(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008217
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】金属板貼合せ用フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20230112BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230112BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230112BHJP
B32B 15/09 20060101ALI20230112BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20230112BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230112BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230112BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/20 A
B32B27/00 E
B32B15/09 A
C08L67/00
C08K3/013
B65D65/40 D
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021111601
(22)【出願日】2021-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】久保 耕司
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AA22
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4J002EU057
4J002FB076
4J002FD096
4J002FD097
4J002GF00
(57)【要約】
【課題】着色剤の選択の幅を広げることが可能であり(たとえば無機顔料を使用することが可能であり)、しかも、ラミネート金属板や成形品に、ゴールドの色合いを持たせることができる金属板貼合せ用フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 ポリエステル樹脂層(A)を備える金属板貼合せ用フィルムであって、前記ポリエステル樹脂層(A)が顔料を含有し、前記顔料が、無機顔料および有機顔料の少なくとも一方と、パール顔料とを含み、前記金属板貼合せ用フィルムのa*値が-5~20、b*値が0~50である、金属板貼合せ用フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂層(A)を備える金属板貼合せ用フィルムであって、
前記ポリエステル樹脂層(A)が顔料を含有し、前記顔料が、無機顔料および有機顔料の少なくとも一方と、パール顔料とを含み、
前記金属板貼合せ用フィルムのa*値が-5~20、b*値が0~50である、
金属板貼合せ用フィルム。
【請求項2】
下記式を満足する、請求項1に記載の金属板貼合せ用フィルム。
|Gs85-Gs45|/|Gs85-Gs60|≧1.6
(この式において、Gs85は85度鏡面光沢であり、Gs45は45度鏡面光沢であり、Gs60は60度鏡面光沢である。)
【請求項3】
前記パール顔料の平均長径が5μm~80μmである、請求項1または2に記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項4】
前記パール顔料が、雲母、および前記雲母を被覆する酸化物を備え、前記酸化物が、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、およびコバルト鉄酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項5】
前記パール顔料の含有量が、前記ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、0.02質量%~10質量%である、請求項1~4のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂層(A)の前記顔料が前記無機顔料を含む、請求項1~5のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項7】
前記ポリエステル樹脂層(A)の前記顔料が前記有機顔料を含み、前記有機顔料が、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料、およびキナクリドン系有機顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項8】
前記無機顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、前記無機顔料の重量減少率が1.5質量%未満であり、
前記有機顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、前記有機顔料の重量減少率が1.5質量%未満であり、
前記パール顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、前記パール顔料の重量減少率が1.5質量%未満である、
請求項1~7のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項9】
130℃で120分間のレトルト処理前後における色差ΔE*が10未満である、請求項1~8のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂層(A)に接するポリエステル樹脂層(B)をさらに備え、
前記ポリエステル樹脂層(B)が、顔料を実質的に含有していない、
請求項1~9のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂層(A)の厚みが5μm~50μmであり、
前記ポリエステル樹脂層(B)の厚みが0.5μm~15μmである、
請求項10に記載の金属板貼合せ用フィルム。
【請求項12】
前記金属板が、飲食品用の容器を構成する部材に成形される金属板であり、
前記容器の内面に、前記金属板貼合せ用フィルムが配置されるように使用される、請求項1~11のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板貼合せ用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属板の腐食を防止するために、ブリキ、ティンフリースチール、アルミニウムなどの金属板にポリエステルフィルムをラミネートしたうえで、ポリエステルフィルムがラミネートされた金属板(以下、「ラミネート金属板」と言うことがある。)を成形することによって、缶といった成形品を作製する方法が知られている(たとえば特許文献1、2参照)。この方法では、腐食防止のために金属板を塗装する場合に比べて、工程を簡素化することができる、すなわち工数を削減することができるといったメリットがある。
【0003】
このような成形品(たとえば缶)にゴールドの色合いを持たせるために、着色されたポリエステルフィルムを金属板にラミネートすることがある(たとえば特許文献1参照)。なお、ゴールドの色合いとは、光沢感を与える黄色系の色合いである。すなわち、光沢を有する黄色系の色合いである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-31634号公報
【特許文献2】特開2007-45895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、有機顔料で着色されたポリエステルフィルムを作製したことが記載されているところ、有機顔料は、無機顔料に比べて一般に耐熱性が低い。よって、このポリエステルフィルムは、レトルト処理(たとえば、成形品内の飲食品を殺菌するためにおこなわれる加熱処理)の可能温度の上限が、有機顔料の影響を受けることがある。つまり、着色剤として有機顔料を使用すると、レトルト処理の可能温度の向上に限界が生じることがある。これに加えて、着色剤として有機顔料を高融点の樹脂とともに使用すると、金属板貼合せ用フィルムの作製過程、たとえば押出成形で、有機顔料の昇華や退色が生じることがある。
【0006】
いっぽう、有機顔料を無機顔料に置き換えるだけでは、ラミネート金属板にゴールドの色合いを持たせることは難しい。なぜなら、無機顔料に起因するボイド(たとえば、二軸延伸によって無機顔料の周辺に生じる空隙)によって、ポリエステルフィルムのヘーズが増大し、全光線透過率が低下するので、金属板の金属光沢を効果的に利用することができないためである。
【0007】
このように、ゴールド発色のために金属板の金属光沢に頼る設計思想では、着色剤として無機顔料を選択することは現実的ではない。つまり、この設計思想では、着色剤の選択の幅が狭い。
【0008】
本発明は、着色剤の選択の幅を広げることが可能であり(たとえば無機顔料を使用することが可能であり)、しかも、ラミネート金属板や成形品に、ゴールドの色合いを持たせることができる金属板貼合せ用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明は、下記項1の構成を備える。
【0010】
項1
ポリエステル樹脂層(A)を備える金属板貼合せ用フィルムであって、
前記ポリエステル樹脂層(A)が顔料を含有し、前記顔料が、無機顔料および有機顔料の少なくとも一方と、パール顔料とを含み、
前記金属板貼合せ用フィルムのa*値が-5~20、b*値が0~50である、
金属板貼合せ用フィルム。
ここで、a*値およびb*値は、金属板貼合せ用フィルムを、黒色標準板(具体的には、黒ガラスBK-7標準板(裏当て用))にイオン交換水を介して密着させたうえで、色差計(日本電色工業社製300A)を用い、反射法で測定される値である。
【0011】
項1によれば、金属板貼合せ用フィルムのa*値が-5~20、b*値が0~50であるうえに、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、着色剤の選択の幅を広げることができるとともに、金属板貼合せ用フィルムがラミネートされた金属板(すなわち、ラミネート金属板)に、ゴールドの色合いを持たせることができる。これについて説明する。仮に、ポリエステル樹脂層(A)が、無機顔料を含有したうえでパール顔料を含有しなかったとすると、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いを持たせることは難しい。なぜなら、無機顔料に起因するボイドによって、金属板貼合せ用フィルムのヘーズが増大し、全光線透過率が低下するので、金属板の金属光沢を効果的に利用することができないためである。項1によれば、ポリエステル樹脂層(A)が無機顔料を含有する場合でも、パール顔料の光沢によって、ラミネート金属板にゴールドの色合いを持たせることができる。このように、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、無機顔料を使用することが可能となる。つまり、着色剤の選択の幅を広げることができる。なお、ポリエステル樹脂層(A)が有機顔料を含有する場合でも、ラミネート金属板にゴールドの色合いを持たせることができることはもちろんである。
【0012】
しかも、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感を付与することができる。すなわち、ゴールドの色合いに、真珠光沢を付与することができる。さらに言えば、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、パール顔料の代わりに白色の酸化チタン(具体的には白色の二酸化チタン)を含有する場合に比べて、無機顔料および/または有機顔料の量を低減することもできる。すなわち、その場合(具体的には、パール顔料の代わりに酸化チタン顔料を含有する場合)に比べて、少ない無機顔料および/または有機顔料の量で、ラミネート金属板にゴールドの色合いを持たせることができる。
【0013】
本発明は、下記項2以降の構成をさらに備えることが好ましい。
【0014】
項2
下記式を満足する、項1に記載の金属板貼合せ用フィルム。
|Gs85-Gs45|/|Gs85-Gs60|≧1.6
(この式において、Gs85は85度鏡面光沢であり、Gs45は45度鏡面光沢であり、Gs60は60度鏡面光沢である。)
ここで、Gs85、Gs45およびGs60は、金属板貼合せ用フィルムを黒色標準板(具体的には、黒ガラスBK-7標準板(裏当て用))にイオン交換水を介して密着させたうえで、光沢度計(日本電色工業社製)を用いて測定される値である。
【0015】
項2の式の左辺、すなわち|Gs85-Gs45|/|Gs85-Gs60|を、以下では、Garと言うことがある。Garは、パール感の指標、すなわち真珠光沢の指標である。Garが大きい程、金属板貼合せ用フィルムを金属板にラミネートして得られるラミネート金属板のパール感が強い傾向がある。
【0016】
項2によれば、Garが1.6以上であるため、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感をいっそう付与することができる。
【0017】
項3
前記パール顔料の平均長径が5μm~80μmである、項1または2に記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0018】
項3によれば、パール顔料の平均長径が5μm以上であるため、押出成形時の延伸によってパール顔料の周囲に発生するボイドを低減することができる。パール顔料の平均長径が80μm以下であるため、金属板貼合せ用フィルムの作製上のトラブルを低減できる。たとえば、ポリエステル樹脂層(A)の作製のために押出成形をおこなう場合、押出成形の安定性を向上することができる。
【0019】
項4
前記パール顔料が、雲母、および前記雲母を被覆する酸化物を備え、前記酸化物が、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、およびコバルト鉄酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1~3のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0020】
項4によれば、パール顔料が雲母を備えるため、機械的強度に優れており、その結果、たとえば、金属板貼合せ用フィルムの作製過程でのパール顔料の破壊を抑制できる。しかも、雲母を被覆する酸化物が、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、およびコバルト鉄酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種であるため、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感を効果的に付与することができる。これに加えて、これらは、物理的や化学的な安定性に優れており、その結果、たとえば、ラミネート金属板におけるゴールドの色合いの経時的な安定性を高めることもできる。
【0021】
項5
前記パール顔料の含有量が、前記ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、0.02質量%~10質量%である、項1~4のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0022】
項5によれば、パール顔料の含有量が0.02質量%以上であるため、ラミネート金属板にゴールドの色合いを効果的に持たせることができるとともに、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感をいっそう付与することができる。パール顔料の含有量が10質量%以下であるため、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。また、金属板貼合せ用フィルムの作製上のトラブルを低減することもできる。たとえば、金属板貼合せ用フィルムの作製のために延伸をおこなう場合、延伸時に生じ得るフィルムの破断を、抑制または低減することができる。つまり、製膜性を向上することができる。
【0023】
項6
前記ポリエステル樹脂層(A)の前記顔料が前記無機顔料を含む、項1~5のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0024】
項6によれば、ポリエステル樹脂層(A)の顔料が、無機顔料およびパール顔料を含むため、有機顔料およびパール顔料だけを含む場合に比べて、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。しかも、その場合(具体的には、ポリエステル樹脂層(A)の顔料が、有機顔料およびパール顔料だけを含む場合)に比べて、ポリエステル樹脂層(A)の隠ぺい力を向上できるため、金属板の色合いが、ラミネート金属板の色合いに与える影響を低減することができる。よって、金属板の選択の自由度を向上することができる。
【0025】
項7
前記ポリエステル樹脂層(A)の前記顔料が前記有機顔料を含み、前記有機顔料が、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料、およびキナクリドン系有機顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種である、項1~6のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0026】
項7によれば、有機顔料が、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料、およびキナクリドン系有機顔料からなる群より選ばれる少なくとも1種であるため、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。
【0027】
項8
前記無機顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、前記無機顔料の重量減少率が1.5質量%未満であり、
前記有機顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、前記有機顔料の重量減少率が1.5質量%未満であり、
前記パール顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、前記パール顔料の重量減少率が1.5質量%未満である、
項1~7のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0028】
項8によれば、それらの重量減少率が1.5質量%未満であるため、それらの耐熱性が優れており、その結果、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。
【0029】
項9
130℃で120分間のレトルト処理前後における色差ΔE*が10未満である、項1~8のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
ここで、色差ΔE*は、レトルト処理前後の金属板貼合せ用フィルムを、黒色標準板(具体的には、黒ガラスBK-7標準板(裏当て用))にイオン交換水を介して密着させたうえで、色差計(日本電色工業社製300A)を用い、反射法で測定されるL*、a*、b*に基づいて、下記式より算出される値である。
ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
ΔL*=レトルト処理前後での金属板貼合せ用フィルムのL*の差
Δa*=レトルト処理前後での金属板貼合せ用フィルムのa*の差
Δb*=レトルト処理前後での金属板貼合せ用フィルムのb*の差
【0030】
項9によれば、レトルト処理前後における色差ΔE*が10未満である、すなわち、レトルト処理による色合いの変化が過度に大きくはないため、レトルト処理後のラミネート金属板や、その成形品にもゴールドの色合いを持たせることができる。
【0031】
項10
前記ポリエステル樹脂層(A)に接するポリエステル樹脂層(B)をさらに備え、
前記ポリエステル樹脂層(B)が、顔料を実質的に含有していない、
項1~9のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
ここで、「前記ポリエステル樹脂層(B)が、顔料を実質的に含有していない」は、ポリエステル樹脂層(B)が顔料をまったく含有していない、または、ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂層(B)100質量%中、顔料を0.01質量%以下で含有することを意味する。
【0032】
項10によれば、金属板貼合せ用フィルムが、ポリエステル樹脂層(A)に接する、顔料を実質的に含有していないポリエステル樹脂層(B)を備えるため、たとえば、ポリエステル樹脂層(A)を金属板に接するように金属板にラミネートをしたうえで、それ(すなわちラミネート金属板)を、金属板貼合せ用フィルムが内面となるように成形(たとえば製缶)することによって、ポリエステル樹脂層(A)が、成形品(たとえば缶)の内容物(たとえばトマト、ピクルス、サーモンといった飲食物)に触れることを防止することができる。その結果、ポリエステル樹脂層(A)に含まれる顔料が、内容物に移行することを防止することができる。これに加えて、ポリエステル樹脂層(B)が、顔料を実質的に含有していないため、顔料が内容物に混入することをいっそう防止することができる。
【0033】
項11
前記ポリエステル樹脂層(A)の厚みが5μm~50μmであり、
前記ポリエステル樹脂層(B)の厚みが0.5μm~15μmである、
項10に記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0034】
項11によれば、ポリエステル樹脂層(A)の厚みが5μm以上であるため、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いをいっそう持たせることができる。ポリエステル樹脂層(A)の厚みが50μm以下であるため、金属板貼合せ用フィルムの品質が過剰となることを回避することができ、金属板貼合せ用フィルムの作製コストを低減することができる。ポリエステル樹脂層(B)の厚みが0.5μm以上であるため、たとえば、ポリエステル樹脂層(A)を金属板に接するように金属板にラミネートをしたうえで、それ(すなわちラミネート金属板)を、金属板貼合せ用フィルムが内面となるように成形(たとえば製缶)することによって、ポリエステル樹脂層(A)に含まれる顔料が、成形品(たとえば缶)の内容物に移行することをいっそう防止することができる。ポリエステル樹脂層(B)の厚みが15μm以下であるため、金属板貼合せ用フィルムの品質が過剰となることを回避することができ、金属板貼合せ用フィルムの作製コストを低減することができる。
【0035】
項12
前記金属板が、飲食品用の容器を構成する部材に成形される金属板であり、
前記容器の内面に、前記金属板貼合せ用フィルムが配置されるように使用される、
項1~11のいずれかに記載の金属板貼合せ用フィルム。
【0036】
なお、上述の特許文献2には二層積層フィルムが記載されているものの、二層積層フィルムをパール顔料で着色することは一切記載されていない。
【発明の効果】
【0037】
本発明の金属板貼合せ用フィルムによれば、着色剤の選択の幅を広げることが可能である(たとえば無機顔料を使用することが可能となる)とともに、ラミネート金属板や成形品に、ゴールドの色合いを持たせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下では、a*値をa*と言うことがある。すなわち、a*値という用語と、a*という用語とを同義語として用いる。よって、a*を、a*値と言い換えることができる。以下では、ポリエステル樹脂をポリエステルと言うことがある。すなわち、ポリエステル樹脂という用語と、ポリエステルという用語とを同義語として用いる。よって、ポリエステルを、ポリエステル樹脂と言い換えることができる。
【0039】
<1.配向ポリエステルフィルム>
本実施形態の金属板貼合せ用フィルムは、ポリエステル樹脂層(A)と、ポリエステル樹脂層(A)に接するポリエステル樹脂層(B)とを備える。すなわち、金属板貼合せ用フィルムは、ポリエステル樹脂層(A)と、ポリエステル樹脂層(A)に積層されたポリエステル樹脂層(B)とを備える。金属板貼合せ用フィルムの両面のうち、一方の面が、ポリエステル樹脂層(A)で構成されている。他方の面が、ポリエステル樹脂層(B)で構成されている。
【0040】
<1.1.ポリエステル樹脂層(A)>
ポリエステル樹脂層(A)は、ポリエステル樹脂および顔料を含有する。すなわち、ポリエステル樹脂層(A)は、ポリエステル樹脂および顔料を含有するポリエステル組成物で構成されていることができる。
【0041】
ポリエステル樹脂として、エチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリブチレンテレフタレートおよびそれらの併用などを好ましく例示できる。以下、ポリエステルの代表例として、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートについて詳述する。
【0042】
ポリエチレンテレフタレート
ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸をジカルボン酸成分、エチレングリコールをジオール成分としてなるポリエステルである。ポリエチレンテレフタレートはホモポリマーに限定されず、本発明の効果が損なわれない範囲で他の成分を共重合してもよく、共重合することによって成形加工性をより向上させやすくなる。
【0043】
ポリエチレンテレフタレートの共重合成分は酸成分でもアルコール成分でもよい。共重合ジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体を例示できる。また共重合するジオール成分としては、ブタンジオール、ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0044】
共重合成分の割合は、結果としてポリマーの融点が210~256℃、好ましくは215~256℃、さらに好ましくは220~256℃の範囲になる割合であることが好ましい。ポリマーの融点が下限未満では耐熱性が劣ることになり、ポリマー融点が上限を越えるとポリマーの結晶性が大きすぎて成形加工性が損なわれる。
【0045】
ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、好ましくは0.50~0.80、さらに好ましくは、0.54~0.75、特に好ましくは0.57~0.70である。固有粘度が下限未満では実用に供することのできる機械的強度を有したフィルムが得られ難く、上限を超えると成形加工性が損なわれやすい。
【0046】
ところで、特に耐熱性を高くする必要がある場合は、ホモポリエチレンテレフタレートが好ましく、たとえば共重合成分の割合が0.3モル%以下、さらに0.2モル%以下、特に0.1モル%以下であるホモポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0047】
ポリブチレンテレフタレート
ポリブチレンテレフタレートは、テレフタル酸をジカルボン酸成分、1,4-ブタンジオールをジオール成分としてなるポリエステルである。このポリエステルは、好ましくは溶融重合反応後に固相重縮合反応されたものを用いる。
【0048】
ポリブチレンテレフタレートには、ホモポリマーに限定されず、本発明の効果が損なわれない範囲で他成分を共重合してもよく、共重合成分はジカルボン酸成分でもジオール成分でもよい。
【0049】
ポリブチレンテレフタレートの共重合ジカルボン酸成分としてはイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸の如き芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸の如き脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き脂環族ジカルボン酸を例示することができる。これらの中、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸が好ましい。また共重合ジオール成分として、エチレングリコール、ヘキサンジオールの如き脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオールを例示することができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0050】
共重合成分の割合は、その種類にもよるが、結果としてポリマーの融点が180~223℃、好ましくは200~223℃、さらに好ましくは210~223℃の範囲になる割合である。ポリマーの融点が下限未満ではポリエステルとしての結晶性が低く、結果としてフィルムの耐熱性が低下する。
【0051】
ポリブチレンテレフタレートの固有粘度は、好ましくは0.60~2.00、さらに好ましくは0.80~1.70、特に好ましくは0.85~1.50である。固有粘度が下限未満では実用に供することのできる機械的強度を有したフィルムが得られ難く、上限を超えるとポリエステル樹脂およびフィルムの生産性が低下する。
【0052】
ポリエステル樹脂層(A)に含まれるポリエステル樹脂として、前述のポリエチレンテレフタレート、またはポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの混合物が好ましく、前述のポリエチレンテレフタレートがより好ましい。なかでも、前述のホモポリエチレンテレフタレートが好ましい。すなわち、共重合成分を含まない、または実質的に含まないポリエチレンテレフタレートが好ましい。ポリエステル樹脂層(A)のポリエステル樹脂がホモポリエチレンテレフタレートであると、ポリエステル樹脂層(A)の耐熱性を高めることができる。ちなみに、ポリエステル樹脂層(A)のポリエステル樹脂が、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの混合物である場合、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートとの質量比は、100:0~30:70が好ましく、70:30~30:70がさらに好ましく、特に60:40~40:60が好ましい。ポリブチレンテレフタレートを配合することで、最短半結晶化時間を短くでき、レトルト処理後の外観が斑点状に乳白色に変色するのを抑制できる。
【0053】
なお、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの混合物を用いる場合、製膜前までに溶融状態で均一に混練され、その際に、一部エステル交換反応されていることが成形加工性の点から好ましい。
【0054】
ポリエステル樹脂を重合する場合には、重合触媒として、重縮合反応触媒やエステル交換反応触媒を添加することが好ましい。エステル交換反応触媒としてはカルシウム化合物、マンガン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物などが挙げられ、重縮合反応触媒としてはアンチモン化合物、アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物が好ましく挙げられる。なかでも、触媒量を最小化できる点で酢酸チタンやテトラブトキシチタンのようなチタン化合物が好ましい。
【0055】
ポリエステル樹脂には、良好な熱安定性とカラーを得るために、安定剤を含有させることが好ましく、たとえばリン酸トリメチルのようなリン酸系の安定剤を添加することが好ましい。
【0056】
ポリエステル樹脂層(A)の顔料は、無機顔料および有機顔料の少なくとも一方を含む。すなわち、ポリエステル樹脂層(A)が、無機顔料および有機顔料の少なくとも一方を含有する。これによれば、ポリエステル樹脂層(A)を効果的に着色することができる。
【0057】
ポリエステル樹脂層(A)の顔料は、無機顔料および有機顔料のうち、無機顔料だけを含んでいてもよく、有機顔料だけを含んでいてもよく、両者を含んでいてもよい。なかでも、ポリエステル樹脂層(A)の顔料が、無機顔料および有機顔料のうち、無機顔料だけを含むことが好ましい。これによれば、ポリエステル樹脂層(A)の顔料が、無機顔料および有機顔料のうち、有機顔料だけを含む場合に比べて、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。しかも、その場合(具体的には、ポリエステル樹脂層(A)の顔料が、無機顔料および有機顔料のうち、有機顔料だけを含む場合)に比べて、ポリエステル樹脂層(A)の隠ぺい力を向上できるため、金属板の色合いが、ラミネート金属板の色合いに与える影響を低減することができる。よって、金属板の選択の自由度を向上することができる。
【0058】
無機顔料として、たとえば、赤色無機顔料、黄色無機顔料を挙げることができる。赤色無機顔料として、たとえば、べんがら、朱,カドミウム赤を挙げることができる。黄色顔料として、たとえば、黄鉛,黄土,カドミウム黄を挙げることができる。なお、無機顔料は、たとえば、天然鉱物顔料であってもよく、合成無機顔料であってもよい。無機顔料のカラーインデックス(以下、「C.I.」と言う。)として、たとえば、C.I.Pigment Red 101、同122、同259、同285、同290; C.I.Pigment Blue 73; C.I. Pigment Yellow 42、同53、同93、同119、同151、同161、同184、同189、同214、同215; C.I. Pigment Orange 79; C.I. Pigment Red 202、同242; C.I.Pigment Brown 11、同24を挙げることができる。これらのうち一種または二種以上を使用することができることはもちろんである。
【0059】
無機顔料の窒素雰囲気下の重量減少率は1.5質量%未満であることが好ましい。重量減少率が1.5質量%未満であると、無機顔料の耐熱性が優れており、その結果、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。重量減少率は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。なお、重量減少率は、0.01質量%以上であってもよく、0.03質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよい。「重量減少率」は、具体的には、無機顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、無機顔料の重量減少率である。重量減少率の値は、実施例の記載の方法で測定され、算出される値である。
【0060】
無機顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、0.02質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。0.02質量%以上であると、ポリエステル樹脂層(A)をいっそう効果的に着色することができる。無機顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。5.0質量%以下であると、無機顔料の分散悪化を、低減または抑制でき、製膜性の悪化を、低減または抑制できる。
【0061】
有機顔料として、たとえば、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料のようなアゾ顔料、キナクリドン顔料(すなわち、キナクリドン系有機顔料)を挙げることができる。なかでも、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料、キナクリドン系有機顔料が好ましい。有機顔料が、これらであると、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。
【0062】
アセト酢酸アニリド系アゾ顔料は、下記構造式(1)で表される顔料であり、キナクリドン系有機顔料は下記構造式(2)で表される顔料である。
【化1】
【化2】
【0063】
アセト酢酸アニリド系アゾ顔料やキナクリドン系有機顔料は、赤色または黄色を有することが好ましい。これらの具体例として、下記構造式(3)~(6)で表される化合物を挙げることができる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0064】
有機顔料の窒素雰囲気下の重量減少率は1.5質量%未満であることが好ましい。重量減少率が1.5質量%未満であると、有機顔料の耐熱性が優れており、その結果、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。重量減少率は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。なお、重量減少率は、0.01質量%以上であってもよく、0.03質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよい。「重量減少率」は、具体的には、有機顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、有機顔料の重量減少率である。重量減少率の値は、実施例の記載の方法で測定され、算出された値である。
【0065】
有機顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、0.02質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。0.02質量%以上であると、ポリエステル樹脂層(A)をいっそう効果的に着色することができる。有機顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。5.0質量%以下であると、有機顔料の分散悪化を、低減または抑制でき、製膜性の悪化を、低減または抑制できる。これに加えて、有機顔料のブリードアウトを、低減または抑制できる。
【0066】
ポリエステル樹脂層(A)が、無機顔料および有機顔料を含有する場合、無機顔料および有機顔料の合計含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、0.02質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量%以上がさらに好ましい。0.02質量%以上であると、ポリエステル樹脂層(A)をいっそう効果的に着色することができる。無機顔料および有機顔料の合計含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、5.0質量%以下が好ましく、4.0質量%以下がより好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましく、2.0質量%以下がさらに好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。5.0質量%以下であると、無機顔料および有機顔料の分散悪化を、低減または抑制でき、製膜性の悪化を、低減または抑制できる。
【0067】
ポリエステル樹脂層(A)の顔料はパール顔料をさらに含む。ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感を付与することができる。すなわち、ゴールドの色合いに、真珠光沢を付与することができる。さらに言えば、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、パール顔料の代わりに白色の酸化チタン(具体的には白色の二酸化チタン)を含有する場合に比べて、無機顔料および/または有機顔料の量を低減することもできる。すなわち、その場合(具体的には、パール顔料の代わりに酸化チタン顔料を含有する場合)に比べて、少ない無機顔料および/または有機顔料の量で、ラミネート金属板にゴールドの色合いを持たせることができる。
【0068】
パール顔料は、基材と、基材を被覆する被覆物質を備えることが好ましい。基材としては雲母が好ましい。基材が雲母であると、機械的強度に優れており、その結果、たとえば、金属板貼合せ用フィルムの作製過程でのパール顔料の破壊を抑制できる。いっぽう、被覆物質としては酸化物が好ましい。酸化物として、たとえば、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化鉄、酸化ケイ素、コバルト鉄酸化物が好ましい。酸化物がこれらであると、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感を効果的に付与することができる。これに加えて、これらは、物理的や化学的な安定性に優れており、その結果、たとえば、ラミネート金属板におけるゴールドの色合いの経時的な安定性を高めることもできる。
【0069】
パール顔料は、板状をなすことが好ましい。パール顔料の厚みは0.01μm以上が好ましい。0.01μm以上であると、金属板貼合せ用フィルムの作製過程でのパール顔料の破壊を、抑制または低減できる。パール顔料の厚みは10μm以下が好ましい。10μm以下であると、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感をいっそう付与することができる。
【0070】
パール顔料の平均長径は5μm~80μmであることが好ましい。5μm以上であると、押出成形時の延伸によってパール顔料の周囲に発生するボイドを低減することができる。80μm以下であると、金属板貼合せ用フィルムの作製上のトラブルを低減できる。たとえば、ポリエステル樹脂層(A)の作製のために押出成形をおこなう場合、押出成形の安定性を向上することができる。
【0071】
パール顔料の窒素雰囲気下の重量減少率は1.5質量%未満であることが好ましい。重量減少率が1.5質量%未満であるため、パール顔料の耐熱性が優れており、その結果、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。つまり、レトルト耐性を向上することができる。重量減少率は、1.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましい。なお、重量減少率は、0.01質量%以上であってもよく、0.03質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよい。「重量減少率」は、具体的には、パール顔料を、窒素雰囲気下で室温から10℃/minの昇温速度で300℃まで昇温したときの、パール顔料の重量減少率である。重量減少率の値は、実施例の記載の方法で測定され、算出された値である。
【0072】
パール顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、0.02質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、1.5質量%以上がさらに好ましい。0.02質量%以上であると、ラミネート金属板にゴールドの色合いを効果的に持たせることができるとともに、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感をいっそう付与することができる。パール顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)100質量%中、10質量%以下が好ましく、8.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましく、3.5質量%以下がさらに好ましく、3.0質量%以下がさらに好ましい。10質量%以下であると、レトルト処理による色合いの変化や、レトルト処理によるヘーズの変化を低減することができる。また、金属板貼合せ用フィルムの作製上のトラブルを低減することもできる。たとえば、金属板貼合せ用フィルムの作製のために延伸をおこなう場合、延伸時に生じ得るフィルムの破断を、抑制または低減することができる。つまり、製膜性を向上することができる。
【0073】
パール顔料の含有量は、無機顔料の含有量と同じであってもよく、無機顔料の含有量よりも多くてもよく、無機顔料の含有量よりも少なくてもよい。パール顔料の含有量は、無機顔料の含有量よりも多いことが好ましい。
【0074】
パール顔料の含有量は、有機顔料の含有量と同じであってもよく、有機顔料の含有量よりも多くてもよく、有機顔料の含有量よりも少なくてもよい。パール顔料の含有量は、有機顔料の含有量よりも多いことが好ましい。
【0075】
パール顔料の含有量は、無機顔料および有機顔料の合計含有量と同じであってもよく、その合計含有量よりも多くてもよく、その合計含有量よりも少なくてもよい。パール顔料の含有量は、その合計含有量よりも多いことが好ましい。
【0076】
ポリエステル樹脂層(A)は、他の顔料をさらに含有していてもよい。
【0077】
ポリエステル樹脂層(A)の顔料が、無機顔料およびパール顔料を含む場合、無機顔料およびパール顔料の合計量は、顔料100質量%中、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%以上がさらに好ましい。80質量%以上であると、金属板貼合せ用フィルムのレトルト耐性を向上することができる。
【0078】
ポリエステル樹脂層(A)は、他の添加剤をさらに含有していてもよい。他の添加剤として、たとえば染料、微粒子、安定剤(たとえば上述の安定剤)を挙げることができる。ただし、ポリエステル樹脂層(A)は、染料を含有しないことが好ましい。
【0079】
金属板貼合せ用フィルムが微粒子を含有すると、フィルム製造工程における取扱い性、特に巻取り性を改良することができる。この微粒子は、好ましくは平均粒径2.5μm以下、より好ましくは0.01μm~1.8μmの微粒子である。微粒子の含有量は、ポリエステル樹脂100質量部に対して、0.01質量部~1質量部が好ましく、さらに好ましくは0.01質量部~0.5質量部がより好ましい。微粒子は、無機微粒子、有機微粒子のいずれを用いてよいが、好ましくは無機微粒子を用いる。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムを例示することができる。有機微粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋シリコーン樹脂粒子を例示することができる。
【0080】
微粒子の平均粒径は2.5μm以下が好ましい。2.5μm以下であると、ピンホールの発生を抑制できる。耐ピンホール性の点で特に好ましい微粒子は、平均粒径が2.5μm以下であり、かつ、粒径比(長径/短径)が1.0~1.2である単分散微粒子である。この微粒子としては、真球状シリカ、真球状二酸化チタン、真球状ジルコニウム、真球状架橋シリコーン樹脂粒子を例示することができる。
【0081】
ポリエステル樹脂層(A)の厚みは、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。ポリエステル樹脂層(A)の厚みが5μm以上であると、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いをいっそう持たせることができる。ポリエステル樹脂層(A)の厚みは、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂層(A)の厚みが50μm以下であると、金属板貼合せ用フィルムの品質が過剰となることを回避することができ、金属板貼合せ用フィルムの作製コストを低減することができる。
【0082】
<1.2.ポリエステル樹脂層(B)>
金属板貼合せ用フィルムは、ポリエステル樹脂層(B)を備える。金属板貼合せ用フィルムがポリエステル樹脂層(B)を備えるため、たとえば、ポリエステル樹脂層(A)を金属板に接するように金属板にラミネートをしたうえで、それ(すなわちラミネート金属板)を、金属板貼合せ用フィルムが内面となるように成形(たとえば製缶)することによって、ポリエステル樹脂層(A)が、成形品(たとえば缶)の内容物(たとえばトマト、ピクルス、サーモンといった飲食物)に触れることを防止することができる。その結果、ポリエステル樹脂層(A)に含まれる顔料が、内容物に移行することを防止することができる。
【0083】
ポリエステル樹脂層(B)はポリエステル樹脂を含有する。すなわち、ポリエステル樹脂層(A)は、ポリエステル樹脂を含有するポリエステル組成物で構成されていることができる。
【0084】
ポリエステル樹脂層(B)に含まれるポリエステル樹脂の説明は、ポリエステル樹脂層(A)に含まれるポリエステル樹脂の説明と重複するため省略する。よって、ポリエステル樹脂層(A)に含まれるポリエステル樹脂の説明を、ポリエステル樹脂層(B)に含まれるポリエステル樹脂の説明としても扱うことができる。たとえば、ポリエステル樹脂層(B)に含まれるポリエステル樹脂として、前述のポリエチレンテレフタレートが好ましく、前述のホモポリエチレンテレフタレートがより好ましい。ポリエステル樹脂層(B)のポリエステル樹脂がホモポリエチレンテレフタレートであると、ポリエステル樹脂層(B)の耐熱性を高めることができる。
【0085】
ポリエステル樹脂層(B)は、顔料を実質的に含有していない。ポリエステル樹脂層(B)が、顔料を実質的に含有していないため、顔料が内容物に混入することをいっそう防止することができる。ここで、上述の「ポリエステル樹脂層(B)は、顔料を実質的に含有していない。」は、ポリエステル樹脂層(B)が顔料をまったく含有していない、または、ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂層(B)100質量%中、顔料を0.01質量%以下で含有することを意味する。ポリエステル樹脂層(B)は、顔料をまったく含有していないことが好ましい。顔料として、たとえば、有機顔料、無機顔料、パール顔料を挙げることができる。
【0086】
ポリエステル樹脂層(B)は、染料を実質的に含有していないことが好ましい。ここで、これは、ポリエステル樹脂層(B)が染料をまったく含有していない、または、ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂層(B)100質量%中、染料を0.01質量%以下で含有することを意味する。ポリエステル樹脂層(B)は、染料をまったく含有していないことが好ましい。
【0087】
これらをまとめると、ポリエステル樹脂層(B)は、着色剤(たとえば、顔料、染料)を実質的に含有していないことが好ましい。ここで、これは、ポリエステル樹脂層(B)が着色剤をまったく含有していない、または、ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂層(B)100質量%中、着色剤を0.01質量%以下で含有することを意味する。ポリエステル樹脂層(B)は、着色剤をまったく含有していないことが好ましい。
【0088】
ポリエステル樹脂層(B)は、他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤として、たとえば微粒子を挙げることができる。ポリエステル樹脂層(B)の微粒子の説明は、ポリエステル樹脂層(A)の微粒子の説明と重複するため省略する。よって、ポリエステル樹脂層(A)の微粒子の説明を、ポリエステル樹脂層(B)の微粒子の説明としても扱うことができる。
【0089】
ポリエステル樹脂層(B)の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましく、3.0μm以上がさらに好ましい。ポリエステル樹脂層(B)の厚みが0.5μm以上であるため、たとえば、ポリエステル樹脂層(A)を金属板に接するように金属板にラミネートをしたうえで、それ(すなわちラミネート金属板)を、金属板貼合せ用フィルムが内面となるように成形(たとえば製缶)することによって、ポリエステル樹脂層(A)に含まれる顔料が、成形品(たとえば缶)の内容物に移行することをいっそう防止することができる。ポリエステル樹脂層(B)の厚みは、15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂層(B)の厚みが15μm以下であるため、金属板貼合せ用フィルムの品質が過剰となることを回避することができ、金属板貼合せ用フィルムの作製コストを低減することができる。
【0090】
<1.3.金属板貼合せ用フィルムの特性>
金属板貼合せ用フィルムは、a*値が-5~20、b*値が0~50である。これによれば、金属板貼合せ用フィルムのa*値が-5~20、b*値が0~50であるうえに、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、着色剤の選択の幅を広げることができるとともに、金属板貼合せ用フィルムがラミネートされた金属板(すなわち、ラミネート金属板)に、ゴールドの色合いを持たせることができる。これについて説明する。仮に、ポリエステル樹脂層(A)が、無機顔料を含有したうえでパール顔料を含有しなかったとすると、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いを持たせることは難しい。なぜなら、無機顔料に起因するボイドによって、金属板貼合せ用フィルムのヘーズが増大し、全光線透過率が低下するので、金属板の金属光沢を効果的に利用することができないためである。項1によれば、ポリエステル樹脂層(A)が無機顔料を含有する場合でも、パール顔料の光沢によって、ラミネート金属板にゴールドの色合いを持たせることができる。このように、ポリエステル樹脂層(A)がパール顔料を含有するため、無機顔料を使用することが可能となる。つまり、着色剤の選択の幅を広げることができる。なお、a*値およびb*値は、JIS Z 8722:2009に準拠して測定される値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0091】
金属板貼合せ用フィルムの光沢度に関して、金属板貼合せ用フィルムは、下記式を満足することが好ましい。
|Gs85-Gs45|/|Gs85-Gs60|≧1.6
この式において、Gs85は85度鏡面光沢であり、Gs45は45度鏡面光沢であり、Gs60は60度鏡面光沢である。
|Gs85-Gs45|/|Gs85-Gs60|、すなわち、Garは、パール感の指標、すなわち真珠光沢の指標である。Garが大きい程、金属板貼合せ用フィルムを金属板にラミネートして得られるラミネート金属板のパール感が強い傾向がある。上記式によれば、Garが1.6以上であるため、ラミネート金属板のゴールドの色合いにパール感をいっそう付与することができる。Garは、たとえば、3.0以下であってもよく、2.5以下であってもよい。なお、Gs85、Gs45、Gs60は、JIS Z 8741:1997に準拠して測定される値であり、具体的には、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0092】
金属板貼合せ用フィルムのGs85、すなわち85度鏡面光沢は、たとえば、50以上であってもよく、55以上であってもよく、60以上であってもよい。Gs85は、たとえば、97以下であってもよく、95以下であってもよく、90以下であってもよい。
【0093】
金属板貼合せ用フィルムの全光線透過率は、たとえば、50%以上であってもよく、60%以上であってもよい。金属板貼合せ用フィルムの全光線透過率は、たとえば、95%以下であってもよく、90%以下であってもよい。なお、全光線透過率は、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0094】
金属板貼合せ用フィルムのヘーズは、たとえば、15%以上であってもよく、20%以上であってもよく、25%以上であってもよい。金属板貼合せ用フィルムのヘーズは、たとえば、90%以下であってもよく、80%以下であってもよい。なお、ヘーズは、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0095】
130℃で120分間のレトルト処理前後における色差ΔE*が10未満であることが好ましい。これによれば、レトルト処理による色合いの変化が過度に大きくはないため、レトルト処理後のラミネート金属板や、その成形品にもゴールドの色合いを持たせることができる。ΔE*は、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。なお、ΔE*は、実施例に記載の方法で測定される値である。
【0096】
130℃で120分間のレトルト処理前後におけるヘーズ変化量ΔHzが15未満であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。ΔHzの値は、実施例の記載の方法で測定され、算出される値である。
【0097】
金属板貼合せ用フィルムの厚み、すなわち総厚みは、5.5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。金属板貼合せ用フィルムの厚み、すなわち総厚みは、65μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、40μm以下がさらに好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0098】
<2.金属板貼合せ用フィルムの作製方法>
金属板貼合せ用フィルムは、たとえば、ポリエステル樹脂層(A)を形成するためのポリエステル組成物(以下、「ポリエステル組成物(A)」と言うことがある。)を第一の押出機に供給するとともに、ポリエステル樹脂層(B)を形成するためのポリエステル組成物(以下、「ポリエステル組成物(B)」と言うことがある。)を第二の押出機に供給し、次いで、第一の押出機からフィードブロックにポリエステル組成物(A)を導くとともに、第二の押出機からポリエステル組成物(B)をフィードブロックに導き、フィードブロックでこれらを積層し、次いで、これをダイから溶融押出しし、次いで、これを冷却ロールで固化し、これを二軸延伸する、という手順で作製することができる。二軸延伸は、縦横同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。なかでも、逐次二軸延伸が好ましい。逐次二軸延伸では、たとえば、冷却ロールを経た未延伸フィルムを、縦方向すなわちMachine Direction(以下、「MD」と言う。)方向に延伸し、MD方向延伸後のシートを、横方向すなわちTransverse Direction(以下、「TD」と言う。)方向に延伸することが好ましい。MD方向の延伸温度、MD方向の延伸倍率、TD方向の延伸温度、およびTD方向の延伸倍率は適宜設定することができる。
【0099】
なお、顔料の配合方法は特に制限されない。たとえば、原料樹脂の製造工程(たとえば重合工程)で配合してもよいし、出来上がった原料樹脂に溶融混錬機などを用いて配合してもよい。あらかじめ顔料を高濃度に含有する原料樹脂のマスターチップを、たとえば二軸押出機を用いて製造しておき、顔料を含有しないまたは低濃度で含有する原料樹脂のチップと混合することにより、所望の濃度の顔料を含有するポリエステル組成物(たとえばポリエステル樹脂層(A))を作製してもよい。特にマスターチップを用いる方法は、均一に分散させやすく、顔料の含有量を調整しやすいことから好ましい。
【0100】
<3.金属板貼合せ用フィルムの使用例>
金属板貼合せ用フィルムは、ブリキ、ティンフリースチール、ティンニッケルスチール、アルミニウムなどの金属板にラミネートするためのフィルムとして使用することができる。金属板貼合せ用フィルムがラミネートされた金属板、すなわちラミネート金属板は、成形加工されることができる。金属板が、飲食品用の容器を構成する部材に成形される金属板であることが好ましい。金属板貼合せ用フィルムは、容器の内面に、金属板貼合せ用フィルムが配置されるように使用されてもよく、容器の外面に、金属板貼合せ用フィルムが配置されるように使用されてもよい。なかでも、金属板貼合せ用フィルムは、容器の内面に、金属板貼合せ用フィルムが配置されるように使用されることがより好ましい。飲食品用の容器としては缶が好ましい。缶として、たとえば飲料缶や食品缶などを挙げることができる。飲食品用の缶を構成する部材とは、たとえば、胴、底ふた、ふた、またはこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0101】
<4.上述の実施形態には種々の変更を加えることができる>
上述の実施形態には、種々の変更を加えることができる。たとえば、以下の変形例から、一つまたは複数を選択して、上述の実施形態に変更を加えることができる。
【0102】
上述の実施形態では、金属板貼合せ用フィルムが、ポリエステル樹脂層(A)と、ポリエステル樹脂層(B)とで構成された二層構造である、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、金属板貼合せ用フィルムが、ポリエステル樹脂層(A)で構成された単層構造であってもよい。これとは別の例として、金属板貼合せ用フィルムが、ポリエステル樹脂層(A)およびポリエステル樹脂層(B)以外の他の層を備えていてもよい。この場合でも、金属板貼合せ用フィルムの両面のうち、一方の面が、ポリエステル樹脂層(A)で構成されていることが好ましい。これに加えて、他方の面が、ポリエステル樹脂層(B)で構成されていることが好ましい。
【0103】
上述の実施形態では、ポリエステル樹脂層(B)が、顔料を実質的に含有していない、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。たとえば、ポリエステル樹脂層(B)が、ポリエステル樹脂層(B)100質量%中、顔料を0.01質量%越えで含有していてもよい。ポリエステル樹脂層(B)の顔料の含有量は、ポリエステル樹脂層(A)の顔料の含有量よりも少ないことが好ましい。
【0104】
上述の実施形態では、金属板貼合せ用フィルムが二軸延伸フィルムである、という構成を説明した。すなわち、金属板貼合せ用フィルムが二軸配向フィルムである、という構成を説明した。しかしながら、上述の実施形態は、この構成に限定されない。金属板貼合せ用フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、一軸延伸フィルムであってもよい。
【実施例0105】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は、特に断らない限り、それぞれ質量部および質量%を意味する。
【0106】
<各特性の測定方法>
(1)各層の厚み
二軸配向積層フィルムから、長手方向2mm、幅方向2cmのフィルムサンプルを切り出し、これを包埋カプセルに固定したうえで、エポキシ樹脂で包埋した。包埋されたフィルムサンプルをミクロトーム(Reichert-Jung製Supercut)で、幅方向に垂直に切断することによって50μm厚の薄膜切片を得た。この薄膜切片を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテク製4300SE/N)を用いて、加速電圧20kVにて観察撮影し、写真から各層の厚みを測定した。この手法で、5点の平均厚みを求めた。このようにして求めた平均厚みを、各層の厚みとして表1および2に示す。
【0107】
(2)固有粘度
固有粘度は、o-クロロフェノールを用いて、35℃で測定した。
【0108】
(3)融点
二軸配向積層フィルムから切り出したフィルムサンプルについて、示差走査熱量計DSC(TAInstruments製Q100)を用い、昇温速度20℃/分でフィルムサンプルの融解ピーク温度を求めた。なお、サンプル量は約20mgとした。
【0109】
(4)顔料の大気雰囲気下の重量減少率
熱重量分析計TGA(TAInstruments製Q50)を用い、大気雰囲気下(大気流量60mL/min.)で30℃から昇温速度10℃/min.で300℃まで温度変更後、さらに300℃で30分間保持し、顔料の重量変化量から重量減少率を求めた。なお、サンプル量は10mgとした。
【0110】
(5)顔料の窒素雰囲気下の重量減少率
熱重量分析計TGA(TAInstruments製Q50)を用い、窒素雰囲気下(窒素流量60mL/min.)で30℃から昇温速度10℃/min.で300℃まで温度変更後、さらに300℃で30分間保持し、顔料の重量変化量から重量減少率を求めた。なお、サンプル量は10mgとした。
【0111】
(6)色相
二軸配向積層フィルムから切り出した5cm角のフィルムサンプル一枚を、黒色標準板(具体的には、黒ガラスBK-7標準板(裏当て用))にイオン交換水を介して密着させたうえで、フィルムサンプルの色調(L*、a*、b*)をJIS Z 8722:2009に準拠して、色差計(日本電色工業社製300A)を用い、反射法でL*、a*およびb*を測定した。なお、この手順では、フィルムサンプルのB層を黒色標準板に密着させた。そのうえで、下記式よりE*を求めた。
E*=[(L*)2+(a*)2+(b*)2]1/2
【0112】
(7)全光線透過率およびヘーズ
二軸配向積層フィルムから切り出した5cm角のフィルムサンプル一枚の全光線透過率とヘーズとをJIS K 7136:2000に準拠して、日本電色工業製ヘーズメーターNDH2000を用いて測定した。
【0113】
(8)光沢度
二軸配向積層フィルムから切り出した5cm角のフィルムサンプル一枚を黒色標準板(具体的には、黒ガラスBK-7標準板(裏当て用))にイオン交換水を介して密着させたうえで、フィルムサンプルの光沢度をJIS Z 8741:1997に準拠して、光沢度計(日本電色工業社製)を用いて、入射角、受光角ともに45°で、45度鏡面光沢(すなわちGs45)を求めた。なお、この手順では、フィルムサンプルのB層を黒色標準板に密着させた。入射角および受光角を変更し、60度鏡面光沢(すなわちGs60)や85度鏡面光沢(すなわちGs85)も求めた。これらの測定結果から、下記式を用いてGarを算出した。
Gar=|Gs85-Gs45|/|Gs85-Gs60|
なお、予備実験において、Garが大きい程、二軸配向積層フィルムを金属板(具体的には、ティンフリースチール(ブライト仕上げ))にラミネートして得られるラミネート金属板のパール感が強い傾向があったため、Garを、パール感の指標、すなわち真珠光沢の指標として位置づけている。
【0114】
(9)ゴールド発色性
二軸配向積層フィルムから切り出した5cm角のフィルムサンプル一枚について、JIS Z 8722:2009に準拠して、色差計(日本電色工業製自動SE6000)を用いて、a*およびb*を測定し、次に示す基準でフィルムサンプルのゴールド発色性を評価した。なお、この測定は、フィルムサンプル押えとして装置に付属の白色板を使用したうえで、反射法でおこなった。
◎:a*が-15~15、かつb*が5~45である。
○:a*が-30~20、かつb*が-10~70である(ただし◎に該当しない)。
△:a*が-30~20であるものの、b*が-10~70の範囲外である。
×:a*が-30~20の範囲外であり、b*も-10~70の範囲外である。
【0115】
(10)レトルト耐性
二軸配向積層フィルムから切り出したフィルムサンプルを130℃、120分間レトルト処理したうえで、レトルト処理前後のフィルムサンプルの色調(L*、a*、b*)を測定した。この測定結果から、下記式より色差ΔE*を算出した。
ΔE*=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
ΔL*=レトルト処理前後でのフィルムサンプルのL*の差
Δa*=レトルト処理前後でのフィルムサンプルのa*の差
Δb*=レトルト処理前後でのフィルムサンプルのb*の差
ΔE*を、次の基準で評価した。
○:ΔE*が5以下
△:ΔE*が5を超え10未満
×:ΔE*が10以上
これに加えて、レトルト処理前後のフィルムサンプルのヘーズを日本電色工業製ヘーズメーターNDH2000で測定した。この測定結果から、下記式よりヘーズ変化量ΔHzを算出した。
ΔHz=(レトルト処理後のヘーズ)-(レトルト処理前のヘーズ)
ΔHzを、次の基準で評価した。
○:ΔHzが10以下
△:ΔHzが10を超え15未満
×:ΔHzが15以上
【0116】
<原料(すなわち、ポリエステル樹脂や添加剤>
A層用ポリエステル樹脂 固有粘度0.68dl/gの、共重合成分なしのホモポリエチレンテレフタレート
B層用ポリエステル樹脂 同上(すなわち、固有粘度0.68dl/gの、共重合成分なしのホモポリエチレンテレフタレート)
無機顔料A 濃黄色系
無機顔料B 赤色系
無機顔料C 黄色系
無機顔料D 薄黄色系
無機顔料E 青色系
有機顔料A C.I.Pigment Yellow 151、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料
有機顔料B C.I.Pigment Yellow 214、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料
有機顔料C C. I. Pigment Yellow 191.1、アセト酢酸アニリド系アゾ顔料でもキナクリドン系有機顔料でもない有機顔料
パール顔料A ゴールド系、酸化鉄および酸化チタンで基材を被覆
パール顔料B ゴールド系、酸化鉄および酸化チタンで基材を被覆
パール顔料C ゴールド系、酸化鉄および酸化チタンで基材を被覆
酸化チタン チタンホワイト
なお、以下では、無機顔料(具体的には無機顔料A~E)および有機顔料(具体的には有機顔料A~C)を、着色顔料と総称することがある。パール顔料(具体的にはパール顔料A~C)および酸化チタン(具体的にはチタンホワイト)を、光輝性顔料と総称することがある。
【0117】
<すべての実施例および比較例>
表1および2に示す処方したがって、A層用ポリエステル組成物、具体的には、A層用ポリエステル樹脂と顔料とを含有する組成物を準備した。A層用ポリエステル組成物とB層用ポリエステル樹脂とを乾燥したうえで、A層用ポリエステル組成物を、270℃に加熱された第一の押出機に供給するとともに、B層用ポリエステル樹脂を、270℃に加熱された第二の押出機に供給した。第一の押出機からA層用ポリエステル組成物をフィードブロックに導くとともに、第二の押出機からB層用ポリエステル樹脂をフィードブロックに導き、フィードブロックでこれらを積層し、ダイから溶融押出し、回転冷却ドラムで冷却した。この手順で作製された未延伸フィルムを縦方向に85℃で3.2倍延伸し、その後、横方向に105℃で3.8倍に延伸し、200℃で熱固定した。この手順で、A層とB層とを備える、厚み20μmの二軸配向積層フィルムを得た。
【0118】
【表1】
【表2】
表1および2について補足説明する。表1および2に示す「パール」はパール顔料を意味する。よって、たとえば、「パールA」はパール顔料Aを意味する。
【0119】
着色剤として無機顔料だけを含有するA層を備える二軸配向積層フィルムは、二軸配向積層フィルムがラミネートされた金属板(すなわち、ラミネート金属板)に、ゴールドの色合いを持たせることができなかった(比較例1参照)。
【0120】
いっぽう、無機顔料およびパール顔料を含有するA層を備える二軸配向積層フィルムは、a*およびb*を調整することで、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いを持たせることができたとともに、その色合いにパール感を付与することもできた(実施例1~8および10~12参照。必要に応じて比較例3参照)。
【0121】
着色剤として、無機顔料、および白色の酸化チタン(具体的にはチタンホワイト)だけを含有するA層を備える二軸配向積層フィルムは、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いを持たせることができたものの、その色合いにパール感を付与することはできなかった(比較例5参照)。
【0122】
パール顔料とともに有機顔料を含有するA層を備える二軸配向積層フィルムも、a*およびb*を調整することで、ラミネート金属板に、ゴールドの色合いを持たせることができたとともに、その色合いにパール感を付与することもできた(実施例9参照。必要に応じて比較例4参照)。ちなみに、有機顔料Bを使用した二軸配向積層フィルムは、有機顔料Cを使用した二軸配向積層フィルムに比べて、レトルト処理によるヘーズの変化、すなわち、ΔE*が小さかった(実施例9および比較例4参照)。