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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023082938
(43)【公開日】2023-06-15
(54)【発明の名称】移乗装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/14 20060101AFI20230608BHJP
   A61G 5/14 20060101ALI20230608BHJP
【FI】
A61G7/14
A61G5/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196969
(22)【出願日】2021-12-03
(71)【出願人】
【識別番号】511258167
【氏名又は名称】カネタコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】市原 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】塚原 繁典
【テーマコード(参考)】
4C040
【Fターム(参考)】
4C040AA08
4C040JJ03
4C040JJ08
(57)【要約】
【課題】優れた利便性を発揮可能な移乗装置を提供する。
【解決手段】本発明の移乗装置は、基台1と、第1支柱3と、保持部材5と、操作機構7とを備えている。操作機構7は、ハンドル70と、ダンパ71と、切替部材72とを有している。ハンドル70は、介護者が把持可能である。ダンパ71は、長手方向に伸縮することによって保持部材5を初期位置と移送位置との間で揺動させる。また、ダンパ71は、伸縮を禁止する禁止状態と、伸縮を許容する許容状態とを実現可能である。切替部材72には、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dが設けられている。切替部材72は、介護者が中央ペダル72b、左ペダル72c又は右ペダル72dの踏込を行うことにより、ダンパ71を禁止状態から許容状態に切り替える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタを有し、前後方向及び左右方向に延びる基台と、
前記基台から上方に延びる支柱と、
前記支柱に対して水平な揺動軸心周りで初期位置から移送位置まで揺動可能に設けられ、被介護者を保持する保持部材と、
前記被介護者を介護する介護者の操作によって、前記保持部材を揺動させる操作機構とを備え、
前記保持部材は、前記被介護者の胸部を受け得る中央部材と、前記中央部材に対して前記被介護者の右側となる個所に配置され、前記被介護者の右脇を載せ得る右側部材と、前記中央部材に対して前記被介護者の左側となる個所に配置され、前記被介護者の左脇を載せ得る左側部材とを有し、
前記初期位置では、前記中央部材が略垂直な状態となり、
前記移送位置では、前記中央部材が略水平な状態となる移乗装置であって、
前記操作機構は、前記保持部材と接続して前記保持部材に対して前記前後方向の一方に配置され、前記介護者が把持可能なハンドルと、
前記保持部材と接続し、長手方向に伸縮することによって前記保持部材を前記初期位置と前記移送位置との間で揺動させるとともに、前記伸縮を禁止する禁止状態と、前記伸縮を許容する許容状態とを実現可能なダンパと、
前記ダンパに接続され、前記ダンパを前記禁止状態と前記許容状態とに切り替可能な切替部材とを有し、
前記切替部材には、前記基台の前記前後方向の一方かつ前記左右方向の略中央に配置された第1ペダルと、前記基台の前記左右方向の少なくとも一方に配置された第2ペダルとが設けられ、
前記切替部材は、前記介護者が前記第1ペダル又は前記第2ペダルの踏込を行うことにより、前記ダンパを前記禁止状態から前記許容状態に切り替えることを特徴とする移乗装置。
【請求項2】
前記第2ペダルは、前記基台の前記前後方向の一方かつ前記基台の左方に配置された左ペダルと、前記基台の前記前後方向の一方かつ前記基台の右方に配置された右ペダルとからなり、
前記第1ペダルは、前記左右方向において、前記左ペダルと前記右ペダルとの中間となる位置に配置されている請求項1記載の移乗装置。
【請求項3】
前記切替部材には、前記第1ペダル及び前記第2ペダルと連結するフレームが設けられ、
前記フレームは、前記基台の下方に配置されて前記基台に揺動可能に接続されるとともに、前記ダンパに接続されている請求項1又は2記載の移乗装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移乗装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の移乗装置が開示されている。この移乗装置は、基台と、支柱と、保持部材と、操作機構とを備えている。基台は前後方向及び左右方向に延びる板状に形成されている。また、基台にはキャスタが設けられている。支柱は、基台から上方に向かって延びている。
【0003】
保持部材は、初期位置から移送位置まで揺動可能に設けられており、中央部材と右側部材と左側部材とを有している。保持部材は、中央部材は、被介護者の胸部を受けることが可能である。右側部材には、被介護者の右脇を載せることが可能である。左側部材には、被介護者の右脇を載せることが可能である。これにより、保持部材は被介護者を保持可能である。
【0004】
操作機構は、ハンドルとダンパとペダルとを有している。ハンドルは、保持部材と接続しており、保持部材の後方に配置されている。ハンドルは、介護者が把持可能となっている。ダンパは保持部材と接続している。ダンパは、長手方向に伸縮することによって保持部材を初期位置と移送位置との間で揺動させる。また、ダンパは、禁止状態となることで伸縮が禁止され、許容状態となることで伸縮が許容される。ペダルは一つだけ設けられている。ペダルは基台の後方かつ基台の左右方向の中央に位置しており、ダンパの後方に接続されている。ペダルは、介護者が踏み込むことによって、ダンパを禁止状態から許容状態に切り替える。
【0005】
この移乗装置において保持部材に被介護者を保持させる場合、介護者は最初にペダルを足で踏み込むことによって、ダンパを禁止状態から許容状態に切り替える。この状態でハンドルを操作しつつ、保持部材を初期位置に揺動させる。介護者は、保持部材を初期位置に揺動させた後、ペダルの踏み込みを解除してダンパを禁止状態に切り替える。こうして、この移乗装置では、初期位置にある保持部材に被介護者を保持させることができる。また、介護者は、保持部材に介護者を保持させた後、再度ペダルを踏みこむことによって、ダンパを禁止状態から許容状態に切り替えつつ、ハンドルの操作によって保持部材を移送位置に揺動させる。これにより、被介護者の全身を移乗装置に移すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-154773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この種の移乗装置では、より高い利便性が求められる。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、優れた利便性を発揮可能な移乗装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の移乗装置は、キャスタを有し、前後方向及び左右方向に延びる基台と、
前記基台から上方に延びる支柱と、
前記支柱に対して水平な揺動軸心周りで初期位置から移送位置まで揺動可能に設けられ、被介護者を保持する保持部材と、
前記被介護者を介護する介護者の操作によって、前記保持部材を揺動させる操作機構とを備え、
前記保持部材は、前記被介護者の胸部を受け得る中央部材と、前記中央部材に対して前記被介護者の右側となる個所に配置され、前記被介護者の右脇を載せ得る右側部材と、前記中央部材に対して前記被介護者の左側となる個所に配置され、前記被介護者の左脇を載せ得る左側部材とを有し、
前記初期位置では、前記中央部材が略垂直な状態となり、
前記移送位置では、前記中央部材が略水平な状態となる移乗装置であって、
前記操作機構は、前記保持部材と接続して前記保持部材に対して前記前後方向の一方に配置され、前記介護者が把持可能なハンドルと、
前記保持部材と接続し、長手方向に伸縮することによって前記保持部材を前記初期位置と前記移送位置との間で揺動させるとともに、前記伸縮を禁止する禁止状態と、前記伸縮を許容する許容状態とを実現可能なダンパと、
前記ダンパに接続され、前記ダンパを前記禁止状態と前記許容状態とに切り替可能な切替部材とを有し、
前記切替部材には、前記基台の前記前後方向の一方かつ前記左右方向の略中央に配置された第1ペダルと、前記基台の前記左右方向の少なくとも一方に配置された第2ペダルとが設けられ、
前記切替部材は、前記介護者が前記第1ペダル又は前記第2ペダルの踏込を行うことにより、前記ダンパを前記禁止状態から前記許容状態に切り替えることを特徴とする。
【0010】
本発明の移乗装置では切替部材に第1ペダルの他に第2ペダルが設けられている。つまり、この移乗装置では複数のペダルが存在しており、介護者は、第1ペダル又は第2ペダルのいずれを踏み込んでもダンパを禁止状態から許容状態に切り替えることができる。ここで、第1ペダルは基台の前後方向の一方にかつ左右方向の略中央に配置されており、第2ペダルは基台の左右方向の少なくとも一方に配置されている。これにより、この移乗装置では、第1ペダル又は第2ペダルを選択して踏み込みを行うことにより、被介護者の体格や障がいの程度等に応じて、介護者は、被介護者に対する位置を選択しつつ保持部材を揺動させることができる。
【0011】
具体的には、第1ペダルの踏み込みを行う場合には、介護者は、被介護者と前後方向でほぼ対向した状態において、保持部材を初期位置と移送位置とに揺動させることができる。これに対し、第2ペダルの踏み込みを行う場合には、介護者は、基台、ひいては被介護者の側方に位置しつつ、保持部材を移送位置から初期位置に揺動させることができる。このため、第2ペダルの踏み込みを行う場合には、介護者は、被介護者の側方から介添えしつつ、被介護者を保持部材に保持させたり、保持部材に保持された被介護者をベッドや車椅子等に移動させたりし易い。こうして、この移乗装置によれば、被介護者をより安定的に介護できる。また、この移乗装置では、保持部材を揺動させるに当たって第1ペダル又は第2ペダルを選択できる。このため、狭い部屋で被介護者の介護を行う場合等、移乗装置の周囲に十分なスペースを確保し難い場合であっても、第1ペダル又は第2ペダルを踏み込むに際して、介護者は基台、ひいては移乗装置に対する位置を選択できる。このため、例えば、介護者と基台との間に第1ペダルの踏み込みを行うためのスペースを確保し難い場合であっても、この移乗装置では、介護者は第2ペダルの踏み込みを行えば、保持部材を揺動させることができる。
【0012】
したがって、本発明の移乗装置は優れた利便性を発揮する。
【0013】
第2ペダルは、基台の前後方向の一方かつ基台の左方に配置された左ペダルと、基台の前後方向の一方かつ基台の右方に配置された右ペダルとからなり得る。そして、第1ペダルは、左右方向において、左ペダルと右ペダルとの中間となる位置に配置されていることが好ましい。この場合には、移乗装置は、より優れた利便性を発揮できる。
【0014】
切替部材には、第1ペダル及び第2ペダルと連結するフレームが設けられ得る。そして、フレームは、基台の下方に配置されて基台に揺動可能に接続されるとともに、ダンパに接続されていることが好ましい。この場合には、切替部材の構成を簡素化しつつ、切替部材を基台及びダンパに好適に接続させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の移乗装置は優れた利便性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例の移乗装置に係り、保持部材が初期位置にある状態を示す斜視図である。
図2図2は、実施例の移乗装置に係り、保持部材が移送位置にある状態を示す斜視図である。
図3図3は、実施例の移乗装置に係り、切替部材を示す斜視図である。
図4図4は、実施例の移乗装置に係り、基台及び切替部材を示す平面図である。
図5図5は、実施例の移乗装置に係り、中央部材、右側部材及び左側部材を示す模式背面図である。
図6図6は、実施例の移乗装置に係り、中央部材、右側部材及び左側部材を示す模式背面図である。
図7図7は、実施例の移乗装置に係り、ダンパが禁止状態にある際の図1のA-A断面を示す要部拡大断面図である。
図8図8は、実施例の移乗装置に係り、ダンパが許容状態にある際の図7と同様の要部拡大断面図である。
図9図9は、実施例の移乗装置に係り、第2膝保持部材が前方に移動した状態を示す要部拡大斜視図である。
図10図10は、実施例の移乗装置に係り、第2膝保持部材が後方に移動した状態を示す要部拡大斜視図である。
図11図11は、実施例の移乗装置に係り、第2案内部材を示す斜視図である。
図12図12は、実施例の移乗装置に係り、第2膝保持部材を示す斜視図である。
図13図13は、実施例の移乗装置に係り、第2案内部材及び第2膝保持部材を示す断面図である。図13の(A)は、第1係合歯と第2係合歯とが係合した状態を示している。図13の(B)は、第1係合歯と第2係合歯との係合が解除された状態を示している。図13の(C)は、図13の(A)とは異なる位置で第1係合歯と第2係合歯とが係合した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、実施例の移乗装置は、基台1と、第1支柱3と、保持部材5と、操作機構7と、第1膝保持機構11と、第2膝保持機構13とを備えている。第1支柱3は、本発明における「支柱」の一例である。操作機構7は、ハンドル70と、ダンパ71と、図3及び図4に示す切替部材72とを有している。
【0019】
本実施例では、図1及び図2に示す黒色実線矢印によって、移乗装置の上下方向、前後方向及び左右方向をそれぞれ規定している。ここで、移乗装置の後方は、本発明における「前後方向の一方」に相当する。また、本実施例では、移乗装置を前方側から見た場合を基準として、移乗装置の左右方向を規定している。そして、図3以降では、図1及び図2に対応して移乗装置の上下方向、前後方向及び左右方向を規定している。これらの上下方向、前後方向及び左右方向は互いに直交している。
【0020】
図1図2及び図4に示すように、基台1は、前後方向及び左右方向に延びる略矩形の板状に形成されている。基台1の後部には、左後端部1a及び右後端部1bが形成されている。左後端部1a及び右後端部1bは、それぞれ基台1の上方に屈曲されることによって形成されている。左後端部1a及び右後端部1bの各下方には、それぞれキャスタ2a、2bが取り付けられている。一方、基台1の前部と、基台1の前後方向の略中央とにおいて、右下方及び左下方となる個所にはそれぞれキャスタ2c、2dが取り付けられている。キャスタ2c、2dは、キャスタ2a、2bに比べて小型となっている。ここで、略中央とは完全に中央となる位置の他、製造時の公差等により僅かに中央からずれた位置を含んでいる。なお、図1及び図2では、基台1の左下方に取り付けられたキャスタ2c及びキャスタ2dの図示を省略している。
【0021】
また、図4に示すように、基台1における前後方向及び左右方向の略中央となる個所には、左第1取付孔1cと右第1取付孔1dとが形成されている。さらに、左第1取付孔1c及び右第1取付孔1dよりも後方となる個所には、左第2取付孔1e及び右第2取付孔1fが形成されている。また、左第2取付孔1eと右第2取付孔1fとの間には、ワイヤ挿通孔1gが形成されている。さらに、前後方向で左第1取付孔1c及び右第1取付孔1dと左第2取付孔1e及び右第2取付孔1fとの間となる個所には、バネ取付部1kが形成されている。
【0022】
図1及び図2に示すように、第1支柱3は上下方向に延びている。第1支柱3は、第1左柱部3aと第1右柱部3bと第1カバー部3cとで構成されている。第1左柱部3a及び第1右柱部3bは同一の形状であり、左右方向に離間して配置されている。第1左柱部3a及び第1右柱部3bの各下端には、後述する第1連結ピン8を挿通させるための貫通孔(図示略)が設けられている。第1カバー部3cは、第1左柱部3a及び第1右柱部3bと一体をなしており、第1左柱部3a及び第1右柱部3bの前方であって、第1左柱部3aと第1右柱部3bとの間に配置されている。第1カバー部3cは、第1左柱部3aと第1右柱部3bとを左右方向で接続している。ここで、第1カバー部3cの上下方向の長さは、第1左柱部3a及び第1右柱部3bの上下方向の長さに比べて短く設計されている。第1支柱3は、基台1における前後方向及び左右方向の略中央で基台1に固定されており、基台1から上方に略垂直に延びている。なお、基台1に対する第1支柱3の固定については後述する。
【0023】
また、第1支柱3には、第1連結板4a及び第2連結板4bの各前端が固定されている。第1連結板4a及び第2連結板4bは同一の形状であり、前後方向に延びる矩形の板状に形成されている。第1連結板4aと第2連結板4bとは、左右方向に離間して配置されており、それぞれ第1左柱部3a及び第1右柱部3bから後方に向かって略水平に延びている。
【0024】
さらに、第1支柱3の後方であって、第1連結板4aと第2連結板4bとの間となる個所には、第2支柱6が設けられている。第2支柱6は上下方向に延びている。第2支柱6は、第2左柱部6aと第2右柱部6bと第2カバー部6cとで構成されている。第2左柱部6a及び第2右柱部6bは同一の形状であり、左右方向に離間して配置されており、上下方向に延びている。ここで、第2左柱部6a及び第2右柱部6bの上下方向の長さは、第1左柱部3a及び第1右柱部3bの上下方向の長さに比べて短く形成されている。これにより、第2支柱6は、第1支柱3に比べて上下方向の長さが短くなっている。第2カバー部6cは、第2左柱部6aと第2右柱部6bとの間に配置されている。第2カバー部6cは、第2左柱部6a及び第2右柱部6bの各上端と接続することにより、第2左柱部6aと第2右柱部6bとを左右方向で接続している。
【0025】
図7及び図8に示すように、第2支柱6では、第2左柱部6aの下端を基台1の左第2取付孔1eに挿通させつつ、第2左柱部6aを基台1に固定している。また、図示を省略するものの、第2支柱6では、第2右柱部6bの下端を基台1の右第2取付孔1fに挿通させつつ、第2右柱部6bを基台1に固定している。こうして、第2支柱6は、基台1に固定されて基台1から上方に略垂直に延びている。また、図1及び図2に示すように、第2左柱部6a及び第2右柱部6bの各上端に対して、第1連結板4a及び第2連結板4bの各後端がそれぞれ固定されている。こうして、第1連結板4a及び第2連結板4bによって、第1支柱3と第2支柱6とが連結されている。
【0026】
保持部材5は、中央部材51と、右側部材52と、左側部材53と、台座54と、第1連結ロッド55と、第2連結ロッド56と、図5及び図6に示す第1~4リンクアーム57a~57dとを有している。
【0027】
図1及び図2に示すように、第1連結ロッド55及び第2連結ロッド56は、長手方向に延びる矩形の鋼材によって形成されている。第1連結ロッド55は、長手方向の一端側(図1において第1連結ロッド55の前端側)が台座54に固定されている。第2連結ロッド56は、長手方向で上下に延びており、上端が第1連結ロッド55の他端側に接続されている。第2連結ロッド56の下端側は、第1支柱3内、すなわち、第1左柱部3aと第1右柱部3bとの間に進入している。図7及び図8に示すように、第2連結ロッド56と第1左柱部3aとの間にはスペーサ58が設けられている。なお、図示を省略するものの、第2連結ロッド56と第1右柱部3bとの間にもスペーサ58が設けられている。
【0028】
両スペーサ58を含め、第2連結ロッド56と第1左柱部3aと第1右柱部3bとは、第1ボルト81によって接続されている。第1ボルト81は、第1支柱3に対して左右方向に水平に延びている。これにより、第1ボルト81の軸心も左右方向に水平に延びている。第1ボルト81の軸心は、第1揺動軸心X1とされている。第1揺動軸心X1は、本発明における「揺動軸心」の一例である。第1、2連結ロッド55、56は、第1支柱3に対して第1揺動軸心X1周りで前後方向に揺動可能となっている。これにより、保持部材5は、図1に示す初期位置から図2に示す移送位置まで揺動可能となっている。
【0029】
図5及び図6に示す中央部材51は、クッション材で構成されており、略三角形状に形成されている。中央部材51は、表面51a(図2参照)に図示しない被介護者の胸部を当接させることにより、被介護者の胸部を受けることが可能となっている。また、台座54は、中央部材51背面側に固定されている。台座54は、中央部材51の形状に沿って形成されている。なお、図5及び図6では、説明を容易にするため、後述する第1、2カバープレート522、532を仮想線で示している。また、図5及び図6では、保持部材5が初期位置にある状態を基準として前後方向等を規定している。
【0030】
中央部材51及び台座54は、保持部材5が図1に示す初期位置に揺動することにより、上下方向に略垂直な状態に変位する一方、図2に示す移送位置に揺動することにより、前後方向に略水平な状態に変位する。ここで、略垂直とは、完全な垂直状態の他、公差等により僅かに傾斜する状態を含んでいる。同様に、略水平とは、完全な水平状態の他、公差等により僅かに傾斜する状態を含んでいる。
【0031】
右側部材52及び左側部材53もクッション材で構成されており、略区形状に形成されている。右側部材52は、載置面520に被介護者の右脇が載置されることにより、被介護者の右脇を保持する。左側部材53は、載置面530に被介護者の左脇が載置されることにより、被介護者の左脇を保持する。また、図5及び図6に示すように、右側部材52及び左側部材53の各背面には、バックプレート521、531がそれぞれ設けられている。
【0032】
第1、2リンクアーム57a、57bは、それぞれ左端側がボルト63a、63bによって台座54と揺動可能に連結されており、右端側がボルト64a、64bにより、バックプレート521を介して右側部材52と揺動可能に連結されている。第3、4リンクアーム57c、57dは、それぞれ右端側がボルト63c、63dによって台座54と揺動可能に連結されており、左端側がボルト64c、64dにより、バックプレート531を介して左側部材53と揺動可能に連結されている。こうして、第1~4リンクアーム57a~57dは、中央部材51及び台座54と、右側部材52と、左側部材53とを連結している。また、第1、2リンクアーム57a、57bの各右端側は第1カバープレート522によって覆われており、第3、4リンクアーム57c、57dの各左端側は第2カバープレート532によって覆われている。なお、第1、2カバープレート522、532を省略しても良い。
【0033】
右側部材52は、第1、2リンクアーム57a、57bの各左端側がボルト63a、63b周りでそれぞれ揺動するとともに、第1、2リンクアーム57a、57bの各右端側がボルト64a、64b周りでそれぞれ揺動することより、図5に示す第1位置と、図6に示す第2位置とに変位する。同様に、左側部材53は、第3、4リンクアーム57c、57dの各右端側がボルト63c、63d周りでそれぞれ揺動するとともに、第3、4リンクアーム57c、57dの各左端側がボルト64c、64d周りでそれぞれ揺動することより、図5に示す第1位置と、図6に示す第2位置とに変位する。また、右側部材52及び左側部材53は、第1位置と第2位置との間で変位することによって左右方向の間隔が変化する。具体的には、右側部材52及び左側部材53は、第1位置から第2位置に変位するにつれて、左右方向に接近する。
【0034】
図1及び図2に示すように、ハンドル70は、長手方向に円筒状に延びる複数の鋼材を組み合わせることによって形成されている。また、ハンドル70は、第1連結ロッド55に固定されている。さらに、ハンドル70には、第1~6グリップ701~706が設けられている。なお、ハンドル70の形状は適宜設計可能である。
【0035】
図7及び図8に示すダンパ71は、シリンダ711と、ピストンロッド712と、プッシュロッド713と、第1ブラケット714と、第2ブラケット715と、押圧レバー716とを有している。本実施例では、ダンパ71は公用品を採用しており、具体的には、KYBエンジニアリングアンドサービス株式会社の製品(FLF125-50)を採用している。このため、シリンダ711等の個々の構成についての詳細な説明は省略する。なお、ダンパ71として他の製品を採用しても良い。
【0036】
ダンパ71は、第1支柱3と第2支柱6との間に配置されている。この際、ダンパ71は、長手方向で後端から前端に向かうにつれて上方に上り傾斜した状態で配置されている。ダンパ71では、シリンダ711の前端に第1ブラケット714が固定されており、ピストンロッド712の後端に第2ブラケット715が固定されている。第1ブラケット714は、第1支柱3の第1左柱部3aと第1右柱部3bとの間に進入しつつ、第2ボルト82によって第2連結ロッド56下端に接続されている。こうして、ダンパ71の前端は、第1ボルト81よりも下方となる位置で第2連結ロッド56に接続されている。一方、第2ブラケット715は、第2支柱6の第2左柱部6aと第2右柱部6bとの間に進入した状態で第3ボルト83によって第2左柱部6a及び第2右柱部6bに接続されている。こうして、ダンパ71の後端は、第2支柱6に固定されている。なお、第2、3ボルト82、83は、それぞれ第1ボルト81と平行であり、左右方向に水平に延びている。
【0037】
また、第2ブラケット715には、第2連結ピン717によって押圧レバー716が揺動可能に取り付けられている。また、第2ブラケット715には、動力伝達ワイヤ91が取り付けられている。動力伝達ワイヤ91の一端部91aは、押圧レバー716に係止されている。また、動力伝達ワイヤ91の他端部91bは、ワイヤ挿通孔1gに挿通されて基台1の下方に位置している。
【0038】
ダンパ71は、図7に示すように、プッシュロッド713が押圧レバー716によって押圧されていない状態では禁止状態となり、シリンダ711に対してピストンロッド712が移動不可能となる。一方、ダンパ71は、図8に示すように、プッシュロッド713が押圧レバー716によって押圧されることで許容状態となり、シリンダ711に対してピストンロッド712が移動可能となる。こうして、ダンパ71は、禁止状態では長手方向に伸縮することが禁止され、許容状態では長手方向に伸縮することが許容される。
【0039】
図3に示すように、切替部材72は、フレーム72aと、中央ペダル72bと、左ペダル72cと、右ペダル72dとによって構成されている。中央ペダル72bは、本発明における「第1ペダル」の一例である。
【0040】
フレーム72aは、第1延在部721と、第2延在部722と、第3延在部723と、本体部724と、連結部725とを有している。第1~3延在部721~723は、円筒状をなす鋼材によって形成されている。第1延在部721は、後方に向かって突出する略円弧状をなしつつ左右方向に延びている。第2延在部722と第3延在部723とは左右対称の形状であり、後端から前端に向かうにつれて互いに接近するように延びた後、前端に向かって直線状に延びている。第2延在部722と第3延在部723とは、左右方向に離間して配置されており、各後端が第1延在部721に接続されている。これにより、第2、3延在部722、723は、第1延在部721から前方に向かって延びている。
【0041】
本体部724は金属板によって形成されており、上部が開口する略矩形の箱状をなしている。本体部724は、内部に第2、3延在部722、723の各前端側を進入させつつ、第2、3延在部722、723の各前端側に固定されている。また、本体部724には、第1~4側壁724a~724dが設けられている。第1側壁724aは本体部724の左端に位置しており、第2側壁724bは本体部724の右端に位置している。そして、第3、4側壁724c、724dは、第1側壁724aと第2側壁724bとの間に位置している。第1~4側壁724a~724dには、それぞれ第1~4連結孔73a~73dが形成されている。第1~4連結孔73a~73dは同軸で整列しており、それぞれ第1~4側壁724a~724dを左右方向に貫通している。また、本体部724には、係止部位724eが設けられている。係止部位724eは本体部724の後端であって、第2延在部722と第3延在部723との間に配置されている。
【0042】
連結部725は金属板によって形成されている。連結部725は、本体部724よりも後方に配置されている。連結部725は、第2延在部722と第3延在部723との間に位置しつつ、第2、3延在部722、723に固定されている。また、連結部725の後端には、上下方向に延びる係止溝725aが形成されている。
【0043】
中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dは、いずれも同一の構成であり、金属製の基部720aと、基部720a上に設けられた合成ゴム製のすべり止め部720bとを有している。中央ペダル72bは、第1延在部721の左右方向の中央に固定されている。また、左ペダル72cは、第1延在部721の左端に固定されており、右ペダル72dは、第1延在部721の右端に固定されている。ここで、第1延在部721は、後方に向かって突出する略円弧状をなしつつ左右方向に延びる形状であるため、中央ペダル72bは、左ペダル72c及び右ペダル72dに比べて後方に位置している。また、中央ペダル72bは、左右方向で左ペダル72cと、右ペダル72dとの間に位置している。なお、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dの形状は適宜設計可能である。
【0044】
図7及び図8に示すように、切替部材72は、第1支柱3に連結されているとともに基台1に対して揺動可能に取り付けられている。具体的には、切替部材72は、本体部724が基台1の左第1取付孔1c及び右第1取付孔1dの下方に位置するよう配置されている。また、第1支柱3では、左第1取付孔1cに対して第1左柱部3aの下端を挿通するとともに、右第1取付孔1dに対して第1右柱部3bの下端を挿通している。この際、本体部724内において、第1左柱部3aの下端を第2延在部722と第3側壁724cとの間に位置させるとともに、第1右柱部3bの下端を第3延在部723と第4側壁724dとの間に位置させる。そして、第1連結ピン8を左右方向に水平な状態で第1~4連結孔73a~73dと、第1左柱部3a及び第1右柱部3bの各貫通孔とに挿通する。これにより、第1支柱3と切替部材72とが連結されつつ、切替部材72は、基台1に取り付けられている。そして、切替部材72は、第1連結ピン8の軸心を第2揺動軸心X2とし、第2揺動軸心X2周りで基台1に対して上下に揺動可能となっている。また、第1支柱3は、切替部材72を介して基台1に固定される。図示を省略するものの、第1連結ピン8の左右両端には抜け止めリングが装着され、第1~4連結孔73a~73d及び各貫通孔からの抜け止めが行われる。なお、切替部材72とは別で第1支柱3を基台1に固定しても良い。
【0045】
また、基台1と切替部材72との間には板バネ93が設けられている。板バネ93は、略コ字形状に屈曲されることで形成されている。板バネ93は、上部が固定ネジ94によって基台のバネ取付部1kに固定されており、下部が本体部724の係止部位724eに係止されている。これにより、板バネ93は、自己の弾性力によって切替部材72を上方に向けて付勢している。なお、板バネ93に換えてコイルバネ等によって切替部材72を付勢しても良い。
【0046】
さらに、切替部材72では、連結部725の係止溝725aに動力伝達ワイヤ91の他端部91bが係止される。これにより、動力伝達ワイヤ91を介して連結部725と押圧レバー716とが動力伝達可能に接続されている。
【0047】
切替部材72が基台1に取り付けられることにより、図4に示すように、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dは、それぞれ基台1の後方に配置される。より具体的には、中央ペダル72bは、基台1の右後端部1bと左後端部1aとの間であって、基台1の後方略中央に配置される。左ペダル72cは、基台1の左側であって左後端部1aよりも前方に配置される。右ペダル72dは、基台1の右側であって右後端部1bよりも前方に配置される。つまり、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dのうち、中央ペダル72bは最も後方であって左右方向で左ペダル72cと右ペダル72dとの中間となる位置に配置されている。なお、左ペダル72c及び右ペダル72dは、それぞれ基台1の左側及び右側であれば、例えば基台1の前方側に配置されても良い。
【0048】
図9及び図10に示すように、第1膝保持機構11は、第1案内部材11aと第1膝保持部材11bとを有している。また、第2膝保持機構13は、第2案内部材13aと第2膝保持部材13bとを有している。第1案内部材11aと第2案内部材13aとは左右対称の形状であり、第1膝保持部材11bと第2膝保持部材13bとは左右対称の形状である。以下、第2案内部材13a及び第2膝保持部材13bを基に構成を説明する。
【0049】
図11に示すように、第2案内部材13aは、略矩形の箱状に形成されている。第2案内部材13aの後端には進入口31が形成されている。また、第2案内部材13aには、前後方向に水平に延びる案内溝32が形成されている。案内溝32は、第2案内部材13aの右側面から左側面まで貫通している。さらに、図13に示すように、第2案内部材13aの内部には、前後方向に並ぶ複数の第1係合歯33が形成されている。各第1係合歯33は、それぞれ第2案内部材13aの下方に臨んでいる。
【0050】
図12に示すように、第2膝保持部材13bは、把持部41、進入部42及び接続部43を有している。把持部41は前後方向に直線状に延びている。把持部41の前端には保持ブラケット44が固定されている。図9及び図10に示すように、保持ブラケット44には、支持板45が固定されている。図示を省略するものの、支持板45には、被介護者の右膝を保持可能なクッション材が取り付けられている。また、把持部41の後端には、第7グリップ46が設けられている。なお、図12では、説明を容易にするため、支持板45及び第7グリップ46の図示を省略している。
【0051】
進入部42は、前後方向に延びる板状に形成されており、把持部41の左方に配置されている。また、進入部42の前端には、複数の第2係合歯48が形成されている。各第2係合歯48は、進入部42の前後方向に整列しており、それぞれ上方に臨んでいる。また、進入部42には、進入部42を左右方向に貫通するピン孔42aが形成されている。ピン孔42aは案内ピン47を挿通可能となっている。接続部43は、把持部41と進入部42との間に配置されており、左右方向に延びて把持部41と進入部42とに接続している。
【0052】
図9及び図10に示すように、第2案内部材13aは、進入口31が後方に臨む姿勢で第1右柱部3bの上端に固定されている。この際、第2案内部材13aは、前後方向に略水平な状態で第1右柱部3bに固定されている。また、第2膝保持部材13bは、進入部42を進入口31から第2案内部材13aの内部に進入させている。そして、図13に示すように、ピン孔42aに案内ピン47を挿通することにより、第2案内部材13aは、第2案内部材13aからの抜け止めが行われている。こうして、第2膝保持機構13では、第2膝保持部材13bが第2案内部材13aに取り付けられており、第2案内部材13aに対して前後方向に移動可能となっている。また、案内ピン47は、案内溝32内に配置されており、第2膝保持部材13bの前後方向の移動に伴って、案内溝32に案内されつつ、案内溝32内を前後方向に移動する。ここで、図13の(A)、(C)に示すように、第2膝保持部材13bは、第2案内部材13aに取り付けられた状態において、自重により前端側から後端側に向かうにつれて、下り傾斜する姿勢となる。このため、第2案内部材13aの内部では、各第2係合歯48が各第1係合歯33に対して下方から噛合する。
【0053】
第1膝保持機構11についても同様に、第1案内部材11aが第1左柱部3aの上端に固定されている。また、第1膝保持部材11bが第1案内部材11aに対して前後方向に移動可能に取り付けられている(図9及び図10参照。)。
【0054】
以上のように構成された移乗装置では、例えば被介護者を別の場所に移送したり、被介護者を保持部材に保持させつつ着替え等の介護を行ったりすることができる。なお、被介護者には、高齢者や傷病人の他、身体障がい者等が含まれる。以下、ベッドに腰掛けた被介護者を車椅子に移乗させる場合を挙げつつ、移乗装置の作用を具体的に説明する。
【0055】
まず、被介護者の介護を行う介護者は、保持部材5を図1に示す初期状態に揺動させるとともに、移乗装置を移動させて移乗装置の前方側を被介護者に向けて配置する。そして、被介護者は、第1膝保持部材11bに左膝を保持させるとともに、第2膝保持部材13bに右膝を保持させる。また、被介護者は、中央部材51の表面51aに胸部を当接させつつ、右側部材52の載置面520に右脇を載置し、左側部材53の載置面530に左脇を載置する。この際、右側部材52及び左側部材53は、被介護者の体重によって、図3に示す第1位置から図4に示す第2位置に変位する。こうして、被介護者は、中央部材51によって胸部が保持されるとともに、右側部材52及び左側部材53によって右脇及び左脇がそれぞれ保持される。
【0056】
この状態において、介護者は、ハンドル70を把持しつつ、図1の白色矢印で示すように、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dのいずれかを足で踏み込む。これにより、図8の一点鎖線矢印で示すように、切替部材72は、板バネ93の付勢力に抗しつつ、基台1に対して第2揺動軸心X2周りでD11方向に揺動する。このため、連結部725は、動力伝達ワイヤ91の他端部91bを下方に牽引する。これにより、動力伝達ワイヤ91の一端部91aが押圧レバー716を前方に牽引する。このため、図8の破線矢印で示すように、押圧レバー716は、第2連結ピン717周りで前方に揺動しつつプッシュロッド713を押圧する。この結果、ダンパ71は禁止状態から許容状態に切り替わる。
【0057】
このように、ダンパ71を許容状態に切り替えつつ、介護者は、図1の破線矢印で示すように、ハンドル70をD21方向に押し下げる。このため、図8の二点鎖線矢印で示すように、保持部材5では、第2連結ロッド56が第1揺動軸心X1周りで揺動し、ダンパ71を前方に牽引する。このため、ダンパ71では、シリンダ711からピストンロッド712が突出し始めることから、図8の黒色矢印で示すように長手方向に伸張し始める。そして、介護者がハンドル70をさらにD21方向に押し下げることにより、ダンパ71は長手方向にさらに伸張する。この結果、保持部材5は、初期位置から図2に示す移送状態まで揺動する。このため、中央部材51、右側部材52及び左側部材53によって保持された被介護者は移乗装置に全身が移される。
【0058】
また、介護者は、保持部材5を移送位置まで揺動させた後は、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dから足を離して踏み込みを解除する。このため、図7の一点鎖線矢印で示すように、切替部材72は、板バネ93の付勢力によって第2揺動軸心X2周りでD21方向に揺動する。このため、動力伝達ワイヤ91では、他端部91bが連結部725によって上方に押し上げられる状態となることで、一端部91aが押圧レバー716を後方に押圧する。これにより、押圧レバー716が後方に揺動してプッシュロッド713を押圧しなくなるため、ダンパ71は許容状態から禁止状態に切り替わる。この結果、ダンパ71は長手方向に伸縮できなくなり、保持部材5が揺動不可能となる。こうして、保持部材5は移送位置で固定される。
【0059】
そして、介護者は、被介護者を移乗装置に乗せつつ、移乗装置を車椅子の近傍まで移動させる。また、移乗装置が車椅子の近傍に到着することで、介護者は、基台1の前方側を車椅子に向ける。その後、介護者は、図2の白色矢印で示すように、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dのいずれかを再び足で踏み込む。このため、ダンパ71が許容状態に再び切り替わる。また、図2の破線矢印で示すように、介護者はハンドル70をD22方向に押し上げる。この際、介護者は、必要に応じて第1~6グリップ701~706を適宜持ち替える。
【0060】
これにより、保持部材5では、第2連結ロッド56が移送位置に揺動する場合とは反対方向に揺動する。このため、許容状態にあるダンパ71は長手方向に縮小する。この結果、保持部材5が移送位置から図1に示す初期位置まで揺動する。また、保持部材5を初期位置まで揺動させた後は、介護者は、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dから再び足を離す。これにより、保持部材5は初期位置で固定される。このように保持部材5が初期位置に揺動することにより、中央部材51、右側部材52及び左側部材53によって保持された被介護者は、臀部から車椅子に降ろされる。こうして、移乗装置による被介護者のベッドから車椅子への移乗が完了する。
【0061】
この移乗装置では、切替部材72に中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dが設けられており、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dのいずれによっても、ダンパ71を禁止状態から許容状態に切り替えることができる。ここで、中央ペダル72bは、基台1の後方であって、左右方向の略中央に配置されており、左ペダル72cは、基台1の左方に配置されており、右ペダル72dは、基台1の右方に配置されている。これにより、この移乗装置では、中央ペダル72b、左ペダル72c又は右ペダル72dを選択して踏み込みを行うことにより、介護者は、被介護者の体格や障がいの程度等に応じて被介護者に対する位置を選択しつつ保持部材5を初期位置と移送位置との間で揺動させることが可能となっている。
【0062】
具体的には、この移乗装置では、中央ペダル72bの踏み込みを行う場合には、介護者は、基台1の後方で左右方向の略中央に位置することになり、被介護者とほぼ対向した状態で保持部材5を初期位置と移送位置とに揺動させることができる。これに対し、左ペダル72cの踏み込みを行う場合には、介護者は、基台1、ひいては被介護者の左方に位置しつつ、保持部材5を移送位置から初期位置に揺動させることができる。また、右ペダル72dの踏み込みを行う場合には、介護者は、被介護者の右方に位置しつつ、保持部材5を移送位置から初期位置に揺動させることができる。このように、左ペダル72c又は右ペダル72dの踏み込みを行う場合には、介護者は、被介護者の左側方又は右側方から介添えしつつ、被介護者を保持部材5に保持させたり、保持部材5に保持された被介護者をベッド等に移動させたりすることができる。こうして、この移乗装置によれば、被介護者をより安定的に介護できる。また、この移乗装置では、保持部材5を揺動させるに当たって、中央ペダル72b、左ペダル72c又は右ペダル72dを選択することができる。このため、狭い部屋で被介護者の介護を行う場合等、移乗装置の周囲に十分なスペースを確保し難い場合であっても、中央ペダル72b、左ペダル72c又は右ペダル72dを踏み込むに際して、介護者は基台1、ひいては移乗装置との位置を選択できる。このため、例えば、介護者と基台1との間に前後方向のスペースを確保し難い場合、この移乗装置では、介護者は左ペダル72c又は右ペダル72dの踏み込みを行えば、保持部材5を揺動させることができる。同様に、介護者と基台1との間に左右方向のスペースを確保し難い場合、この移乗装置では、介護者は中央ペダル72bの踏み込みを行えば、保持部材5を揺動させることができる。
【0063】
さらに、この移乗装置では、第1案内部材11aに対して第1膝保持部材11bが前後方向に移動可能であり、第2案内部材13aに対して第2膝保持部材13bが前後方向に移動可能である。この作用について、第2膝保持部材13bを例に説明する。
【0064】
図13の(A)に示すように、第2膝保持部材13bは、第2案内部材13aに取り付けられた状態では、自重によって傾斜する姿勢となり、各第2係合歯48が各第1係合歯33に噛合する。この結果、第2案内部材13aは、第2案内部材13aに対して前後方向に移動することが規制されるため、たとえ被介護者の右膝によって後方に押圧されても、後方に移動することなく右膝を保持することができる。これに対し、介護者が第7グリップ46を通じて把持部41を把持しつつ、図13の(B)の白色矢印で示すように、第2膝保持部材13bの後端側を上方に持ち上げれば、第2案内部材13aの内部において第2膝保持部材13bの前端側が下方に移動し、各第2係合歯48と各第1係合歯33との噛合が解除される。この状態で、同図の黒色矢印で示すように、介護者は、第2膝保持部材13bを後方に牽引することにより、第2案内部材13aに対して第2膝保持部材13bが後方に移動する(図10参照。)。そして、介護者が第2膝保持部材13bから手を放せば、図13の(C)の白色矢印で示すように、第2膝保持部材13bは、再び自重によって傾斜する姿勢となるため、各第2係合歯48が各第1係合歯33に噛合して第2膝保持部材13bの前後方向の移動が再び規制される。この結果、第2膝保持部材13bは、図9に示す位置よりも後方で被介護者の右膝を保持することが可能となる。また、介護者は、第2膝保持部材13bの後端側を上方に持ち上げた状態で第2膝保持部材13bを前方に移動させることも可能である。なお、第1膝保持部材11bについても同様に、第1案内部材11aに対して前後方向に移動させることができる。
【0065】
また、この保持部材では、第1案内部材11aと第2膝保持部材13bとを別々で前後方向に移動させることができる。このため、第1案内部材11aと第2膝保持部材13bとが前後方向に異なる位置で被介護者の左膝及び右膝を保持することが可能となっている。こうして、この移乗装置では、第1膝保持部材11b及び第2膝保持部材13b、ひいては、第1、2膝保持機構11、13は、被介護者の体格等に応じて、左膝及び右膝を保持する位置を調整可能となっている。この点においても、この移乗装置によれば、被介護者をより安定的に介護できる。また、この移乗装置では、簡易な構成によって、第1、2膝保持部材11b、13bを前後方向に移動させることができとともに、第1、2膝保持部材11b、13bの前後方向の移動を規制することができる。
【0066】
したがって、実施例の移乗装置は優れた利便性を発揮する。
【0067】
特に、この移乗装置では、切替部材72がフレーム72aを有している。そして、フレーム72aでは、本体部724が基台1に揺動可能に接続されているとともに、連結部725が動力伝達ワイヤ91を介してダンパ71に動力伝達可能に接続されている。これにより、この移乗装置では、切替部材72の構成を簡素化しつつ、切替部材72を基台1及びダンパ71に好適に接続させることが可能となっている。
【0068】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0069】
例えば、実施例の移乗装置では、切替部材72が中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dを有しているが、これに限らず、切替部材72は、中央ペダル72bの他に、左ペダル72c又は右ペダル72dの一方を有する構成であっても良い。さらに、切替部材72は、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dの他にペダルを有していても良い。
【0070】
また、中央ペダル72b、左ペダル72c及び右ペダル72dは、それぞれ個別にダンパ71と動力伝達可能に接続されても良い。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は移乗装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…基台、2a~2d…キャスタ、3…第1支柱(支柱)、5…保持部材
7…操作機構、51…中央部材、52…右側部材、53…左側部材、70…ハンドル
71…ダンパ、72…切替部材、72a…フレーム
72b…中央ペダル(第1ペダル)、72c…左ペダル(第2ペダル)
72d…右ペダル(第2ペダル)X1…第1揺動軸心(揺動軸心)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13