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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077948
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】無人搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20230530BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230530BHJP
【FI】
B60K1/00
G05D1/02 K
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191464
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000106944
【氏名又は名称】シナノケンシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市来 浩一
【テーマコード(参考)】
3D235
5H301
【Fターム(参考)】
3D235AA17
3D235BB17
3D235BB18
3D235CC12
3D235EE13
3D235HH12
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301HH10
5H301HH19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車体の低床化を図り荷物の載置スペースを拡大すると共に走行面に傾斜や凹凸が存在しても駆動輪が浮き上がることなく安定した走行が可能な無人搬送装置を提供する。
【解決手段】ベース部2に支持された搭載部4に荷物が搭載され指定された地点まで走行して搬送する無人搬送装置1であって、第1車輪支持部8には第1補助車輪6及び駆動車輪5が各々支持されており、第1車輪支持部8は、ベース部2に設けられた揺動支持部9に揺動軸8aを介して揺動可能に支持されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部に支持された搭載部に荷物が搭載され指定された地点まで走行して搬送する無人搬送装置であって、
駆動モータにより回転駆動される一対の駆動車輪と、
前記駆動車輪を中心に前記ベース部の一端側に設けられた第1車輪支持部に旋回可能に各々支持された一対の第1補助車輪と、
前記ベース部の他端側に設けられた第2車輪支持部に旋回可能に各々支持された一対の第2補助車輪と、を備え、
前記第1車輪支持部には前記第1補助車輪及び前記駆動車輪が各々支持されており、前記1車輪支持部は、前記搭載部と前記ベース部の間で当該ベース部に揺動可能に支持されていることを特徴とする無人搬送装置。
【請求項2】
前記第1車輪支持部は、一端側に第1補助車輪が旋回可能に支持され、他端側に前記駆動車輪が回転可能に支持されており、前記第1車輪支持部は前記ベース部上に設けられた揺動支持部に揺動軸を介して揺動可能に軸支されている請求項1記載の無人搬送装置。
【請求項3】
前記揺動軸は前記第1車輪支持部と前記ベース部との間に設けられている請求項2記載の無人搬送装置。
【請求項4】
前記第1車輪支持部上で揺動軸位置から第1補助車輪側端部位置までの距離より前記揺動軸位置から駆動車輪側端部位置までの距離が長くなるように前記ベース部に前記第1車輪支持部が揺動可能に支持されている請求項2又は請求項3記載の無人搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部に支持された搭載部に荷物が搭載され指定された地点まで搬送する無人搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造現場等においては、部品などを工程間で無人搬送したり倉庫に搬入したりするのに無人搬送装置が用いられている。製造現場では工程変更によるレイアウト変更が頻繁に行われ、かつ、様々な製造装置が配置されるため、搬送ラインが狭く、経路も複雑となりやすいため小回りがきき、既存工場にも導入が容易な無人搬送装置、特にAMR(Autonomous Mobile Robot:自律搬送ロボット)が注目されている。
【0003】
従来無人搬送装置として以下の装置が提案されている。
走行駆動部を有する台車本体と、荷物が載せられる載置台と、載置台を、上下方向の軸を中心に回転させる回転装置と、搬送車を制御するコントローラとを備える。載置台及び回転装置は台車本体に対して昇降可能に支持されている。台車本体の中央部に左右に並ぶ2つの駆動車輪が配置され、その前後に従動車輪(キャスター車輪)が配置される。前後の従動輪のそれぞれは、例えば左右に一つずつ配置される。台車本体に上向きに取り付けられたカメラにより載置台に載置された荷物の位置ずれを検出して搬送車の移動を規制している(特許文献1:特開2021-17309号公報)。
【0004】
しかしながら無人搬送装置が配備される環境は様々であり、走行面は平坦面とは限らず、傾斜面や凹凸面である場合もある。例えば傾斜している場合、進入時、前後従動車輪は接地しているものの中央部の駆動車輪が浮き上がって走行不能となるおそれがある。
このため、以下の車輪型走行装置が提案されている。駆動車輪と補助車輪の双方を支持する第1車輪支持部と、補助車輪のみが支持される第2車輪支持部とを垂直方向に回転自在に連結され、駆動車輪と補助車輪が自立可能な位置に配置され第2車輪支持部上には、1個、あるいは横方向に並んだ複数の補助車輪のみが単独では自立不能に配置されている。第2車輪支持部上には荷物が載置され荷重が負荷される。第1車輪支持部と第2車輪支持部との連結部が、駆動車輪と第1車輪支持部上の補助車輪との中間位置に設定されるために、第1、第2のいずれの車輪支持部上に荷重が付加されても、第1車輪支持部の駆動車輪と補助車輪の双方に走行路への押圧力が負荷される。これにより、傾斜面の屈曲部が第1車輪支持部の前後いずれに配置されても、駆動車輪が、走行路面に所定圧力で接地することが保証されるため、走行不能状態と急斜面登坂による転倒を防止している(特許文献2:特開2005-313720号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-17309号公報
【特許文献2】特開2005-313720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の無人搬送装置は、台車本体に載置台及び回転装置が昇降可能に支持されており、特許文献2の無人搬送装置は、駆動車輪と補助車輪の双方を支持する第1車輪支持部と、補助車輪のみが支持される第2車輪支持部を垂直方向に回転自在に連結されているため、いずれも車高が高くなり坂道や凹凸面を走行する際に、載置台や第2車輪支持部に載置した荷物が荷崩れするおそれがある。また、特許文献2の無人搬送装置は、第1車輪支持部と第2車輪支持部が高さ方向に回転自在に連結されているため、荷物の載置スペースが限られている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、車体の低床化を図り荷物の載置スペースを拡大すると共に、走行面に傾斜や凹凸が存在しても駆動車輪が浮き上がることなく安定した走行が可能な無人搬送装置を提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
ベース部に支持された搭載部に荷物が搭載され指定された地点まで走行して搬送する無人搬送装置であって、駆動モータにより回転駆動される一対の駆動車輪と、前記駆動車輪を中心に前記ベース部の一端側に設けられた第1車輪支持部に旋回可能に各々支持された一対の第1補助車輪と、前記ベース部の他端側に設けられた第2車輪支持部に旋回可能に各々支持された一対の第2補助車輪と、を備え、前記第1車輪支持部には前記第1補助車輪及び前記駆動車輪が各々支持されており、前記1車輪支持部は、前記搭載部と前記ベース部の間で当該ベース部に揺動可能に支持されていることを特徴とする。
このように、第1補助車輪及び駆動車輪を支持する第1車輪支持部が、ベース部に揺動可能に支持されているため、走行面に傾斜や凹凸が存在しても駆動車輪が浮き上がることなく安定した走行が可能となる。また、第1車輪支持部は、搭載部とベース部との間に配置されるため車体の低床化を図ることができ、ベース部に支持された搭載部を荷物積載用に広く使用することができる。
【0009】
前記第1車輪支持部は、一端側に第1補助車輪が旋回可能に支持され、他端側に前記駆動車輪が回転可能に支持されており、前記第1車輪支持部は前記ベース部上に設けられた揺動支持部に揺動軸を介して揺動可能に軸支されていることが好ましい。
これにより、走行面に傾斜や凹凸が存在しても、駆動車輪は接地したまま第1車輪支持部が揺動軸を介して揺動して第1補助車輪が走行面に追従するので駆動車輪が走行不能になることなく安定した走行が可能となる。
【0010】
前記揺動軸は前記第1車輪支持部と前記ベース部との間に設けられていることが好ましい。
これにより、ベース部と搭載部の間の空間を利用して第1車輪支持部が揺動するので、車高を抑えて低床化を図ることができる。
【0011】
前記第1車輪支持部上で揺動軸位置から第1補助車輪側端部位置までの距離より前記揺動軸位置から駆動車輪側端部位置までの距離が長くなるように前記ベース部に前記第1車輪支持部が揺動可能に支持されていてもよい。
これにより、第1補助車輪側に比べて駆動車輪側に常時荷重がかかり易くなるため、駆動車輪の接地状態を維持して安定した走行を実現できる。
【0012】
前記ベース部には、撮像カメラ及びレーザー距離センサが設けられており、これらからの入力により環境地図作成及び自己位置推定を同時に行いながら自律走行するようにしてもよい。
この場合も、荷物を搭載する搭載部のスペースを広く確保しつつSLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と環境地図作成の同時実行)技術を適用して自律搬送動作の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
車体の低床化を図り荷物の載置スペースを拡大すると共に、走行面に傾斜や凹凸が存在しても駆動車輪が浮き上がることなく安定した走行が可能な無人搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】無人搬送装置の斜視図である。
図2図1の無人搬送装置の右側板及び駆動車輪を取り外した側面図である。
図3図1の無人搬送装置の右側板及び前側板を取り外した斜視図である。
図4図3の無人搬送装置の正面図である。
図5図3の無人搬送装置の搭載部を取り外した斜視図である。
図6図5の無人搬送装置の平面図である。
図7】無人搬送装置の制御系のブロック構成図である。
図8】無人搬送装置の走行面に応じた走行動作を例示する状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る無人搬送装置の概略構成について図1乃至図7を参照して説明する。無人搬送装置は、搭載部に作業者又は自動で荷物が積み込まれ、指定された場所まで走行し、作業者又は自動で荷卸しされる無軌道車両である。無人搬送装置には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping:自己位置推定と環境地図作成の同時実行)が搭載されている。SLAMは、入力センサの違いによって、大きく3種類に分類される。LiDAR(レーザー距離センサ)を入力として用いたLiDER SLAM、撮像カメラを用いたVisual SLAM、ToFセンサなどからの測距情報を用いたDepth SLAMがある。本実施例の無人搬送装置は、後述するようにLiDAR(レーザー距離センサ)による座標情報と撮像カメラの画像情報を組み合わせて用いることで、自律搬送動作の信頼性を高めている。
【0016】
先ず、図2に示すように、無人搬送装置1は、ベース部2に支柱3を介して搭載部4が支持されている。ベース部2の左右両側には、中央部に一対の駆動車輪5が設けられ、その前後に一対の第1補助車輪6(前輪)と一対の第2補助車輪7(後輪)の合計6輪が設けられている(図6参照)。
図5に示すように、一対の駆動車輪5は駆動モータ11a,11bにより各々回転駆動される。ベース部2には、一対の駆動車輪5を中心にベース部2の一端側(前方側)に一対の第1補助車輪6が各々設けられ、ベース部2の他端側(後方側)に一対の第2補助車輪7が各々設けられている。
【0017】
図2に示すように、第1補助車輪6(前輪)は、細長い板状の第1車輪支持部8の一端側にキャスター6aによって旋回可能に支持されている。第1車輪支持部8の他端側にはモータ取付板20に駆動モータ11aが一体に組み付けられている駆動モータ11aは、駆動軸11cをモータ取付板20より外側へ延設されている。駆動軸11cには駆動車輪5が嵌め込まれている。
【0018】
第1車輪支持部8は、搭載部4とベース部2との間で当該ベース部2に設けられた揺動支持部9に揺動軸8aを介して揺動可能に支持されている。ベース部2には揺動支持部9が突設されている。揺動支持部9には軸孔9aが穿孔されている。第1車輪支持部8のベース部2に対向する対向面には軸支持板8bが突設されている。この軸支持板8bには揺動軸8aが水平外向きに突設されている。第1車輪支持部8は、揺動軸8aを揺動支持部9の軸孔9aに嵌め込まれ、揺動軸8aを中心として揺動可能に支持されている。
【0019】
ここで、図8(A)~(C)を参照して無人搬送装置1の走行面に応じた走行動作を説明する。無人搬送装置1は要部の構成のみを示しており、図の右側に向かって走行しているものとする。図8(A)は走行面が平地である場合の無人搬送装置1の走行状態を表している。第1車輪支持部8とベース部2は平行となり、全ての車輪が走行面に接地している。
図8(B)は走行面が上り坂である場合の無人搬送装置1の走行状態を表している。第1車輪支持部8はベース部2に対して揺動軸8aを中心として右肩上がりに揺動し、全ての車輪が走行面に接地している。図8(C)は走行面が下り坂である場合の無人搬送装置1の走行状態を表している。第1車輪支持部8はベース部2に対して揺動軸8aを中心として右肩下がりに揺動し、全ての車輪が走行面に接地している。
【0020】
図8(A)~(C)を参照してわかるように、第1補助車輪6及び駆動車輪5を支持する第1車輪支持部8が、ベース部2に設けられた揺動支持部9に揺動軸8aを介して揺動可能に支持されているため、走行面に傾斜や凹凸が存在しても第1車輪支持部8がベース部2上で揺動して第1補助車輪6が走行面に追従するので駆動車輪5は接地したまま走行不能となることなく、段差部や傾斜面をスムーズに乗り越えて安定した走行が可能となる。また、第1車輪支持部8は、搭載部4とベース部2との間に配置されるため車体の低床化を図ることができ、ベース部2に支持された搭載部4を荷物搭載用として広く使用することができる。
また、揺動軸8aは第1車輪支持部8とベース部2との間に設けられているので、ベース部2と搭載部4の間の空間を利用して第1車輪支持部8が揺動するので、車高を抑えて低床化を図ることができる。
【0021】
また、第1車輪支持部8上の揺動軸8aの位置から第1補助車輪6側の端部位置までの距離L1より揺動軸8aの位置から駆動車輪5側の端部位置までの距離L2が長くなる(L1<L2)ようにベース部2に対して支持されている。これにより、第1補助車輪6側に比べて駆動車輪5側に常時大きな荷重がかかり易くなるため、駆動車輪5の接地状態を維持し易くなる。
【0022】
第2補助車輪7は、ベース部2の左右に設けられた第2車輪支持部10にキャスター7aによって旋回可能に各々支持されている。第1補助車輪6と第2補助車輪7は、何れもキャスター付の従動輪であって、左右の駆動車輪5の回転速度の相違によって旋回して小回りが利くようになっている。本実施例では、最小回転径が800mmで、360°旋回が可能となっている。
【0023】
また、図3に示すように、ベース部2には、駆動車輪5、第1補助車輪6(前輪)及び第2補助車輪7(後輪)が設けられた位置に切欠き2a及び抜孔2bが設けられており、無人搬送装置1の低床化が図られている。図1に示すよう、搭載部4はベース部2に支持された平坦面に、作業者又は自動で荷物が搭載される。
【0024】
図2に示すように、一対の駆動車輪5は、駆動モータ11a,11bの駆動軸11cに連結されて回転駆動される。駆動モータ11a,11bには、後述するようにモータの回転センサ16a,16bが各々設けられており、更に移動精度を高める場合には、ロータリエンコーダ(図示せず)を設けてもよい(図7参照)。このモータの回転信号により、左右の駆動車輪5の回転速度や回転位置が後述する制御部に送信される。
【0025】
ベース部2の前方には、撮像カメラ12(環境把握用カメラ)が設けられている。撮像カメラ12は、周囲の環境を撮像する他に二次元コードなどを読み取る。撮像カメラ12は後述するレーザー距離センサ13がとらえられない上下の障害物を検出する。撮像カメラの種類としては単眼カメラ (広角カメラ、魚眼カメラ、全天球カメラ)、複眼カメラ (ステレオカメラ、マルチカメラ)、RGB-Dカメラ (深度カメラやToFカメラ)などが用いられるが、本実施例は、ステレオカメラが用いられている。
【0026】
撮像カメラ12は、搭載部4の投影面内でかつベース部2と搭載部4の間の高さ位置に設けられていることが好ましい。これにより、搭載部4の上方のスペースは荷物の搭載用として広く利用することができ、無人搬送装置1の低床化に寄与することができる。
【0027】
また、撮像カメラ12の下方には、レーザー距離センサ13(LiDAR)が設けられている。レーザー距離センサ13は、レーザースキャナから照射されたレーザー光の反射光を受光するまでの時間の差により対象物までの距離を測定する。レーザー距離センサ13は、レーザー光を照射して3D(x,y,z座標)の点群データを取得して環境地図を作成する。作成された環境地図は、後述する制御部14のデータ格納部14cに記憶され、無人搬送装置1の荷物搬送時に位置推定や障害物を検知するために用いられる。
【0028】
図6に示すようにベース部2には、地図データに基づいて指定された地点までのルートを所定のアルゴリズムで算出して駆動指令を送出する制御部14や、撮像カメラ12及びレーザー距離センサ13から入力データにより自己位置推定及び環境地図作成を同時に行いながら指定された地点まで、一対の駆動モータ11a,11bの駆動を制御するモータ駆動装置15(駆動部)を備えている(図7参照)。
また、ベース部2には、充電用ケーブル端子などを備えた端子ボックス21、バッテリー22,LEDライト23などが設けられている。
【0029】
ここで、無人搬送装置1の制御系について図7のブロック構成図を参照して説明する。制御部14は、マイクロコンピュータ14a、メモリ14b、データ格納部14c、通信回路14dと、位置推定装置14eとを有している。マイクロコンピュータ14a、メモリ14b、データ格納部14c、通信回路14dおよび位置推定装置14eは通信バス14fで接続されており、相互にデータを授受することが可能である。撮像カメラ12及びレーザー距離センサ13もまた通信インタフェース(図示せず)を介して通信バス14fに接続されており、計測結果である計測データを、マイクロコンピュータ14a、位置推定装置14eおよび/またはメモリ14bに送信する。
【0030】
マイクロコンピュータ14aは、無人搬送装置1の動作制御するための演算を行うプロセッサまたは制御回路(コンピュータ)である。典型的にはマイクロコンピュータ14aは半導体集積回路である。マイクロコンピュータ14aは、制御信号であるPWM(Pulse Width Modulation)信号をモータ駆動装置15に送信してモータ駆動回路15a,15bを駆動制御し、駆動モータ11a,11bに印加する電圧を調整する。これにより一対の駆動モータ11a,11bの各々を所望の回転速度で回転させることができる。モータ駆動回路15a,15bはインバータ回路を備えており、マイクロコンピュータ14aから送出されたPWM信号により駆動モータ11a,11bに流れる電流がオンオフ制御される。
【0031】
尚、左右の駆動モータ11a,11bの駆動を制御する1つ以上の制御回路(たとえばマイコン)を設けてもよい。たとえば、モータ駆動装置15が、駆動モータ11a,11bの駆動をそれぞれ制御する2つのマイコンを備えていてもよい。それらの2つのマイコンは、回転センサ16a,16bから出力されたエンコーダ情報を用いた座標計算をそれぞれ行い、初期位置からの無人搬送装置1の移動距離を推定してもよい。また、当該2つのマイコンは、エンコーダ情報を利用してモータ駆動回路15a,15bを制御してもよい。
【0032】
メモリ14bは、マイクロコンピュータ14aが実行するコンピュータプログラムを記憶する揮発性の記憶装置である。メモリ14bは、入力されたデータを一時記憶し、マイクロコンピュータ14aおよび位置推定装置14eが演算を行う際のワークエリアとしても利用され得る。
【0033】
データ格納部14cは、不揮発性の半導体メモリ装置(データベース)である。尚、データ格納部14cは、ハードディスクに代表される磁気記録媒体、または、光ディスクに代表される光学式記録媒体であってもよい。さらに、データ格納部14cは、いずれかの記録媒体にデータを書き込みおよび/または読み出すためのヘッド装置および当該ヘッド装置の制御装置を含んでもよい。
【0034】
データ格納部14cは、無人搬送装置1が走行する移動空間の環境地図(地図データM)、および、1または複数の走行経路のデータ(走行経路データR)を記憶する。地図データMは、無人搬送装置1が環境地図作成モードで走行することによって作成され、データ格納部14cに随時記憶される。1または複数の走行経路データRは、地図データMが作成された後にデータ格納部14cに記憶される。本実施形態では、地図データMおよび走行経路データRは同じデータ格納部14cに記憶されているが、異なるデータ格納部14cに記憶されてもよい。
【0035】
通信回路14dは、たとえば、無線LANや無線WANに準拠した無線通信を行う無線通信回路である。たとえば無人搬送装置1を走行させて環境地図を作成する環境地図作成モードでは、通信回路14dは、無線LANや無線WANに準拠した無線通信を行い、端末17と1対1で無線通信する。尚、端末17は例えばタブレット型コンピュータなどが用いられる。
【0036】
無人搬送装置1は、予め作成された環境地図(地図データM)と走行中に取得されたレーザー距離センサ13が出力した点群データとを比較して自己位置を推定しながら、走行経路データRより決定された走行ルートに沿って走行する。
位置推定装置14eは、環境地図の作成処理、および、荷物搬送時には自己位置の推定処理を行う。位置推定装置14eは、無人搬送装置1の走行位置及びレーザー距離センサ13の走査結果により、移動空間の地図データM(3D座標の点群データ)を作成する。荷物搬送時には、位置推定装置14eは、レーザー距離センサ13から3D座標データを受け取り、データ格納部14cに記憶された地図データMを読み出す。作成された局所的地図データ(3D座標の点群データ)を、より広範囲の地図データMとのマッチングを行うことにより、位置推定装置14eは、地図データM上における自己位置を推定する。
【0037】
本実施例では、撮像カメラ12は、自律走行を行うために必要な周囲の環境を撮像する他に、作業者より提示されたマトリックス型二次元コードを読み取るか或いはタブレット端末17より入力されたアドレス情報から指定された地点のアドレスが制御部14へ入力される。制御部14は指定された地点のアドレスを地図データM上で確認し、当該指定された地点までの走行ルートを所定のアルゴリズムで決定する。制御部14は、決定された走行経路データRに基づいてモータ駆動装置15に駆動指令を送出する。
【0038】
尚、撮像カメラ12が地図データMにない障害物を検出した場合には、制御部14は、モータ駆動装置15へ駆動停止指令を送出し、駆動モータ11a、11bに駆動を停止させる。そして、周囲の状況を確認してから目的地までの走行経路データRを再検索して走行ルートを決定する。これにより、無人搬送装置1の自律搬送動作の信頼性を高めることができる。
【0039】
以上説明したように、車体の低床化を図り搭載部4への荷物の載置スペースを拡大すると共に走行面に傾斜や凹凸が存在しても駆動車輪5が浮き上がることなく安定した走行が可能な無人搬送装置を提供することができる。
【0040】
尚、撮像カメラ12は、垂直方向及び水平方向に所定角度で移動可能に設けられていてもよい。即ち、チルト軸を中心に回転させてチルト動作を行うチルト機構と、チルト機構をチルト軸と直交するパン軸を中心に回転させてパン動作を行うパン機構とを備えたパンチルト装置により垂直方向及び水平方向に移動させてもよい。
【0041】
この場合、撮像カメラ12の垂直方向及び水平方向の角度を検出する角度センサを備え、角度センサより取得した角度に応じて制御部14が環境把握用プログラムの設定変更が行われるようにしてもよい。
これにより、撮像カメラ12が撮像により周囲の環境を撮像し、レーザー距離センサ13で距離を測定する際に、オフセット量を加味して地図を作製することができる。
【0042】
尚、無人搬送装置1に対する外部入力は、端末17を用いて行ったが、携帯型のノートパソコンやデスクトップタイプのパソコンを用いて行ってもよい。
また、無人搬送装置の一例として、自律型搬送装置について例示したが、これに限らず、遠隔操作される無人牽引車、各種サービスロボットなど無人搬送を行なう他の装置に適用してもよい。
また、第1車輪支持部8をベース部2に対して揺動可能に設けたが、第1車輪支持部8と同様な構成を第2車輪支持部10に適用して、駆動車輪5と第2補助車輪7がベース部2に対して揺動可能な第2車輪支持部10に支持されていてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 無人搬送装置 2 ベース部 2a 切欠き 2b 抜孔 3 支柱 4 搭載部 5 駆動車輪 6 第1補助車輪 7 第2補助車輪 8 第1車輪支持部 8a 揺動軸 8b 軸支持板 9 揺動支持部 9a 軸孔 10 第2車輪支持部 11a,11b 駆動モータ 11c 駆動軸 12 撮像カメラ 13 レーザー距離センサ 14 制御部 14a マイクロコンピュータ 14b メモリ 14c データ格納部 14d 通信回路 14e 位置推定装置 14f 通信バス 15 モータ駆動装置 15a,15b モータ駆動回路 16a,16b 回転センサ 17 端末 18 マトリックス型二次元コード 20 モータ取付板 21 端子ボックス22 バッテリー 23 LEDライト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8