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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023079973
(43)【公開日】2023-06-08
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20230601BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230601BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230601BHJP
   C09J 133/02 20060101ALI20230601BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230601BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230601BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B7/12
C09J175/04
C09J133/02
C09J11/04
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018525
(22)【出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2021192989
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 太智
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA18B
4F100AB01A
4F100AB05A
4F100AB18A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK15C
4F100AK25B
4F100AK51B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CB00B
4F100EH46
4F100EH71A
4F100EJ17
4F100EJ86
4J004AA10
4J004AA14
4J004AA18
4J004CA05
4J004CB03
4J004CC02
4J004FA08
4J040DF012
4J040DF032
4J040EF001
4J040HA136
4J040LA01
4J040LA02
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】本発明は、金属基体と樹脂フィルムとを、金属化合物を含有する接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体に関し、金属基体と樹脂フィルムとの接着性に優れ、且つ、安価に提供することができる、新たな積層体を提供する。
【解決手段】金属基体と樹脂フィルムとが、金属化合物およびカルボン酸含有樹脂を含有する接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基体と樹脂フィルムとが、金属化合物およびカルボン酸含有樹脂を含有する接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体。
【請求項2】
前記カルボン酸含有樹脂が、カルボン酸を含有するアクリル樹脂である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記接着剤は、ウレタン樹脂を主成分樹脂として含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記金属化合物は、マグネシウム化合物である、請求項1~3の何れか一項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基体と樹脂フィルムとが接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板やステンレスなどの金属板などに樹脂フィルムを積層した樹脂フィルム積層体は、その樹脂フィルムによる意匠性や複合材としての機能性を生かして種々の分野に使用されている。
しかし、樹脂フィルムと金属板とを接着することは容易でないため、樹脂フィルムと金属板との接着方法に種々の工夫がなされてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、溶剤を使用しないエマルジョン化した接着剤を使用して、金属板と樹脂フィルムとを積層する方法が開示されている。
また、特許文献2には、樹脂シート積層金属板用の接着剤として、カルボキシル基を有するウレタン樹脂エマルジョン(A)およびイソシアネート基を有する架橋剤(B)からなる樹脂成分に、シランカップリング剤(C)を、ウレタン樹脂エマルジョン(A)の固形分100質量部に対し0.1~5質量部配合してなる樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献3には、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂を含む樹脂層(A層)を、金属板上に設けることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-309216号公報
【特許文献2】特開2005-272592号公報
【特許文献3】特開2011-201303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属基体と樹脂フィルムとを接着剤を使用して積層する場合、上述のように、接着性を高めることは容易ではない。特に耐食性を高めるためなどの目的で、金属化合物を接着剤に添加すると、その分だけ接着剤中の接着成分の含有割合が減るため、接着性が低下してしまうという課題を抱えていた。
【0007】
本発明は、金属基体と樹脂フィルムとを、金属化合物を含有する接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体に関し、金属基体と樹脂フィルムとの接着性に優れた新たな積層体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属基体と樹脂フィルムとが、金属化合物およびカルボン酸含有樹脂を含有する接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体を提案する。
【発明の効果】
【0009】
本発明が提案する積層体は、金属基体と樹脂フィルムとの接着性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<<本積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る積層体(「本積層体」と称する)は、金属基体と樹脂フィルムとが接着剤を介して積層してなる構成を備えた積層体である。
【0012】
<接着剤>
本積層体の接着剤は、金属化合物、および、カルボン酸含有樹脂を含有することを特徴する接着剤である。
接着剤が金属化合物を含有することにより、水や塩水などに対する耐食性を高めることができる。また、カルボン酸含有樹脂を含有することにより、金属基体と樹脂フィルムとの接着性を高めることができる。
【0013】
(金属化合物)
前記金属化合物としては、例えば水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バナジウム等の金属水酸化物粒子、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、重質炭酸カルシウム等の金属炭酸塩粒子、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム等の金属珪酸塩粒子、酸化バナジウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物粒子、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム等の金属硫酸塩粒子、燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、燐酸バリウム等の金属燐酸塩粒子、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム等の亜硝酸塩粒子、バナジン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム等の遷移金属酸化物塩粒子などを挙げることができる。
これらの中でも、水中に溶出した際に不働態をつくり耐食性を高めることができる観点から、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化バナジウム、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウムなどが特に好ましい。
これらは、一種を選択して用いてもよいし、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
金属化合物の形状は、特に限定するものでない。例えば粒子状、針状、フレーク状などを挙げることができる。中でも、均一分散性等の観点から粒子状が好ましい。
【0015】
金属化合物が粒子状である場合、その平均粒径は、粒子の分散性安定性の観点から、1000μm以下であるのが好ましく、中でも100μm以下であるのがより好ましく、その中でも10μm以下であるのがさらに好ましい。他方、粒子を細かくできる現実性の観点から、0.001μm以上であるのが好ましく、中でも0.01μm以上であるのがより好ましく、その中でも0.1μm以上であるのがさらに好ましい。
なお、金属化合物の平均粒径は、例えば、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを使用して、接着剤を観察し、10個以上の粒子の直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、断面形状が円形でない場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子の直径として測定することができる。
【0016】
金属化合物は、接着剤中に0.1~80質量%の割合で含有されるのが好ましく、中でも1質量%以上或いは70質量%以下の割合で含有されるのがより好ましく、その中でも5質量%以上或いは60質量%以下の割合で含有されるのがさらに好ましく、その中でも10質量%以上或いは50質量%以下の割合で含有されるのがさらに好ましい。
【0017】
(カルボン酸含有樹脂)
前記カルボン酸含有樹脂は、カルボン酸基、言い換えれば、カルボキシル基を有する樹脂であればよい。カルボン酸含有樹脂中のカルボン酸基すなわちカルボキシル基は、金属基体の金属イオンとイオン性結合を形成し、強固な接着性を得ることができる。
【0018】
前記カルボン酸含有樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の共重合可能なカルボン酸基を有するモノマーを含有する樹脂を挙げることができる。中でも、接着性改善の観点から、カルボン酸含有アクリル樹脂が特に好ましい。
【0019】
前記カルボン酸含有アクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の共重合可能なカルボン酸基を有するモノマーを含有するアクリル樹脂を挙げることができる。
カルボン酸含有アクリル樹脂における共重合可能なモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル、スチレンなどのほか、二官能性又は三官能性の架橋アクリル系モノマーを挙げることができる。
【0020】
カルボン酸含有樹脂のカルボン酸含有量は、接着性改善の観点から、0.1~300mgKOH/gであるのが好ましく、中でも1mgKOH/g以上或いは200mgKOH/g以下、その中でも3mgKOH/g以上或いは50mgKOH/g以下であるのがさらに好ましく、中でも4mgKOH/g以上或いは9mgKOH/g以下であるのが特に好ましい。
【0021】
カルボン酸含有樹脂のガラス転移温度(Tg)は、積層体の加工性の観点から、0℃~150℃であるのが好ましく、中でも10℃以上或いは130℃以下、その中でも20℃以上或いは110℃以下、その中でも30℃以上或いは90℃以下であるのがさらに好ましく、中でも20℃以上或いは80℃以下であるのが特に好ましい。
【0022】
カルボン酸含有樹脂の質量平均分子量は、接着性の観点から、1,000以上5,000,000以下であるのが好ましく、中でも10,000以上或いは2,000,000以下であるのがより好ましく、その中でも30,000以上或いは1,500,000以下であるのがさらに好ましく、その中でも35,000以上或いは70,000以下であるのが特に好ましい。
【0023】
カルボン酸含有樹脂は、接着剤中に0.1~30質量%の割合で含有されるのが好ましく、中でも0.5質量%以上或いは20質量%以下の割合で含有されるのがより好ましく、その中でも0.9質量%以上或いは10質量%以下の割合で含有されるのがさらに好ましい。
【0024】
カルボン酸含有樹脂の含有量は、前記金属化合物の含有量100質量部に対して0.001~200質量部であるのが好ましく、中でも0.01質量部以上或いは150質量部以下であるのがより好ましく、その中でも0.05質量部以上或いは100質量部以下であるのがさらに好ましく、その中でも0.1質量部以上或いは80質量部以下であるのがさらに好ましく、その中でも1質量部以上或いは50質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0025】
(主成分樹脂)
本積層体の接着剤の主成分樹脂としては、例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などを挙げることができる。中でも、その末端基の水酸基が、前記カルボン酸含有樹脂のカルボン酸基すなわちカルボキシル基と、水素結合乃至共有結合することができる観点から、ウレタン樹脂が好ましい。
ウレタン樹脂としては、例えば水分散性ポリウレタン樹脂、水分散型ウレタンアクリレートオリゴマーなどを挙げることができる。
【0026】
なお、上記接着剤の主成分樹脂とは、接着剤を構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂を意味し、接着剤を構成する樹脂の50質量%以上、又は、60質量%以上、又は、70質量%以上、又は、80質量%以上、又は、90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を想定することができる。
【0027】
本積層体の接着剤は、溶剤系であっても、非溶剤系であってもよい。
溶剤系の場合は、公知の溶剤を用いることができる。
非溶剤系の場合、例えば水分散性のものや、ペレット状のものなどを挙げることができる。
【0028】
本積層体の接着剤はまた、光硬化性であっても、熱硬化性であってもよい。
光硬化性接着剤又は熱硬化性接着剤である場合、主要成分樹脂のほかに、硬化剤又は架橋開始剤を含むのが好ましい。
硬化剤又は架橋開始剤は、熱架橋及び光架橋のいずれの架橋方法を選択するか、さらにはバインダー樹脂として何を使用するかによって適宜使用するのが好ましい。
【0029】
光硬化性の場合には、光重合開始剤を配合するのが好ましい。
当該光重合開始剤としては、特に制限するものではなく、例えばアセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、チタノセン系化合物、オニウム塩系化合物等を挙げることができる。
他方、熱硬化性の場合には、過酸化物、アゾ化合物などの熱によるラジカル重合開始剤や、イソシアネート硬化剤やエポキシ樹脂を含む組成を挙げることができる。
【0030】
(その他の成分)
本積層体の接着剤は、上記以外に、必要に応じてシランカップリング剤、その他、接着剤に配合される公知の添加剤を含有することができる。
【0031】
シランカップリング剤としては、その分子中に二個以上の異なった反応基を有する有機ケイ素化合物を挙げることができる。二個の反応基のうち、一個は金属などの無機質と化学結合する反応基とし、残りの一個は、樹脂と結合する反応基とするのが好ましい。無機質と結合する反応基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基などであり、また、樹脂と結合する反応基には、例えば、グリシド基、アミノ基、アクリル基などである。
【0032】
<金属基体>
金属基体としては、例えば、鉄板、鋼板、ブリキ板、ティンフリースチール板、黄銅板、アルミニウム板、ステンレススチール板、またはこれらを一成分とする合金製板などを挙げることができる。
【0033】
金属基体の形状は任意である。例えば、板状、ロール状、シート状、フィルム状、その他適宜形状に成形された形状などを挙げることができる。
【0034】
金属基体の表面は、例えば電気メッキ又は無電解メッキによって、例えば亜鉛、スズ、ニッケル、銅などをメッキして、メッキ層を備えていてもよい。
具体例としては、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、熔融亜鉛・アルミニウム合金メッキ鋼板、熔融亜鉛・アルミニウム・マグネシウム合金メッキ鋼板、スズメッキ鋼板などを挙げることができる。
【0035】
また、金属基体の表面は、前記メッキ層を備えている如何にかかわらず、例えば、クロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理などの化学処理、または、電気化学的処理、物理的処理、シランカップリング剤処理などが施されていてもよい。
なお、本積層体は、金属基体表面に特殊な表面処理が施されていなくても、金属基体と樹脂フィルムとの接着強度を高くすることができることが特徴であるので、上記表面処理はされていなくてもよいが、表面処理されていてもよい。
【0036】
<樹脂シート>
金属基体に積層される樹脂シートは、特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、環状ポリオレフィンなどの非晶質ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、SBS、SEBSなどのスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、共重合アクリル等の(メタ)アクリレート系樹脂、ポリウレタンなどのウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド6、ポリアミド12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアリレート樹脂、エチレン-四フッ化エチレン共重合体、三フッ化塩化エチレン重合体、四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体、四フッ化エチレン-パーフルオロアルコキシエチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、パーフルオロエチレン-パーフルオロプロピレン-パーフロロビニルエーテル三元共重合体などのフッ素系樹脂などの樹脂を主成分樹脂とする樹脂シートを挙げることができる。
中でも、極性が高く、特にウレタン樹脂接着剤との相性が良いという観点から、ポリ塩化ビニルを主成分樹脂とする樹脂シート、ポリオレフィンを主成分樹脂とする樹脂シート、ポリエチレンテレフタレートを主成分樹脂とする樹脂シートなどが好ましい。中でも、ポリ塩化ビニルを主成分樹脂とする樹脂シートが特に好ましい。
なお、当該主成分樹脂とは、樹脂シートを構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂を意味し、樹脂シートを構成する樹脂の50質量%以上、又は、60質量%以上、又は、70質量%以上、又は、80質量%以上、又は、90質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を想定することができる。
【0037】
樹脂シートは、一層または二層以上の積層シートであってもよい。
また、樹脂シートは、未延伸のものでもよいし、一軸方向または軸方向に延伸したものでもよい。
【0038】
さらに、樹脂シートは、公知の表面処理、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、薬液処理を施したものであってもよく、さらには極性ポリマーコーティング処理、色模様の印刷やエンボス加工等を施したものであってもよい。
【0039】
樹脂シートの厚さは、特に限定するものではない。例えば5μm以上500μm以下、中でも10μm以上或いは400μm以下、その中でも20μm以上或いは300μm以下の場合を想定することができる。
【0040】
<製造方法>
本積層体の製造方法としては、例えば、金属基体の少なくとも片側表面に接着剤を塗布し、その上に樹脂シートを重ねて積層する方法を挙げることができる。但し、かかる製法に限定するものではない。
【0041】
金属基体に接着剤を塗布する方法は、特に制限はない。例えばバーコート法、エアーレス法、スプレイ法、浸漬法、ロールコート法、刷毛塗り法などのいずれを採用してもよい。
【0042】
金属板に塗布する接着剤の厚さは、特に制限するものではない。例えば接着性と価格の観点からは、0.1μm以上100μm以下であるのが好ましく、中でも0.2μm以上或いは50μm以下、その中でも0.5μm以上或いは20μm以下であるのがさらに好ましい。
【0043】
金属板に接着剤を塗布した後は、必要に応じて、加熱乾燥する。例えば80~120℃の温度で10~60秒間加熱して加熱乾燥する。
【0044】
次に、金属板に樹脂シートを積層する方法は、特に限定するものではなく、従来から知られている方法によって積層すればよい。例えば、押出機先端に、コートハンガーダイ、Tダイ、Iダイなどのダイを装備し、押出機で原料樹脂を溶融させ、ダイからシート(薄膜)状に押出しながら金属板の表面を被覆する、いわゆる押出ラミネート法や、予めシートを調製し、このシートを加熱された金属板上にニップロールなどで圧着する方法などを挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0045】
<<語句の説明>>
本発明においては、「フィルム」とも称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」とも称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0046】
本発明において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例0047】
以下、実験例により本発明を具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実験例により何ら限定されるものではない。
本発明で用いた評価方法は次のとおりである。
【0048】
<原料>
以下の実験例で使用した各構成部材について説明する。
【0049】
(金属基体)
・亜鉛メッキ鋼板(厚さ0.4mm)
【0050】
(樹脂シート)
・ポリ塩化ビニル樹脂未延伸シート(厚み200μm、「軟質PVCフィルム」と称する)
【0051】
(接着剤原料)
・水酸化マグネシウム粒子
・硫酸マグネシウム粒子
・水酸化カルシウム粒子
・炭酸カルシウム粒子
・硫酸バリウム粒子
【0052】
・カルボン酸含有アクリル樹脂A(カルボン酸含有量7.8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)48℃、質量平均分子量40,000)
・カルボン酸含有アクリル樹脂B(カルボン酸含有量3.3mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)97℃、質量平均分子量75,000)
・カルボン酸含有アクリル樹脂C(カルボン酸含有量9.8mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)106℃、質量平均分子量25,000)
・カルボン酸含有アクリル樹脂D(カルボン酸含有量2mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)93℃、質量平均分子量40,000)
・カルボン酸含有アクリル樹脂E(カルボン酸含有量3.3mgKOH/g、ガラス転移温度(Tg)83℃、質量平均分子量80,000)
【0053】
・ウレタン接着剤樹脂(ガラス転移温度(Tg)56℃、数平均分子量10,000)
【0054】
<実験例1>
表1に示ように、ウレタン接着剤樹脂83.1質量%、水酸化マグネシウム粒子16.0質量%、及び、カルボン酸含有アクリル樹脂A0.9質量%を、固形分濃度が30質量%となるようにメチルエチルケトン(MEK)に加えて、ペイントシェーカーを用いて混合して接着剤を調製した。
亜鉛メッキ鋼板上に、番手20のバーコーターを用いてバーコート法により、乾燥後の膜厚みが3μmとなるように、上記接着剤を塗布した。上記鋼板の塗布を220℃に加熱した上で、この接着剤上に、上記軟質PVCフィルムを重ねて、ニップロールで圧着して積層体(サンプル)を作製した。
【0055】
<実験例2―11及び比較例1-4>
接着剤の組成を、表1及び表2に示ように変更して接着剤を調製した以外、実験例1と同様に、積層体(サンプル)を作製した。
【0056】
<<接着性の評価>>
上記実験例で作製した積層体(サンプル)から、測定用サンプルとして25mm×150mmのサイズに切り出し、23℃、50%RH環境下において、引張圧縮試験機(オリエンテック社製、「STA1150」)を用いて、剥離速度300mm/minでの180度剥離強度(N/25mm)を測定することにより、粘着力(N/25mm)を測定した。
次の基準で接着性を評価した。
〇( 合格):180度剥離強度が23N/25mm以上
×(不合格):180度剥離強度が23N/25mm未満
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
上記実験例の結果、並びに、これまで本発明が行ってきた試験結果から、金属基体と樹脂フィルムとを、金属化合物およびカルボン酸含有樹脂を含有する接着剤を介して積層するようにすれば、金属基体と樹脂フィルムとの接着性に優れ、且つ、安価に提供することができる積層体を作製することができることが分かった。
中でも、実施例1及び2の剥離強度が特に高いことからも分かるように、カルボン酸含有樹脂のカルボン酸含有量は、4mgKOH/g以上9mgKOH/g以下であるのが特に好ましく、カルボン酸含有樹脂のガラス転移温度(Tg)は、20℃以上80℃以下であるのがさらに好ましく、カルボン酸含有樹脂の質量平均分子量は、30,000以上70,000以下であるのがさらに好ましいことが分かった。