(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084442
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】装飾シート、包装箱、及び、包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20230612BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20230612BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B32B33/00
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198622
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】原田 真緒
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
(72)【発明者】
【氏名】黒木 航
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD02
3E086BA04
3E086BA13
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3E086DA08
4F100AB01E
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4F100AK01A
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4F100JK06
(57)【要約】
【課題】水分と接触しても、十分な耐久性を維持することが可能な装飾シートを提供すること。
【解決手段】耐水紙11と、光硬化樹脂層12と、接着剤層14と、基材層16と、金属膜18と、をこの順に備える装飾シート10を提供する。耐水紙11と光硬化樹脂層12とは直接接しており、耐水紙11は、光硬化樹脂層12を構成する樹脂成分を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水紙と、光硬化樹脂層と、接着剤層と、基材層と、金属膜と、をこの順に備える、装飾シート。
【請求項2】
前記耐水紙と前記光硬化樹脂層とが直接接しており、
前記耐水紙は、前記光硬化樹脂層を構成する樹脂成分を含む、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項3】
前記耐水紙は顔料含有層を有し、前記光硬化樹脂層を構成する樹脂成分が前記顔料含有層に浸透している、請求項1又は2に記載の装飾シート。
【請求項4】
前記光硬化樹脂層は、(メタ)アクリル系樹脂を含むUV樹脂硬化物で構成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項5】
前記耐水紙が、(メタ)アクリレートモノマー及び/又はその重合体を含む、請求項4に記載の装飾シート。
【請求項6】
23℃の水に24時間浸漬したときのエッジウィック値が1.5mg/mm2以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項7】
少なくとも一方の表面に、凹部又は貫通孔を含む罫線を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項8】
前記耐水紙と前記光硬化樹脂層の間にインキ層を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項の装飾シートで構成される箱体を備える包装箱。
【請求項10】
請求項9に記載の包装箱と、前記包装箱に収容される被包装物と、を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾シート、包装箱、及び、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
アルコール等の洗浄液、又は化粧水等を繊維素材に含浸させたウェットティッシュを収容する包装容器として、プラスチック製の包装袋が知られている。例えば、特許文献1では、ウェットティッシュを収納し、ウェットティッシュを取り出す開口部を有する包装袋と、開口部の周囲にはく離可能に接着される開閉ラベルと、を有する包装体が提案されている。
【0003】
一方、包装容器の意匠性を向上させるため、紙基材上に金属光沢を有する金属膜を有するプラスチックフィルムを備えた装飾シートが知られている。特許文献2では、このような装飾シートを用いた容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-85968号公報
【特許文献2】特開2019-5940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチック製の容器を一部でも紙製のものに置き換えることができれば、廃棄物の削減及び資源の有効利用を図ることができる。ところが、特許文献1のように液体を含む素材の容器を紙製のものにすると、紙に液体が浸透してしまい、十分な強度を維持することができない。補強のためには、特許文献2のように、樹脂と紙基材との積層体とすることが考えられるものの、本発明者らの検討によれば、樹脂と紙基材との界面が剥がれやすく、十分な耐久性を維持することが難しいことが分かった。
【0006】
本開示では、水分と接触しても、十分な耐久性を維持することが可能な装飾シートを提供する。また、本開示では、水分を含む被包装物を包装しても、十分な耐久性を維持することが可能な包装箱及び包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一つの側面において、耐水紙と、光硬化樹脂層と、接着剤層と、基材層と、金属膜と、をこの順に備える、装飾シートを提供する。この装飾シートは、水分に対する耐久性に優れる耐水紙を備えるとともに、光硬化樹脂層を備える。この光硬化樹脂層も、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂よりも耐水性に優れる。したがって、上記装飾シートは、水分と接触しても、十分な耐久性を維持することができる。
【0008】
上記装飾シートでは、耐水紙と光硬化樹脂層とが直接接しており、耐水紙は光硬化樹脂層を構成する樹脂成分を含むことが好ましい。これによって、光硬化樹脂層と耐水紙との接着強度が十分に高くなり、耐久性を一層高くすることができる。また、耐水紙の耐水性が更に向上し、装飾シートの耐水性を高くすることができる。
【0009】
上記耐水紙は顔料含有層を有し、光硬化樹脂層を構成する樹脂成分が顔料含有層に浸透していることが好ましい。顔料含有層は、通常、粒子状の顔料を含むため表面が平滑であり、隣接する層と密着し難い傾向にある。しかしながら、光硬化樹脂層を構成する樹脂成分が顔料含有層に浸透していることによって、光硬化樹脂層と顔料含有層との接着強度を十分に高くすることが可能となり、耐久性を十分に高くすることができる。また、耐水紙が顔料含有層を有することによって装飾性を向上することができる。
【0010】
上記光硬化樹脂層は、(メタ)アクリル系樹脂を含むUV樹脂硬化物で構成されることが好ましい。このようなUV樹脂硬化物は、密着性に優れるとともに耐水性にも優れる。このため、装飾シートが水分と接触しても、装飾シートの強度を十分に高く維持することができる。耐水紙は、(メタ)アクリレートモノマー及び/又はその重合体を含むことが好ましい。これによって、耐水紙の耐水性を一層高くすることができる。
【0011】
上記装飾シートを23℃の水に24時間浸漬したときのエッジウィック値が1.5mg/mm2以下であることが好ましい。このような装飾シートは耐水性に一層優れる。
【0012】
上記装飾シートは、少なくとも一方の表面に、凹部又は貫通孔を含む罫線を有することが好ましい。このような装飾シートを用いれば、包装箱等の組立体を、簡便に作製することができる。
【0013】
上記装飾シートは、耐水紙と光硬化樹脂層の間にインキ層を備えることが好ましい。これによって、デザイン性を向上することができる。
【0014】
本開示は、一つの側面において、上述のいずれかの装飾シートで構成される箱体を備える包装箱を提供する。この包装箱は、上述のいずれかの装飾シートで構成される箱体を備える。このため、水分を含む被包装物を包装しても、十分な耐久性を有する。例えば、粘着性を有するシール面を有し、箱体の開口部を封止する蓋ラベルの開閉操作を繰り返し行っても、箱体を構成する装飾シートがはく離するのを十分に抑制することができる。
【0015】
本開示は、一つの側面において、上記包装箱と、当該包装箱に収容される被包装物と、を備える、包装体を提供する。この包装体は上述の包装箱を備えることから、水分を含む被包装物を包装しても、十分な耐久性を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
水分と接触しても、十分な耐久性を維持することが可能な装飾シートを提供することができる。また、水分を含む被包装物を包装しても、十分な耐久性を維持することが可能な包装箱及び包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る装飾シートを示す断面図である。
【
図2】
図1の装飾シートにおける耐水紙の顔料含有層の内部構造を模式的に示す図である。
【
図3】実施例1の装飾シートのはく離面における赤外分光分析(IR)の測定結果である。
【
図4】実施例2の装飾シートのはく離面における赤外分光分析(IR)の測定結果である。
【
図5】比較例3の装飾シートのはく離面における赤外分光分析(IR)の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。
【0019】
図1の装飾シート10は、耐水紙11と、光硬化樹脂層12と、接着剤層14と、基材層16と、金属膜18と、をこの順に備える。耐水紙11は、装飾シート10の表面10A側から、樹脂及びパルプ等の紙料を含む紙層11aと、顔料を含有する顔料含有層11bと、をこの順に有する。顔料含有層11bに含まれる顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウム等の白色顔料が挙げられる。ただし、顔料の種類はこれらに限定されず、その他の顔料として、紫色顔料及び青色顔料等の種々の顔料が挙げられる。顔料含有層は上述の中から選ばれる一種の顔料を単独で含んでいてもよいし、二種以上の顔料を組み合わせて含んでいてもよい。顔料含有層11bは、粒子状の顔料とともにこれらを結着するバインダ、填料及び蛍光染料等を含んでいてよい。顔料含有層11bは、クレー層と称される層であってもよい。
【0020】
23℃の水に24時間浸漬して測定される耐水紙11のエッジウィック値は、好ましくは4mg/mm2未満であり、より好ましくは2mg/mm2未満であり、さらに好ましくは1.6mg/mm2未満である。これによって、装飾シート10の耐水性を十分に高くすることができる。
【0021】
本明細書におけるエッジウィック値は以下の手順で測定することができる。測定対象の耐水紙の表側と裏側の表面全体にラミネートフィルムを貼り付ける。その後、長方形(15mm×100mm)にカットして試験サンプルを得る。水浸漬前に試験サンプルの質量を測定する。試験サンプルを23℃の水中に1~24時間浸漬した後、水中から取り出して試験サンプルの質量を測定する。試験サンプルの水浸漬前後の質量から、以下の式でエッジウィック値を算出することができる。
エッジウィック値=試験サンプルの浸漬前後の質量差/カット後の耐水紙の4端面の合計面積
【0022】
耐水紙11の秤量は、例えば100~800g/m2であってよく、200~600g/m2であってよい。これによって、十分な剛性と良好な組み立て性を両立することができる。耐水紙11の厚みは、100~800μmであってよく、200~600μmであってもよい。
【0023】
装飾シート10の一方の表面10Aをなす耐水紙11の紙層11aは、樹脂を含有することから、表面10Aから水分を吸収することを抑制することができる。なお、変形例では、紙層11aの表面を覆うように、例えばアクリル樹脂で構成される樹脂コート層を有していてもよい。紙層11aに含まれる樹脂と、樹脂コート層を構成する樹脂の種類は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。樹脂コート層に含まれる樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。
【0024】
耐水紙の構造は上述のものに限定されず、樹脂成分を含有することによって耐水性が向上した種々の形態のものを用いることができる。耐水紙は、公知の方法で作製してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、三菱製紙株式会社製の「N三菱耐水」、及び、日本製紙株式会社製の「エコバリーV」及び「エコバリーK」等が挙げられる。
【0025】
上記装飾シート10における耐水紙11の顔料含有層11bは、光硬化樹脂層12に直接接していることが好ましい。耐水紙11は顔料含有層11bを備えることによって、装飾シート10の美粧性及びデザイン性を向上することができる。一方で、顔料含有層11bは、顔料含有層11bは水分を吸収しやすいうえに、粒子状の顔料を含むことで表面が平滑になり、他の層との密着性が損なわれやすくなる。本実施形態では、顔料含有層11bとの密着性に優れ、耐水性にも優れる光硬化樹脂層12が顔料含有層11bに接着しており、顔料含有層11bの一方面全体が光硬化樹脂層12に覆われている。これによって、顔料含有層11bと光硬化樹脂層12との界面に水分が侵入することを抑制できる。したがって、水分と接触しても、装飾シート10の優れた耐久性を十分に維持することができる。
【0026】
光硬化樹脂層12は、感光性樹脂組成物に光を照射することによって硬化した樹脂硬化物で構成される。樹脂硬化物は、感光性樹脂組成物に紫外線を照射することによって硬化したUV樹脂硬化物であることが好ましい。光硬化樹脂層12がUV樹脂硬化物で構成されることによって、耐水性を一層向上することができる。同様の観点から、光ラジカル重合型UV硬化樹脂であることが好ましい。UV樹脂硬化物は、耐水性をさらに向上する観点から、(メタ)アクリル系樹脂を含むことが好ましい。(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するモノマーの重合体として得ることができる。(メタ)アクリル系樹脂は、このようなモノマーと、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基を有するオリゴマーとを重合させて得てもよい。モノマーとしては、(メタ)アクリレートモノマーが、オリゴマーとしては(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0027】
感光性樹脂組成物は、モノマーと、オリゴマーと、光重合開始剤を含む添加剤と、有機溶剤とを含んでよい。感光性樹脂組成物は、モノマーとオリゴマーの合計100質量部に対して、モノマーを50~90質量部含んでいてよく、60~80質量部含んでいてもよい。これによって、耐水紙11にモノマーを十分に浸透させつつ、高い接着力を実現することができる。上記合計100質量部に対し、添加剤を3~20質量部含んでよく、5~15質量部含んでいてもよい。
【0028】
モノマーとしては、例えば、アクリル系モノマー、ビニル系モノマー、及びアリル系モノマー等が挙げられる。アクリル系モノマーとしては、光硬化反応(光重合反応)に関与する官能基として、アクリロイル基、及び/又はメタクリロイル基を有するものが挙げられる。本開示では、アクリロイル基とメタクリロイル基を、(メタ)アクリロイル基と称することがある。アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸エステル、窒素含有化合物と(メタ)アクリル酸との酸アミド、(メタ)アクリル酸等であってもよい。本開示では、アクリル酸及びメタクリル酸を、(メタ)アクリル酸と称することがある。また、アクリル酸エステル(又はアクリレート)及びメタクリル酸エステル(又はメタクリレート)を、(メタ)アクリル酸エステル(又は(メタ)アクリレート)と称することがある。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルのようなアルキル基の炭素数が1~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0030】
ビニル系モノマーとしては、光硬化反応(光重合反応)に関与する官能基としてビニル基を有するものが挙げられる。ビニル系モノマーとしては、ビニルエーテル(例えば、一価アルコールのビニルエーテル)、ビニルエステル(アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル)及び、脂環族ビニルモノマー等が例示できる。アリル系モノマーとしては、光硬化反応(光重合反応)に関与する官能基としてアリル基を有するモノマーが挙げられる。アリル系モノマーとしては、例えば、アリルエーテル(一価アルコールのアリルエーテルなど)などが挙げられる。
【0031】
オリゴマーとしては、光照射により発生したラジカル、カチオン、又はアニオンなどの作用によって硬化又は重合するオリゴマーが挙げられる。オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、8,000以上であり、10,000以上であってもよい。オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、40,000以下であり、30,000以下であってもよい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、又は熱分解(Py)-GC/MS(熱分解装置(パイロライザー)を有するガスクロマトグラフ-質量分析計)を用いて測定することができる。
【0032】
オリゴマーは、光硬化反応(光重合反応)に関与する官能基を有する。そのような官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、及びジエニル基等が挙げられる。このうち、耐水性を一層向上する観点から、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系オリゴマーを含むことが好ましい。本開示では、アクリロイル基を有するアクリレート系オリゴマー及びメタクリロイル基を有するメタクリレート系オリゴマーを、(メタ)アクリレート系オリゴマーと称することがある。
【0033】
光重合開始剤は、光(例えば、紫外線)の作用により活性化して、反応性モノマーの硬化(重合)を開始させる。光重合開始剤としては、例えば、光(紫外線)の作用によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤、及び、光(紫外線)の作用により酸(またはカチオン)を生成するカチオン発生剤等が挙げられる。光重合開始剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アルキルフェノン系の光重合開始剤、及び、アシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤等が挙げられる。
【0034】
アルキルフェノン系の光重合開始剤としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0035】
アシルホスフィンオキサイド系の光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0036】
有機溶剤としては、アルコール、エーテル、及びケトン類が挙げられる。これらの一種を単独で含んでいてよく、二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。感光性樹脂組成物は、上述の各成分に加えて任意の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、消泡材、充填剤、及び安定剤等が挙げられる。
【0037】
耐水紙11にモノマーが浸透し易くする観点から、モノマーは、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーを含む。(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は特に限定されない。
【0038】
光硬化樹脂層12と耐水紙11の顔料含有層11bとが直接接触していれば、光硬化樹脂層12を構成する樹脂成分を、耐水紙11中に円滑に浸透させることができる。浸透する樹脂成分としては、光硬化樹脂層の硬化前の感光性樹脂組成物に含まれるモノマーが挙げられる。このような樹脂成分を浸透させて、耐水紙11の顔料含有層11bに樹脂成分の含浸層を形成すれば、耐水紙11の耐水性、及び、耐水紙11と光硬化樹脂層12の接着強度を向上することができる。耐水紙11は、このモノマーを含んでいてもよいし、このモノマーが重合して得られる重合体を含んでいてもよい。
【0039】
図2は、装飾シート10における耐水紙11の顔料含有層11bの内部構造を模式的に示している。光硬化樹脂層12は、顔料含有層11bの表面に感光性樹脂組成物を塗布した後、光照射することによって形成される。顔料含有層11bの表面に感光性樹脂組成物を塗布すると、顔料含有層11bには感光性樹脂組成物に含まれるモノマー等の樹脂成分63が浸透する。この樹脂成分63に含まれるモノマーは、光照射の際に重合してもよいし、しなくてもよい。このように、耐水紙11の顔料含有層11bは、モノマー及び/又はその重合物等の樹脂成分を含有する。顔料含有層11bは、一部のみに樹脂成分を含んでいてもよいし、光硬化樹脂層12に近接するにつれて、樹脂成分の濃度が高くなる濃度勾配部を有していてもよい。これによって、光硬化樹脂層12との接着力を十分に高くしつつ、感光性樹脂組成物に由来する樹脂成分を含有する部分と樹脂成分を含有しない部分の境界部分における強度を十分に高くすることができる。
【0040】
浸透した樹脂成分63は、例えば顔料61及びその他の成分と絡み合って、顔料含有層11b内にネットワークを形成すると考えられる。これによって、顔料含有層11bの耐水性を向上することができる。また、顔料含有層11b内に浸透した樹脂成分63は、光硬化樹脂層12に含まれる樹脂成分とも結合する。これによって、耐水紙11と光硬化樹脂層12との接着強度を向上することができる。
【0041】
感光性樹脂組成物に含まれるモノマーの分子量は、好ましくは500以下であり、より好ましくは400以下であり、さらに好ましくは300以下である。これによって、モノマーが耐水紙11に浸透し易くなり、耐水性を十分に向上することができる。モノマーの分子量は、例えば100以上であってよい。
【0042】
光硬化樹脂層12の厚みは、好ましくは2~10μmであり、より好ましくは3~5μmである。これによって、折り曲げ易さと水分に対する耐久性を十分に高い水準で両立することができる。
【0043】
接着剤層14は、光硬化樹脂層12と基材層16とを接着する機能を有する。接着剤層14に含まれる接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエチレンイミン系接着剤、ポリブタジエン系接着剤が挙げられる。このうち、耐水性を一層向上する観点から、エポキシ系接着剤を含むことが好ましい。接着剤層14の厚みは、好ましくは2~10μmであり、より好ましくは4~8μmである。これによって、折り曲げ易さと水分に対する耐久性を十分に高い水準で両立することができる。
【0044】
耐水紙11と光硬化樹脂層12の間の一部にインキ層を備えることが好ましい。これによって、デザイン性を向上することができる。なお、耐水紙11と光硬化樹脂層12の間の一部にインキ層を設けても、耐水紙11と光硬化樹脂層12の間の他部において、耐水紙11と光硬化樹脂層12とが高い接着力で接着している。したがって、耐水紙11と光硬化樹脂層12の間の一部にインキ層を設けても、良好な接着性を維持することができる。
【0045】
基材層16は、樹脂フィルムであってよい。樹脂フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリスチレンフィルム;66-ナイロン等のポリアミドフィルム;ポリカーボネートフィルム、並びに、ポリアクリロニトリルフィルム、及びポリイミドフィルム等のエンジニアリングプラスチックフィルム等が挙げられる。基材層16の接着剤層14側の面は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理、及びオゾン処理から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていてもよい。基材層16の厚さは、特に制限されず、例えば、3~50μmであってもよく、6~30μmであってもよい。
【0046】
金属膜18は、アルミニウム、スズ、インジウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、真鍮、クロム又は亜鉛、或いはこれらの金属の合金を含んでいてよい。これらの一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。金属膜18は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法で作製することができる。金属膜18の厚みは、例えば10~2000nmであり、好ましくは10~100nmである。これによって、金属光沢を有することによって装飾性に優れる装飾シート10を低コストで製造することができる。
【0047】
基材層16及び金属膜18が一体となっている金属蒸着フィルム又は金属箔積層フィルムを用いてもよい。金属膜18側の装飾シート10の表面10B上にはインキ層が設けられていてもよい。これによって種々のデザインを有する装飾シートを得ることができる。装飾シート10は優れた美観を有することから、包装容器の外装材、及び、包装箱の板材用等に好適に用いることができる。
【0048】
装飾シート10の製造方法の一例を説明する。耐水紙11の顔料含有層11b側の表面に感光性樹脂組成物を塗工する。その後、感光性樹脂組成物の塗工層の表面に、光(紫外線)を照射して反応性モノマー及び反応性オリゴマーを光重合させる。その際、光硬化樹脂層を形成するのに十分な照射強度と照射時間で光(紫外線)を照射する。これによって、耐水紙11の一方面上に光硬化樹脂層12が形成される。
【0049】
光硬化樹脂層12の一方面上に接着剤を塗布し、接着剤を介して光硬化樹脂層12と金属蒸着フィルム又は金属箔積層フィルムとを貼り合わせる。これによって、装飾シート10を製造することができる。
【0050】
装飾シート10は、水分と接触しても、十分な耐久性を維持することができる。このため、例えば、水分、水溶液又はエマルション等が含浸された含浸体を包装する包装箱の板材として好適に用いることができる。装飾シート10は、表面10A,10Bの少なくとも一方に、折り曲げの起点となる罫線を有する型紙(台紙)であってもよい。罫線は溝(凹部)であってもよいし、貫通孔がミシン目状に形成されていてもよい。
【0051】
折り曲げを円滑に行いつつ、包装箱を形成したときの剛性を高くする観点から、装飾シート10の厚みは、好ましくは0.3~0.5mmであり、より好ましく0.40~0.45mmである。装飾シート10は、耐水紙11が内側に、金属膜18が外側になるようにして折り曲げる。これによって、水分を含む被包装物を包装しても、優れた耐久性を維持することが可能な包装容器及び包装体を得ることができる。このような包装容器及び包装体は、外表面側に金属膜18を有することから、美粧性に優れる。また、耐水紙11を含むことから、プラスチックの廃棄量を低減し、資源の保護を図ることができる。
【0052】
23℃の水に24時間浸漬したときの装飾シート10のエッジウィック値は、好ましくは1.5mg/mm2以下である。装飾シート10のエッジウィック値は、耐水紙11のエッジウィック値の測定方法と同じ方法で測定することができる。装飾シート10の耐久性は、耐水紙11と光硬化樹脂層12との接着強度(剥離強度)に依存する傾向にある。この接着強度(剥離強度)は、装飾シート10の吸水量が大きくなると低下する傾向にある。装飾シート10のエッジウィック値は、耐水紙11の吸水量に依存する傾向にあるため、装飾シート10のエッジウィック値を小さくすることによって、装飾シート10の耐久性を高く維持することができる。
【0053】
装飾シート10のはく離接着強さは、20℃の水に1時間浸漬した後において、好ましくは0.4[N/15mm]以上であり、より好ましくは0.5[N/15mm]以上であり、さらに好ましくは0.6[N/15mm]以上である。このはく離接着強さは、実施例に記載している「はく離接着強さ(2)」の測定方法によって測定される。
【0054】
装飾シート10を組み立てて包装箱としてもよい。耐久性に優れるとともに優れた耐水性を有する装飾シート10で構成される包装箱は、繊維素材に、アルコール等の洗浄液又は化粧水を含浸させた含浸体(ウェットティッシュ等)を包装してもよい。すなわち、装飾シート10は、このような含浸体の包装箱用に用いられてもよい。装飾シート10は、水分又はアルコール分等の液体と接触しても、十分な耐久性を維持することができる。ただし、装飾シート10の用途はこれに限定されない。
【0055】
一実施形態に係る包装体は、包装箱と包装箱に収容される被包装物とを備える。包装箱を装飾シート10で構成すれば、少なくとも一部をリサイクルすることができる。包装箱及びこれを備える包装体は、粘着性を有するシール面を有し、箱体の開口部を封止する蓋ラベルの開閉操作を繰り返し行うタイプのものであってよい。装飾シート10を組み立てて包装箱としてもよい。耐久性に優れるとともに優れた耐水性を有することから、上述のような含浸体を収容しても、装飾シート10がはく離して包装箱が破損することを十分に抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば装飾シートは、任意の層を備えていてもよい。
【実施例0057】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[装飾シートの作製1]
(実施例1)
市販の耐水紙(三菱製紙株式会社製の「N三菱耐水」、秤量350g/m
2)を準備した。この耐水紙は、
図1に示すように、樹脂及びパルプ等の紙料を含む紙層11aと、顔料(クレー)を含有する顔料含有層11bの積層構造を有していた。顔料含有層11bの上に、感光性樹脂組成物を塗工し、塗工して得られた塗膜側から紫外線を照射して光硬化樹脂層12を形成し、積層体を得た。感光性樹脂組成物としては、アクリレートモノマーを62.2質量%、アクリレートオリゴマーを28.8質量%、イソプロピルアルコールを0.5質量%、エチレングリコールモノブチルエーテルを0.2質量%、光重合開始剤を含む添加剤を8.3質量%含むものを用いた。紫外線の光源はメタルハライドランプ(波長:250nm~450nm)を用いた。
【0059】
PETフィルム(厚み:12μm)にアルミニウムの蒸着膜(厚み:10~100nm)が形成された金属蒸着フィルムと、エポキシ系接着剤(主剤:AD391-A(商品名),硬化剤:AD391-B(商品名)、ともに東洋モートン株式会社製)を、それぞれ準備した。ドライラミネートによって、エポキシ系接着剤(塗布量:4.3g/m
2)を介してPETフィルムと光硬化樹脂層とが対向するようにして、積層体と金属蒸着フィルムとを接着した。養生時間(エージング)は、常温で1日間とした。このようにして、
図1に示すような積層構造を有する装飾シートを得た。ダイヤルゲージを用いて装飾シートの厚みを測定したところ、厚みは440μmであった。
【0060】
(実施例2)
市販の耐水紙(日本製紙株式会社製の「エコバリーK」、秤量:350g/m2)を準備した。この耐水紙は、樹脂で構成される樹脂コート層と、樹脂及びパルプ等の紙料を含む紙層と、顔料(クレー)を含有する顔料含有層とを有する積層構造を有していた。この耐水紙を用いたこと以外は、実施例1と同様にして装飾シートを作製した。なお、感光性樹脂組成物は、実施例1と同じように、顔料含有層の上に塗工した。ダイヤルゲージを用いて装飾シートの厚みを測定したところ、厚みは440μmであった。
【0061】
(比較例1)
実施例1で用いた耐水紙を比較例1とした。
【0062】
(比較例2)
耐水紙ではない一般紙(秤量:310g/m2、OKフレースPRO(商品名)、王子製紙株式会社製)を準備した。ドライラミネートによって、エポキシ系接着剤(塗布量:4.3g/m2)を介してPETフィルムと一般紙とが対向するようにして、一般紙と金属蒸着フィルムとを接着した。養生時間(エージング)は、常温で1日間とした。このようにして、一般紙、接着剤層、基材層(PETフィルム)及び金属膜(アルミニウム蒸着膜)からなる積層構造を有する装飾シートを得た。
【0063】
(比較例3)
光硬化樹脂層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして装飾シートを作製した。この装飾シートは、耐水紙、接着剤層、基材層(PETフィルム)及び金属膜(アルミニウム蒸着膜)からなる積層構造を有していた。
【0064】
(比較例4)
実施例2で用いた耐水紙を比較例4とした。
【0065】
[エッジウィック値の測定]
各実施例及び各比較例で得られた装飾シートの表側と裏側の表面全体にラミネートフィルムを貼り付けた。その後、長方形(15mm×100mm)にカットして試験サンプルを得た。続いて、水浸漬前の試験サンプルの質量を測定した。その後、23℃の水中に1~24時間浸漬し、水中から取り出して試験サンプルの質量を測定した。試験サンプルの水浸漬前後の質量から、以下の式でエッジウィック値を算出した。結果は、表1に示すとおりであった。表1のエッジウィック値の数値の単位は「mg/mm2」である。
エッジウィック値=試験サンプルの浸漬前後の質量差/(カット後の装飾シートの4端面の合計面積)
【0066】
[はく離接着強さ(1)の測定]
上述のエッジウィック値測定後の試験サンプルから、装飾シートを取り出して、JIS K 6854-1:1999に準拠して、各装飾シートのはく離接着強さを測定した。エッジウィック試験を行っていない装飾シートのはく離接着強さも同様にして測定した(浸漬無し)。はく離接着強さの測定の具体的な手順は以下のとおりとした。端部における層間(耐水紙と光硬化樹脂層又は接着剤層の間)を剥離した後、角度:180°、引張速度:300mm/min、及び20℃の条件で引張試験機を用いて、層間のはく離接着強さを測定した。このはく離接着強さを、エッジウィック試験後のはく離接着強さとした。測定結果は表1に示すとおりであった。表1中のはく離接着強さ(1)の数値の単位は「N/15mm」である。
【0067】
[はく離接着強さ(2)の測定]
各実施例及び各比較例で得られた装飾シートをカットして長方形(15mm×100mm)のサンプルを得た。サンプルを300mlの水に1時間浸漬した。サンプルを水から取り出して約10分間経過後、「はく離接着強さ(1)の測定」と同じ手順で、各サンプルのはく離接着強さ(2)を測定した。このはく離接着強さを、ドブ漬け試験後のはく離接着強さとした。測定結果は表1に示すとおりであった。表1中のはく離接着強さ(2)の数値の単位は「N/15mm」である。
【0068】
[はく離接着強さ(3)の測定]
各実施例及び比較例3で得られた装飾シートをカットして長方形(15mm×100mm)のサンプルを得た。サンプルを300mlの化粧水に6時間浸漬した。化粧水の含有成分は、水、グリセリン、クエン酸、プロパンジオール、BG、フェノキシエタノール、及びメチルパラベン等であった。サンプルを化粧水から取り出して約10分間経過後、「はく離接着強さ(1)の測定」と同じ手順で、各サンプルのはく離接着強さ(3)を測定した。測定結果は表1に示すとおりであった。表1中のはく離接着強さ(3)の数値の単位は「N/15mm」である。
【0069】
【0070】
同じ耐水紙を用いた実施例1と比較例1,2,3のエッジウィック値を比較すると、光硬化樹脂層を有する実施例1のエッジウィック値が最も低かった。同じ耐水紙を用いた実施例2と比較例4との比較でも同様の傾向であった。このことから、光硬化樹脂層を設けることによって吸水量を低減できることが確認された。
【0071】
はく離接着強さ(1)、(2)及び(3)の結果から、実施例1,2は、水分と接触しても十分な耐久性を維持できることが確認された。その要因としては、耐水紙と光硬化樹脂層との接着力が向上したこと、及び耐水紙の耐水性が向上したことが考えられる。また、化粧水の場合も水の場合と同様に実施例1,2は高い耐久性を有していた。
【0072】
実施例1,2と比較例3のはく離接着強さ(1)測定後に、はく離面のIR測定を行った。
図3は、実施例1のエッジウィック試験を行っていない装飾シートのはく離面(耐水紙側のはく離面は「1」の吸収スペクトル、金属膜側のはく離面は「2」の吸収スペクトル)のIR測定結果を示している。また、
図3には、対照「3」として、実施例1で用いた耐水紙の顔料含有層側の吸収スペクトルも併せて示した。この結果によれば、対照である耐水紙自体(吸収スペクトル3)には1700cm
-1付近に吸収ピークが存在しないのに対し、耐水紙側のはく離面(吸収スペクトル1)と金属膜側のはく離面(吸収スペクトル2)では双方に、1700cm
-1付近に吸収ピークが検出された。この吸収ピークはアクリレートモノマー等の樹脂成分による炭素-酸素の二重結合の伸縮振動に由来すると考えられる。
図3の吸収スペクトル1~3から、実施例1の装飾シートは、耐水紙と光硬化樹脂製との界面ではく離していることが分かった。
【0073】
図4は、実施例2のエッジウィック試験を行っていない装飾シートのはく離面(耐水紙側のはく離面と金属膜側のはく離面)のIR測定結果を示している。
図4中の1,2,3の各符号の意味は、
図3と同じである。
図4の吸収スペクトル1~3から、実施例2の装飾シートも、耐水紙と光硬化樹脂製との界面ではく離していることが分かった。また、実施例1と同様に、耐水紙側のはく離面(吸収スペクトル1)と金属膜側のはく離面(吸収スペクトル2)では双方に、1700cm
-1付近に吸収ピークが検出された。
【0074】
図5は、比較例3のエッジウィック試験を行っていない装飾シートのはく離面(耐水紙側のはく離面と金属膜側のはく離面)のIR測定結果を示している。
図5にも、対照として、実施例1で用いた耐水紙の顔料含有層側のIR測定結果を併せて示している。
図5中の1,2,3の各符号の意味は、
図3と同じである。
図5では、耐水紙側のはく離面と金属膜側のはく離面は、耐水紙自体と同様のスペクトルを示していた。このことから、比較例1の装飾シートは、耐水紙自体(顔料含有層自体)が裂けてはく離していることが分かった。比較例3の装飾シートでは、耐水紙側及び金属膜側のどちらのはく離面にも、光硬化樹脂層の樹脂成分に由来するピークは検知されなかった。
【0075】
上述のIRの測定結果によれば、実施例1,2の装飾シートは、耐水紙側のはく離面にも光硬化樹脂層の樹脂成分に由来するピークが検出されていることから、耐水紙(顔料含有層)にアクリレートモノマー等の樹脂成分が浸透していることが確認された。このように耐水紙が感光性樹脂組成物に由来する樹脂成分を含有することによって、耐水紙と光硬化樹脂層との接着強度が向上するとともに水(化粧水)の浸透が抑制されて、耐水紙(顔料含有層)の耐水性が向上したものと考えらえれる。一方、比較例3の装飾シートでは、耐水紙にアクリレートモノマー等の樹脂成分が浸透していないため、耐水紙と光硬化樹脂層との接着強度が低く、また、耐水紙に水(化粧水)が浸透し易かったものと考えられる。
【0076】
水に6時間浸漬後、はく離接着強さ(1)を測定した実施例1の装飾シートにおける耐水紙側のはく離面と金属膜側のはく離面のIR測定を行ったところ、いずれにも、1700cm-1付近に吸収ピークが検出されなかった。このことから、アクリレートモノマー等の樹脂成分が含浸しているのは、顔料含有層全体ではなく、光硬化樹脂層側の一部であること、水に6時間浸漬した後も、樹脂成分を含有する部分は高い耐水性を維持していること、及び、水に6時間浸漬した後も顔料含有層と光硬化樹脂層との接着力は十分高く維持されていることが確認された。
本開示によれば、水分と接触しても、十分な耐久性を維持することが可能な装飾シートを提供することができる。水分を含む被包装物を包装しても、十分な耐久性を維持することが可能な包装箱及び包装体を提供することができる。
10…装飾シート、10A,10B…表面、11…耐水紙、11a…紙層、11b…顔料含有層、12…光硬化樹脂層、14…接着剤層、16…基材層、18…金属膜、61…顔料、63…樹脂成分。