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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023084945
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】HIFU照射装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 7/00 20060101AFI20230613BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61N7/00
A61B8/00
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021199354
(22)【出願日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】720007925
【氏名又は名称】ソニア・セラピューティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植山 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
【テーマコード(参考)】
4C160
4C601
【Fターム(参考)】
4C160JJ33
4C160JJ35
4C160JJ36
4C601FF11
4C601GC02
4C601GC12
(57)【要約】
【課題】本発明は、HIFU照射装置の位置合わせ作業を容易にすることを目的とする。
【解決手段】
HIFU照射装置100は、HIFU振動子ユニット30、超音波プローブ36、カップリング袋38、液体供給器102、およびプローブ駆動機構50を備えている。HIFU振動子ユニット30は、筐体32と、筐体32に固定された複数の超音波振動子34とを備える。超音波プローブ36は、先端部を患者側に向けて筐体32に取り付けられている。カップリング袋38は、筐体32および超音波プローブ10を患者側から覆い、筐体32および超音波プローブ36との間に液体を保持する。液体供給器102は、カップリング袋38に液体を流入させ、または、カップリング袋38から液体を流出させる。プローブ駆動機構50は、筐体32から患者に向けて超音波プローブ38が突出する長さを調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、当該筐体に固定された複数の超音波振動子とを備えるHIFU振動子ユニットと、
先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、
前記筐体および前記超音波プローブを患者側から覆うカップリング袋であって、前記筐体および前記超音波プローブとの間に液体を保持するカップリング袋と、
前記カップリング袋に前記液体を流入させ、または、前記カップリング袋から前記液体を流出させる液体供給器と、
前記筐体から前記患者に向けて前記超音波プローブが突出する長さを調整するプローブ駆動機構と、
を備えることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のHIFU照射装置において、
前記液体供給器および前記プローブ駆動機構を制御する制御器を備え、
前記超音波プローブの状態には、
第1の長さで前記筐体から突出する収縮状態と、前記第1の長さよりも長い第2の長さで前記筐体から突出する伸展状態のいずれかの状態があり、
前記制御器は、
前記超音波プローブの状態が前記伸展状態であるときに、前記液体供給器を制御して、前記液体を前記カップリング袋から流出させ、さらに、前記カップリング袋から流出した前記液体の体積を測定し、前記超音波プローブの状態が施術状態となるときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載のHIFU照射装置において、
前記カップリング袋が物体に接触したことを検出する接触検出器を備え、
前記制御器は、
前記超音波プローブが前記伸展状態にあり、前記カップリング袋から前記液体が流出した状態で、前記カップリング袋が前記物体に接触したときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のHIFU照射装置において、
前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を搬送する搬送機構を備え、
前記制御器は、
前記カップリング袋が前記患者に接触している場合における前記超音波プローブの位置合わせ完了位置を記憶し、
前記カップリング袋が前記患者から離れるように、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を前記搬送機構に搬送させた後に、前記超音波プローブの位置が前記位置合わせ完了位置に一致、または近付くように、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を前記搬送機構に搬送させることを特徴とするHIFU照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HIFU照射装置に関し、特に、その制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度焦点式超音波療法を用いた治療装置が広く用いられている。この治療装置は、HIFU照射装置あるいはHIFU照射システムと称され(High Intensity Focused Ultrasound)、治療部位に超音波を照射して組織を壊死させる。
【0003】
一般に、HIFU照射装置は、椀状の面に配置された複数の超音波振動子を備えている。複数の超音波振動子は、それぞれから発せられた超音波が一点に照射され焦点を形成するように配置されている。治療の際には、焦点の位置が治療部位に合わせられ超音波が照射される。照射位置の確認には、超音波画像上に焦点を表す超音波診断装置が用いられる。
【0004】
以下の特許文献1には、Bモード画像(断層画像)を表示する超音波診断装置を用いて焦点の位置を観測する超音波治療装置が記載されている。この装置では、組織に影響のない弱いレベルの超音波が治療用の超音波振動子から発せられると共に、超音波イメージングプローブによる超音波の送受信によって断層画像が表示される。被検体の組織の音響特性は組織の温度変化に応じて変化するため、断層画像には焦点の位置が輝度の強弱によって示される。
【0005】
特許文献2には、超音波を患者に照射するプローブと水中カメラが貯留体内に配置された超音波腫瘍治療装置が記載されている。貯留体には脱気水が満たされている。貯留体に設けられた穴から水中カメラによって患者を撮影しながら、プローブの位置を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-71069号公報
【特許文献2】特開2008-22956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
HIFU照射装置によって患部を治療する場合、治療用の複数の超音波振動子と、超音波画像を生成するための超音波プローブの位置を、患者に対して適切に設定する位置合わせ作業が行われる。HIFU照射装置には、治療用の超音波振動子と超音波プローブが音響インピーダンス整合用の水袋によって覆われているものがある。このようなHIFU照射装置では、ユーザが超音波プローブを視認し難いため、位置合わせ作業が困難となることがある。
【0008】
本発明は、HIFU照射装置の位置合わせ作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、筐体と、当該筐体に固定された複数の超音波振動子とを備えるHIFU振動子ユニットと、先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、前記筐体および前記超音波プローブを患者側から覆うカップリング袋であって、前記筐体および前記超音波プローブとの間に液体を保持するカップリング袋と、前記カップリング袋に前記液体を流入させ、または、前記カップリング袋から前記液体を流出させる液体供給器と、前記筐体から前記患者に向けて前記超音波プローブが突出する長さを調整するプローブ駆動機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
望ましくは、前記液体供給器および前記プローブ駆動機構を制御する制御器を備え、前記超音波プローブの状態には、第1の長さで前記筐体から突出する収縮状態と、前記第1の長さよりも長い第2の長さで前記筐体から突出する伸展状態のいずれかの状態があり、前記制御器は、前記超音波プローブの状態が前記伸展状態であるときに、前記液体供給器を制御して、前記液体を前記カップリング袋から流出させ、さらに、前記カップリング袋から流出した前記液体の体積を測定し、前記超音波プローブの状態が施術状態となるときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させる。
【0011】
望ましくは、前記カップリング袋が物体に接触したことを検出する接触検出器を備え、前記制御器は、前記超音波プローブが前記伸展状態にあり、前記カップリング袋から前記液体が流出した状態で、前記カップリング袋が前記物体に接触したときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させる。
【0012】
望ましくは、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を搬送する搬送機構を備え、前記制御器は、前記カップリング袋が前記患者に接触している場合における前記超音波プローブの位置合わせ完了位置を記憶し、前記カップリング袋が前記患者から離れるように、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を前記搬送機構に搬送させた後に、前記超音波プローブの位置が前記位置合わせ完了位置に一致、または近付くように、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を前記搬送機構に搬送させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、HIFU照射装置の位置合わせ作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るHIFU照射装置の構成を示す図である。
図2】超音波プローブを駆動する構成要素を示す図である。
図3】可動体の位置を設定する手順の概略を示す図である。
図4】液体供給器の構成を示す図である。
図5】可動体の位置を合わせる手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本発明の実施形態に係るHIFU照射装置100の構成が示されている。HIFU照射装置100は、可動体10、ロボットアーム12、超音波画像検出装置14、駆動アンプ16、ロボットコントローラ18および制御器20を備えている。可動体10は、HIFU振動子ユニット30、超音波プローブ36、プローブ駆動機構50およびカップリング袋38を備えている。
【0016】
HIFU振動子ユニット30は、開口が下方に向けられた容器形状の筐体32と、筐体32に固定された複数の超音波振動子34を備えている。複数の超音波振動子34は、例えば上に凸の湾曲面状に配置され、各超音波振動子34が超音波を発したときに、筐体32の下方の治療基準点Pで、超音波の強度が強められるように筐体32に固定されている。すなわち、各超音波振動子34は、各超音波振動子34が超音波を発したときに、治療基準点Pに焦点が形成されるように筐体32に固定されている。
【0017】
超音波プローブ36は、筐体32の下方、かつ、治療基準点Pの上方の位置で超音波が送受信されるように、筐体32に取り付けられている。本実施形態では、筐体32を超音波プローブ36が上下方向に貫通し、超音波を送受信する先端部が下方、すなわち患者側に向けられている。
【0018】
HIFU振動子ユニット30の下方には、各超音波振動子34と患者との間、および超音波プローブ36と患者との間の音響インピーダンスを整合させるカップリング袋38が設けられている。カップリング袋38は、水等の液体が充填された袋であってよい。カップリング袋38は、筐体32および超音波プローブ36との間に液体を保持する。
【0019】
可動体10は、搬送機構としてのロボットアーム12の先端部に取り付けられている。ロボットアーム12は、関節12bによって接続された複数のアーム12aから構成されており、関節12bを介して固定台40に取り付けられている。各アーム12aが関節12bを回転軸として揺動することで、可動体10を任意の方向に搬送する。
【0020】
制御器20は、ロボットコントローラ18、駆動アンプ16、HIFU振動子ユニット30および超音波画像検出装置14を制御する。制御器20は、プログラムを実行することで、これらの機器(ロボットコントローラ18、駆動アンプ16、HIFU振動子ユニット30および超音波画像検出装置14)を制御するコンピュータを含んでよい。コンピュータは、業務用コンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ等であってよい。制御器20には、ユーザがHIFU照射装置100を操作するための操作機器(図示せず)が接続されている。操作機器は、マウス、超音波画像検出装置14のディスプレイと一体化されたタッチパネル、スイッチ、キーボード等を含んでよい。
【0021】
ロボットコントローラ18は、制御器20の制御に従ってロボットアーム12を駆動し、ロボットアーム12に可動体10を搬送させて可動体10の位置を調整する。また、ロボットコントローラ18は操作機器を備えてもよい。この場合、ロボットコントローラ18は、ユーザによる操作機器の操作に応じてロボットアーム12を制御してもよい。駆動アンプ16は、制御器20の制御に従って、プローブ駆動機構50を駆動し、超音波プローブ36を上下方向に移動させる。HIFU振動子ユニット30は、制御器20の制御に従って、治療用の超音波を送信する。超音波画像検出装置14は、Bモード画像を生成し表示する超音波診断装置であってよい。超音波画像検出装置14は、制御器20の制御に従ってBモード画像を生成し、Bモード画像をディスプレイに表示する。
【0022】
図2には、超音波プローブ36を駆動する構成要素として、HIFU振動子ユニット30、プローブ駆動機構50、駆動アンプ16および制御器20が示されている。制御器20は、駆動アンプ16に制御信号を出力し、プローブ駆動機構50は、制御信号に従って、超音波プローブ36を筐体32から患者に向かう方向、または、患者から筐体32に向かう方向に移動させる。すなわち、プローブ駆動機構50は、超音波プローブ36を上下方向に移動させることで、筐体32から患者に向けて超音波プローブ36が突出する長さを調整する。
【0023】
超音波プローブ36の状態には、第1の長さで筐体32から突出する収縮状態と、第1の長さよりも長い第2の長さで筐体32から突出する伸展状態のいずれかの状態がある。図2には、伸展状態の超音波プローブ36が実線で示され、収縮状態の超音波プローブ36が一点鎖線で示されている。
【0024】
図3には、可動体10の位置を設定する手順の概略が示されている。図3(a)に示されているように、HIFU治療を患者52に施す前において、超音波プローブ36は収縮状態とされる。次に、図3(b)に示されているように、超音波プローブ36を筐体32から下方に突出させることで、超音波プローブ36は伸展状態とされる。超音波プローブ36が伸展状態とされた後、カップリング袋38内の液体の一部または全部を流出させる。これによって、図3(c)に示されるように、カップリング袋38が萎んだ状態となり、カップリング袋38の形状に基づいて、超音波プローブ36の位置をユーザ54が認識することが可能となる。
【0025】
超音波プローブ36が伸展状態にあり、カップリング袋38が萎んだ状態でロボットアーム12が駆動され、図3(d)に示されているように、患部に治療用超音波を照射するときの位置に超音波プローブ36の先端の位置が設定される。超音波プローブ36の位置が設定された後、カップリング袋38に液体を流入させ、図3(e)に示されているように、カップリング袋38が膨らんだ状態となる。
【0026】
図3(b)に示される状態から、図3(c)に示される状態に遷移する過程において、制御器20は、カップリング袋38から流出した液体の体積を流出量として測定する。図3(d)に示される状態から、図3(e)に示される状態に遷移する過程では、先に求められた流出量だけ、カップリング袋38に液体が流入してよい。
【0027】
HIFU療法が患者52に施される際には、超音波プローブ36の状態は、収縮状態または伸展状態のいずれであってもよい。また、第1の長さよりも長く、第2の長さよりも短い長さで、超音波プローブ36が筐体32から突出した中間状態でHIFU療法が患者に施されてもよい。すなわち、HIFU療法が患者52に施される際には、超音波プローブ36は、患部の観測に適した適切な長さで筐体32から突出する施術状態とされる。施術状態において超音波プローブ36が突出する長さが、伸展状態に比べて短い場合には、超音波プローブ36が突出する長さが短くなった長さに対応する体積の液体をカップリング袋38に流入させてもよい。
【0028】
このように、HIFU療法では、HIFU照射装置100において次のような処理が実行される。(i)超音波プローブ36の状態が伸展状態であるときに、カップリング袋38から液体を流出させる。(ii)カップリング袋38から流出する液体の体積を測定する処理を実行する。(iii)超音波プローブ36の状態が施術状態となるときに、測定された体積に応じて、カップリング袋38に液体を流入させる。
【0029】
このような手順によれば、可動体10の位置が合わせられる際には、図3(c)および(d)に示されるように、超音波プローブ36は、その位置が認識可能な状態となる。これによって、ユーザ54が目視によって可動体10の位置を合わせることが容易となる。
【0030】
図4は、カップリング袋38に液体を流入させ、またはカップリング袋38から液体を流出させる液体供給器102の構成が示されている。液体供給器102は、タンク60、供給ポンプ64、排出ポンプ66、液体量センサ68、液体量センサ70および脱気装置62を備えている。供給ポンプ64および排出ポンプ66は、制御器20によって動作状態または停止状態に制御される。タンク60には水等の液体が貯蔵される。供給ポンプ64は、脱気装置62を介してタンク60から液体を吸引し、液体量センサ68を介してカップリング袋38に液体を供給する。脱気装置62は液体から気体を取り除く。液体量センサ68はカップリング袋38に流入した液体の体積を測定し、流入体積の測定値を制御器20に出力する。排出ポンプ66は、カップリング袋38から液体を吸引し、液体量センサ70を介してタンク60に液体を供給する。液体量センサ70は、カップリング袋38から流出した液体の体積を測定し、流出体積の測定値を制御器20に出力する。
【0031】
制御器20は、供給ポンプ64を停止した状態で、排出ポンプ66を動作させることで、カップリング袋38からタンク60に液体を流出させる。また、制御器20は、排出ポンプ66を停止した状態で、供給ポンプ64を動作させることで、タンク60からカップリング袋38に液体を流入させる。
【0032】
図5には、HIFU療法において可動体10の位置を合わせる手順を示すフローチャートが示されている。1つのステップから次のステップへの移行は、ユーザの操作に応じて行われてもよいし、制御器20によって自動的に行われてもよい。また、各ステップは、ユーザの操作に応じて実行されてよい。最初にカップリング袋38は膨らんだ状態にあり、超音波プローブ36は収縮状態にあるものとする。また、制御器20は、カップリング袋38を膨らませるためにカップリング袋38に流入させる液体の体積(流入量)を予め記憶しているものとする
【0033】
最初に制御器20は、プローブ駆動機構50を制御して、超音波プローブ36を伸展状態とする(S11)。制御器20は、排出すべき液体の体積を流入量から計算し、排出ポンプ66を動作させて、その計算された体積だけカップリング袋38から液体を流出させる(S12)。これによって、カップリング袋38が萎み、超音波プローブ36の先端部の位置がユーザに視認される。制御器20は、ロボットコントローラ18を制御してロボットアーム12を駆動し、患者に予め付された印に超音波プローブ36の先端部を合わせる(S13)。
【0034】
制御器20は、超音波画像検出装置14を制御して、患者のBモード画像を超音波画像検出装置14に表示させる(S14)。ユーザは、Bモード画像を参照し、HIFU振動子ユニット30の焦点が患部に合わせられていることを確認する。焦点が患部に合わせられていないときは、制御器20はユーザの操作に応じてロボットコントローラ18を制御してロボットアーム12を駆動する。ユーザは、操作機器の操作によって、焦点を患部に合わせる。
【0035】
焦点が患部に合わせられた後、制御器20は、供給ポンプ64を制御して、ステップS12でカップリング袋38から流出した液体の体積(流出量)と同一体積の液体をカップリング袋38に流入させると共に(S15)、プローブ駆動機構50を制御して、超音波プローブ36を施術状態とする(S16)。
【0036】
本実施形態に係るHIFU照射装置100は、超音波プローブ36が施術状態とされた後に、可動体10の位置をユーザが確認できるように構成されている。制御器20は、このような確認処理を実行するための操作待ちの状態となる(S17)。すなわち、制御器20は、確認処理を実行するための確認処理操作がユーザによって行われたか否かを判定する(S17)。制御器20は、確認処理操作が行われなかったときは処理を終了する。確認処理操作が行われなかったことの判定は、ユーザが処理を終了させる操作を行ったか否かによってなされてよい。また、制御器20は、操作待ちの状態で予め定められた時間に亘ってユーザによる操作が行われなかったときに、確認処理操作が行われなかったと判断してもよい。
【0037】
制御器20は、確認処理操作が行われたときは、ロボットコントローラ18に超音波プローブ36の位置を測定させ、測定値を取得する(S18)。制御器20は、ロボットコントローラ18を制御してロボットアーム12を駆動し、カップリング袋38が患者から離れるように可動体10を移動させる(S19)。これによって、患者の体表がカップリング袋38によって遮られない状態となる。ステップS13において、カップリング袋38を介して超音波プローブ36が患者に押し付けられた場合には、ユーザは超音波プローブ36が押し付けられた跡から、可動体10の位置が適切であるか否かを確認してよい。また、この状態で、患者とカップリング袋38との接触状態を良好にするためのジェルが患者に塗布されてもよい。ユーザによる確認が行われた後、制御器20は、ロボットコントローラ18を制御してロボットアーム12を駆動し、ステップS18で測定された位置に可動体10を移動させ、可動体10の位置を戻す(S20)。これによって、可動体10は、再び、施術に適した位置に合わせられる。
【0038】
このように、制御器20は、ステップS16においてカップリング袋38が患者に接触している場合における超音波プローブ36の位置合わせ完了位置を記憶する。制御器20は、カップリング袋38が患者から離れるように、可動体10(HIFU振動子ユニット30、超音波プローブ36およびカップリング袋38)をロボットアーム12(搬送機構)に搬送させる。制御器20は、さらに、超音波プローブ36の位置が位置合わせ完了位置に一致、または近付くように、可動体10をロボットアーム12に搬送させる。
【0039】
なお、ステップS13において超音波プローブ36の先端部が、患者に接触したときには、自動的にカップリング袋38に液体が流入する処理が実行されてもよい。この場合、超音波プローブ36の先端部が患者に接触したことを検出するセンサが、可動体10、ロボットアーム12等に設けられてよい。また、超音波画像検出装置14で生成されるBモード画像によって、超音波プローブ36の先端部が患者に接触したことを検出する処理が、制御器20によって実行されてもよい。制御器20は、超音波プローブ36の先端部が、患者に接触したときに供給ポンプ64を動作させて、カップリング袋38に液体を流入させる。
【0040】
このように、HIFU照射装置100は、カップリング袋38が患者(物体)に接触したことを検出する接触検出器を備えてもよい。接触検出器は、超音波プローブ36の先端部が患者に接触したことを検出するセンサであってよい。また、超音波画像検出装置14で生成されるBモード画像によって、超音波プローブ36の先端部が患者に接触したことを検出する処理を制御器20が実行することで、接触検出器が構成されてもよい。制御器20は、超音波プローブ36が伸展状態にあり、カップリング袋38から液体が流出した状態で、物体としての患者にカップリング袋38が接触したことが検出されたことに応じて、カップリング袋38に液体を流入させる。
【0041】
図5のフローチャートに示されたステップS11~S13では、カップリング袋38から液体が流出し、カップリング袋38が萎んだ状態となる。さらに、超音波プローブ36は伸展した状態となっており、超音波プローブ36の先端部の位置をユーザが視認し易い状態が実現されている。これによって、HIFU照射装置100の位置合わせ作業、すなわち、ユーザが可動体10の位置を設定する作業が容易となる。また、ステップS17~S20では、位置合わせ作業が行われた後にカップリング袋38を患者から離すことで、ユーザが確認処理を行うことが容易となる。
【符号の説明】
【0042】
10 可動体、12 ロボットアーム、14 超音波画像検出装置、16 駆動アンプ、18 ロボットコントローラ、20 制御器、30 HIFU振動子ユニット、32 筐体、34 超音波振動子、36 超音波プローブ、38 カップリング袋、50 プローブ駆動機構、52 患者、54 ユーザ、60 タンク、62 脱気装置、64 供給ポンプ、66 排出ポンプ、68,70 液体量センサ、100 HIFU照射装置、102 液体供給器。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、当該筐体に固定された複数の超音波振動子とを備えるHIFU振動子ユニットと、
先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、
前記筐体および前記超音波プローブを前記患者側から覆うカップリング袋であって、前記筐体および前記超音波プローブとの間に液体を保持するカップリング袋と、
前記カップリング袋に前記液体を流入させることおよび、前記カップリング袋から前記液体を流出させることのそれぞれを個別に行う液体供給器と、
前記筐体から前記患者に向けて前記超音波プローブが突出する長さを調整するプローブ駆動機構と、
前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を含む可動体を搬送する搬送機構と、
を備え、
前記超音波プローブの状態には、
第1の長さで前記筐体から突出する収縮状態と、前記第1の長さよりも長い第2の長さで前記筐体から突出する伸展状態のいずれかの状態があり、
前記可動体が前記搬送機構によって搬送され得る状態にあるときに、前記超音波プローブが前記伸展状態となり、前記カップリング袋から前記液体が流出することで、前記カップリング袋が萎んで前記超音波プローブの先端部の位置がユーザに視認されることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項2】
請求項1に記載のHIFU照射装置において、
前記液体供給器および前記プローブ駆動機構を制御する制御器を備え、
記制御器は、
前記超音波プローブの状態が前記伸展状態であるときに、前記液体供給器を制御して、前記液体を前記カップリング袋から流出させ、さらに、前記カップリング袋から流出した前記液体の体積を測定し、前記超音波プローブの状態が施術状態となるときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項3】
請求項2に記載のHIFU照射装置において、
前記カップリング袋が物体に接触したことを検出する接触検出器を備え、
前記制御器は、
前記超音波プローブが前記伸展状態にあり、前記カップリング袋から前記液体が流出した状態で、前記カップリング袋が前記物体に接触したときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させることを特徴とするHIFU照射装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のHIFU照射装置において、
記制御器は、
前記カップリング袋が前記患者に接触し、前記カップリング袋に前記液体が流入した後における記超音波プローブの位置合わせ完了位置を記憶し、
前記カップリング袋が前記患者から離れるように、前記可動体を前記搬送機構に搬送させた後に、前記超音波プローブの位置が前記位置合わせ完了位置に一致、または近付くように、前記可動体を前記搬送機構に搬送させることを特徴とするHIFU照射装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明は、筐体と、当該筐体に固定された複数の超音波振動子とを備えるHIFU振動子ユニットと、先端部を患者側に向けて前記筐体に取り付けられた超音波プローブと、前記筐体および前記超音波プローブを前記患者側から覆うカップリング袋であって、前記筐体および前記超音波プローブとの間に液体を保持するカップリング袋と、前記カップリング袋に前記液体を流入させることおよび、前記カップリング袋から前記液体を流出させることのそれぞれを個別に行う液体供給器と、前記筐体から前記患者に向けて前記超音波プローブが突出する長さを調整するプローブ駆動機構と、前記HIFU振動子ユニット、前記超音波プローブおよび前記カップリング袋を含む可動体を搬送する搬送機構と、を備え、前記超音波プローブの状態には、第1の長さで前記筐体から突出する収縮状態と、前記第1の長さよりも長い第2の長さで前記筐体から突出する伸展状態のいずれかの状態があり、前記可動体が前記搬送機構によって搬送され得る状態にあるときに、前記超音波プローブが前記伸展状態となり、前記カップリング袋から前記液体が流出することで、前記カップリング袋が萎んで前記超音波プローブの先端部の位置がユーザに視認されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
望ましくは、前記液体供給器および前記プローブ駆動機構を制御する制御器を備え、記制御器は、前記超音波プローブの状態が前記伸展状態であるときに、前記液体供給器を制御して、前記液体を前記カップリング袋から流出させ、さらに、前記カップリング袋から流出した前記液体の体積を測定し、前記超音波プローブの状態が施術状態となるときに、測定された体積に応じて、前記カップリング袋に前記液体を流入させる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
望ましくは、記制御器は、前記カップリング袋が前記患者に接触し、前記カップリング袋に前記液体が流入した後における記超音波プローブの位置合わせ完了位置を記憶し、前記カップリング袋が前記患者から離れるように、前記可動体を前記搬送機構に搬送させた後に、前記超音波プローブの位置が前記位置合わせ完了位置に一致、または近付くように、前記可動体を前記搬送機構に搬送させる。