(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023078952
(43)【公開日】2023-06-07
(54)【発明の名称】軸ばね用保護カバー及び鉄道車両用軸ばね
(51)【国際特許分類】
F16F 1/41 20060101AFI20230531BHJP
F16J 3/04 20060101ALI20230531BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20230531BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20230531BHJP
【FI】
F16F1/41
F16J3/04 Z
F16J15/52 Z
F16F15/04 P
F16F15/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192295
(22)【出願日】2021-11-26
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】大坪 繁宏
(72)【発明者】
【氏名】小川 智
【テーマコード(参考)】
3J043
3J045
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J043AA03
3J043CB13
3J043DA06
3J043FA04
3J043FB12
3J045AA01
3J045BA02
3J045BA03
3J045CB16
3J045EA10
3J048AA01
3J048BA08
3J048EA15
3J059AB13
3J059AB15
3J059BA43
3J059DA43
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】鉄道車両用軸ばねをコンパクトに覆うことができ、風圧による変形や破損、脱落等も生じにくくなる軸ばね用保護カバーを提供する。
【解決手段】鉄道車両用軸ばね20に装着され、当該装着状態で弾性部23の下側外面を覆う保護カバー1は、弾性を有する薄膜材料で一体筒状に形成されると共に、軸方向に伸縮可能な蛇腹部4を含み、装着状態で、内筒21にはゴム層27Aを介して間接的に当接し、外筒22には直接当接し、弾性部23には、内筒21及び外筒22との当接位置と径方向に離れた位置で直接当接している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる芯材と、前記芯材と同軸で配置される外筒と、弾性体と金具とを径方向へ交互に積層して形成され、前記芯材と前記外筒との間に接着される環状の弾性部と、を含んでなる鉄道車両用軸ばねに装着され、当該装着状態で前記弾性部の下側外面を覆う軸ばね用保護カバーであって、
弾性を有する薄膜材料で一体筒状に形成されると共に、軸方向に伸縮可能な蛇腹部を含み、
前記装着状態で、前記芯材には直接又は前記弾性体を介して間接的に当接し、前記外筒には直接当接し、前記弾性部には、前記芯材及び前記外筒との当接位置と径方向に離れた位置で直接当接することを特徴とする軸ばね用保護カバー。
【請求項2】
前記蛇腹部は、径方向に、前記弾性部の外周面に当接して前記蛇腹部を弾性支持する支持部と、前記支持部に支持されて前記弾性部の外周面に近接する可動部とを交互に有していることを特徴とする請求項1に記載の軸ばね用保護カバー。
【請求項3】
前記支持部は、円筒状で、前記弾性部における前記金具の端部の位置に当接していることを特徴とする請求項2に記載の軸ばね用保護カバー。
【請求項4】
前記弾性部の下面には、径方向に凹凸形状が形成されて、各前記可動部の一部は、前記凹凸形状のうちの複数の凸部同士を繋いで規定される所定の外形領域の内側に位置していることを特徴とする請求項2又は3に記載の軸ばね用保護カバー。
【請求項5】
前記弾性部には、前記外形領域よりも内側に凹む凹部が形成されており、前記可動部の前記一部は、前記凹部内に入り込んでいることを特徴とする請求項4に記載の軸ばね用保護カバー。
【請求項6】
前記装着状態で、軸方向の両端の一端側は、前記芯材の外周面に直接又は前記弾性体を介して間接的に当接し、前記両端の他端側は、前記外筒の外周面に直接当接していることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の軸ばね用保護カバー。
【請求項7】
前記芯材への当接部分には、端部から軸方向にスリットが形成されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の軸ばね用保護カバー。
【請求項8】
芯材と、前記芯材と同軸で配置される外筒と、弾性体と金具とを径方向へ交互に積層して形成され、前記芯材と前記外筒との間に接着される環状の弾性部と、を含んでなる鉄道車両用軸ばねであって、
請求項1乃至7の何れかに記載の軸ばね用保護カバーが装着されて、前記弾性部の下側外面が前記軸ばね用保護カバーに覆われていることを特徴とする鉄道車両用軸ばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用軸ばねを保護するために用いられる軸ばね用保護カバーと、当該軸ばね用保護カバーを設けた鉄道車両用軸ばねとに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車において、車軸を支持する軸箱に設けたアームと、車両を支持する台車フレームとの間には、鉄道車両用軸ばねが設置されている。鉄道車両用軸ばねは、アーム側に設けた芯材と、台車フレーム側に設けた外筒との間に、複数の弾性層と複数の金具とを径方向へ交互に積層してなる環状の弾性部を介在させて、全体を円錐状に形成したものとなっている。
このような鉄道車両用軸ばねには、外筒の下方に露出する弾性部の防火、防風、防雪、防水、防塵等を目的として、軸ばね用保護カバーが装着されている。この軸ばね用保護カバーとして、例えば特許文献1には、可撓性材料で形成され、上側が大径となり、下側が小径となる段付き筒状の保護カバーが開示されている。この保護カバーは、上端開口が外輪(外筒)の外周に、下端開口が軸(芯材)の外周にそれぞれ締付バンド等を用いて固定される。また、他の例として、鉄道車両用軸ばねへの後付けを容易とするために、筒状の一部を軸方向に分断したC字形状の保護カバーや、半円弧状に分割した2つのカバー部を互いに連結してなる保護カバーも開示されている。
一方、特許文献2にも、上下開口を備えた円筒状に形成され、上側を大径、下側を小径とした漏斗状(段付き筒状)の防火カバーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-278398号公報
【特許文献2】特開2016-173130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のような段付き筒状の保護カバーは、弾性部と干渉しないように大径となる上側の内部空間を大きく形成しているため、鉄道車両用軸ばねに対してサイズが大きくなる。よって、走行時の風圧で変形しやすくなり、鉄道車両用軸ばねとの結合部分が外れたり、変形時の屈曲が一箇所に集中して破損等が生じたりするおそれがあった。これは、特許文献1に開示されるC字形状や分割構造の保護カバーにおいても同様で、特にこのタイプでは、走行時の風圧で継ぎ目部分に応力が集中すると鉄道車両用軸ばねから外れるおそれが大きくなっていた。
【0005】
そこで、本開示は、鉄道車両用軸ばねをコンパクトに覆うことができ、風圧による変形や破損、脱落等も生じにくくなる軸ばね用保護カバー及び鉄道車両用軸ばねを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の構成は、上下方向に延びる芯材と、前記芯材と同軸で配置される外筒と、弾性体と金具とを径方向へ交互に積層して形成され、前記芯材と前記外筒との間に接着される環状の弾性部と、を含んでなる鉄道車両用軸ばねに装着され、当該装着状態で前記弾性部の下側外面を覆う軸ばね用保護カバーであって、
弾性を有する薄膜材料で一体筒状に形成されると共に、軸方向に伸縮可能な蛇腹部を含み、
前記装着状態で、前記芯材には直接又は前記弾性体を介して間接的に当接し、前記外筒には直接当接し、前記弾性部には、前記芯材及び前記外筒との当接位置と径方向に離れた位置で直接当接することを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記蛇腹部は、径方向に、前記弾性部の外周面に当接して前記蛇腹部を弾性支持する支持部と、前記支持部に支持されて前記弾性部の外周面に近接する可動部とを交互に有していることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記支持部は、円筒状で、前記弾性部における前記金具の端部の位置に当接していることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記弾性部の下面には、径方向に凹凸形状が形成されて、各前記可動部の一部は、前記凹凸形状のうちの複数の凸部同士を繋いで規定される所定の外形領域の内側に位置していることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記弾性部には、前記外形領域よりも内側に凹む凹部が形成されており、前記可動部の前記一部は、前記凹部内に入り込んでいることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記装着状態で、軸方向の両端の一端側は、前記芯材の外周面に直接又は前記弾性体を介して間接的に当接し、前記両端の他端側は、前記外筒の外周面に直接当接していることを特徴とする。
第1の構成の別の態様は、上記構成において、前記芯材への当接部分には、端部から軸方向にスリットが形成されていることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本開示の第2の構成は、芯材と、前記芯材と同軸で配置される外筒と、弾性体と金具とを径方向へ交互に積層して形成され、前記芯材と前記外筒との間に接着される環状の弾性部と、を含んでなる鉄道車両用軸ばねであって、
第1の構成の何れかに記載の軸ばね用保護カバーが装着されて、前記弾性部の下側外面が前記軸ばね用保護カバーに覆われていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、軸ばね用保護カバーを鉄道車両用軸ばねの形状に沿って密着した状態で装着でき、省スペースとなる。よって、走行時の空気抵抗が小さくなる。特に、軸ばね用保護カバーは、一体筒状に形成されて継ぎ目等を有しないため、風圧にも強くなる。従って、鉄道車両用軸ばねをコンパクトに覆うことができ、風圧による変形や破損、脱落等が生じにくくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、蛇腹部は、径方向に、蛇腹部を弾性支持する支持部と弾性部の外周面に近接する可動部とを交互に有しているので、芯材及び外筒との当接位置の部位で軸ばね用保護カバーを鉄道車両用軸ばねへ弾性的に固定でき、支持点が多くなって安定した装着が可能となる。また、弾性部に沿った形状が好適に維持されるため、風圧に強くなってばたつきにくくなる上、弾性部の変形にも追従しやすくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、支持部は円筒状で、弾性部における金具の端部の位置に当接しているので、鉄道車両用軸ばねが軸方向に変形しても、可動部の変形を許容しつつ、支持部は位置ずれすることなく当接状態を維持できる。このため脱落のおそれが一層低くなる。また、蛇腹部の屈曲が複数の可動部に分散されるため、軸ばね用保護カバーが破損しにくくなって耐久性も向上する。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、弾性部の下面には、径方向に凹凸形状が形成されて、各可動部の一部は、凹凸形状のうちの複数の凸部同士を繋いで規定される所定の外形領域の内側に位置しているので、より弾性部に沿った形状となり、風圧に強くなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、弾性部には、外形領域よりも内側に凹む凹部が形成されており、可動部の一部は、凹部内に入り込んでいるので、可動部の長さを径方向に確保しにくい場所でも凹部内でたるませることで可撓性を確保できる。また、凹部内に入り込むことで風圧による破損がより生じにくくなる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、装着状態で、軸方向の両端の一端側は、芯材の外周面に直接又は間接的に当接し、両端の他端側は、外筒の外周面に直接当接しているので、軸ばね用保護カバーの内外を隔離でき、弾性部を気密状態で保護可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、芯材への当接部分には、端部から軸方向にスリットが形成されているので、芯材にフランジ部等の凸形状があっても、軸ばね用保護カバーを鉄道車両用軸ばねへ装着する際に支障なく下方から被せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】軸ばね用保護カバーを装着した鉄道車両用軸ばねの正面図である。
【
図3】軸ばね用保護カバーの下方からの斜視図である。
【
図6】
図2における弾性部の下側部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、軸ばね用保護カバー(以下「保護カバー」という。)1を装着した鉄道車両用軸ばね(以下「軸ばね」という。)20の正面図、
図2は、軸ばね20の中央縦断面図である。保護カバー1は、本開示の第1の構成の軸ばね用保護カバーの一例であり、軸ばね20は、本開示の第2の構成の鉄道車両用軸ばねの一例である。
まず、軸ばね20は、内筒21と、外筒22と、弾性部23とを有している。内筒21は、軸ばね20の中心に位置して上下方向に延びる。内筒21の外面において、上下方向の中間部よりやや下側には、フランジ部24が形成されている。フランジ部24の上側は、上方へ向かうに従って小径となる内テーパ部25となっている。
外筒22は、内筒21よりも大径で、内筒21と同軸で配置されている。外筒22は、上端から下方へ向かうに従って大径となる外テーパ部26を備えている。外筒22は、内筒21よりも上方に配置されて、外テーパ部26の下部を径方向視で内筒21の内テーパ部25の上部とオーバーラップさせている。
【0010】
弾性部23は、内筒21と外筒22との間で環状に形成されている。弾性部23は、中心側から、3つの筒状のゴム層27A,27B,27Cと、2つの筒状の中間金具28A,28Bとを同軸で交互に積層した状態で加硫接着してなる。ゴム層27A~27C及び中間金具28A,28Bは、弾性部23の中心側へ向かうに従って徐々に下方へずれるように積層されて、弾性部23の全体は円錐状となっている。最内のゴム層27Aが内筒21の内テーパ部25の外周面に加硫接着され、最外のゴム層27Cが外筒22の外テーパ部26の内周面に加硫接着されている。
ゴム層27A~27Cは、中間金具28A,28Bの上下の端面もそれぞれ覆って径方向で互いに繋がっている。ゴム層27A~27Cの各上端面は、下方へリング状に凹む上側凹部29となっている。ゴム層27A~27Cの各下端面は、上方へリング状に凹む下側凹部30となっている。よって、弾性部23の下面は、径方向に下側凹部30を挟んで、ゴム層27A、中間金具28Aの下端を覆うゴム層27A,27Bの接続部分、中間金具28Bの下端を覆うゴム層27B,27Cの接続部分、ゴム層27Cが、それぞれ下方へ突出するリング状の凸部31となる凹凸形状となっている。
【0011】
そして、保護カバー1は、薄膜状のゴムによって一体筒状に成形されている。このゴムには、保護の目的に応じた各種材料が採用される。例えば防火を目的とする場合には、例えばEN45545-2の欧州難燃規格などを満足する材料が好適に採用される。また、大きな変形が発生するものでないため、例えば難燃処方を施したクロロスルフォン化ポリエチレン(CSM)やエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等を採用して難燃性を達成することもできる。但し、保護カバー1の表面に難燃性のコーティング層を設けて要求される難燃性を達成することも可能である。
保護カバー1は、
図3及び
図4にも示すように、上装着部2と、下装着部3と、蛇腹部4とを有している。上装着部2は、外筒22の外テーパ部26の下端外周面を覆う大径のリング状となっている。下装着部3は、内筒22の内テーパ部25の下端外周面をゴム層27A越しに覆う小径のリング状となっている。保護カバー1の径方向の一箇所には、下装着部3の下端から蛇腹部4の下部にかけて上向きにスリット5が形成されている。
【0012】
蛇腹部4は、上装着部2と繋がる上端から中央側へ向かうに従って下方へ突出する円錐形状となって、下端が下装着部3と繋がっている。
蛇腹部4は、
図5にも示すように、中心側から、2つのリング状の山部6A,6Bと、3つのリング状の谷部7A,7B,7Cとを径方向へ交互に形成して軸方向に伸縮可能となっている。ここでは山部6A,6Bが、弾性部23の中間金具28A,28Bの下側に位置し、谷部7A~7Cが、弾性部23のゴム層27A~27Cの下側に位置するようになっている。谷部7Cは、蛇腹部4の内側で上方へ突出して、径方向視で上装着部2とオーバーラップしている。
【0013】
この保護カバー1は、軸ばね20に下方から穿かせるようにして被せて、上装着部2を外筒22の外テーパ部26の下端外周面に外装させる。そして、下装着部3は、内筒21の内テーパ部25の根元でゴム層27Aの下端外周面に外装させる。このとき、保護カバー1の下部にはスリット5が形成されているので、下装着部3に内筒21を通過させる際、スリット5部分で拡開する。よって、下装着部3はフランジ部24を容易に乗り越えることができる。
次に、中間金具28A,28Bの下方に位置する蛇腹部4の山部6A,6Bの上側部分を、
図6に示すように、中間金具28A,28Bの下端のゴム層27B,27Cの外面にそれぞれ当接させる。すると、当該上側部分は、それぞれゴム層27B,27Cの外面に当接して蛇腹部4を弾性支持する円筒状の支持部8A,8Bとなる。支持部8A,8Bは、全周に亘って均等にテンションが加わった状態でゴム層27B,27C越しに中間金具28A,28Bの端部を把持している。
【0014】
一方、ゴム層27Aの下方に位置する谷部7Aの上側部分は、下装着部3と山部6Aとの間でゴム層27Aに近接し、弾性変形可能な可動部9Aとなる。同様に、ゴム層27Bの下方に位置する谷部7Bの上側部分は、山部6A,6Bの間でゴム層27Bに近接し、弾性変形可能な可動部9Bとなる。そして、ゴム層27Cの下方に位置する谷部7Cの上側部分は、山部6Bと上装着部2との間でゴム層27Cに近接し、弾性変形可能な可動部9Cとなる。
この可動部9A~9Cの一部は、弾性部23の下面の各凸部31の最外径部同士を繋いで規定される所定の外形領域(
図6の二点鎖線で示される領域)Aの内側に何れも位置している。
このうち最外の可動部9Cは、外形領域A内でさらに最外のゴム層27Cの下側凹部30内へ部分的に入り込んで下側凹部30の内面に近接し、径方向視で外筒22とオーバーラップしている。
この状態で、上装着部2を締付バンド35で外筒22の外テーパ部26の外周面に固定する。同様に下装着部3を締付バンド36で内筒21の内テーパ部25の根元に固定する。すると、保護カバー1は、フランジ部24の上側で弾性部23を下方から気密状態で覆う格好で軸ばね20に装着される。
【0015】
こうして保護カバー1が装着された軸ばね20は、鉄道車両の台車において、車軸を支持する軸箱に設けたアームと、車両を支持する台車フレームとの間に配置され、内筒21がアームに固定され、外筒22が台車フレームに固定される。よって、軸ばね20では、鉄道車両の走行時に発生する振動によって内筒21と外筒22とが三次元的に相対移動すると、弾性部23が追従して弾性変形して防振作用を発揮する。
このとき保護カバー1も内筒21と外筒22との相対移動に追従して弾性変形する。特に蛇腹部4では、支持部8A,8Bがゴム層27B,27Cの外周面に当接して保護カバー1を弾性支持すると共に、可動部9A~9Cがゴム層27A~27Cの下面に近接しているので、保護カバー1は弾性部23に沿った形状を維持しつつ追従して弾性変形し、風圧によってばたついたりすることがなくなる。
【0016】
このように、上記形態の軸ばね20に装着され、当該装着状態で弾性部23の下側外面を覆う保護カバー1は、弾性を有する薄膜材料で一体筒状に形成されると共に、軸方向に伸縮可能な蛇腹部4を含み、装着状態で、内筒21にはゴム層27Aを介して間接的に当接し、外筒22には直接当接し、弾性部23には、内筒21及び外筒22との当接位置と径方向に離れた位置で直接当接している。
この構成によれば、軸ばね20の形状に沿って密着した状態で装着でき、省スペースとなる。よって、走行時の空気抵抗が小さくなる。特に、保護カバー1は、一体筒状に形成されて継ぎ目等を有しないため、風圧にも強くなる。従って、軸ばね20をコンパクトに覆うことができ、風圧による変形や破損、脱落等が生じにくくなる。
【0017】
特に、蛇腹部4は、径方向に、弾性部23の外周面に当接して蛇腹部4を弾性支持する支持部8A,8Bと、支持部8A,8Bに支持されて弾性部23の外周面に近接する可動部9A~9Cとを交互に有している。
よって、上下装着部2,3以外の部位で保護カバー1を軸ばね20へ弾性的に固定でき、支持点が多くなって安定した装着が可能となる。また、弾性部23に沿った形状が好適に維持されるため、風圧に強くなってばたつきにくくなる上、弾性部23の変形にも追従しやすくなる。
また、支持部8A,8Bは、円筒状で、弾性部23における中間金具28A,28Bの端部の位置に当接している。
よって、軸ばね20が軸方向に変形しても、可動部9A~9Cの変形を許容しつつ、支持部8A,8Bは位置ずれすることなく当接状態を維持できる。このため脱落のおそれが一層低くなる。また、蛇腹部4の屈曲が複数の可動部9A~9Cに分散されるため、保護カバー1が破損しにくくなって耐久性も向上する。
【0018】
弾性部23の下面には、径方向に凹凸形状が形成されて、可動部9A~9Cの一部は、凹凸形状のうちの複数の凸部31同士を繋いで規定される所定の外形領域Aの内側に位置している。
よって、より弾性部23に沿った形状となり、風圧に強くなる。
ゴム層27Cには、外形領域Aよりも内側に凹む下側凹部30(凹部の一例)が形成されており、可動部9Cの一部は、下側凹部30内に入り込んでいる。
よって、可動部9Cの長さを径方向に確保しにくい場所でも下側凹部30内でたるませることで可撓性を確保できる。また、下側凹部30内に入り込むことで風圧による破損がより生じにくくなる。
【0019】
装着状態で、軸方向の両端のうちの下装着部3(一端側の一例)は、内筒21の外周面にゴム層27Aを介して間接的に当接し、上装着部2(他端側の一例)は、外筒22の外周面に直接当接している。
よって、保護カバー1の内外を隔離でき、弾性部23を気密状態で保護可能となる。
内筒21への当接部分には、端部から軸方向にスリット5が形成されている。
よって、内筒21にフランジ部24があっても、保護カバー1を軸ばね20へ装着する際に支障なく下方から被せることができる。
【0020】
そして、上記形態の軸ばね20は、上下方向に延びる内筒21(芯材の一例)と、内筒21と同軸で配置される外筒22と、ゴム層27A~27C(弾性体の一例)と中間金具28A,28B(金具の一例)とを径方向へ交互に積層して形成され、内筒21と外筒22との間に接着される環状の弾性部23と、を含んでなり、弾性部23の下側外面を覆う保護カバー1が装着されている。
この構成によれば、保護カバー1が軸ばね20の形状に沿って密着した状態で装着され、省スペースとなる。よって、走行時の空気抵抗が小さくなる。特に、保護カバー1は、一体筒状に形成されて継ぎ目等を有しないため、風圧にも強くなる。従って、軸ばね20が保護カバー1によってコンパクトに覆われ、風圧による変形や破損、脱落等が生じにくくなる。
【0021】
以下、本開示の変更例について説明する。
保護カバーにおいて、山部及び谷部の数及び形状は、上記形態に限定しない。軸ばねの弾性部の積層構造に合わせて山部及び谷部の数は適宜増減できる。山部及び谷部の断面形状も、上記形態よりも断面半径を大きくすることができる。よって、山部及び谷部の形状に応じて支持部及び可動部の数及び形状も変更される。
上記形態では、複数の可動部の全てが弾性部の外形領域の内側へ部分的に位置しているが、複数の可動部のうちの一部のみが当該外形領域の内側に位置していてもよい。逆に複数の可動部の全てが当該外形領域の外側に位置していてもよい。
上記形態では、最外の可動部がゴム層の下側凹部内に入り込んでいるが、これ以外の箇所の可動部がゴム層の下側凹部内に入り込んでいてもよい。複数又は全ての可動部がゴム層の下側凹部内に入り込んでいてもよい。逆に全ての可動部が当該下側凹部に入り込んでいなくてもよい。
【0022】
支持部は、中間金具の端部の位置でなく、端部より上側に当接していてもよい。
上記形態では、下装着部はゴム層を介して間接的に内筒に当接しているが、ゴム層の形態によっては下装着部が直接内筒に当接してもよい。
上装着部は、外筒の外周面でなく内周面に当接した状態で固定されてもよい。
上装着部及び下装着部はリング状に限らない。固定手段も締付バンド以外が採用できる。
スリットは、複数あってもよいし、省略してもよい。
上記形態では、保護カバーが軸ばねへの装着状態で弾性部を気密状態で保護可能となっているが、装着状態で気密状態とならなくてもよい。
【0023】
軸ばねにおいて、芯材は上記形態の内筒に限らない。例えば芯材は、筒状でない軸体(中実及び中空を含む)であってもよい。芯材の外面は、上記形態の内筒のようなテーパ状でなくてもよい。
外筒は、テーパ状でなくてもよい。
弾性部のゴム層と中間金具との数も適宜増減できる。但し、金具は、上記形態の中間金具のような筒状でなくてもよい。金具は、上記形態のように弾性部の中心へ行くほど下方に位置するものでなくてもよい。
弾性体は、上記形態のゴム層のように中間金具の上下で径方向に繋がってなくてもよい。ゴム層に上側凹部及び下側凹部がなくてもよい。
弾性部のゴム層は、上記形態のように中心へ行くほど徐々に下方へずれないように積層してもよい。
外筒は、芯材よりも上方に位置しなくてもよい。
軸ばねは、芯材と弾性部と外筒とが円錐状に配置されるものに限らない。例えば、これらが円柱状に配置されるものであってもよい。
弾性部の下面の凹凸形状は、弾性体と金具との数や配置に応じて適宜変更できる。よって、凸部は、上記形態のようなリング状でなくてもよい。外形領域も、複数の凸部同士を繋いで可動部の一部が内側に入り込める空間を形成する領域であれば、上記形態のように各凸部の最外径部同士を繋いで形成するものに限らない。
【符号の説明】
【0024】
1・・軸ばね用保護カバー、2・・上装着部、3・・下装着部、4・・蛇腹部、5・・スリット、6A,6B・・山部、7A~7C・・谷部、8A,8B・・支持部、9A~9C・・可動部、20・・鉄道車両用軸ばね、21・・内筒、22・・外筒、23・・弾性部、24・・フランジ部、25・・内テーパ部、26・・外テーパ部、27A~27C・・ゴム層、28A,28B・・中間金具、29・・上側凹部、30・・下側凹部、31・・凸部、35,36・・締付バンド、A・・外形領域。