(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078650
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02F 7/00 20060101AFI20230531BHJP
F01L 1/356 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
F02F7/00 K
F02F7/00 N
F01L1/356
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021191881
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深澤 光貴
【テーマコード(参考)】
3G018
3G024
【Fターム(参考)】
3G018AB02
3G018AB17
3G018BA09
3G018DA20
3G018DA58
3G018DA68
3G018FA01
3G018FA07
3G018GA22
3G024AA73
3G024BA05
3G024BA23
3G024FA01
3G024FA04
(57)【要約】
【課題】油圧制御弁の外部に露出する部分を下方から飛来する飛び石等の異物から保護することができる内燃機関を提供すること。
【解決手段】排気側シリンダ部24は、膨出部21の下方に隣接して形成されている。また、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24Cよりも排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24Dが下方に配置されている。そして、チェーンケース20は、排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24D側に、排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24Dと膨出部21とを連結する連結リブ32を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイミングチェーンが巻き掛けられた可変バルブタイミング機構と、
前記可変バルブタイミング機構に供給される作動油を制御する油圧制御弁と、
前記タイミングチェーンおよび前記可変バルブタイミング機構を覆うようにシリンダヘッドに固定されたチェーンケースと、を備え、
前記チェーンケースは、クランク軸方向に膨出して形成され、前記可変バルブタイミング機構を覆う膨出部と、前記油圧制御弁が装着される筒状のシリンダ部と、を有し、
前記油圧制御弁は、前記シリンダ部の軸線方向の一端部から前記シリンダ部に挿入される小径部と、前記シリンダ部の軸線方向の一端部から露出する大径部と、を有し、
複数の気筒の中心線が車両の上下方向に対して傾斜する姿勢で前記車両に搭載される内燃機関であって、
前記シリンダ部は、前記膨出部の下方に隣接して形成され、
前記シリンダ部の軸線方向の一端部よりも前記シリンダ部の軸線方向の他端部が下方に配置され、
前記チェーンケースは、前記シリンダ部の軸線方向の他端部側に、前記シリンダ部の軸線方向の他端部と前記膨出部とを連結する連結リブを有することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記チェーンケースは、前記シリンダ部における前記膨出部の反対側の端部に沿って、前記シリンダ部の軸線方向の一端部から少なくとも前記大径部よりも上方まで前記シリンダ部の軸線方向に伸びる補強リブを有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記シリンダ部を第1シリンダ部としたとき、
前記チェーンケースは、
前記第1シリンダ部の軸線方向と平行に、かつ、前記第1シリンダ部とは軸線方向の位置が異なるように、前記第1シリンダ部の上方に隣り合って形成された第2シリンダ部を有し、
前記補強リブは、前記第1シリンダ部の軸線方向の一端部と、前記第2シリンダ部の軸線方向の一端部と、を連結していることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記補強リブは、前記第2シリンダ部の軸線方向の一端部まで伸び、
前記チェーンケースは、前記補強リブと連結され、前記第2シリンダ部の軸線方向の一端部から上方に伸びる延長リブを有することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、吸気弁用カムシャフトの回転位相を変更する吸気弁位相変更手段に供給する作動油を制御する第1電磁弁と、排気弁用カムシャフトの回転位相を変更する排気弁位相変更手段に供給する作動油を制御する第2電磁弁と、を備える電磁弁の配置構造が記載されている。特許文献1において、第1電磁弁および第2電磁弁は、エンジンの端部に配置されるタイミングチェーンカバーに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、第1電磁弁および第2電磁弁が、タイミングチェーンカバーの端部から外方に突出して配置されており、第1電磁弁または第2電磁弁の外部に露出する部分が、路面から飛来する飛び石等の異物との衝突により破損するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、油圧制御弁の外部に露出する部分を下方から飛来する飛び石等の異物から保護することができる内燃機関を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイミングチェーンが巻き掛けられた可変バルブタイミング機構と、前記可変バルブタイミング機構に供給される作動油を制御する油圧制御弁と、前記タイミングチェーンおよび前記可変バルブタイミング機構を覆うようにシリンダヘッドに固定されたチェーンケースと、を備え、前記チェーンケースは、クランク軸方向に膨出して形成され、前記可変バルブタイミング機構を覆う膨出部と、前記油圧制御弁が装着される筒状のシリンダ部と、を有し、前記油圧制御弁は、前記シリンダ部の軸線方向の一端部から前記シリンダ部に挿入される小径部と、前記シリンダ部の軸線方向の一端部から露出する大径部と、を有し、複数の気筒の中心線が車両の上下方向に対して傾斜する姿勢で前記車両に搭載される内燃機関であって、前記シリンダ部は、前記膨出部の下方に隣接して形成され、前記シリンダ部の軸線方向の一端部よりも前記シリンダ部の軸線方向の他端部が下方に配置され、前記チェーンケースは、前記シリンダ部の軸線方向の他端部側に、前記シリンダ部の軸線方向の他端部と前記膨出部とを連結する連結リブを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このように上記の本発明によれば、油圧制御弁の外部に露出する部分を下方から飛来する飛び石等の異物から保護することができる内燃機関を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る内燃機関の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンケースおよび油圧制御弁の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンケースの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る内燃機関のチェーンケースおよび油圧制御弁の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る内燃機関は、タイミングチェーンが巻き掛けられた可変バルブタイミング機構と、可変バルブタイミング機構に供給される作動油を制御する油圧制御弁と、タイミングチェーンおよび可変バルブタイミング機構を覆うようにシリンダヘッドに固定されたチェーンケースと、を備え、チェーンケースは、クランク軸方向に膨出して形成され、可変バルブタイミング機構を覆う膨出部と、油圧制御弁が装着される筒状のシリンダ部と、を有し、油圧制御弁は、シリンダ部の軸線方向の一端部からシリンダ部に挿入される小径部と、シリンダ部の軸線方向の一端部から露出する大径部と、を有し、複数の気筒の中心線が車両の上下方向に対して傾斜する姿勢で車両に搭載される内燃機関であって、シリンダ部は、膨出部の下方に隣接して形成され、シリンダ部の軸線方向の一端部よりもシリンダ部の軸線方向の他端部が下方に配置され、チェーンケースは、シリンダ部の軸線方向の他端部側に、シリンダ部の軸線方向の他端部と膨出部とを連結する連結リブを有することを特徴とする。
【0010】
これにより、本発明の一実施の形態に係る内燃機関は、油圧制御弁の外部に露出する部分を下方から飛来する飛び石等の異物から保護することができる。
【実施例0011】
以下、本発明の一実施例に係る内燃機関について、図面を用いて説明する。
図1から
図4は、本発明の一実施例に係る内燃機関を示す図である。
【0012】
図1から
図4において、上下前後左右方向の表示は、車両に搭載した状態における上下前後左右を示している。また、AB方向、CD方向、EF方向の表示は、車両から取り外された内燃機関を、シリンダヘッドがクランク軸の真上に位置するように正立させた場合を基準としている。AB方向、CD方向、EF方向は互いに直交する方向であり、EF方向は、内燃機関が搭載される車両の前後方向と一致している。
【0013】
まず、構成を説明する。
図1において、車両に搭載された内燃機関1は、シリンダブロック2を備えている。シリンダブロック2にはクランク軸2Aが設けられており、クランク軸2AはEF方向に伸びている。
【0014】
シリンダブロック2には、EF方向に配列された図示しない3つの気筒が形成されており、気筒はAB方向に伸びている。本実施例の内燃機関1は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)式の縦置きエンジンである。なお、内燃機関1は、直列エンジンに限らず、例えばV型エンジン等であってもよいし、気筒数も3つに限定されるものではない。
【0015】
シリンダブロック2のA方向の端部にはシリンダヘッド3が設けられている。シリンダヘッド3は、空気を取り入れる図示しない吸気口と、排気ガスを排出する排気口3Bと、図示しない吸気バルブおよび排気バルブ等を有する。排気口3Bはシリンダヘッド3のD方向の側壁に開口している。吸気口はシリンダヘッド3のC方向の側壁に開口している。
【0016】
シリンダヘッド3のA方向の端部にはシリンダヘッドカバー4が設置されている。シリンダブロック2のB方向の端部にはオイルパン5が設置されており、オイルパン5には内燃機関1の潤滑用のオイルが貯留されている。
【0017】
内燃機関1は、図示しない車両の前部の運転席のフロアパネルの下方に設置されている。したがって、内燃機関1を搭載する車両は、運転席が内燃機関1の上方に配置された、いわゆるキャブオーバー形式の車両である。内燃機関1は、気筒の中心線Cが車両の上下方向に対して左右方向に傾斜する姿勢で車両に設置されている。
【0018】
内燃機関1の下方には、アンダーカバー1Aが設けられている。アンダーカバー1Aは水平方向に伸びており、内燃機関1を下方から覆っている。オイルパン5の底面5Aは、車両搭載状態で内燃機関1の底部に位置している。この底面5Aは、車両搭載状態でアンダーカバー1Aと平行に伸びるように、内燃機関1自体の左右方向に対して傾斜している。
【0019】
このように、内燃機関1は、大きく傾斜した姿勢で車両の前部に搭載されている。そのため、車両搭載状態では、内燃機関1のC方向の側面(吸気側)が車両の上方を向き、内燃機関1のD方向の側面(排気側)が車両の下方を向く。
【0020】
内燃機関1は、タイミングチェーン10が巻き掛けられた可変バルブタイミング機構11と、シリンダヘッド3に連結されるシリンダヘッドカバー4と、を備えている。また、内燃機関1は、可変バルブタイミング機構11に供給される作動油を制御する吸気油圧制御弁としての、筒状の吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16を備えている。
【0021】
内燃機関1はチェーンケース20を備えており、このチェーンケース20は、シリンダヘッド3の側面に固定されている。チェーンケース20は、タイミングチェーン10および可変バルブタイミング機構11を覆っている。可変バルブタイミング機構11は、吸気口側に配置された吸気側可変バルブタイミング機構12と、排気口3B側に配置された排気側可変バルブタイミング機構13とを有している。
【0022】
内燃機関1は、チェーンケースに対してシリンダヘッド3とは反対側に設けられ、シリンダヘッド3にシリンダブロック2を介して連結されるオイルパン5と、シリンダヘッド3に設けられ、空気を取り入れる吸気口と、チェーンケースに対して吸気口とは反対側に設けられ、排気ガスを排出する排気口3Bと、を備えている。
【0023】
チェーンケース20には、可変バルブタイミング機構11を覆う膨出部21が形成されている。膨出部21は、クランク軸方向に膨出している。ここでクランク軸方向とは、クランク軸2Aの軸線方向である。本実施例では、膨出部21は、チェーンケース20の外側の方向(車両搭載状態における前方)に膨出している。膨出部21は、チェーンケース20におけるシリンダヘッドカバー4側の端部(A方向の端部)に形成されている。吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16は、チェーンケース20における膨出部21よりもオイルパン5側に配置されている。
【0024】
また、内燃機関1はオイルポンプ6を備えており、オイルポンプ6は、オイルパン5に貯留されたオイルを潤滑必要部位および可変バルブタイミング機構11に圧送する。オイルポンプ6はクランク軸2Aの周囲に設けられている。
【0025】
ここで、本実施例では、チェーンケース20に対するシリンダヘッドカバー4の方向とオイルパン5の方向をAB方向とし、チェーンケース20に対する吸気口の方向と排気口3Bの方向をCD方向とし、チェーンケース20の外側の方向(車両搭載状態における前方)と内側の方向(車両搭載状態における後方)をEF方向とする。
【0026】
吸気油圧制御弁15は、CD方向における吸気口側に配置されている。排気油圧制御弁16は、CD方向における排気口3B側に配置されている。
【0027】
図2、
図4において、チェーンケース20には、吸気油圧制御弁15が装着される筒状の吸気側シリンダ部23と、排気油圧制御弁16が装着される筒状の排気側シリンダ部24と、が形成されている。吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24は、CD方向に伸びている。排気側シリンダ部24は、本発明におけるシリンダ部および第1シリンダ部を構成している。吸気側シリンダ部23は、本発明における第2シリンダ部を構成している。
【0028】
吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24は、膨出部21の下方に隣接して形成されている。内燃機関1を車両に搭載した状態で、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23C(C方向の端部。
図4参照)よりも吸気側シリンダ部23の軸線方向の他端部23D(D方向の端部。
図4参照)が下方に配置されている。同様に、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24C(C方向の端部。
図4参照)よりも排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24D(D方向の端部。
図4参照)が下方に配置されている。
【0029】
図1、
図4において、吸気油圧制御弁15は、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23C(
図4参照)から吸気側シリンダ部23に挿入される小径部15B(
図1参照)と、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23C(
図4参照)から露出する大径部15A(
図1参照)と、を有している。同様に、排気油圧制御弁16は、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24C(
図4参照)から排気側シリンダ部24に挿入される小径部16B(
図1参照)と、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24C(
図4参照)から露出する大径部16A(
図1参照)と、を有している。
【0030】
図3において、吸気側シリンダ部23には、吸気油圧制御弁15の小径部15Bを収容する収容孔23Aが形成されている。排気側シリンダ部24には、排気油圧制御弁16の小径部16Bを収容する収容孔24Aが形成されている。
【0031】
図1において、チェーンケース20には、オイルポンプ6を収容するオイルポンプ収容部29が形成されている。吸気側シリンダ部23、排気側シリンダ部24およびオイルポンプ収容部29は、一体に形成されている。
【0032】
オイルポンプ収容部29は、チェーンケース20のうちクランク軸方向に膨出していない平坦な部位である。オイルポンプ収容部29は、膨出部21の下方に配置されており、膨出部21の下部に連続している。
【0033】
オイルポンプ収容部29は、膨出部21のように膨出した形状ではなく平坦な形状であるため、そのままでは膨出部21よりも剛性が劣ってしまう。そこで、本実施例では、オイルポンプ収容部29における吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24が設けられる部位の剛性を向上させるようにしている。また、吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24をAB方向にコンパクトに配置することが好ましいため、吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24をCD方向およびEF方向にずらして配置している。
【0034】
大径部15A、16AのCD方向における吸気口側には、吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16を電気的に制御するための図示しないコネクタが連結される。各コネクタの接続口は、EF方向におけるチェーンケース20の外側(前方)を向いている。
【0035】
ここで、本実施例の内燃機関1は大きく傾斜した姿勢で車両に搭載されているため、車両搭載状態において、吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16の車両上下方向における最上部は、シリンダヘッドカバー4の車両上下方向における最上部よりも下側に位置する。また、排気油圧制御弁16の大径部16AのCD方向の吸気口側の端部の図示しないコネクタは、吸気油圧制御弁15の大径部15AのCD方向の吸気口側の端部の図示しないコネクタに対し、車両上下方向の下方であって、シリンダヘッドカバー4側の位置に配置される。
【0036】
これにより、排気油圧制御弁16の大径部16Aのコネクタが、吸気油圧制御弁15の大径部15Aのコネクタとシリンダヘッドカバー4の間で、かつ、吸気油圧制御弁15およびシリンダヘッドカバー4の双方の車両上下方向における最上部よりも下側に配置されることになる。このため、排気油圧制御弁16をシリンダヘッドカバー4の内部に配置することなく、排気油圧制御弁16の大径部16Aのコネクタに塵等の異物が沈殿して堆積することを抑制することができる。
【0037】
吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16は、それぞれ吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24のC方向(車両搭載状態における上方)の端部からD方向に向かって挿入される。このため、吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16の挿入方向が互いに同じ方向となり、挿入作業を容易にすることができる。
【0038】
また、車両搭載状態で、吸気油圧制御弁15が吸気側シリンダ部23よりも上方に配置され、排気油圧制御弁16が排気側シリンダ部24よりも上方に配置されるので、作動油に混入した異物等が沈殿した場合であっても、吸気油圧制御弁15および排気油圧制御弁16に異物が入り込むことを防止できる。
【0039】
図3において、チェーンケース20の縁部には、複数のシリンダヘッド締結部41、42が形成されており、シリンダヘッド締結部41、42は、オイルポンプ収容部29をシリンダヘッド3に締結するための締結孔41A、42Aをそれぞれ有している。シリンダヘッド締結部41、42は、AB方向に隣り合っている。チェーンケース20のシリンダヘッド締結部41、42が設けられた部位は、肉厚が大きく強度が強い部位である。
【0040】
図3、
図4において、吸気側シリンダ部23の収容孔23Aおよび排気側シリンダ部24の収容孔24Aは、CD方向における吸気口側または排気口3B側の一方に配置され、かつ、吸気口側または排気口3B側の一方を向いて開口している。つまり、吸気側シリンダ部23の収容孔23Aおよび排気側シリンダ部24の収容孔24Aは、CD方向における同じ方向に配置され、同じ方向を向いて開口している。本実施例では、吸気側シリンダ部23の収容孔23Aおよび排気側シリンダ部24の収容孔24Aは、吸気口側に配置され、かつ、吸気口側を向いて開口している。
【0041】
図3において、吸気側シリンダ部23の収容孔23Aの軸線23Rと排気側シリンダ部24の収容孔24Aの軸線24Rとは、EF方向において異なる位置に配置されている。詳しくは、軸線23Rは、軸線24RよりもEF方向においてチェーンケース20の内側に配置されている。軸線23Rと軸線24Rとは平行である。これにより、収容孔23A、24Aを形成する鋳抜きピンの抜き方向を同一方向にできるので、簡易な鋳型構造よりチェーンケース20を制作できるとともに、吸気側シリンダ部23と排気側シリンダ部24とのCD方向(軸線23R、24Rの方向)の距離を一層短くできる。
【0042】
図1において、吸気側シリンダ部23と排気側シリンダ部24との少なくとも一部は、AB方向において重なっている。
【0043】
図3において、チェーンケース20は壁状の連結部43を有している。連結部43は、EF方向に伸びており、吸気側シリンダ部23のCD方向における排気口3B側の端部(
図4に示す他端部23D)と、排気側シリンダ部24のCD方向における吸気口側の端部(
図4に示す一端部24C)とを連結している。なお、連結部43は、AB方向にも伸びている。したがって、連結部43は、吸気側シリンダ部23と排気側シリンダ部24とを、EF方向かつAB方向に連結している。
【0044】
図3において、チェーンケース20は、筒状のオイルギャラリー部27を有しており、オイルギャラリー部27の内部には作動油が流通する図示しない油路が形成されている。オイルギャラリー部27はCD方向に伸びている。チェーンケース20は、EF方向に伸びてオイルポンプ収容部29に連続する壁部21Aを有しており、この壁部21Aは、膨出部21のAB方向におけるオイルパン5側の端部に設けられている。吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24は、AB方向におけるオイルギャラリー部27と壁部21Aとの間に配置されている。
【0045】
なお、シリンダヘッド3の吸気口に接続される図示しないインテークマニホールドの振動がチェーンケース20に伝達することを抑制するため、チェーンケース20におけるインテークマニホールドの近傍の部位の剛性を向上させることが好ましい。そこで、吸気口およびこの吸気口に接続されるインテークマニホールドは、AB方向でシリンダヘッド締結部41とシリンダヘッド締結部42との間に配置されている。これにより、シリンダヘッド締結部41とシリンダヘッド締結部42との距離を最小限の長さにすることができるため、チェーンケース20におけるシリンダヘッド締結部41、42の近傍の部位の剛性を向上させることができる。また、チェーンケース20におけるシリンダヘッド締結部41、42の近傍の部位の振動を抑制できる。
【0046】
チェーンケース20は、シリンダヘッド3にチェーンケース20を取り付けるための吸気側締結ボス部25および排気側締結ボス部26を有している。吸気側締結ボス部25および排気側締結ボス部26は、膨出部21のB方向の近傍に配置されている。
【0047】
吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24のA方向の端部には、膨出部21のB方向の端部が連結されている。吸気側シリンダ部23のB方向の端部には吸気側締結ボス部25のA方向の端部が連結されている。排気側シリンダ部24のB方向の端部には排気側締結ボス部26のA方向の端部が連結されている。シリンダヘッド3のA方向の端面は、CD方向およびEF方向に伸びる平面状の接合面を形成しており、シリンダヘッドカバー4と接合されている。
【0048】
吸気油圧制御弁15、排気油圧制御弁16、吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24は、CD方向に伸びている。また、吸気油圧制御弁15および吸気側シリンダ部23と、排気油圧制御弁16および排気側シリンダ部24とは、EF方向に並んで配置されている。
【0049】
吸気側締結ボス部25および排気側締結ボス部26は、CD方向に並んで配置されている。吸気側締結ボス部25および排気側締結ボス部26は、吸気側シリンダ部23よりもE方向(車両搭載状態における前方)に突出して形成されている。
【0050】
吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24は、クランク軸方向の異なる位置に並んで配置されている。吸気側シリンダ部23および排気側シリンダ部24は、その一部がクランク軸方向に重なるように、クランク軸方向に並列して配置されている。本実施例では、吸気側シリンダ部23の前方に排気側シリンダ部24が隣接して配置されている。
【0051】
また、チェーンケース20をクランク軸方向に沿って見た場合(
図4参照)、排気側シリンダ部24は吸気側シリンダ部23よりも排気側(D方向)に偏倚(オフセット)して配置されている。本実施例では、吸気側シリンダ部23のD方向側に排気側シリンダ部24が隣接して配置されている。したがって、排気側シリンダ部24は、吸気側シリンダ部23のE方向かつD方向に隣接して配置されている。
【0052】
したがって、吸気側シリンダ部23は、排気側シリンダ部24の軸線方向と平行に、かつ、排気側シリンダ部24とは軸線方向の位置が異なるように、排気側シリンダ部24の上方に隣り合って形成されている。
【0053】
図3、
図4において、オイルギャラリー部27は、吸気側締結ボス部25のB方向の端部と排気側締結ボス部26のB方向の端部を通ってクランク軸方向に直交する方向に伸びている。オイルギャラリー部27は、吸気側締結ボス部25のB方向の端部と排気側締結ボス部26のB方向の端部とに連結されている。
【0054】
チェーンケース20は、吸気側シリンダ部23の下方に補強リブ28を有している。補強リブ28は、吸気側シリンダ部23の軸線方向に伸びている。補強リブ28は、吸気側シリンダ部23と排気側シリンダ部24と吸気側締結ボス部25とを連結している。
【0055】
詳しくは、補強リブ28は、排気側シリンダ部24における膨出部21の反対側の端部(B方向の端部)に沿って、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24Cから少なくとも大径部よりも上方まで、排気側シリンダ部24の軸線方向に伸びている。補強リブ28は、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24Cと、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23Cと、を連結している。詳しくは、補強リブ28は、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23Cまで伸びており、排気側シリンダ部24の一端部24Cと、吸気側シリンダ部23の一端部23Cに形成されたボス部34とを連結している。
【0056】
チェーンケース20は、吸気側シリンダ部23のC方向かつB方向の端部にボス部34を有している。ボス部34は膨出部21のB方向に設けられている。ボス部34には、吸気油圧制御弁15の脚部15Cが締結される。脚部15Cは、吸気油圧制御弁15の大径部15AのD方向の端部においてE方向かつB方向に伸びている。
【0057】
チェーンケース20は、排気側シリンダ部24のC方向の端部のA方向側にボス部35を有している。ボス部35は膨出部21に設けられている。ボス部35には、排気油圧制御弁16の脚部16Cが締結される。脚部16Cは、排気油圧制御弁16の大径部16AのD方向の端部においてE方向かつA方向に伸びている。
【0058】
チェーンケース20の表面には、延長リブ31、連結リブ32および上側リブ33が形成されている。延長リブ31、連結リブ32および上側リブ33は、E方向に突出している。
【0059】
チェーンケース20の膨出部21のD方向の端部の近傍には、E方向に伸びるボス部37が形成されている。チェーンケース20のA方向の端部には、E方向に伸びるボス部36が形成されている。
【0060】
延長リブ31は、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23Cに形成されたボス部34から上方に伸びている。延長リブ31には補強リブ28が連結されている。延長リブ31は、ボス部34からチェーンケース20のC方向の端部のシリンダヘッド締結部42の近傍まで伸びている。延長リブ31は、ボス部34に作用する荷重をチェーンケース20のC方向の端部に分散させることにより、ボス部34を補強している。
【0061】
連結リブ32は、チェーンケース20における排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24D側であって、膨出部21のD方向の端部の近傍に設けられている。連結リブ32は、排気側シリンダ部24のD方向の端部からボス部37まで、A方向かつD方向に伸びている。連結リブ32は、排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24Dと膨出部21とを連結している。詳しくは、連結リブ32は、排気側シリンダ部24の他端部24Dと、膨出部21に形成されたボス部37とを連結している。
【0062】
したがって、排気側シリンダ部24とボス部37とが、連結リブ32によって連結されている。これにより、排気側シリンダ部24に作用する荷重がボス部37を介してチェーンケース20に分散される。
【0063】
上側リブ33は、チェーンケース20のA方向の端部の近傍に設けられている。上側リブ33は、ボス部35からボス部36まで、A方向かつC方向に伸びている。上側リブ33は、ボス部35とボス部36とに連結されている。したがって、ボス部35とボス部36とが、上側リブ33によって連結されている。これにより、ボス部35に作用する荷重が、上側リブ33を介してボス部36に分散される。また、ボス部35には補強リブ38が連結されており、補強リブ38は、ボス部35からD方向に伸びている。ボス部35に作用する荷重は、補強リブ38によって膨出部21におけるボス部35のD方向の近傍の部位にも分散される。
【0064】
以上のように、本実施例では、排気側シリンダ部24は、膨出部21の下方に隣接して形成されている。また、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24Cよりも排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24Dが下方に配置されている。そして、チェーンケース20は、排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24D側に、排気側シリンダ部24の軸線方向の他端部24Dと膨出部21とを連結する連結リブ32を有する。
【0065】
これにより、車両下方の路面から飛び石等の異物が矢印A(
図4参照)に沿って排気油圧制御弁16に向かって飛来した場合、異物は膨出部21の壁部21Aまたは連結リブ32に衝突し、排気油圧制御弁16に衝突することなく落下する。したがって、排気油圧制御弁16の外部に露出する部分である大径部16Aを下方から飛来する飛び石等の異物から保護することができる。
【0066】
また、本実施例では、チェーンケース20は、排気側シリンダ部24における膨出部21の反対側の端部に沿って、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24Cから少なくとも大径部よりも上方まで排気側シリンダ部24の軸線方向に伸びる補強リブ28を有する。
【0067】
これにより、排気側シリンダ部24から外部に露出する排気油圧制御弁16の大径部16Aを、補強リブ28、排気側シリンダ部24および膨出部21によって下方から囲むことができる。このため、車両下方の路面から飛び石等の異物が矢印B(
図4参照)に沿って排気油圧制御弁16に向かって飛来した場合、異物は膨出部21または連結リブ32に衝突し、排気油圧制御弁16に衝突することなく落下する。したがって、排気側シリンダ部24から外部に露出する排気油圧制御弁16の大径部16Aを飛び石等の異物からより効果的に保護することができる。なお、補強リブ28の下面には吸気側締結ボス部25が連結されており、吸気側締結ボス部25の方が補強リブ28よりもE方向の寸法(高さ)が大きい。このため、吸気側締結ボス部25によっても大径部16Aを飛び石等の異物からより効果的に保護することができる。
【0068】
また、本実施例では、チェーンケース20は、排気側シリンダ部24の軸線方向と平行に、かつ、排気側シリンダ部24とは軸線方向の位置が異なるように、排気側シリンダ部24の上方に隣り合って形成された吸気側シリンダ部23を有している。そして、補強リブ28は、排気側シリンダ部24の軸線方向の一端部24Cと、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23Cと、を連結している。
【0069】
これにより、車両下方から飛来する飛び石等の異物が補強リブ28に衝突することで、吸気側シリンダ部23から外部に露出する吸気油圧制御弁15の大径部15Aを効果的に保護できる。
【0070】
また、排気側シリンダ部24と吸気側シリンダ部23とを補強リブ28で連結することにより、より強固に排気側シリンダ部24と吸気側シリンダ部23とを連結して補強することができ、排気側シリンダ部24および吸気側シリンダ部23の振動や変形を抑制することができる。
【0071】
また、本実施例では、補強リブ28は、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23Cまで伸びている。そして、チェーンケース20は、補強リブ28と連結され、吸気側シリンダ部23の軸線方向の一端部23Cから上方に伸びる延長リブ31を有する。
【0072】
これにより、吸気側シリンダ部23に挿入された吸気油圧制御弁15の大径部15Aが、膨出部21、補強リブ28、延長リブ31によって下方を囲まれる。そのため、吸気側シリンダ部23から外部に露出する吸気油圧制御弁15の大径部15Aを飛び石等の異物からより効果的に保護することができる。
【0073】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
1...内燃機関、3...シリンダヘッド、11...可変バルブタイミング機構、15...吸気油圧制御弁、15A...大径部、15B...小径部、16...排気油圧制御弁、16A...大径部、16B...小径部、20...チェーンケース、21...膨出部、23...吸気側シリンダ部(第2シリンダ部)、23A...収容孔、24...排気側シリンダ部(シリンダ部、第1シリンダ部)、24A...収容孔、24C...一端部、24D...他端部、28...補強リブ、31...延長リブ、32...連結リブ