第1スイッチング素子Q1-第4スイッチング素子Q4にはそれぞれ、第1ダイオードD1-第4ダイオードD4が逆並列に形成または接続される。
【0037】
図5(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの昇圧放電モードの制御を説明するための図である。図6(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの降圧放電モードの制御を説明するための図である。図7(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの昇圧充電モードの制御を説明するための図である。図8(a)-(d)は、Hブリッジ型双方向コンバータの降圧充電モードの制御を説明するための図である。
【0038】
昇圧放電モードは、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より低い状態において、蓄電部SB1から直流バスBdcに放電するモードである。昇圧放電モードでは制御部21は、第1スイッチング素子Q1を常時オン状態に第2スイッチング素子Q2を常時オフ状態に制御する。
【0039】
図5(a)に示す第1状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3をオフ状態に第4スイッチング素子Q4をオン状態に制御する。第1状態では蓄電部SB1からリアクトルL1にエネルギーが蓄積される。図5(b)に示す第2状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の両方をオフ状態に制御する。第2状態はデッドタイムであり、蓄電部SB1とリアクトルL1の両方から第3ダイオードD3及び第1スイッチング素子Q1を介して、エネルギーが直流バスBdcに放出される。
【0040】
図5(c)に示す第3状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3をオン状態に第4スイッチング素子Q4をオフ状態に制御する。第3状態は同期整流期間であり、蓄電部SB1とリアクトルL1の両方から第3スイッチング素子Q3及び第1スイッチング素子Q1を介して、エネルギーが直流バスBdcに放出される。図5(d)に示すように第4状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の両方をオフ状態に制御する。第4状態はデッドタイムであり、蓄電部SB1とリアクトルL1の両方から第3ダイオードD3及び第1スイッチング素子Q1を介して、エネルギーが直流バスBdcに放出される。
【0041】
図5(c)に示す同期整流期間のほうが、図5(b)及び図5(d)に示すデッドタイムより損失が少なくなる。デッドタイムは、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の同時オン状態の発生による貫通電流を防止するために設けられる。
【0042】
降圧放電モードは、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より高い状態において、蓄電部SB1から直流バスBdcに放電するモードである。降圧放電モードでは制御部21は、第3スイッチング素子Q3を常時オン状態に第4スイッチング素子Q4を常時オフ状態に制御する。
【0043】
図6(a)に示す第5状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1をオン状態に第2スイッチング素子Q2をオフ状態に制御する。第5状態では蓄電部SB1と直流バスBdcの電圧差により、蓄電部SB1から直流バスBdcに向けて電流が流れる。その際、リアクトルL1にエネルギーが蓄積される。図6(b)に示す第6状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方をオフ状態に制御する。第6状態はデッドタイムであり、第3ダイオードD3及び第2スイッチング素子Q2を介して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが、第2コンデンサC2で平滑化されて直流バスBdcに放出される。
【0044】
図6(c)に示す第7状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1をオフ状態に第2スイッチング素子Q2をオン状態に制御する。第7状態は同期整流期間であり、第3スイッチング素子Q3及び第2スイッチング素子Q2を介して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが、第2コンデンサC2で平滑化されて直流バスBdcに放出される。図6(d)に示す第8状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方をオフ状態に制御する。第8状態はデッドタイムであり、第3ダイオードD3及び第2スイッチング素子Q2を介して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが、第2コンデンサC2で平滑化されて直流バスBdcに放出される。
【0045】
図6(c)に示す同期整流期間のほうが、図6(b)及び図6(d)に示すデッドタイムより損失が少なくなる。デッドタイムは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の同時オン状態の発生による貫通電流を防止するために設けられる。
【0046】
降圧充電モードは、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より低い状態において、蓄電部SB1に直流バスBdcから充電するモードである。降圧充電モードでは制御部21は、第1スイッチング素子Q1を常時オン状態に第2スイッチング素子Q2を常時オフ状態に制御する。
【0047】
図7(a)に示す第9状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3をオン状態に第4スイッチング素子Q4をオフ状態に制御する。第9状態では蓄電部SB1と直流バスBdcの電圧差により、直流バスBdcから蓄電部SB1に向けて電流が流れる。その際、リアクトルL1にエネルギーが蓄積される。図7(b)に示す第10状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の両方をオフ状態に制御する。第10状態はデッドタイムであり、第1スイッチング素子Q1及び第4ダイオードD4を介して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが、第1コンデンサC1で平滑化されて蓄電部SB1に放出される。
【0048】
図7(c)に示す第11状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3をオフ状態に第4スイッチング素子Q4をオン状態に制御する。第11状態は同期整流期間であり、第1スイッチング素子Q1及び第4スイッチング素子Q4を介して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが、第1コンデンサC1で平滑化されて蓄電部SB1に放出される。図7(d)に示す第12状態では制御部21は、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の両方をオフ状態に制御する。第12状態はデッドタイムであり、第1スイッチング素子Q1及び第4ダイオードD4を介して、リアクトルL1に蓄積されたエネルギーが、第1コンデンサC1で平滑化されて蓄電部SB1に放出される。
【0049】
図7(c)に示す同期整流期間のほうが、図7(b)及び図7(d)に示すデッドタイムより損失が少なくなる。デッドタイムは、第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4の同時オン状態の発生による貫通電流を防止するために設けられる。
【0050】
昇圧充電モードは、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より高い状態において、蓄電部SB1に直流バスBdcから充電するモードである。昇圧充電モードでは制御部21は、第3スイッチング素子Q3を常時オン状態に第4スイッチング素子Q4を常時オフ状態に制御する。
【0051】
図8(a)に示す第13状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1をオフ状態に第2スイッチング素子Q2をオン状態に制御する。第13状態では直流バスBdcからリアクトルL1にエネルギーが蓄積される。図8(b)に示す第14状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方をオフ状態に制御する。第14状態はデッドタイムであり、直流バスBdcとリアクトルL1の両方から第1ダイオードD1及び第3スイッチング素子Q3を介して、エネルギーが蓄電部SB1に放出される。
【0052】
図8(c)に示す第15状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1をオン状態に第2スイッチング素子Q2をオフ状態に制御する。第15状態は同期整流期間であり、直流バスBdcとリアクトルL1の両方から第1スイッチング素子Q1及び第3スイッチング素子Q3を介して、エネルギーが蓄電部SB1に放出される。図8(d)に示すように第16状態では制御部21は、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の両方をオフ状態に制御する。第16状態はデッドタイムであり、直流バスBdcとリアクトルL1の両方から第1ダイオードD1及び第3スイッチング素子Q3を介して、エネルギーが蓄電部SB1に放出される。
【0053】
図8(c)に示す同期整流期間のほうが、図8(b)及び図8(d)に示すデッドタイムより損失が少なくなる。デッドタイムは、第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2の同時オン状態の発生による貫通電流を防止するために設けられる。
【0054】
制御部21は、電流指令値の正負、及び蓄電部SB1の電圧と直流バスBdcの電圧との大小関係をもとに、昇圧放電モード、降圧放電モード、降圧充電モード及び昇圧充電モードの中から動作モードを選択する。
【0055】
昇圧放電モードが選択される場合、制御部21は下記(式1)に基づき、第4スイッチング素子Q4のデューティ比Dと、第3スイッチング素子Q3のデューティ比(1-D)を制御する。昇圧充電モードが選択される場合、制御部21は下記(式1)に基づき、第2スイッチング素子Q2のデューティ比Dと、第1スイッチング素子Q1のデューティ比(1-D)を制御する。
【0056】
Vout=(1/(1-D))・Vin ・・・(式1)
Vinは送電側の直流電源の電圧、Voutは受電側の直流電源の電圧。
【0057】
降圧放電モードが選択される場合、制御部21は下記(式2)に基づき、第1スイッチング素子Q1のデューティ比Dと、第2スイッチング素子Q2のデューティ比(1-D)を制御する。降圧充電モードが選択される場合、制御部21は下記(式2)に基づき、第3スイッチング素子Q3のデューティ比Dと、第4スイッチング素子Q4のデューティ比(1-D)を制御する。
【0058】
Vout=D・Vin ・・・(式2)
Vinは送電側の直流電源の電圧、Voutは受電側の直流電源の電圧。
【0059】
以上に説明した制御では、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より低い場合は昇圧放電モードまたは降圧充電モードで動作し、蓄電部SB1の電圧が直流バスBdcの電圧より高い場合は降圧放電モードまたは昇圧充電モードで動作する。このように、蓄電部SB1の電圧と直流バスBdcの電圧との大小関係により、動作モードを切り替える必要がある。したがって、蓄電部SB1の電圧と直流バスBdcの電圧が近似する均衡状態では、動作モードのチャタリングが発生しやすく制御が安定しない。
【0060】
そこで蓄電部SB1の電圧と直流バスBdcの電圧との均衡状態を回避すべく、両者の差が設定値以上を維持するように、直流バスBdcの電圧指令値を補正する仕組みを導入する。
【0061】
図9は、制御部21による、バス電圧補正機能付きの充放電制御の基本処理を示すフローチャートである。制御部21は、蓄電部SB1の充放電制御中(S10のY)、第1電圧センサV1から蓄電部SB1の電圧(以下、電池電圧Vsbという)を取得し(S11)、第2電圧センサV2から直流バスBdcの電圧(以下、バス電圧Vbusという)を取得する(S12)。制御部21は、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの絶対値差分が閾値(例えば、10V)以下であるか否かを判定する(S13)。当該絶対値差分が閾値以下である場合(S13のY)、制御部21はバス電圧指令値の補正制御を開始する(S14)。
【0062】
当該絶対値差分が閾値以下でない場合(S13のN)、制御部21は、当該絶対値差分が設定値(例えば、30V)以下であるか否かを判定する(S15)。当該絶対値差分が設定値以下である場合(S15のY)、制御部21は現在の制御を継続する(S16)。現在の制御が通常制御であれば通常制御を、現在の制御がバス電圧指令値の補正制御であればバス電圧指令値の補正制御を継続する。
【0063】
当該絶対値差分が設定値以下でない場合(S15のN)、制御部21は通常制御を実行する(S17)。バス電圧指令値の補正制御が実行されている場合、制御部21はバス電圧指令値の補正制御を終了させる。ステップS11-ステップS17に示す制御が、充放電制御が終了するまで(S10のN)、継続される(S10のY)。
【0064】
図10は、制御部21による、バス電圧補正機能付きの放電制御時の処理例を示すフローチャートである。以下の説明では、バス電圧Vbusの基準設定値が330Vに設定されている例を想定する。制御部21は、蓄電部SB1の放電制御中(S20のY)、第1電圧センサV1から電池電圧Vsbを取得し(S21)、第2電圧センサV2からバス電圧Vbusを取得する(S22)。制御部21は、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの絶対値差分が閾値(例えば、10V)以下であるか否かを判定する(S23)。
【0065】
当該絶対値差分が閾値以下である場合(S23のY)、制御部21はバス電圧指令値に所定値(例えば、40V)を加算する(S24)。制御部21は、所定値を加算した補正後のバス電圧指令値を主制御部40に送信する。主制御部40は、バス電圧Vbusが補正後のバス電圧指令値になるようにインバータ30を制御する。日射変動を考慮しない場合、主制御部40はインバータ30のデューティ比を低下させることにより、バス電圧Vbusを上昇させることができる。制御部21は、Hブリッジ型双方向コンバータを昇圧放電モードで動作させる(S25)。
【0066】
当該絶対値差分が閾値以下でない場合(S23のN)、制御部21は、当該絶対値差分が設定値(例えば、30V)以下であるか否かを判定する(S26)。当該絶対値差分が設定値以下である場合(S26のY)、制御部21は現在の制御を継続する(S27)。現在の制御がバス電圧指令値の補正制御の場合、制御部21は、バス電圧指令値を基準設定値に向けて、放電レートに応じた速度で低下させる。
【0067】
当該絶対値差分が設定値以下でない場合(S26のN)、制御部21はステップS27の処理をスキップし、通常制御を実行する。電池電圧Vsbがバス電圧Vbusより低い場合(S28のY)、制御部21は、Hブリッジ型双方向コンバータを昇圧放電モードで動作させる(S29)。電池電圧Vsbがバス電圧Vbusより高い場合(S28のN)、制御部21は、Hブリッジ型双方向コンバータを降圧放電モードで動作させる(S210)。ステップS21-ステップS210に示す制御が、放電制御が終了するまで(S20のN)、継続される(S20のY)。
【0068】
図11は、制御部21による、バス電圧補正機能付きの充電制御時の処理例を示すフローチャートである。制御部21は、蓄電部SB1の充電制御中(S30のY)、第1電圧センサV1から電池電圧Vsbを取得し(S31)、第2電圧センサV2からバス電圧Vbusを取得する(S32)。制御部21は、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの絶対値差分が閾値(例えば、10V)以下であるか否かを判定する(S33)。
【0069】
当該絶対値差分が閾値以下である場合(S33のY)、制御部21はバス電圧指令値から所定値(例えば、40V)を減算する(S34)。制御部21は、所定値を減算した補正後のバス電圧指令値を主制御部40に送信する。主制御部40は、バス電圧Vbusが補正後のバス電圧指令値になるようにインバータ30を制御する。日射変動を考慮しない場合、主制御部40はインバータ30のデューティ比を上昇させることにより、バス電圧Vbusを低下させることができる。制御部21は、Hブリッジ型双方向コンバータを昇圧充電モードで動作させる(S35)。
【0070】
当該絶対値差分が閾値以下でない場合(S33のN)、制御部21は、当該絶対値差分が設定値(例えば、30V)以下であるか否かを判定する(S36)。当該絶対値差分が設定値以下である場合(S36のY)、制御部21は現在の制御を継続する(S37)。現在の制御がバス電圧指令値の補正制御の場合、制御部21は、バス電圧指令値を基準設定値に向けて、充電レートに応じた速度で上昇させる。
【0071】
当該絶対値差分が設定値以下でない場合(S36のN)、制御部21はステップS37の処理をスキップし、通常制御を実行する。電池電圧Vsbがバス電圧Vbusより高い場合(S38のY)、制御部21は、Hブリッジ型双方向コンバータを昇圧充電モードで動作させる(S39)。電池電圧Vsbがバス電圧Vbusより低い場合(S38のN)、制御部21は、Hブリッジ型双方向コンバータを降圧充電モードで動作させる(S310)。ステップS31-ステップS310に示す制御が、充電制御が終了するまで(S30のN)、継続される(S30のY)。
【0072】
図12(a)-(b)は、バス電圧補正機能付きの放電時制御と充電時制御における、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusの推移例を示す図である。図12(a)は放電時制御における電圧推移を示す。図12(a)では放電により、電池電圧Vsbが380Vから250Vに低下する例を示している。初期段階ではバス電圧Vbusは基準設定値の330Vに設定されている。
【0073】
時刻t1において電池電圧Vsbが340Vまで低下すると、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの差分が10V以下になり、バス電圧Vbusの補正制御が発動する。バス電圧Vbusの補正制御により、バス電圧Vbusが370Vに補正される。
【0074】
時刻t2において電池電圧Vsbが300Vまで低下すると、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの差分が30Vになるため、バス電圧Vbusの補正制御を終了し、バス電圧Vbusを基準設定値の330Vに戻す。なお、図12(a)ではバス電圧Vbusの補正制御期間中、バス電圧Vbusを放電レートに応じて低下させていく例を示しているが、バス電圧Vbusの補正制御期間中、バス電圧Vbusを370Vに維持してもよい。
【0075】
図12(b)は充電時制御における電圧推移を示す。図12(b)では充電により、電池電圧Vsbが250Vから380Vに上昇する例を示している。初期段階ではバス電圧Vbusは基準設定値の330Vに設定されている。
【0076】
時刻t1において電池電圧Vsbが320Vまで上昇すると、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの差分が10V以下になり、バス電圧Vbusの補正制御が発動する。バス電圧Vbusの補正制御により、バス電圧Vbusが290Vに補正される。
【0077】
時刻t2において電池電圧Vsbが360Vまで上昇すると、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの差分が30Vになるため、バス電圧Vbusの補正制御を終了し、バス電圧Vbusを基準設定値の330Vに戻す。なお、図12(b)ではバス電圧Vbusの補正制御期間中、バス電圧Vbusを充電レートに応じて上昇させていく例を示しているが、バス電圧Vbusの補正制御期間中、バス電圧Vbusを290Vに維持してもよい。
【0078】
以上説明したように本実施の形態によれば、Hブリッジ型双方向コンバータを採用し、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusが均衡しないようにバス電圧Vbusを補正することにより、動作モードの頻繁な切り替わりを防止し、安定した制御が可能となる。また本実施の形態では、Hブリッジ型双方向コンバータを構成する4つのスイッチング素子の内、1つを常時オン、1つを常時オフ、残り2つをPWM制御する。これにより、スイッチング損失が発生するスイッチング素子が2つとなり、4つのスイッチング素子を全てPWM制御する場合より、高効率で低発熱を実現することができる。また、リアクトルL1のリプルを低減することができる。低発熱は、スイッチング素子を冷却するための機構の簡素化(例えば、ヒートシンクの小型化)に貢献する。
【0079】
また昇圧時には、直流電源(蓄電部SB1または直流バスBdc)とリアクトルL1の両方からエネルギーを放出するため、リアクトルL1のサイズを小さく抑えることができる。また、電流指令値の正負を切り替えるだけで、Hブリッジ型双方向コンバータの充電動作と放電動作をシームレスに切り替えることができる。
【0080】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0081】
上記図10図12(a)に示した放電時制御では、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの差分が閾値以下になったとき、バス電圧指令値に所定値を加算してバス電圧Vbusを上昇させる例を説明した。この点、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusが設定値より乖離している状態を維持できればよいため、バス電圧指令値から所定値を減算してバス電圧Vbusを低下させてもよい。なお、放電の場合は電池電圧Vsbが低下していくため、バス電圧Vbusを上昇させた方が、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusが再接近することを防止でき、バス電圧Vbusの補正制御を安定させることができる。
【0082】
同様に上記図11図12(b)に示した充電時制御において、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusとの差分が閾値以下になったとき、バス電圧指令値に所定値を加算してバス電圧Vbusを上昇させてもよい。なお、充電の場合は電池電圧Vsbが上昇していくため、バス電圧Vbusを低下させた方が、電池電圧Vsbとバス電圧Vbusが再接近することを防止でき、バス電圧Vbusの補正制御を安定させることができる。
【0083】
上述の実施の形態では、本開示に係るHブリッジ型双方向コンバータを、ハイブリッド蓄電システムの蓄電部SB1用のDC/DCコンバータ20に使用する例を説明した。この点、太陽電池PV1が接続されない純粋な蓄電システムにも使用可能である。また、本開示に係るHブリッジ型双方向コンバータは車載用途にも使用可能である。その場合、インバータ30の交流側には系統2ではなく、モータが接続される。
【0084】
上述の実施の形態では、DC/DCコンバータ20の入力側に第1直流電源として蓄電部SB1が接続され、出力側に第2直流電源として直流バスBdcが接続される例を説明した。この点、第1直流電源は蓄電部SB1に限定されるものではなく、第2直流電源は直流バスBdcに限定されるものではない。例えば、第1直流電源と第2直流電源が、電圧が異なる蓄電池同士であってもよい。例えば、第1直流電源が鉛蓄電池、第2直流電源がリチウムイオン蓄電池またはニッケル水素蓄電池であってもよい。また、第1直流電源として、太陽電池や燃料電池などの充電機能がない直流電源を排除するものではない。
【0085】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0086】
[項目1]
直列接続された第1スイッチング素子(Q1)と第2スイッチング素子(Q2)を含み、第1直流電源(SB1)と第1平滑コンデンサ(C1)に対して並列接続された第1アームと、
直列接続された第3スイッチング素子(Q3)と第4スイッチング素子(Q4)を含み、第2直流電源(Bdc)と第2平滑コンデンサ(C2)に対して並列接続された第2アームと、
前記第1アームの中点と前記第2アームの中点に接続されたリアクトル(L1)と、
前記第1直流電源(SB1)の電圧と前記第2直流電源(Bdc)の電圧が均衡状態になることを回避するように、前記第1スイッチング素子(Q1)-前記第4スイッチング素子(Q4)を制御する制御部(21)と、
を備える、DC/DCコンバータ(20)。
これによれば、動作モードの頻繁な切り替わりを防止し、安定した制御が可能となる。
[項目2]
前記制御部(21)は、前記第1直流電源(SB1)の電圧と前記第2直流電源(Bdc)の電圧との差が閾値以下になると、前記第2直流電源(Bdc)の電圧の電圧指令値を、前記第1直流電源(SB1)の電圧と前記第2直流電源(Bdc)の電圧との差が設定値より大きくなるように補正する、項目1に記載のDC/DCコンバータ(20)。
これによれば、第1直流電源(SB1)の電圧と第2直流電源(Bdc)の電圧が均衡状態になることを回避することができる。
[項目3]
前記制御部(21)は、
前記第1直流電源(SB1)から前記第2直流電源(Bdc)に電力を供給する場合において、前記第1直流電源(SB1)の電圧と前記第2直流電源(Bdc)の電圧との差が前記閾値以下になると、前記第2直流電源(Bdc)の電圧の電圧指令値に所定値を加算する、項目2に記載のDC/DCコンバータ(20)。
これによれば、第1直流電源(SB1)の電圧と第2直流電源(Bdc)の電圧が再接近する確率が低い方向に、第2直流電源(Bdc)の電圧を変化させることができる。
[項目4]
前記制御部(21)は、
前記第2直流電源(Bdc)から前記第1直流電源(SB1)に電力を供給する場合において、前記第1直流電源(SB1)の電圧と前記第2直流電源(Bdc)の電圧との差が前記閾値以下になると、前記第2直流電源(Bdc)の電圧の電圧指令値から所定値を減算する、項目2または3に記載のDC/DCコンバータ(20)。
これによれば、第1直流電源(SB1)の電圧と第2直流電源(Bdc)の電圧が再接近する確率が低い方向に、第2直流電源(Bdc)の電圧を変化させることができる。
[項目5]
前記制御部(21)は、
前記第1直流電源(SB1)から前記第2直流電源(Bdc)に電力を供給する場合において、
前記第1直流電源(SB1)の電圧が前記第2直流電源(Bdc)の電圧より低い状態では、前記第1スイッチング素子(Q1)を常時オン状態、前記第2スイッチング素子(Q2)を常時オフ状態に制御し、前記第3スイッチング素子(Q3)と前記第4スイッチング素子(Q4)をPWM(Pulse Width Modulation)制御して、前記第1直流電源(SB1)の電圧を昇圧し、
前記第1直流電源(SB1)の電圧が前記第2直流電源(Bdc)の電圧より高い状態では、前記第3スイッチング素子(Q3)を常時オン状態、前記第4スイッチング素子(Q4)を常時オフ状態に制御し、前記第1スイッチング素子(Q1)と前記第2スイッチング素子(Q2)をPWM制御して、前記第1直流電源(SB1)の電圧を降圧する、項目1から4のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ(20)。
これによれば、2つのスイッチング素子のPWM制御で、第1直流電源(SB1)から第2直流電源(Bdc)に電力を供給することができ、スイッチング損失と発熱を抑えることができる。
[項目6]
前記制御部(21)は、
前記第1直流電源(SB1)に前記第2直流電源(Bdc)から電力を供給する場合において、
前記第1直流電源(SB1)の電圧が前記第2直流電源(Bdc)の電圧より低い状態では、前記第1スイッチング素子(Q1)を常時オン状態、前記第2スイッチング素子(Q2)を常時オフ状態に制御し、前記第3スイッチング素子(Q3)と前記第4スイッチング素子(Q4)をPWM制御して前記第2直流電源(Bdc)の電圧を降圧し、
前記第1直流電源(SB1)の電圧が前記第2直流電源(Bdc)の電圧より高い状態では、前記第3スイッチング素子(Q3)を常時オン状態、前記第4スイッチング素子(Q4)を常時オフ状態に制御し、前記第1スイッチング素子(Q1)と前記第2スイッチング素子(Q2)をPWM制御して、前記第2直流電源(Bdc)の電圧を昇圧する、項目1から5のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ(20)。
これによれば、2つのスイッチング素子のPWM制御で、第2直流電源(SB2)から第1直流電源(Bd1)に電力を供給することができ、スイッチング損失と発熱を抑えることができる。
[項目7]
前記第1直流電源(SB1)は、蓄電部(SB1)である、項目1から6のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ(20)。
これによれば、電流が双方向に流れる直流電源の安定した制御を実現することができる。
[項目8]
蓄電部(SB1)と直流バス(Bdc)の間に接続された項目1から7のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ(20)と、
前記直流バス(Bdc)と電力系統(2)の間に接続されたインバータ(30)と、を備え、
前記蓄電部(SB1)が前記第1直流電源(SB1)であり、前記直流バス(Bdc)が前記第2直流電源(Bdc)である、電力変換システム(1)。
これによれば、動作モードの頻繁な切り替わりを防止し、安定した制御が可能となる。
[項目9]
蓄電部(SB1)と直流バス(Bdc)の間に接続された項目1から7のいずれか1項に記載のDC/DCコンバータ(20)と、
太陽電池(PV1)と前記直流バス(Bdc)の間に接続された別のDC/DCコンバータ(10)と、
前記直流バス(Bdc)と電力系統(2)の間に接続されたインバータ(30)と、を備え、
前記蓄電部(SB1)が前記第1直流電源(SB1)であり、前記直流バス(Bdc)が前記第2直流電源(Bdc)である、電力変換システム(1)。
これによれば、動作モードの頻繁な切り替わりを防止し、安定した制御が可能となる。
【符号の説明】
【0087】
PV1 太陽電池、 SB1 蓄電部、 1 電力変換システム、 10 DC/DCコンバータ、 11 制御部、 20 DC/DCコンバータ、 21 制御部、 30 インバータ、 40 主制御部、 Bdc 直流バス、 2 系統、 3 分電盤、 4 負荷、 L1 リアクトル、 Q1-Q4 スイッチング素子、 D1-D4 ダイオード、 C1 第1コンデンサ、 C2 第2コンデンサ、 A1 電流センサ、 V1 第1電圧センサ、 V2 第2電圧センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12