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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023080406
(43)【公開日】2023-06-09
(54)【発明の名称】印刷配線板及び印刷配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/40 20060101AFI20230602BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20230602BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20230602BHJP
【FI】
H05K3/40 E
H05K1/03 610L
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
H05K1/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021193731
(22)【出願日】2021-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】島田 信宏
【テーマコード(参考)】
5E317
【Fターム(参考)】
5E317AA11
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB02
5E317BB12
5E317CC31
5E317GG11
5E317GG17
(57)【要約】
【課題】ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む絶縁層を有する印刷配線板において、貫通孔の壁面に厚み変化の少ない導体層を形成する。
【解決手段】印刷配線板は、ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む第1絶縁層を有し、前記第1絶縁層は、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔の壁面に、該壁面側からエポキシ樹脂を含む樹脂膜および銅めっき膜を、この順に備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む第1絶縁層を有し、
前記第1絶縁層は、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔の壁面に、該壁面側からエポキシ樹脂を含む樹脂膜および銅めっき膜を、この順に備える、印刷配線板。
【請求項2】
さらに、前記第1絶縁層に積層されたエポキシ樹脂を含む第2絶縁層を有し、前記樹脂膜は、前記第2絶縁層と連続している請求項1記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記銅めっき膜が筒状のスルーホール導体を成しており、該スルーホール導体の内径の公差が、前記印刷配線板の厚み方向において50μm以内である請求項1又は2記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記銅めっき膜の厚みの公差が、前記印刷配線板の厚み方向において10μm以内である請求項1~3のいずれか一項記載の印刷配線板。
【請求項5】
前記樹脂膜の厚みの公差が、前記印刷配線板の厚み方向において30μm以内である請求項1~4のいずれか一項記載の印刷配線板。
【請求項6】
ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む第1絶縁層に、厚み方向に貫通する貫通孔を形成する第1の工程と、
前記貫通孔の壁面にエポキシ樹脂を含む樹脂膜を形成する第2の工程と、
前記樹脂膜の内側に、銅めっき膜を形成する第3の工程と、
を含む印刷配線板の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程として、
前記第1絶縁層上に、エポキシ樹脂を含む材料層を配置し、加熱及び加圧して、前記第1絶縁層上に前記材料層が硬化して形成された第2絶縁層を形成するともに、該第2絶縁層と連続するように、前記貫通孔の前記壁面に前記材料層が硬化して形成された前記樹脂膜を形成する、を用いる、請求項6記載の印刷配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷配線板及び印刷配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載ミリ波レーダーや5G基地局向けに用いられるアンテナ、及び該アンテナにより受信された信号を伝送する伝送線路が内蔵された印刷配線板に、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の高周波材料が用いられている。また、高周波信号を伝送するためのアンテナ回路を印刷配線板に形成する場合などにおいて、小型で低損失の伝送線路である導波管を印刷配線板の内部に形成する技術がある。導波管は、印刷配線板の厚み方向に延びる管状の導体により構成され、典型的には、めっきにより形成される。
【0003】
上記印刷配線板においては、高周波材料からなる絶縁層と、エポキシ樹脂等の一般的な樹脂材料からなる絶縁層が積層されて用いられることが多い(例えば、特許文献1を参照)。このような積層体に導波管を形成するために貫通孔を開け、その壁面にめっきにより管状の導体層である導波管を形成することは困難が伴う。これは、高周波材料上では、めっき材料が析出しないか、析出してもめっきの密着力が低いことに起因する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-141036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高周波材料、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む絶縁層を有する印刷配線板においては、貫通孔の壁面に厚み変化の少ない導体層を形成する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る印刷配線板は、ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む第1絶縁層を有し、
前記第1絶縁層は、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔の壁面に、該壁面側からエポキシ樹脂を含む樹脂膜および銅めっき膜を、この順に備える。
【0007】
また、本開示の他の一の態様に係る印刷配線板の製造方法は、ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む第1絶縁層に、厚み方向に貫通する貫通孔を形成する第1の工程と、
前記貫通孔の壁面にエポキシ樹脂を含む樹脂膜を形成する第2の工程と、
前記樹脂膜の内側に、銅めっき膜を形成する第3の工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る印刷配線板は、ポリフェニレンエーテル樹脂又はポリテトラフルオロエチレン樹脂を含む高周波材料の絶縁層を有する印刷配線板において、貫通孔の壁面に厚み変化の少ない導体層を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】第2の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
図4A】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
図4B】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
図4C】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
図4D】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
図4E】第2の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
図4F】第2の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
図4G】第2の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示による印刷配線板を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による印刷配線板が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば、製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
また、以下で参照する各図は、説明の便宜上の模式的なものである。したがって、各図において細部は省略されることがあり、また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0013】
〔第1の実施形態に係る印刷配線板の構成〕
図1は、第1の実施形態に係る印刷配線板1Aの断面図である。
印刷配線板1Aは、例えば、ミリ波レーダーなどに用いられるアンテナ、及び該アンテナにより受信された信号を伝送する伝送線路が内蔵された基板である。印刷配線板1Aは、ポリフェニレンエーテル樹脂(以下、「PPE樹脂」ともいう。)又はポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、「PTFE樹脂」ともいう。)を含む第1絶縁層10を有する。第1絶縁層10は、厚み方向に貫通する貫通孔11(以下、便宜上、第1貫通孔とする。)を有し、第1貫通孔11の壁面S1に、該壁面S1側からエポキシ樹脂を含む樹脂膜20および銅めっき膜30を、この順に備える。すなわち、樹脂膜20は、第1貫通孔11の壁面S1を覆うように管状に形成されており、樹脂膜20の内側の表面は貫通孔21(以下、便宜上、第2貫通孔とする。)の壁面S2を成し、第2貫通孔21の壁面S2に、スルーホール導体を成す銅めっき膜30を備えている。以下の説明において、スルーホール導体には、銅めっき膜と同じ符号「30」を用いる。
【0014】
また、以下では、印刷配線板1Aの厚み方向をZ方向とするXYZ直交座標系で印刷配線板1Aの各部の向きを説明する。以下では、印刷配線板1A及び印刷配線板1Aを構成する各層の+Z方向を向く面を「上面」とも記し、-Z方向を向く面を「下面」とも記す。図1は、印刷配線板1AのY方向と直交する断面を示す図である。
【0015】
(第1の実施形態の効果)
本実施形態に係る印刷配線板1Aにおいては、第1絶縁層10がPPE樹脂又はPTFE樹脂を含有するものであり、第1絶縁層10に形成した第1貫通孔11は、その壁面S1にエポキシ樹脂を含有する管状の樹脂膜20を有している。スルーホール導体を成す銅めっき膜30は、第1貫通孔11の壁面S1ではなく、樹脂膜20の内側の表面(内周面)S2に形成されているため、その厚み変化が少ない。そして、印刷配線板1Aにおいて、この銅めっき膜30を、導波管に適用した場合、界面導電率が高く、伝送特性の高い印刷配線板を得ることができる。
以下、本実施形態に係る印刷配線板1Aの構成を詳細に説明する。
【0016】
第1絶縁層10の上面及び下面はXY平面と平行である。印刷配線板1Aにおいて、第1絶縁層10は、下から順に層間絶縁層10c、10b及び10aが積層され、さらに、層間絶縁層10aと10b及び層間絶縁層10bと10cの間にそれぞれ内部導体層12を備える。内部導体層12は、スルーホール導体30とは接しない構成である。また、印刷配線板1Aは、第1絶縁層10の上面及び下面に表面導体層40を有する。ここでは、表面導体層40がスルーホール導体30と接続されている。ただし、表面導体層40とスルーホール導体30は必ずしも接続されていなくてもよい。
【0017】
本実施形態の印刷配線板において、第1絶縁層は、単層の絶縁層で構成されてもよく、印刷配線板1Aのように複数の層間絶縁層が積層された構成であってもよい。複数の層間絶縁層が積層された構成である場合、例えば、各一対の層間絶縁層の間にそれぞれ内部導体層を有していてもよい。
【0018】
層間絶縁層10a、10b及び10cは、いずれもPPE樹脂及びPTFE樹脂の少なくとも一方を含む材料で構成される。層間絶縁層10a、10b及び10cは、PPE樹脂及びPTFE樹脂の一方のみを含んでもよく、両方を含んでもよい。層間絶縁層10a、10b及び10cは、さらにPPE樹脂及びPTFE樹脂以外のその他の樹脂を含んでもよい。層間絶縁層10a、10b及び10cを構成する材料は、PPE樹脂及びPTFE樹脂の少なくとも一方を含む限り、同じであっても異なってもよい。層間絶縁層10a、10b及び10cは、典型的には、同じ樹脂を含有する。層間絶縁層10a、10b及び10cの厚みは特に限定されない。印刷配線板1Aの設計に応じて適宜選択される。なお、第1絶縁層10の厚み方向における最大の厚み差は、例えば、50~500μmとすることができる。
【0019】
層間絶縁層10a、10b及び10cを構成する材料は、補強材を含んでもよい。補強材としては、例えば、ガラス繊維及びガラス不織布、アラミド不織布及びアラミド繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。これらの補強材は2種以上を併用してもよい。層間絶縁層10a、10b及び10cは、さらに、シリカ、硫酸バリウム、タルク、クレー、ガラス、炭酸カルシウム、酸化チタン等の無機充填材を含んでいてもよい。
【0020】
層間絶縁層10a、10b及び10cにおけるPPE樹脂又はPTFE樹脂の含有量は、層間絶縁層の全量に対して、例えば、50~100質量%であり、典型的には、100質量%である。
【0021】
第1絶縁層10が高周波材料であるPPE樹脂又はPTFE樹脂を含有することで、本実施形態の印刷配線板は、高周波信号を伝送するためのアンテナ回路が形成された印刷配線板として好適である。
【0022】
2つの内部導体層12及び2つの表面導体層40は、それぞれ、設計に応じた配線パターンをなしている。内部導体層12及び表面導体層40の材質は、特には限られないが、例えば銅である。内部導体層12及び表面導体層40は互いに導通する構成であってもよい。これらの導体層は、それぞれ外部と電気的に接続される構成であってもよい。内部導体層12及び表面導体層40の厚みは特に限定されない。印刷配線板1Aの設計に応じて適宜選択される。
【0023】
第1絶縁層10は、厚み方向に貫通する第1貫通孔11を有する。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。図2に示すとおり、印刷配線板1Aにおいて、第1貫通孔11のXY平面における断面形状は、円形であり、その直径はD1である。なお、本実施形態の印刷配線板において第1貫通孔のXY平面における断面形状は特に限定されず、円形の他に、多角形、楕円形、長円(レーストラック)形等であってよい。導波管としての機能をより発揮する典型的な形状は多角形のうち長方形である。
【0024】
第1貫通孔11の直径D1は、例えば、第1絶縁層10の上面から下面にかけての平均の直径、すなわち、第1絶縁層10の厚み方向(Z方向)における平均の直径として、0.25~0.40mmの範囲とすることができる。なお、第1貫通孔11の平均直径は、例えば、第1貫通孔11の、無作為の1か所のZ方向の断面(但し、該断面は、第1貫通孔11をXY平面で切ったときの断面(以下、「XY断面」ともいう。)における第1貫通孔11の中心を含む。)について、金属顕微鏡を用いて求めた平均直径である。
【0025】
図1に示すように、第1貫通孔11の壁面S1は、第1絶縁層10の上面及び下面に対して直交する関係である。また、第1貫通孔11の直径D1は、Z方向において殆ど変化がない。具体的には、第1貫通孔11のZ方向における直径D1の公差は、例えば、30μm以内である。なお、第1貫通孔11のZ方向における直径D1の公差は、例えば、上記平均直径を求めたのと同じZ方向における断面において、上記同様の装置等を用いて得られる最大直径と最小直径の差を示す。
【0026】
樹脂膜20は、第1貫通孔11の壁面S1に所定の厚みt2をもって管状に設けられている。すなわち、樹脂膜20は、管状の外側の表面(外周面)が第1貫通孔11の壁面S1と接する関係であり、管状の内側の表面(内周面)S2が第2貫通孔21の壁面S2を成している。樹脂膜20の厚みt2は、XY平面で測定される厚みであって、管状体である樹脂膜20の外側の表面(外周面)S1と内側の表面(内周面)S2との距離を示す。
【0027】
図2に示すとおり、印刷配線板1Aにおいて、第2貫通孔21のXY平面における断面形状は、円形であり、その直径はD2である。なお、樹脂膜20が設けられる領域は、例えば、第1貫通孔11の壁面S1の全面である。
【0028】
ここで、樹脂膜20の厚みt2は、例えば、管状の樹脂膜20のXY断面における平均の厚みとして、50~125μmの範囲とすることがでる。なお、樹脂膜20のXY断面における平均の厚みとは、例えば、樹脂膜20の無作為の1か所のXY断面について、金属顕微鏡を用いて求めた平均厚みである。樹脂膜20の厚みt2のXY断面における公差は、例えば、30μm以内である。なお、樹脂膜20の厚みt2のXY断面における公差は、例えば、上記平均厚みを求めたのと同じXY断面において、上記同様の装置等を用いて得られる最大厚みと最小厚みの差を示す。
【0029】
また、樹脂膜20の厚みt2は、例えば、管状の樹脂膜20の上端から下端にかけての平均の厚み、すなわち、印刷配線板1Aの厚み方向(Z方向)における平均の厚みとして、50~125μmの範囲とすることができる。なお、樹脂膜20のZ方向における平均の厚みとは、例えば、無作為の1か所のZ方向における断面(但し、該断面は、樹脂膜20のXY断面における第2貫通孔21の中心を含む。)において、第2貫通孔21を挟む両側の樹脂膜20の厚みについて、金属顕微鏡を用いて求めた平均厚みである。樹脂膜20の厚みt2のZ方向における公差は、例えば、30μm以内または10%以内である。なお、樹脂膜20の厚みt2のZ方向における公差は、例えば、上記平均厚みを求めたのと同じZ方向における断面において、上記同様の装置等を用いて得られる最大厚みと最小厚みの差を示す。
【0030】
なお、XY断面において、例えば、第1貫通孔11の中心と第2貫通孔21の中心は一致している。第2貫通孔21の直径D2は、例えば、第1貫通孔11の直径D1から、樹脂膜20の厚みt2の2倍の値を引いた値として算出できる。
【0031】
樹脂膜20の厚みt2のZ方向における公差が上記範囲内であることで、樹脂膜20に起因する誘電特性の変化が小さい。このため、印刷配線板1Aにおいて第1絶縁層10の厚み方向(Z方向)への伝送特性を安定したものにできる。
【0032】
樹脂膜20はエポキシ樹脂を含む材料で構成される。樹脂膜20は、エポキシ樹脂以外のその他の樹脂を含んでもよい。また、樹脂膜20は、層間絶縁層10a、10b及び10c同様の補強材や無機充填材を含んでいてもよい。但し、樹脂膜20は、典型的には、クロス、繊維等の補強材は含有しない。樹脂膜20におけるエポキシ樹脂の含有量は、樹脂膜20の全量に対して、例えば、不可避の不純物を含有する場合を除き100質量%である。ここで、クロス、繊維等の補強材は含有しないとは、第1貫通孔11の壁面において、クロス、繊維が第1絶縁層10側から突き出て樹脂膜20の領域に見かけ上含まれている状態となっていても、樹脂膜20には実質的にクロス、繊維が含まれないという意味である。
【0033】
印刷配線板1Aでは、樹脂膜20は、エポキシ樹脂を含む材料で、第1貫通孔11の壁面S1の全面を覆うように管状に形成されている。これにより、樹脂膜20の内側の表面(内周面)S2に、銅めっき膜30を、厚みの変化が少なくなるように形成することができる。
【0034】
銅めっき膜(スルーホール導体)30は、第2貫通孔21の壁面S2に所定の厚みt3をもって管状に設けられている。すなわち、銅めっき膜30は、管状の外側の表面(外周面)が第2貫通孔21の壁面S2と接する関係であり、管状の内側の表面(内周面)で貫通孔31(以下、便宜上、第3貫通孔とする。)を形成している。銅めっき膜30の厚みt3は、XY平面で測定される厚みであって、管状体である銅めっき膜30の外側の表面(外周面)と内側の表面(内周面)との距離を示す。
【0035】
図2に示すとおり、印刷配線板1Aにおいて、第3貫通孔31のXY平面における断面形状は、円形であり、その直径はD3である。なお、銅めっき膜30が設けられる領域は、例えば、第2貫通孔21の壁面S2の全面である。
【0036】
ここで、銅めっき膜30の厚みt3は、管状の銅めっき膜30のXY断面における平均の厚みとして、10~30μmの範囲とすることができ、典型的には、15~25μmの範囲とすることができる。なお、樹脂膜20のXY断面における平均の厚みとは、例えば、無作為の1か所のXY断面について、金属顕微鏡を用いて求めた平均厚みである。
【0037】
また、銅めっき膜30の厚みt3は、例えば、管状の銅めっき膜30の上端から下端にかけての平均の厚み、すなわち、印刷配線板1Aの厚み方向(Z方向)における平均の厚みとして、10~30μmの範囲とすることができ、典型的には、15~25μmの範囲とすることができる。なお、銅めっき膜30のZ方向における平均の厚みとは、例えば、無作為の1か所のZ方向における断面(但し、該断面は、銅めっき膜30のXY断面における第3貫通孔31の中心を含む。)において、第3貫通孔31を挟む両側の銅めっき膜30の厚みについて、金属顕微鏡を用いて求めた平均厚みである。銅めっき膜30の厚みt3のZ方向における公差は、例えば、10μm以内である。なお、銅めっき膜30の厚みt3のZ方向における公差は、例えば、上記平均厚みを求めたのと同じZ方向における断面において、上記同様の装置等を用いて得られる最大厚みと最小厚みの差を示す。
【0038】
銅めっき膜30から成るスルーホール導体は、管状の導体であり、IVH(Interstitial Via Hole)とも呼ばれる。スルーホール導体30の外径は第2貫通孔21の直径D2と同じである。なお、XY断面において、例えば、第1第1貫通孔11の中心、第2貫通孔21及び第3貫通孔31の中心は一致している。スルーホール導体30の内径、すなわち、第3貫通孔31の直径D3は、第2貫通孔21の直径D2から、銅めっき膜30の厚みt3の2倍の値を引いた値として算出できる。スルーホール導体30の内側、すなわち第3貫通孔31の内部は、空洞となっている。
【0039】
あるいは、スルーホール導体30の内径D3は、例えば、印刷配線板1Aの厚み方向(Z方向)の平均の内径として、例えば、スルーホール導体30の、無作為の1か所のZ方向の断面(但し、該断面は、第3貫通孔31のXY断面における第3貫通孔31の中心を含む。)について、金属顕微鏡を用いて求めた平均内径とすることができる。該スルーホール導体30の平均内径は、例えば、0.11~0.26mmの範囲とすることがでる。
【0040】
図1に示すように、スルーホール導体30の内径、すなわち第3貫通孔31の直径D3は、第1貫通孔11の直径D1と同様に、Z方向において殆ど変化がない。具体的には、第3貫通孔31のZ方向における直径D3の公差は、例えば、50μm以内である。なお、第3貫通孔31のZ方向における直径D3の公差は、例えば、上記平均直径を求めたのと同じZ方向における断面において、上記同様の装置等を用いて得られる最大直径と最小直径の差を示す。
【0041】
このように、スルーホール導体30の厚みt3および内径D3の公差が、印刷配線板1Aの厚み方向(Z方向)において、上記範囲であることで、スルーホール導体30を導波管として用いた場合に、界面導電率が高く、伝送特性の高い印刷配線板を得ることができる。また、スルーホール導体30は、導波管として、例えば、アンテナ導体で受信した信号を印刷配線板1Aの上面から下面に低損失で伝送することができる。
【0042】
〔第2の実施形態に係る印刷配線板の構成〕
図3は、第2の実施形態に係る印刷配線板1Bの断面図である。
印刷配線板1Bは、印刷配線板1Aにおいて、さらに第1絶縁層10の上面に積層されたエポキシ樹脂を含む第2絶縁層50を有し、樹脂膜20は、第2絶縁層50と連続した層である構成である。印刷配線板1Bにおいては、第2貫通孔21は、第2絶縁層50まで連通している。印刷配線板1Bは、上記に加えて、内部導体層12の数及び表面導体層40の配設位置が印刷配線板1Aと異なる。印刷配線板1Bは、これらの構成以外は、印刷配線板1Aと同じ構成である。
【0043】
印刷配線板1Bに係る以下の説明において、印刷配線板1Aと共通する構成については、印刷配線板1Aと同じ符号を付して重複する説明を省略し、主として印刷配線板1Aと異なる点について説明する。
【0044】
第2絶縁層50は、樹脂膜20と連続した層であり、構成材料は、樹脂膜20と同様とすることができる。第2絶縁層50の厚みは特に制限されない。印刷配線板1Bの設計に応じて適宜選択される。
【0045】
図3に示すとおり、第2貫通孔21は、印刷配線板1Bの上面から下面に亘って貫通している。第2貫通孔21の壁面S2は、樹脂膜20の内側の壁面が成す領域と第2絶縁層50に存在する第2貫通孔21の壁面の領域で構成されている。そして、印刷配線板1Bにおいても、印刷配線板1Aと同様に、第2貫通孔21の壁面S2の全面に、銅めっき膜30が設けられ、スルーホール導体を成している。
【0046】
印刷配線板1Bでは、印刷配線板1Aが有する2つの内部導体層12に加えて、第1絶縁層10と第2絶縁層50の間にさらに内部導体層12を有する。また、印刷配線板1Aが2つの表面導体層40を第1絶縁層10の上面と下面に有していたのに対して、印刷配線板1Bでは、2つの表面導体層40は第2絶縁層50の上面と第1絶縁層10の下面に配置されている。
【0047】
(第2の実施形態の効果)
印刷配線板1Bにおいては、第1絶縁層10に第2絶縁層50が積層されたものであるが、樹脂膜20は、第2絶縁層50と連続した層であり、第2貫通孔21は、第2絶縁層50まで連通しているため、厚み変化の少ない銅めっき膜30が形成されやすい。そして、印刷配線板1Bにおいて、この銅めっき膜30を、導波管に適用した場合、界面導電率が高く、伝送特性の高い印刷配線板を得ることができる。
【0048】
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態は、例示であり、様々な変更が可能である。
【0049】
例えば、印刷配線板1A及び印刷配線板1Bにおいて、スルーホール導体30の内側、すなわち第3貫通孔31の内部は、空洞であるが、それに替えて樹脂を含む誘電体材料で充填された印刷配線板であってもよい。
【0050】
また、印刷配線板1A及び印刷配線板1Bにおいて、スルーホール導体30を複数設け、スルーホール導体30同士を同軸線路などにより電気的に接続してもよい。
【0051】
印刷配線板1A及び印刷配線板1Bには、内部導体層12同士、又は内部導体層12と表面導体層40とを電気的に接続する貫通導体がさらに設けられていてもよい。
【0052】
印刷配線板1A及び印刷配線板1Bにおいて、表面導体層40は、スルーホール導体30と接続されているが、表面導体層40とスルーホール導体30が絶縁された構成であってもよい。
【0053】
第2絶縁層50を有する印刷配線板1Bにおいては、第1絶縁層10の下面にさらに第2絶縁層50を有していてもよい。また、印刷配線板1Bは、第1絶縁層10の上面に替えて下面に第2絶縁層50を有していてもよい。
【0054】
実施形態の印刷配線板は、アンテナ用途の他、高い耐熱性、高い機械的強度が求められる車載用の印刷配線板として用いることができる。
【0055】
〔印刷配線板の製造方法〕
次に、実施形態の印刷配線板の製造方法について説明する。
図4A図4Dは、第1の実施形態に係る印刷配線板1Aの製造方法を説明する断面図である。
【0056】
本実施形態に係る印刷配線板1Aの製造方法は、上記の第1~第3の工程を含み、典型的には、以下の第1A工程~第4A工程を含む。第1A工程が上記第1の工程に相当し、第2A工程および第2B工程が上記第2の工程に相当し、第4A工程が上記第3の工程に相当する。
【0057】
第1A工程;PPE樹脂又はPTFE樹脂を含む第1絶縁層に、厚み方向に貫通する貫通孔(上記同様に、以下、便宜上、第1貫通孔とする。)を形成する工程
第2A工程;前記第1貫通孔を、エポキシ樹脂を含む材料で充填し充填層を形成する工程
第3A工程;前記充填層に厚み方向に貫通する貫通孔(上記同様に、以下、便宜上、第2貫通孔とする。)を形成して、前記第1貫通孔の壁面にエポキシ樹脂を含む樹脂膜を形成する工程
第4A工程;前記第2貫通孔の壁面に、銅めっき膜によるスルーホール導体を形成する工程
【0058】
第1A工程では、図4Aに示す、上面及び下面に表面導体層40を有する第1絶縁層10に、図4Bに示すように厚み方向に貫通する直径D1の第1貫通孔11が設けられる。図4Aに示す、第1貫通孔11が設けられる前の第1絶縁層10は、層間絶縁層10a、10b及び10cを有するとともに、それらの間にそれぞれ内部導体層12を有する。なお、内部導体層12は、第1貫通孔11の形成位置には存在していない。第1貫通孔11の形成は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、ドリル又はレーザを用いて形成される。
【0059】
第2A工程では、図4Cに示すように、第1貫通孔11を、エポキシ樹脂を含む材料で充填し充填層22を形成する。充填層22を構成する材料は、樹脂膜20を構成する材料と同じ材料である。
【0060】
第3A工程では、図4Dに示すように、充填層22に厚み方向に貫通する直径D2の第2貫通孔21を形成する。典型的には、平面視で、第1貫通孔11の直径D1と第2貫通孔21の直径D2の中心が一致するように第2貫通孔21が形成される。第2貫通孔21の形成は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、ドリル又はレーザを用いて形成される。第3A工程により、外側の表面(外周面)が第1貫通孔11の壁面S1で構成され、内側の表面(内周面)が第2貫通孔21の壁面S2で構成される管状の樹脂膜20が得られる。
【0061】
第4A工程では、図1に示すように、第2貫通孔21の壁面S2に銅めっき膜30によるスルーホール導体を形成する。銅めっき膜30の形成は、従来公知の銅めっき膜の形成方法が適用できる。第2貫通孔21の壁面S2がエポキシ樹脂を含む材料で構成されていることで、銅めっき膜30は均一な厚みで形成されやすい。また、銅めっき膜30の樹脂膜20に対する密着性も十分である。
以上の工程を経て印刷配線板1Aが完成する。
【0062】
図4E図4Gは、第2の実施形態に係る印刷配線板1Bの製造方法を説明する断面図である。
本実施形態に係る印刷配線板1Bの製造方法は、以下の第1B工程~第5B工程を含む。
第1B工程;PPE樹脂又はPTFE樹脂を含む第1絶縁層に、厚み方向に貫通する第1貫通孔を形成する工程
第2B工程;前記第1貫通孔が形成された第1絶縁層上に、エポキシ樹脂を含む材料層を積層して積層体を得る工程
第3B工程;前記積層体を熱プレスで加熱及び加圧して、前記材料層の溶融材料を前記第1貫通孔に充填しつつ固化(硬化)させて、前記第1絶縁層上にエポキシ樹脂を含む第2絶縁層を形成するともに、該第2絶縁層と連続する、前記第1貫通孔を充填するエポキシ樹脂を含む充填層を形成する工程
第4B工程;前記第2絶縁層から前記充填層に亘って厚み方向に貫通する第2貫通孔を形成して、前記第2絶縁層と連続するエポキシ樹脂を含む樹脂膜を前記第1貫通孔の壁面に形成する工程
第5B工程;前記第2貫通孔の壁面に、銅めっき膜によるスルーホール導体を形成する工程
【0063】
印刷配線板1Bの製造方法において、第1B工程及び第5B工程は、印刷配線板1Aの製造方法の第1A工程及び第4A工程と同じである。印刷配線板1Bの製造方法においては、印刷配線板1Aの製造方法の第2A工程及び第3A工程に替えて第2B工程、第3B工程及び第4B工程を有するものである。
【0064】
第2B工程、第3B工程及び第4B工程は、要約すると、前記第1絶縁層上に、エポキシ樹脂を含む材料層を配置し、加熱及び加圧して、前記第1絶縁層上に前記材料層が硬化して形成された第2絶縁層を形成するともに、該第2絶縁層と連続するように、前記貫通孔の前記壁面に前記材料層が硬化して形成された前記樹脂膜を形成する工程である。
【0065】
第2B工程では、図4Eに示すように、第1貫通孔11が形成された第1絶縁層10上に、エポキシ樹脂を含む材料層51を積層して積層体Lを得る。材料層51は、第2絶縁層50及び樹脂膜20を構成する材料と同じ材料である。ここで、材料層51としては、上面に表面導体層40と下面に材料層51とを重ねたもの、または上面に表面導体層40を有する材料層51を用いる。
【0066】
第3B工程では、図4Fに示すように、積層体Lを熱プレスで加熱及び加圧して、材料層51の溶融材料を第1貫通孔11に充填しつつ固化(硬化)させて、第1絶縁層10上にエポキシ樹脂を含む第2絶縁層50を形成する。そして、これと同時に、第2絶縁層50と連続する、第1貫通孔11を充填するエポキシ樹脂を含む充填層22が形成される。なお、この際、第1貫通孔11の下側の開口部から溶融材料が溢れ出ることがある。その場合、溢れ出た溶融材料は、研磨等の方法で除去される。
【0067】
第4B工程では、図4Gに示すように、第2絶縁層50から充填層22に亘ってその厚み方向(Z方向)に貫通する直径D2の第2貫通孔21を形成する。これにより、第2絶縁層50と連続する、エポキシ樹脂を含む樹脂膜20が第1貫通孔11の壁面S2に形成される。この際、第1絶縁層10が存在する部分では、平面視で、第1貫通孔11の直径D1と第2貫通孔21の直径D2の中心が一致するように第2貫通孔21が形成される。第2貫通孔21の形成は、従来公知の方法で行うことができ、例えば、ドリル又はレーザを用いて形成される。
【0068】
次いで行われる第5B工程を経て、図3に示される印刷配線板1Bが完成する。
以上説明した、印刷配線板1A及び印刷配線板1Bの製造方法は、例示であり、様々な変更が可能である。
【0069】
ここで、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係及び形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係及び形状を適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0070】
1A、1B 印刷配線板
10 第1絶縁層
10a、10b、10c 層間絶縁層
11 第1貫通孔
12 内部導体層
20 樹脂膜
21 第2貫通孔
30 銅めっき膜(スルーホール導体)
31 第3貫通孔
40 表面導体層
50 第2絶縁層
S1 第1貫通孔の壁面
S2 第2貫通孔の壁面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G