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  • 特開-紙容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084892
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】紙容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199267
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浦川 直也
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛史
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA02
3E013BB06
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC06
3E013BC12
3E013BC13
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
(57)【要約】
【課題】内容物を収容して、この収容した内容物を残さず取り出すことができる紙容器を提供すること。
【解決手段】紙容器本体11とプラスチックフィルム12とで紙容器10を構成する。紙容器本体11は、底面11aと、この底面11aの周縁から立ち上がった側壁11bとを有して、これら底面11aと側壁11bとに囲まれた空間を内容物収容部としている。また、紙容器本体11の側壁11b上端の周囲にフランジ11cが設けられている。一方、プラスチックフィルム12はその厚さが30~500μmであり、その周縁が紙容器本体の前記フランジ11cに固定されていると共に、その中央部が紙容器本体11の前記内容物収容部の内部に向けて弛んでいる。また、プラスチックフィルム12は紙容器本体11の前記底面11aとの間に間隙を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙容器本体とプラスチックフィルムとで構成され、
前記紙容器本体が、底面と、この底面の周縁から立ち上がった側壁とを有して、これら底面と側壁とに囲まれた空間を内容物収容部としており、かつ、側壁上端の周囲に設けられたフランジを有しており、
前記プラスチックフィルムの厚さが30~500μmであり、
前記プラスチックフィルムの周縁が紙容器本体の前記フランジに固定されていると共に、その中央部が紙容器本体の前記内容物収容部の内部に向けて弛んでおり、かつ、紙容器本体の前記底面との間に間隙を有することを特徴とする紙容器。
【請求項2】
前記プラスチックフィルムが電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有することを特徴とする請求項1に記載の紙容器。
【請求項3】
前記紙容器本体がトレー状容器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙容器。
【請求項4】
前記紙容器本体がカップ状容器であることを特徴とする請求項1又は2に記載の紙容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容して、この収容した内容物を残さず取り出すことができる紙容器に関する。
【背景技術】
【0002】
紙容器本体とプラスチックフィルムとで構成されたトレー状容器やカップ状容器は周知であり、例えば特許文献1,2に記載されている。
【0003】
これらトレー状紙容器やカップ状紙容器は、底面と、この底面の周縁から立ち上がった側壁とを有して構成されており、底面と側壁とは互いに交差して角部を構成している。このため、これらトレー状紙容器やカップ状紙容器に収容した内容物を、例えばスプーン等で取り出す場合には、この角部に内容物が残ってしまい、残らず取り出すことができなかった。
【0004】
また、角部を避けてその中央部に内容物を載置した場合にも、輸送時の振動で内容物が型崩れを起こし、内容物が角部に移動し、その結果、内容物を残らず取り出すことができないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-6071号公報
【特許文献2】特開2019-1494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、内容物を収容して、この収容した内容物を残さず取り出すことができる紙容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明は、紙容器本体とプラスチックフィルムとで構成され、
前記紙容器本体が、底面と、この底面の周縁から立ち上がった側壁とを有して、これら底面と側壁とに囲まれた空間を内容物収容部としており、かつ、側壁上端の周囲に設けられたフランジを有しており、
前記プラスチックフィルムの厚さが30~500μmであり、
前記プラスチックフィルムの周縁が紙容器本体の前記フランジに固定されていると共に、その中央部が紙容器本体の前記内容物収容部の内部に向けて弛んでおり、かつ、紙容器本体の前記底面との間に間隙を有することを特徴とする紙容器である。
【0008】
前記プラスチックフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有することが望ましい。
【0009】
前記紙容器本体は、その横断面が多角形状のトレー状容器であってもよいし、円形状のカップ状容器であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、プラスチックフィルムの周縁が紙容器本体の前記フランジに固定
され、その中央部が紙容器本体の内容物収容部の内部に配置されており、その中央部が紙容器本体の前記内容物収容部の内部に向けて弛んでいるから、この弛みによってその中央部が曲面を有している。そして、この曲面状中央部に載置された内容物を、例えばスプーン等で前記曲面状中央部に沿うように移動させることで、内容物を残さず取り出すことが可能である。
【0011】
また、このようにプラスチックフィルムが弛んでいて、この弛んだ中央部に内容物を載置することにより、輸送時に振動が加えられても、弛んだプラスチックフィルムがこの振動を吸収するから、内容物の型崩れが起きることがない。
【0012】
なお、プラスチックフィルムの厚さが30~500μmであるため、スプーン等で内容物を掬い上げるときにもプラスチックフィルムが破れることがなく、また、輸送時に振動が加えられたときにも、プラスチックフィルムが破れたり、内容物が型崩れしたりすることがない。
【0013】
さらに、プラスチックフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有する場合には、内容物をプラスチックフィルムの中央部に載置したまま、電子レンジ加熱することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施の形態に係る紙容器の説明用断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態に係る紙容器を説明する。図1はその説明用断面図である。
【0016】
この図1から分かるように、紙容器10は、紙容器本体11とプラスチックフィルム12とで構成されている。
【0017】
紙容器本体11は、底面11aと、この底面11aの周縁から立ち上がった側壁11bとを有しており、これら底面11aと側壁11bとに囲まれた空間を内容物収容部としている。また、紙容器本体11には、前記側壁11bの上端から紙容器本体11の外側に向けて張り出したフランジを有している。
【0018】
この紙容器本体11は、これを構成する紙を折り畳んで形成したトレー状容器であってもよいし、1枚の紙を丸めて前記側壁11bとしたカップ状容器であってもよい。一般に、トレー状容器の横断面は多角形状であり、カップ状容器の横断面は円形状である。いずれの場合にも、側壁11bは、底面11aの周縁から鉛直方向に立ち上がっている必要はなく、図示のように、底面11aの周縁から斜め外側方向に立ち上がっていてもよい。
【0019】
また、紙容器本体11は、板紙を含む単層構成又は多層構成のブランクを折り畳み、あるいは丸めて形成することができる。その構造及び組み立て方法は周知の方法でよい。
【0020】
紙容器本体11を構成する板紙としては、坪量100~500g/m程度のものが使用できる。好ましくは坪量190~350g/m程度の板紙である。
【0021】
なお、後述のように、本発明の紙容器10においては紙容器本体11に内容物20が接触するわけではないから、紙容器本体11はこの板紙だけから成るブランクで構成することが可能である。もっとも、これに加えて、その他の樹脂や金属箔を積層した多層シートでブランクを構成することができる。板紙に積層する樹脂としては、ポリエチレン樹脂、
ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等を例示できる。また、金属蒸着膜や酸化アルミニウム蒸着膜を形成した蒸着フィルムであってもよい。金属箔としては、その代表例として、アルミニウム箔を例示できる。
【0022】
次に、プラスチックフィルム12は、紙容器本体11の内部でハンモック状に配置されて、内容物20が紙容器本体11に接しないように宙吊りする役割を果たすものである。このため、このプラスチックフィルム12の周縁は紙容器本体11のフランジ11cに接着固定されており、その中央部が紙容器本体11の前記内容物収容部の内部に向けて弛んでいる。また、輸送時等において、紙容器10に振動が加えられたとき、この振動が内容物20に伝わることを防止するため、プラスチックフィルム12と紙容器本体11の底面11aとの間には間隙が設けられている。このようにプラスチックフィルム12中央部に載置された内容物20と紙容器本体11の底面11aとの間に間隙が設けることにより、紙容器10に振動が加えられたときにも、その振動をプラスチックフィルム12が吸収して、内容物20に振動することがないのである。
【0023】
このプラスチックフィルム12としては、厚さ30~500μmの単層構造又は多層構造のフィルムを使用することができる。厚さが30μm未満の場合には、例えば、スプーン等で内容物を掬い上げるとき、不用意に当たったスプーン等でフィルム12が破れることがある。また、輸送時の振動で破れてしまうこともある。一方、500μmを越えると、フィルム12の柔軟性が乏しく、このため、輸送時の振動で内容物20が型崩れすることがある。
【0024】
プラスチックフィルム12は延伸フィルムであっても良いし、無延伸フィルムであっても良い。好ましくは延伸フィルムである。
【0025】
また、プラスチックフィルム12を構成するプラスチックは任意であってよいが、電子レンジ加熱が予測される場合には、電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有することが望ましい。例えば、ポリプロピレン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、あるいはポリエステル樹脂である。プラスチックフィルム12が多層構造を有する場合であって、しかも、電子レンジ加熱が予測される場合には、プラスチックフィルム12を構成するすべてのプラスチックが、この電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有することが望ましい。
【0026】
また、プラスチックフィルム12が多層構造を有する場合には、その層構成の一部として、酸素バリア性あるいは水蒸気バリア性の層を設けることができる。例えば、前述のエチレン-ビニルアルコール樹脂は酸素バリア性を有することが知られている。
【0027】
この紙容器10は、次のように使用することができる。すなわち、図1に示すように、プラスチックフィルム12の中央部に内容物20を載置して、そのまま輸送する。例えば、店頭で調理した麻婆豆腐等の商品を内容物20として収容し、この内容物20の型崩れを起こすことなく自宅まで持ち帰ることができる。また、その内容物が電子レンジ加熱によって調理するものである場合には、プラスチックフィルム12を耐熱性のものとして、紙容器10に収容したまま加熱調理することが可能である。
【実施例0028】
以下、実施例によって本発明を説明する。これら実施例及び比較例は、プラスチックフィルム12の層構成及び厚さを変えて、スプーンによって残らず取り出すことができるか否か、輸送時の振動で、プラスチックフィルム12が破れたり、内容物が型崩れしたりすることがないか、電子レンジ加熱によってプラスチックフィルム12が破れることがないか、を調べたものである。このため、紙容器本体11としては、実施例及び比較例のいずれにおいても、同一のトレー状紙容器を使用した。
【0029】
(実施例1)
プラスチックフィルム12として、ヒートシール性ポリエステルフィルム(HS-PET)から成る単層構造のフィルムを使用した。このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。厚さは100μmである。
【0030】
(実施例2)
厚さを50μmとしたほかは、実施例1と同じHS-PETから成る単層構造のフィルムを使用した。
【0031】
(実施例3)
プラスチックフィルム12として、三層構造の共押出多層フィルムを使用した。その層構成は、表裏対称で、ポリプロピレン(PP)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)及びポリプロピレン(PP)をこの順に積層したものである。このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。厚さは100μmである。
【0032】
(実施例4)
厚さを50μmとしたほかは、実施例3と同じ三層構造のフィルムを使用した。
【0033】
(実施例5)
プラスチックフィルム12として、ポリエチレンフィルム(PE)から成る単層構造のフィルムを使用した。このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を持っていない。厚さは50μmである。
【0034】
(比較例1)
プラスチックフィルムとして、実施例3と同様に、HS-PETから成る単層構造のフィルムを使用した。但し、このフィルムは、紙容器本体11の内面側に貼り合わされており、もちろん、その中央部が弛んでいないし、このフィルムと紙容器本体11の底面11aとの間に間隙もない。なお、このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。厚さは50μmである。
【0035】
(比較例2)
プラスチックフィルムとして、実施例4と同様に、PP、EVOH及びPPをこの順に積層した三層構造のフィルムを使用した。但し、このフィルムは、紙容器本体11の内面側に貼り合わされており、もちろん、その中央部が弛んでいないし、このフィルムと紙容器本体11の底面11aとの間に間隙もない。なお、このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。厚さは50μmである。
【0036】
(比較例3)
プラスチックフィルムとして、HS-PETから成る単層構造のフィルムを使用した。このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。但し、厚さは30μmより薄く、12μmである。
【0037】
(比較例4)
プラスチックフィルムとして、PP、EVOH及びPPをこの順に積層した三層構造のフィルムを使用した。このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。但し、厚さは500μmより厚く、800μmである。
【0038】
(比較例5)
プラスチックフィルムとして、HS-PETから成る単層構造のフィルムを使用した。このフィルムは電子レンジ加熱によって溶けることのない耐熱性を有している。但し、厚さは500μmより厚く、800μmである。
【0039】
(試験)
これら実施例1~5及び比較例1~5のトレー状紙容器のプラスチックフィルム12の中央部に、麻婆豆腐200gを載置して、この収容済のトレー状紙容器について、次の3つの観点から試験し、評価した。なお、比較例1,2については、トレー状紙容器の略中央に麻婆豆腐200gを載置した。
残量‥内容物をスプーンで掬って取り出した後、トレー状紙容器に残った残量を評価した。
輸送試験‥JIS Z0200に基づき、段ボールに入れて集合の輸送試験を行った。ランダム振動試験を行い、レベル1で内容物が型崩れを起こしていたものを「×」、型崩れを起こしていないものを「〇」、少し崩れているものを「△」と評価した。
電子レンジ‥電子レンジ加熱して、プラスチックフィルム12が溶けたか否かを評価した。溶けたものを「×」、溶けなかったものを「〇」と評価した。
【0040】
これらの結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【符号の説明】
【0042】
10:紙容器
11:紙容器本体 11a:底面 11b:側壁 11c:フランジ
12:プラスチックフィルム
20:内容物
図1