(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007952
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】燃料電池システム及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20230112BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20230112BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230112BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111132
(22)【出願日】2021-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100202201
【弁理士】
【氏名又は名称】兒島 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB14
5H127AC05
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB66
5H127DC45
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムの劣化を抑制することに適した技術を提供する。
【解決手段】
燃料電池システム100は、複数台の燃料電池5Aから5Jと、制御器8と、を備える。制御器8は、総発電量変更処理を実行する。総発電量変更処理では、複数台の燃料電池5Aから5Jの合計発電電力Wtが変更される。発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義する。複数台の燃料電池5Aから5Jのうち特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義する。総発電量変更処理において、総発電量変更処理後の複数台の燃料電池5Aから5Jのそれぞれの発電電力が、特定台数に関するルールに従って決定される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の燃料電池と、
制御器と、を備え、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記制御器は、前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力を前記特定台数に関するルールに従って決定する総発電量変更処理を実行する、
燃料電池システム。
【請求項2】
前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力がゼロ又は最大発電電力のいずれかになり、かつ、前記複数台の燃料電池のうち変更後において発電する燃料電池の台数が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力を賄うための最小台数になるように行った場合の前記特定台数を、第1基準台数と定義したとき、
前記総発電量変更処理における前記特定台数は、前記第1基準台数よりも小さい場合がある、
請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池の発電電力が互いに同一になり、かつ、変更後の前記合計発電電力が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力と同一になるように行った場合の前記特定台数を、第2基準台数と定義したとき、
前記総発電量変更処理における前記特定台数は、前記第2基準台数よりも小さい場合がある、
請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
複数台の燃料電池と、
制御器と、を備え、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記制御器は、前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理における前記特定台数が第1基準台数よりも小さくかつ第2基準台数よりも小さい場合がある総発電量変更処理を実行する、
ここで、前記第1基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力がゼロ又は最大発電電力のいずれかになり、かつ、前記複数台の燃料電池のうち変更後において発電する燃料電池の台数が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力を賄うための最小台数になるように行った場合の前記特定台数であり、
前記第2基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池の発電電力が互いに同一になり、かつ、変更後の前記合計発電電力が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力と同一になるように行った場合の前記特定台数である、
燃料電池システム。
【請求項5】
aを2以上の自然数と定義したとき、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の両方が前記所定電力よりも小さい変化を、下側発電量変化と定義したとき、
前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちa台の燃料電池が、前記下側発電量変化を、前記下側発電量変化後の前記a台の燃料電池のそれぞれの発電電力がゼロよりも大きいという態様で呈する場合、前記下側発電量変化後の前記a台の燃料電池の発電電力が互いに同一となる、
請求項1から4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
bを1以上の自然数と定義し、
発電電力の増加であって増加後の発電電力が前記所定電力以上である増加を、特定発電量増加と定義したとき、
前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちb台の燃料電池が前記特定発電量増加を呈する場合、前記b台の燃料電池の発電電力が最大発電電力まで増加する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
cを1以上の自然数と定義し、
発電電力の低下であって低下前の発電電力が前記所定電力以上である低下を、特定発電量低下と定義したとき、
前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちc台の燃料電池が前記特定発電量低下を呈する場合、前記c台の燃料電池の発電電力がゼロまで低下する、
請求項1から6のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
dを1以上の自然数と定義し、
発電電力の増加であって増加後の発電電力が前記所定電力以上である増加を、特定発電量増加と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち発電電力が最大発電電力よりも小さい燃料電池を、第1電池と定義し、
前記特定発電量変化を経た回数を特定回数と定義したとき、
前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちd台の燃料電池が前記特定発電量増加を呈する場合、前記d台の燃料電池は、前記総発電量変更処理前において前記特定回数が最も少ない前記第1電池を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
eを1以上の自然数と定義し、
発電電力の低下であって低下前の発電電力が前記所定電力以上である低下を、特定発電量低下と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち発電電力が前記所定電力以上である燃料電池を、第2電池と定義し、
前記特定発電量変化を経た回数を特定回数と定義したとき、
前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちe台の燃料電池が前記特定発電量低下を呈する場合、前記e台の燃料電池は、前記総発電量変更処理前において前記特定回数が最も少ない前記第2電池を含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
fを1以上の自然数と定義し、
gを2以上の自然数と定義し、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の両方が前記所定電力よりも小さい変化を、下側発電量変化と定義したとき、
前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちf台の燃料電池が前記特定発電量変化を呈し、かつ、前記複数台の燃料電池のうちg台の燃料電池が前記下側発電量変化を呈する場合がある、
請求項1から9のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
hを1以上の自然数と定義し、
iを1以上の自然数と定義したとき、
前記合計発電電力を増加させる前記総発電量変更処理において、前記複数台の燃料電池のうちh台の燃料電池の発電電力が前記所定電力未満の値から前記所定電力以上の値へと増加し、かつ、前記複数台の燃料電池のうちi台の燃料電池の発電電力が前記所定電力よりも低い値からさらに低下する場合がある、
請求項1から10のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
発電電力の増加であって増加後の発電電力が前記所定電力以上である増加を、特定発電量増加と定義し、
発電電力の低下であって低下前の発電電力が前記所定電力以上である低下を、特定発電量低下と定義したとき、
前記複数台の燃料電池のそれぞれにおいて、
触媒を用いて発電が行われ、
前記総発電量変更処理において前記特定発電量増加を呈する燃料電池の前記触媒において酸化反応が生じ、
前記総発電量変更処理において前記特定発電量低下を呈する燃料電池の前記触媒において還元反応が生じる、
請求項1から11のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記所定電力は、400W以上800W以下である、
請求項1から12のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項14】
複数台の燃料電池を備えた燃料電池システムの運転方法であって、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力を前記特定台数に関するルールに従って決定する総発電量変更処理を実行することを含む、
運転方法。
【請求項15】
複数台の燃料電池を備えた燃料電池システムの運転方法であって、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理における前記特定台数が第1基準台数よりも小さくかつ第2基準台数よりも小さくなるように実行されることがある総発電量変更処理を実行することを含む、
ここで、前記第1基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力がゼロ又は最大発電電力のいずれかになり、かつ、前記複数台の燃料電池のうち変更後において発電する燃料電池の台数が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力を賄うための最小台数になるように行った場合の前記特定台数であり、
前記第2基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池の発電電力が互いに同一になり、かつ、変更後の前記合計発電電力が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力と同一になるように行った場合の前記特定台数である、
運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに関し、特許文献1には、電力負荷の要求電力に応じて最小台数の燃料電池で発電することが記載されている。非特許文献1には、Ptストレスを指標とする燃料電池電極触媒の劣化予測について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Honda R&D Technical Review Vol.28 No.1(April2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、燃料電池システムの劣化を抑制することに適した技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
複数台の燃料電池と、
制御器と、を備え、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記制御器は、前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力を前記特定台数に関するルールに従って決定する総発電量変更処理を実行する、
燃料電池システムを提供する。
【0007】
本開示は、
複数台の燃料電池と、
制御器と、を備え、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記制御器は、前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理における前記特定台数が第1基準台数よりも小さくかつ第2基準台数よりも小さい場合がある総発電量変更処理を実行する、
ここで、前記第1基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力がゼロ又は最大発電電力のいずれかになり、かつ、前記複数台の燃料電池のうち変更後において発電する燃料電池の台数が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力を賄うための最小台数になるように行った場合の前記特定台数であり、
前記第2基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池の発電電力が互いに同一になり、かつ、変更後の前記合計発電電力が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力と同一になるように行った場合の前記特定台数である、
燃料電池システムを提供する。
【0008】
本開示は、
複数台の燃料電池を備えた燃料電池システムの運転方法であって、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力を前記特定台数に関するルールに従って決定する総発電量変更処理を実行することを含む、
運転方法を提供する。
【0009】
本開示は、
複数台の燃料電池を備えた燃料電池システムの運転方法であって、
発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力以上である変化を、特定発電量変化と定義し、
前記複数台の燃料電池のうち前記特定発電量変化を呈する燃料電池の台数を、特定台数と定義したとき、
前記複数台の燃料電池の合計発電電力を変更する総発電量変更処理であって、前記総発電量変更処理における前記特定台数が第1基準台数よりも小さくかつ第2基準台数よりも小さくなるように実行されることがある総発電量変更処理を実行することを含む、
ここで、前記第1基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池のそれぞれの発電電力がゼロ又は最大発電電力のいずれかになり、かつ、前記複数台の燃料電池のうち変更後において発電する燃料電池の台数が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力を賄うための最小台数になるように行った場合の前記特定台数であり、
前記第2基準台数は、前記合計発電電力の変更を、変更後の前記複数台の燃料電池の発電電力が互いに同一になり、かつ、変更後の前記合計発電電力が前記総発電量変更処理後の前記合計発電電力と同一になるように行った場合の前記特定台数である、
運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る技術は、燃料電池システムの劣化を抑制することに適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1に係る燃料電池システムのシステム構成図
【
図2A】実施の形態1の具体例に係る電力負荷の要求電力の変化を示すテーブルデータ
【
図2B】実施の形態1の具体例に係る電力負荷の要求電力の変化を示すグラフ
【
図3】実施の形態1の具体例に係る要求電力変動ステップごとの燃料電池の発電電力の算出結果を示すテーブルデータ
【
図4】参考例1における要求電力変動ステップごとの燃料電池の発電電力の算出結果を示すテーブルデータ
【
図5】参考例2における要求電力変動ステップごとの燃料電池の発電電力の算出結果を示すテーブルデータ
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となった知見等)
一例に係る燃料電池は、電解質膜、アノード及びカソードを有する。アノードに、水素含有ガスが供給される。カソードに、酸素含有ガスが供給される。水素含有ガス及び酸化含有ガスの電気化学的反応により、発電が行われる。
【0013】
一具体例では、燃料電池の電極は、触媒を有する。触媒は、化学反応を促進させる。触媒としては、白金触媒が例示される。
【0014】
燃料電池の電圧が変化すると、燃料電池は劣化しうる。具体的には、燃料電池の電圧上昇が、上昇後の電圧が所定電圧以上である態様で生じると、白金と水によって白金の酸化被膜が形成される。燃料電池の電圧低下が、低下前の電圧が所定電圧以上である態様で生じると、白金の還元反応が生じる。このような酸化還元反応が繰り返されると、白金触媒が劣化し、燃料電池の劣化が進む。
【0015】
ところで、燃料電池システムから取り出したい電力は、ユーザーによって異なる。ユーザーの要望に応えるには、要望に適合した発電電力の燃料電池を開発し、その燃料電池を燃料電池システムに含ませることも考えられる。しかし、様々な発電電力の燃料電池を開発すると、量産効果が得られ難い。そのため、装置メーカーにより、小発電電力の燃料電池を複数台組み合わせることが行われている。このようにして燃料電池システムを作製すれば、装置メーカーは、開発工数を抑えつつ、ユーザーの要望に応えることができる。
【0016】
発明者は、劣化の程度が大きい燃料電池の台数を少なく抑えることに適した技術を検討した。
【0017】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、又は、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0018】
添付図面及び以下の説明は、当事者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0019】
(実施の形態1)
以下、
図1から
図3を用いて、実施の形態1を説明する。
【0020】
[1-1.構成]
図1は、実施の形態1に係る燃料電池システム100のシステム構成図である。燃料電池システム100は、燃料電池5Aから5J、水素含有ガス供給経路6、酸素含有ガス供給経路7、制御器8及び電力線13を備える。
【0021】
燃料電池5Aは、電解質膜1A、アノード2A及びカソード3Aを有する。この説明の「A」を、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」、「G」、「H」、「I」及び「J」のうちの任意の1つに読み替えた説明も成立する。
【0022】
水素含有ガス供給源11から水素含有ガス供給経路6を通じてアノード2Aから2Jに、水素含有ガスが供給される。酸素含有ガス供給源12から酸素含有ガス供給経路7を通じてカソード3Aから3Jに、酸素含有ガスが供給される。これにより発電が行われる。
【0023】
燃料電池5Aから5Jのそれぞれには、触媒が搭載されている。触媒は、電子を取り出す反応を促進する。具体的には、アノード2Aから2J及びカソード3Aから3Jのそれぞれには、触媒が搭載されている。実施の形態1では、触媒は、白金触媒である。
【0024】
制御器8は、燃料電池5Aから5Jのそれぞれを制御する。具体的には、制御器8は、燃料電池5Aから5Jの起動、停止及び発電電力を制御する。また、制御器8は、燃料電池5Aから5Jの合計発電電力Wtを制御する。
【0025】
電力線13により、燃料電池5Aから5Jと電力負荷14とが接続されている。燃料電池5Aから5Jのそれぞれで発電した電力が、電力線13を通じて電力負荷14に供給される。本実施の形態では、燃料電池5Aから5Jは並列に接続されている。
【0026】
[1-2.動作]
以上のように構成された燃料電池システム100において、その動作及び作用を説明する。以下の説明では、燃料電池5Aから5Jの「A」から「J」を省略して燃料電池5と表記する場合がある。この表記を用いた説明は、燃料電池5Aから5Jうちの任意の1つ又は複数に該当しうる。電解質膜1、アノード2及びカソード3についても同様である。
【0027】
以下、燃料電池5の白金触媒が劣化する原因について説明する。
【0028】
燃料電池5に、水素及び酸素が供給される。これにより、以下の化学式1に示す反応が生じる。化学式1の電子が取り出される。こうして、発電が行われる。
化学式1:
Pt-H → Pt+H++e-
Pt+H++e- → Pt-H
【0029】
燃料電池5の電圧が所定電圧以上のとき、化学式1の電子の移動時に触媒の酸化還元反応が生じ易い。燃料電池5の電圧が所定電圧未満のとき、この酸化還元反応は生じ難い。
【0030】
具体的には、電圧の上昇が、上昇後の電圧が所定電圧以上である態様で生じると、白金と水によって以下の化学式2に示すような酸化反応が生じる。これにより、白金の酸化被膜が形成される。電圧の低下が、低下前の電圧が所定電圧以上である態様で生じると、以下の化学式3に示すような白金の還元反応が生じる。このような酸化還元反応が繰り返されると、白金触媒が劣化し、燃料電池5の劣化が進む。
化学式2:
Pt+H2O → PtO+2H++2e-
化学式3:
PtO+2H++2e- → Pt+H2O
【0031】
上記の文脈において、燃料電池5の電圧は、燃料電池5の発電電圧又は出力電圧である。燃料電池5の電圧は、アノード2及びカソード3間の電位差でありうる。上昇後の電圧が所定電圧以上であるとは、上昇前の電圧が所定電圧未満であるか所定電圧以上であるかを問わない趣旨である。低下前の電圧が所定電圧以上であるとは、低下後の電圧が所定電圧未満であるか所定電圧以上であるかを問わない趣旨である。
【0032】
燃料電池5では、発電電力が増加すると、その出力電圧-出力電流特性に従って出力電圧及び出力電流が変化する。上記の所定電圧に対応する燃料電池5の発電電力である電力Wcが存在する。本実施の形態の燃料電池5では、発電電力が電力Wc付近の領域では、発電電力が増加すると、出力電圧及び出力電流が増加する。燃料電池5の発電電力が電力Wc以上のとき、触媒の酸化還元反応が生じ易く、燃料電池5の劣化が進み易い。以下、電力Wc以上の電力を、所定電力Wdと称することがある。
【0033】
図2Aは、実施の形態1の具体例に係る電力負荷14の要求電力(単位:ワット(W))の変化を示すテーブルデータである。
図2Bは、実施の形態1の具体例に係る電力負荷14の要求電力の変化を示すグラフである。
図2Bの横軸は、要求電力変動ステップである。縦軸は、電力負荷14の要求電力である。各ステップにおいて、電力負荷14の要求電力が変化する。制御器8は、電力負荷14の要求電力に適合するように、燃料電池5Aから5Jのそれぞれの発電電力を制御する。この具体例では、要求電力変動ステップは、電力負荷14の要求電力が変化するときに生じるステップである。ステップとステップの間の時間間隔は、一定であってもよく、一定でなくてもよい。
【0034】
以下、この具体例に係るパラメータを列記する。この列記において、「変化前」は、要求電力変動ステップにおける、電力負荷14の要求電力の変化の前を意味する。「変化後」は、同変化の後を意味する。
Wx:変化前の、電力負荷14の要求電力
Wy:変化後の、電力負荷14の要求電力
Nux:変化前の、発電電力が所定電力Wd以上の燃料電池5の台数
Nlx:変化前の、発電電力がゼロよりも大きく所定電力Wdよりも小さい燃料電池5の台数
Nsx:変化前の、発電停止状態の燃料電池5の台数
Nuy:変化後の、発電電力が所定電力Wd以上の燃料電池5の台数
Nly:変化後の、発電電力がゼロよりも大きく所定電力Wdよりも小さい燃料電池5の台数
Nsy:変化後の、発電停止状態の燃料電池5の台数
Pux:変化前の、発電電力が所定電力Wd以上の燃料電池5の発電電力
Plx:変化前の、発電電力がゼロよりも大きく所定電力Wdよりも小さい燃料電池5の発電電力
Puy:変化後の、発電電力が所定電力Wd以上の燃料電池5の発電電力
Ply:変化後の、発電電力がゼロよりも大きく所定電力Wdよりも小さい燃料電池5の発電電力
【0035】
制御器8は、要求電力変動ステップごとに、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtを変更する。燃料電池5の劣化は、燃料電池5の発電電力が以下の条件1を満たすように変化するときに生じ易い。このことは、要求電力変動ステップにおいて条件1を満たす変化を呈する燃料電池5の台数が少なくなるようようにすれば、劣化の程度が大きい燃料電池5の台数を少なく抑えることができることを意味する。
条件1:変化前及び変化後の少なくとも一方の発電電力が所定電力Wd以上である
【0036】
この具体例の要求電力変動ステップでは、複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力は、以下の条件が満たされるように決定される。
・発電電力Pux及びPuyは必ず燃料電池5の最大発電電力である
・変化前及び変化後の少なくとも一方の発電電力が所定電力Wd以上である態様で発電電力が変化する燃料電池5の台数を少なくする
・発電電力が所定電力Wdよりも低い値からゼロよりも大きい値に低下する燃料電池5が2台以上存在する場合、要求電力変動ステップ後における当該2台以上の燃料電池5の発電電力を互いに同一にする
・燃料電池5の発電電力を所定電力Wd以上の値から低下させる場合には、当該燃料電池5の発電を停止させる
【0037】
この具体例に係る要求電力変動ステップでは、
図2A及び
図2Bのデータから、要求電力Wx及び要求電力Wyを決定する。そして、以下の数式1、数式2、数式3及び数式4に基づいて、台数Nuy、台数Nly、台数Nsy及び発電電力Plyを演算する。台数Nux、台数Nlx、台数Nsx及び発電電力Plxは、要求電力変動ステップ前の値であるため既知である。また、発電電力Pux及びPuyは必ず燃料電池5の最大発電電力であるため既知である。数式2は、台数Nuyと台数Nuxとの差分の絶対値が最小となるように台数Nuyを決定するための数式である。数式3は、発電電力Plyが所定電力Wd未満の範囲で最大になるように発電電力Plyを決定するための数式である。ここで、数式2は、数式3よりも優先されるものとする。
数式1:
(Puy×Nuy)+(Ply×Nly)+(0×Nsy)=(Wy-Wx)+(Pux×Nux)+(Plx×Nux)+(0×Nsx)
数式2:
Nuy=Min|Nuy-Nux|
数式3:
Ply=Max(Ply<Wd)
数式4:
Nux+Nlx+Nsx=10
Nuy+Nly+Nsy=10
【0038】
具体的に、この具体例では、以下のように数値を設定した。
・所定電力Wd=601W
・最大発電電力Nux=1000W
・最大発電電力Nuy=1000W
【0039】
図3は、実施の形態1の具体例に係る要求電力変動ステップごとの燃料電池5の発電電力の算出結果を示すテーブルデータである。
図3のデータは、電力負荷14の要求電力が
図2A及び
図2Bに示すように変化した場合のものである。特定台数Ndは、各要求電力変動ステップにおける、変化前及び変化後の少なくとも一方の発電電力が所定電力Wd以上である態様で発電電力が変化する燃料電池5の台数である。積算特定台数Ntは、特定台数Ndの要求電力変動ステップ0からの積算値である。
図3において、燃料電池5Aから5Jのマスの図示右側のマスの数値は、燃料電池5Aから5Jの発電電力であり、その単位はワット(W)である。合計発電電力Wtの単位はワット(W)である。特定台数Nd及び積算特定台数Ntの単位は台である。これらの点は、
図4及び
図5においても同様である。
【0040】
図4は、参考例1における要求電力変動ステップごとの燃料電池5の発電電力の算出結果を示すテーブルデータである。参考例1では、複数台の燃料電池5は、発電停止状態と、最大発電電力=1000Wで発電する状態と、のいずれかをとる。各要求電力変動ステップにおいて、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtの変更を、変更後において複数台の燃料電池5のうち発電する燃料電池5の台数が最小になるように行う。
図4の要求電力変動ステップ12の合計発電電力Wt=2000Wは、
図2A及び
図2Bに示す要求電力=1800Wよりも大きい。また、
図4の要求電力変動ステップ14の合計発電電力Wt=3000Wは、
図2A及び
図2Bに示す要求電力=2400Wよりも大きい。合計発電電力Wtのうち余剰分は、例えば、蓄電池に蓄えられる。
【0041】
図5は、参考例2における要求電力変動ステップごとの燃料電池5の発電電力の算出結果を示すテーブルデータである。参考例2では、各要求電力変動ステップにおいて、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtの変更を、変更後の複数台の燃料電池5の発電電力が互いに同一になるように行う。
【0042】
図3の要求電力変動ステップ14における積算特定台数Ntは、26台である。
図4の同積算特定台数Ntは、33台である。
図5の同積算特定台数Ntは、100台である。
図3の積算特定台数Ntを
図4の積算特定台数Ntで割って得られるパーセンテージは、26÷33≒78.8%である。
図3の積算特定台数Ntを
図5の積算特定台数Ntで割って得られるパーセンテージは、26÷100=26%である。
【0043】
[1-3.効果等]
実施の形態1について、総発電量変更処理、特定発電量変化、下側発電量変化、特定発電量増加、特定発電量低下、第1電池、第2電池、特定台数、特定回数、第1基準台数及び第2基準台数という用語を用いてさらに説明する。
【0044】
総発電量変更処理は、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtを変更する処理である。総発電量変更処理は、上述の要求電力変動ステップに対応しうる。電力負荷14の要求電力は、変更されうる。変更後の電力負荷14の要求電力が賄われるように、総発電量変更処理により、総発電量変更処理後の合計発電電力Wtが決定されうる。
【0045】
特定発電量変化は、発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の少なくとも一方が所定電力Wd以上である変化である。下側発電量変化は、発電電力の変化であって変化前の発電電力及び変化後の発電電力の両方が所定電力Wdよりも小さい変化である。
【0046】
特定発電量増加は、発電電力の増加であって増加後の発電電力が所定電力Wd以上である増加である。ここで、増加後の発電電力が所定電力Wd以上であるとは、増加前の発電電力が所定電力Wd未満であるか所定電力Wd以上であるかを問わない趣旨である。
【0047】
特定発電量低下は、発電電力の低下であって低下前の発電電力が所定電力Wd以上である低下である。ここで、低下前の発電電力が所定電力Wd以上であるとは、低下後の発電電力が所定電力Wd未満であるか所定電力Wd以上であるかを問わない趣旨である。
【0048】
第1電池は、複数台の燃料電池5のうち発電電力が最大発電電力よりも小さい燃料電池5である。第2電池は、複数台の燃料電池5のうち発電電力が所定電力Wd以上である燃料電池5である。
【0049】
特定台数は、複数台の燃料電池5のうち特定発電量変化を呈する燃料電池5の台数である。
【0050】
特定回数は、特定発電量変化を経た回数である。具体的に、特定回数は、1つの燃料電池5に関してカウントされるものである。特定回数は、典型的には、燃料電池5の触媒あるいは該触媒を含む要素が交換されることなく燃料電池5に保持される期間にわたり、カウントされる回数である。触媒を含む要素は、例えば、スタックである。
【0051】
第1基準台数は、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtの変更を、第1条件及び第2条件を満たすように行った場合(具体的には、総発電量変更処理により行う代わりに、第1条件及び第2条件を満たすように行った場合)の特定台数である。第1条件は、変更後の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力が、ゼロ又は最大発電電力のいずれかになるという条件である。第2条件は、複数台の燃料電池5のうち変更後において発電する燃料電池5の台数が、総発電量変更処理後の合計発電電力Wtを賄うための最小台数になるという条件である。総発電量変更処理後の合計発電電力Wtを賄うとは、総発電量変更処理後の合計発電電力Wtと同一の合計発電電力Wtが得られる形態を包含する。
図2及び
図4に関連付けて例示すると、総発電量変更処理後の合計発電電力Wtを賄うとは、
図4の例のステップ1から11及び13のような、電力負荷14の要求電力と同一の合計発電電力Wtが得られる形態を包含する。総発電量変更処理後の合計発電電力Wtを賄うとは、総発電量変更処理後の合計発電電力Wtよりも大きい合計発電電力Wtが得られる形態を包含する。
図2及び
図4に関連付けて例示すると、総発電量変更処理後の合計発電電力Wtを賄うとは、
図4の例のステップ12及び14のような、電力負荷14の要求電力よりも大きい合計発電電力Wtが得られる形態を包含する。発電する燃料電池5とは、発電電力がゼロよりも大きい燃料電池5を意味する。第1基準台数の考え方は、
図4から理解されよう。
【0052】
第2基準台数は、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtの変更を、第3条件及び第4条件を満たすように行った場合(具体的には、総発電量変更処理により行う代わりに、第3条件及び第4条件を満たすように行った場合)の特定台数である。第3条件は、変更後の複数台の燃料電池5の発電電力が互いに同一になるという条件である。第4条件は、変更後の合計発電電力Wtが総発電量変更処理後の合計発電電力Wtと同一になるという条件である。第2基準台数の考え方は、
図5から理解されよう。
【0053】
実施の形態1では、制御器8は、総発電量変更処理を実行する。総発電量変更処理において、総発電量変更処理後の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力が、特定台数に関するルールに従って決定される。この構成によれば、特定台数が小さくなるようにルールを設定することにより、燃料電池システム100の劣化を抑制することができる。具体的には、劣化の程度が大きい燃料電池5の台数を少なく抑えることができる。
【0054】
特定台数に関するルールは、例えば、関数及びテーブルからなる群より選択される少なくとも1つを含む。特定台数に関する関数は、例えば、上記の数式2である。
【0055】
実施の形態1では、総発電量変更処理における特定台数は、第1基準台数よりも小さい場合がある。具体的には、総発電量変更処理における特定台数は、総発電量変更処理前の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力及び総発電量変更処理後に得られるべき合計発電電力Wtによっては、第1基準台数よりも小さい。
【0056】
以下、
図3の要求電力変動ステップを総発電量変更処理に読み替え、例示的な説明を行う。この例では、総発電量変更処理2の実行前において、燃料電池5Aから5Jの発電電力は、600Wである(
図3の要求電力変動ステップ1の列参照)。総発電量変更処理2は、燃料電池5Aから5Cの発電電力を1000Wにし、燃料電池5Dから5Jの発電電力を571Wにする(
図3の要求電力変動ステップ2の列参照)。総発電量変更処理2における特定台数は、3台である(
図3の要求電力変動ステップ2の特定台数Nd参照)。これに対し、燃料電池5Aから5Jの発電電力が600Wである状態から、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtの変更を、第1条件及び第2条件を満たすように行うとする。この場合、燃料電池5Aから5Jのうちの7台の発電電力が1000Wとなり、3台の発電電力が0Wとなり、特定台数は7台となる。このように、実施の形態1では、総発電量変更処理における特定台数が、第1基準台数よりも小さい場合がある。
【0057】
実施の形態1では、総発電量変更処理における特定台数は、第2基準台数よりも小さい場合がある。具体的には、総発電量変更処理における特定台数は、総発電量変更処理前の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力及び総発電量変更処理後に得られるべき合計発電電力Wtによっては、第2基準台数よりも小さい。
【0058】
以下、
図3の要求電力変動ステップを総発電量変更処理に読み替え、例示的な説明を行う。この例では、
図3の総発電量変更処理2の実行前において、燃料電池5Aから5Jの発電電力は、600Wである。総発電量変更処理2は、燃料電池5Aから5Cの発電電力を1000Wにし、燃料電池5Dから5Jの発電電力が571Wにし、特定台数を3台にする。これに対し、燃料電池5Aから5Jの発電電力が600Wである状態から、複数台の燃料電池5の合計発電電力Wtの変更を、第3条件及び第4条件を満たすように行うとする。この場合、燃料電池5Aから5Jの発電電力が700Wとなり、特定台数は10台となる。このように、実施の形態1では、総発電量変更処理における特定台数が、第2基準台数よりも小さい場合がある。
【0059】
実施の形態1では、総発電量変更処理における特定台数は、第1基準台数よりも小さく、かつ、第2基準台数よりも小さい場合がある。ここで、「特定台数は、第1基準台数よりも小さく、かつ、第2基準台数よりも小さい場合がある」とは、特定台数が第1基準台数よりも小さいという条件と特定台数が第2基準台数よりも小さいという条件の両方が成立する場合があるということである。
【0060】
aを2以上の自然数と定義する。実施の形態1では、総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちa台の燃料電池が、下側発電量変化を、下側発電量変化後のa台の燃料電池5のそれぞれの発電電力がゼロよりも大きいという態様で呈する場合、下側発電量変化後のa台の燃料電池の発電電力が互いに同一となる。この構成によれば、下側発電量変化後においてa台の燃料電池5に発電電力にバラツキがある場合に比べ、発電効率が向上しうる。詳細には、実施の形態1の燃料電池5では、発電電力がある程度小さい領域では、発電電力が低下すると、出力電圧が上昇し、出力電流が低下する。発電電力がある程度低い領域では、出力電圧が高く出力電流が低いほうが、燃料電池5での発電に必要な水素含有ガスの流量が小さくて済む傾向にある。上記構成によれば、a台の燃料電池5に発電電力が高い燃料電池5が含まれ難く、そのため、燃料電池システム100の発電効率が向上しうる。
【0061】
bを1以上の自然数と定義する。実施の形態1では、総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちb台の燃料電池5が特定発電量増加を呈する場合、b台の燃料電池5の発電電力が最大発電電力まで増加する。この構成によれば、上記の場合においてb台の燃料電池5の発電電力が最大発電電力未満の値までしか増加しない構成に比べ、b台の燃料電池5以外の燃料電池5が特定発電量増加を呈し難い。この構成は、典型的には、合計発電電力Wtを増加させる総発電量変更処理で採用される。
【0062】
cを1以上の自然数と定義する。実施の形態1では、総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちc台の燃料電池5が特定発電量低下を呈する場合、c台の燃料電池5の発電電力がゼロまで低下する。この構成によれば、上記の場合においてc台の燃料電池5の発電電力がゼロよりも大きい値までしか低下しない構成に比べ、c台の燃料電池5以外の燃料電池5が特定発電量低下を呈し難い。この構成は、例えば、合計発電電力Wtを低下させる総発電量変更処理で採用される。なお、燃料電池5の発電電力がゼロであるとは、燃料電池5が停止している状態を包含する趣旨である。
【0063】
dを1以上の自然数と定義する。実施の形態1では、総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちd台の燃料電池5が特定発電量増加を呈する場合、d台の燃料電池5は、総発電量変更処理前において特定回数が最も少ない第1電池を含む。この構成によれば、特定の燃料電池5が偏って劣化することを回避し難い。
【0064】
eを1以上の自然数と定義する。実施の形態1では、総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちe台の燃料電池5が特定発電量低下を呈する場合、e台の燃料電池は、総発電量変更処理前において特定回数が最も少ない第2電池を含む。この構成によれば、特定の燃料電池5が偏って劣化することを回避し難い。
【0065】
fを1以上の自然数と定義する。gを2以上の自然数と定義する。実施の形態1では、総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちf台の燃料電池5が特定発電量変化を呈し、かつ、複数台の燃料電池5のうちg台の燃料電池が下側発電量変化を呈する場合がある。この現象は、燃料電池システム100の劣化が抑制されるように燃料電池システム100が運転される場合に生じうる現象である。例えば、
図3の要求電力変動ステップ2、5、12、13及び14を参照されたい。具体的には、総発電量変更処理前の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力及び総発電量変更処理後に得られるべき合計発電電力Wtによっては、総発電量変更処理において、この現象が現れうる。
【0066】
hを1以上の自然数と定義する。iを1以上の自然数と定義する。実施の形態1では、合計発電電力Wtを増加させる総発電量変更処理において、複数台の燃料電池5のうちh台の燃料電池5の発電電力が所定電力Wd未満の値から所定電力Wd以上の値へと増加し、かつ、複数台の燃料電池5のうちi台の燃料電池5の発電電力が所定電力Wdよりも低い値からさらに低下する場合がある。この現象は、燃料電池システム100の劣化が抑制されるように燃料電池システム100が運転される場合に生じうる現象である。例えば、
図3の要求電力変動ステップ2を参照されたい。具体的には、総発電量変更処理前の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力及び総発電量変更処理後に得られるべき合計発電電力Wtによっては、総発電量変更処理において、この現象が現れうる。
【0067】
所定電力Wdは、ゼロよりも大きく複数台の燃料電池5のそれぞれの最大発電電力よりも小さい電力でありうる。複数台の燃料電池5の最大発電電力にバラツキがある場合、所定電力Wdは、ゼロよりも大きく、かつ、それらの最大発電電力のうちの最小値よりも小さい電力でありうる。所定電力Wdは、電力Wc以上の電力でありうる。
【0068】
所定電力Wdは、例えば、400W以上800W以下である。所定電力Wdは、500W以上700W以下であってもよく、600W以上700W未満であってもよい。燃料電池5の最大発電電力は、例えば、800W以上1200W以下である。燃料電池5の最大発電電力は、900W以上1100W以下であってもよく、1000W以上1100W未満であってもよい。
【0069】
実施の形態1では、複数台の燃料電池5のそれぞれにおいて、触媒を用いて発電が行われ、総発電量変更処理において特定発電量増加を呈する燃料電池5の触媒において酸化反応が生じ、総発電量変更処理において特定発電量低下を呈する燃料電池5の触媒において還元反応が生じる。
【0070】
実施の形態1の運転方法は、総発電量変更処理を実行することを含む。総発電量変更処理では、総発電量変更処理後の複数台の燃料電池5のそれぞれの発電電力が、特定台数に関するルールに従って決定される。この構成によれば、特定台数が小さくなるようにルールを設定することにより、燃料電池システム100の劣化を抑制することができる。
【0071】
実施の形態1の運転方法は、総発電量変更処理を実行することを含む。総発電量変更処理は、総発電量変更処理における特定台数が第1基準台数よりも小さくかつ第2基準台数よりも小さくなるように実行されることがある。
【0072】
コンピュータによる実行時において、上記運転方法をコンピュータに実行させる指示を備えた、コンピュータプログラムを実現可能である。上記コンピュータプログラムが記録された、コンピュータ読出可能な非一過性の記録媒体を実現可能である。記録媒体は、オフラインの記録媒体であってもよく、オンライン上の記録媒体であってもよい。オフラインの記録媒体は、例えば、HDD、SDカード、USBメモリ等の半導体記録媒体、フレキシブルディスク等の磁気記録媒体、MO等の光磁気記録媒体、CD、DVD等の光学記録媒体、等である。オンライン上の記録媒体は、例えば、クラウドサーバー、FTPサーバー、ネットワークストレージ等である。
【0073】
上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲又はその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略等を行うことができる。
【0074】
例えば、触媒は、白金触媒ではない触媒であってもよい。白金触媒ではない触媒も、白金触媒と同様のメカニズムで劣化しうる。また、白金触媒ではない触媒の劣化も、白金触媒と同様にして抑制されうる。触媒の種類に応じた所定電圧、電力Wc及び所定電力Wdが存在しうる。
【0075】
燃料電池5の台数は、特に限定されない。電解質膜1、アノード2及びカソード3についても同様である。
【0076】
自然数a、b、c、d、e、f、g、h及びiは、1以上の自然数と定義されてもよく、2以上の自然数と定義されてもよく、3以上の自然数と定義されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示は、複数台の燃料電池を含む燃料電池システムに適用可能である。本開示に係る技術によれば、燃料電池の劣化を抑えることができ、耐久性を向上させた燃料電池システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0078】
1A~1J 電解質膜
2A~3J アノード
3~3J カソード
5A~5J 燃料電池
6 水素含有ガス供給経路
7 酸素含有ガス供給経路
8 制御器
11 水素含有ガス供給源
12 酸素含有ガス供給源
13 電力線
14 電力負荷
100 燃料電池システム