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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084443
(43)【公開日】2023-06-19
(54)【発明の名称】装飾シート、包装箱、及び、包装体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230612BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20230612BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/10
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021198623
(22)【出願日】2021-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
(72)【発明者】
【氏名】原田 真緒
(72)【発明者】
【氏名】黒木 航
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD02
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB52
3E086BB71
3E086DA08
4F100AB01E
4F100AB10E
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07C
4F100AK42E
4F100AK53D
4F100AK62A
4F100AK62B
4F100AT00C
4F100AT00E
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10E
4F100CA13A
4F100CB00D
4F100CB03B
4F100DC11
4F100DD05
4F100DG10A
4F100EH46
4F100EH66E
4F100EJ38C
4F100EJ82A
4F100GB15
4F100JB07
4F100JB07A
4F100JK06
4F100JL12B
(57)【要約】
【課題】耐水紙を備えつつも優れた耐久性を有する装飾シートを提供すること。
【解決手段】装飾シート10は、耐水紙11と、樹脂コート層12と、二軸延伸ポリプロピレンフィルム13と、接着剤層14と、PETフィルム16と、金属膜18と、をこの順に備える。耐水紙11と樹脂コート層12とが直接接している。樹脂コート層12はポリオレフィン系樹脂を含むホットメルト接着剤で構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水紙と、樹脂コート層と、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、接着剤層と、PETフィルムと、金属膜と、をこの順に備え、前記耐水紙と樹脂コート層とが直接接している、装飾シート。
【請求項2】
前記樹脂コート層はポリオレフィン系樹脂を含むホットメルト接着剤で構成される、請求項1に記載の装飾シート。
【請求項3】
前記ホットメルト接着剤に含まれる樹脂成分が前記耐水紙に浸透している、請求項2に記載の装飾シート。
【請求項4】
前記耐水紙は顔料含有層を有し、前記ホットメルト接着剤に含まれる樹脂成分が前記顔料含有層に浸透している、請求項2又は3に記載の装飾シート。
【請求項5】
23℃の水に24時間浸漬したときのエッジウィック値が1.5mg/mm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項6】
少なくとも一方の表面に、凹部又は貫通孔を含む罫線を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項7】
前記耐水紙と前記樹脂コート層の間にインキ層を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装飾シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項の装飾シートで構成される箱体を備える包装箱。
【請求項9】
請求項8に記載の包装箱と、前記包装箱に収容される被包装物と、を備える、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、装飾シート、包装箱、及び、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
被包装物を収容する包装容器として、プラスチック製の包装袋が知られている。例えば、特許文献1では、ウェットティッシュを収納し、ウェットティッシュを取り出す開口部を有する包装袋と、開口部の周囲にはく離可能に接着される開閉ラベルと、を有する包装体が提案されている。
【0003】
一方、包装容器の装飾性を向上させるため、紙基材上に金属光沢を有する金属膜を有するプラスチックフィルムを備えた装飾シートが知られている。特許文献2では、このような装飾シートを用いた容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-85968号公報
【特許文献2】特開2019-5940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスチック製の容器を一部でも紙製のものに置き換えることができれば、廃棄物の削減及び資源の有効利用を図ることができる。ところが、特許文献1のような開閉ラベルの剥離と接着とを繰り返し行うようなタイプの包装容器を、特許文献2のような紙を含む装飾シートで構成すると、開閉ラベルが接着される箇所に大きな負荷がかかる。このような包装容器で水分を含む被包装物を包装する場合には、耐水紙を用いて耐水性を向上することが有効である。しかしながら、耐水紙を用いると、特に開閉ラベルが接着される箇所において、耐水紙上に設けられる金属膜等の積層物が容易に剥がれてしまうことが分かった。
【0006】
本開示では、耐水紙を備えつつも優れた耐久性を有する装飾シートを提供する。また、本開示では、優れた耐久性を有する包装箱及び包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一つの側面において、耐水紙と、樹脂コート層と、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、接着剤層と、PETフィルムと、金属膜と、をこの順に備え、耐水紙と樹脂コート層とが直接接している、装飾シートを提供する。この装飾シートは、金属膜を備えるため、装飾性に優れる。そして、耐水紙の表面は通常平滑であるため、密着し難い傾向にあるが、上記装飾シートでは、耐水紙に直接接する樹脂コート層を有する。樹脂コート層は、耐水紙表面を補強する樹脂層であることから、耐水紙との密着性を十分に高くすることができる。また、樹脂コート層に加えて、耐水紙と金属膜との間に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、接着剤層と、PETフィルムとを備える。したがって、優れた耐久性を有する。
【0008】
上記装飾シートにおける樹脂コート層はポリオレフィン系樹脂を含むホットメルト接着剤で構成されることが好ましい。このような樹脂コート層は、耐水紙との接着性に優れる。このため、装飾シートの耐久性を一層向上することができる。
【0009】
上記ホットメルト接着剤に含まれる樹脂成分が熱圧着により耐水紙に浸透していることが好ましい。これによって、樹脂コート層と耐水紙との接着強度が十分に高くなり、耐久性を一層高くすることができる。
【0010】
上記耐水紙は顔料含有層を有し、当該顔料含有層と樹脂コート層とが直接接していることが好ましい。顔料含有層を有することによって装飾性を向上することができる。顔料含有層は、通常、粒子状の顔料を含むため表面が平滑であり、隣接する層と密着し難い傾向にある。上記装飾シートでは、耐水紙との密着性に優れる樹脂コート層を備えるため、十分に高い耐久性を維持することができる。
【0011】
上記耐水紙は顔料含有層を有し、ホットメルト接着剤に含まれる樹脂成分が顔料含有層に浸透していることが好ましい。これによって、樹脂コート層と通常は密着し難い傾向にある耐水紙との接着強度が十分に高くなり、耐久性を一層高くすることができる。
【0012】
上記装飾シートを23℃の水に24時間浸漬したときのエッジウィック値が1.5mg/mm以下であることが好ましい。このような装飾シートは耐水性に一層優れる。
【0013】
上記装飾シートは、少なくとも一方の表面に、凹部又は貫通孔を含む罫線を有することが好ましい。このような装飾シートを用いれば、包装箱等の組立体を、簡便に作製することができる。
【0014】
上記装飾シートは、耐水紙と樹脂コート層の間にインキ層を備えることが好ましい。これによって、デザイン性を向上することができる。
【0015】
本開示は、一つの側面において、上述のいずれかの装飾シートで構成される箱体を備える包装箱を提供する。
【0016】
この包装箱は、上述のいずれかの装飾シートで構成される箱体を備える。このため、優れた耐久性を有する。したがって、例えば、粘着性を有するシール面を有し、箱体の開口部を封止する蓋ラベルの開閉操作を繰り返し行っても、箱体を構成する装飾シートが破損するのを十分に抑制することができる。
【0017】
本開示は、一つの側面において、上記包装箱と、当該包装箱に収容される被包装物と、を備える、包装体を提供する。この包装体は上述の包装箱を備えることから、優れた耐久性を有する。
【発明の効果】
【0018】
耐水紙を備えつつも優れた耐久性を有する装飾シートを提供することができる。また、優れた耐久性を有する包装箱及び包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る装飾シートを示す断面図である。
図2図1の装飾シートにおける耐水紙の顔料含有層の内部構造を模式的に示す図である。
図3】実施例1の装飾シートのはく離面における赤外分光分析(IR)の測定結果である。
図4】比較例3の装飾シートのはく離面における赤外分光分析(IR)の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、場合により図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。
【0021】
図1の装飾シート10は、耐水紙11と、樹脂コート層12と、二軸延伸ポリプロピレンフィルム13と、接着剤層14と、PETフィルム16と、金属膜18と、をこの順に備える。耐水紙11は、装飾シート10の表面10A側から、樹脂で構成される樹脂層11aと、樹脂及びパルプ等の紙料を含む紙層11bと、顔料を含有する顔料含有層11cと、をこの順に有する。なお、「PET」とは、ポリエチレンテレフタレートの略称である。
【0022】
樹脂層11aは、耐水性向上の観点から、顔料を含有しないことが好ましい。紙層11bに含まれる樹脂と、樹脂層11aを構成する樹脂の種類は同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。樹脂層11aを構成する樹脂、及び紙層11bに含まれる樹脂としては、アクリル樹脂が挙げられる。
【0023】
顔料含有層11cに含まれる顔料としては、カオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウム等の白色顔料が挙げられる。ただし、顔料の種類はこれらに限定されず、紫色顔料及び青色顔料等の種々の顔料が挙げられる。
【0024】
顔料含有層11cは一種の顔料を単独で含んでいてもよいし、二種以上の顔料を組み合わせて含んでいてもよい。顔料含有層11cは、粒子状の顔料とともにこれらを結着するバインダ、填料及び蛍光染料等を含んでいてよい。顔料含有層11cは、クレー層と称される層であってもよい。
【0025】
耐水紙11の秤量は、例えば100~800g/mであってよく、200~600g/mであってよい。これによって、十分な強度と良好な組み立て性を両立することができる。耐水紙11の厚みは、100~800μmであってよく、200~600μmであってもよい。
【0026】
23℃の水に24時間浸漬して測定される耐水紙11のエッジウィック値は、好ましくは4mg/mm未満であり、より好ましくは2mg/mm未満であり、さらに好ましくは1.6mg/mm未満である。これによって、装飾シート10の耐水性を十分に高くすることができる。
【0027】
本明細書におけるエッジウィック値は以下の手順で測定することができる。測定対象の耐水紙の表側と裏側の表面全体にラミネートフィルムを貼り付ける。その後、長方形(15mm×100mm)にカットして試験サンプルを得る。水浸漬前に試験サンプルの質量を測定する。試験サンプルを23℃の水中に1~24時間浸漬した後、水中から取り出して試験サンプルの質量を測定する。試験サンプルの水浸漬前後の質量から、以下の式でエッジウィック値を算出することができる。
エッジウィック値=試験サンプルの浸漬前後の質量差/カット後の耐水紙の4端面の合計面積
【0028】
装飾シート10の一方の表面10Aをなす耐水紙11の樹脂層11aは、樹脂で構成されることから、表面10Aから水分を吸収することを抑制することができる。なお、変形例では、樹脂層11aを備えず、紙層11bが表面10Aに露出していてもよい。紙層11bも樹脂を含有することから、樹脂層11aがなくても十分に耐水性を維持することができる。
【0029】
耐水紙の構造は上述のものに限定されず、樹脂成分を含有することによって耐水性が向上した種々の形態のものを用いることができる。耐水紙は、公知の方法で作製してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、三菱製紙株式会社製の「N三菱耐水」、及び、日本製紙株式会社製の「エコバリーV」及び「エコバリーK」等が挙げられる。
【0030】
樹脂コート層12は、ホットメルト接着剤で構成されてよい。ホットメルト接着剤は、樹脂成分として、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、又はウレタン系樹脂を含むものが挙げられる。このうち、樹脂コート層12は、ポリオレフィン系樹脂を含むホットメルト接着剤で構成されることが好ましい。これによって、樹脂コート層12と二軸延伸ポリプロピレンフィルム13とが互いに直接接する場合に、これらの親和性が向上し、両者の密着性を一層高くすることができる。
【0031】
本明細書におけるポリオレフィン系樹脂は、オレフィンの繰り返し単位を含む。例えば、一種のポリオレフィンの単独重合体(すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレン等)であってもよいし、オレフィン系共重合体であってもよい。オレフィン系共重合体は、オレフィンから誘導された構成単位と、オレフィン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。オレフィンから誘導された構成単位は、樹脂全体の50質量%以上であってよい。
【0032】
樹脂コート層12は、ポリエチレン系樹脂を含むホットメルト接着剤で構成されることがより好ましい。これによって、柔軟性が向上し、装飾シートを折り曲げる作業が一層容易となり、包装箱を作製し易くすることができる。また包装箱を作製したときに、折り曲げ部分において層間が剥離することを十分に抑制することができる。また、ポリエチレン系樹脂を含むホットメルト接着剤であれば、樹脂コート層12と二軸延伸ポリプロピレンフィルム13とを熱ラミネートのみで圧着することができる。このため、装飾シート10の製造工程を簡便にすることができる。装飾シートを製造する際、樹脂コート層12は、市販のホットメルト接着剤を用いても形成してもよいし、二軸延伸ポリプロピレンフィルムにホットメルト接着剤層が形成されたものを用いて、樹脂コート層12と二軸延伸ポリプロピレンフィルム13とを合わせて形成してもよい。ホットメルト接着剤としては、ジェイフィルム株式会社製の「ラミータックMSOK」(商品名)、及びコスモフィルムジャパン合同会社製の「7327KA/SA」(商品名)等が挙げられる。
【0033】
本明細書におけるポリエチレン系樹脂は、メチレンの繰り返し単位を含む。例えば、エチレンの単独重合体(すなわちポリエチレン)であってもよいし、エチレン系共重合体であってもよい。エチレン系共重合体は、エチレンから誘導された構成単位と、エチレン以外のモノマーから誘導された構成単位と、を有する。エチレンから誘導された構成単位は、樹脂全体の50質量%以上であってよい。
【0034】
樹脂コート層12と耐水紙11の顔料含有層11cとは直接接している。これによって、樹脂コート層12を構成する樹脂成分を、耐水紙11中に円滑に浸透させることができる。浸透する樹脂成分としては、樹脂コート層12における樹脂を構成する樹脂成分(例えば、ポリオレフィン系樹脂)が挙げられる。このような樹脂成分を浸透させて、耐水紙11の顔料含有層11cに樹脂成分の含浸層を形成すれば、耐水紙11と樹脂コート層12との接着強度を十分に高くすることができる。耐水紙11がこのような樹脂成分を含有することによって、装飾シート10の耐久性を向上することができる。
【0035】
図2は、装飾シート10における耐水紙11の顔料含有層11cの内部構造を模式的に示している。加熱されて流動性を有するホットメルト接着剤が顔料含有層11cの表面に熱圧着されると、顔料含有層11c中にホットメルト接着剤に含まれる樹脂成分63が浸透する。顔料含有層11cは、一部のみに樹脂成分を含んでいてもよいし、樹脂コート層12に近接するにつれて、樹脂成分の濃度が高くなる濃度勾配部を有していてもよい。これによって、樹脂コート層12との接着力を十分に高くしつつ、樹脂成分63を含有する部分と樹脂成分63を含有しない部分の境界部分における強度を十分に高くすることができる。
【0036】
浸透した樹脂成分63は、顔料含有層11cに含まれる例えば顔料61及びその他の成分同士を凝集させ互いに結着させる。これによって、顔料含有層11cに含まれる各成分の凝集力が高くなって顔料含有層11cの耐久性を向上することができる。また、顔料含有層11c内に浸透した樹脂成分63は、樹脂コート層12に含まれる樹脂成分とも結合する。これによって、耐水紙11と樹脂コート層12との接着強度を向上することができる。
【0037】
顔料含有層11c中に樹脂成分63が含浸して形成される樹脂含浸層の厚みは、例えば10μm以上であってよく、15μm以上であってもよい。この厚みを大きくすることによって、顔料含有層11cの耐久性を一層高くすることができる。顔料含有層11c中への樹脂成分63の浸透を促進して樹脂含浸層の厚みを大きくする観点から、ホットメルト接着剤は低融点であるものが好ましい。
【0038】
図1に戻り、樹脂コート層12の厚みは、好ましくは5~30μmであり、より好ましくは10~20μmである。これによって、折り曲げ易さに優れるとともに、耐水紙11の凝集力を向上させて耐久性を十分に高くすることができる。
【0039】
耐水紙11と樹脂コート層12の間の一部にインキ層を備えることが好ましい。これによって、デザイン性を向上することができる。なお、耐水紙11と樹脂コート層12の間の一部にインキ層を設けても、耐水紙11と樹脂コート層12の間の他部において、耐水紙11と樹脂コート層12とが高い接着力で接着している。したがって、耐水紙11と樹脂コート層12の間の一部にインキ層を設けても、良好な接着性を維持することができる。
【0040】
二軸延伸ポリプロピレンフィルム13の厚みは、好ましくは5~40μmであり、より好ましくは10~30μmである。これによって、折り曲げ易さと接着力を十分に高い水準で両立することができる。
【0041】
接着剤層14は、二軸延伸ポリプロピレンフィルム13とPETフィルム16とを接着する機能を有する。接着剤層14に含まれる接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリエーテル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエチレンイミン系接着剤、及びポリブタジエン系接着剤が挙げられる。このうち、耐水性を一層向上する観点から、エポキシ系接着剤を含むことが好ましい。接着剤層14の厚みは、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは3~8μmである。これによって、折り曲げ易さと耐久性を十分に高い水準で両立することができる。
【0042】
PETフィルム16の接着剤層14側の面は、薬品処理、溶剤処理、コロナ処理、プラズマ処理、及びオゾン処理から選ばれる少なくとも一つの処理が施されていてもよい。PETフィルム16の厚さは、特に制限されず、例えば、3~50μmであってもよく、6~30μmであってもよい。
【0043】
金属膜18は、アルミニウム、スズ、インジウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、真鍮、クロム又は亜鉛、或いはこれらの金属の合金を含んでいてよい。これらの一種を単独で含んでいてもよいし、二種以上を組み合わせて含んでいてもよい。金属膜18は、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、又はイオンプレーティング法で作製することができる。金属膜18の厚みは、好ましくは10~100μmである。これによって、金属光沢を有することによって装飾性に優れる装飾シート10を低コストで製造することができる。
【0044】
PETフィルム16及び金属膜18が一体となっている金属蒸着フィルム又は金属箔積層フィルムを用いてもよい。これによって装飾シート10の製造工程を簡素化することができる。金属膜18側の装飾シート10の表面10B上にはインキ層が設けられていてもよい。これによって種々のデザインを有する装飾シートを得ることができる。装飾シート10は優れた美観を有することから、包装容器の外装材、及び、包装箱の板材用等に好適に用いることができる。
【0045】
装飾シート10の製造方法の一例を説明する。耐水紙11の一方面に樹脂コート層12を形成する。例えば、ホットメルトコーター又はホットメルトガンを用いて、耐水紙11の顔料含有層11c側の表面に、ホットメルト接着剤を塗布する。塗布したホットメルト接着剤の上に、二軸延伸ポリプロピレンフィルム13を積層する。なお、この方法に代えて、二軸延伸ポリプロピレンフィルム13の一方面上にホットメルト接着剤層が設けられた積層物を用いてもよい。この場合、ホットメルト接着剤層と耐水紙11の顔料含有層11cとが対向するように、耐水紙11と積層物とを貼り合わせる。このような積層物を用いることによって、製造方法を簡便にすることができる。
【0046】
耐水紙11に貼り合わせた二軸延伸ポリプロピレンフィルム13の一方面上に接着剤を塗布し、接着剤を介して二軸延伸ポリプロピレンフィルム13と金属蒸着フィルム又は金属箔積層フィルムのPETフィルム16とを貼り合わせる。これによって、接着剤層14上にPETフィルム16及び金属膜18を有する装飾シート10を製造することができる。
【0047】
装飾シート10は、耐水紙11と金属膜18との間の各層(膜又はフィルム)の接着性が良好である。したがって、折り曲げ加工を施したり、積層方向に沿って引張応力が繰り返し生じるような条件で使用を継続したりしても、装飾シート10の層間剥離を十分に抑制することができる。このため、例えば、蓋ラベルが接着される包装箱の板材として好適に用いることができる。特に、蓋ラベルの接着と剥離が繰り返される包装箱の板材として好適である。また、耐水紙11を備えることから、水分と接触しても、耐久性を維持することができる。このため、被包装物は、水分、水溶液又はエマルション等が含浸された含浸体であってもよい。
【0048】
装飾シート10は、表面10A,10Bの少なくとも一方に、折り曲げの起点となる罫線を有する型紙(台紙)であってもよい。罫線は溝(凹部)であってもよいし、貫通孔がミシン目状に形成されていてもよい。これによって、装飾シート10を用いて円滑に包装箱を作製することができる。
【0049】
折り曲げを円滑に行いつつ、包装箱の剛性を高くする観点から、装飾シート10の厚みは、好ましくは500~700μmであり、より好ましく500~600μmである。装飾シート10は、耐水紙11が内側に、金属膜18が外側になるようにして折り曲げる。これによって、水分を含む被包装物を包装しても、優れた耐久性を維持することが可能な包装容器及び包装体を得ることができる。このような包装容器及び包装体は、外表面側に金属膜18を有することから、美粧性に優れる。また、耐水紙11を含むことから、プラスチックの廃棄量を低減し、資源の有効利用を図ることができる。
【0050】
23℃の水に24時間浸漬したときの装飾シート10のエッジウィック値は、好ましくは3.0mg/mm以下であり、より好ましくは2.0mg/mm以下であり、さらに好ましくは1.5mg/mm以下である。装飾シート10のエッジウィック値を小さくすることによって、装飾シート10の水分に対する耐久性を高くすることができる。装飾シート10のエッジウィック値は、耐水紙11のエッジウィック値の測定方法と同じ方法で測定することができる。
【0051】
装飾シート10における耐水紙11と樹脂コート層12の間のはく離接着強さは、好ましくは3[N/15mm]以上であり、より好ましくは5[N/15mm]以上であり、さらに好ましくは7[N/15mm]以上である。耐水紙11を備える装飾シート10では、耐水紙11の顔料含有層11cの表面が平滑であるため、通常、複数の接着面のうち、この顔料含有層11cとの接着面における接着強度が最も低くなる。したがって、上述のはく離接着強さが大きい装飾シート10は、耐水紙11と金属膜18の間のはく離を抑制できることから、十分に優れた耐久性を有する。上記はく離接着強さは、実施例に記載している測定方法(水浸漬無し)によって測定される値である。
【0052】
装飾シート10を組み立てて包装箱としてもよい。耐久性に優れるとともに優れた耐水性を有する装飾シート10で構成される包装箱は、繊維素材に、アルコール等の洗浄液又は化粧水を含浸させた含浸体(ウェットティッシュ等)を包装してもよい。すなわち、装飾シート10は、このような含浸体の包装箱用に用いられてもよい。装飾シート10は、水分又はアルコール分等の液体と接触しても、十分な耐久性を維持することができる。ただし、装飾シート10の用途はこれに限定されない。
【0053】
一実施形態に係る包装体は、包装箱と包装箱に収容される被包装物とを備える。包装箱を装飾シート10で構成すれば、少なくとも一部をリサイクルすることができる。包装箱及びこれを備える包装体は、粘着性を有するシール面を有し、箱体の開口部を封止する蓋ラベルの開閉操作を繰り返し行うタイプのものであってよい。このような包装箱の場合、蓋ラベルのシール面と包装箱との接着及び剥離が繰り返し行われると、蓋ラベルのシール面が接着される部分には大きな負荷(引張応力)がかかる。このような部分に装飾シート10を用いれば、蓋ラベルの開閉操作を繰り返し行っても、当該部分の層間剥離及び破損等を十分に抑制することができる。このため、包装箱に補強フィルムを設けなくても、包装箱及び包装体は十分に優れた耐久性を有する。補強フィルムを設ける必要がないことから、包装箱(包装体)の製造プロセスを簡素化できるとともに、包装箱(包装体)の外観を一層良好にすることができる。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば装飾シートは、任意の層を備えていてもよい。また、包装箱及び包装体の外形も図示のものに限定されない。
【実施例0055】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0056】
[装飾シートの作製]
(実施例1)
市販の耐水紙(三菱製紙株式会社製の「N三菱耐水」、秤量350g/m)を準備した。この耐水紙は、樹脂及びパルプ等の紙料を含む紙層と、顔料(クレー)を含有する顔料含有層とを有する二層構造を有していた。ポリエチレン樹脂を含有するホットメルト接着剤層が二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ:20μm)の一方面に設けられた積層物(ジェイフィルム株式会社製のラミータックMSOK(商品名)を準備した。この積層物のホットメルト接着剤層と、耐水紙の顔料含有層とが対向するようにして、耐水紙と積層物を重ね合わせて加熱し、接着して積層体を得た。
【0057】
PETフィルム(厚み:12μm)にアルミニウムの蒸着膜(厚み:10~100nm)が形成された金属蒸着フィルムと、ポリウレタン系の接着剤(主剤:AD391-A(商品名),硬化剤:AD391-B(商品名)、ともに東洋モートン株式会社製)を、それぞれ準備した。ドライラミネートによって、この接着剤を介してPETフィルムと二軸延伸ポリプロピレンフィルムとが対向するようにして、積層体と金属蒸着フィルムとを接着した。このようにして、耐水紙と、ホットメルト接着剤で構成される樹脂コート層と、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと、エポキシ系接着剤層と、PETフィルムと、金属膜(アルミニウム蒸着膜)と、をこの順に備える装飾シートを得た。
【0058】
(実施例2)
市販の耐水紙(日本製紙株式会社製の「エコバリーK」、秤量:400g/m)を準備した。この耐水紙は、図1に示すように樹脂で構成される樹脂層11aと、樹脂及びパルプ等の紙料を含む紙層11bと、顔料(クレー)を含有する顔料含有層11cとを有する積層構造を有していた。この耐水紙を用いたこと以外は、実施例1と同じ手順で装飾シートを作製した。実施例2の装飾シートは図1に示す積層構造を有していた。
【0059】
(比較例1)
実施例1で用いた耐水紙を比較例1とした。
【0060】
(比較例2)
耐水紙ではない一般紙(秤量:310g/m、OKフレースPRO(商品名)、王子製紙株式会社製)を準備した。ドライラミネートによって、ポリウレタン系の系接着剤(塗布量:4.3g/m)を介してPETフィルムと一般紙とが対向するようにして、一般紙と金属蒸着フィルムとを接着した。このようにして、一般紙、接着剤層、PETフィルム及び金属膜(アルミニウム蒸着膜)からなる積層構造を有する装飾シートを得た。
【0061】
(比較例3)
樹脂コート層及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムを設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして装飾シートを作製した。すなわち、耐水紙の顔料含有層と金属蒸着フィルムのPETフィルムとを、ポリウレタン系の接着剤で接着して装飾シートを得た。この装飾シートは、耐水紙、接着剤層、PETフィルム及び金属膜(アルミニウム蒸着膜)からなる積層構造を有していた。
【0062】
(比較例4)
実施例2で用いた耐水紙を比較例4とした。
【0063】
[エッジウィック値の測定]
各実施例及び各比較例で得られた装飾シートの表側と裏側の表面全体にラミネートフィルムを貼り付けた。その後、長方形(15mm×100mm)にカットして試験サンプルを得た。続いて、水浸漬前の試験サンプルの質量を測定した。その後、23℃の水中に1~24時間浸漬し、水中から取り出して試験サンプルの質量を測定した。試験サンプルの水浸漬前後の質量から、以下の式でエッジウィック値を算出した。結果は、表1に示すとおりであった。
エッジウィック値=試験サンプルの浸漬前後の質量差/カット後の装飾シートの4端面の合計面積
【0064】
[はく離接着強さの測定]
各実施例及び各比較例で得られた装飾シートを、カットして長方形(15mm×100mm)の試験サンプルを得た。JIS K 6854-1:1999に準拠して、各装飾シートのはく離接着強さを測定した。上述のエッジウィック値測定後の試験サンプルについても同様にして測定した。はく離接着強さの測定の具体的な手順は以下のとおりとした。端部における層間(耐水紙と樹脂コート層との界面)を剥離した後、角度:180°、引張速度:300mm/min、及び20℃の条件で引張試験機を用いて、層間のはく離接着強さを測定した。このはく離接着強さの測定結果は表1に示すとおりであった。表1中、「水浸漬無し」とはエッジウィック試験を行っていない場合の測定値であり、「水浸漬後」とはエッジウィック試験を行った後の測定値である。表1のエッジウィック値の数値の単位は「mg/mm」であり、はく離接着強さの数値の単位は「N/15mm」である。
【0065】
【表1】
【0066】
同じ耐水紙を用いた実施例1と比較例1,2,3のエッジウィック値を比較すると、樹脂コート層及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムを有する実施例1のエッジウィック値が最も低かった。同じ耐水紙を用いた実施例2と比較例4との比較でも同様の傾向であった。このことから、樹脂コート層及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムを設けることによってエッジウィック値を低減できることが確認された。
【0067】
はく離接着強さの結果から、実施例1,2は、比較例1~4よりも十分に高い接着強度を有することが確認された。また、実施例1,2は、水分と接触しても十分な耐久性を維持できることが確認された。
【0068】
実施例1,2及び比較例3のはく離接着強さを測定した後に、各測定サンプルのはく離面を目視で観察したところ、いずれも、耐水紙自体(顔料含有層自体)が裂けてはく離していることが確認された。実施例1と比較例3のはく離面(どちらも、水浸漬無しのサンプル)のIR測定を行った。図3は、実施例1の装飾シートのはく離面(耐水紙側のはく離面は「1」の吸収スペクトル、金属膜側のはく離面は「2」の吸収スペクトル)のIR測定結果を示している。また、図3には、対照「3」として、実施例1で用いた耐水紙の顔料含有層側の吸収スペクトルも併せて示した。この結果によれば、対照である耐水紙自体(吸収スペクトル3)には2900cm-1付近に吸収ピークが存在しないのに対し、耐水紙側のはく離面(吸収スペクトル1)と金属膜側のはく離面(吸収スペクトル2)では双方に、2900cm-1付近に吸収ピークが検出された。この吸収ピークは樹脂コート層(ポリエチレン樹脂)を構成する樹脂成分によるアルカンの炭素-水素結合の伸縮振動に由来すると考えられる。
【0069】
すなわち、実施例1の装飾シートは、耐水紙の顔料含有層ではく離していたが、耐水紙側のはく離面にも樹脂コート層を構成する樹脂成分に由来するピークが検出されていることから、耐水紙にポリエチレン樹脂に含まれる樹脂成分が浸透していることが示されている。このように耐水紙が隣接する樹脂コート層に由来する樹脂成分を含有することによって、耐水紙と樹脂コート層との接着力が向上するとともに、耐水性も向上したものと考えらえれる。
【0070】
図4は、比較例3の装飾シートのはく離面(耐水紙側のはく離面と金属膜側のはく離面)のIR測定結果を示している。図4にも、対照として、実施例1で用いた耐水紙の顔料含有層側のIR測定結果を併せて示している。図4中の1,2,3の各符号の意味は、図3と同じである。この比較例3でも、耐水紙自体が裂けてはく離していたが、耐水紙側のはく離面と金属膜側のはく離面は、どちらも耐水紙自体と同様のスペクトルを示していた。したがって、隣接する接着剤層から耐水紙の顔料含有層への樹脂成分の浸透は生じていないと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本開示によれば、耐水紙を備えつつも優れた耐久性を有する装飾シートを提供することができる。また、耐水紙を備えつつも優れた耐久性を有する包装箱及び包装体を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…装飾シート、10A,10B…表面、11…耐水紙、11a…樹脂層、11b…紙層、11c…顔料含有層、12…樹脂コート層、13…二軸延伸ポリプロピレンフィルム、14…接着剤層、16…PETフィルム、18…金属膜。
図1
図2
図3
図4