(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023081673
(43)【公開日】2023-06-13
(54)【発明の名称】消火栓装置および消火システム
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20230606BHJP
A62C 37/50 20060101ALI20230606BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C37/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195578
(22)【出願日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本郷 裕文
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EA01
2E189EC01
2E189HA17
(57)【要約】
【課題】配線の経路で断線が生じると、消火栓弁を開放しても消火ポンプ装置が起動せず、消火を行うことができない。また、配線の経路で短絡が生じた場合には、消火栓弁を操作していないにもかかわらず消火ポンプ装置が誤起動してしまう。本発明は、このような消火ポンプ装置の誤動作を防止することを課題とする。
【解決手段】消火栓装置を、消火栓のポンプを起動するポンプ起動スイッチと、複数の端子を有する端子台と、を備え、前記ポンプ起動スイッチの一方のスイッチ端子から2つの内部配線を導出し、前記端子台の2つの端子に接続し、他方のスイッチ端子から他の2つの内部配線を導出し、前記端子台の他の2つの端子に接続したものとする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火栓のポンプを起動するポンプ起動スイッチと、
複数の端子を有する端子台と、を備え、
前記ポンプ起動スイッチの一方のスイッチ端子から2つの内部配線を導出し、前記端子台の2つの端子に接続し、他方のスイッチ端子から他の2つの内部配線を導出し、前記端子台の他の2つの端子に接続したことを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
前記ポンプ起動スイッチとして、手動により導通する手動スイッチと、消火栓弁に連動する連動スイッチを備え、
前記手動スイッチと前記連動スイッチは、前記端子台の2つの端子の間で前記内部配線により直列に接続していることを特徴とする請求項1に記載された消火栓装置。
【請求項3】
請求項1または2の消火栓装置を複数備え、信号配線を複数の前記端子台の端子に順次接続し、前記信号配線と前記内部配線を直列に接続し、前記信号配線と前記内部配線の障害を監視することを特徴とする消火システム。
【請求項4】
消火栓のポンプを起動するポンプ起動スイッチを有した消火栓装置を複数備え、
配線を複数の前記ポンプ起動スイッチの端子に順次接続して直列に接続し、前記配線の障害を監視することを特徴とする消火システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用水や消火泡等の消火物質を放出する消火栓装置および消火システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路等、自動車専用道路等のトンネルには、トンネルの構造や交通量等に応じて消火設備が設置されている。特許文献1には、トンネル内に設けた消火栓設備を含むトンネル非常用設備が記載されている。この消火栓設備では、消火栓弁が開放された場合にポンプ起動信号を消火ポンプ装置に送信して、消火ポンプ装置を起動させる。これにより、消火栓設備において開放された消火栓弁とホースを介して、ノズルから消火用水等を放出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような消火栓設備は、間隔をあけて複数台が設置されることが多い。その場合、ポンプ起動信号を防災受信盤に送信するために、2本の配線を用いて複数台の消火栓設備を防災受信盤に接続し、配線の間の短絡をポンプ起動信号とすることができる。しかし、配線の経路で断線が生じると、消火栓弁を開放しても消火ポンプ装置が起動せず、消火を行うことができない。また、配線の経路で短絡が生じた場合には、消火栓弁を操作していないにもかかわらず消火ポンプ装置が誤起動してしまう。本発明は、このような消火ポンプ装置の誤動作を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、消火栓のポンプを起動するポンプ起動スイッチと、複数の端子を有する端子台と、を備え、前記ポンプ起動スイッチの一方のスイッチ端子から2つの内部配線を導出し、前記端子台の2つの端子に接続し、他方のスイッチ端子から他の2つの内部配線を導出し、前記端子台の他の2つの端子に接続したことを特徴とする消火栓装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、信号配線だけでなく、消火栓装置内で信号配線からポンプ起動スイッチに至る配線も監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明の実施形態における消火栓設備及び消火システム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に、消火システムの実施形態における、消火栓装置1のトンネル8への設置状況を示す。また、従来の消火栓装置9も消火栓装置1と同様の位置に設けられるため、
図1に示す。
図1の設備では、消火ホース(図示せず)を収納した消火栓ボックス2の中に消火栓装置1等も設けられている。消火栓ボックス2は、トンネル8の内部に所定の間隔で設けられており、非常時である火災の際には、消火栓ボックス2の消火ホース収納庫21から消火ホースを取り出して放水することが可能である。放水の際には、信号配線5、信号配線6によりいずれかの消火栓装置9から送られた起動信号を受けて、防災受信盤3から消火ポンプ装置4のポンプ制御盤41に起動信号が送られる。そして、消火ポンプ装置4でポンプ制御盤41がポンプ42を起動し、配管7に消火用水を送出する。
【0009】
図2は、従来の消火栓装置9を複数備えた消火システムを示したものである。消火栓装置9には、消火栓弁に連動する連動スイッチ91が設けられており、連動スイッチ91は端子台92に接続している。連動スイッチ91は、消火栓のポンプ42を起動するポンプ起動スイッチである。防災受信盤3は、信号配線5、6により複数の消火栓装置9の各々に設けられた端子台92に接続している。端子台92には、互いに絶縁された複数の接続端子が設けられている。消火栓装置9において、第1接続端子921は内部配線94により連動スイッチ91の第1スイッチ端子911に、第2接続端子922は内部配線95により第2スイッチ端子912に接続されている。端子台92の他の端子は、非常灯の電源等、他の構成の配線に用いられる。
【0010】
防災受信盤3からは2本の信号配線5、信号配線6が導出され、信号配線5、信号配線6の各々は、各消火栓装置9の端子台92を渡り配線で接続する。防災受信盤3に接続した一方の信号配線5は、各消火栓装置9における第1接続端子921を直列接続する。また、防災受信盤3に接続した他方の信号配線6は、各消火栓装置9における第2接続端子922を直列接続する。最後の消火栓装置9では、第1接続端子921と第2接続端子922の間を終端抵抗93で接続する。
【0011】
火災が生じ、いずれかの第1スイッチ端子911と第2スイッチ端子912が短絡し、2つの信号配線5と信号配線6が短絡する。そうすると、信号配線5、信号配線6の間の電位差が下がり、防災受信盤3に起動信号が送られる。全ての連動スイッチ91が開いているときには、終端抵抗93に電流が流れるため、所定の電位差が生じる。もしも信号配線5、6がどこかで切断されると電流が流れなくなり、高い電位差が生じる。そのため、防災受信盤3で信号配線5、6の断線を検出することができる。
【0012】
図2に示す従来の回路構成では、上記のように信号配線5、6の断線を検出することができる。しかし、端子台92から連動スイッチ91までの内部配線94、95が切断した場合や、端子台92から内部配線94、95が外れた場合に検出することはできない。本発明は、このような場合でも断線として検出することができるようにするものである。
【0013】
図3は、本発明の実施形態における消火栓装置1を複数備えた消火システムを示したものである。
図3には、3つの消火栓装置1が記載されているが、同様の構成であり、符号を適宜省略して記載している。消火栓装置1には、消火栓弁に連動する連動スイッチ11と手動により導通する手動スイッチ12が設けられており、内部配線15を介して端子台13に接続している。押しボタンスイッチは、手動スイッチ12の一例である。そして、連動スイッチ11と手動スイッチ12は、
図1に示す消火栓のポンプ42を起動するポンプ起動スイッチである。
【0014】
消火栓装置1の第1接続端子131は、第1内部配線151から手動スイッチ12の第3スイッチ端子121と第2内部配線152を介して、第2接続端子132に接続している。そして、第2接続端子132は、第3内部配線153から連動スイッチ11の第1スイッチ端子111と第4内部配線154を介して第3接続端子133に接続している。第3接続端子133は、信号配線5を介して前段の消火栓装置1の第1接続端子131又は防災受信盤3に接続し、第1接続端子131は、次の信号配線5を介して次段の消火栓装置1の第3接続端子133に接続する。
【0015】
消火栓装置1の第4接続端子134は、第5内部配線155から手動スイッチ12の第4スイッチ端子122と第6内部配線156を介して、第5接続端子135に接続している。そして、第5接続端子135は、第7内部配線157から連動スイッチ11の第2スイッチ端子112と第8内部配線158を介して、第6接続端子136に接続している。第6接続端子136は、信号配線6を介して前段の消火栓装置1の第4接続端子134又は防災受信盤3に接続し、第4接続端子134は、次の信号配線6を介して次段の消火栓装置1の第6接続端子136に接続する。端子台13の他の端子は、非常灯の電源等、他の構成の配線に用いられるが、配線に用いなくてもよい。
【0016】
図3の右端に記載した最終段の消火栓装置1においては、第1接続端子131は、終端抵抗14を介して第4接続端子134に接続する。本実施形態の消火システムでは、防災受信盤3から導出した信号配線5と信号配線6を複数の端子台13の端子に順次接続し、信号配線5、信号配線6と内部配線15を直列に接続し、断線を監視する。
【0017】
そして、消火栓装置9と同様に、本発明の消火栓装置1においても、いずれかの消火栓ボックス2で消火栓弁(図示せず)が開かれると、連動スイッチ11が閉じて2つの信号配線5、信号配線6の間が短絡して電位差がなくなることにより、防災受信盤3に起動信号が送られる。本実施形態では、手動スイッチ12が操作された際も、同様に防災受信盤3に起動信号が送られる。そして、起動信号を受けた防災受信盤3から消火ポンプ装置4のポンプ制御盤41に起動信号が送られ、消火ポンプ装置4でポンプ制御盤41がポンプ42を起動し、配管7に消火用水を送出する。
【0018】
全ての連動スイッチ11と手動スイッチ12が開いている際には、信号配線5と信号配線6の間は短絡していない。その際には、終端抵抗14に電流が流れるため、信号配線5、信号配線6の間に所定の電位差が生じている。信号配線5、信号配線6が切断されると電流が流れなくなり、高い電位差が生じる。そのため、防災受信盤3で信号配線5、6の断線を検出することができる。本発明ではさらに、内部配線15が断線した場合や、連動スイッチ11と手動スイッチ12の端子や接続端子から内部配線15が外れた場合にも信号配線5、6に電流が流れなくなる。そのため、防災受信盤3で内部配線15を含めた配線経路の断線をも監視することができる。
【0019】
また、断線の監視だけでなく、信号配線5、信号配線6に流れる電流値の変化傾向等から、断線に至る前の故障等の予兆を診断(劣化診断)することができる。たとえば、配線の断線や端子からの外れが生じていなくても、信号配線5、6に流れる電流値が断線予兆閾値よりも下がった場合には、断線や外れが生じかけている部分の抵抗値が高くなっているものとして、断線の予兆を判別することができる。
【0020】
さらに、配線経路等における短絡の予兆の診断(劣化診断)も可能である。例えば、第4内部配線154が第4接続端子134と接触しており、絶縁が劣化した場合には、短絡によりポンプ42が誤作動してしまう可能性がある。短絡の前段階で配線の電流値が短絡予兆閾値よりも大きく、防災受信盤3に起動信号が送られるよりも電流値が小さい場合には、短絡の予兆として判別することができる。なお、断線、断線の予兆や短絡の予兆等の障害を監視するための直接的な監視対象としては、配線の電流値に限らず、電圧値、抵抗値等であってもよい。本実施形態において、これらの障害の監視は防災受信盤3が行う。
【0021】
図2における従来の消火栓装置9と
図3における本発明の消火栓装置1をみてわかるように、消火栓装置9と消火栓装置1は端子台92、端子台13等の構成は同じである。そして、配線が異なっている。したがって、端子台13等は従来のものを使用し、スイッチ端子や接続端子への内部配線、信号配線の接続を変更して、本発明の消火栓装置1及び消火システムを構築することができる。また、
図2のように、既に設置している消火システムにおける端子台に接続端子の余りがある場合には、接続端子への結線を変更するだけで本発明の消火栓装置1及び消火システムとすることができる。
【0022】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【0023】
上記の実施形態ではトンネルの消火栓装置について説明したが、他の場所に設置した消火栓装置についても同様に、消火栓装置内における配線の切断等も監視することができる。また、配線の断線、断線の予兆、短絡の予兆の監視という点では、消火栓装置の端子台を省略して信号配線と内部配線を一体化した配線とし、防災受信盤等の監視装置からの配線を複数のスイッチ端子に順次接続して直列に接続して配線の断線等の障害を監視してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 消火栓装置、11 連動スイッチ、111 第1スイッチ端子、112 第2スイッチ端子、12 手動スイッチ、121 第3スイッチ端子、122 第4スイッチ端子、13 端子台、131 第1接続端子、132 第2接続端子、133 第3接続端子、134 第4接続端子、135 第5接続端子、136 第6接続端子、14 終端抵抗、15 内部配線、151 第1内部配線、152 第2内部配線、153 第3内部配線、154 第4内部配線、155 第5内部配線、156 第6内部配線、157 第7内部配線、158 第8内部配線、
2 消火栓ボックス、21 消火ホース収納庫、3 防災受信盤、4 消火ポンプ装置、41 ポンプ制御盤、42 ポンプ、5 信号配線、6 信号配線、7 配管 8 トンネル、
9 消火栓装置、91 連動スイッチ、911 第1スイッチ端子、912 第2スイッチ端子、92 端子台、921 第1接続端子、922 第2接続端子、93 終端抵抗、94 内部配線、95 内部配線