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  • 特開-枝付きガスケット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079782
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】枝付きガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20230601BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20230601BHJP
【FI】
F16J15/12 A
F16J15/10 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193415
(22)【出願日】2021-11-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 英男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和義
【テーマコード(参考)】
3J040
【Fターム(参考)】
3J040BA01
3J040EA15
3J040EA17
3J040EA44
3J040EA50
3J040FA02
3J040FA07
3J040HA09
3J040HA15
3J040HA30
(57)【要約】
【課題】内輪を備えた枝付きガスケットにおいて、内輪の部位における流体の漏れを防止できる枝付きガスケットを提供する。
【解決手段】枝付きガスケット1は、フィラー材とフープ材とを渦巻状に巻き重ねた渦巻形ガスケットからなる円環状のガスケット本体10と、ガスケット本体10の内周部に装着された円環状の内輪20と、内輪20の内周部に装着され、内輪20の内方に延びる枝部30とを備え、枝部30は、その両端部において、内輪20の厚みと同じ大きさの幅を有するスリット30aが形成されており、枝部30は、内輪20がスリット30aに挿入された状態で、内輪20に装着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラー材とフープ材とを渦巻状に巻き重ねた渦巻形ガスケットからなる円環状のガスケット本体と、
前記ガスケット本体の内周部に装着された円環状の内輪と、
前記内輪の内周部に装着され、前記内輪の内方に延びる枝部と
を備え、
前記枝部は、その両端部において、前記内輪の厚みと同じ大きさの幅を有するスリットが形成されており、
前記枝部は、前記内輪が前記スリットに挿入された状態で、前記内輪に装着されている、枝付きガスケット。
【請求項2】
前記枝部は、前記スリットが形成された両端部において、前記内輪の両面を覆って、前記ガスケット本体の内周部まで延出する一対の延出部を有している、請求項1に記載の枝付きガスケット。
【請求項3】
前記枝部は、中空円筒状からなる、請求項1または2に記載の枝付きガスケット。
【請求項4】
前記枝部は、前記内輪の直径方向に延びている、請求項1~3の何れか1項に記載の枝付きガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枝付きガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
渦巻形ガスケットは、高いシール性を備えているため、高温・高圧の流体が流れる配管等において広く使用されている。このような渦巻形ガスケットは、金属性のフープ材と可撓性のフィラー材とが重ね合わされて、渦巻き状に巻回された環状のガスケット本体を備えている。
【0003】
従来の渦巻形ガスケットにおいて、ガスケット本体の強度を高めるために、ガスケット本体の内周部に、金属性の内輪が装着された構造の渦巻形ガスケットが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、内部の流体通路が仕切板で仕切られた熱交換器用の渦巻形ガスケットにおいて、仕切板をシールするために、ガスケット本体の直径方向に枝部が装着された構造の枝付きガスケットが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-130220号公報
【特許文献2】特開昭63-280966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱交換器用の渦巻形ガスケットとして、ガスケット本体の内周部に、金属性の内輪を装着するとともに、内輪の内周部に熱交換器の仕切板をシールする枝部を装着した構造の枝付きガスケットが考えられる。
【0007】
図4(A)~(C)は、このような構造の枝付きガスケット100の構成を示した図で、図4(A)は平面図で、図4(B)は、図4(A)において、A-A線に沿った断面図で、図4(C)は、図4(A)において、B-B線に沿った断面図である。
【0008】
図4(A)~(C)に示すように、枝付きガスケット100は、フープ材とフィラー材とが渦巻き状に巻回されたガスケット本体110の内周部に内輪120が装着され、さらに、内輪120の内周部に、内輪120の直径方向に延びる枝部130が装着されている。この枝付きガスケット100が、内部の流体通路が仕切板で仕切られた熱交換器に装着されたとき、枝部130は、温度の異なる流体が流れる通路Cと通路Dとの間で、流体が漏れるのを防止するシール機能を発揮する。
【0009】
しかしながら、図4(B)に示すように、剛性を有する内輪120の厚みは、可撓性を有する枝部130の厚みよりも薄くなっている。そのため、枝部130と接する内輪120の部位では、枝部130によるシール機能が発揮されず、図4(A)の矢印で示す方向で、通路Cと通路Dとの間で、流体が漏れてしまうという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、内輪を備えた枝付きガスケットにおいて、内輪の部位における流体の漏れを防止できる枝付きガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る枝付きガスケットは、フィラー材とフープ材とを渦巻状に巻き重ねた渦巻形ガスケットからなる円環状のガスケット本体と、ガスケット本体の内周部に装着された内輪と、内輪の内周部に装着され、内輪の内方に延びる枝部とを備え、枝部は、その両端部において、内輪の厚みと同じ大きさの幅を有するスリットが形成されており、枝部は、内輪がスリットに挿入された状態で、内輪に装着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内輪を備えた枝付きガスケットにおいて、内輪の部位における流体の漏れを防止できる枝付きガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態における枝付きガスケットの構成を模式的に示した図で、(A)は平面図、(B)は、(A)のA-A線に沿った断面図、(C)は、(A)のB-B線に沿った断面図である。
図2】本発明の一実施形態における枝部の構成を模式的に示した図で、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
図3】(A)~(D)は、本実施形態における枝付きガスケットの製造方法を説明した図である。
図4】(A)~(C)は、従来の枝付きガスケットの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における枝付きガスケットの構成を模式的に示した図で、図1(A)は平面図、図1(B)は、図1(A)のA-A線に沿った断面図、図1(C)は、図1(A)のB-B線に沿った断面図である。
【0016】
図1(A)~(C)に示すように、本実施形態における枝付きガスケット1は、フィラー材とフープ材とを渦巻状に巻き重ねた渦巻形ガスケットからなる円環状のガスケット本体10と、ガスケット本体10の内周部に装着された内輪20と、内輪20の内周部に装着され、内輪20の内方(図1(A)では、直径方向)に延びる枝部30とを備えている。ここで、枝部30は、可撓性の材料からなり、枝部30の厚みは、ガスケット本体10の厚みよりも厚くなっている。
【0017】
図2は、本実施形態における枝部30の構成を模式的に示した図で、図2(A)は斜視図、図2(B)は側面図である。
【0018】
図2(A)、(B)に示すように、枝部30は、その両端部(図2では、片側端部のみを表示)において、内輪20の厚みと同じ大きさの幅Dを有するスリット30aが形成されている。また、スリット30aの深さLは、内輪20の幅と同じ大きさに設定されている。そして、この枝部30は、図1(B)に示すように、内輪20がスリット30aに挿入された状態で、内輪20に装着されている。すなわち、枝部30は、スリット30aが形成された両端部において、内輪20の両面を覆って、ガスケット本体10の内周部まで延出する一対の延出部30bを有している。
【0019】
本実施形態によれば、内輪20の両面が、枝部30の一部である一対の延出部30bで覆われているため、延出部30bが設けられた内輪20の部位は、ガスケット本体10以上の厚みを有している。そのため、枝付きガスケット1を、内部の流体通路が仕切板で仕切られた熱交換器に装着したとき、枝部30によるシール機能は、内輪20の部位においても発揮することができる。これにより、内輪20の部位において、熱交換器における通路Cと通路Dとの間で、流体が漏れてしまうのを防止することができる。
【0020】
本実施形態における渦巻形ガスケットとしては、例えば、ステンレス鋼等の金属材料からなるフープ材と、PTFE(テトラフルオロエリレン)や黒鉛等の材料からなるフィラー材とが、渦巻状に巻き重ねられた構成のものを用いることができる。なお、本実施形態において、フープ材及びフィラー材に用いる材料は、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、本実施形態における内輪20は、例えば、ステンレス鋼や炭素鋼等の材料からなる円環状のものを用いることができる。
【0022】
また、本実施形態における枝部30は、例えば、ステンレス鋼等の可撓性の材料からなる中空円筒状のものを用いることができる。中空円筒状の枝部30は、スリット30aの加工が容易であるため、枝付きガスケットの製造コストを抑えることができる。
【0023】
次に、図3(A)~(D)を参照しながら、本実施形態における枝付きガスケットの製造方法を説明する。
【0024】
図3(A)に示すように、巻上機(不図示)に内輪20を装着した後、フープ材10aの先端を、内輪20に溶接する。
【0025】
次に、図3(B)に示すように、巻上機を用いて、内輪20にフープ材10aを2~4重に巻回した後、フープ材10aとフィラー材10bとを重ね合わせて巻回し、最後に、フープ材10aの外周部を溶接する。
【0026】
次に、枝部30を内輪20に装着する際、まず、図3(C)に示すように、一対の延出部30bのうち、一方の延出部30bを折り曲げて、内輪20を、枝部30のスリット30a内に挿入する。なお、本実施形態における枝部30は、可撓性の材料で構成されているため、延出部30bを容易に折り曲げることができる。
【0027】
次に、図3(D)に示すように、折り曲げた延出部30bを元に戻した後、図1(A)に示すように、スリット30aの底部と、内輪20の側面とを、矢印Pで示した部位で、半田等で溶接することにより、枝部30を内輪20に固定する。
【0028】
本実施形態における枝付きガスケットの製造方法によれば、両端部にスリット30aが形成された枝部30を用意するだけで、簡単に、図1(A)~(C)に示した構造の枝付きガスケット1を製造することができる。これにより、製造コストの上昇を抑えて、内輪の部位における流体の漏れを防止できる枝付きガスケットを実現することにある。特に、枝部30を中空円筒状にすることによって、スリット30aを容易に加工することができるため、製造コストの上昇をより抑えることができる。
【0029】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、上記実施形態では、枝部30として、中空円筒状のもの例に説明したが、これに限定されず、例えば、板状のメタルジャケット形ガスケットを用いてもよい。メタルジャケット形ガスケットとしては、例えば、無機質鉱物等の材料からなる中芯材の外側を、ステンレス鋼や炭素鋼等の可撓性の材料からなる金属薄板で被覆した構造のものを用いることができる。
【0030】
また、上記実施形態では、枝部30として、内輪20の直径方向に延びた形状のものを例に説明したが、これに限定されず、熱交換機に形成された仕切板の形状に合わせた形状のものであれば、どのような形状のものであってもよい。例えば、途中で枝分かれした形状のものであってもよい。
【0031】
また、上記本実施形態では、ガスケット本体10の内周部に内輪20を装着した枝付きガスケット1を例に説明したが、ガスケット本体10の外周部に外輪をさらに装着したものであってもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、枝付きガスケットを熱交換器に適用する例を説明したが、これに限定されず、例えば、加熱器等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 枝付きガスケット
10 ガスケット本体
10a フープ材
10b フィラー材
20 内輪
30 枝部
30a スリット
30b 延出部
図1
図2
図3
図4