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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023077968
(43)【公開日】2023-06-06
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20230530BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230530BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230530BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230530BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08K3/36
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191495
(22)【出願日】2021-11-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】西川 由真
(72)【発明者】
【氏名】箕内 則夫
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA03
3D131AA10
3D131BA07
3D131BA12
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002AC091
4J002BB181
4J002BP011
4J002DA036
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD030
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD200
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】酸化亜鉛などの金属酸化物の量を低減ないし無配合にしつつ加硫を進行させることができるゴム組成物を提供する。
【解決手段】実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分及びシリカを含む。前記ゴム成分は、当該ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%以上であり、かつ溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満である。ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が90~200質量部であり、かつ金属酸化物の含有量が0.5質量部未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分及びシリカを含み、
前記ゴム成分は、当該ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%以上であり、かつ溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満であり、
前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90~200質量部であり、かつ金属酸化物の含有量が0.5質量部未満である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量が80質量%以下である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のゴム組成物を用いて作製されたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、防振ゴム、コンベアベルト等に用いられるゴム組成物には、一般にゴム成分としてジエン系ゴムが用いられ、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤とともに、酸化亜鉛などの金属酸化物が配合されている。該ゴム組成物を加硫することにより加硫ゴムが形成される。かかる加硫機構において、酸化亜鉛などの金属酸化物は加硫促進助剤として働き、必要不可欠な成分として使用されている。
【0003】
しかしながら、近年、酸化亜鉛などの金属酸化物は、環境汚染防止の観点から配合量を減らすことが要求されている。そこで、例えば特許文献1には、ゴム成分の50質量%以上を溶液重合スチレンブタジエンゴムとしたゴム組成物が開示されている。特許文献2には、ゴム成分の50質量%以上を分子末端が変性された溶液重合スチレンブタジエンゴムとしたゴム組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-099709号公報
【特許文献2】特開2019-099708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、以上の点に鑑み、酸化亜鉛などの金属酸化物の量を低減ないし無配合にしつつ加硫を進行させることができるゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係るゴム組成物は、ゴム成分及びシリカを含み、前記ゴム成分は、当該ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%以上であり、かつ溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記シリカの含有量が90~200質量部であり、かつ金属酸化物の含有量が0.5質量部未満である。ここで、溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満には、溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が0質量%である場合、すなわち、溶液重合スチレンブタジエンゴムを含まない場合も包含される。また、金属酸化物の含有量が0.5質量部未満には、金属酸化物の含有量が0質量部である場合、すなわち、金属酸化物を含まない場合も包含される。
【0007】
本発明の実施形態に係るタイヤは、上記ゴム組成物を用いて作製されたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、酸化亜鉛などの金属酸化物の量を低減ないし無配合にしつつ、加硫を進行させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係るゴム組成物は、ブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%以上であるゴム成分と、シリカとを含み、ゴム成分100質量部に対してシリカの含有量が90~200質量部であり、金属酸化物の含有量が0.5質量部未満である。酸化亜鉛などの金属酸化物は加硫促進助剤として働くため、金属酸化物の量を低減ないし無配合とすると、通常は加硫が進行しにくくなる。これに対し、上記のようにビニル結合単位量を10質量%以上とした本実施形態によれば、金属酸化物を含まなくてもラジカル機構による加硫が進み、加硫ゴムの強度低下を抑制することができる。また、ビニル結合単位が選択的に架橋されることにより、加硫ゴムの耐摩耗性を向上することができる。
【0010】
実施形態に係るゴム組成物において、ゴム成分としてはジエン系ゴムが用いられる。ジエン系ゴムとは、共役二重結合を持つジエンモノマーに対応する繰り返し単位を持つゴムをいい、ポリマー主鎖に二重結合を有する。ジエン系ゴムの具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム等、ゴム組成物において通常使用される各種ジエン系ゴムが挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ゴム成分は、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、上記のジエン系ゴムには、必要に応じて末端を変性したもの(例えば、末端変性SBR)や、所望の特性を付与するべく改質したもの(例えば、改質NR)も、その概念に包含される。
【0011】
前記ゴム成分は溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)を含んでもよく、含んでいなくてもよいが、その含有量は50質量%未満である。すなわち、ゴム成分100質量部中、溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量は50質量部未満である。本実施形態によれば、このように溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%未満であるにもかかわらず、また金属酸化物の量を低減ないし無配合にしながら、加硫を進行させることができる。溶液重合スチレンブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分100質量%に対して、45質量%以下でもよく、35質量%以下でもよく、30質量%以下でもよく、20質量%以下でもよく、0質量%でもよい。
【0012】
本実施形態に係るゴム成分は、ブタジエン由来の構成単位を持つジエン系ゴムを含む。そのようなジエン系ゴムとしては、例えば、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴムが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上が用いられる。より好ましくは、ゴム成分は、スチレンブタジエンゴム及び/又はブタジエンゴムを少なくとも含み、それに加えて天然ゴムなどの他のジエン系ゴムを任意に含んでもよい。
【0013】
一実施形態において、前記ゴム成分は、乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)を含んでもよく、ゴム成分100質量%に対して乳化重合スチレンブタジエンゴムを30質量%以上含んでもよい。乳化重合スチレンブタジエンゴムの含有量は、ゴム成分100質量%に対して、40質量%以上でもよく、50質量%以上でもよく、また80質量%以下でもよく、70質量%以下でもよい。
【0014】
他の実施形態において、前記ゴム成分は、乳化重合スチレンブタジエンゴムと、溶液重合スチレンブタジエンゴムと、任意に天然ゴムを含んでもよく、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム30質量%以上80質量%以下と、溶液重合スチレンブタジエンゴム10質量%以上50質量%未満と、天然ゴム0質量%以上40質量%以下を含んでもよい。より好ましくは、前記ゴム成分は、乳化重合スチレンブタジエンゴム40質量%以上70質量%以下と、溶液重合スチレンブタジエンゴム15質量%以上45質量%以下と、天然ゴム10質量%以上30質量%以下とを含んでもよい。
【0015】
更に他の実施形態において、前記ゴム成分は、乳化重合スチレンブタジエンゴムと、天然ゴムと、任意にブタジエンゴムを含んでもよく、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム20~60質量%と、天然ゴム10~60質量%と、ブタジエンゴム0~60質量%を含んでもよい。より好ましくは、前記ゴム成分は、乳化重合スチレンブタジエンゴム30~50質量%と、天然ゴム10~40質量%と、ブタジエンゴム30~60質量%を含んでもよい。
【0016】
本実施形態において、前記ゴム成分は、当該ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%以上である。ブタジエン由来のビニル結合単位量とは、ゴム成分を構成するジエン系ゴムの全ての構成単位(ポリマーの繰り返し単位)中に含まれるブタジエン由来のビニル結合単位の含有量であり、ゴム成分全量100質量%に対する当該ビニル結合単位量の質量%である。ブタジエン由来のビニル結合単位とは、ブタジエンにより形成される構成単位のうち、ビニル-1,2結合の構成単位をいう。
【0017】
ジエン系ゴムのミクロ構造は、FT-IR(フーリエ変換赤外分光)法により測定することができる。より詳細には、BR,NR,IRについてはモレロ法により、SBRについてはハンプトン-モレロ法により求められる。ジエン系ゴムとして複数種をブレンドして用いる場合、各ジエン系ゴムについて測定したブタジエン由来のビニル結合単位の含有量(即ち、各ジエン系ゴムにおいて、当該ゴムポリマーを構成する全ての構成単位中に含まれるブタジエン由来のビニル結合単位の含有量(質量%))から、配合量に応じた比例計算により、ゴム成分中のブタジエン由来のビニル結合単位量(質量%)を求めることができる。
【0018】
ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量は、より好ましくは15質量%以上であり、更に好ましくは18質量%以上であり、20質量%以上でもよい。該ブタジエン由来のビニル結合単位量の上限については、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下であり、更に好ましくは50質量%以下であり、40質量%以下でもよく、30質量%以下でもよい。
【0019】
実施形態に係るゴム組成物には、充填剤としてシリカが配合される。シリカとしては、特に限定されず、湿式シリカ、乾式シリカ等が挙げられる。好ましくは、湿式沈降法シリカ、湿式ゲル化法シリカなどの湿式シリカを用いることである。
【0020】
本実施形態において、シリカは、ゴム成分100質量部に対して90~200質量部配合される。このようにシリカを多量に配合することにより、加硫度の低下を抑えることができる。シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、90~150質量部であることが好ましく、より好ましくは90~120質量部である。
【0021】
ゴム組成物に配合する充填剤としては、シリカ単独でもよいが、シリカとともにカーボンブラックを配合してもよい。カーボンブラックとしては、特に限定されず、公知の種々の品種を用いることができる。具体的には、SAF級(N100番台)、ISAF級(N200番台)、HAF級(N300番台)、FEF級(N500番台)、GPF級(N600番台)(ともにASTMグレード)などが挙げられる。これら各グレードのカーボンブラックは、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
カーボンブラックの含有量は、特に限定されず、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以下でもよく、1~30質量部でもよく、2~10質量部でもよい。
【0023】
前記ゴム組成物にはシランカップリング剤が配合されてもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプトシランカップリング剤、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ヘキサノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリメトキシシラン等のチオエステル基含有シランカップリング剤等が挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、シランカップリング剤としては、スルフィドシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0024】
シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、シリカ量の2~25質量%、すなわち、シリカ100質量部に対して2~25質量部であることが好ましく、より好ましくは5~20質量部である。
【0025】
本実施形態に係るゴム組成物においては、環境汚染防止の観点から、金属酸化物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.5質量部未満であり、より好ましくは0.2質量部未満であり、更に好ましくは0質量部、即ち金属酸化物を含まないことである。ここで、金属酸化物の含有量は、複数種の金属酸化物を含む場合、その合計量である。
【0026】
金属酸化物とは、金属元素の酸化物であり、半金属元素を含む酸化物は金属酸化物には含まれない。ここで、金属元素は、周期表において、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、アンチモン、ビスマス(これらは半金属元素である。)を結ぶ線よりも左に位置する元素(但し、水素は除く。)である。金属酸化物として、代表的には酸化亜鉛が挙げられ、その他に、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記成分の他に、例えば、オイル、ステアリン酸、老化防止剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される各種添加剤が配合されてもよい。
【0028】
老化防止剤としては、例えば、芳香族アミン系老化防止剤、アミン-ケトン系老化防止剤、モノフェノール系老化防止剤、ビスフェノール系老化防止剤、ポリフェノール系老化防止剤、ジチオカルバミン酸塩系老化防止剤、チオウレア系老化防止剤等が挙げられる。これらはいずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。老化防止剤の含有量は、特に限定されず、例えばゴム成分100質量部に対して0.5~10質量部でもよい。
【0029】
加硫剤としては、硫黄が好ましく用いられ、例えば粉末硫黄、沈降硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などが挙げられる。加硫剤の含有量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
【0030】
加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系等の各種加硫促進剤が挙げられ、いずれか1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。加硫促進剤の配合量は、特に限定されず、例えば、ゴム成分100質量部に対して0.1~10質量部でもよく、0.5~5質量部でもよい。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。例えば、第一混合段階(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、シリカとともに、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を添加混合する。次いで、得られた混合物に、最終混合段階(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加混合して未加硫のゴム組成物を調製することができる。
【0032】
本実施形態に係るゴム組成物は、タイヤ、防振ゴム、コンベアベルトなどの各種ゴム部材に用いることができる。好ましくは、タイヤ用であり、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど各種用途、各種サイズの空気入りタイヤのトレッド、サイドウォール、ビード部などタイヤの各部位に適用することができる。
【0033】
一実施形態において、上記ゴム組成物からなるゴム部分(例えば、トレッドゴム、サイドウォールゴム等)を含むタイヤは次のようにして製造される。ゴム組成物は、常法に従い、例えば押出加工によって所定の形状に成形される。得られた成形物を他の部品と組み合わせることでグリーンタイヤが作製される。該グリーンタイヤを例えば140~180℃で加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。
【実施例0034】
以下、実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例および比較例で使用した各成分は以下の通りである。
・SBR1:溶液重合スチレンブタジエンゴム(末端変性)、JSR株式会社製「HPR350」(スチレン含有量20.5質量%、ブタジエン部のミクロ構造;ビニル含有量55.5質量%、ブタジエン由来のビニル結合単位量44.1質量%)
・SBR2:乳化重合スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製「SBR1723」(スチレン含有量23.5質量%、ブタジエン部のミクロ構造;ビニル含有量19質量%、ブタジエン由来のビニル結合単位量14.5質量%、37.5phr油展)
・BR1:ブタジエンゴム、Versalis社製「EUROPRENE BR HV80」(ビニル結合単位量77質量%)
・BR2:ブタジエンゴム、宇部興産株式会社製「BR150B」(ビニル結合単位量1質量%)
・NR:天然ゴム「RSS#3」
【0036】
・カーボンブラック:東海カーボン(株)製「シースト3」
・シリカ:エボニックインダストリー社製「Ultrasil VN3」
・シランカップリング剤:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、エボニック社製「Si69」
・オイル:JXTGエネルギー(株)製「プロセスNC-140」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛2種」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・老化防止剤:住友化学(株)製「アンチゲン6C」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「5%油入粉末硫黄」
・加硫促進剤CBS:大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーCZ-G(CZ)」
・加硫促進剤DPG:大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーD」
【0037】
実施例及び比較例における評価方法は以下の通りである。
(1)加硫特性(MH-ML)
レオメーターによる未加硫ゴム組成物の160℃の加硫挙動測定試験において、トルクの最大値をMH、トルクの最小値をMLとしたときの(MH-ML)を算出した。表1では比較例1、表2では比較例3、表3では比較例4、表4では比較例5、表5では比較例6、表6では比較例7の(MH-ML)をそれぞれ100として指数評価した。指数が小さいほど、硫黄加硫が十分に進行していないことを示す。
【0038】
(2)破断強度
未加硫のゴム組成物を175℃にて15分間加熱することにより加硫して得られたゴムサンプルを用いた。JIS3号ダンベルを使用して作製したサンプルについて、JIS K6251に準拠して、破断強度(MPa)を測定した。表1では比較例1、表2では比較例3、表3では比較例4、表4では比較例5、表5では比較例6、表6では比較例7の破断強度をそれぞれ100として指数評価した。数値が大きいほど、破断強度が高いことを示す。
【0039】
(3)耐摩耗性
未加硫のゴム組成物を175℃にて15分間加熱することにより加硫して得られたゴムサンプルを用いた。JIS K6264に準拠し、岩本製作所(株)製のランボーン摩耗試験機を用いて、荷重40N、スリップ率30%の条件で摩耗減量を測定し、表1では比較例1、表2では比較例3、表3では比較例4、表4では比較例5、表5では比較例6、表6では比較例7の摩耗減量の逆数をそれぞれ100として指数評価した。数値が大きいほど、摩耗減量が少なく耐摩耗性に優れる。
【0040】
[比較例1,2]
バンバリーミキサーを使用し、下記表1に示す配合(質量部)に従って、まず、第一混合段階で、ゴム成分に対し硫黄及び加硫促進剤を除く配合剤を添加し混練した(排出温度=150℃)。次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、硫黄と加硫促進剤を添加し混練した(排出温度=90℃)。これにより得られた各ゴム組成物について、加硫特性、破断強度及び耐摩耗性の評価を行った。結果を表1に示す。なお、表1中の「ビニル結合単位量」は、ゴム成分全量中のブタジエン由来のビニル結合単位量を示し、各ジエン系ゴムについてのブタジエン由来のビニル結合単位の含有量から、配合量に応じた比例計算により算出した(表2~6において同じ)。また、SBR2の配合量について、括弧内の値は油展分を除くゴムポリマーとしての量を示す(表2~5において同じ)。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例1,2,比較例3]
下記表2に示す配合(質量部)に従い、その他は比較例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫特性、破断強度及び耐摩耗性の評価を行った。結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
[実施例3,4及び比較例4]
下記表3に示す配合(質量部)に従い、その他は比較例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫特性、破断強度及び耐摩耗性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】
【0046】
[実施例5,6及び比較例5]
下記表4に示す配合(質量部)に従い、その他は比較例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫特性、破断強度及び耐摩耗性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0047】
【表4】
【0048】
[実施例7,8及び比較例6]
下記表5に示す配合(質量部)に従い、その他は比較例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫特性、破断強度及び耐摩耗性の評価を行った。結果を表5に示す。
【0049】
【表5】
【0050】
[実施例9,10及び比較例7]
下記表6に示す配合(質量部)に従い、その他は比較例1と同様にしてゴム組成物を調製した。得られた各ゴム組成物について、加硫特性、破断強度及び耐摩耗性の評価を行った。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
表1に示すように、酸化亜鉛を無配合とした比較例2では、酸化亜鉛を配合した比較例1に対し、十分に加硫が進行しておらず、破断強度が大幅に悪化した。このようにブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%未満の場合、酸化亜鉛を配合しないと、架橋密度が低下しているため、耐摩耗性は良化するが、破断強度が悪化した。
【0053】
これに対し、表2~6に示すように、ブタジエン由来のビニル結合単位量が10質量%以上である場合、酸化亜鉛の量を低減ないし無配合にした実施例1~10では、酸化亜鉛を配合した比較例3~7と同程度に加硫が進行しており、破断強度の低下が抑えられた。また、実施例1~10では、比較例3~7に対して耐摩耗性に優れていた。
【0054】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0055】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。