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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079320
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】超音波治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20230601BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20230601BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/14
A61B8/08
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021192735
(22)【出願日】2021-11-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】720007925
【氏名又は名称】ソニア・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 和人
(72)【発明者】
【氏名】植山 剛
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ35
4C160JJ36
4C160JJ38
4C160MM32
4C601DE08
4C601FF11
4C601FF16
4C601JC06
4C601KK24
(57)【要約】
【課題】本発明は、超音波治療装置を用いた治療において、治療用超音波が患部に正確に照射されたことの確認を容易にすることを目的とする。
【解決手段】制御部30は、治療用超音波送信処理、照射領域画像生成処理およびBモード画像生成処理を実行する。治療用超音波送信処理は、超音波振動子1に治療用超音波を送信させる処理である。照射領域画像生成処理は、複数の超音波を異なるタイミングで超音波プローブ16に送信させ、生体組織で反射し、超音波プローブ16で受信された複数の超音波に基づく複数の受信信号を合成し、各受信信号の高調波成分に基づく照射領域データを生成する処理である。Bモード画像生成処理は、複数の受信信号のうちいずれかを用いて、生体組織のBモード画像データを生成する処理である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用の超音波振動子と、
超音波プローブと、
前記超音波振動子および前記超音波プローブを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記超音波振動子に治療用超音波を送信させる治療用超音波送信処理と、
複数の超音波を異なるタイミングで前記超音波プローブに送信させ、生体組織で反射し、前記超音波プローブで受信された複数の前記超音波に基づく複数の受信信号を合成し、各前記受信信号の高調波成分に基づく照射領域データを生成する照射領域画像生成処理と、
複数の前記受信信号のうちいずれかを用いて、前記生体組織のBモード画像データを生成するBモード画像生成処理と、
を実行することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、
前記照射領域データに基づく第1画像と、前記Bモード画像データに基づく第2画像とを表示装置に表示させることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、
前記第1画像と前記第2画像とを重ねて前記表示装置に表示させることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、
前記超音波振動子の位置に応じた治療基準領域または治療基準点を示す図形を、前記第2画像に重ねて表示することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、
前記生体組織に固定された患者座標系における各位置での治療量を、各前記Bモード画像データに対応する各前記照射領域データに基づいて求めることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超音波治療装置において、
前記超音波振動子を駆動する駆動装置を備え、
前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、
前記生体組織の動きに応じて前記駆動装置を制御し、前記超音波振動子を前記生体組織の動きに応じて移動させることを特徴とする超音波治療装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波治療装置に関し、特に、治療用の超音波振動子と、画像生成用の超音波プローブとを備える装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度焦点式超音波療法を用いた治療装置が広く用いられている。この治療装置は、HIFU照射装置あるいはHIFU照射システムと称され(High Intensity Focused Ultrasound)、治療部位に超音波を照射して組織を壊死させる。
【0003】
一般に、HIFU照射装置は、椀状の面に配置された複数の超音波振動子を備えている。複数の超音波振動子は、それぞれから発せられた超音波が一点に照射され焦点を形成するように配置されている。治療の際には、焦点の位置が治療部位に合わせられ超音波が照射される。照射位置の確認には、超音波画像上に焦点を表す超音波診断装置が用いられる。
【0004】
以下の特許文献1には、Bモード画像(断層画像)を表示する超音波診断装置を用いて焦点の位置を観測する超音波治療装置が記載されている。この装置では、組織に影響のない弱いレベルの超音波が治療用の超音波振動子から発せられると共に、超音波イメージングプローブによる超音波の送受信によって断層画像が表示される。被検体の組織の音響特性は組織の温度変化に応じて変化するため、断層画像には焦点の位置が輝度の強弱によって示される。
【0005】
以下の特許文献2には、本願発明に関連する技術として、マイクロバブル系造影剤により散乱されて生じるエコー成分を、送信パルスの非線形伝播により生ずる成分から峻別して映像化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-71069号公報
【特許文献2】国際公開第2005/087109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のHIFU照射装置を用いた治療では、治療用超音波が患部に照射されたことの確認が、治療用超音波によって発生する気泡の位置の観測と、患者の生体組織の観測とによって行われていた。気泡の位置の観測は、例えば、超音波プローブから患部に向けて超音波を送信し、気泡の周囲から発生する高調波を超音波プローブで受信するハーモニックイメージングによって行われる。また、患者の生体組織の観測は、超音波プローブによる超音波の送受信によってBモード画像を取得することで行われる。しかし、この確認方法では、気泡の位置の観測と、生体組織の観測とを個別に行う必要があり、手順が複雑で容易でない。
【0008】
本発明は、超音波治療装置を用いた治療において、治療用超音波が患部に照射されたことの確認を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、治療用の超音波振動子と、超音波プローブと、前記超音波振動子および前記超音波プローブを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記超音波振動子に治療用超音波を送信させる治療用超音波送信処理と、複数の超音波を異なるタイミングで前記超音波プローブに送信させ、生体組織で反射し、前記超音波プローブで受信された複数の前記超音波に基づく複数の受信信号を合成し、各前記受信信号の高調波成分に基づく照射領域データを生成する照射領域画像生成処理と、複数の前記受信信号のうちいずれかを用いて、前記生体組織のBモード画像データを生成するBモード画像生成処理と、を実行することを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記制御部は、前記照射領域データに基づく第1画像と、前記Bモード画像データに基づく第2画像とを表示装置に表示させる。
【0011】
望ましくは、前記制御部は、前記第1画像と前記第2画像とを重ねて前記表示装置に表示させる。
【0012】
望ましくは、前記制御部は、前記超音波振動子の位置に応じた治療基準領域または治療基準点を示す図形を、前記第2画像に重ねて表示する。
【0013】
望ましくは、前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、前記生体組織に固定された患者座標系における各位置での治療量を、各前記Bモード画像データに対応する各前記照射領域データに基づいて求める。
【0014】
望ましくは、前記超音波振動子を駆動する駆動装置を備え、前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、前記生体組織の動きに応じて前記駆動装置を制御し、前記超音波振動子を前記生体組織の動きに応じて移動させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、治療用超音波が患部に照射されたことの確認を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】HIFU照射装置の構成を示す図である。
図2】治療用超音波とイメージング超音波の時間波形を概念的に示す図である。
図3】Bモード照射領域画像を、HIFU振動子ユニットと共に模式的に示す図である。
図4】時間経過と共に変化するBモード照射領域画像と、治療量分布を示す図である。
図5】追従照射処理下におけるBモード照射領域画像、生体組織の輪郭およびHIFU振動子ユニットを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各図を参照して本発明の実施形態について説明する。複数の図面に示された同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。図1には、本発明の実施形態に係るHIFU照射装置100(超音波治療装置)の構成が示されている。HIFU照射装置100は、HIFU振動子ユニット10、HIFU駆動回路14、超音波プローブ16、送受信回路18、イメージング演算部20、コントローラ22、表示装置24および駆動装置26を備えている。
【0018】
コントローラ22は、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ等であってよい。コントローラ22には、ユーザがHIFU照射装置100を操作するための操作機器(図示せず)が接続されている。操作機器は、マウス、表示装置24と一体化されたタッチパネル、スイッチ、キーボード等を含んでよい。
【0019】
HIFU振動子ユニット10は、開口が下方に向けられた椀形状の振動子筐体12と、振動子筐体12に固定された複数の超音波振動子1を備えている。振動子筐体12の形状は錐体の側面と同様の形状であってもよい。ここで、錐体とは、空間内の1点から底面に伸びる直線の集合によって形成される立体形状をいう。各超音波振動子1は、各超音波振動子1が超音波を発したときに、振動子筐体12の下方の治療基準点Pで、超音波の強度が強められるように振動子筐体12に固定されている。
【0020】
HIFU駆動回路14は、コントローラ22の制御に応じてHIFU振動子ユニット10が備える各超音波振動子1に超音波を発生させる。また、HIFU駆動回路14は、コントローラ22の制御に応じて、各超音波振動子1が発生する超音波の強度を調整する。
【0021】
超音波プローブ16は、振動子筐体12の下方、かつ、治療基準点Pの上方の位置で超音波が送受信されるように、振動子筐体12に固定されている。本実施形態では、振動子筐体12の頂点部を超音波プローブ16が上下方向に貫通し、超音波を送受信する送受信部2が下方に向けられている。
【0022】
送受信回路18およびイメージング演算部20には、一般的な超音波診断装置が用いられてよい。イメージング演算部20は、プログラムを実行して送受信回路18を制御するプロセッサによって構成されてよい。送受信回路18は、イメージング演算部20の制御に応じて、次のような処理を実行する。すなわち、送受信回路18は、超音波プローブ16に超音波を送信させ、送信される超音波によるビーム(超音波ビーム)を走査させる。超音波ビームは、振動子筐体12の頂点部から上下に伸びる中心軸3を含む観測面で走査される。送受信回路18は、超音波ビームが向けられた方向から到来する反射超音波を超音波プローブ16に受信させ、超音波ビームが向けられた各方向から受信された反射超音波に基づく受信信号を、超音波プローブ16から取得する。送受信回路18は、各受信信号をイメージング演算部20に出力する。
【0023】
イメージング演算部20は、送受信回路18から出力された各受信信号に基づいて超音波データを生成する。超音波データは、患者の生体組織で高調波成分が発生した領域を示す照射領域データ、または、患者の生体組織に対して取得されたBモード画像(断層画像)を示すBモード画像データであってよい。
【0024】
駆動装置26は、コントローラ22の制御に応じて、HIFU振動子ユニット10および超音波プローブ16を移動させ、これらの位置を調整する。また、駆動装置26は、コントローラ22の制御に応じて、超音波プローブ16を中心軸3の回りで回転させ、中心軸3の回りで超音波プローブ16の観測面を回転させてもよい。
【0025】
治療用の超音波がHIFU振動子ユニット10から患者に照射される前には、以下のような位置決め処理が実行される。HIFU駆動回路14は、各超音波振動子1に、治療時よりも強度が小さい超音波を送信させる。駆動装置26は、超音波プローブ16が所定の回転角度位置の観測面で超音波ビームを走査するように、超音波プローブ16の回転角度位置を設定する。
【0026】
イメージング演算部20は、観測面で超音波プローブ16に超音波ビームを走査させ、超音波データとしてBモード画像データを取得し、コントローラ22に出力する。コントローラ22は、Bモード画像を表示装置24に表示させる。施術者としてのユーザは、表示装置24に表示されたBモード画像を参照して、HIFU振動子ユニット10から送信される超音波が強められる位置(焦点)と患部の位置との相違を確認する。
【0027】
ユーザは、焦点の位置と患部の位置との相違が許容範囲内でないときは、超音波プローブ16およびHIFU振動子ユニット10の位置または姿勢を変更する。ユーザは、焦点の位置と患部の位置とが一致していること、あるいは、焦点の位置と患部の位置との相違が許容範囲内であることを確認した後に、コントローラ22に対して治療のための操作を行う。コントローラ22は、ユーザによる操作に応じてHIFU駆動回路14を制御する。HIFU駆動回路14は、コントローラ22による制御に応じて、治療に必要な強度を有する治療用超音波を各超音波振動子1に送信させる。これによって、焦点において生体組織が焼灼され、治療が施される。
【0028】
HIFU照射装置100は、治療用超音波を患者に照射しながら、治療用超音波が照射された照射領域を示す画像を、Bモード画像に重ねて表示装置24に表示する照射領域表示処理を実行する。ここで、2つの画像を重ねて表示する処理は、一方の画像を透かして他方の画像が見通せるように画像データを合成して新たな画像データを生成し、その新たな画像データに基づく画像を表示する処理であってよい。図2には、照射領域表示処理が実行される際に、HIFU振動子ユニット10から送信される治療用超音波38と、超音波プローブ16から送信されるイメージング超音波46の時間波形が概念的に示されている。
【0029】
治療用超音波38は、強レベル超音波40と、強レベル超音波40に続く弱レベル超音波42とを含む強弱超音波パルス44から構成される。強弱超音波パルス44は、時間経過と共にHIFU振動子ユニット10から繰り返し送信される。時間軸上で隣接する強弱超音波パルス44の間には、照射休止期間48が設けられており、照射休止期間48では、治療用超音波38の送信が停止される。
【0030】
HIFU振動子ユニット10から強弱超音波パルス44が送信されると、焦点において生体組織が焼灼される。強レベル超音波40が生体組織に照射される共に、生体組織からは気泡が発生し、弱レベル超音波42の照射によって気泡が発生した状態が維持される。
【0031】
照射休止期間48の間、超音波プローブ16からは、3回に亘って超音波データ生成用のイメージング超音波46が送信される。第2回目に送信される第2イメージング超音波46-2は、第1回目に送信される第1イメージング超音波46-1に対して位相が120°だけ遅れている。第3回目に送信される第3イメージング超音波46-3は、第2イメージング超音波46-2に対して位相が120°だけ遅れている。
【0032】
各イメージング超音波46は生体組織内で反射する。強弱超音波パルス44によって発生した気泡の周囲で各イメージング超音波46が反射する際には、高調波が発生する。したがって、生体組織から反射する反射超音波には、基本波に加えて気泡に起因する高調波が含まれる。一般に、発生する気泡の量が多い程、発生する高調波の強度が大きくなる。
【0033】
図1に戻って、HIFU照射装置100が各イメージング超音波46に対する反射波を受信する処理について説明する。超音波プローブ16は、第1イメージング超音波46-1~第3イメージング超音波46-3に対する第1反射超音波~第3反射超音波を受信し、それぞれ、第1受信信号~第3受信信号を送受信回路18に出力する。送受信回路18は、第1受信信号~第3受信信号に対する増幅等を行い、イメージング演算部20に出力する。
【0034】
イメージング演算部20は、第1受信信号~第3受信信号を加算合計し、第1受信信号~第3受信信号のそれぞれに含まれる高調波成分を加算合計した高調波信号を生成する。第1イメージング超音波46-1~第3イメージング超音波46-3の位相関係によって、第1受信信号~第3受信信号を加算合計した信号では、基本波成分が抑制される。イメージング演算部20は、超音波ビームが向けられた各方向から到来した第1反射超音波~第3反射超音波に対して高調波信号を生成し、各方向に対して生成された高調波信号に基づいて照射領域データを生成する。照射領域データは、超音波ビームが走査された領域のうち気泡が発生した領域を示す照射領域画像を示す画像データである。
【0035】
また、イメージング演算部20は、第1反射超音波~第3反射超音波のうち1つに基づいて、Bモード画像を生成する。例えば、イメージング演算部20は、超音波ビームが向けられた各方向から到来した第2反射超音波に基づいて、各方向へのBモード画像の画素データを生成し、各方向について取得された画素データに基づいてBモード画像データを生成する。なお、Bモード画像データの元となる反射超音波は、第1反射超音波であってもよいし、第3反射超音波であってもよい。
【0036】
イメージング演算部20は、照射領域データおよびBモード画像データをコントローラ22に出力する。コントローラ22は、照射領域データおよびBモード画像データに基づいて、Bモード画像に照射領域画像を重ねた画像(Bモード照射領域画像)を表示装置24に表示させる。
【0037】
イメージング演算部20は、フレーム時間間隔(フレームレートの逆数)で、照射領域データおよびBモード画像データをコントローラ22に出力する。コントローラ22は、時間経過と共に順次、Bモード照射領域画像を表示装置24に表示させる。コントローラ22は、治療基準点Pを示す図形をBモード照射領域画像に重ねて表示装置24に表示させてもよい。また、コントローラ22は、治療基準点Pの周辺の領域と治療基準点P(治療基準領域)を示す図形をBモード照射領域画像に重ねて表示装置24に表示させてもよい。
【0038】
なお、コントローラ22は、照射領域データに基づく画像とBモード画像とを重ねずに、これらの画像を個別に表示してもよい。例えば、コントローラ22は、照射領域データに基づく画像と、Bモード画像とを対比可能なように並べて表示装置24に表示させてもよい。
【0039】
図3には、Bモード照射領域画像52が、HIFU振動子ユニット10と共に模式的に示されている。超音波ビームが走査された走査領域内にBモード画像54が示されると共に、反射波の高調波による気泡画像が照射領域60として示されている。
【0040】
上記では、超音波データ生成用のイメージング超音波を3回に亘って送信する処理について説明した。イメージング超音波は、2回または4回以上に亘って送信されてもよい。イメージング超音波をM回に亘って送信する場合、時間軸上で隣接するイメージング超音波の位相差が360°/Mとされる。あるいは、送信順序とは無関係に、θ+i・360°/M(θは任意の位相、iは0~M-1の整数)の位相が、M個のイメージング超音波に割り当てられるように各イメージング超音波の位相が設定されてもよい。
【0041】
イメージング演算部20は、第1受信信号~第M受信信号を加算合計し、第1受信信号~第M受信信号のそれぞれに含まれる高調波成分を加算合計した高調波信号を生成する。また、イメージング演算部20は、第1反射超音波~第M反射超音波のうち1つに基づいて、Bモード画像を生成する。
【0042】
このように、HIFU照射装置100は、治療用の超音波振動子1を含むHIFU振動子ユニット10と、超音波プローブ16と、超音波振動子1および超音波プローブ16を制御する制御部30とを備えている。制御部30は、HIFU駆動回路14、送受信回路18、イメージング演算部20およびコントローラ22から構成される。
【0043】
制御部30は、治療用超音波送信処理、照射領域画像生成処理およびBモード画像生成処理を実行する。治療用超音波送信処理は、超音波振動子1に治療用超音波を送信させる処理である。照射領域画像生成処理は、複数の超音波を異なるタイミングで超音波プローブ16に送信させ、生体組織で反射し、超音波プローブ16で受信された第1反射超音波~第M反射超音波(複数の超音波)に基づく第1受信信号~第M受信信号(複数の受信信号)を加算合計(合成)し、各受信信号の高調波成分に基づく照射領域データを生成する処理である。Bモード画像生成処理は、複数の受信信号のうちいずれかを用いて、生体組織のBモード画像データを生成する処理である。
【0044】
制御部30は、照射領域データに基づく第1画像と、Bモード画像データに基づく第2画像とを表示装置24に表示させる表示処理を実行する。制御部30は、第1画像と第2画像とを重ねて表示装置24に表示させてもよい。また、制御部30は、超音波振動子1の位置に応じた治療基準領域を示す図形、または治療基準点Pを示す図形を第2画像に重ねて表示装置24に表示させてもよい。
【0045】
このような構成および処理によれば、生体組織に治療用超音波が照射されると共に、治療用超音波が照射された領域がBモード画像上に示される。Bモード画像データは、照射領域データを生成するための複数回に亘るイメージング超音波のうちのいずれかに基づく反射超音波を利用して生成される。これによって、治療用超音波が患部に照射されたことの確認がユーザにとって容易となる。
【0046】
コントローラ22(制御部30)は、患者に固定された患者座標系における各座標値(生体組織に固定された患者座標系における各位置)に照射量を対応付けた患者座標系照射データを求めてもよい。照射量は、照射領域データの画素値として定義されてよい。患者座標系照射データは、患者座標系における照射量の分布を表す。コントローラ22は、イメージング演算部20からフレーム時間間隔で順次出力されるBモード画像データに対してトラッキング処理を実行し、Bモード画像に現れる生体組織のBモード画像上での動きを検出する。この検出は、以下のように行われてよい。
【0047】
すなわち、コントローラ22は、Bモード画像データに基づいて、生体組織の輪郭を特定するデータを生成する。コントローラ22は、この輪郭に対して固定された患者座標系における各座標値に対し、Bモード画像データと共に求められた照射領域データの画素値に基づいて照射量を求めることで、患者座標系照射データを生成する。イメージング演算部20からフレーム時間間隔で順次出力される各Bモード画像データに対して患者座標系照射データを生成することで、Bモード画像上での生体組織の動きに追随した患者座標系照射データが生成される。
【0048】
図4の上段には、時間経過と共に順次生成されるBモード照射領域画像52が、患者座標系56としてのxy座標系と共に示されている。Bモード照射領域画像52は、時間経過と共に、左側に示されている画像から右側に示されている画像へと変化する。図4の上段に示されている例では患者は右方向に移動し、生体組織の輪郭50および患者座標系56は、時間経過と共に右方向に移動している。照射領域60は、Bモード照射領域画像52に対して移動しないものの、患者座標系56に対して左方向に移動する。患者座標系照射データは、患者と共に右方向に移動する患者座標系56の各座標値に対して照射量を対応付けたものである。
【0049】
コントローラ22は、イメージング演算部20からフレーム時間間隔で順次出力される各Bモード画像データに対して患者座標系照射データを求め、患者座標系における各座標値に対して、照射量を所定フレーム数に亘って加算合計した治療量を求めてもよい。コントローラ22は、患者座標系における各座標値に対して治療量を対応付けた治療量分布データを求めてもよい。
【0050】
図4の下段には、患者座標系56に対して生成された治療量分布データが示す治療量分布58が示されている。各時刻における照射領域60の画素値を加算合計して求められた治療量が、各時刻における照射領域60が重畳された図形によって示されている。治療量分布58には、患者の移動によって、輪郭50の左側に治療量が分布したことが示されている。
【0051】
コントローラ22は、治療量分布データに基づいて、表示装置24に治療量分布画像を表示させてもよい。治療量分布画像は、患者座標系における治療量の分布を表す画像である。また、コントローラ22は、治療量が大きい程、生体組織を示す画素の輝度が大きくなる治療量分布画像を表示装置24に表示させてもよい。また、治療量に応じた色彩が付されるように、治療量分布画像に色彩が施されてもよい。
【0052】
このように、コントローラ22は、時間経過と共に順次生成されるBモード画像データに基づいて生体組織の動きを検出し、生体組織に固定された患者座標系における各位置での治療量を、各Bモード画像データに対応する各照射領域データに基づいて求める。治療量分布データは、患者に固定された患者座標系における各位置に治療量を対応付けたデータである。したがって、治療中に患者が動いた場合であっても、患者の生体組織に対応付けられた治療量が示される。
【0053】
本発明の応用実施形態に係る追従照射処理について説明する。この処理は、患者が動いたときに、治療基準点Pが生体組織の動きに追従するように、HIFU振動子ユニット10および超音波プローブ16を移動させて、治療用超音波を照射する処理である。追従照射処理では、コントローラ22(制御部30)は、時間経過と共に順次生成されるBモード画像データに基づいて生体組織の動きを検出し、生体組織の動きに応じて駆動装置26を制御し、HIFU振動子ユニット10の超音波振動子1を生体組織の動きに応じて移動させる。
【0054】
コントローラ22は、イメージング演算部20からフレーム時間間隔で順次出力されるBモード画像データに対してトラッキング処理を実行する。すなわち、Bモード画像に現れる生体組織のBモード画像上での変位量をフレーム時間間隔で求める。例えば、コントローラ22は、Bモード画像データに基づいて、生体組織の輪郭を特定するデータを生成し、フレーム時間間隔で生成される各Bモード画像データに基づいて、フレーム時間間隔での輪郭の変位量を求める。コントローラ22は、フレーム時間間隔のK倍の時間間隔で治療基準点Pが輪郭の変位量だけ移動するように、駆動装置26を制御する。ここで、Kは1以上の整数である。駆動装置26は、コントローラ22の制御に応じてHIFU振動子ユニット10および超音波プローブ16を移動させる。
【0055】
図5には追従照射処理下におけるBモード照射領域画像52、生体組織の輪郭50、およびHIFU振動子ユニット10が模式的に示されている。図5の左側の図に示されているように、Bモード照射領域画像52には、気泡の像(ハーモニックイメージングによる像)によって照射領域60が示されている。また、生体組織の輪郭50が示されている。図5の左側の図に示されているように、輪郭50の内側に照射領域60が位置する。図5の中央の図には、患者の体が右側に動いたことによって、輪郭50が破線で示された元の位置から右側に移動したことが示されている。図5の右側の図には、輪郭50の動きに追従してHIFU振動子ユニット10が右側に移動した様子が示されている。照射領域60は再び生体組織の輪郭50の中央付近に位置しており、適切な位置に治療用超音波が照射されることが示されている。なお、図5にはBモード照射領域画像52上に輪郭50が示されているが、輪郭50は必ずしも表示装置24に表示されなくてもよい。
【0056】
このような構成および処理によれば、治療中に患者の体が動いた場合であっても、治療用超音波の焦点が、輪郭50の動き、すなわち、特定の生体組織の動きに追従する。これによって、患者の体の動きに応じた患部の動きに焦点が追従し、患部に治療用超音波が照射される。
【符号の説明】
【0057】
10 HIFU振動子ユニット、12 超音波振動子、14 HIFU駆動回路、16 超音波プローブ、18 送受信回路、20 イメージング演算部、22 コントローラ、24 表示装置、26 駆動装置、40 強レベル超音波、42 弱レベル超音波、44 強弱超音波パルス、46-1 第1イメージング超音波、46-2 第2イメージング超音波、46-3 第3イメージング超音波、48 照射休止期間、50 輪郭、52 Bモード照射領域画像、54 Bモード画像、56 患者座標系、58 治療量分布、60 照射領域、100 HIFU照射装置。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-06-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度焦点式超音波療法による治療用の超音波振動子と、
超音波プローブと、
前記超音波振動子および前記超音波プローブを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記超音波振動子に治療用超音波を送信させる治療用超音波送信処理と、
複数の超音波を異なるタイミングおよび異なる位相で前記超音波プローブに送信させ、生体組織で反射し、前記超音波プローブで受信された複数の前記超音波に基づく複数の受信信号を合成することで、各前記受信信号の高調波成分に基づく照射領域データを生成する照射領域画像生成処理と、
複数の前記受信信号のうちいずれかを用いて、前記生体組織のBモード画像データを生成するBモード画像生成処理と、
を実行することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、
前記照射領域データに基づく第1画像と、前記Bモード画像データに基づく第2画像とを表示装置に表示させることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、
前記第1画像と前記第2画像とを重ねて前記表示装置に表示させることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、
前記超音波振動子の位置に応じた治療基準領域または治療基準点を示す図形を、前記第2画像に重ねて表示することを特徴とする超音波治療装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の超音波治療装置において、
前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、
時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて、前記生体組織に固定された患者座標系を特定し、
記患者座標系における各位置での治療量であって、前記患者座標系における各位置での前記照射領域データの画素値に基づく治療量を、各前記Bモード画像データに対応する各前記照射領域データに基づいて求めることを特徴とする超音波治療装置。
【請求項6】
椀状の面に配置された複数の前記超音波振動子を備える、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の超音波治療装置において、
複数の前記超音波振動子を移動する駆動装置を備え、
前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、
前記生体組織の動きに応じて前記駆動装置を制御し、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波が強め合う焦点を前記生体組織の動きに応じて移動させることを特徴とする超音波治療装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、高密度焦点式超音波療法による治療用の超音波振動子と、超音波プローブと、前記超音波振動子および前記超音波プローブを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記超音波振動子に治療用超音波を送信させる治療用超音波送信処理と、複数の超音波を異なるタイミングおよび異なる位相で前記超音波プローブに送信させ、生体組織で反射し、前記超音波プローブで受信された複数の前記超音波に基づく複数の受信信号を合成することで、各前記受信信号の高調波成分に基づく照射領域データを生成する照射領域画像生成処理と、複数の前記受信信号のうちいずれかを用いて、前記生体組織のBモード画像データを生成するBモード画像生成処理と、を実行することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
望ましくは、前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて、前記生体組織に固定された患者座標系を特定し、記患者座標系における各位置での治療量であって、前記患者座標系における各位置での前記照射領域データの画素値に基づく治療量を、各前記Bモード画像データに対応する各前記照射領域データに基づいて求める。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
本発明は、椀状の面に配置された複数の前記超音波振動子を備える、前記超音波治療装置において、複数の前記超音波振動子を移動する駆動装置を備え、前記制御部は、時間経過と共に順次生成される前記Bモード画像データに基づいて前記生体組織の動きを検出し、前記生体組織の動きに応じて前記駆動装置を制御し、複数の前記超音波振動子から発せられる超音波が強め合う焦点を前記生体組織の動きに応じて移動させる。