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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077903
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/12 20060101AFI20230530BHJP
【FI】
B32B3/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191402
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大矢 裕
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK00A
4F100AK00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA41B
4F100DC02B
4F100DC04B
4F100EH17B
4F100EJ39B
4F100GB07
4F100GB08
4F100GB31
4F100GB32
4F100GB48
4F100GB81
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】生産コストの増大を招くことなく製造することができ、かつ各種特性に優れたハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】本発明のハニカム構造体1は、隔壁32と隔壁32により平面視形状がハニカム形状に区画され厚さ方向に貫通した複数のセル31とを備えるハニカムコア層30と、ハニカムコア層30の一方の面(下面)に積層されたシート状をなす第1シート層10とを有し、ハニカムコア層30と第1シート層10とは、同一の樹脂組成物で構成され、かつ、隔壁32と第1シート層10とは、一体的に形成されている。また、ハニカム構造体1は、さらに、ハニカムコア層30の他方の面(上面)側に積層されたシート状をなす第2シート層20を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁と、該隔壁により平面視形状がハニカム形状に区画され厚さ方向に貫通した複数のセルとを備えるハニカムコア層と、
前記ハニカムコア層の一方の面に積層されたシート状をなす第1シート層とを有し、
前記ハニカムコア層と前記第1シート層とは、同一の樹脂組成物で構成され、かつ、前記隔壁と前記第1シート層とは、一体的に形成されていることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
前記ハニカムコア層において、複数の前記セルを区画する前記隔壁は、一体的に形成されている請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主材料として構成されている請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記隔壁は、前記ハニカムコア層の前記厚さ方向に直交する直交方向における、前記隔壁の厚みが前記一方の面側から他方の面側に向かって漸減している請求項1ないし3のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記隔壁は、前記一方の面側の端部での厚みをT1とし、前記他方の面側の端部での厚みをT2としたとき、比T1/T2が1.1以上2.0以下なる関係を満足する請求項4に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記隔壁は、その平均厚みが0.5mm以上5.0mm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記隔壁は、その平均高さが1.5mm以上30.0mm以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記セルは、その内接円の直径が3.0mm以上50.0m以下である請求項1ないし7のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記第1シート層は、その平均厚さが0.2mm以上3.0mm以下である請求項1ないし8のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
当該ハニカム構造体は、さらに、前記ハニカムコア層の他方の面側に積層されたシート状をなす第2シート層を有する請求項1ないし9のいずれか1項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、軽量性、断熱性および防音性等の各種特性に優れることから、壁材、ドア部材、間仕切り部材のような建築用材料、自動車、電車、航空機のような移動体が備える移動体用内装材、家電が備える家電用内装材、家具、台所製品が備える化粧板、電磁波を遮断する電磁波シールドシートとして、ハニカム構造を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
しかしながら、このハニカム構造は、一般的に、平面視形状が六角形状の筒体を備える隔壁を複数形成した後に、これら隔壁同士を、接着剤や熱溶着により接合することにより製造される。そのため、ハニカム構造を製造するための生産プロセスが煩雑となることから、生産コストの増大を招くと言う問題があった。
【0004】
このような問題点を改良すること、および、前記特性のさらなる改良を図ることを目的に、各種の検討がなされているが、十分な改良がなされているとは言えないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-132094号公報
【特許文献2】特開2016-159468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、生産コストの増大を招くことなく製造することができ、かつ各種特性に優れたハニカム構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(10)に記載の本発明により達成される。
(1) 隔壁と、該隔壁により平面視形状がハニカム形状に区画され厚さ方向に貫通した複数のセルとを備えるハニカムコア層と、
前記ハニカムコア層の一方の面に積層されたシート状をなす第1シート層とを有し、
前記ハニカムコア層と前記第1シート層とは、同一の樹脂組成物で構成され、かつ、前記隔壁と前記第1シート層とは、一体的に形成されていることを特徴とするハニカム構造体。
【0008】
(2) 前記ハニカムコア層において、複数の前記セルを区画する前記隔壁は、一体的に形成されている上記(1)に記載のハニカム構造体。
【0009】
(3) 前記樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を主材料として構成されている上記(1)または(2)に記載のハニカム構造体。
【0010】
(4) 前記隔壁は、前記ハニカムコア層の前記厚さ方向に直交する直交方向における、前記隔壁の厚みが前記一方の面側から他方の面側に向かって漸減している上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0011】
(5) 前記隔壁は、前記一方の面側の端部での厚みをT1とし、前記他方の面側の端部での厚みをT2としたとき、比T1/T2が1.1以上2.0以下なる関係を満足する上記(4)に記載のハニカム構造体。
【0012】
(6) 前記隔壁は、その平均厚みが0.5mm以上5.0mm以下である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0013】
(7) 前記隔壁は、その平均高さが1.5mm以上30.0mm以下である上記(1)ないし(6)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
(8) 前記セルは、その内接円の直径が3.0mm以上50.0m以下である上記(1)ないし(7)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
(9) 前記第1シート層は、その平均厚さが0.2mm以上3.0mm以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
(10) 当該ハニカム構造体は、さらに、前記ハニカムコア層の他方の面側に積層されたシート状をなす第2シート層を有する上記(1)ないし(9)のいずれかに記載のハニカム構造体。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各種特性に優れたハニカム構造体を、生産コストの増大を招くことなく、優れた生産性をもって製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のハニカム構造体の実施形態を示す部分斜視図である。
図2図1に示すハニカム構造体のA-A線に沿った断面図である。
図3図1に示すハニカム構造体から第2シート層を除いて平面視で見た平面図である。
図4図1に示すハニカム構造体を押出法を適用して製造する構造体製造装置の斜視図である。
図5図4に示す構造体製造装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のハニカム構造体を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0020】
<<ハニカム構造体>>
本発明のハニカム構造体1は、隔壁32と隔壁32により平面視形状がハニカム形状に区画され厚さ方向に貫通した複数のセル31とを備えるハニカムコア層30と、このハニカムコア層30の一方の面に積層されたシート状をなす第1シート層10とを有し、ハニカムコア層30と第1シート層10とは、同一の樹脂組成物で構成され、かつ、前記隔壁と前記第1シート層とは、一体的に形成されていることを特徴とする。かかる構成をなすハニカム構造体1であれば、後述する構造体製造装置500を用いて、生産コストの増大を招くことなく、優れた生産性をもって、各種特性に優れたものとして製造することができる。
【0021】
図1は、本発明のハニカム構造体の実施形態を示す部分斜視図、図2は、図1に示すハニカム構造体のA-A線に沿った断面図、図3は、図1に示すハニカム構造体から第2シート層を除いて平面視で見た平面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図2の上側、図3の紙面手前側を「上」、図1図2の下側、図3の紙面奥側を「下」と言う。また、図1図2では、ハニカム構造体の厚さ方向を誇張して図示しているため、実際の寸法とは大きく異なる。さらに、ハニカムコア層30の構成を見易くするために、ハニカムコア層30の上面に積層された第2シート層20が、図1では部分的に取り外されている。
【0022】
ハニカム構造体1は、本実施形態では、図1図2に示す通り、ハニカムコア層30と、ハニカムコア層30の一方の面(下面)を被覆するように積層された第1シート層10と、ハニカムコア層30の他方の面(上面)を被覆するように積層された第2シート層20とを備えており、1つのハニカムコア層30を、2つのシート層10、20で、その上面および下面においてサンドイッチ(挟持)したサンドイッチ構造を有する積層体で構成されている。
【0023】
<ハニカムコア層>
ハニカムコア層30は、図1に示す通り、サンドイッチ構造を有する積層体であるハニカム構造体1の中間層として位置して、ハニカム構造体1の主層を構成している。
【0024】
このハニカムコア層30は、平面視形状が六角形状の筒体をなす隔壁32と、この隔壁32により平面視形状がハニカム形状に区画され厚さ方向に貫通した複数のセル31とを備える構成をなすものである。ハニカムコア層30が、かかる構成をなすことで、ハニカム構造体1における、軽量性、断熱性および防音性等の各種特性が付与される。
【0025】
隔壁32は、ハニカムコア層30において、複数のセル31を区画しているが、この隔壁32自体は、ハニカムコア層30において、一体的に形成されている。これにより、ハニカムコア層30ひいてはハニカム構造体1の強度の向上が図られる。
【0026】
また、隔壁32、すなわちハニカムコア層30は、本発明では、熱可塑性樹脂を主材料として含む樹脂組成物で構成されている。このような熱可塑性樹脂で隔壁32を構成することで、上記の通り、ハニカムコア層30において、一体的に形成された隔壁32を、後述する構造体製造装置500を用いて、確実に形成することができる。
【0027】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)のようなポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)のようなポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂およびポリアミド系樹脂等が挙げられ、ハニカム構造体1に求められる各種特性に応じて、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリアミド系樹脂であるのが好ましく、特にポリカーボネート系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂であるのが好ましい。ポリカーボネート系樹脂は、透明性(透光性)や剛性等の機械的強度に富み、さらに耐熱性も高いため、熱可塑性樹脂にポリカーボネート系樹脂を用いることで、隔壁32(ハニカムコア層30)ひいてはハニカム構造体1の耐衝撃性、耐熱性および伸縮性を向上させることができる。また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、透明性(透光性)を備え、優れた耐薬品性、難燃性、耐衝撃性を有するため、熱可塑性樹脂にポリ塩化ビニル系樹脂を用いることで、隔壁32(ハニカムコア層30)ひいてはハニカム構造体1の耐薬品性、難燃性および耐衝撃性の向上が図られる。
【0028】
このポリカーボネート系樹脂としては、特に限定されず、各種のものを用いることができるが、中でも、芳香族系ポリカーボネート系樹脂であることが好ましい。芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、その主鎖に芳香族環を備えており、これにより、隔壁32(ハニカムコア層30)の強度(耐衝撃性)をより優れたものとし得る。
【0029】
この芳香族系ポリカーボネート系樹脂は、例えば、ビスフェノールとホスゲンとの界面重縮合反応、ビスフェノールとジフェニルカーボネートとのエステル交換反応等により合成される。
【0030】
ビスフェノールとしては、例えば、ビスフェノールAや、下記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノール(変性ビスフェノール)等が挙げられる。
【0031】
【化1】
(式(1A)中、Xは、炭素数1~18のアルキル基、芳香族基または環状脂肪族基であり、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭素数1~12のアルキル基であり、mおよびnは、それぞれ0~4の整数であり、pは、繰り返し単位の数である。)
【0032】
なお、前記式(1A)に示すポリカーボネートの繰り返し単位の起源となるビスフェノールとしては、具体的には、例えば4,4’-(ペンタン-2,2-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ペンタン-3,3-ジイル)ジフェノール、4,4’-(ブタン-2,2-ジイル)ジフェノール、1,1’-(シクロヘキサンジイル)ジフェノール、2-シクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、2,3-ビスシクロヘキシル-1,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
特に、ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノールに由来する骨格を有するビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を主成分とするのが好ましい。かかるビスフェノール型ポリカーボネート系樹脂を用いることにより、隔壁32(ハニカムコア層30)は、さらに優れた強度を発揮するものとなる。そのため、隔壁32にポリカーボネート系樹脂が含まれることにより得られる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0034】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、-CH-CHCl-で表される基を繰り返し単位として、複数有するポリマーであり、具体的には、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体(重合性モノマー)との共重合体が挙げられ、また、後塩素化塩化ビニル重合体も含まれ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、単独重合体を用いるのが一般的である。
【0035】
なお、塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体との共重合体としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-アクリル共重合体等が挙げられる。
【0036】
また、単独重合体の塩素化度は、好ましくは50重量%以上75重量%以下、より好ましくは55重量%以上70重量%以下に設定される。これにより、得られる隔壁32(ハニカムコア層30)の発煙および発熱抑制効果を確実に得ることができる。
【0037】
また、ポリ塩化ビニル系樹脂は、数平均重合度が400以上1200以下のものであるのが好ましく、600以上1000以下のものであるのが好ましい。数平均重合度が前記上限値を超えると、他の構成材料との組み合わせ等によっては、可塑剤を添加しないと加工性が悪く、そのために可塑剤を多量に添加すると柔軟温度の低下をもたらすおそれがある。一方、平均重合度が前記下限値より低くなると、他の構成材料との組み合わせ等によっては、得られる隔壁32(ハニカムコア層30)の耐熱性が低下するおそれがある。
【0038】
隔壁32を構成する樹脂組成物中のポリカーボネート系樹脂またはポリ塩化ビニル系樹脂の含有量は、50重量%以上であれば、特に限定されないが、75重量%以上100重量%以下であるのが好ましく、85重量%以上100重量%以下であるのがより好ましい。ポリカーボネート系樹脂の含有量を前記範囲内とすることにより、隔壁32を優れた強度を発揮するものとし得る。
【0039】
また、樹脂組成物は、必要に応じて、上述した、主材料としての熱可塑性樹脂の他に、例えば、紫外線吸収剤、熱線吸収剤、可塑剤や、酸化防止剤、滑剤、着色剤、フィラー等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0040】
なお、紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、トリアジン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系の紫外線吸収剤が挙げられ、これらのうち1種または2種を組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、熱線吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、炭素粉末、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、ITO、ATO等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
さらに、可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
この隔壁32は、図2に示すように、本実施形態では、ハニカムコア層30の厚さ方向に直交する直交方向(左右方向)における、隔壁32の厚みが下面(一方の面)側から上面(他方の面)側に向かって漸減している、テーパー状をなしている。すなわち、隔壁32の内周面は、その内径が上面側から下面側に向かって漸減するロート状をなしており、上面側から下面側に向かって傾斜する傾斜面を構成している。これにより、隔壁32に優れた強度を発揮させつつ、後述する構造体製造装置500を用いてハニカム構造体1を製造する際に、一体的に形成されたハニカムコア層30と第1シート層10とを、構造体製造装置500が備える成形金型140から比較的容易に離脱させることができる。
【0044】
また、隔壁32は、その平均厚みおよび平均高さ、すなわちサイズが、ハニカム構造体1に付与すべき、軽量性、断熱性および防音性等の各種特性に応じて、適宜、設定されるが、例えば、隔壁32の平均高さ、すなわちハニカムコア層30の平均厚さは、1.5mm以上30.0mm以下であるのが好ましく、3.0mm以上15.0mm以下であるのがより好ましい。さらに、隔壁32の平均厚みは、0.5mm以上5.0mm以下であるのが好ましく、1.5mm以上4.0mm以下であるのがより好ましい。隔壁32のサイズを前記のような大きさに設定することで、ハニカム構造体1に付与するべき特性を、優れたものとして確実に付与することができる。また、隔壁32のサイズが前記のような大きさに設定されているハニカムコア層30を備えるハニカム構造体1であれば、後述する構造体製造装置500を用いて確実に製造することができる。
【0045】
さらに、隔壁32における、下面側の端部での厚みT1と上面側の端部での厚みT2との比T1/T2は、1.1以上2.0以下であるのが好ましく、1.2以上1.5以下であるのがより好ましい。これにより、隔壁32を、テーパー状をなすものとすることで得られる効果を、より顕著に発揮させることができる。
【0046】
セル31は、ハニカムコア層30において、隔壁32により平面視形状がハニカム形状をなして複数のものに区画されており、1つのセル31は、平面視形状が六角形状をなして、ハニカムコア層30の厚さ方向に貫通した孔部を構成している。かかる形状をなす孔部としてのセル31を、ハニカムコア層30が複数備えることで、ハニカムコア層30ひいてはハニカム構造体1の強度を維持しつつ、ハニカム構造体1に、軽量性、断熱性および防音性等の各種特性を付与することができる。
【0047】
また、セル31は、その内接円の直径D、すなわちセル31のサイズが、ハニカム構造体1に付与すべき、軽量性、断熱性および防音性等の各種特性に応じて、適宜、設定されるが、例えば、直径Dは、3.0mm以上50.0mm以下であるのが好ましく、5.0mm以上25.0mm以下であるのがより好ましい。直径Dを前記のような大きさに設定することで、ハニカム構造体1に付与するべき特性を、優れたものとして確実に付与することができる。また、セル31のサイズが前記のような大きさに設定されているハニカムコア層30を備えるハニカム構造体1であれば、後述する構造体製造装置500を用いて確実に製造することができる。
【0048】
<第1シート層>
第1シート層10(被覆層)は、図1図2に示すように、全体形状がシート状をなし、ハニカムコア層30の下面(一方の面)を被覆するように積層され、ハニカムコア層30(特に、セル31)を保護する保護層として機能する。これにより、特に、ハニカムコア層30の下側から作用する応力により、ハニカムコア層30(セル31)が変形してしまうのを的確に抑制または防止することができる。また、セル31内に対する水やホコリ等の異物の浸入を的確に抑制または防止することができる。
【0049】
また、この第1シート層10は、本発明では、ハニカムコア層30が備える隔壁32と一体的に形成されている。そのため、ハニカムコア層30と第1シート層10とを備えるハニカム構造体1を、より優れた強度を備えるものとし得る。なお、以下では、第1シート層10と隔壁32(ハニカムコア層30)とが積層して一体的に形成された積層体を「積層体13」と言うこともある。
【0050】
第1シート層10は、このように、隔壁32(ハニカムコア層30)と一体的に形成されていることから、前述した隔壁32を構成する樹脂組成物と同様のもので構成される。
【0051】
この第1シート層10の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。第1シート層10の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、ハニカムコア層30を保護する保護層として機能を、第1シート層10に確実に付与することができる。また、第1シート層10の平均厚さが前記のような大きさに設定されている第1シート層10を備えるハニカム構造体1であれば、後述する構造体製造装置500を用いて確実に製造することができる。
【0052】
<第2シート層>
第2シート層20(被覆層)は、図1図2に示すように、全体形状がシート状をなし、ハニカムコア層30の上面(他方の面)を被覆するように積層され、ハニカムコア層30(特に、セル31)を保護する保護層として機能する。これにより、特に、ハニカムコア層30の上側から作用する応力により、ハニカムコア層30(セル31)が変形してしまうのを的確に抑制または防止することができる。また、セル31内に対する水やホコリ等の異物の浸入を的確に抑制または防止することができる。
【0053】
また、この第2シート層20は、第1シート層10とは異なり、ハニカムコア層30が備える隔壁32に対して別体として形成されており、ハニカムコア層30(隔壁32)に、融着もしくは接着剤層を介した接着により接合されている。
【0054】
この第2シート層20は、ハニカム構造体1の用途や、ハニカム構造体1に付与すべき各種特性に応じて、その種類が選択され、例えば、樹脂シート、金属シートまたはカーボン繊維シート等で構成される。
【0055】
第2シート層20を、樹脂シートで構成する場合、この樹脂シートとしては、例えば、前述した隔壁32で挙げた樹脂組成物で構成されるものが好ましく用いられる。また、金属シートで構成する場合、金属シートの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、ニッケルの他、これらの金属のうちのいずれかを主材料として含有する合金等が挙げられる。
【0056】
また、接着剤層を構成する接着剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリイミド系接着剤、フェノール系接着剤等が挙げられる。
【0057】
この第2シート層20の平均厚さは、特に限定されないが、例えば、0.2mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.5mm以上2.5mm以下であることがより好ましい。第2シート層20の平均厚さをかかる範囲内に設定することにより、ハニカムコア層30を保護する保護層として機能を、第2シート層20に確実に付与することができる。
【0058】
なお、ハニカム構造体1は、図1図2に示すように、1つのハニカムコア層30を、2つのシート層10、20で、その上面および下面においてサンドイッチしたサンドイッチ構造を有する場合について説明したが、この場合に限定されず、ハニカム構造体1の用途によっては、ハニカム構造体は、第2シート層20の形成が省略され、ハニカムコア層30と第1シート層10とが一体的に積層して形成された積層体13単独で構成されるものであってもよい。
【0059】
また、このハニカム構造体1は、例えば、壁材、ドア部材、間仕切り部材のような建築用材料、自動車、電車、航空機のような移動体が備える移動体用内装材、家電が備える家電用内装材、家具、台所製品が備える化粧板、電磁波を遮断する電磁波シールドシート等、各種の用途に用いられる。
【0060】
<ハニカム構造体の製造方法>
以上のような構成をなすハニカム構造体1は、本発明では、押出法が適用された構造体製造装置500を用いて製造することができるが、この構造体製造装置500を用いたハニカム構造体1の製造方法を説明するのに先立って、まず、構造体製造装置500について説明する。
【0061】
図4は、図1に示すハニカム構造体を押出法を適用して製造する構造体製造装置の斜視図、図5は、図4に示す構造体製造装置の側面図である。なお、以下の説明では、図4図5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0062】
図4図5に示す構造体製造装置500は、シート供給部700と、シート成形部800と、シート接合部900とを有している。
【0063】
シート供給部700は、押出機210と、Tダイ600とを備え、押出機210の溶融樹脂吐出部211に接続された配管212を介してTダイ600が接続されている。
【0064】
このシート供給部700では、ハニカムコア層30および第1シート層10を構成する樹脂組成物(構成材料)が押出機210に収納されている。そして、溶融状態または軟化状態のハニカムコア層30および第1シート層10を構成する樹脂組成物からなる溶融シート150が、配管212およびTダイ600(が有する開口部601)を介して、シート成形部800に連続的に供給される。このように押出法により溶融シート150を得る構成とすることで、形成された溶融シート150の厚みを安定化させることができる。
【0065】
シート成形部800は、タッチロール110と、冷却ロール120と、後段冷却ロール130と、成形金型140とを有している。
【0066】
なお、各ロール110~130は、それぞれ、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されている。また、これらのロール110~130は、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いており、ロール110~130の順で互いに離間して配置されている。さらに、各ロール110~130は、例えば構造体製造装置500全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持され、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらの回転により、溶融または軟化された溶融シート150が、タッチロール110と冷却ロール120との間から、冷却ロール120と後段冷却ロール130との間へと、順次、連続的に送り込まれるようになっている。
【0067】
タッチロール110と冷却ロール120との間の離間距離は、形成すべき積層体13の厚さの大きさに設定されており、これらロール110、120の間に、溶融シート150が送り込まれることで、溶融シート150の厚さが目的とする厚さに設定される。したがって、タッチロール110と冷却ロール120との間の離間距離を所定の大きさに設定することで、溶融シート150を、所望の大きさの厚さに設定されているものとし得る。
【0068】
タッチロール110は、外周面が平滑性を有するロールであり、冷却ロール120に対向配置されている。このようなタッチロール110に対して、タッチロール110と冷却ロール120との間で、溶融シート150を押し当てることにより、溶融シート150の厚さが目的とする厚さに設定されるとともに、その第1面11が平坦化される。
【0069】
冷却ロール120は、外周面に成形金型140が設けられたロールであり、溶融状態とされた溶融シート150を冷却する冷却手段を備える。また、成形金型140は、セル31(すなわち、溶融シート150に形成すべき凹部)の形状に対応した凸部(突起)を複数備えるロール状をなす金型であり、冷却ロール120のほぼ中央部において、冷却ロール120の外周面に沿って取り付けられている。このような成形金型140が設けられた冷却ロール120に対して、タッチロール110と冷却ロール120との間で、溶融シート150を押し当てることにより、溶融シート150の厚さが目的とする厚さに設定されるとともに、成形金型140が備える凸部の形状に対応して、その第2面12に、隔壁32で区画された複数のセル31が形成される。そして、この冷却ロール120と後段冷却ロール130との間に送り込まれるまでの間、冷却ロール120に接触することで、溶融シート150が冷却される。
【0070】
このような成形金型140が設けられた冷却ロール120を用いることで、セル31の形状に対応して設けられた複数の凸部(突起)を備える成形金型140が溶融シート150に押し当てられることにより、複数のセル31が一括して成形されることとなる。そのため、複数のセル31を区画する隔壁32は、溶融シート150において、一体的に形成されたものとなる。このように、構造体製造装置500を用いることにより、溶融シート150に対して、冷却ロール120に設けられた成形金型140を押し当てるだけで、かかる構成をなすセル31および隔壁32を成形することができる。そのため、前述した背景技術のように、六角形状の筒体を備える壁部同士を、接着剤を用いて接合するプロセスを省略することができる。したがって、生産プロセスが煩雑となることなく、換言すれば、生産コストの増大を招くことなく、ハニカム構造体1を製造することができる。
【0071】
また、溶融シート150に成形されるセル31および隔壁32のサイズは、成形金型140が備える凸部のサイズに応じて決定される。そのため、成形金型140として、各種のサイズ(大きさ)となっている凸部を備えるものを予め用意しておくことで、ハニカム構造体1に付与すべき各種特性に応じて、所望のサイズを有するセル31および隔壁32を備える溶融シート150ひいては積層体13(ハニカムコア層30)を成形することができる。
【0072】
さらに、本実施形態では、セル31の形状に対応して設けられた成形金型140は、この成形金型140が備える凸部(突起)が、セル31を区画する隔壁32と同様に、デーパー状をなしているものが用いられる。そのため、溶融シート150を冷却ロール120すなわち成形金型140に押し当てて、溶融シート150にセル31を形成した後における、溶融シート150からの成形金型140すなわち成形金型140が備える凸部の離脱を、より円滑に実施することができる。
【0073】
後段冷却ロール130は、外周面が平滑性を有するロールであり、溶融シート150を冷却する冷却手段を備え、タッチロール110および冷却ロール120の後段に配置されている。このような後段冷却ロール130に、冷却ロール120と後段冷却ロール130との間に溶融シート150を送り込んだ後に、溶融シート150を接触させることで、第1面11が平坦化され、かつ、隔壁32で区画された複数のセル31が第2面12に形成された溶融シート150がより確実に冷却され、その結果、第1シート層10とハニカムコア層30とが一体的に形成された積層体13が形成される。
【0074】
以上のような構成をなすシート成形部800において、隔壁32で区画された複数のセル31が形成された溶融シート150が冷却されることで、第1シート層10とハニカムコア層30とが一体的に形成された積層体13が、搬送方向に沿って連続的に、シート接合部900に対して送り出されることとなる。
【0075】
なお、本実施形態では、冷却ロール120が冷却手段を有し、タッチロール110が冷却手段を有しない場合について説明したが、かかる場合に限定されず、冷却ロール120およびタッチロール110のうちの少なくとも一方が冷却手段を有していればよく、タッチロール110が冷却手段を有し、冷却ロール120が冷却手段を有していなくてもよいし、冷却ロール120とタッチロール110との双方が冷却手段を有していてもよい。
【0076】
シート接合部900は、第2シート層20を巻回する巻出しロール310と、積層体13と第2シート層20とが供給される圧着ロール320、330とを有している。
【0077】
なお、各ロール310~330は、それぞれ、例えば、ステンレス鋼等のような金属材料で構成されている。また、これらのロール310~330は、回動軸(中心軸)同士が同じ方向を向いて配置されている。さらに、各ロール310~330は、例えば構造体製造装置500全体を支持するフレーム(図示せず)に回動可能に支持されている。これらのうち圧着ロール320、330は、それぞれ図示しないモータ(駆動手段)により、それぞれ単独回転するように構成されており、これらの回転により、シート成形部800から積層体13が、さらに、巻出しロール310から第2シート層20が、それぞれ連続的に送り込まれるようになっている。
【0078】
巻出しロール310は、成形された積層体13のシート成形部800からの搬送方向の下流側に位置して、第2シート層20がロール状に巻回されており、この第2シート層20を、搬送方向の最下流側に位置する圧着ロール320、330に送り出すロールである。
【0079】
圧着ロール320、330は、それぞれ、供給された積層体13と第2シート層20とを挾持し得る程度に離間しており、積層体13の第2面12側に第2シート層20を積層した状態で、これら同士を圧着することで積層体13に第2シート層20が貼付され、これにより、ハニカムコア層30が第1シート層10と第2シート層20とで挟持されたハニカム構造体1を得ることができる。なお、本実施形態では、巻出しロール310に巻回された第2シート層20の一方の面には接着剤層(図示せず)が予め形成されていることから、この接着剤層が介在した状態で、積層体13と第2シート層20とを圧着ロール320、330で圧着することにより、積層体13(ハニカムコア層30)と第2シート層20とを接合することができる。
【0080】
以上のような構造体製造装置500を用いたハニカム構造体の製造方法により、以下に示すようにして、ハニカム構造体1が製造される。
【0081】
ハニカム構造体の製造方法は、帯状をなすシートとされた溶融状態または軟化状態の溶融シート150を押し出す押出工程と、溶融シート150の第1面11を平坦化し、第2面12にセル31を成形する成形工程と、セル31が成形された溶融状態または軟化状態の溶融シート150を冷却することで積層体13を得る冷却工程と、積層体13に第2シート層20を接合することでハニカム構造体1を得る接合工程とを有している。
【0082】
以下、ハニカム構造体1を製造するための各工程について詳述する。
(押出工程)
まず、帯状をなすシートとされた溶融状態または軟化状態の溶融シート150を押し出す。
【0083】
この押出工程では、ハニカムコア層30および第1シート層10を構成する樹脂組成物(構成材料)が押出機210に収納されている。そして、溶融状態または軟化状態のハニカムコア層30および第1シート層10を構成する樹脂組成物からなる溶融シート150(シート)が、配管212を介して、Tダイ600が有する開口部601から押し出される。これにより、帯状をなすシートとされた溶融状態または軟化状態の溶融シート150がシート成形部800、より詳しくは、シート成形部800が備えるタッチロール110と冷却ロール120との間に対して連続的に送り出される。
【0084】
換言すれば、溶融状態または軟化状態の溶融シート150が、開口部601から押し出されるようにして、押出法で成膜される。
【0085】
(成形工程)
次に、溶融シート150の第1面11を平坦化し、第2面12にセル31を成形するとともに、溶融シート150を所定の厚さに設定する。これにより、第2面12にセル31が成形された溶融シート150が成形される。
【0086】
この成形工程は、タッチロール110と冷却ロール120との間に、溶融シート150を供給することにより行われる。
【0087】
この際、タッチロール110の外周面は、平滑性を有するロール状をなしている。そのため、溶融シート150の第1面11は、平滑性を有する外周面に押し当てられることにより、平坦化される。
【0088】
また、冷却ロール120の外周面には、セル31の形状に対応した凸部を複数備える成形金型140がロール状をなして設けられている。そのため、溶融シート150の第2面12は、この成形金型140が設けられた外周面に押し当てられることにより、隔壁32で区画された複数のセル31が形成される。
【0089】
このような成形金型140が設けられた冷却ロール120を用いることで、セル31の形状に対応して設けられた複数の凸部(突起)を備える成形金型140が溶融シート150に押し当てられることにより、複数のセル31が一括して成形されることとなる。そのため、複数のセル31を区画する隔壁32は、溶融シート150において、一体的に形成されたものとなる。このように、構造体製造装置500を用いることにより、溶融シート150に対して、冷却ロール120に設けられた成形金型140を押し当てるだけで、かかる構成をなすセル31および隔壁32を成形することができる。そのため、前述した背景技術のように、六角形状の筒体を備える壁部同士を、接着剤を用いて接合するプロセスを省略することができる。したがって、生産プロセスが煩雑となることなく、換言すれば、生産コストの増大を招くことなく、ハニカム構造体1を製造することができる。
【0090】
また、溶融シート150に成形されるセル31および隔壁32のサイズは、成形金型140が備える凸部のサイズに応じて決定される。そのため、成形金型140として、各種のサイズ(大きさ)となっている凸部を備えるもののうちから、ハニカム構造体1に付与すべき各種特性に応じて、形成すべきセル31に対応したサイズの凸部を備えるものを選択するようにすることで、所望のサイズを有するセル31および隔壁32を備える溶融シート150ひいては積層体13(ハニカムコア層30)を成形することができる。
【0091】
また、冷却ロール120の外周面とタッチロール110の外周面との離間距離は、形成すべき第1シート層10とハニカムコア層30とが一体化された積層体13の厚さに設定され、この離間距離を所定の大きさに適宜設定することで、所望の厚さの溶融シート150ひいては積層体13を得ることができる。
【0092】
このように、本工程において、冷却ロール120およびタッチロール110はそれぞれ、第1面11を平坦化するためおよび第2面12にセル31を形成するため、ならびに、溶融シート150の厚さを設定するために用いられる。
【0093】
(冷却工程)
次に、第1面11が平坦化され、第2面12にセル31が形成された、溶融状態または軟化状態の溶融シート150を冷却する。
【0094】
これにより、第1シート層10とハニカムコア層30とが、第1シート層10を下側として積層して一体的に形成された積層体13が得られる。
【0095】
この冷却工程は、溶融シート150を、冷却ロール120と後段冷却ロール130との間に供給することにより行われる。
【0096】
これにより、溶融シート150は、冷却ロール120に、冷却ロール120が180°回転するまで溶融シート150の第1面11が当接し、後段冷却ロール130に、後段冷却ロール130が90°回転するまで溶融シート150の第2面12が当接する。
【0097】
このように、溶融シート150は、冷却ロール120と後段冷却ロール130とにより冷却がなされ、冷却ロール120と後段冷却ロール130と間において、冷却ロール120から後段冷却ロール130へと受け渡しがなされるが、この受け渡しの際に、冷却ロール120に設けられた成形金型140が備える凸部から、セル31が成形された溶融シート150が離脱する。このとき、本実施形態では、成形金型140が備える凸部(突起)は、セル31を区画する隔壁32と同様に、その形状がデーパー状をなしているため、前記離脱を、より円滑に実施することができる。
【0098】
ここで、本実施形態では、冷却ロール120および後段冷却ロール130のいずれもが冷却手段を備えているため、前記のような、溶融シート150の各ロール120、130との当接(接触)により、第2面12にセル31が形成された溶融シート150が冷却される。その結果、第1シート層10とハニカムコア層30とが積層して一体的に形成された積層体13が得られる。
【0099】
なお、本実施形態では、各冷却ロール120、130に、溶融シート150の第1面11および第2面12が交互に当接した状態で、溶融シート150が冷却される。そのため、第1面11または第2面12側に反りが生じた状態で溶融シート150が冷却されてしまうのを確実に防止することができる。
【0100】
このように、本工程において、冷却手段を備える各冷却ロール120、130は、溶融シート150を冷却するために用いられる。
【0101】
以上のような押出工程~冷却工程を経ることで、第1シート層10とハニカムコア層30とが積層して一体的に形成された積層体13を得ることができる。
【0102】
(接合工程)
次に、積層体13が備えるハニカムコア層30と、第2シート層20とを接合する。すなわち、第2シート層20を、積層体13のハニカムコア層30側の上面に接合する。
【0103】
これにより、1つのハニカムコア層30が、下面側において第1シート層10で、上面側において第2シート層20でサンドイッチ(挟持)されたサンドイッチ構造を有するハニカム構造体1が得られる。
【0104】
この接合工程は、シート成形部800から積層体13を、また、巻出しロール310から第2シート層20を、積層体13を下側とし第2シート層20を上側として、それぞれ連続的に圧着ロール320、330同士の間に送り込むことにより行われる。
【0105】
これにより、積層体13と第2シート層20とが、積層体13を下側とし第2シート層20を上側とした状態で、圧着ロール320、330同士の間で圧着されることから、第2シート層20に予め設けられた接着剤層が積層体13と第2シート層20との間に介在した状態で、積層体13に第2シート層20が貼付され、その結果、ハニカムコア層30が第1シート層10と第2シート層20とで挟持された構成をなすハニカム構造体1が連続的に得られることとなる。
【0106】
以上のような押出工程~接合工程を経ることで、ハニカムコア層30が第1シート層10と第2シート層20とで挟持された構成をなしているハニカム構造体1が連続的に形成される。
【0107】
以上、本発明のハニカム構造体について図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、ハニカム構造体を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0108】
また、ハニカム構造体は、ハニカムコア層と第2シート層との間に、前記実施形態では、接着剤層(粘着層)が介在したが、ハニカムコア層と第2シート層とを融着する場合のように、接着剤層のような他の層が介在することなく、ハニカムコア層と第2シート層とが直接、接合されていてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 ハニカム構造体
10 第1シート層
11 第1面
12 第2面
13 積層体
20 第2シート層
30 ハニカムコア層
31 セル
32 隔壁
110 タッチロール
120 冷却ロール
130 後段冷却ロール
140 成形金型
150 溶融シート
210 押出機
211 溶融樹脂吐出部
212 配管
310 巻出しロール
320 圧着ロール
330 圧着ロール
500 構造体製造装置
600 Tダイ
601 開口部
700 シート供給部
800 シート成形部
900 シート接合部
D 直径
T1 厚み
T2 厚み
図1
図2
図3
図4
図5