(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008122
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】流量制御弁及び蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F16K 1/52 20060101AFI20230112BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20230112BHJP
F02M 25/08 20060101ALI20230112BHJP
F16K 47/04 20060101ALI20230112BHJP
F16K 31/04 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
F16K1/52 A
F02M37/00 301H
F02M25/08 311G
F16K47/04 Z
F16K31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111423
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 滉馬
(72)【発明者】
【氏名】村井 真司
【テーマコード(参考)】
3G144
3H052
3H062
3H066
【Fターム(参考)】
3G144BA27
3G144CA16
3G144CA17
3G144DA02
3G144DA03
3G144EA08
3G144EA10
3G144EA32
3G144FA04
3G144FA24
3G144GA03
3G144GA10
3G144GA23
3H052AA01
3H052BA11
3H052CA02
3H052CA03
3H052CA26
3H052CA34
3H052CD01
3H052CD03
3H052DA02
3H052DA03
3H052DA05
3H062AA02
3H062AA14
3H062BB01
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF39
3H062FF40
3H062HH02
3H066AA01
3H066BA01
3H066EA12
(57)【要約】
【課題】一定のリフト量以下の小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制する。
【解決手段】流量制御弁38は、流体通路65を有するケーシング52と、流体通路65に設けられた弁孔68を有する弁座67と、ケーシング52に設置される電動モータ54と、電動モータ54により送りねじ機構83を介して軸方向にストローク制御されることにより弁座67を開閉する弁体58と、を備える。弁体58は、一定のリフト量以下の小開度領域において弁孔68内に位置するストレート状の突出筒部89を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路を有するケーシングと、
前記流体通路に設けられた弁孔を有する弁座と、
前記ケーシングに設置される電動モータと、
前記電動モータにより送りねじ機構を介して軸方向にストローク制御されることにより前記弁座を開閉する弁体と、
を備える、流量制御弁であって、
前記弁体は、一定のリフト量以下の小開度領域において前記弁孔内に位置するストレート状の突出部を有する、流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁であって、
前記弁体は、全閉状態で該弁体と前記弁座との間を弾性的にシールする円環状のシール部を有するシール部材を備えており、
前記全閉状態で前記弁座と前記突出部と前記シール部とにより取り囲まれかつ前記弁孔と前記突出部との間の隙間に連通する膨大空間部が形成される、流量制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流量制御弁であって、
前記送りねじ機構により軸方向に移動されるガイド部材と、
前記弁体の開弁時に前記ガイド部材と該弁体とを連結しかつ全閉状態で該ガイド部材と該弁体との連結を解除する連結機構と、
前記弁体と前記ガイド部材とを相反方向に付勢する付勢手段と、
を備えた、流量制御弁。
【請求項4】
内燃機関を搭載する車両の燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料を内燃機関にパージさせる蒸発燃料処理装置であって、
前記燃料タンクと前記キャニスタとを接続するベーパ通路と、
前記ベーパ通路を開閉する封鎖弁と、
前記ベーパ通路への前記燃料タンク内の燃料の流出を防止するフロート弁と、
を備えており、
前記封鎖弁として請求項1~3のいずれか1つに記載の流量制御弁を備えた、蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、流量制御弁及び蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関を搭載する車両の燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料を内燃機関にパージさせる蒸発燃料処理装置がある(特許文献1参照)。その蒸発燃料処理装置は、燃料タンクとキャニスタとを接続するベーパ通路と、ベーパ通路を開閉する封鎖弁と、ベーパ通路への燃料タンク内の燃料の流出を防止するフロート弁と、を備えている。
【0003】
封鎖弁は、流体通路を有するケーシングと、流体通路に設けられた弁孔を有する弁座と、ケーシングに設置される電動モータと、電動モータにより送りねじ機構を介して軸方向にストローク制御されることにより弁座を開閉する弁体と、を備える。弁体の開閉は、ストローク制御のみのため、弁体のリフト量(開度)に対して流量(通路面積)が比例的に変化する線形特性となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
給油に際し、封鎖弁の閉弁により燃料タンクが密閉状態にあって、しかも燃料タンクの内圧が高い状態にあるときに、燃料タンクの給油キャップを開けると、燃料タンク内に溜まっていた蒸発燃料が給油口から大気中に放出される問題がある。そこで、給油キャップを開ける前に、封鎖弁を開いて燃料タンクの内圧を低下させること(いわゆる圧抜き)が行われている。このとき、封鎖弁が一気に開かれると、燃料タンク内の蒸発燃料がベーパ通路に勢いよく流出することにより発生する動圧によって、フロート弁のフロートが張付いて(閉弁して)しまい、圧抜きができなくなるおそれがある。
【0006】
本明細書に開示の技術が解決しようとする課題は、一定のリフト量以下の小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本明細書が開示する技術は次の手段をとる。
【0008】
第1の手段は、流体通路を有するケーシングと、前記流体通路に設けられた弁孔を有する弁座と、前記ケーシングに設置される電動モータと、前記電動モータにより送りねじ機構を介して軸方向にストローク制御されることにより前記弁座を開閉する弁体と、を備える、流量制御弁であって、前記弁体は、一定のリフト量以下の小開度領域において前記弁孔内に位置するストレート状の突出部を有する、流量制御弁である。
【0009】
第1の手段によると、一定のリフト量以下の小開度領域において弁体の突出部が弁孔内に位置することにより、小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制することができる。ひいては、流量の制御性を向上することができる。
【0010】
第2の手段は、第1の手段の流量制御弁であって、前記弁体は、全閉状態で該弁体と前記弁座との間を弾性的にシールする円環状のシール部を有するシール部材を備えており、前記全閉状態で前記弁座と前記突出部と前記シール部とにより取り囲まれかつ前記弁孔と前記突出部との間の隙間に連通する膨大空間部が形成される、流量制御弁である。
【0011】
第2の手段によると、全閉状態で弁孔と突出部との間の隙間に連通する膨大空間部が形成されている。これにより、膨大空間部が形成されない場合と比べて、弁座とシール部材のシール部との間の隙間による流量の制御から、弁孔と突出部との間の隙間による流量の制御への切替えを明確化し、流量のずれを抑制することができる。
【0012】
第3の手段は、第1又は第2の手段の流量制御弁であって、前記送りねじ機構により軸方向に移動されるガイド部材と、前記弁体の開弁時に前記ガイド部材と該弁体とを連結しかつ全閉状態で該ガイド部材と該弁体との連結を解除する連結機構と、前記弁体と前記ガイド部材とを相反方向に付勢する付勢手段と、を備えた、流量制御弁である。
【0013】
第3の手段によると、温度変化にともなうケーシングの寸法変化による電動モータと弁座との間の距離の増減を、弁体とガイド部材との間の移動量の変化により吸収することができる。よって、全閉状態でのシール力の低下及び弁体の作動不良等の不具合の発生を抑制することができる。
【0014】
第4の手段は、内燃機関を搭載する車両の燃料タンク内の蒸発燃料をキャニスタに吸着させ、その吸着された蒸発燃料を内燃機関にパージさせる蒸発燃料処理装置であって、前記燃料タンクと前記キャニスタとを接続するベーパ通路と、前記ベーパ通路を開閉する封鎖弁と、前記ベーパ通路への前記燃料タンク内の燃料の流出を防止するフロート弁と、を備えており、前記封鎖弁として第1~3の手段のいずれか1つの流量制御弁を備えた、蒸発燃料処理装置である。
【0015】
第4の手段によると、一定のリフト量以下の小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制することができる流量制御弁を封鎖弁として備えた蒸発燃料処理装置を提供することができる。これにより、給油に際し、給油キャップを開ける前に封鎖弁が開かれても、燃料タンク内の蒸発燃料がベーパ通路に勢いよく流出することを抑制することができる。このため、フロート弁が動圧により閉じられることなく圧抜きを行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書に開示の技術によると、一定のリフト量以下の小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態にかかる蒸発燃料処理装置を示す構成図である。
【
図6】弁体のリフト量と流量との関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本明細書に開示の技術を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態の流量制御弁は、内燃機関(エンジン)を搭載する自動車等の車両に搭載される蒸発燃料処理装置に封鎖弁として備えられている。このため、蒸発燃料処理装置について説明した後、封鎖弁としての流量制御弁について説明する。
【0019】
(蒸発燃料処理装置)
図1は蒸発燃料処理装置を示す構成図である。
図1に示すように、自動車等の車両のエンジンシステム10に蒸発燃料処理装置12が備えられている。エンジンシステム10は、エンジン14と、エンジン14に供給される燃料を貯留する燃料タンク15とを備えている。燃料タンク15にはインレットパイプ16が設けられている。インレットパイプ16は、燃料を燃料タンク15内に導入するパイプであって、その上端部の給油口には給油キャップ17が着脱可能に取付けられている。また、インレットパイプ16の上端部内と燃料タンク15内の気層部とはブリーザパイプ18により連通されている。
【0020】
燃料タンク15内には燃料供給装置19が設けられている。燃料供給装置19は、燃料タンク15内の燃料を吸入しかつ加圧して吐出する燃料ポンプ20、燃料の液面を検出するセンダゲージ21、大気圧に対する相対圧としてのタンク内圧を検出するタンク内圧センサ22等を備えている。燃料ポンプ20により燃料タンク15内から汲み上げられた燃料は、燃料供給通路24を介してエンジン14、詳しくは各燃焼室に対応するインジェクタ25を備えるデリバリパイプ26に供給された後、各インジェクタ25から吸気通路27内に噴射される。吸気通路27には、エアクリーナ28、エアフロメータ29、スロットルバルブ30等が設けられている。
【0021】
蒸発燃料処理装置12は、ベーパ通路31とパージ通路32とキャニスタ34とを備えている。ベーパ通路31により燃料タンク15の気層部とキャニスタ34とが接続されている。パージ通路32によりキャニスタ34と吸気通路27とが接続されている。キャニスタ34内には、吸着材としての活性炭(不図示)が装填されている。燃料タンク15内の蒸発燃料は、ベーパ通路31を介してキャニスタ34内の吸着材(活性炭)に吸着される。
【0022】
ベーパ通路31の上流側端部には、ORVR弁(On Board Refueling Vapor Recovery valve)35及びカットオフバルブ(Cut Off Valve)36が設けられている。ORVR弁35及びカットオフバルブ36は、燃料タンク15内の気層部に配置されている。
【0023】
ORVR弁35は、燃料の浮力によって開閉するフロート35aを有する満タン規制バルブである。ORVR弁35は、燃料タンク15の燃料液面が満タンに達したらフロート35aがベーパ通路31に通じる通路を閉じることにより、ベーパ通路31への燃料タンク15内の燃料の流出を防止する。給油時において、ORVR弁35が閉弁すると、給油ガンのオートストップ機構が動作し、給油が停止される。
【0024】
カットオフバルブ36は、燃料の浮力によって開閉するフロート36aを有する。カットオフバルブ36は、車両の横転時等において、燃料タンク15が所定角度以上傾いて燃料液面が所定レベルに達したらフロート36aがベーパ通路31に通じる通路を閉じることにより、ベーパ通路31への燃料タンク15内の燃料の流出を防止する。カットオフバルブ36は、ORVR弁35よりも高い位置に配置されている。ORVR弁35及びカットオフバルブ36は本明細書でいう「フロート弁」に相当する。
【0025】
ベーパ通路31の途中には封鎖弁38が設けられている。封鎖弁38には、例えば、ステッピングモータを備えかつ弁体のストロークを制御することで弁体のリフト量を調整可能な電動弁が用いられている。封鎖弁38については後で説明する。
【0026】
パージ通路32の途中にはパージ弁40が設けられている。パージ弁40には、例えば、ステッピングモータを備えかつ弁体のストロークを制御することで開弁量を調整可能な電動弁が用いられている。パージ弁40には、電磁ソレノイドを備え、非通電状態では閉弁し、通電によって開弁する電磁弁を用いることもできる。
【0027】
キャニスタ34には切替弁41を介して大気通路42が接続されている。切替弁41には、電磁ソレノイドを備え、非通電状態では閉弁し、通電によって開弁する電磁弁が用いられている。大気通路42は大気に開放されている。大気通路42の途中にはエアフィルタ43が介装されている。
【0028】
封鎖弁38、パージ弁40及び切替弁41は、エンジン制御装置(以下、「ECU」という)45によりそれぞれ開閉制御される。ECU45には、タンク内圧センサ22、リッドスイッチ46、リッドオープナー47、表示装置49等が接続されている。リッドオープナー47は、車体側に設けられかつ給油口を覆うリッド48のロック機構である。リッドオープナー47は、リッド48を手動で開閉するリッド手動開閉装置(不図示)が連結されている。
【0029】
リッドスイッチ46は、ECU45に対してリッド48のロックを解除するための信号を出力する。リッドオープナー47は、ECU45からロックを解除するための信号が供給された場合、又は、リッド手動開閉装置に開動作が施された場合に、リッド48のロックを解除する。ECU45は本明細書でいう「制御装置」に相当する。
【0030】
(蒸発燃料処理装置12の動作)
(1)車両の駐車中
車両の駐車中において、封鎖弁38、パージ弁40及び切替弁41はそれぞれ閉弁状態に維持される。封鎖弁38が閉弁状態にあるため、燃料タンク15の蒸発燃料がキャニスタ34内に流入されることがない。また、キャニスタ34内の空気が燃料タンク15内に流入されることもない。
【0031】
(2)車両の走行中
車両の走行中において、ECU45は、所定のパージ条件が成立する場合に、キャニスタ34に吸着されている蒸発燃料をパージさせる制御を実行する。この制御では、切替弁41を開弁状態としたまま、パージ弁40が制御される。パージ弁40が開弁されると、エンジン14の吸気負圧がパージ通路32を介してキャニスタ34内に作用する。その結果、キャニスタ34内の蒸発燃料が、大気通路42から吸入される空気とともに吸気通路27にパージされることによりエンジン14で燃焼される。また、ECU45は、蒸発燃料のパージ中に限り、封鎖弁38を開弁状態とする。これにより、燃料タンク15のタンク内圧が大気圧近傍値に維持される。
【0032】
(3)給油中
車両の停車中において、給油に際し、リッドスイッチ46が操作されると、ECU45が封鎖弁38を開弁させる。この際、燃料タンク15のタンク内圧が大気圧より高圧であれば、封鎖弁38の開弁と同時に、燃料タンク15内の蒸発燃料が、ベーパ通路31を通ってキャニスタ34内の吸着材に吸着される。これにより、蒸発燃料が大気に放出されることが防止される。これにともない、燃料タンク15のタンク内圧は大気圧近傍値に低下する。
【0033】
燃料タンク15のタンク内圧が大気圧近傍値にまで低下すると、ECU45は、リッド48のロックを解除する信号をリッドオープナー47に出力する。その信号を受けたリッドオープナー47がリッド48のロックを解除することにより、リッド48の開動作が可能となる。そして、リッド48が開けられ、給油キャップ17が開けられた状態で、燃料タンク15への給油が行われる。また、ECU45は、給油の終了(具体的にはリッド48が閉じられる)まで、封鎖弁38を開弁状態に維持する。このため、給油にともなって、燃料タンク15内の蒸発燃料がベーパ通路31を通ってキャニスタ34内の吸着材に吸着される。
【0034】
(封鎖弁38としての流量制御弁)
封鎖弁38として用いられる流量制御弁38(封鎖弁38と同一符号を付す)を説明する。
図2は流量制御弁の閉弁状態を示す断面図である。
図2を基に流量制御弁38の上下左右の各方向を定めるが、流量制御弁38の配置方向を特定するものではない。
【0035】
図2に示すように、流量制御弁38は、ケーシング52と電動モータ54とガイド部材56と弁体58とバルブスプリング60とを備えている。ケーシング52には、上下方向に延びる直線を軸線とする有底円筒状の弁室62が形成されている。弁室62の下面中央部には、下方へ延びる中空円筒状の流入路63が同心状に形成されている。流入路63にはベーパ通路31(
図1参照)の上流側(燃料タンク15側)の通路が接続される。
【0036】
弁室62の内周面の下部には、側方(右方)へ延びる中空円筒状の流出路64が形成されている。流出路64にはベーパ通路31の下流側(キャニスタ34側)の通路が接続される。弁室62、流入路63及び流出路64により、逆L字状の流体通路65が構成されている。これにより、ケーシング52は流体通路65を有する。
【0037】
流入路63の上端開口部の口縁部により弁座67が形成されている。流入路63の上端開口部は、弁座67が有する円形状の弁孔68とされている。弁座67の上面は、弁室62の軸線に対して直交する平面で形成されている。弁室62の下面の外周部には、円環状のばね受溝69が形成されている。
【0038】
電動モータ54は、ステッピングモータで、ECU45(
図1参照)により駆動制御される。電動モータ54は、モータ本体71と、モータ本体71から下方に突出されかつ正逆回転可能な出力軸72と、を有する。モータ本体71は、ケーシング52の上部に設置されている。出力軸72は、ケーシング52の弁室62内に同心状に配置されている。出力軸72の外周面には雄ねじ部73が形成されている。
【0039】
ガイド部材56は、円筒状の筒壁部75と、筒壁部75の上端開口部を閉鎖する上壁部76と、上壁部76の中央部に形成された有底円筒状の筒軸部79と、を同心状に有する。上壁部76に筒軸部79の上下方向の中央部が接続されている。筒軸部79の内周面には雌ねじ部80が形成されている。筒壁部75の上端部には、径方向外方へ突出する円環状の張出壁部75aが形成されている。
【0040】
ガイド部材56は、ケーシング52の弁室62内に対して、回り止め手段(不図示)により軸回り方向に回り止めされた状態で軸方向(上下方向)に移動可能に配置されている。出力軸72の雄ねじ部73と筒軸部79の雌ねじ部80とがねじ合わされている。したがって、電動モータ54の出力軸72の正逆回転に基いて、ガイド部材56が軸方向(上下方向)に直線往復運動すなわち昇降させられる。雄ねじ部73と雌ねじ部80とにより送りねじ機構83が構成されている。
【0041】
ガイド部材56の筒壁部75の張出壁部75aとケーシング52のばね受溝69との間には、コイルスプリングからなる補助スプリング85が介装されている。補助スプリング85は、ガイド部材56を常に上方へ付勢することにより、送りねじ機構83のバックラッシュが防止される。
【0042】
弁体58は、円筒状の筒状部87と、筒状部87の下端開口部を閉鎖する下壁部88と、を同心状に有する。下壁部88は、筒状部87の外径よりも大きい外径を有する。弁体58はストレート状の突出筒部89を有する。
【0043】
突出筒部89は、下壁部88の下面に同心状に突出されている。突出筒部89は、弁座67の弁孔68の内径よりも小さい外径を有する円筒状に形成されている。突出筒部89の下端部(先端部)には、先細り状のテーパ部89aが形成されている。突出筒部89のテーパ部89aを除いた外周面は、上端部から下方に至るにしたがって僅かに小径となるテーパ面に形成されている。突出筒部89の上端部(基端部)には、径方向に貫通する複数(例えば2個)の連通孔89bが形成されている。突出筒部89は本明細書でいう「突出部」に相当する。
【0044】
下壁部88の下面には、円板状のゴム状弾性材からなるシール部材90が設けられている。シール部材90は、シール部90aと内板部90bと接続部90cとを有する。シール部90aは、下壁部88の下面のうち、突出筒部89の径方向外側の領域を覆う円環状に形成されている。シール部90aは、断面逆山形状に形成されている。内板部90bは、下壁部88の下面のうち、突出筒部89の径方向内側の領域を覆う板状に形成されている。接続部90cは、突出筒部89の連通孔89bを埋めるように形成されている。接続部90cによりシール部90aの上部と内板部90bとが接続されている。
【0045】
弁体58は、ガイド部材56の筒壁部75内に同心状にかつ軸回り方向に回り止めされた状態で上下方向に移動可能に配置されている。これにより、弁体58は、弁座67を開閉可能に配置されている。また、弁体58の突出筒部89は、弁座67の弁孔68内に対して挿脱可能に配置されている。シール部材90のシール部90aは、ケーシング52の弁座67に対して当接可能(着座可能)に配置されている。
【0046】
図5に示すように、弁体58が弁座67に着座する閉弁状態で、弁座67と突出筒部89とシール部90aとにより取り囲まれる部分には、膨大空間部93が形成される。膨大空間部93は、弁孔68の内周面と突出筒部89の外周面との間に形成される円筒状の隙間102と連通している。隙間102は、膨大空間部93に通じる流体の入口となる。膨大空間部93は、隙間102の横断面積(通路面積)に比べて大きい横断面積を有する。
【0047】
図2に示すように、バルブスプリング60は、コイルスプリングであり、ガイド部材56の上壁部76と弁体58の下壁部88との間に介装されている。バルブスプリング60は、ガイド部材56と弁体58とを相反方向へ付勢している。バルブスプリング60は本明細書でいう「付勢手段」に相当する。
【0048】
ガイド部材56と弁体58との間には、両部材56,58を上下方向に所定範囲内で移動可能に連結する連結機構95が設けられている。連結機構95は、ガイド部材56の筒壁部75の内周面に突出された係止突起75bと、弁体58の筒状部87の外周面に突出された係合突起87aと、からなる。係合突起87aは、係止突起75bの上側に配置されている。弁体58の開弁時において、バルブスプリング60の付勢力により係止突起75bと係合突起87aとが係合されることにより、ガイド部材56と弁体58とが一体的に連結される。また、連結機構95は、全閉状態において、バルブスプリング60の付勢力に抗して係止突起75bと係合突起87aとが離されることにより、ガイド部材56と弁体58との連結が解除される。なお、連結機構95は、周方向に等間隔で複数組(例えば4組)配置されている。
【0049】
(流量制御弁38の閉弁状態)
流量制御弁38の閉弁状態(
図2参照)では、弁体58がバルブスプリング60の付勢力によって弁座67に着座した状態に保持される。また、弁体58とケーシング52の弁座67との間は、シール部材90のシール部90aによって弾性的にシールされる。また、弁体58の突出筒部89は、弁座67の弁孔68内に位置されている。また、連結機構95の係止突起75bと係合突起87aとは離れている。
【0050】
閉弁状態で電動モータ54の通電をオフ(OFF)にしても、電動モータ54のディテントトルク、送りねじ機構83のリード角等によって閉弁状態を保持することができる。また、温度変化によりケーシング52に上下方向の寸法変化が生じる場合がある。例えば、ケーシング52が伸長するときには、電動モータ54と弁座67との間の距離(間隔)が増大するにともない、ガイド部材56が上方に移動するものの、弁体58は移動しない。このため、弁体58と弁座67との間のシール力を維持することができる。また、ケーシング52が短縮するときには、電動モータ54と弁座67との間の距離(間隔)が減少するにともない、ガイド部材56が下方へ移動するものの、弁体58は移動しない。このため、弁体58が突っ張らず、作動不良を招くこともない。
【0051】
(流量制御弁38の開弁作動時)
流量制御弁38の閉弁状態でECU45により電動モータ54が開弁作動されると、送りねじ機構83を介してガイド部材56が上昇されていく。これにともない、バルブスプリング60は弾性復元力により伸長する。また、連結機構95の係止突起75bに係合突起87aが当接した後、ガイド部材56と弁体58とが一体的に上昇される。すなわち、電動モータ54により送りねじ機構83を介して軸方向にストローク制御される。これにともない、弁体58のシール部材90のシール部90aが弁座67から離れる。
【0052】
すると、
図3に示すように、弁座67とシール部90aとの間に隙間101が形成される。隙間101は、弁孔68と突出筒部89との間に形成される円筒状の隙間102と膨大空間部93を介して連通する。また、弁体58のリフト量の増加にともない、隙間101の通路面積が隙間102の通路面積を超えるまでは、隙間101が第1絞り部101(隙間101と同一符号を付す)として機能する。これにより、弁体58のリフト量の増加に比例して通路面積が増加していく。つまり、流体通路65を流れる流体の流量が増加していく。弁体58のリフト量は電動モータ54のステップ数に相当する。
【0053】
続いて、弁体58のリフト量の増加にともない、隙間101の通路面積が隙間102の通路面積を超えると、隙間102が第2絞り部102(隙間102と同一符号を付す)として機能する。これにより、弁体58のリフト量が増加しても通路面積の増加が抑制される。つまり、流体通路65を流れる流体の流量の増加が抑制される。閉弁状態から弁体58の突出筒部89が弁座67の弁孔68から抜け出るまでが本明細書でいう「一定のリフト量以下の小開度領域」に相当する。
【0054】
次に、弁体58のテーパ部89aを除いた突出筒部89の外周面の下端が弁座67の弁孔68の上端よりも高い位置に移動すると、弁体58のリフト量の増加に比例して通路面積が増加していく。つまり、流体通路65を流れる流体の流量が増加していく。そして、最終的に全開状態(
図4参照)となる。
【0055】
(流量制御弁38の開弁状態)
図4に示すように、流量制御弁38の開弁状態においては、電動モータ54の通電をオフ(OFF)にしても、電動モータ54のディテントトルク、送りねじ機構83のリード角等によって開弁状態を保持することができる。
【0056】
(流量制御弁38の閉弁作動時)
流量制御弁38の開弁状態(
図4参照)でECU45により電動モータ54が閉弁作動されると、開弁作動時とは逆に、ガイド部材56と共に弁体58が下降されていく。すると、シール部材90のシール部90aが弁座67に着座することにより、弁体58の下方への移動が規制される。続いて、ガイド部材56が下降されるにともない、連結機構95の係止突起75bが係合突起87aから離れる。そして、ガイド部材56の筒壁部75が弁座67に当接する前に、ECU45により電動モータ54の閉弁作動が停止される(
図2参照)。
【0057】
(流量制御弁38の特性)
図6は弁体58のリフト量と流量との関係を示す特性図である。
図6において、横軸はリフト量を示し、縦軸は流量を示している。リフト量L0~L1は、弁体58が閉弁状態から上昇し始めてからシール部材90のシール部90aが弁座67から離れるまでの期間である。また、リフト量L1~L2は、第1絞り部101が作用する期間である。また、リフト量L2~L3は、第2絞り部102が作用する期間である。リフト量L0~L3が小開度領域に相当し、リフト量L2~L3が流量の増加を抑制する期間で、小開度領域の一部の領域に相当する。
【0058】
(実施形態の利点)
流量制御弁38によると、一定のリフト量以下の小開度領域において弁体58の突出筒部89が弁孔68内に位置することにより、小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制することができる。ひいては、流量の制御性を向上することができる。
【0059】
また、全閉状態で弁孔68と突出筒部89との間の隙間102に連通する膨大空間部93が形成されている。これにより、膨大空間部93が形成されない場合と比べて、弁座67とシール部材90のシール部90aとの間の隙間101による流量の制御から、弁孔68と突出筒部89との間の隙間102による流量の制御への切替えを明確化し、流量のずれを抑制することができる。
【0060】
また、送りねじ機構83により軸方向に移動されるガイド部材56と、弁体58の開弁時にガイド部材56と弁体58とを連結しかつ全閉状態でガイド部材56と弁体58との連結を解除する連結機構95と、弁体58とガイド部材56とを相反方向に付勢するバルブスプリング60と、を備えている。これにより、温度変化にともなうケーシング52の寸法変化による電動モータ54と弁座67との間の距離の増減を、弁体58とガイド部材56との間の移動量の変化により吸収することができる。よって、全閉状態でのシール力の低下及び弁体58の作動不良等の不具合の発生を抑制することができる。
【0061】
また、蒸発燃料処理装置12は、封鎖弁38として流量制御弁38を備える。したがって、封鎖弁38として、一定のリフト量以下の小開度領域の一部の領域において流量の増加を抑制することができる流量制御弁38を備えた蒸発燃料処理装置12を提供することができる。これにより、給油に際し、給油キャップ17を開ける前に封鎖弁38が開かれても、燃料タンク15内の蒸発燃料がベーパ通路31に勢いよく流出することを抑制することができる。このため、ORVR弁35及び/又はカットオフバルブ36が動圧により閉じられることなく圧抜きを行うことができる。
【0062】
[他の実施形態]
本明細書に開示の技術は、前記した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の形態で実施可能である。例えば、流量制御弁38は、蒸発燃料処理装置12の封鎖弁38以外の用途に適用してもよい。また、ガイド部材56を省略してもよい。また、電動モータ54は、送りねじ機構83を内蔵することで軸方向に移動する出力軸72を備えるものでもよい。この場合、出力軸72にガイド部材56を一体的に連結すればよい。また、突出部は、突出筒部89に限らず、中実状に形成してもよい。また、突出筒部89は、円筒状に限らず、角筒状でもよい。また、突出筒部89のテーパ部89aは省略してもよい。
【符号の説明】
【0063】
12 蒸発燃料処理装置
14 エンジン(内燃機関)
15 燃料タンク
31 ベーパ通路
34 キャニスタ
35 ORVR弁(フロート弁)
36 カットオフバルブ(フロート弁)
38 流量制御弁(封鎖弁)
45 ECU(エンジン制御装置、制御装置)
52 ケーシング
54 電動モータ
56 ガイド部材
58 弁体
60 バルブスプリング(付勢手段)
65 流体通路
67 弁座
68 弁孔
83 送りねじ機構
89 突出筒部(突出部)
90 シール部材
90a シール部
93 膨大空間部
95 連結機構
102 隙間(弁孔と突出部との間の隙間)