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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082715
(43)【公開日】2023-06-14
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/08 20060101AFI20230607BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20230607BHJP
【FI】
H01B7/08
H02G3/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023042808
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2019154713の分割
【原出願日】2019-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 悠
(72)【発明者】
【氏名】横井 基宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健太
(72)【発明者】
【氏名】蒲 拓也
(72)【発明者】
【氏名】安田 傑
(72)【発明者】
【氏名】東小薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】上 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】野村 康
(72)【発明者】
【氏名】バリラロ ソフィア
(57)【要約】
【課題】線状伝送部材における被覆が直接固定されたシート材に、線状伝送部材における被覆とは異なる材料によって形成されたカバーを良好に付けることができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】配線部材は、伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定されているシート材と、前記被覆とは別材料によって形成されて、前記シート材とは反対側から前記線状伝送部材を覆い、前記シート材に固定されているカバーと、を備え、前記シート材は、前記被覆が直接固定されている第1固定用部分と、前記第1固定用部分よりも前記カバーと直接固定しやすく前記カバーが直接固定されている第2固定用部分とを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、
前記線状伝送部材が固定されているシート材と、
前記被覆とは別材料によって形成されて、前記シート材とは反対側から前記線状伝送部材を覆い、前記シート材に固定されているカバーと、
を備え、
前記シート材は、前記被覆が直接固定されている第1固定用部分と、前記第1固定用部分よりも前記カバーとの直接固定に適し前記カバーが直接固定されている第2固定用部分とを含む、配線部材。
【請求項2】
前記第2固定用部分には空間が形成され、
前記カバーは前記空間の少なくとも一部を埋めるように直接固定されている、請求項1に記載の配線部材。
【請求項3】
前記線状伝送部材は、前記シート材における一方主面に設けられた前記第1固定用部分に直接固定され、
前記カバーは、前記シート材における一方主面に設けられた前記第2固定用部分に直接固定されている、請求項1又は請求項2に記載の配線部材。
【請求項4】
前記一方主面における前記第2固定用部分は、前記第1固定用部分に部分的に重なっている、請求項3に記載の配線部材。
【請求項5】
前記一方主面における前記第1固定用部分は、前記第2固定用部分に部分的に重なっている、請求項3に記載の配線部材。
【請求項6】
前記シート材は、前記第1固定用部分をなす第1層と、前記第2固定用部分をなす第2層とが積層された積層部を含み、前記積層部の一部が前記積層部の一方の主面側に折り返されて前記シート材における前記一方主面が形成されている、請求項3に記載の配線部材。
【請求項7】
前記被覆は前記シート材における一方主面に設けられた前記第1固定用部分に直接固定され、
前記カバーは、前記一方主面側において前記シート材とは反対側から前記線状伝送部材を覆う本体部と、前記本体部における縁部から前記シート材における他方主面に向けて延出し前記他方主面に設けられた前記第2固定用部分に直接固定されている固定部とを含む、請求項1又は請求項2に記載の配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材と、長手方向に沿った少なくとも一部の領域で前記機能性外装部材に重なるように配設された電線と、を備え、前記電線の絶縁被覆と前記機能性外装部材とが重なる部分の少なくとも一部が溶着されている、ワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-137208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1に記載のワイヤーハーネスにおけるシート材に、電線の被覆とは異なる材料によって形成されたカバーを付けることが望まれている。
【0005】
そこで、線状伝送部材における被覆が直接固定されたシート材に、線状伝送部材における被覆とは異なる材料によって形成されたカバーを良好に付けることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定されているシート材と、前記被覆とは別材料によって形成されて、前記シート材とは反対側から前記線状伝送部材を覆い、前記シート材に固定されているカバーと、を備え、前記シート材は、前記被覆が直接固定されている第1固定用部分と、前記第1固定用部分よりも前記カバーとの直接固定に適し前記カバーが直接固定されている第2固定用部分とを含む、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材における被覆が直接固定されたシート材に、線状伝送部材における被覆とは異なる材料によって形成されたカバーを良好に付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1にかかる配線部材を示す概略断面図である。
図2図2図1の部分拡大図である。
図3図3は実施形態2にかかる配線部材を示す概略断面図である。
図4図4は実施形態3にかかる配線部材を示す概略断面図である。
図5図5は実施形態4にかかる配線部材を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の配線部材は、次の通りである。
(1)伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定されているシート材と、前記被覆とは別材料によって形成されて、前記シート材とは反対側から前記線状伝送部材を覆い、前記シート材に固定されているカバーと、を備え、前記シート材は、前記被覆が直接固定されている第1固定用部分と、前記第1固定用部分よりも前記カバーとの直接固定に適し前記カバーが直接固定されている第2固定用部分とを含む、配線部材である。
シート材において第1固定用部分よりもカバーに直接固定に適する第2固定用部分にカバーが直接固定されていることによって、線状伝送部材における被覆が直接固定されたシート材に、線状伝送部材における被覆とは異なる材料によって形成されたカバーを良好に付けることが可能となる。
ここで線状伝送部材とは、電気又は光等を伝送する線状の部材である。また伝送線本体とは、線状伝送部材において電気又は光等を伝送する部分である。また直接固定とは、相互に固定される2部材のうち少なくとも一方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定される態様である。
(2)前記第2固定用部分には空間が形成され、前記カバーは前記空間の少なくとも一部を埋めるように直接固定されていると良い。空間を埋めることによって生じるアンカー効果によって、第2固定用部分が第1固定用部分よりもカバーと直接固定しやすくなるからである。
(3)前記線状伝送部材は、前記シート材における一方主面に設けられた前記第1固定用部分に直接固定され、前記カバーは、前記シート材における一方主面に設けられた前記第2固定用部分に直接固定されていることが考えられる。この場合、線状伝送部材及びカバーをシート材に対して別の主面に固定せずに済む。
(4)前記一方主面における前記第2固定用部分は、前記第1固定用部分に部分的に重なっていることが考えられる。この場合、第2固定用部分の使用量を少なくできる。
(5)前記一方主面における前記第1固定用部分は、前記第2固定用部分に部分的に重なっていることが考えられる。この場合、第1固定用部分の使用量を少なくできる。
(6)前記シート材は、前記第1固定用部分をなす第1層と、前記第2固定用部分をなす第2層とが積層された積層部を含み、前記積層部の一部が前記積層部の一方の主面側に折り返されて前記シート材における前記一方主面が形成されていることが考えられる。この場合、積層部が一様に広がるように形成されたシート状部材を折り返して、シート材の一方主面を形成することができる。
(7)前記被覆は前記シート材における一方主面に設けられた前記第1固定用部分に直接固定され、前記カバーは、前記一方主面側において前記シート材とは反対側から前記線状伝送部材を覆う本体部と、前記本体部における縁部から前記シート材における他方主面に向けて延出し前記他方主面に設けられた前記第2固定用部分に直接固定されている固定部とを含むことも考えられる。この場合、シート材として、第1固定用部分をなす第1層と、第2固定用部分をなす第2層とが積層された積層部が一様に広がるシート材をそのまま用いることができる。
【0010】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0011】
[実施形態1]
以下、実施形態1に係る配線部材について説明する。図1は、実施形態1にかかる配線部材10を示す概略断面図である。図2図1の部分拡大図である。
【0012】
配線部材10は、線状伝送部材20と、線状伝送部材20が固定されたシート材30と、シート材30に固定されたカバー50とを備える。
【0013】
線状伝送部材20は、電気又は光等を伝送する線状の部材であればよい。線状伝送部材20は、伝送線本体22と伝送線本体22を覆う被覆24とを含む。例えば、線状伝送部材20は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、エナメル線、ニクロム線、光ファイバ等であってもよい。例えば、線状伝送部材20が一般電線である場合、一般電線における芯線が伝送線本体22に相当し、一般電線における芯線を覆う絶縁被覆が、被覆24に相当する。一般電線における絶縁被覆は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)などの樹脂材料が芯線の周囲に押出成形されるなどして形成される。電気を伝送する線状伝送部材20としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材20は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。
【0014】
ここでは、複数本(図1では11本)の線状伝送部材20が並列状態でシート材30に固定されている。線状伝送部材20は、1本でもよいし、複数本であってもよい。線状伝送部材20は、シート材30上で曲った経路で延びるように固定されていてもよい。複数の線状伝送部材20は、途中で分岐するようにシート材30に固定されていてもよい。複数の線状伝送部材20は、途中で交差するようにシート材30に固定されていてもよい。
【0015】
シート材30は、主面上に線状伝送部材20が固定されるシート状の部材である。シート材30の主面上に線状伝送部材20が固定されることによって、当該線状伝送部材20が主面において所定の経路に沿って保持される。シート材30は、容易に曲げ可能な柔軟性を有していてもよいし、一定の形状を保つことができる程度の剛性を有する部材であってもよい。
【0016】
シート材30は、第1固定用部分34と第2固定用部分36とを含む。第1固定用部分34に線状伝送部材20の被覆24が直接固定されることによって、線状伝送部材20がシート材30に固定されている。また第2固定用部分36にカバー50が直接固定されることによって、カバー50がシート材30に固定されている。
【0017】
直接固定とは、固定される2部材が、別に設けられた接着剤等を介さずに直接くっついて固定されているものである。直接固定では、例えば固定される2部材のうち一方に含まれる樹脂のみが溶かされることによってくっついて固定されることも考えられるし、固定される2部材のうち両方に含まれる樹脂が溶かされることによってくっついて固定されることも考えられる。前者の場合、溶けた方の樹脂が他方の外面にくっついて固化した状態となり、比較的はっきりした界面が形成されることがある。後者の場合、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。特に、2部材に含まれる樹脂が、同じ樹脂材料など、相溶し易い樹脂である場合などに、両方の樹脂が混ざり合ってはっきりした界面が形成されないことがある。
【0018】
直接固定の状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、溶着、融着、溶接等の公知の手段を含む各種手段を用いることができる。例えば、溶着によって熱による直接固定の状態を形成する場合、超音波溶着、加熱加圧溶着、熱風溶着、高周波溶着など種々の溶着手段を採用することができる。またこれらの手段によって直接固定の状態が形成されると、2部材は、その手段による直接固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波溶着によって直接固定の状態が形成されると、2部材は、超音波溶着による直接固定の状態とされる。溶着によって熱による直接固定の状態を形成した部分を溶着部、このうち、超音波溶着による固定部分を超音波溶着部、加熱加圧溶着による固定部分を加熱加圧溶着部等と称してもよい。
【0019】
本例では、第1固定用部分34及び第2固定用部分36がシート材30における一方主面31に設けられている。そして線状伝送部材20は、シート材30における一方主面31に設けられた第1固定用部分34に直接固定されている。またカバー50は、シート材30における一方主面31に設けられた第2固定用部分36に直接固定されている。
【0020】
ここではシート材30は、第1固定用部分34と、第2固定用部分36とが積層された構成とされている。シート材30における一方主面31における第2固定用部分36は、第1固定用部分34に部分的に重なって形成されている。第1固定用部分34は、シート状の部材である。例えば第1固定用部分34は、細長い方形状に形成されている。この第1固定用部分34の一方主面31に線状伝送部材20が直接固定される。第2固定用部分36は、第1固定用部分34よりも細幅に形成されたシート状の部材である。ここでは、第1固定用部分34の一方主面において、線状伝送部材20が固定される部分を避けた位置に第2固定用部分36が重ね合せ状態で固定される。この第2固定用部分36の一方主面にカバー50が直接固定される。
【0021】
第1固定用部分34と第2固定用部分36との固定態様は特に限定されるものではなく、直接固定であってもよいし、接着剤、両面粘着テープなどの介在物を介した接着固定であってもよい。図2に示す例では、第1固定用部分34と第2固定用部分36とが直接固定されている。
【0022】
カバー50は、被覆24とは別材料によって形成されている。カバー50は、シート材30とは反対側から線状伝送部材20を覆う。カバー50は、本体部52と固定部54とを含む。本体部52は、シート材30とは反対側から線状伝送部材20を覆う部分である。固定部54は、本体部52から延出しシート材30に直接固定されている部分である。ここでは、本体部52は、複数の線状伝送部材20をまとめて覆っている。固定部54は、本体部52における縁部から延出し、シート材30における縁部においてシート材30と直接固定されている。ここではカバー50はシート材30よりも高剛性を有するように形成されている。カバー50は、配線部材10の形状をなるべく維持可能である。
【0023】
第1固定用部分34に線状伝送部材20が直接固定されることから、第1固定用部分34は、第2固定用部分36と比較して線状伝送部材20における被覆24との直接固定に適した部材とされている。
【0024】
第1固定用部分34が第2固定用部分36と比較して線状伝送部材20との直接固定に適しているとは、次のように捉えることができる。すなわち、同じ構成を有する線状伝送部材20を同じ条件のもとで第1固定用部分34及び第2固定用部分36に固定した場合に、第1固定用部分34に対する線状伝送部材20の固定力が、第2固定用部分36に対する線状伝送部材20の固定力よりも大きくなることである。本例のように直接固定が採用される場合には、被覆24における樹脂表面と第1固定用部分34における樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力が、被覆24における樹脂表面と第2固定用部分36における樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力よりも大きいと考えてもよい。
【0025】
上記条件を満たすものであれば、第1固定用部分34を構成する材料は特に限定されるものではなく、被覆24を構成する材料との関係で選定されればよい。被覆24と第1固定用部分34とは同じ樹脂又は同系の樹脂を材料としているとよい。例えば、被覆24がPVCを主成分とする樹脂によって形成されている場合、第1固定用部分34もPVCを主成分とする樹脂によって形成されるとよい。
【0026】
第1固定用部分34は、内部が一様に埋った充実シート状の部材とされている。これは、第1固定用部分34と線状伝送部材20との直接固定状態を作成するときに両者の接触面積が小さくなっても、固着力を高められるようにするためである。特にここでは、線状伝送部材20の横断面が円形であることによって線状伝送部材20と第1固定用部分34との接触面積が小さくなりやすい。
【0027】
第1固定用部分34として、線状伝送部材20の固定に適したものを採用すると、カバー50との固定に不向きとなる恐れがある。そこで、第2固定用部分36によって、カバー50と良好に固定できるようにする。つまり、第2固定用部分36は、第1固定用部分34と比較してカバー50との直接固定に適した部材とされている。
【0028】
第2固定用部分36が第1固定用部分34と比較してカバー50との直接固定に適しているとは、次のように捉えることができる。すなわち、同じ構成を有するカバー50を同じ条件のもとで第1固定用部分34及び第2固定用部分36に固定した場合に、第2固定用部分36に対するカバー50の固定力が、第1固定用部分34に対するカバー50の固定力よりも大きくなることである。本例のように直接固定が採用される場合には、カバー50における樹脂表面と第2固定用部分36における樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力が、カバー50における樹脂表面と第1固定用部分34における樹脂表面との少なくとも一方が溶けて固化して両者がくっついた場合の固着力よりも大きいと考えてもよい。
【0029】
上記条件を満たすものであれば、第2固定用部分36を構成する材料、構造は特に限定されるものではなく、カバー50を構成する材料、構造との関係で選定されればよい。ここでは第2固定用部分36に空間38が形成されていることによって、第2固定用部分36は、第1固定用部分34よりもカバー50との直接固定に適する。すなわちカバー50は空間38の少なくとも一部を埋めるように直接固定されている。これによりカバー50が第2固定用部分36に直接固定された状態で、カバー50と第2固定用部分36との間にアンカー効果が生じる。換言すれば、カバー50と第2固定用部分36とは、主としてアンカー効果という物理的作用によって固定されるため、第2固定用部分36として、カバー50への化学的な固着力等を考慮せずに済み、選択できる材料の幅が広がる。
【0030】
第2固定用部分36が第1固定用部分34よりもカバー50との直接固定に適するものとして、主としてアンカー効果などの物理的作用を利用するものではなく、水素結合、ファンデルワールス力などの化学的作用を主として利用するものでもよい。例えば、第2固定用部分36がカバー50と同じ樹脂材料、又は同系の樹脂材料によって構成され、第1固定用部分34がカバー50との接着性の低い異系の樹脂材料によって構成されていることによって、化学的作用によって第2固定用部分36が第1固定用部分34よりもカバー50との直接固定に適するものであると考えてよい。
【0031】
第2固定用部分36における空間38の態様は特に限定されるものではない。例えば、第2固定用部分36をなす部材が不織布、樹脂発泡体など多孔質である部材であることによって、多孔質な部分の各孔が空間38とされていてもよい。また例えば第2固定用部分36をなす部材が網状の部材であることによって網目が空間38とされていてもよい。また例えば第2固定用部分36をなす部材が編地、織地などであることによって編地、織地を構成する糸の間が空間38とされていてもよい。また例えば充実シート状の第2固定用部分36の表面に溝、凹み、切込み等が形成されたり、第2固定用部分36を貫通する孔が形成されたりして空間38とされていてもよい。そしてこの空間38の少なくとも一部を、カバー50を構成する樹脂が埋めることによって、カバー50と第2固定用部分36との間にアンカー効果が生じ、カバー50と第2固定用部分36とがしっかりと固定される。このときカバー50と第2固定用部分36とは、1本の線状伝送部材20が第1固定用部分34と接触する領域よりも大きい領域で面接触していると良い。
【0032】
第2固定用部分36が空間38を有する場合、第2固定用部分36を構成する材料は特に限定されるものではない。直接固定時にカバー50の溶けた材料が空間38に入り込むまで、空間38の少なくとも一部が残存できれば良い。例えば、第2固定用部分36を形成する材料の融点が、カバー50の材料の融点と同程度かそれよりも高いと良い。これにより、第2固定用部分36がカバー50よりも先に溶けて第2固定用部分36における空間38が第2固定用部分36によって埋められてすべてなくなってしまうことを抑制できる。第2固定用部分36を構成する材料の融点が、カバー50を構成する材料の融点と同程度かそれよりも高いことは必須ではない。第2固定用部分36を構成する材料の融点が、カバー50を構成する材料の融点よりも低い場合でも、カバー50と第2固定用部分36とが直接固定される際、第2固定用部分36が重点的に加熱されるなどすることによって、直接固定時にカバー50の溶けた材料が空間38に入り込むまで、空間38の少なくとも一部が残存できる。
【0033】
第2固定用部分36は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)を材料として形成されて、カバー50がナイロン、PET、PP(ポリプロピレン)などを材料としていることが考えられる。
【0034】
カバー50は、充実シート状部材、又は独立気泡型の発泡体などであり、シート材30よりも硬く形成されて高剛性とされている。例えばカバー50は、ナイロン、PET、PPなどの材料によって形成された充実シート状部材、又は独立気泡型の発泡体であり、シート材30は軟質PVCを材料とした充実シート状部材とPETを材料とした不織布とが積層された柔らかい部材である。
【0035】
第2固定用部分36にカバー50が固定される前に、第1固定用部分34と第2固定用部分36とが固定されると良い。第1固定用部分34と第2固定用部分36とは、直接固定されていてもよいし、接着剤、両面粘着テープなどの介在物によって貼り合わされていてもよい。図2に示す例では、充実シート状の第1固定用部分34が、不織布である第2固定用部分36における空間38の一部(第1固定用部分34側の空間38)を埋めることによって、第1固定用部分34と第2固定用部分36とが直接固定されている。このとき、第1固定用部分34と第2固定用部分36とが固定された状態で、第2固定用部分36において、第1固定用部分34側とは反対側に空間38が残った状態とされる。そしてこの残存する空間38を、カバー50を構成する樹脂が埋めることによって、カバー50と第2固定用部分36とが直接固定される。
【0036】
カバー50と第2固定用部分36とは、加圧部材80、82に挟持されることによって加圧されつつ熱が加えられて直接固定される。この加圧部材80、82の少なくとも一方が加熱部材であってもよい。カバー50と第2固定用部分36とが加圧部材80、82によって挟持される際、第1固定用部分34も併せて挟持される。
【0037】
配線部材10によると、シート材30において第1固定用部分34よりもカバー50に直接固定しやすい第2固定用部分36にカバー50が直接固定されていることによって、線状伝送部材20における被覆24が直接固定されたシート材30に、線状伝送部材20における被覆24とは異なる材料によって形成されたカバー50を良好に付けることが可能となる。
【0038】
第2固定用部分36には空間38が形成され、カバー50は空間38を埋めるように直接固定されているため、空間38を埋めることによって生じるアンカー効果によって、第2固定用部分36が第1固定用部分34よりもカバー50と直接固定しやすくなる。
【0039】
線状伝送部材20は、シート材30における一方主面31に設けられた第1固定用部分34に直接固定され、カバー50は、シート材30における一方主面31に設けられた第2固定用部分36に直接固定されているため、線状伝送部材20及びカバー50をシート材30に対して別の主面に固定せずに済む。一方主面31における第2固定用部分36は、第1固定用部分34に部分的に重なって形成されているため、第2固定用部分36の使用量を少なくできる。
【0040】
[実施形態2]
実施形態2に係る配線部材について説明する。図3は実施形態2にかかる配線部材110を示す概略断面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態の説明においても同様である。
【0041】
本例でもシート材130において、一方主面31に第1固定用部分134及び第2固定用部分136が設けられている。本例においては、一方主面31における第1固定用部分134は、第2固定用部分136に部分的に重なっている。具体的には、第1固定用部分134は、例えば、細長い方形状に形成されたシート状部材である。第2固定用部分136は、第1固定用部分134よりも幅広の細長い方形状に形成されたシート状部材である。そして、第1固定用部分134が第2固定用部分136の一方主面に部分的に重ねられて固定される。
【0042】
図3に示す例では、第1固定用部分134は、第2固定用部分136の一方主面において側縁部を避けて中間部に固定されている。第1固定用部分134が、シート材130の一方主面31において幅方向中間部に現れている。第2固定用部分136の一方主面における側縁部が、シート材130における一方主面31において幅方向端部に現れている。第1固定用部分134に複数の線状伝送部材20が並んだ状態で直接固定され、第2固定用部分136の一方主面における側縁部にカバー50の側縁部が直接固定されている。
【0043】
このように一方主面31における第1固定用部分134が、第2固定用部分136に部分的に重なっていると、第1固定用部分134の使用量を少なくできる。
【0044】
実施形態2に示す例において、シート材130の一方主面31における幅方向中間部に第1固定用部分134が設けられない部分が存在していてもよい。つまり、細幅の複数の第1固定用部分134が第2固定用部分136に対して幅方向に間隔をあけつつ設けられていてもおい。この場合、第2固定用部分136の一方主面における中間部が、シート材130の一方主面31に現れる。このとき、カバー50の幅方向中間部が、シート材130の一方主面31に現れた第2固定用部分36の一方主面における中間部に直接固定されていても良い。
【0045】
[実施形態3]
実施形態3に係る配線部材について説明する。図4は実施形態3にかかる配線部材210を示す概略断面図である。
【0046】
本例でもシート材230において、一方主面31に第1固定用部分234及び第2固定用部分236が設けられている。本例においては、シート材230を構成するシート状部材の一部が折り返されることによって、一方主面31に第1固定用部分234及び第2固定用部分236が設けられている。
【0047】
具体的には、シート材230は、第1固定用部分234をなす第1層と、第2固定用部分236をなす第2層とが積層された積層部40を含む。積層部40の一部が積層部40の一方の主面側に折り返されている。これにより、一方主面31に第1固定用部分234及び第2固定用部分236が設けられたシート材230が形成されている。
【0048】
ここでは、折り返される前のシート状部材として、積層部40が一様に広がるように形成されたシート状部材が用いられている。すなわち、第1層をなすシート状部材と、第2層をなすシート状部材とが同様の大きさに形成されつつ、相互にはみ出し部分がないように積層されて全体が積層部40とされたシート状部材が用いられている。
【0049】
ここでは積層部40において、第1層が一方主面をなし、第2層が他方主面をなすように積層されている。そして積層部40の端部が第1層を内側とするように一方の主面側に折り返されている。これによりシート材230の一方主面31において、幅方向中間部に第1固定用部分234が現れ、幅方向端部に第2固定用部分236が現れている。第1固定用部分234に複数の線状伝送部材20が並んだ状態で直接固定され、第2固定用部分236の一方主面31における側縁部にカバー50の側縁部が直接固定されている。
【0050】
積層部40の一部が折り返された折り返し部42は、例えばカバー50と直接固定されることによって、折り返された形状に維持されている。また例えば折り返し部42は、折癖によって、折り返された形状に維持されている。折り返し部42に、折り返し形状を維持する折り返し形状維持部が別途設けられていてもよい。係る折り返し形状維持部として、例えば、折り返し部42において相互に対向する面(図3に示す例では第1層の主面)同士が、直接固定されたり、接着剤、両面粘着テープなどの介在物を介して接着固定されたりする構成を採用することができる。また例えば、折り返し形状維持部として、折り返し部42における折り目を挟んだ両側部分が糸などによって縫われた構成、ステープラなどによって留められた構成などを採用することができる。
【0051】
このようにシート材230が第1固定用部分234をなす第1層と、第2固定用部分236をなす第2層とが積層された積層部40を含み、積層部40の一部が積層部40の一方の主面側に折り返されてシート材230における一方主面31が形成されていると、積層部40が一様に広がるように形成されたシート状部材を折り返して、シート材230の一方主面31を形成することができる。
【0052】
[実施形態4]
実施形態4に係る配線部材について説明する。図5は実施形態4にかかる配線部材310を示す概略断面図である。
【0053】
本例では、線状伝送部材20の被覆24がシート材330における一方主面31に設けられた第1固定用部分334に直接固定されている。またカバー350が、シート材330における他方主面32に設けられた第2固定用部分336に直接固定されている。このときカバー350における固定部354の形状が、上記カバー50における固定部54の形状とは異なる。固定部354は、本体部52における縁部から他方主面32に向けて延出している。このとき固定部354は、本体部52とつながりシート材330における一方主面31を覆う基端部355と、シート材330における他方主面32を覆う先端部356と、基端部355及び先端部356を連結する連結部357とを有している。連結部357は、シート材330における一方主面31側から他方主面32側に向けて曲がっている。そして、先端部356が、シート部材における他方主面32に設けられた第2固定用部分336に直接固定されている。
【0054】
シート材330において一方主面31に第1固定用部分334が設けられ、他方主面32に第2固定用部分336が設けられている。係るシート材330は、実施形態3において折り返される前のシート状部材と同様のシート状部材が用いられている。すなわち、シート材330として第1固定用部分334をなす第1層と、第2固定用部分336をなす第2層とが積層された積層部が一様に広がるシート状部材がそのまま用いられている。このように本例では、シート材330として、第1固定用部分334をなす第1層と、第2固定用部分336をなす第2層とが積層された積層部40が一様に広がるシート状部材をそのまま用いることができる。
【0055】
シート材330として積層部40が一様に広がるシート状部材以外のシート材が採用されてもよい。例えば実施形態1において説明したシート材30が、表裏方向に逆向きに用いられていてもよい。また例えば実施形態2、実施形態3において説明したシート材130、230が、表裏方向の向きをそのままに用いられていてもよい。
【0056】
固定部354における先端部356は、シート材330における他方主面32に設けられた第2固定用部分336のうち線状伝送部材20と重なる部分を避けた位置に直接固定されると良い。カバー350とシート材330とを直接固定する際、図5に示すように加圧部材80、82によって線状伝送部材20を挟持せずに済むからである。
【0057】
固定部354における基端部355は、シート材330における一方主面31と直接固定されている場合もあり得るし、されていない場合もあり得る。例えばカバー350とシート材330とが直接固定される際、図5に示すように、加圧部材80、82によって固定部354における基端部355も併せて挟持されて、シート材330と直接固定されうる。
【0058】
図5に示す例では、シート材330における一方主面31において、固定部354における基端部355と対向する部分は、第1固定用部分334である。この場合、シート材330における一方主面31においてシート材330とカバー350とが直接固定されている場合、その固定強度は、シート材330における他方主面32においてシート材330とカバー350とが直接固定されている部分(第2固定用部分336と先端部356とが直接固定されている部分)の固定強度よりも弱くなる。シート材330として実施形態2で説明したシート材130に対して本例のようなカバー350が採用された場合、シート材130における一方主面31において、固定部354における基端部355と対向する部分が第2固定用部分336である。この場合、シート材130における一方主面31においてシート材130とカバー350とが直接固定されている場合、その固定強度は、シート材130における他方主面32においてシート材130とカバー350とが直接固定されている部分(第2固定用部分136と先端部356とが直接固定されている部分)の固定強度と同程度になり得る。
【0059】
本例のようにカバー350における固定部354がシート材330における他方主面32に固定されていると、カバー350において本体部52の表裏方向への固定部354の突出寸法が大きくなる。このとき、カバー350の基材が高剛性を有するシート状部材であると、カバー350において本体部52の表裏方向への固定部354の突出寸法が大きくなることによって、配線部材310の剛性をより高めることができ、配線部材310の形状を維持しやすくなる。
【0060】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
10、110、210、310 配線部材
20 線状伝送部材
22 伝送線本体
24 被覆
30、130、230、330 シート材
31 一方主面
32 他方主面
34、134、234、334 第1固定用部分
36、136、236、336 第2固定用部分
37 繊維
38 空間
40 積層部
42 折り返し部
50、350 カバー
52 本体部
54、354 固定部
355 基端部
356 先端部
357 連結部
80、82 加圧部材
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、
前記線状伝送部材が固定されているシート材と、
記シート材に固定されているカバーと、
を備え、
前記シート材は、第1層及び第2層が積層された部分を含み、
前記線状伝送部材は前記第1層に固定され、
前記カバーは前記第2層に固定されており、
前記線状伝送部材のうち前記第1層との固定部とは反対側で前記カバーに対向する部分は、前記カバーに固定されていない、配線部材。
【請求項2】
伝送線本体と前記伝送線本体を覆う被覆とを含む線状伝送部材と、
前記線状伝送部材が固定されているシート材と、
前記シート材に固定されているカバーと、
を備え、
前記シート材は、第1層及び第2層が積層された部分を含み、
前記線状伝送部材は前記第1層に固定され、
前記カバーは前記第2層に固定されており、
前記カバーのうち前記第2層と固定される層と同じ層が、前記線状伝送部材のうち前記第1層との固定部とは反対側の部分と対向している、配線部材。
【請求項3】
前記第1層及び前記カバーは充実シート状部材である、請求項1又は請求項2に記載の配線部材。
【請求項4】
前記第2層は不織布である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項5】
前記第2層は前記第1層に部分的に重なっている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項6】
前記第2層は内部に空間を有し、
前記第1層及び前記カバーは前記第2層に対して相互に反対側に積層されており、それぞれ前記空間の一部を埋めつつ前記第2層に固定されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項7】
前記第1層は前記第2層に部分的に重なっている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材。
【請求項8】
前記第1層と前記第2層とは同じ大きさに設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
ところで特許文献1に記載のワイヤーハーネスにおけるシート材にカバーを付けることが望まれている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
そこで、線状伝送部材が固定されたシート材にカバーを良好に付けることができる技術を提供することを目的とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示の配線部材は、線状伝送部材と、前記線状伝送部材が固定されているシート材と、前記シート材に固定されているカバーと、を備え、前記シート材は、第1層及び第2層が積層された部分を含み、前記線状伝送部材は前記第1層に固定され、前記カバーは前記第2層に固定されている、配線部材である。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材が固定されたシート材にカバーを良好に付けることができる。