(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077563
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】免震装置の水平変形の計測方法及び免震装置
(51)【国際特許分類】
G01B 5/30 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
G01B5/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021190868
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝中 義智
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA02
2F062AA36
2F062BC80
2F062CC22
2F062EE01
2F062FF02
2F062GG02
2F062GG15
2F062GG25
2F062GG29
2F062MM07
(57)【要約】
【課題】マークが付されている否かに関わらず免震装置の水平変形の計測位置を容易に認識することができる免震装置の水平変形の計測方法及び免震装置を提供する。
【解決手段】免震装置の水平変形の計測方法は、免震装置の上側フランジ板の周縁に設けられた第1上側切欠部の第1上側端面と、前記免震装置の下側フランジ板の周縁に設けられた第1下側切欠部の第1下側端面との相対位置を、前記第1上側切欠部及び前記第1下側切欠部に嵌入した計測具で計測することによって前記免震装置の第1方向の水平変形を計測する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震装置の上側フランジ板の周縁に設けられた第1上側切欠部の第1上側端面と、前記免震装置の下側フランジ板の周縁に設けられた第1下側切欠部の第1下側端面との相対位置を、前記第1上側切欠部及び前記第1下側切欠部に嵌入した計測具で計測することによって前記免震装置の第1方向の水平変形を計測する、免震装置の水平変形の計測方法。
【請求項2】
前記第1上側端面と交わる第1上側側面と、前記第1下側端面と交わる第1下側側面との相対位置を、前記第1上側切欠部及び前記第1下側切欠部に嵌入した前記計測具で計測することによって前記免震装置の第2方向の水平変形をさらに計測する、請求項1に記載の免震装置の水平変形の計測方法。
【請求項3】
前記上側フランジ板の周縁に設けられた第2上側切欠部に形成されると共に前記第1上側端面と実質的に直交する方向に延びる第2上側端面と、前記下側フランジ板に設けられた第2下側切欠部に形成されると共に前記第1下側端面と実質的に直交する方向に延びる第2下側端面との相対位置を、前記第2上側切欠部及び前記第2下側切欠部に嵌入した計測具で計測することによって前記免震装置の第3方向の水平変形をさらに計測する、請求項1又は2に記載の免震装置の水平変形の計測方法。
【請求項4】
弾性体と、前記弾性体の上端面に固定された上側フランジ板と、前記弾性体の下端面に固定された下側フランジ板と、を備え、
前記上側フランジ板は、前記上側フランジ板の周縁に設けられた第1上側切欠部を備え、
前記下側フランジ板は、前記下側フランジ板の周縁に設けられた第1下側切欠部を備え、
前記第1上側切欠部は、前記弾性体の上下方向の中心線を中心とする円弧の接線方向及び上下方向に沿って延びる第1上側端面を備え、
前記第1下側切欠部は、前記接線方向及び上下方向に沿って延びる第1下側端面を備える、免震装置。
【請求項5】
前記第1上側切欠部は、前記第1上側端面と交わると共に上下方向に沿って延びる第1上側側面を備え、
前記第1下側切欠部は、前記第1下側端面と交わると共に上下方向に沿って延びる第1下側側面を備える、請求項4に記載の免震装置。
【請求項6】
前記上側フランジ板は、前記上側フランジ板の周縁に設けられた第2上側切欠部を備え、
前記下側フランジ板は、前記下側フランジ板の周縁に設けられた第2下側切欠部を備え、
前記第2上側切欠部は、上下方向に沿って延びると共に前記第1上側端面と実質的に直交する方向に延びる第2上側端面を備え、
前記第2下側切欠部は、上下方向に沿って延びると共に前記第1下側端面と実質的に直交する方向に延びる第2下側端面を備える、請求項4又は5に記載の免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、免震装置の水平変形の計測方法及び免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
免震装置の設置前後や点検時などにおいて、免震装置の水平変形を計測している。計測者は、上下のフランジ板の相対位置の水平変形を計測することで、免震装置における水平方向やねじり方向の水平変形を計測している。
【0003】
計測者は、免震装置の設置前後や点検時などの異なるタイミングにおいて同じ計測位置で免震装置の水平変形を計測できるように、計測位置の目安として油性インクなどでマークを付している。しかしながら、油性インク又は免震装置の塗装やメッキの経年劣化などにより、計測者が付したマークが消滅することがあった。また、計測者がマークを付け忘れたりすることがあった。
【0004】
特許文献1には、上下のフランジ板の周縁に固定ボルトが配置される切欠き溝が設けられた免震装置が記載されているものの、免震装置の水平変形を計測する方法については何ら開示しておらず、上記の問題に関して、その解決手段を示唆するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、マークが付されている否かに関わらず免震装置の水平変形の計測位置を容易に認識することができる免震装置の水平変形の計測方法及び免震装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の免震装置の水平方向の計測方法は、免震装置の上側フランジ板の周縁に設けられた第1上側切欠部の第1上側端面と、前記免震装置の下側フランジ板の周縁に設けられた第1下側切欠部の第1下側端面との相対位置を、前記第1上側切欠部及び前記第1下側切欠部に嵌入した計測具で計測することによって前記免震装置の第1方向の水平変形を計測する。
【0008】
本開示の免震装置は、弾性体と、前記弾性体の上端面に固定された上側フランジ板と、前記弾性体の下端面に固定された下側フランジ板と、を備え、前記上側フランジ板は、前記上側フランジ板の周縁に設けられた第1上側切欠部を備え、前記下側フランジ板は、前記下側フランジ板の周縁に設けられた第1下側切欠部を備え、前記第1上側切欠部は、前記弾性体の上下方向の中心線を中心とする円弧の接線方向及び上下方向に沿って延びる第1上側端面を備え、前記第1下側切欠部は、前記接線方向及び上下方向に沿って延びる第1下側端面を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】同実施形態に係る免震装置のずれを計測している状態を示す正面図
【
図7】他の実施形態に係る免震装置のずれを計測している状態を示す正面図
【
図8】他の実施形態に係る免震装置の要部拡大平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
[免震装置]
まずは、免震装置における一実施形態について、
図1~
図3を参照しながら説明する。なお、各図(
図4~
図8も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0011】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る免震装置1は、弾性体2と、弾性体2の上端面に固定された上側フランジ板3と、弾性体2の下端面に固定された下側フランジ板4と、を備える。
【0012】
弾性体2は、上側フランジ板3と下側フランジ板4との間に配置されている。弾性体2の外径は、上側フランジ板3の外径や下側フランジ板4の外径よりも小さい。本実施形態において、弾性体2は、ゴムによって上下方向に積層された円柱状に形成されているが、これに限られない。例えば、弾性体2は、金属板とゴムとを交互に積層したものであってもよい。また、例えば、弾性体2は、正方形状に形成されていてもよい。
【0013】
図2に示すように、上側フランジ板3は、建物躯体などの上側構造体X1に固定されている。これらの間に上側ベースプレートを介在させる場合もある。上側フランジ板3は、上側構造体X1にボルト(不図示)で固定するための複数の上側ボルト挿通孔31を備える。上側ボルト挿通孔31は、上側フランジ板3を上下方向に貫通する貫通孔である。複数の上側ボルト挿通孔31は、弾性体2を囲うように等間隔に配置されている。
【0014】
図3に示すように、下側フランジ板4は、建物基礎などの下側構造体X2に固定されている。これらの間に下側ベースプレートを介在させる場合もある。下側フランジ板4は、下側構造体X2にボルトで固定するための複数の下側ボルト挿通孔41を備える。下側ボルト挿通孔41は、下側フランジ板4を上下方向に貫通する貫通孔である。複数の下側ボルト挿通孔41は、弾性体2を囲うように等間隔に配置されている。本実施形態において、複数の下側ボルト挿通孔41は、それぞれ上側ボルト挿通孔31と上下方向において重なった位置に配置されている。
【0015】
図2に示すように、上側フランジ板3は、上側フランジ板3の周縁に設けられた第1上側切欠部32を備える。第1上側切欠部32は、第1上側端面32aを備える。第1上側端面32aは、弾性体2の上下方向の中心線Lcを中心とする円弧C1の接線方向及び上下方向に沿って延びる平面である。本実施形態において、第1上側端面32aは、円弧C1と接しているが、これに限られない。
【0016】
図3に示すように、下側フランジ板4は、下側フランジ板4の周縁に設けられた第1下側切欠部42を備える。第1下側切欠部42は、第1下側端面42aを備える。第1下側端面42aは、円弧C1の接線方向及び上下方向に沿って延びる平面である。本実施形態において、第1下側端面42aは、円弧C1と接しているが、これに限られない。
【0017】
図2及び
図3に示すように、後述する計測具M1(
図4参照)によって免震装置1の第1方向D1の水平変形を正確に計測する観点から、第1上側端面32a及び第1下側端面42aは、無負荷状態の免震装置1において実質的に面一であることが好ましい。第1方向D1は、第1上側端面32a及び/又は第1下側端面42aと実質的に直交する方向である。実質的に直交とは、直交であることのみを意味せず、5度以下の角度のズレを含む。実質的に面一とは、各平面が同一平面上にあることのみを意味せず、5mm以下の段差及び5度以下の角度のズレを含む。
【0018】
免震装置1の第1方向D1の水平変形を正確に計測する観点から、第1上側端面32a及び第1下側端面42aは、各端面32a,42aと直交する方向視において、それぞれ弾性体2の中心線Lcと重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0019】
水平変形を計測する観点から、第1上側端面32aの水平方向の幅W1は、60mm以上であることが好ましい。第1下側端面42aの水平方向の幅W2についても同様である。本実施形態において、第1上側端面32aの幅W1は、第1下側端面42aの幅W2と実質的に同一であるが、これに限られない。実質的に同一とは、各寸法が同一であることのみを意味せず、5mm以下の寸法差も含む。
【0020】
第1上側切欠部32への計測具M1の嵌入代を確保する観点から、第1上側切欠部32の第1方向D1の長さL1は、60mm以上であることが好ましい。第1下側切欠部42の第1方向D1の長さL2についても同様である。本実施形態において、第1上側切欠部32の長さL1は、第1下側切欠部42の長さL2と実質的に同一であるが、これに限られない。
【0021】
第1上側切欠部32は、第1上側側面32bを備える。第1上側側面32bは、第1上側端面32aと交わると共に上下方向に沿って延びる平面である。本実施形態において、第1上側切欠部32は、一対の第1上側側面32b,32bを備える。一対の第1上側側面32b,32bは、それぞれ第1上側端面32aと実質的に直交する。即ち、一方の第1上側側面32bは、他方の第1上側側面32bと実質的に平行である。実質的に平行とは、平行であることのみを意味せず、10度以下の角度のズレを含む。なお、第1上側側面32bは、上記に限られない。
【0022】
第1下側切欠部42は、第1下側側面42bを備える。第1下側側面42bは、第1下側端面42aと交わると共に上下方向に沿って延びる平面である。本実施形態において、第1下側切欠部42は、一対の第1下側側面42b,42bを備える。一対の第1下側側面42b,42bは、それぞれ第1下側端面42aと実質的に直交する。即ち、一方の第1下側側面42bは、他方の第1下側側面42bと実質的に平行である。なお、第1下側側面42bは、上記に限られない。
【0023】
計測具M1によって免震装置1の第2方向D2の水平変形を正確に計測する観点から、第1上側側面32b及び第1下側側面42bは、無負荷状態の免震装置1において実質的に面一であることが好ましい。第2方向D2は、第1上側側面32b及び/又は第1下側側面42bと実質的に直交する方向である。本実施形態において、免震装置1の第2方向D2の水平変形は、第1方向D1と実質的に直交する免震装置1の水平変形(後述する第3方向D3の水平変形)と、弾性体2の中心線Lcを中心とする免震装置1のねじれ方向の水平変形と、を含む。
【0024】
上側フランジ板3は、上側フランジ板3の周縁に設けられた第2上側切欠部33を備える。なお、上側フランジ板3は、第2上側切欠部33を備えないという構成であってもよい。第2上側切欠部33は、上下方向に沿って延びると共に第1上側端面32aと交わる方向に延びる第2上側端面33aを備える。本実施形態において、第2上側端面33aは、第1上側端面32aと実質的に直交する方向に延びている。第2上側端面33aは、円弧C1と接している。なお、第2上側端面33aは、上記に限られない。
【0025】
下側フランジ板4は、下側フランジ板4の周縁に設けられた第2下側切欠部43を備える。なお、下側フランジ板4は、第2下側切欠部43を備えない、という構成であってもよい。第2下側切欠部43は、上下方向に沿って延びると共に第1下側端面42aと交わる方向に延びる第2下側端面43aを備える。本実施形態において、第2下側端面43aは、第1下側端面42aと実質的に直交する方向に延びている。第2下側端面43aは、円弧C1と接している。なお、第2下側端面43aは、上記に限られない。
【0026】
免震装置1の第3方向D3の水平変形を正確に計測する観点から、第2上側端面33a及び第2下側端面43aは、無負荷状態の免震装置1において実質的に面一であることが好ましい。第3方向D3は、第2上側端面33a及び/又は第2下側端面43aと実質的に直交する方向である。本実施形態において、免震装置1の第3方向D3の水平変形は、免震装置1の第1方向D1と実質的に直交する水平変形である。
【0027】
免震装置1の第3方向D3の水平変形を正確に計測する観点から、第2上側端面33a及び第2下側端面43aは、各端面33a,43aと直交する方向視において、それぞれ弾性体2の中心線Lcと重なる位置に配置されていることが好ましい。
【0028】
水平変形を計測する観点から、第2上側端面33aの水平方向の幅W3は、60mm以上であることが好ましい。第2下側端面43aの水平方向の幅W4についても同様である。
【0029】
本実施形態において、第2上側端面33aの幅W3は、第2下側端面43aの幅W4と実質的に同一である。第2上側端面33aの幅W3及び第2下側端面43aの幅W4は、それぞれ第1上側端面32aの幅W1及び第1下側端面42aの幅W2と実質的に同一である。なお、第2上側端面33a及び第2下側端面43aは、上記に限られない。
【0030】
第2上側切欠部33への計測具M1の嵌入代を確保する観点から、第2上側切欠部33の第3方向D3の長さL3は、60mm以上であることが好ましい。第2下側切欠部43の第3方向D3の長さL4についても同様である。
【0031】
本実施形態において、第2上側切欠部33の長さL3は、第2下側切欠部43の長さL4と実質的に同一である。第2上側切欠部33の長さL3及び第2下側切欠部43の長さL4は、それぞれ第1上側切欠部32の長さL1及び第1下側切欠部42の長さL2と実質的に同一である。なお、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43は、上記に限られない。
【0032】
第2上側切欠部33は、第2上側側面33bを備える。第2上側側面33bは、第2上側端面33aと交わると共に上下方向に沿って延びる平面である。本実施形態において、第2上側切欠部33は、一対の第2上側側面33b,33bを備える。一対の第2上側側面33b,33bは、それぞれ第2上側端面33aと実質的に直交する。即ち、一方の第2上側側面33bは、他方の第2上側側面33bと実質的に平行である。なお、第2上側側面33bは、上記に限られない。
【0033】
第2下側切欠部43は、第2下側側面43bを備える。第2下側側面43bは、第2下側端面43aと交わると共に上下方向に沿って延びる平面である。本実施形態において、第2下側切欠部43は、一対の第2下側側面43b,43bを備える。一対の第2下側側面43b,43bは、それぞれ第2下側端面43aと実質的に直交する。即ち、一方の第2下側側面43bは、他方の第2下側側面43bと実質的に平行である。なお、第2下側側面43bは、上記に限られない。
【0034】
計測具M1によって免震装置1の第4方向D4の水平変形を正確に計測する観点から、第2上側側面33b及び第2下側側面43bは、無負荷状態の免震装置1において実質的に面一であることが好ましい。第4方向D4は、第2上側側面33b及び/又は第2下側側面43bと実質的に直交する方向である。本実施形態において、免震装置1の第4方向D4の水平変形は、第3方向D3と実質的に直交する免震装置1の水平変形(第1方向D1の水平変形)と、弾性体2の中心線Lcを中心とする免震装置1のねじれ方向の水平変形と、を含む。
【0035】
本実施形態において、第1上側切欠部32、第1下側切欠部42、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43は、実質的に同一な形状であるが、これに限られない。例えば、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43は、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42と異なる形状であってもよい。
【0036】
第1上側切欠部32は、ボルトとの干渉及びボルトによる上側フランジ板3の端抜けを防止する観点から、上側ボルト挿通孔31,31の間に配置されていることが好ましい。第1上側切欠部32と上側ボルト挿通孔31との最短距離は、上側ボルト挿通孔31と上側フランジ板3の周縁との最短距離よりも大きいことが好ましい。第1下側切欠部42、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43についても同様である。フランジ板3,4を固定するためのボルトは、すべてボルト挿通孔31,41に装着されており、各切欠部32,33,42,43には配置されていない。
【0037】
[計測具]
次に免震装置の水平変形を計測するための計測具について、
図4~
図6を参照しながら説明する。
【0038】
図4及び
図5に示すように、計測具M1は、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入可能な形状に形成されている。計測具M1は、第1上側端面32a及び第1下側端面42aのそれぞれと実質的に平行な第1計測面M11と、第1上側側面32b及び第1下側側面42bのそれぞれと実質的に平行な第2計測面M12と、を備える。本段落における実質的に平行とは、平行であることのみを意味せず、5度以下の角度のズレを含む。
【0039】
本実施形態において、計測具M1は、断面多角形状(
図5及び
図6では、断面四角形状を例示)に形成された棒状体であり、第1計測面M11及び第2計測面M12は、実質的に直交しているが、これに限られない。計測具M1と第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43(
図6参照)との関係についても同様である。なお、計測具M1は、例えば、直角定規であってもよい。
【0040】
[免震装置の水平変形の計測方法]
次に免震装置の水平変形の計測方法について、
図4~
図6を参照しながら説明する。
【0041】
(1)まずは、
図4及び
図5に示すように、計測具M1を第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入し、第1上側端面32a及び第1下側端面42aのうち一方に計測具M1を接触させる。そして、第1上側端面32a及び第1下側端面42aのうち他方と計測具M1との第1隙間G1を隙間計測具(不図示)で計測する。これにより、第1上側端面32a及び第1下側端面42aの相対位置を計測することができ、免震装置1の第1方向D1の水平変形を計測することができる。なお、第1上側端面32a及び第1下側端面42aのうち一方と第1上側側面32b及び第1下側側面42bのうち一方とに計測具M1を同時に接触させることが好ましい(
図5参照)。
【0042】
免震装置1の水平変形を計測する隙間計測具は、免震装置1の水平変形を正確に計測する観点から、隙間ゲージであることが好ましい。隙間計測具としては、他に直線定規、ノギスやテーパゲージなどが挙げられる。
【0043】
第1上側端面32a及び第1下側端面42aが実質的に面一である場合、第1上側端面32a及び第1下側端面42aの相対位置が免震装置1の第1方向D1の水平変形となる。第1上側端面32a及び第1下側端面42aが実質的に面一でない場合、第1上側端面32a及び第1下側端面42aの相対位置と、免震装置1の設置前における第1上側端面32a及び第1下側端面42aの第1方向D1の水平変形と、から免震装置1の第1方向D1の水平変形を計測することができる。免震装置1の第2~4方向D2~D4の水平変形の計測についても同様である。
【0044】
(2)次に、第1上側側面32b及び第1下側側面42bのうち一方に計測具M1を接触させ、第1上側側面32b及び第1下側側面42bのうち他方と計測具M1との第2隙間G2を隙間計測具で計測する。これにより、第1上側側面32b及び第1下側側面42bの相対位置を計測することができ、免震装置1の第2方向D2の水平変形を計測することができる。
【0045】
(3)次に、
図4及び
図6に示すように、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入していた計測具M1を、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43に嵌入し、第2上側端面33a及び第2下側端面43aのうち一方に計測具M1を接触させる。そして、第2上側端面33a及び第2下側端面43aのうち他方と計測具M1との第3隙間G3を隙間計測具で計測する。これにより、第2上側端面33a及び第2下側端面43aの相対位置を計測することができ、免震装置1の第3方向D3の水平変形を計測することができる。第2上側端面33a及び第2下側端面43aのうち一方と第2上側側面33b及び第2下側側面43bのうち一方とに計測具M1を同時に接触させることが好ましい(
図6参照)。
【0046】
(4)次に、第2上側側面33b及び第2下側側面43bのうち一方に計測具M1を接触させ、第2上側側面33b及び第2下側側面43bのうち他方と計測具M1との第4隙間G4を隙間計測具で計測する。これにより、第2上側側面33b及び第2下側側面43bの相対位置を計測することができ、免震装置1の第4方向D4の水平変形を計測することができる。
【0047】
以上の(1)~(4)の計測によって、免震装置1の第1~4方向D1~D4の水平変形を計測することができる。本実施形態において、計測者は、(1)~(3)の計測を行っている。これにより、水平方向で実質的に直交する2方向(第1方向D1及び第3方向D3)の免震装置1の水平変形と、ねじれ方向の水平変形を含む免震装置1の第2方向D2の水平変形を計測することができる。また、切欠部32,33,42,43を利用して免震装置1の水平変形を計測することにより、設置後の免震装置1に対しても側方から計測具M1を嵌入させることができる。
【0048】
免震装置1のねじれ方向の水平変形は、免震装置1の第2方向D2の水平変形から第3方向D3の水平変形を減算することにより算出することができる。これにより、計測者は、免震装置1を設置した状態で免震装置1のねじれ方向の水平変形を計測することができる。免震装置1のねじれ方向の水平変形を計測することにより、製造段階において交換用の免震装置1にねじれ方向のねじりを加えることができる。これにより、免震装置1の交換作業時に、作業者が免震装置1にねじれ方向のねじりを加える労力を減らすことができる。
【0049】
なお、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43が設けられていない場合、計測者は、(1)及び(2)の計測を行うことによって免震装置1の2方向(第1方向D1及び第2方向D2)の水平変形を計測することができる。また、計測者は、(2)の計測の代りに(4)の計測を行うことによって、免震装置1のねじれ方向の水平変形を計測してもよい。
【0050】
以上、本実施形態のように、免震装置1の水平変形の計測方法は、免震装置1の上側フランジ板3の周縁に設けられた第1上側切欠部32の第1上側端面32aと、免震装置1の下側フランジ板4の周縁に設けられた第1下側切欠部42の第1下側端面42aとの相対位置を、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入した計測具M1で計測することによって免震装置1の第1方向D1の水平変形を計測する、という計測方法が好ましい。
【0051】
斯かる方法によれば、免震装置1のずれを計測するための計測位置を第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42とすることにより、計測者は、マークが付されている否かに関わらず免震装置1の水平変形の計測位置を容易に認識することができる。これにより、計測者は、免震装置1の設置前後や点検時などの異なるタイミングにおいて、免震装置1の水平変形を同じ計測位置で計測することができる。また、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入する計測具M1を用いることにより、例えば、計測者は、免震装置1の設置前後や点検時などの異なるタイミングにおいて、免震装置1の水平変形を同じ計測方法で計測することができる。
【0052】
また、本実施形態のように、免震装置1の水平変形の計測方法は、第1上側端面32aと交わる第1上側側面32bと、第1下側端面42aと交わる第1下側側面42bとの相対位置を、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入した計測具M1で計測することによって免震装置1の第2方向D2の水平変形をさらに計測する、という計測方法が好ましい。
【0053】
斯かる方法によれば、計測者は、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入した計測具M1で免震装置1の2方向(第1方向D1及び第2方向D2)の水平変形を容易に計測することができる。
【0054】
また、本実施形態のように、免震装置1の水平変形の計測方法は、上側フランジ板3の周縁に設けられた第2上側切欠部33に形成されると共に第1上側端面32aと実質的に直交する方向に延びる第2上側端面33aと、下側フランジ板4に設けられた第2下側切欠部43に形成されると共に第1下側端面42aと実質的に直交する方向に延びる第2下側端面43aとの相対位置を、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43に嵌入した計測具M1で計測することによって免震装置1の第3方向D3の水平変形をさらに計測する、という計測方法が好ましい。
【0055】
斯かる方法によれば、計測者は、実質的に直交する2方向(第1方向D1及び第3方向D3)の免震装置1の水平変形を計測することができる。
【0056】
また、本実施形態のように、免震装置1は、弾性体2と、弾性体2の上端面に固定された上側フランジ板3と、弾性体2の下端面に固定された下側フランジ板4と、を備え、上側フランジ板3は、上側フランジ板3の周縁に設けられた第1上側切欠部32を備え、下側フランジ板4は、下側フランジ板4の周縁に設けられた第1下側切欠部42を備え、第1上側切欠部32は、弾性体2の上下方向の中心線Lcを中心とする円弧C1の接線方向及び上下方向に沿って延びる第1上側端面32aを備え、第1下側切欠部42は、接線方向及び上下方向に沿って延びる第1下側端面42aを備える、という構成が好ましい。
【0057】
斯かる構成によれば、第1上側端面32a及び第1下側端面42aの相対位置を計測することで、免震装置1の第1方向D1の水平変形を計測することができる。これにより、計測者は、マークが付されている否かに関わらず免震装置1の水平変形の計測位置を容易に認識することができる。その結果、計測者は、免震装置1の設置前後や点検時などの異なるタイミングにおいて、免震装置1の水平変形を同じ計測位置で計測することができる。
【0058】
また、本実施形態のように、免震装置1において、第1上側切欠部32は、第1上側端面32aと交わると共に上下方向に沿って延びる第1上側側面32bを備え、第1下側切欠部42は、第1下側端面42aと交わると共に上下方向に沿って延びる第1下側側面42bを備える、という構成が好ましい。
【0059】
斯かる構成によれば、第1上側側面32b及び第1下側側面42bの相対位置を計測することで、免震装置1の第2方向D2の水平変形を計測することができる。これにより、免震装置1の2方向(第1方向D1及び第2方向D2)の水平変形を容易に計測することができる。
【0060】
また、本実施形態のように、免震装置1において、上側フランジ板3は、上側フランジ板3の周縁に設けられた第2上側切欠部33を備え、下側フランジ板4は、下側フランジ板4の周縁に設けられた第2下側切欠部43を備え、第2上側切欠部33は、上下方向に沿って延びると共に第1上側端面32aと実質的に直交する方向に延びる第2上側端面33aを備え、第2下側切欠部43は、上下方向に沿って延びると共に第1下側端面42aと実質的に直交する方向に延びる第2下側端面43aを備える、という構成が好ましい。
【0061】
斯かる構成によれば、第2上側端面33a及び第2下側端面43aの相対位置を計測することで、免震装置1の第3方向D3の水平変形を計測することができる。これにより、実質的に直交する2方向(第1方向D1及び第3方向D3)の免震装置1の水平変形を計測することができる。
【0062】
なお、免震装置1の水平変形の計測方法及び免震装置1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、免震装置1の水平変形の計測方法及び免震装置1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、下記する各種の変更例に係る構成や方法などを任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0063】
(i)
図7に示すように、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42は、水平方向においてズレた位置に配置されていてもよい。第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43についても同様である。斯かる構成において、計測具M1は、第1上側切欠部32及び第1下側切欠部42に嵌入可能な屈曲形状(例えば、略Z字状)であることが好ましい。
【0064】
(ii)
図8に示すように、第1上側切欠部32は、第1上側側面32bを1面のみ備える、という構成であってもよい。斯かる構成において、第1上側端面32aの一端は、上側フランジ板3の周縁まで延びている。第1下側切欠部42、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43についても同様である。斯かる構成によれば、計測者は、免震装置1の設置前後や点検時などの異なるタイミングにおいて、免震装置1の第1方向D1及び第2方向D2の水平変形を同じ計測位置で計測することができる。
【0065】
(iii)第1下側側面42bの一方及び第1下側端面42aに塗布された塗料の色は、下側フランジ板4の他部に塗布された塗料の色と異なる、という構成であってもよい。また、下側フランジ板4は、下側フランジ板4の上面で且つ第1下側側面42bの一方の近傍に計測の目印となる凸凹部を備える、という構成であってもよい。これらの構成によれば、計測者は、計測具M1を接触させる面を容易に認識することができ、免震装置1の設置前後や点検時などの異なるタイミングにおいて、免震装置1の第1方向D1及び第2方向D2の水平変形を同じ計測位置で計測することができる。第1上側切欠部32、第2上側切欠部33及び第2下側切欠部43についても同様である。
【0066】
(iv)各切欠部32,33,42,43を用いて、免震装置1の鉛直方向の変位を計測してもよい。例えば、各切欠部32,33,42,43のいずれかを計測位置の目印として、免震装置1の鉛直方向の変位を計測することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…免震装置、2…弾性体、3…上側フランジ板、4…下側フランジ板、31…上側ボルト挿通孔、32…第1上側切欠部、32a…第1上側端面、32b…第1上側側面、33…第2上側切欠部、33a…第2上側端面、33b…第2上側側面、41…下側ボルト挿通孔、42…第1下側切欠部、42a…第1下側端面、42b…第1下側側面、43…第2下側切欠部、43a…第2下側端面、43b…第2下側側面、M1…計測具、M11…第1計測面、M12…第2計測面、X1…上側構造体、X2…下側構造体