(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023083808
(43)【公開日】2023-06-16
(54)【発明の名称】プリンタ印刷安定機構
(51)【国際特許分類】
B41J 2/325 20060101AFI20230609BHJP
B41J 25/304 20060101ALI20230609BHJP
【FI】
B41J2/325 A
B41J25/304 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021197719
(22)【出願日】2021-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤沢 淳一
【テーマコード(参考)】
2C064
2C065
【Fターム(参考)】
2C064CC07
2C064DD02
2C064DD12
2C065AA01
2C065AB09
2C065AC03
2C065DA36
(57)【要約】
【課題】搬送部材がサーマルヘッドの圧接時に動いてしまうのを抑制でき、濃度ムラの発生等の現象が発生するのを抑制でき、かつ既存のプリンタに装着できるプリンタ印刷安定機構を提供する。
【解決手段】2個のくさび状部材が支持フレーム65に並べて装着され、対向する面が長手方向に対して傾いた斜面となっており、第1のくさび状部材62の長さは支持フレームの幅と同等であり、両端部分が支持フレームの並び方向に長い長孔に挿入されて支持され、第2のくさび状部材63の長さは支持フレームの幅よりも短く、第2のくさび状部材は回転軸64の回転を長手方向の直線運動に変換する機構を有し、回転軸が回転することにより長手方向にスライド可能であり、つまみ61を回すことで回転軸が回転して第2のくさび状部材がスライドするのに応じて、斜面に押されて第1のくさび状部材が並び方向に押し出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2個のくさび状部材と支持フレームを有し、該2個のくさび状部材は、互いに対向する面が接する様に並べられて、その長手方向の両端が前記支持フレームに支持されて装着され、
前記互いに対向する面は、前記長手方向に対して、互いが並ぶ方向である並び方向に傾いた斜面となっており、
前記2枚のくさび状部材のうち、
第1のくさび状部材の長手方向の長さは支持フレームの幅と同等であり、両端部分が支持フレームの前記並ぶ方向に長い長孔に挿入されて支持され、
第2のくさび状部材の長手方向の長さは支持フレームの幅よりも短く、
第2のくさび状部材は回転軸の回転を長手方向の直線運動に変換する機構を有し、該回転軸が回転することにより長手方向にスライド可能であり、
該回転軸の一端につまみを有しており、
つまみを回すことで該回転軸が回転して第2のくさび状部材がスライドするのに応じて、前記斜面に押されることで第1のくさび状部材が前記並び方向に押し出されることを特徴とするプリンタ印刷安定機構。
【請求項2】
前記回転軸の回転を長手方向の直線運動に変換する機構がボールねじであることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ印刷安定機構。
【請求項3】
少なくとも、インクリボンからインクを熱転写することで中間転写フィルム上に所望の画像を印刷する一次転写部、一次転写部で中間転写フィルム上に形成された画像を被転写体であるカードへ転写する二次転写部、一次転写部から二次転写部へ中間転写フィルムを搬送する主搬送部からなる印刷ユニットを有し、
前記一次転写部に隣接して、請求項1または2のいずれかに記載のプリンタ印刷安定機構が装着され、前記第1のくさび状部材が押し出されたときに前記印刷ユニットに当接して支持することを特徴とする間接転写型プリンタ。
【請求項4】
請求項1または2のいずれかに記載のプリンタ印刷安定機構を装着した間接転写記録用の中間転写フィルムカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード等の被転写体向けのプリンタの印刷品質の安定化に係る機構に関し、特に間接転写型熱転写方式のプリンタにおける一次転写時のサーマルヘッドとプラテンローラーの圧接力を安定させて印刷不良を抑制する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写インキを塗布した熱転写リボンとサーマルヘッドを用いて、画像書き込み部(一次転写部)においてフィルム状の中間転写フィルムに熱圧により画像を書き込み、次に、二次転写部において、中間転写フィルム上の画像を、ヒートローラーを用いてカード等の被転写体に熱圧して、前記画像を被転写体に転写する間接転写方式(中間転写方式とも称される)のプリンタが知られている。
【0003】
間接転写方式のプリンタ(以下、「間接転写プリンタ」または単に「プリンタ」と称する)は、特許文献1、2に例示される様に、共に薄いフィルム状で長尺の熱転写リボンと中間転写フィルムとを一次転写部から二次転写部へと装置内で取り回すことから、そのままでは取扱いが面倒であり、特により薄い構成の熱転写リボンは、装着や交換の際にシワが寄ったり、ゴミや埃が付着したりしやすい。そこで、熱転写リボンを所定の形状のカセットに収納した形態として簡単に装着できるようにしたプリンタが提案されている。例えば特許文献3、4には、熱転写リボンをカセットに収納した直接転写型のプリンタが例示され、同様のカセットは間接転写プリンタにおいても適用が可能である。
【0004】
熱転写リボンや中間転写フィルムを収納したカセットは、使用者がアクセスする側(操作側とする)から挿入して装着されるが、熱転写リボンや中間転写フィルムが取り廻される部材であるサーマルヘッド、プラテンローラー、搬送ローラー、ヒートローラーなどの部材は、各部材の間に熱転写リボンや中間転写フィルムが取り廻せるような構造とされてフレーム材に取り付けられ、操作側と反対側(駆動側とする)に装備されたモーター、ギア、ベルトなどの駆動機構に連結された構造とされるのが一般的である。この場合、
図11に示す様に、プラテンローラー101、搬送ローラー、ヒートローラーなどの部材はいわゆる片持ちの構造でフレーム材に支持され、部材の操作側の端部は剛性の高いしっかりとしたフレーム80に固定されていない構造となっている。
【0005】
このため、一次転写時においてプラテンローラー101にサーマルヘッド102が圧接されたときに、その加圧及び搬送ローラーとニップローラーの接触時の加圧により、これらの搬送部材の操作側の端部側が撓んで熱転写リボンや中間転写フィルムの搬送の精度が低下し、また所定の熱エネルギーがかからないことで、各色が重ならない状態や、濃度ムラの発生、熱転写リボンや中間転写フィルム自体の搬送ズレといった現象が起こる、という問題があった。またこの問題の解決のためにプリンタの構造を変更しようとすると大幅な改造が必要であり、既存のプリンタには対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-80753号公報
【特許文献2】特開2003-211761号公報
【特許文献3】特開2003-104591号公報
【特許文献4】特開2001-260462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、片持ち構造の間接転写プリンタにおいて、プラテンローラー、搬送ローラーなどの搬送部材がサーマルヘッドの圧接時に動いてしまうのを抑制でき、各色が重ならない現象や、濃度ムラの発生、熱転写リボンや中間転写フィルム自体の搬送ズレといった現象が発生するのを抑制でき、かつ既存のプリンタに装着することもできる簡易な構成のプリンタ印刷安定機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、
間接転写プリンタのプリンタ印刷安定機構であって、
2個のくさび状部材と支持フレームを有し、該2個のくさび状部材は、互いに対向する面が接する様に並べられて、その長手方向の両端が前記支持フレームに支持されて装着され、
前記互いに対向する面は、前記長手方向に対して、互いが並ぶ方向である並び方向に傾いた斜面となっており、
前記2枚のくさび状部材のうち、
第1のくさび状部材の長手方向の長さは支持フレームの幅と同等であり、両端部分が支持フレームの前記並ぶ方向に長い長孔に挿入されて支持され、
第2のくさび状部材の長手方向の長さは支持フレームの幅よりも短く、
第2のくさび状部材は回転軸の回転を長手方向の直線運動に変換する機構を有し、該回転軸が回転することにより長手方向にスライド可能であり、
該回転軸の一端につまみを有しており、
つまみを回すことで該回転軸が回転して第2のくさび状部材がスライドするのに応じて、前記斜面に押されることで第1のくさび状部材が前記並び方向に押し出されることを特徴とするプリンタ印刷安定機構である。
【0009】
上記プリンタ印刷安定機構において、
前記回転軸の回転を長手方向の直線運動に変換する機構がボールねじであって良い。
【0010】
また本発明の別の側面は、
少なくとも、インクリボンからインクを熱転写することで中間転写フィルム上に所望の画像を印刷する一次転写部、一次転写部で中間転写フィルム上に形成された画像を被転写体であるカードへ転写する二次転写部、一次転写部から二次転写部へ中間転写フィルムを搬送する主搬送部からなる印刷ユニットを有し、
前記一次転写部に隣接して、上記のプリンタ印刷安定機構が装着され、前記第1のくさび状部材が押し出されたときに前記印刷ユニットに当接して支持することを特徴とする間接転写型プリンタである。
【0011】
また本発明の別の側面は、
上記のプリンタ印刷安定機構を装着した間接転写記録用の中間転写フィルムカセットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のプリンタ印刷安定機構によれば、一次転写時に搬送部材が動いてしまうことによる色重ねズレ、濃度ムラ、中間転写フィルムの搬送ズレといった現象の発生を抑制でき、印画品質が不良のカードなどの発生を削減できるプリンタが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明のプリンタ印刷安定機構の一形態をカードプリンタに装着した態様の説明図である。
【
図2】本発明のプリンタ印刷安定機構を装着したカードプリンタの要部を示す説明図である。
【
図3】本発明のプリンタ印刷安定機構を装着したカードプリンタの要部を側方から見た説明図である。
【
図4】本発明のプリンタ印刷安定機構の一形態が印刷ユニットを支持している状態の説明図である。
【
図5】本発明のプリンタ印刷安定機構を装着したカードプリンタの動作中の態様を示す説明図である。
【
図6】本発明のプリンタ印刷安定機構を装着したフィルムカセットの概要図である。
【
図7】本発明のプリンタ印刷安定機構の装着工程を示すフローチャートである。
【
図8】本発明のプリンタ印刷安定機構を装着、印刷、取り外しの工程のフローチャートである。
【
図9】本発明のプリンタ印刷安定機構の一形態を別構成のカードプリンタに装着した態様の説明図である。
【
図10】本発明のプリンタ印刷安定機構の一形態が印刷ユニットを支持している状態の説明図である。
【
図11】従来のカードプリンタの要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。また、以下において同等の部材等には同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0015】
本発明のプリンタ印刷安定機構およびそれを装着したカードプリンタについて図面を用いて説明する。
図1は本発明のプリンタ印刷安定機構の一形態をカードプリンタに装着した態様の説明図である。また
図2は、上記のプリンタ印刷安定機構を装着したカードプリンタの要部を示す説明図である。
【0016】
本発明にかかるカードプリンタ1は、間接熱転写型のプリンタであり、
図2に示すように、カード71を搬送する搬送テーブル70などからなる搬送ユニット、カード71に書き込まれたデータを読み取るまたは書き出す、例えばICカードリーダや磁気リーダ等の記録ユニット(図示せず)を有し、またカード71に形成される画像を印刷する機構として、インクリボン53からインクを熱転写することで中間転写フィルム43上に所望の画像を印刷する一次転写部10、一次転写部10で中間転写フィルム43上に形成された画像を被転写体であるカード71へ転写する二次転写部20、一次転写部10から二次転写部20へ中間転写フィルム43を搬送する主搬送部30を有している。
【0017】
これらの各部は、所定の剛性と強度を有するフレーム材80の操作側に取り付けられ、フレーム材80に対して操作側と反対側のモーター、ギア、ベルトなどの駆動機構に連結されている。印画に直接関連する一次転写部10、二次転写部20、主搬送部30をまとめて印刷ユニット2と称することとする。すなわち印刷ユニット2の各部は、いわゆる片持ちの構造でフレーム材80に取り付けられている。印刷ユニット2には、
図3の様に各部の一面と操作側の端部を支持して覆うカバー材15が設けられている。
【0018】
搬送ユニット部は、カード71をプリンタ内に搬送し、所望の記録装置、例えばICリーダや磁気リーダ等の記録を実施後、印刷ユニットに搬送され、印刷後、排紙する。
【0019】
インクリボン53はリボンカセット50に収納されており、巻き出しロール51から巻
き取りロール52にわたって張り渡され、印刷ユニット2内において一次転写部10のサーマルヘッド12とプラテンローラー11の間を通過する。中間転写フィルム43は、フィルムカセット40に収納されており、巻き出しロール41から巻き取りロール42にわたって張り渡され、印刷ユニット2内において一次転写部10のサーマルヘッド12とプラテンローラー11の間、主搬送部30の搬送ローラー31とニップローラー34の間、二次転写部10のヒートローラー21と被転写体であるカード71の間を順次通過する。
【0020】
中間転写フィルム43はフィルムカセット40に装着されるフィルムの内側に受像層/転写層が塗布されていることから、フィルムカセット40のガイドを通して中間転写フィルムの内側が外向きになるようにセットされている。インクリボン53および中間転写フィルム43を供給する際は、これらのカセットを新たなものに交換することで供給される。
【0021】
実際に一次転写および二次転写を行う場合の本発明のプリンタ印刷安定機構60が装着された間接転写型のカードプリンタの動作の態様を、
図4、
図5も併せ用いて説明する。
【0022】
一次転写部10は、プラテンローラー11とサーマルヘッド12の間に中間転写フィルム43及びインクリボン53が配置され、プラテンローラー11は、支持軸14を中心にアーム13が回動することでサーマルヘッド12側へ移動して圧接され、中間転写フィルム43とインクリボン53を密着させ、サーマルヘッド12からインクリボン53へ所望の画像を印刷するためのエネルギーをかけることでインクリボン53上の熱転写インクを中間転写フィルム43上に転写させる。この動作を所定の色数分、例えばシアン、マゼンダ、イエローの3色分、順番に繰り返し、中間転写フィルム43上にインクを転写させて画像を形成し、最後に接着層であるプライマーを転写する。
【0023】
プラテンローラー11は、
図1に示す様に、支持軸14がカードプリンタの各部材が取り付けられる剛性の高いフレーム材80を貫通する構造でフレーム材80の操作側に取り付けられ、いわゆる片持ちの構造で取り付けられている。プラテンローラー11には前述の様にカバー材15が設けられ、支持軸14の操作側の端部を支持している。
【0024】
主搬送部30は、主搬送ローラー31と、フィルムを挟むニップローラー34、ニップローラー34が取り付けられる基部32、ニップローラー34を主搬送ローラー31に圧接する様にニップローラー34と基部32を移動させるアーム33を有している。一次転写部10で印刷されたフィルムを二次転写部20へ安定させて搬送するため、アーム33が回動して基部32と共にニップローラー34が主搬送ローラー31側へ移動し、中間転写フィルム43をローラーで挟むことにより印刷されたフィルムを安定化させて搬送する。
【0025】
二次転写部20は、一次転写部10で中間転写フィルム43上に形成された画像のプライマー側と被転写体であるカード71の表面とが接することができるように移動可能に配置され、中間転写フィルム43のプライマーの反対側からプライマーが溶融する温度に加熱されたヒートローラー21を押しあてた状態でカード71と中間転写フィルム43を一緒に移動させることで、所望の画像が印刷された中間転写フィルム43からカード71表面に画像を転写する。ヒートローラー21に対向する部位にニップローラー(図示せず)を設けても良い。
【0026】
一次転写部10のプラテンローラー11の側に隣接して、プリンタ印刷安定機構60が装着される。
図1にプリンタ印刷安定機構60をカードプリンタに装着した態様の説明図を示す。プリンタ印刷安定機構60は、2本のくさび状固定治具が支持フレーム65にその両端部を支持されて並んで、互いに対向する面で接する様に装着されている。2本のく
さび状固定治具のうち第1のくさび状部材であるくさび状固定治具B62が一次転写部10側に、第2のくさび状部材であるくさび状固定治具A63がくさび状固定治具B62を挟んで一次転写部10と反対側に装着されている。従って、くさび状固定治具B62のくさび状固定治具A63と反対側の面は、印刷ユニット2に近接して対向し、具体的にはカバー材15に近接して対向している。
【0027】
くさび状固定治具B62の長手方向の長さは支持フレーム65の枠の幅と同等であり、支持軸が支持フレーム65を貫通して支持フレーム65に支持されている。支持軸が貫通するために設けられた孔はくさび状固定治具B62とくさび状固定治具A63が並ぶ方向である並び方向に長い長孔66となっているため、くさび状固定治具B62の支持軸はこの長孔66の中をスライド可能となっている。
【0028】
くさび状固定治具A63の長手方向の長さはくさび状固定治具B62の長さよりも短い。くさび状固定治具A63は、回転軸の回転運動を直線運動に変換する機構を備えた支持機構で支持フレーム65に支持されている。回転軸の回転運動を直線運動に変換する機構は例えばボールねじ64であり、操作側の端部に設けたつまみ61を回すことで、ボールねじ64が回転し、それに伴いくさび状固定治具A63は長手方向にスライド可能となっている。回転運動を直線運動に変換する機構はボールねじに限らず、同様の機能を持つ公知の構造、例えばウォームギアとラックギアの組み合わせなど、を適宜適用できる。
【0029】
くさび状固定治具B62と、くさび状固定治具A63とが対向して接している面は、それぞれ長手方向に対して前記並び方向に傾いた斜面となっている。すなわち
図1で説明すれば、くさび状固定治具B62は駆動側の幅が広く、操作側が狭くなっており、くさび状固定治具A63は反対に駆動側の幅が狭く、操作側が広くなっていることで、両者が対向して接している面は斜面となっている。斜面の傾きは両治具において同等となっているので、くさび状固定治具B62とくさび状固定治具A63とが対向して接している。
【0030】
つまみ61を左右に回すと、それに応じてボールねじ64が回転し、くさび状固定治具A63は操作側または駆動側にスライドする。
図4に示す様に、つまみ61をこの例では右回りに回すことで、くさび状固定治具A63がつまみ61の反対側である駆動側にスライドして行き、くさび状固定治具B62の支持軸が貫通する孔は長孔66で支持軸はこの長孔66の中をスライド可能であるので、くさび状固定治具B62は長手方向に直交する方向である印刷ユニット2の方向に押し出され、くさび状固定治具A63がボールねじ64のつまみ61と反対側の端部に達する前に、プラテンローラー11を支持している印刷ユニット2のカバー材15に当接して印刷ユニット2を支える態様となる。
【0031】
逆に、つまみ61をこの例では左回りに回すことで、くさび状固定治具A63がつまみ61の側である操作側にスライドし、くさび状固定治具B62は元の方向、すなわち印刷ユニット2と反対の方向に戻る。このときスムーズに戻る様に、印刷ユニット2と反対の方向に付勢する部材、例えばコイルスプリング、板バネ、弾性ゴム板などの弾性部材をくさび状固定治具B62に装着しても良い。くさび状固定治具A63がつまみ61側の端部に達したとき、くさび状固定治具B62は印刷ユニット2から最も遠ざかった位置となる。この位置が基準位置となる。
【0032】
くさび状固定治具A63の長手方向の長さおよび前記斜面の傾きの角度は、くさび状固定治具A63がボールねじ64のつまみ61と反対側の端部に達するまでに、くさび状固定治具B62が印刷ユニット2のカバー材15に当接するように設定される。またくさび状固定治具A63およびくさび状固定治具B62の材質は、所定の強度を有し、加工に適した材質であれば特に制限はなく、金属、硬質プラスチックなどが例示できる。またその厚みは、印刷ユニット2を支持したときに変形が生じない強度となる厚みを設定すればよ
い。
【0033】
この結果、プリンタ1の動作時に、一次転写部10でプラテンローラー11がサーマルヘッド12に圧接されたとき、また主搬送部30でニップローラー34が主搬送ローラー31に圧接されたとき、
図5に黒矢印で示したように、くさび状固定治具B62がカバー材15に当接して印刷ユニット2を支える。このため片持ち構造の各部の操作側の端部側が、力が加えられた方向(
図5では左側)に撓んでしまうことがなく、プラテンローラー11とサーマルヘッド12の押圧にムラが生じて所定の熱エネルギーがかからないことで各色の重ねがずれたり、濃度ムラが発生したり、主搬送部30のフィルム搬送の精度が低下したり、フィルム自体の搬送ズレが起こったりする、といった現象を防止できる。
【0034】
上述のプリンタ印刷安定機構60は、プリンタ1自体、例えばフレーム材80に固定して設けることもできるが、例えば
図6に示す様にフィルムカセット40内部に装着することもできる。プリンタ印刷安定機構60をフィルムカセット40内に装着し、ボールねじ64と繋がったつまみ61をフィルムカセット40の外側表面に配置し、つまみ61を回すことで上述の様にくさび状固定治具B62と印刷ユニット2のカバー材15を密着させるようにすることもできる。
【0035】
プリンタ印刷安定機構60をフィルムカセット40に装着することで、プリンタ1本体側に何ら変更や改造をする必要なく、従来と同様の動作でフィルムカセット40を装着し、装着後、つまみ61を回転することでプリンタ印刷安定機構60内のくさび状固定治具B62が印刷ユニット2側へ移動させて印刷ユニット2を支えることができる。
【0036】
くさび状固定治具での固定動作をフロー1に示す。詳細は上に述べたとおりであるので説明は省略する。
開始
S1:つまみを左に回す。
S2:くさび状固定治具Aがつまみ側へ移動する
S3:くさび状固定治具Bが印刷ユニットと反対側へ移動する
S4:つまみが回らない:yes:S6へ no:S5へ
S5:つまみを回す→S4へ
S6:くさび状固定治具が基準位置に収納
S7:つまみを右に回す
S8:くさび状固定治具Aがつまみから遠ざかる方向に移動する
S9:くさび状固定治具Bが印刷ユニットの方向に移動する
S10:つまみが回らない:yes:S12へ no:S11へ
S11:つまみを回す→S10へ
S12:くさび状固定治具が印刷ユニットに接触
固定完了
【0037】
くさび状固定治具を使った印刷作業の概要をフロー2に示す。
開始
S1:インクリボンのカセットをプリンタに装填する
S2:くさび状固定治具のつまみを左に回す
S3:つまみが回らない:Yes:S5へ No:S4へ
S4:つまみを回す→S3へ
S5:中間転写フィルムのカセットをプリンタに装填する
S6:くさび状固定治具のつまみを右に回す
S7:つまみが回らない:Yes:S9へ No:S8へ
S8:つまみを回す→S7へ
S9:くさび状固定治具のセット完了
S10:印刷開始
S11:印刷終了
S12:くさび状固定治具のつまみを左に回す
S13:つまみが回らない:Yes:S15へ No:S14へ
S14:つまみを回す→S13へ
S15:くさび状固定治具の基準位置への収納完了
S16:フィルムカセットを取り外す
S17:リボンカセットを取り外す
完了
【0038】
本発明のプリンタ印刷安定機構60は、
図9、
図10に示すような構成のプリンタにも適用可能である。すなわち、一次転写部において、プラテンローラー11がサーマルヘッド12に回動して圧接される代わりに、プラテンローラー11は固定され、サーマルヘッド12がプラテンローラーに向かって移動して圧接する構成である。この様な構成においても、同様の問題が発生するため、本発明のプリンタ印刷安定機構60が有効に機能する。
【符号の説明】
【0039】
1・・・カードプリンタ
2・・・印刷ユニット
10・・・一次転写部
11・・・プラテンローラー
12・・・サーマルヘッド
13・・・アーム
14・・・支持軸
15・・・カバー材
20・・・二次転写部
21・・・ヒートローラー
30・・・主搬送部
31・・・主搬送ローラー
32・・・基部
33・・・アーム
34・・・ニップローラー
40・・・フィルムカセット
43・・・中間転写フィルム
50・・・リボンカセット
53・・・インクリボン
60・・・プリンタ印刷安定機構
61・・・つまみ
62・・・くさび状固定治具B
63・・・くさび状固定治具A
64・・・ボールねじ
65・・・支持フレーム
70・・・搬送テーブル
71・・・カード
80・・・フレーム材