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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085370
(43)【公開日】2023-06-20
(54)【発明の名称】免疫調節剤を併用するがんの治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20230613BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230613BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023047018
(22)【出願日】2023-03-23
(62)【分割の表示】P 2021196940の分割
【原出願日】2017-01-20
(31)【優先権主張番号】62/281,571
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/301,981
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ウィリンガム,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,ドリス ポー イー
(72)【発明者】
【氏名】マッケンナ,ケリー マリー
(72)【発明者】
【氏名】ワイスマン,アーヴィング エル.
(72)【発明者】
【氏名】フォルクマ-,ジェンス-ピーター
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,マーク ピー.
(72)【発明者】
【氏名】マジェティ,ラビンドラ
(72)【発明者】
【氏名】マクラッケン,メリッサ エヌ.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】標的細胞と、免疫調節剤の組み合わせとの接触を含むレジメンにおける、枯渇のための、細胞(限定はされないが、がん細胞を含む)の標的化方法を提供する。
【解決手段】いくつかの実施形態では、接触は、インビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触は、インビトロで実施され、例えば、免疫エフェクター細胞のプライミングが行われた後、対象に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤を併用すると、単剤療法としての薬剤の投与と比較して相乗効果が生じる。例えば、標的化された抗腫瘍抗体、化学療法、放射線療法、手術、及び同様のものなどの通常の治療を含む治療レジメンにおいて免疫調節剤の組み合わせがさまざまな実施形態で投与される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞を標的化するために使用される医薬組成物であって、
図面に実質的に示されており、明細書に実質的に記載されている、
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
異常細胞を検出及び破壊するための免疫系の自然能力は、多くのがんの発症を防ぎ得るものである。しかしながら、がん細胞は、免疫系による検出及び破壊を回避できることがある。がん細胞は、その表面に存在する腫瘍抗原の発現を抑えることで、免疫系によるその検出を難化させ、免疫細胞の不活性化を誘導するタンパク質をその表面に発現し、及び/または免疫応答を抑制し、腫瘍細胞の増殖及び生存を促進する物質を微小環境中の細胞が放出するように誘導することができる。
【0002】
がん免疫療法は、免疫系の特定の構成要素を刺激するか、またはがん細胞が生成する免疫応答抑制シグナルを打ち消すことによって、腫瘍に対する免疫応答を増進させることを目的に開発されてきた。
【0003】
手法の1つは、免疫チェックポイントタンパク質を遮断するものであり、免疫チェックポイントタンパク質は、免疫応答の強度及び持続時間を制限するものである。こうしたタンパク質は、通常、異常細胞だけではなく正常細胞をも損傷し得る過度に激しい応答を防ぐことによって免疫応答を抑制している。免疫チェックポイントタンパク質の活性を遮断すると、免疫系に対する「ブレーキ」が解放されることで、がん細胞を破壊する能力が向上する。
【0004】
現在臨床的に使用されている免疫チェックポイント阻害剤には、イピリムマブが含まれ、イピリムマブは、CTLA4の活性を遮断するものであり、CTLA4は、活性化した細胞傷害性Tリンパ球の表面に発現する。CTLA4は、こうしたT細胞を不活性化する「スイッチ」として働くことによって免疫応答の強度を抑えているため、CTLA4を阻害すると、細胞傷害性T細胞の応答が増加する。FDAによる承認を受けたチェックポイント阻害剤には、ニボルマブ及びペンブロリズマブという2つが他に存在し、同様の様式で働くが、それらはPD-1を標的とする。
【0005】
他の形態の免疫療法では、例えば、インターロイキン及びインターフェロンなどの、がんに対する体の免疫応答を増進するための免疫系活性の制御または調節に通常は役立つタンパク質が使用される。腫瘍細胞抗原を標的とする抗体もまた、臨床的に使用される。
【0006】
他の形態の免疫療法では、自然免疫系が活用される。健康な細胞に存在する細胞表面タンパク質であるCD47、及びCD47と貪食細胞受容体であるSIRPαとの結合は、「don’t eat-me(私を食べるな)」という重要シグナルを構成しており、このシグナルは、アポトーシス細胞のクリアランス及びFcR介在性の食細胞作用を含む、複数の様相によって媒介される貪食を無効にすることができる。貪食細胞に存在するSIRPαのCD47介在性の結合を遮断するか、またはノックアウトマウスにおいてCD47の発現が減少すると、生細胞の除去及び未熟な赤血球が生じ得る。あるいは、SIRPαの認識を遮断すると、通常は食細胞作用を受けない標的の貪食も可能になる。抗CD47抗体による治療は、マクロファージによるがんの食細胞作用を可能にするだけでなく、細胞傷害性T細胞による抗腫瘍免疫応答も引き起こし得ることも示されている。
【0007】
関連刊行物には、“Engineered Sirp alpha Variants As Immunotherapeutic Adjuvants To Anticancer Antibodies.” Science 341(6141):88-91;Willingham,S.B.,J.P.Volkmer,Et Al.(2012)、“The Cd47-Signal Regulatory Protein Alpha(Sirpa)Interaction Is A Therapeutic Target For Human Solid Tumors.” Proc Natl Acad Sci U S A 109(17):6662-6667.Chao,M.P.,A.A.Alizadeh,Et Al.(2010)、“Anti-Cd47 Antibody Synergizes With Rituximab To Promote Phagocytosis And Eradicate Non-Hodgkin Lymphoma.”Cell 142(5):699-713が含まれる。
【発明の概要】
【0008】
標的細胞及びエフェクター細胞と、免疫調節性のシグナル伝達を調節する2つ以上の薬剤の組み合わせとの接触を含むレジメンにおける、枯渇のための細胞(限定はされないが、腫瘍細胞を含む)の標的化方法が提供される。いくつかの実施形態では、接触は、インビボで実施される。いくつかの実施形態では、接触は、インビトロで実施され、例えば、免疫エフェクター細胞のプライミングが行われた後、対象に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤を併用すると、単剤療法としての薬剤の投与と比較して相乗効果が生じる。例えば、標的化された抗腫瘍抗体、化学療法、放射線療法、手術、及び同様のものなどの通常の治療を含む治療レジメンにおいて免疫調節剤の組み合わせがさまざまな実施形態で投与される。
【0009】
本発明の利点は、単一の免疫調節剤として、またはCD47遮断剤を使用しない免疫調節剤の組み合わせとして必要な用量と比較して薬剤の使用用量が下がることであり得る。さらに、またはあるいは、本発明の利点は、単一の免疫調節剤としての治療、またはCD47遮断剤を使用しない免疫調節剤の組み合わせとしての治療に必要な時間の長さと比較して、治療に必要な時間の長さが短くなることであり得る。さらに、またはあるいは、本発明の利点は、単一の免疫調節剤での治療、またはCD47遮断剤を使用しない免疫調節剤の組み合わせでの治療の後に観測される応答と比較して応答が増進することであり得る。
【0010】
免疫調節性の調節剤には、(i)CD47の活性を遮断する薬剤、ならびに(ii)例えば、CD40、OX40などの免疫共刺激分子をアゴナイズする1つもしくは複数の薬剤、及び/または(iii)例えば、CTLA-4、PD1、PDL1などの免疫抑制分子をアンタゴナイズする薬剤が含まれる。活性薬剤は、宿主におけるがん細胞の枯渇に対する相加効果または相乗効果を得るために、一定期間内に投与される。投与方法には、限定はされないが、全身投与、腫瘍内投与などが含まれ、投与は、こうした投与方法によるものであり得る。通常、活性薬剤(i)は、約45日、約30日、約21日、約14日、約10日、約8日、約7日、約6日、約5日、約4日、約3日、約2日、約1日、または薬剤(ii)及び/または薬剤(iii)と実質的に同一の日というおよその期間内に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤(i)は、薬剤(ii)及び/または薬剤(iii)の前に投与される。いくつかの実施形態では、薬剤(i)は、薬剤(ii)及び/または薬剤(iii)の後に投与される。両方の薬剤の血清レベルが同時に治療レベルとなるように投与がスケジューリングされるのであれば、これらの薬剤は、併用されたと考えることができる。がん細胞集団を枯渇させる必要性に応じて投与を繰り返してよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、個体のがんは、そのがんがチェックポイント阻害剤に応答性のがん型であるという理由で、本発明の併用療法での治療に選択され、こうしたチェックポイント阻害剤は、例えば、PD1アンタゴニスト、PDL1アンタゴニスト、CTLA4アンタゴニスト、TIM-3アンタゴニスト、BTLAアンタゴニスト、VISTAアンタゴニスト、LAG3アンタゴニストなどである。いくつかの実施形態では、そのような免疫調節剤は、例えば、アベルマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、イピリムマブ、及び同様のものなどの、CTLA-4アンタゴニスト、PD1アンタゴニスト、またはPDL1アンタゴニストである。いくつかのそのような実施形態では、がんは、限定はされないが、メラノーマまたは小細胞肺癌である。いくつかのそのような実施形態では、がんは、ネオ抗原の負荷が高い型であるか、または高変異原性の型である(Vogelstein et al.(2013)Science 339(6127):1546-1558を参照のこと。当該文献は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる)。他の実施形態では、がんは、ネオ抗原の負荷が低い型である。いくつかのそのような実施形態では、本発明の併用療法は、チェックポイント阻害剤の活性を増進する。他の実施形態では、個体のがんが単独のチェックポイント阻害剤に応答しない場合、併用療法によって治療応答が生じる。
【0012】
いくつかの実施形態では、個体のがんは、そのがんが免疫応答アゴニストに応答性のがん型であるという理由で、本発明の併用療法での治療に選択され、こうした免疫応答アゴニストは、例えば、CD28アゴニスト、OX40アゴニスト、GITRアゴニスト、CD137アゴニスト、CD27アゴニスト、HVEMアゴニストなどである。いくつかの実施形態では、そのような免疫調節剤は、例えば、トレメリムマブ及び同様のものなどの、OX40アゴニスト、CD137アゴニスト、またはGITRアゴニストである。いくつかのそのような実施形態ではがんは、限定はされないが、メラノーマまたは小細胞肺癌である。いくつかのそのような実施形態では、がんは、ネオ抗原の負荷が高い型であるか、または高変異原性の型である。他の実施形態では、がんは、ネオ抗原の負荷が低い型である。いくつかのそのような実施形態では、本発明の併用療法は、アゴニストの活性を増進する。他の実施形態では、個体のがんが単独のアゴニストに応答しない場合、併用療法によって治療応答が生じる。
【0013】
いくつかの実施形態では、個体のがんは、そのがんが、例えば、CCR2,CCR4などのケモカイン受容体アンタゴニストに応答性のがん型であるという理由で、本発明の併用療法での治療に選択される。いくつかのそのような実施形態では、がんは、限定はされないが、リンパ腫(限定はされないが、例えば、皮膚T細胞リンパ腫などのT細胞リンパ腫を含む)である。いくつかのそのような実施形態では、がんは、ネオ抗原の負荷が高い型であるか、または高変異原性の型である。他の実施形態では、がんは、ネオ抗原の負荷が低い型である。いくつかのそのような実施形態では、本発明の併用療法は、抗ケモカイン受容体アンタゴニストの活性を増進する。他の実施形態では、個体のがんが単独のアンタゴニストに応答しない場合、併用療法によって治療応答が生じる。
【0014】
本発明の方法は、例えば、抗体または生物学的に活性なその断片もしくは誘導体などの、標的細胞または抑制性免疫細胞に特異的に結合する薬剤の投与をさらに含み得る。例えば、がん細胞、抑制性免疫細胞(限定はされないが、制御性T細胞を含む)などの標的細胞の枯渇レベル。多くの抗体が、がんを治療するために現在臨床的に使用されており、他のものは、臨床開発のさまざまな段階にある。本発明の方法の対象となる抗体は、ADCCを介して作用し得ると共に、腫瘍細胞に選択的であり得るが、臨床的に有用な抗体のいくつかは、例えば、CD20を有するものなどの非腫瘍細胞に対して実際に作用することを当業者であれば認識するであろう。
【0015】
いくつかの実施形態では、治療上有効な用量の抗CD47剤が個体に投与される前にプライミング剤が投与される。適切なプライミング剤には、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)、及び/またはプライミング用量の抗CD47剤が含まれる。プライミング剤が投与された後、網状赤血球の産生増加に有効な期間を置いてから、治療用量の抗CD47剤が投与される。治療用量は、多くの異なる方法で投与することができる。いくつかの実施形態では、プライミング剤が投与された後に2つ以上の治療上有効な用量が投与される。いくつかの実施形態では、治療上有効な用量の抗CD47剤は、2つ以上の用量として濃度を漸増させて投与され、他の場合では、用量を同等にして投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、本発明の薬剤の組み合わせの投与は、例えば、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)などの、患者のヘマトクリットを増加させる有効用量の薬剤と組み合わせて実施される。そのような薬剤は、当該技術分野において知られ、使用されており、例えば、Aranesp(登録商標)(ダルベポエチンアルファ)、Epogen(登録商標)NF/Procrit(登録商標)NF(エポエチンアルファ)、Omontys(登録商標)(ペギネサチド)、Procrit(登録商標)などが含まれる。
【0017】
本発明の方法において使用するための抗CD47剤は、がん細胞に存在するCD47と、貪食細胞に存在するSIRPαとの間の結合を妨害する。そのような方法では、がん細胞の食細胞作用が増加する。適切な抗CD47剤には、可溶性SIRPαポリペプチド、可溶性CD47、抗CD47抗体、抗SIRPα抗体、及び同様のものが含まれ、抗体という用語は、当該技術分野において知られるその抗体断片及び変異体を包含する。いくつかの実施形態では、抗CD47剤は、抗CD47抗体である。いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、非溶血性抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒトIgG4のFc領域を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】CD40アゴニストとCD47アンタゴニストとの併用効果を示す図である。
図2】抗CTLA-4とCD47アンタゴニストとの併用効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
対象においてがん細胞を標的として枯渇させるための方法が提供され、(i)CD47のシグナル伝達を遮断する薬剤、ならびに(ii)例えば、CD40、OX40、CD28、GITR、CD137、CD27、HVEMなどの免疫共刺激分子をアゴナイズする1つもしくは複数の薬剤、及び/または(iii)例えば、CTLA-4、PD1、PDL1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3などの免疫抑制分子をアンタゴナイズする薬剤の組み合わせと、がん細胞との接触の後に、腫瘍細胞に対する免疫細胞応答によってがん細胞が選択的に除去される。
【0020】
本発明の理解を容易にするために、多くの用語が以下に定義される。
【0021】
本発明の活性薬剤及び方法についての説明の前に、本発明は、記載の特定の方法論、製品、装置、及び要素に限定されず、したがって、方法、装置、及び製剤は、当然変わり得るものであると理解されることになる。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることになる本発明の範囲の限定は意図されないとも理解されることになる。
【0022】
文脈上明確に示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「a」、「and」、及び「the」という単数形は、複数の参照対象を含むことに留意されなくてはならない。したがって、例えば、「薬物候補」に対する参照は、1つまたは複数のそのような候補を指し、「方法」に対する参照は、当業者に知られる同等の段階及び方法に対する参照を含むということなどである。
【0023】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。本明細書に記載の刊行物はすべて、その刊行物において記載され、今回記載される発明と関連付けて使用される可能性がある機器、製剤、及び方法論の説明及び開示を目的として、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0024】
値の範囲が与えられる場合、文脈上明確に示されない限り、その範囲の上限値と下限値との間に存在する、下限値の10分の1の単位までの各介在値と、その記載範囲の任意の他の記載値または介在値とが本発明に包含されると理解される。こうしたより小さな範囲の上限値及び下限値は、そのより小さな範囲に独立して含まれ得るものであり、こうした上限値及び下限値もまた、本発明に包含され、記載範囲において具体的に除外される任意の限界値の対象になる。記載範囲が限界値の1つまたは両方を含む場合、そうした含まれる限界値のどちらか一方または両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
【0025】
下記の説明では、本発明の理解がより完全なものとなるように、多数の具体的な詳細が示される。しかしながら、こうした具体的な詳細の1つまたは複数がなくとも、本発明を実施し得ることは当業者には明らかであろう。他の場合では、当業者によく知られており、知見が豊富に存在する特徴及び手順は、本発明の理解を妨げることを避けるために記載されていない。
【0026】
本発明では、一般に、タンパク質合成、組換え細胞の培養及びタンパク質の単離、ならびに組換えDNA手法は、当該技術分野に属する通常の方法が用いられる。そのような手法は、文献において完全に説明されており、例えば、Maniatis,Fritsch & Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1982)、Sambrook,Russell and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2001)、Harlow,Lane and Harlow,Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory(1998)、及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;(1988)を参照のこと。
【0027】
定義
抗CD47剤.
CD47は、単一のIg様ドメイン及び5つの膜貫通領域を有する幅広く発現する膜貫通糖タンパク質であり、このIg様ドメインは、SIRPαのNH2末端に位置するV様ドメインを介して媒介される結合によってSIRPαの細胞リガンドとして機能する。SIRPαは、マクロファージ、顆粒球、骨髄樹状細胞(DC)、マスト細胞、及びそれらの前駆体(造血幹細胞を含む)を含む、骨髄系細胞に主に発現する。SIRPαに存在し、CD47結合を媒介する構造決定基については、Lee et al.(2007)J.Immunol.179:7741-7750、Hatherley et al.(2008)Mol Cell.31(2):266-77、Hatherley et al.(2007)J.B.C.282:14567-75によって議論されており、CD47結合におけるSIRPαのシス二量体化の役割については、Lee et al.(2010)J.B.C.285:37953-63によって議論されている。正常細胞が食細胞作用を受けることを阻害するためのCD47の役割と一致して、造血幹細胞(HSC)及び前駆体の遊走期直前及び遊走期中にそれらの細胞でCD47が一過性に上方制御され、こうした細胞でのCD47のレベルが、それらがインビボで貪食される確率を決定するという証拠が存在する。
【0028】
本明細書で使用される「抗CD47剤」または「CD47を遮断する薬剤」という用語は、CD47(例えば、標的細胞に存在する)からSIRPα(例えば、貪食細胞に存在する)への結合を低減する任意の薬剤を指す。適切な抗CD47試薬の例には、限定はされないが、SIRPα試薬が含まれ、こうしたSIRPα試薬には、限定はされないが、高親和性のSIRPαポリペプチド、抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチド、及び抗CD47抗体または抗体断片が含まれる。いくつかの実施形態では、適切な抗CD47剤(例えば、抗CD47抗体、SIRPα試薬など)は、CD47に特異的に結合することで、CD47からSIRPαへの結合を低減する。
【0029】
いくつかの実施形態では、適切な抗CD47剤(例えば、抗SIRPα抗体、可溶性CD47ポリペプチドなど)は、SIRPαに特異的に結合することで、CD47からSIRPαへの結合を低減する。SIRPαに結合する適切な抗CD47剤は、(例えば、SIRPαを発現する貪食細胞において)SIRPαを活性化しない。適切な抗CD47剤の効力は、その薬剤のアッセイによって評価することができる。例示的なアッセイでは、候補薬剤の存在下または非存在下、かつ例えば、マクロファージまたは他の貪食細胞などのエフェクター細胞の存在下で、標的細胞がインキュベートされる。本発明の方法において使用するための薬剤は、その薬剤の非存在下での食細胞作用と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも120%、少なくとも140%、少なくとも160%、少なくとも180%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%)食細胞作用を上方制御することになる。同様に、SIRPαのチロシンリン酸化レベルのインビトロアッセイでは、候補薬剤の非存在下で観測されるリン酸化と比較して、少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%)のリン酸化の減少が示されることになる。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗CD47剤は、結合時にCD47を活性化しない。CD47が活性化すると、アポトーシス(すなわち、プログラム細胞死)と類似したプロセスが生じ得る(Manna and Frazier,Cancer Research,64,1026-1036,Feb.1 2004)。したがって、いくつかの実施形態では、抗CD47剤は、CD47を発現する細胞の細胞死を直接的には誘導しない。
【0031】
いくつかの実施形態では、治療上有効な用量の抗CD47剤が個体に投与される前にプライミング剤が投与される。適切なプライミング剤には、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)、及び/またはプライミング用量の抗CD47剤が含まれる。プライミング剤が投与された後、網状赤血球の産生増加に有効な期間を置いてから、治療用量の抗CD47剤が投与される。同時係属特許出願USSN14/769,069号に記載の方法に従って投与を実施してよく、当該文献は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。
【0032】
SIRPα試薬.
SIRPα試薬は、認識可能な親和性でCD47に結合するために十分なSIRPαの一部(通常、シグナル配列と膜貫通ドメインとの間に位置する)または結合活性を保持するその断片を含む。適切なSIRPα試薬は、天然のタンパク質であるSIRPαとCD47との間の相互作用を低減(例えば、遮断、阻止など)する。SIRPα試薬は、通常、SIRPαの少なくともd1ドメインを含むことになる。
【0033】
いくつかの実施形態では、対象とする抗CD47剤は、「高親和性のSIRPα試薬」であり、こうしたものには、SIRPαに由来するポリペプチド及びその類似体(例えば、CV1-hIgG4及びCV1単量体)が含まれる。高親和性のSIRPα試薬は、国際出願PCT/US13/21937に記載されており、当該文献は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる。高親和性のSIRPα試薬は、天然のSIRPαタンパク質の変異体である。変更することで親和性が増加するアミノ酸はd1ドメインに位置しており、したがって、高親和性のSIRPα試薬は、d1ドメイン内の野生型配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸が変更されたヒトSIRPαのd1ドメインを含む。そのような高親和性のSIRPα試薬は、追加のアミノ酸配列を任意選択で含み、こうした追加のアミノ酸配列は、例えば、抗体Fc配列、d1ドメイン以外の野生型ヒトSIRPαタンパク質の一部(限定はされないが、天然のタンパク質の残基150~374またはその断片(通常、d1ドメインと近接する断片)を含む)、及び同様のものである。高親和性のSIRPα試薬は、単量体または多量体、すなわち、二量体、三量体、四量体などであり得る。いくつかの実施形態では、高親和性のSIRPα試薬は可溶性であり、当該ポリペプチドは、SIRPαの膜貫通ドメインを欠き、野生型のSIRPα配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸の変更を含んでおり、このアミノ酸変更により、例えば、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、またはそれ以上解離速度が低減することによって、当該SIRPαポリペプチドのCD47への結合親和性が向上している。
【0034】
任意選択で、SIRPα試薬は融合タンパク質であり、例えば、第2のポリペプチドとインフレームで融合した融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、融合タンパク質のサイズを増加させる能力を有し、例えばその結果、融合タンパク質は、循環から迅速排除されないことになる。いくつかの実施形態では、第2のポリペプチドは、免疫グロブリンのFc領域の一部または全体である。Fc領域は、「eat me(私を食べろ)」というシグナルを生成することによって食細胞作用を助け、このシグナルは、高親和性のSIRPα試薬によって与えられた「don’t eat me(私を食べるな)」というシグナルを遮断することを増進する。他の実施形態では、第2のポリペプチドは、Fcと実質的に同様であり、例えば、サイズの増加、多量体化ドメイン、及び/またはIg分子との追加の結合もしくは相互作用を与える任意の適切なポリペプチドである。
【0035】
抗CD47抗体.
いくつかの実施形態では、対象とする抗CD47剤は、CD47に特異的に結合する抗体(すなわち、抗CD47抗体)であって、ある細胞(例えば、感染細胞)に存在するCD47と、別の細胞(例えば、貪食細胞)に存在するSIRPαとの間の相互作用を低減する抗体である。いくつかの実施形態では、適切な抗CD47抗体は、結合時にCD47を活性化しない。いくつかの抗CD47抗体は、CD47からSIRPαへの結合を低減せず(それ故に、本明細書の「抗CD47剤」とは考えられない)、そのような抗体は、「非遮断性抗CD47抗体」と称すことができる。「抗CD47剤」である適切な抗CD47抗体は、「CD47遮断性抗体」と称すことができる。適切な抗体の例には、限定はされないが、クローンであるB6H12、5F9、8B6、及びC3が含まれる(例えば、国際特許公開WO2011/143624に記載されており、当該文献は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる)。適切な抗CD47抗体には、そのような抗体の完全ヒトバージョン、ヒト化バージョン、またはキメラバージョンが含まれる。ヒト化抗体(例えば、hu5F9-G4)は、その抗原性が低いため、ヒトにおけるインビボ用途に特に有用である。同様に、イヌ化抗体、ネコ化抗体などは、それぞれイヌ、ネコ、及び他の種における用途に特に有用である。対象となる抗体には、ヒト化抗体、またはイヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体、ウシ化抗体、ブタ化抗体など、及びそれらの変異体が含まれる。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗CD47抗体は、ヒトIgGのFc領域を含み、例えば、IgG1の定常領域、IgG2aの定常領域、IgG2bの定常領域、IgG3の定常領域、IgG4の定常領域を含む。好ましい実施形態では、IgGのFc領域は、IgG4の定常領域である。IgG4のヒンジは、S241Pというアミノ酸置換によって安定化し得る(Angal et al.(1993) Mol.Immunol.30(1):105-108を参照のこと。当該文献は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる)。
【0037】
抗SIRPα抗体.
いくつかの実施形態では、対象とする抗CD47剤は、SIRPαに特異的に結合する抗体(すなわち、抗SIRPα抗体)であって、ある細胞(例えば、感染細胞)に存在するCD47と、別の細胞(例えば、貪食細胞)に存在するSIRPαとの間の相互作用を低減する抗体である。適切な抗SIRPα抗体は、SIRPαを介するシグナル伝達を活性化または刺激することなくSIRPαに結合することができる。こうした抗SIRPα抗体が適切な理由は、SIRPαが活性化すると、食細胞作用が抑制されることが想定されるためである。代わりに、適切な抗SIRPα抗体は、正常細胞と比較して、問題細胞の食細胞作用が優先的に生じるように促進する。他の細胞(非感染細胞)と比較してCD47の発現レベルが高い細胞(例えば、感染細胞)は、優先的に食細胞作用を受けることになる。したがって、適切な抗SIRPα抗体は、(食細胞作用の抑制に十分なシグナル伝達応答を活性化/刺激することなく)SIRPαに特異的に結合し、SIRPαとCD47との間の相互作用を遮断する。適切な抗SIRPα抗体には、そのような抗体の完全ヒトバージョン、ヒト化バージョン、またはキメラバージョンが含まれる。ヒト化抗体は、その抗原性が低いため、ヒトにおけるインビボ用途に特に有用である。同様に、イヌ化抗体、ネコ化抗体などは、それぞれイヌ、ネコ、及び他の種における用途に特に有用である。対象となる抗体には、ヒト化抗体、またはイヌ化抗体、ネコ化抗体、ウマ化抗体、ウシ化抗体、ブタ化抗体など、及びそれらの変異体が含まれる。
【0038】
可溶性CD47ポリペプチド.
いくつかの実施形態では、対象とする抗CD47剤は、SIRPαに特異的に結合し、ある細胞(例えば、感染細胞)に存在するCD47と、別の細胞(例えば、貪食細胞)に存在するSIRPαと、の間の相互作用を低減する可溶性CD47ポリペプチドである。適切な可溶性CD47ポリペプチドは、SIRPαを介するシグナル伝達を活性化または刺激することなくSIRPαに結合することができる。こうした可溶性CD47ポリペプチドが適切な理由は、SIRPαが活性化すると、食細胞作用が抑制されることが想定されるためである。代わりに、適切な可溶性CD47ポリペプチドは、非感染細胞と比較して、感染細胞の食細胞作用が優先的に生じるように促進する。正常な非標的細胞(正常細胞)と比較してCD47の発現レベルが高い細胞(例えば、感染細胞)は、優先的に食細胞作用を受けることになる。したがって、適切な可溶性CD47ポリペプチドは、食細胞作用の抑制に十分なシグナル伝達応答を活性化/刺激することなくSIRPαに特異的に結合する。
【0039】
場合によっては、適切な可溶性CD47ポリペプチドは、融合タンパク質(例えば、米国特許公開US20100239579号に構造的に記載されるものであり、当該文献は、参照によって本明細書に明確に組み込まれる)であり得る。しかしながら、SIRPαを活性化/刺激しない融合タンパク質のみが、本明細書で提供される方法に適している。適切な可溶性CD47ポリペプチドには、食細胞作用の抑制に十分なSIRPα活性を刺激することなくSIRPαに特異的に結合し、CD47とSIRPαとの相互作用を阻害することができる変異体または天然に現存するCD47配列(例えば、細胞外ドメイン配列または細胞外ドメイン変異体)を含む任意のペプチドまたはペプチド断片も含まれる。
【0040】
ある特定の実施形態では、可溶性CD47ポリペプチドは、シグナルペプチドを含む、CD47の細胞外ドメインを含み、その結果、CD47の細胞外部分は、典型的には、142のアミノ酸長である。本明細書に記載の可溶性CD47ポリペプチドは、少なくとも65%~75%、75%~80%、80~85%、85%~90%、もしくは95%~99%(または65%~100%の間に存在する具体的に列挙されていない任意の同一性パーセント)のアミノ酸配列を含むCD47細胞外ドメイン変異体も含み、こうした変異体は、SIRPαのシグナル伝達を刺激することなくSIRPαに結合する能力を保持する。
【0041】
ある特定の実施形態では、シグナルペプチドのアミノ酸配列は、別のポリペプチド(例えば、免疫グロブリンまたはCTLA4)に由来するシグナルペプチドのアミノ酸配列で置換してよい。例えば、全長CD47(細胞外膜を横切った状態で存在する細胞表面ポリペプチド)とは異なり、可溶性CD47ポリペプチドは分泌されるものであり、したがって、可溶性CD47ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞から通常分泌されるポリペプチドと関連するシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0042】
他の実施形態では、可溶性CD47ポリペプチドは、シグナルペプチドを欠いたCD47の細胞外ドメインを含む。分泌タンパク質または膜貫通タンパク質の本明細書に記載のシグナルペプチドは、細胞表面に露出することはない。この理由は、シグナルペプチドはタンパク質の転位の間に切断されるか、またはシグナルペプチドは細胞外膜に固定されて残存する(そのようなペプチドは、シグナルアンカーとも呼ばれる)ためである。CD47のシグナルペプチド配列は、インビボで前駆体CD47ポリペプチドから切断されると考えられる。
【0043】
他の実施形態では、可溶性CD47ポリペプチドは、CD47細胞外ドメイン変異体を含む。そのような可溶性CD47ポリペプチドは、SIRPαのシグナル伝達を刺激することなくSIRPαに結合する能力を保持する。CD47細胞外ドメインの変異体は、天然のCD47配列に対して少なくとも65%~75%、75%~80%、80~85%、85%~90%、または95%~99%(記載の範囲のいずれか1つの間に存在する任意の同一性パーセントを含む)同一であるアミノ酸配列を有し得る。
【0044】
免疫応答性調節因子.
免疫チェックポイントタンパク質は、本発明の方法における標的細胞への免疫応答性、具体的には、腫瘍細胞に対する免疫応答性が低減するように作用する免疫抑制分子である。腫瘍細胞が免疫チェックポイント(免疫抑制タンパク質)を活性化し、共刺激受容体(免疫活性化タンパク質)を抑制することによって、T細胞による腫瘍への内因性の応答は制御不全となり得る。当該技術分野において「免疫チェックポイント阻害剤」と称されるクラスの治療剤は、抑制シグナルのアンタゴニストの投与を介して免疫応答の抑制を逆転させる。他の免疫療法では、応答性を向上させるために免疫共刺激分子のアゴニストが投与される。いくつかの実施形態では、限定はされないが、実施例に記載のアッセイを含む、T細胞活性化のインビトロアッセイが、特定の組み合わせ及び投与スケジュールの決定において使用される。
【0045】
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA4(CD152としても知られる))及びプログラム細胞死タンパク質1(PD1(CD279としても知られる))は、臨床的ながん免疫療法と関連して最も活発に研究されてきた免疫チェックポイント受容体であり、これらは両方共に、抑制性受容体である。こうした受容体のいずれかを遮断する抗体の臨床的活性は、抗腫瘍免疫を複数のレベルで増進させることができると共に、併用方針を理知的に設計し、機構的考察及び前臨床モデルによって導き得ることを暗示している。
【0046】
CTLA4は、T細胞に排他的に発現し、T細胞活性化の初期段階の振幅を主に制御する。CTLA4は、T細胞の共刺激受容体であるCD28の活性を相殺する。CD28とCTLA4とは、CD80(B7.1としても知られる)及びCD86(B7.2としても知られる)という同一のリガンドを共有している。CTLA4の主な生理学的役割は、ヘルパーT細胞活性の下方調節、及び制御性T(TReg )細胞の免疫抑制活性の増進である。CTLA4を遮断すると、免疫応答が幅広く増進する。イピリムマブ及びトレメリムマブという2つの完全ヒト化CTLA4抗体が臨床試験中及び実用中である。臨床的に、免疫チェックポイント遮断剤に対する応答は、多くの患者で遅く、治療を開始してから最大で6ヶ月まで遅延する。場合によっては、コンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)によってスキャンすると、転移巣が退縮する前に、そのサイズが実際に増加する。
【0047】
この抑制性の免疫機能をアンタゴナイズする抗CTLA4抗体は、非常に強力な治療法であるが、著しい副作用を有する。この理由は、このアンタゴナイズ作用によって、こうした抑制性の分子及び経路を介して通常は抑制される自己標的T細胞活性もまた可能となるためである。CD47の活性を遮断する薬剤との組み合わせは、下記の理由から、こうした副作用の最小化に有益である。抗CD47剤は、抗CTLA4剤での治療の前に投与され、特異的な抗腫瘍T細胞応答を刺激し得る(Anti-CD47 antibody-mediated phagocytosis of cancer by macrophages primes an effective antitumor T-cell response;Tseng et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Jul 2;110(27):11103-8.)。その後に続く抗CTLA4治療は、特異的な抗腫瘍T細胞の活性及び増殖を可能にすることになる。しかしながら、抗CTLA4での治療の前に、特定かつ強力な抗腫瘍T細胞が誘導されているため、抗CTLA4の単剤療法と比較して短い治療期間及び/または少ない用量を使用することができ、したがって、伴う副作用を少なくして抗CTLA4治療の治療効果を達成することができる。抗CTLA4での治療は、(a)抗CD47剤の後に潜在的に低用量で実施するか、または(b)抗CD47剤と同時ではあるが低用量で実施し得る。あるいは、抗CTLA4の用量及び治療期間は通常のレベルあり得るが、抗CD47と併用すると効力が増進する。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗CTLA4剤の用量は、望ましくない副作用を最小化するレベルまで低減され、例えば、現在の認可用量の最大約90%の用量、すなわち、通常用量の最大約80%、最大約70%、最大約60%、最大約50%、最大約40%、最大約30%、最大約20%、最大約10%、最大約5%の用量に低減される。いくつかの実施形態では、用量の回数が低減され、例えば、抗CTLA4剤の投与は、1回以内、2回以内、3回以内などである。参考として、例えば、イピリムマブの投与に通常必要な現在のプロトコールは、3mg/kg用量で3週間に1回の投与を行って全部で4回用量とするものであり、例えば、ダカルバジンもしくはテモゾロミドなどの追加の薬剤、またはペプチドワクチンが任意選択で併用される。他のプロトコールでは、転移性メラノーマに対する単一薬剤として10mg/kg用量で行うイピリムマブの投与が検証されている。
【0049】
トレメリムマブは、0.01mg/kg~15mg/kgの範囲の用量で単回の抗体注入として投与された。客観的奏効は、3mg/kg以上の用量ではっきりと認められた。1ヶ月時点で30μg/mlを超えるトレメリムマブの血漿レベルが維持された患者において大部分の効果が認められた。10mg/kg用量の1ヶ月に1回の投与と、15mg/kg用量の3ヶ月に1回の投与とが、第II相の無作為化臨床試験においてさらに試験されたが、10mg/kgを1ヶ月に1回投与するレジメンで投与頻度を上げると、毒性が倍増した。こうしたデータに基づいて、15mg/kgの単一薬剤のトレメリムマブを3ヶ月に1回投与するものが臨床試験に選ばれた。
【0050】
一部の患者によっては、CTLA-4の遮断能力によって免疫系を活性化すると、免疫関連有害事象(irAE)として特徴付けられる炎症兆候が生じる。臨床的に最も顕著なirAEは、重症範囲に入り得る腸炎であり、10mg/kgのイピリムマブで治療した患者の約15%にグレードIII/IVの腸炎が見られる。追加のirAEには、発疹/そう痒(>50%)、肝炎(5~10%)、下垂体炎(5%)、ぶどう膜炎(<2%)、膵炎(<2%)、及び白血球減少症(<2%)が含まれる。抗CD47剤と併用することで、そのような有害事象を低減し得る。本発明の実施形態のいくつかでは、CTLA-4を阻害する薬剤と、抗CD47剤とを併用するがんの治療方法が提供され、併用薬剤の投与は、抗CD47剤を使用しない場合に必要な抗CTLA-4の投与と比較して免疫関連有害事象が臨床的に有意に減少したがんの治療を与える。
【0051】
CTLA4は、T細胞の活性化及び増殖を抑制する制御性T細胞に発現しており、抗CTLA4抗体は、制御性T細胞の抑制性の免疫抑制機能を遮断する。結果として、抗腫瘍T細胞は、活性化し/活性化した状態を継続し、増殖することができる。この効果の1つの側面は、抑制性のシグナル伝達経路の阻害であるが、別の側面は、CTLA4を発現する制御性T細胞の枯渇である。したがって、非常に強力な抗腫瘍効果を得るためには、制御性T細胞の枯渇を増進させることが望ましくあり得る。枯渇は、ADCP、ADCC、及び/またはCDCを介して媒介される。抗CD47剤は、標的化モノクローナル抗体と相乗的に作用し、ADCP及びADCCを刺激するその効力を増進させることができる(Anti-CD47 antibody synergizes with rituximab to promote phagocytosis and eradicate non-Hodgkin lymphoma,Chao et al.,Cell.2010 Sep 3;142(5):699-713.)。したがって、抗CTLA4剤と抗CD47剤とを併用すれば、効力が増進する可能性がある。抗CD47を抗CTLA4と共に投与することができる。効力の増進が想定されるため、現在の治療レジメンと比較して抗CTLA4治療の期間を低減することができる。
【0052】
他の免疫チェックポイントタンパク質は、PD1及びPDL1である。こうした標的に対して現在臨床的に使用される抗体には、ニボルマブ及びペンブロリズマブが含まれる。PD1の主な役割は、感染に対する炎症反応発生時の末梢組織におけるT細胞の活性の制限、及び自己免疫の制限である。T細胞が活性するとPD1の発現が誘導される。PD1のリガンドの1つが結合すると、PD1は、T細胞の活性化に関与するキナーゼを阻害する。PD1は、TReg 細胞に高度に発現しており、リガンドの存在下でTReg 細胞の増殖を増進し得る。多くの腫瘍がTReg 細胞による浸潤を高度に受けているため、PD1経路を遮断すると、腫瘍内のTReg 細胞の数及び/または抑制活性が減少することによって、抗腫瘍免疫応答も増進し得る。
【0053】
PD1に対する2つのリガンドは、PD1リガンド1(PDL1(B7-H1及びCD274としても知られる))ならびにPDL2(B7-DC及びCD273としても知られる)である。PD1リガンドは、一般に、多くの異なるヒト腫瘍に由来する腫瘍細胞の表面で上方制御される。固形腫瘍に由来する細胞で発現する主なPD1リガンドはPDL1である。PDL1は、がん細胞に発現し、T細胞に存在するその受容体であるPD1への結合を介してT細胞の活性化/機能を抑制する。したがって、PD1及びPDL1を遮断する薬剤は、この抑制性のシグナル伝達を克服し、抗腫瘍T細胞機能を維持または回復させることができる。抗CD47剤は、特異的な抗腫瘍T細胞応答を刺激することができる(Anti-CD47 antibody-mediated phagocytosis of cancer by macrophages primes an effective antitumor T-cell response;Tseng et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Jul 2;110(27):11103-8.)。抗PD1/PDL1剤は、抗CD47剤の効力を増進させることができる。抑制性の抗PD1/PDL1経路が遮断されれば増殖することができる腫瘍特異的T細胞のプライミングを再現するために、抗PD1/PDL1剤と組み合わせて、または抗PD1/PDL1剤の前に、CD47剤を投与してよい。
【0054】
PDL1は、がん細胞に発現し、T細胞に存在するその受容体であるPD1への結合を介してT細胞の活性化/機能を抑制する。したがって、PD1及びPDL1を遮断する薬剤は、この抑制性のシグナル伝達を克服し、抗腫瘍T細胞機能を維持または回復させることができる。また一方で、PDL1は腫瘍細胞に発現するため、PDL1に結合及びそれを遮断する抗体は、腫瘍細胞のADCP、ADCC、及びCDCもまた可能にし得る。抗CD47剤は、標的化モノクローナル抗体と相乗的に作用し、ADCP及びADCCを刺激するその効力を増進させることができる(Anti-CD47 antibody synergizes with rituximab to promote phagocytosis and eradicate non-Hodgkin lymphoma,Chao et al.,Cell.2010 Sep 3;142(5):699-713.)。したがって、抗PDL1剤と抗CD47剤とを併用すると、抗腫瘍効力を増進させることができる。こうした薬剤は、共に投与してよい(同一の治療過程にわたって投与してよく、必ずしも日及び頻度が同一である必要はない)。
【0055】
リンパ球活性化遺伝子3(LAG3(CD223としても知られる))、2B4(CD244としても知られる)、Bリンパ球及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA(CD272としても知られる))、T細胞膜タンパク質3(TIM3(HAVcr2としても知られる))、アデノシンA2a受容体(A2aR)、及びキラー細胞抑制性受容体のファミリーは、リンパ球活性の抑制、及び場合によっては、リンパ球アネルギーの誘導とそれぞれが関連している。本発明の方法において、こうした受容体を標的とする抗体を使用することができる。
【0056】
LAG3は、TReg 細胞の機能を増進するCD4相同体である。LAG3はまた、TReg 細胞に対するその役割とは無関係にCD8+ エフェクターT細胞機能をも抑制する。MHCクラスII分子のみが、LAG3に対するリガンドとして唯一知られており、腫瘍浸潤性のマクロファージ及び樹状細胞に発現する。LAG3は、TReg 細胞とアネルギー性T細胞との両方で協調的に上方制御されるさまざまな免疫チェックポイント受容体の1つであり、こうした受容体を同時に遮断すると、1つの受容体単独の遮断と比較してこのアネルギー性状態の逆転を増進させることができる。具体的には、PD1とLAG3とは、一般に、アネルギー性または疲弊したT細胞に同時発現する。LAG3とPD1とを二重に遮断すると、慢性感染の状況における腫瘍特異的CD8+ T細胞及びウイルス特異的CD8+ T細胞胞でのアネルギーが相乗的に逆転した。LAG3遮断剤は、この抑制性のシグナル伝達を克服し、抗腫瘍T細胞機能を維持または回復させることができる。抗CD47剤は、特異的な抗腫瘍T細胞応答を刺激することができる(Anti-CD47 antibody-mediated phagocytosis of cancer by macrophages primes an effective antitumor T-cell response;Tseng et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Jul 2;110(27):11103-8.)。したがって、LAG3剤は、抗CD47剤の効力を増進させることができる。抑制性の抗LAG3経路が遮断されれば増殖することができる腫瘍特異的T細胞のプライミングを促進するために、抗LAG3剤と組み合わせて、または抗LAG3剤の前に、CD47剤を投与してよい。
【0057】
TIM3は、Tヘルパー1(TH 1)細胞応答を抑制し、TIM3抗体は、抗腫瘍免疫を増進する。TIM3もまた、腫瘍特異的CD8+ T細胞胞でPD1と共に同時発現することが報告されている。Tim3遮断剤は、この抑制性のシグナル伝達を克服し、抗腫瘍T細胞機能を維持または回復させることができる。抗CD47剤は、特異的な抗腫瘍T細胞応答を刺激することができる(Anti-CD47 antibody-mediated phagocytosis of cancer by macrophages primes an effective antitumor T-cell response;Tseng et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Jul 2;110(27):11103-8.)。したがって、Tim3剤は、抗CD47剤の効力を増進させることができる。抑制性の抗Tim3経路が遮断されれば増殖することができる腫瘍特異的T細胞のプライミングを促進するために、抗Tim3剤と組み合わせて、または抗Tim3剤の前に、CD47剤を投与してよい。
【0058】
BTLAは、T細胞に存在し、TNFRSF14と相互作用する抑制性受容体である。BTLA高T細胞は、そのリガンドが存在すると抑制される。相互作用する分子の系は複雑である、CD160(免疫グロブリンスーパーファミリーの一員)及びLIGHT(TNFSF14としても知られる)は、それぞれ抑制活性及び共刺激活性を媒介する。シグナル伝達は、相互作用の特定の組み合わせに応じて双方向的となり得る。BTLAとPD1とを二重に遮断すると、抗腫瘍免疫が増進する。
【0059】
A2aRは、アデノシンをそのリガンドとしており、T細胞応答を抑制する。この抑制の一因は、A2aRがCD4+ T細胞のFOXP3発現を誘導し、それによってCD4+ T細胞をTReg 細胞にすることにある。この受容体を欠失させると、感染に対する炎症反応が増進し、場合によっては、病的な炎症反応が生じる。A2aRは、アデノシンの結合を遮断する抗体またはアデノシン類似体のいずれによっても阻害することができる。
【0060】
免疫共刺激分子をアゴナイズする薬剤もまた、本発明の方法において有用である。そのような薬剤には、アゴニストまたはCD40及びOX40が含まれる。CD40は、抗原提示細胞(APC)に見られる共刺激タンパク質であり、APCの活性化に必要である。こうしたAPCには、貪食細胞(マクロファージ及び樹状細胞)ならびにB細胞が含まれる。CD40は、TNF受容体ファミリーの一員である。CD40を活性化する主なシグナル伝達分子は、IFNγ及びCD40リガンド(CD40L)である。CD40を介する刺激は、マクロファージを活性化する。CD47遮断剤の主な効果の1つは、マクロファージ及び他の貪食細胞による標的細胞の食細胞作用を増進することである。したがって、アゴニストであるCD40リガンドと、抗CD47とを併用すると、それぞれの単剤療法と比較して治療効力を増進させることができる(実施例1)。アゴニストであるCD40剤は、抗CD47剤と実質的に同時に投与してよく、またはマクロファージを事前に活性化するために抗CD47での治療の同時以前に投与してよい。
【0061】
OX40(CD134)は、TNFRスーパーファミリーの一員であり、T細胞に発現する。OX40に結合する分子は、T細胞の増殖及び分化を刺激することができる。抗CD47剤は、特異的な抗腫瘍T細胞応答を刺激することができる(Anti-CD47 antibody-mediated phagocytosis of cancer by macrophages primes an effective antitumor T-cell response;Tseng et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.2013 Jul 2;110(27):11103-8.)。アゴニストであるOX40剤は、抗CD47剤の効力を増進させることができる。アゴニストであるOX40剤は、抗CD47剤と実質的に同時に投与してよく、またはOX40剤を介して増殖することができる腫瘍特異的T細胞クローンのプライミングを再現するために抗CD47での治療の同時以前に投与してよい。
【0062】
本明細書に記載の方法に従ってCD47遮断剤と組み合わせて投与することができる他のがん免疫剤(immuno-oncology agent)には、ケモカイン受容体に特異的な抗体(限定はされないが、抗CCR4及び抗CCR2を含む)が含まれる。対象となる抗CCR4(CD194)抗体には、強力な抗炎症活性及び抗新生物活性を有する、C-Cケモカイン受容体4(CCR4)を標的とするヒト化モノクローナル抗体が含まれる。例はモガムリズマブであり、モガムリズマブは、CCR4に選択的に結合してその活性を遮断し、CCR4介在性のシグナル伝達経路を阻害することによって、ケモカイン介在性のT細胞の細胞遊走及び増殖、ならびにケモカイン介在性の血管新生を阻害し得る。さらに、この薬剤は、CCR4陽性T細胞に対する抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導し得る。CCR4は、MIP-1、RANTES、TARC、及びMCP-1などのC-Cケモカインに対するGタンパク質共役型受容体であり、いくつかの型のT細胞、内皮細胞、及びいくつかの型のニューロンの表面に発現する。CCR4は、CD194としても知られており、成人T細胞リンパ腫(ATL)細胞及び末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)細胞に過剰発現し得る。
【0063】
抗CCR4Abは、CCR4陽性標的細胞の枯渇増進のために、CD47を遮断するための薬剤と組み合わせて投与してよく、こうしたCCR4陽性標的細胞には、限定はされないが、T細胞リンパ腫、特に皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、またはDLBCL、乳癌、腎細胞癌、結腸癌、他のものが含まれる。CD47遮断剤は、がんを標的とするモノクローナル抗体と相乗的に作用し、ADCP及びADCCに対するその効力を増進させることができる。いくつかのそのような実施形態では、CD47遮断剤と抗CCR4とは、実質的に同時に投与することができる。
【0064】
抗CCR4Abは、CCR4陽性制御性T細胞の枯渇増進のために、CD47を遮断するための薬剤と組み合わせて投与してよい。CCR4は、制御性T細胞に発現しており、腫瘍への制御性T細胞の動員の媒介に関与する。制御性T細胞は、抗腫瘍T細胞の応答を抑制するものであり、したがって、その抑制または枯渇が望まれる。CD47遮断剤は、標的化モノクローナル抗体と相乗的に作用し、ADCP及びADCCに対するその効力を増進させることによって制御性T細胞の枯渇を増進させることができる。いくつかのそのような実施形態では、CD47遮断剤と抗CCR4とは、実質的に同時に投与することができる。
【0065】
マクロファージ及び他の抗原提示細胞は、抗原交差提示を介して抗CD47Ab介在性の食細胞作用に対する抗腫瘍T細胞応答をプライミングすることができる。関連する実施形態では、制御性T細胞を介する抑制または枯渇からこうした抗腫瘍T細胞を保護するために、CD47遮断剤が抗CCR4Ab治療と併用される。そのような実施形態では、抗CD47剤と抗CCR4Abとは、同時に投与してよい。抗CCR4Abを投与して制御性T細胞を抑制または枯渇させる前にT細胞応答をプライミングするために、抗CCR4抗体の前に抗CD47剤を投与してよい。腫瘍に対するT細胞応答のプライミングの前に制御性T細胞の抑制または枯渇させるために、抗CCR4抗体の後に抗CD47剤を投与してよい。
【0066】
上記の併用療法は、例えば、抗CTLA4Abなどの、制御性T細胞に作用する他の薬剤と組み合わせるか、または例えば、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、及び同様のものなどの、他のT細胞チェックポイント阻害剤と組み合わせてよい。
【0067】
抗CCR2(CD192)Ab.
CCR2は、例えば、関節リウマチなどの、さまざまな炎症性の病状に見ることができる炎症性マクロファージに発現しており、腫瘍促進性マクロファージに発現することも同定されている。例えば、CCL2などの、CCR2に結合するケモカインは、炎症性マクロファージを動員及び活性化することができる。CCR2を介するケモカインシグナル伝達を抗CCR2抗体で阻害すると、動員の阻害または抗体依存性の枯渇を介して、望ましくない自己免疫性または腫瘍促進性のマクロファージの頻度が下がり、その結果、関節リウマチのような自己免疫疾患の軽減、または腫瘍の増殖もしくは転移の抑制が生じ得る。CCR2は、制御性T細胞にも発現しており、CCR2のリガンドであるCCL2は、腫瘍への制御性T細胞の動員を媒介する。制御性T細胞は、抗腫瘍T細胞の応答を抑制するものであり、したがって、その抑制または枯渇が望まれる。
【0068】
抗CCR2Abは、CCR2陽性標的細胞の枯渇増進のためにCD47遮断剤と組み合わせて投与される。こうした標的細胞は、ヒト多発性骨髄腫、前立腺癌、及び同様のものであり得る。CD47遮断剤は、がんを標的とするモノクローナル抗体と相乗的に作用し、ADCP及びADCCに対するその効力を増進させることができる。いくつかのそのような実施形態では、CD47遮断剤と抗CCR2とは、実質的に同時に投与することができる。
【0069】
抗CCR2Abは、CCR2陽性の炎症性及び腫瘍促進性のマクロファージならびに制御性T細胞の枯渇増進のためにCD47遮断剤と組み合わせて投与される。CCR2は、炎症性及び腫瘍促進性のマクロファージならびに制御性T細胞に発現しており、CCR2のリガンドであるCCL2は、炎症性及び腫瘍促進性のマクロファージならびに制御性T細胞の、腫瘍への動員を媒介する。炎症性(腫瘍関連マクロファージ)及び制御性T細胞は、抗腫瘍免疫応答を抑制するものであり、それ故に、それらの抑制または枯渇が望まれる。CD47Abは、標的化モノクローナル抗体と相乗的に作用し、ADCP及びADCCに対するその効力を増進させることによって、炎症性(腫瘍関連マクロファージ)及び制御性T細胞の枯渇を増進させることができる。いくつかのそのような実施形態では、CD47遮断剤と抗CCR2とは、実質的に同時に投与することができる。
【0070】
抗CCR2Abは、抗腫瘍活性を増進させるためにCD47遮断剤と組み合わせて投与される。マクロファージ及び他の抗原提示細胞は、抗原交差提示を介して抗CD47介在性の食細胞作用に対する抗腫瘍T細胞応答をプライミングすることができる。炎症性及び腫瘍促進性のマクロファージならびに制御性T細胞を介した抑制または枯渇からこうした抗腫瘍T細胞を保護するために、抗CD47遮断剤が抗CCR2Ab治療と併用される。そのような実施形態では、抗CD47剤と抗CCR2Abとは、同時に投与してよい。抗CD47剤は、抗CCR2抗体の前に投与してよい。抗CD47剤は、抗CCR2の後に投与してよい。
【0071】
上記の併用療法は、例えば、抗CTLA4Abなどの、制御性T細胞に作用する他の薬剤と組み合わせるか、または例えば、抗PD1抗体、抗PDL1抗体、及び同様のものなどの、他のT細胞チェックポイント阻害剤と組み合わせてよい。
【0072】
本明細書で使用される「抗体」は、特定の抗原との免疫学的な反応性を有する免疫グロブリン分子に対する参照を含むと共に、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体との両方を含む。用語は、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)及びヘテロ複合抗体などの、遺伝子操作形態も含む。「抗体」という用語は、抗原結合能力を有する断片(例えば、Fab’、F(ab’)2 、Fab、Fv、及びrIgG)を含む、抗体の抗原結合形態も含む。用語は、組換え一本鎖Fv断片(scFv)も指す。抗体という用語は、二価または二重特異性の分子、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、及びテトラボディ(tetrabody)も含む。
【0073】
抗体は、選択性、親和性、細胞傷害性などを含む、さまざまな基準に基づいて選択してよい。タンパク質またはペプチドに関するとき、抗体に「特異的(もしくは選択的)に結合する」、または「…との特異的(もしくは選択的)な免疫反応性」という語句は、タンパク質または他の生物製剤の不均一集団においてタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定の免疫アッセイ条件下では、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的には、バックグラウンドの10~100倍を超えて特定のタンパク質配列に結合する。一般に、本発明の抗体は、エフェクター細胞(ナチュラルキラー細胞またはマクロファージなど)の存在下で標的細胞の表面に存在する抗原に結合する。エフェクター細胞に存在するFc受容体は、結合した抗体を認識する。
【0074】
特定の抗原との免疫学的な反応性を有する抗体は、ファージまたは同様のベクターにおける組換え抗体のライブラリーの選択などの組換え方法、または抗原もしくは抗原をコードするDNAでの動物の免疫化によって生成することができる。ポリクローナル抗体の調製方法は、当業者に知られている。あるいは、抗体は、モノクローナル抗体であり得る。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法を使用して調製してよい。ハイブリドーマ法では、適切な宿主動物が典型的には免疫化物質で免疫化されることで、その免疫化物質に特異的に結合することになる抗体を産生するか、またはそれを産生する能力を有するリンパ球が誘発される。あるいは、インビトロでリンパ球を免疫化してよい。その後、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を使用してリンパ球を不死化細胞株と融合することでハイブリドーマ細胞が形成される。
【0075】
ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当該技術分野において知られるさまざまな手法を使用して生成することができる。同様に、ヒト抗体は、内在性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化した、例えば、マウスなどの遺伝子導入動物へとヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって調製することができる。負荷を行うと、ヒト抗体の産生が観測され、この産生は、遺伝子の再編成、構築、及び抗体レパートリーを含む、すべての観点でヒトにおいて見られるものと酷似している。
【0076】
抗体は、さまざまなペプチダーゼでの消化によって生成する多くのよく特徴付けられた断片としても存在する。例えば、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下の位置で抗体をペプシンで消化すると、Fabの二量体であるF(ab)’2 が生成し、このFab自体は、軽鎖がジスルフィド結合によってVH -CH1に連結されたものである。F(ab)’2 は、穏和な条件下で還元してヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって、F(ab)’2 二量体をFab’単量体へと変換し得る。Fab’単量体は、本質的には、ヒンジ領域の一部がFabに加わったものである。さまざまな抗体断片がインタクトな抗体の消化に関して定義される一方で、そのような断片は、化学的にデノボ合成するか、または組換えDNA方法論の使用によってデノボ合成し得ることを当業者であれば理解するであろう。したがって、本明細書で使用される抗体という用語は、全抗体の改変によって生成する抗体断片、または組換えDNA方法論を使用してデノボ合成される抗体断片(例えば、一本鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定される抗体断片も含む。
【0077】
「ヒト化抗体」は、非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を最小限含む免疫グロブリン分子である。ヒト化抗体には、所望の特異性、親和性、及び能力を有する、マウス、ラット、またはウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRに由来する残基によって、レシピエントの相補性決定領域(CDR)に由来する残基が交換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)が含まれる。いくつかの場合では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって交換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、組み込まれるCDR配列またはフレームワーク配列にも見られない残基も含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの可変ドメインの実質的にすべて、典型的には、2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、こうした可変ドメインでは、非ヒト免疫グロブリンのものに対応するCDR領域のすべてまたは実質的にすべて、及びフレームワーク(FR)領域のすべてまたは実質的にすべてがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものである免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も任意選択で含むことになる。
【0078】
対象となる抗体は、それがADCC(抗体依存性細胞傷害)またはADCP(抗体依存性細胞食細胞作用)を誘導する能力について試験してよい。抗体関連ADCC活性は、溶解した細胞からの標識もしくは乳酸脱水素酵素の放出の検出、または標的細胞の生存率の減少の検出(例えば、アネキシンアッセイ)を介して監視及び定量化することができる。アポトーシスについてのアッセイは、末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ介在性のジゴキシゲニン-11-dUTPニック末端標識(TUNEL)アッセイによって実施してよい(Lazebnik et al.,Nature:371,346(1994)。細胞傷害性は、Roche Applied Science(Indianapolis,Ind.)から提供される細胞傷害性検出キットなどの、当該技術分野において知られる検出キットによって直接的に検出してもよい。
【0079】
腫瘍細胞抗原を標的とする多くの抗体が、がんを治療するために現在臨床的に使用されており、他のものは、臨床開発のさまざまな段階にある。例えば、B細胞悪性腫瘍を治療するための抗原及び対応するモノクローナル抗体は多く存在する。標的抗原の1つは、CD20である。リツキシマブは、CD20抗原を標的とする非複合化キメラモノクローナル抗体である。CD20は、B細胞の活性化、増殖、及び分化において重要な機能的役割を有している。CD52抗原は、モノクローナル抗体であるアレムツズマブの標的であり、アレムツズマブは、慢性リンパ性白血病の治療に用いられる。CD22は、多くの抗体の標的であり、化学療法抵抗性のヘアリー細胞白血病において毒素との併用効力が最近示された。CD20を標的とするシツモマブ及びイブリツモマブという2つの新たなモノクローナル抗体が食品医薬品局(Food and Drug Administration)(FDA)に申請された。これらの抗体は、放射性同位体と複合化している。アレムツズマブ(Campath)は、慢性リンパ性白血病の治療において使用される。ゲムツズマブ(Mylotarg)は、急性骨髄性白血病の治療において利用される。イブリツモマブ(Zevalin)は、非ホジキンリンパ腫の治療において利用される。パニツムマブ(Vectibix)は、結腸癌の治療において利用される。
【0080】
CD52抗原は、モノクローナル抗体であるアレムツズマブの標的であり、アレムツズマブは、慢性リンパ性白血病、結腸癌、及び肺癌の治療に用いられる。CD22は、多くの抗体の標的であり、化学療法抵抗性のヘアリー細胞白血病において毒素との併用効力が最近示された。
【0081】
ゲムツズマブ(Mylotarg)は、急性骨髄性白血病の治療において利用される。イブリツモマブ(Zevalin)は、非ホジキンリンパ腫の治療において利用される。パニツムマブ(Vectibix)は、結腸癌の治療において利用される。
【0082】
セツキシマブ(Erbitux)もまた、本発明の方法における使用の対象となるものである。この抗体は、EGF受容体(EGFR)に結合するものであり、結腸癌及び頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む、固形腫瘍の治療において使用されている。
【0083】
固形腫瘍において使用されているモノクローナル抗体であり、本発明の方法において有用なものには、限定はされないが、エドレコロマブ及びトラスツズマブ(herceptin)が含まれる。エドレコロマブは、結腸癌及び直腸癌において見られる17-1A抗原を標的としており、こうした兆候を対象として欧州において使用承認されている。トラスツズマブは、HER-2/neu抗原を標的とする。この抗原は、乳癌の25%~35%に見られる。セツキシマブ(Erbitux)もまた、本発明の方法における使用の対象となるものである。この抗体は、EGF受容体(EGFR)に結合するものであり、結腸癌及び頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)を含む、固形腫瘍の治療において使用されている。
【0084】
本発明の目的のための「患者」には、ヒトと、他の動物、具体的には哺乳類(ペット、及び例えば、マウス、ラット、ウサギなどの実験動物を含む)との両方が含まれる。したがって、方法は、ヒトの治療と獣医学用途との両方に適用可能である。1つの実施形態では、患者は、哺乳類、好ましくは霊長類である。他の実施形態では、患者は、ヒトである。
【0085】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、治療について評価中の哺乳類及び/または治療中の哺乳類を指すために本明細書で互換的に使用される。1つの実施形態では、哺乳類は、ヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、限定はされないが、がんを有する個体を包含する。対象は、ヒトであり得るが、他の哺乳類、具体的には例えば、マウス、ラットなどの、ヒト疾患の実験モデルとして有用な哺乳類も含む。
【0086】
「がん」、「新生物」、及び「腫瘍」という用語は、自律性の無制御な増殖を示し、その結果、細胞増殖に関する制御の顕著な消失によって特徴付けられる異常な増殖フェノタイプを示す細胞を指すために本明細書で互換的に使用される。本出願における検出、分析、または治療の対象となる細胞には、前がん性(例えば、良性)、悪性、転移前、転移性、及び非転移性の細胞が含まれる。事実上、あらゆる組織のがんが知られている。「がん負荷」という語句は、対象におけるがん細胞の量またはがんの体積を指す。したがって、がん負荷の低減は、対象におけるがん細胞の数またはがんの体積の低減を指す。本明細書で使用される「がん細胞」という用語は、がん細胞である任意の細胞、または例えば、がん細胞のクローンなどの、がん細胞に由来する任意の細胞を指す。多くの型のがんが当業者に知られており、こうしたがんには、細胞腫、肉腫、膠芽腫、メラノーマ、リンパ腫、骨髄腫などの固形腫瘍と、白血病などの循環がんとが含まれる。がんの例には、限定はされないが、卵巣癌、乳癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎癌、細胞腫、メラノーマ、頭頸部癌、及び脳癌が含まれる。
【0087】
当該技術分野において知られることであるが、がん型は、平均または特定の変異度という点で変わり得るものであり、変異レベルの上昇は、ネオ抗原の発現増加と関連している。例えば、前出のVogelstein et al.,(2013)を参照のこと。低変異負荷は、腫瘍当たり平均値を有するがん型であるか、または腫瘍当たりの非同義変異の数が最大約10、最大約20、最大約30、最大約40、最大約50という、個々の腫瘍について特定の数を有するがん型であり得る。高変異負荷は、腫瘍当たりの非同義変異の数が約50超、約75超、約100超、約125超、約150超であるがん型であり得る。
【0088】
CD47遮断剤と、アンタゴニスト免疫療法またはアゴニスト免疫療法との併用療法に向けた患者及び腫瘍の選択.
CD47遮断剤併用療法は、抗原のプロセシング、提示、及びT細胞活性化の増進、さらには、抗腫瘍T細胞を抑制または排除する制御性T細胞の枯渇の増進によって、本明細書に記載のアンタゴニスト免疫療法またはアゴニスト免疫療法に対する腫瘍の治療応答を増進させることができる。したがって、こうした治療に応答性の腫瘍に対する抗腫瘍効力が増進すると共に、応答性ではない腫瘍の治療応答が可能となる。
【0089】
CD47遮断剤と、本明細書に記載のアゴニスト免疫療法またはアンタゴニスト免疫療法との組み合わせは、こうした治療に応答性の腫瘍サブタイプを有する患者に施される。こうした腫瘍は、上述されているように、変異頻度が高く、その結果として腫瘍抗原が増加しており、それ故に、免疫原性が高まっていることによって定義され得る。いくつかの実施形態では、併用療法で治療される患者は、免疫賦活剤またはチェックポイント阻害剤での治療に応答性であるが、これは、潜在的に応答性の特定腫瘍サブタイプの内の約25%の患者サブセットに相当する。他の実施形態では、現在は免疫療法に非応答性であるが、応答性であることが知られる腫瘍サブタイプを有する患者が本発明の併用療法で治療される。現在、これは、潜在的に応答性の特定腫瘍サブタイプの内の約75%の患者サブセットである。
【0090】
CD47遮断剤と、本明細書に記載のアゴニスト治療またはアンタゴニスト治療との組み合わせは、こうした治療に非感受性の腫瘍サブタイプを有する患者に施される。これは、現在、腫瘍サブタイプの大部分を占める。こうした腫瘍は、変異頻度が低く、その結果として腫瘍抗原が減少しており、それ故に、免疫原性が低いことによって定義され得る。
【0091】
がんの「病態」は、患者の健康状態を損なう事象をすべて含む。これには、限定はされないが、異常または制御不可能な細胞増殖、転移、隣接細胞の正常機能の妨害、異常レベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症性または免疫学的な応答の抑制または悪化、新生物、前悪性、悪性、リンパ節などの周囲または遠位の組織または臓器への浸潤などが含まれる。
【0092】
本明細書で使用される「がんの再発」及び「腫瘍の再発」という用語、ならびにそれらの文法的異形は、がんの診断の後、新生物性またはがん性の細胞がさらに増殖することを指す。具体的には、がん性組織においてがん性細胞の増殖がさらに生じると、再発が生じ得る。同様に、腫瘍の細胞が局所または遠位の組織または臓器へと広がると、「腫瘍拡散」が生じる。したがって、腫瘍拡散は、腫瘍転移を包含する。腫瘍の増殖が局所的に広がると「腫瘍浸潤」が生じ、その結果、正常な臓器機能が圧迫、破壊、または阻止されることによって関与組織の機能が損なわれる。
【0093】
本明細書で使用される「転移」という用語は、元のがん性腫瘍の臓器とは直接関連しない臓器または体の一部におけるがん性腫瘍の増殖を指す。転移は、微小転移を含むと理解されることになり、微小転移は、元のがん性腫瘍の臓器とは直接関連しない臓器または体の一部においてがん性細胞が検出不可能な量で存在することである。転移は、元の腫瘍部位からのがん細胞の出発、ならびに体の他の部分へのがん細胞の遊走及び/または浸潤などの数段階のプロセスとしても定義することができる。
【0094】
患者に関する「試料」という用語は、血液及び生体起源の他の液体試料、生検組織もしくは組織培養物またはそこから得られる細胞及びその子孫などの固形組織試料を包含する。定義は、試薬処理、洗浄、またはがん細胞などのある特定の細胞集団の濃縮などによって、それを入手した後に任意の方法で操作された試料も含む。定義は、例えば、核酸、ポリペプチドなどの、特定の型の分子が濃縮された試料も含む。「生体試料」という用語は、臨床試料を包含し、外科的切除によって得られた組織、生検によって得られた組織、培養細胞、細胞上清、細胞溶解物、組織試料、臓器、骨髄、血液、血漿、血清、及び同様のものも含む。「生体試料」は、例えば、患者のがん細胞から得られたポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドを含む試料(例えば、ポリヌクレオチド及び/またはポリペプチドを含む細胞溶解物または他の細胞抽出物)などの、患者のがん細胞から得られた試料、ならびに患者に由来するがん細胞を含む試料を含む。患者に由来するがん細胞を含む生体試料は、非がん性細胞も含み得る。
【0095】
「診断」という用語は、乳癌、前立腺癌、または他の型のがんの分子サブタイプの同定などの、分子的または病理学的な状態、疾患、または病状の同定を指すために本明細書で使用される。
【0096】
「予後」という用語は、卵巣癌などの新生物疾患の再発、転移性拡散、及び薬物抵抗性を含む、がんに起因し得る死または進行の可能性の予測を指すために本明細書で使用される。「予測」という用語は、観測、実験、または科学的根拠に基づく予見または推定の行為を指すために本明細書で使用される。1つの例では、医師は、原発性腫瘍の外科的除去及び/または化学療法の後に、ある一定期間、がんの再発を伴わずに患者が生存することになる可能性を予想し得る。
【0097】
本明細書で使用される「treatment(治療)」、「treating(治療)」という用語、及び同様のものは、効果を得ることを目的とする、薬剤の投与、または手順の実施を指す。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に予防するという点で予防的であり得、及び/または疾患及び/または疾患の症状の部分的もしくは完全な治癒をもたらすという点で治療的であり得る。本明細書で使用される「Treatment(治療)」は、哺乳類、具体的にはヒトにおける腫瘍の治療を含み得ると共に、(a)疾患(例えば、原発性疾患と関連するか、またはそれによって生じ得る疾患を含む)に罹りやすくあり得るがその疾患を有するとはまだ診断されていない対象において生じる疾患または疾患の症状の予防と、(b)疾患の抑制、すなわち、その発症の抑止と、(c)疾患の軽減、すなわち、疾患の退縮誘起とを含む。
【0098】
治療は、がんの治療または寛解または予防における成功の任意の兆候を指し得、こうした兆候には、症状の軽減、緩和、縮小もしくは疾患病状の患者耐容性の向上、悪化速度もしくは衰退速度の鈍化、または悪化終点の衰弱低減などの、任意の客観的または主観的なパラメーターが含まれる。症状の治療または寛解は、医師による検査の結果を含む、客観的または主観的なパラメーターに基づくことができる。したがって、「treating(治療)」という用語は、がんまたは他の疾患と関連する症状または病状の発症を予防もしくは遅延、軽減、または抑止もしくは抑制するための、本発明の化合物または薬剤の投与を含む。「治療効果」という用語は、対象における疾患、疾患の症状、または疾患の副作用の低減、排除、または予防を指す。
【0099】
「と組み合わせて」、「併用療法」、及び「組み合わせ製品」は、ある特定の実施形態では、患者への本明細書の記載の薬剤の同時発生的な投与を指す。組み合わせて投与されるとき、それぞれの構成要素は、同時に投与するか、または異なる時点で任意の順序で連続的に投与することができる。したがって、それぞれの構成要素は、別々ではあるが、所望の治療効果が得られるように時間的に十分に近づけて投与することができる。
【0100】
本発明の方法における活性薬剤の「同時投与」は、薬剤が同時に治療効果を有することになるような時間での試薬の投与を意味する。そのような同時投与は、薬剤の同時発生的(すなわち、同時)、事前、または事後の投与を含み得る。本発明の特定の薬物及び組成物の投与の適切なタイミング、順序、及び投与量の決定は、当業者であれば容易であろう。
【0101】
本明細書で使用される治療のエンドポイントは、当該技術分野において知られ、食品医薬品局によって使用される意味を有することになる。
【0102】
全生存期間は、無作為化から任意の原因に起因して死に至るまでの期間として定義され、治療企図集団において測定される。生存期間は、最も信頼性があるがんエンドポイントであると考えられており、生存期間が適切に評価されるように試験を実施できるとき、生存期間は、通常、好ましいエンドポイントである。このエンドポイントは、正確かつ測定が容易であり、死亡日によって記録される。バイアスは、エンドポイント測定の要因にはならない。生存期間の改善は、臨床的利点を評価するためのリスク便益分析として分析されるべきである。全生存期間は、無作為化対照試験において評価することができる。全生存期間が統計学的に有意に改善するという証拠は、毒性プロファイルが許容可能であるならば、臨床的に有意であると考えることができ、多くの場合、新たな薬物承認を支持してきた。本発明の方法の利点には、患者の全生存期間の長期化が含まれ得る。
【0103】
腫瘍評価に基づくエンドポイントには、DFS、ORR、TTP、PFS、及び治療成功期間(TTF)が含まれる。こうした時間依存的エンドポイントに対するデータの収集及び解析は、間接的な評価、計算、及び推定(例えば、腫瘍測定)に基づく。無病生存期間(DFS)は、無作為化から、腫瘍の再発または任意の原因に起因して死に至るまでの期間として定義される。このエンドポイントは、根治的な手術または放射線療法の後の補助療法において最も高頻度で使用される。DFSは、化学療法に伴って患者の大部分で完全奏効が達成されるときも重要なエンドポイントとなり得る。
【0104】
客観的奏効率.
ORRは、腫瘍サイズが所定量減少した患者の割合として定義され、最小期間を対象とする。奏功持続期間は、通常、初回奏功時点から腫瘍進行が認められるまで測定される。一般に、FDAは、部分奏功と完全奏功との合計としてORRを定義している。この様式で定義されるとき、ORRは、薬物の抗腫瘍活性の直接的な尺度であり、これは、単群試験において評価することができる。
【0105】
無増悪期間及び無増悪生存期間.
TTP及びPFSは、薬物承認のための主要エンドポイントとなっている。TTPは、無作為化から客観的腫瘍進行に至るまでの期間として定義される。TTPは、死亡を含まない。PFSは、無作為化から客観的腫瘍進行または死に至るまでの期間として定義される。腫瘍進行の正確な定義は重要であり、プロトコールに注意深く詳細に記載されるべきである。
【0106】
本明細書で使用される「相関する」または「と相関する」という用語、及び同様の用語は、2つの事象の実例間の統計的関連性を指し、事象には、数、データセット、及び同様のものが含まれる。例えば、事象が数を伴うとき、正の相関(本明細書では「直接相関」とも称される)は、一方が増加するにつれてもう一方も増加することを意味する。負の相関(本明細書では「逆相関」とも称される)は、一方が増加するにつれてもう一方は減少することを意味する。
【0107】
「投与量単位」は、治療されることになる特定の個体のための単位投与量として適した物理的に別々の単位を指す。それぞれの単位は、必要な医薬担体との関連において所望の治療効果(複数可)が生じるように計算された所定量の活性化合物(複数可)を含み得る。投与量単位の形態の規格は、(a)活性化合物(複数可)に特有の特徴、及び達成されることになる特定の治療効果(複数可)と、(b)そのような活性化合物(複数可)の配合技術分野に固有の制限とによって決定することができる。
【0108】
「医薬的に許容可能な賦形剤」は、一般に、安全かつ無毒で望ましい医薬組成物の調製において有用な賦形剤を意味し、ヒトの医薬的使用に加えて、獣医学的使用にも許容可能な賦形剤を含む。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合は、ガス状であり得る。
【0109】
「医薬的に許容可能な塩及びエステル」は、医薬的に許容可能であり、所望の薬理学的特性を有する塩及びエステルを意味する。そのような塩には、化合物に存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応する能力を有する場合に形成され得る塩が含まれる。適切な無機塩には、例えば、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ならびにアルミニウムと共に形成されるものが含まれる。適切な有機塩には、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Nメチルグルカミン、及び同様のものなどのアミン塩基などの有機塩基と共に形成されるものが含まれる。そのような塩には、無機酸(例えば、塩酸及び臭化水素酸)と共に形成される酸付加塩と、有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにメタンスルホン酸及びベンゼンスルホン酸などのアルカン-スルホン酸及びアレーン-スルホン酸)と共に形成される酸付加塩ともまた含まれる。医薬的に許容可能なエステルには、例えば、C1-6 アルキルエステルなどの、化合物に存在するカルボキシ基、スルホニルオキシ基、及びホスホノオキシ基から形成されるエステルが含まれる。酸性基が2つ存在するとき、医薬的に許容可能な塩またはエステルは、一酸一塩もしくは一酸一エステル、または二塩もしくは二エステルであり得る。同様に、酸性基が3つ以上存在する場合、そのような基のいくつかまたはすべてが塩化またはエステル化し得る。本発明で名前が挙がる化合物は、非塩化形態または非エステル化形態で存在するか、あるいは塩化形態及び/またはエステル化形態で存在し得、そのような化合物の呼称は、元の(非塩化及び非エステル化)化合物と、その医薬的に許容可能な塩及びエステルとの両方を含むことが意図される。また、本発明で名前が挙がるある特定の化合物は、複数の立体異性形態で存在し得、そのような化合物の呼称は、単一の立体異性体のすべてと、そのような立体異性体の混合物(ラセミ化しているか、またはその他の混合形態のものであるかは問われない)のすべてとを含むことが意図される。
【0110】
「医薬的に許容可能な」、「生理学的に耐容可能な」という用語、及びそれらの文法的異形は、組成物、担体、希釈剤、及び試薬を指すとき、互換的に使用され、組成物の投与を妨げると想定される程度に至るまで望ましくない生理学的作用が生じることなく、材料がヒトに投与可能または負荷可能であることを示す。
【0111】
「治療上有効な量」は、疾患を治療するために対象に投与されるとき、その疾患の治療の達成に十分な量を意味する。
【0112】
使用方法
(i)CD47の活性を遮断する薬剤、ならびに(ii)例えば、CD40、OX40などの免疫共刺激分子をアゴナイズする1つもしくは複数の薬剤、及び/または(iii)例えば、CTLA-4、PD1、PDL1などの免疫抑制分子をアンタゴナイズする薬剤の組み合わせと、標的細胞との接触を含むレジメンにおける原発性または転移性のがんの治療方法または低減方法が提供される。そのような方法は、限定はされないが、試薬と、化学療法剤、放射線療法、またはESAとの組み合わせを含む、本発明の組み合わせ薬剤の、治療を必要とする対象への治療上有効な量または有効用量での投与を含む。
【0113】
免疫共刺激分子をアゴナイズする薬剤での免疫療法、または免疫抑制分子をアンタゴナイズする薬剤での免疫療法は、腫瘍細胞に対する免疫細胞の強力な応答を誘導することができる。こうした治療の副作用は、こうした治療による活性化または抑制の解除が抗原特異的ではないために、正常組織への毒性が生じることである。CD47遮断剤は、マクロファージ及び他の貪食細胞/抗原免疫細胞による、がん細胞の特異的な枯渇を可能にする。結果として、免疫応答または自然免疫系及び適応免疫系の抗腫瘍特異性が増進すると共に、正常組織への毒性が低減し、それ故に、用量または治療を制限する副作用が低減する。
【0114】
免疫調節剤とCD47遮断剤との組み合わせは、腫瘍抗原の提示及び抑制性免疫細胞の枯渇を促進することによって免疫調節剤の効力も増進させることができる。これによって治療期間の短縮が可能になるため、潜在的な毒性及び副作用の持続期間及び重大性が低減される。
【0115】
CD47遮断剤は、インビトロでの食細胞作用ならびに抗原のプロセシング及び提示を可能にする。正常組織細胞の非存在下で貪食細胞によるがん細胞の食細胞作用がインビトロで促進されることによって抗腫瘍限定性の免疫応答がプライミングされ、それ故に、正常な細胞及び組織に対する毒性を防ぐことができる。インビトロでのがん細胞の食細胞作用に続き、貪食細胞を患者に移入することで抗腫瘍T細胞をインビボで活性化することができ、または貪食細胞とT細胞とをインビトロでインキュベートすることで腫瘍抗原に対してT細胞を活性化した後、活性化T細胞を患者に移入することができる。
【0116】
がんを治療するための本発明の組み合わせ薬剤の有効用量は、多くの異なる要素に応じて変わるものであり、こうした要素には、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるか、または動物であるかということ、投与される他の薬物、及び治療が予防的であるか、または治療的であるかということが含まれる。通常、患者はヒトであるが、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのペット、ウサギ、マウス、ラットなどの実験哺乳類、及び同様のものなどの非ヒト哺乳類も治療し得る。治療投与量は、安全性及び効力が最適化するように用量設定することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、それぞれの薬剤の治療投与量は、約0.0001~100mg/宿主体重kgの範囲、より一般的には、0.01~5mg/宿主体重kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/体重kgもしくは10mg/kg体重または1~10mg/kgの範囲内であり得る。例示的な治療レジメンは、2週間ごとに1回の投与、または1ヶ月に1回の投与、または3~6ヶ月ごとに1回の投与を伴う。本発明の治療実体は、通常、複数回にわたって投与される。単回の投与量の間の間隔は、1週間、1ヶ月、または1年であり得る。患者における治療実体の血液レベルの測定結果に応じて、間隔は変則的にもなり得る。あるいは、本発明の治療実体は、持続放出製剤として投与することができ、この場合、必要な投与頻度は低い。投与量及び頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に応じて変わる。
【0118】
予防用途では、比較的低い頻度となる間隔で比較的低い投与量を長期にわたって投与してよい。患者によっては、その残りの生涯にわたって治療が継続される。他の治療用途では、疾患の進行が低減または停止するまで、好ましくは、患者が疾患の症状の寛解を部分的または完全に示すまで、比較的短い間隔で比較的高い投与量が必要になることがある。その後、予防レジメンを患者に施すことができる。
【0119】
さらに他の実施形態では、本発明の方法は、がんの腫瘍増殖、腫瘍転移、または腫瘍浸潤の治療、低減、または予防を含み、こうしたがんには、細胞腫、血液癌、メラノーマ、肉腫、グリオーマなどが含まれる。予防用途については、疾患(疾患の生化学的、組織学的、及び/または行動学的な症状を含む)、その合併症、ならびに疾患の発症中に見られる中間的な病理学的フェノタイプのリスク低減もしくはリスク排除、重症度軽減、または発症遅延に十分な量で、疾患に感受性の患者、あるいは疾患のリスクを有する患者に医薬組成物または薬物が投与される。
【0120】
がんを治療するための組成物は、非経口、局所、静脈内、腫瘍内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、または筋肉内を対象とする手段によって投与することができる。典型的な投与経路は、静脈内または腫瘍内であるが、他の経路も同等に有効であり得る。
【0121】
典型的には、組成物は、溶液または懸濁液のいずれかで注射液として調製される。注射前に用いる液体媒体で溶液または懸濁液とするために適した固体形態を調製することもできる。調製物は、上述したアジュバント効果を増進させるためのポリ乳酸、ポリグリコリド、またはコポリマーなどのリポソームまたは微小粒子に乳化または封入することもできる。Langer,Science 249:1527,1990 and Hanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997。本発明の薬剤は、活性成分の持続放出またはパルス放出が可能となるような様式で製剤化することができるデポ注射またはインプラント調製物の形態で投与することができる。医薬組成物は、一般に、無菌かつ実質的に等張性であり、米国食品医薬品局の医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理(GMP)の規制のすべてが完全に順守されるように製剤化される。
【0122】
本明細書に記載の組み合わせ薬剤の毒性は、細胞培養または実験動物において標準的な医薬的手順によって決定することができ、例えば、LD50(集団の50%が死に至る用量)またはLD100(集団の100%が死に至る用量)を決定することによって決定することができる。毒性作用と治療効果との用量比は治療指数となる。こうした細胞培養アッセイ及び動物試験から得られるデータは、ヒトにおける使用に無毒な投与量範囲の策定において使用することができる。本明細書に記載のタンパク質の投与量は、毒性をほとんどまたは全く有さない有効用量を含む循環濃度の範囲内に収まることが好ましい。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。正確な製剤、投与経路、及び投与量は、患者の病状を考慮して個々の医師が選択することができる。
【0123】
医薬組成物は、投与方法に応じてさまざまな単位剤形で投与することができる。例えば、経口投与に適した単位剤形には、限定はされないが、粉末、錠剤、丸剤、カプセル、及び薬用キャンディーが含まれる。本発明の組成物は、経口的に投与されると、消化から保護されることになると理解される。このことは、典型的には、酸性もしくは酵素による加水分解に対する抵抗性を分子に与えるための組成物と分子との複合化、またはリポソームもしくは保護バリアなどの適切な抵抗性担体への分子の封入によって達成される。消化から薬剤を保護する手段は、当該技術分野においてよく知られている。
【0124】
投与のための組成物は、一般に、医薬的に許容可能な担体、好ましくは、水性担体に溶解した抗体または他の削摩剤(ablative agent)を含むことになる。例えば、緩衝生理食塩水及び同様のものなどの、さまざまな水性単体を使用することができる。こうした溶液は無菌であり、一般に、望ましくない物質を含まない。こうした組成物は、通常のよく知られる滅菌手法によって滅菌してよい。組成物は、pHの調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、ならびに同様のものなどの、生理学的条件に近づけるために必要な医薬的に許容可能な補助物質を含み得、こうした補助物質は、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウム、及び同様のものである。こうした製剤における活性薬剤の濃度は、広範囲にわたって変わり得るものであり、選択される特定の投与様式及び患者の必要性に応じて、流体体積、粘性、体重、及び同様のものに主に基づいて選択されることになる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,1980)and Goodman & Gillman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(Hardman et al.,eds.,1996))。
【0125】
本発明の活性薬剤及びその製剤ならびに使用説明を含むキットもまた、本発明の範囲に含まれる。キットは、例えば、化学療法剤、ESAなどの追加の試薬を少なくとも1つさらに含み得る。キットは、典型的には、キットの内容の意図される用途を示すラベルを含む。ラベルという用語は、キット上またはキットと共に供給されるか、あるいは他の形でキットに付属する任意の記述または記録材料を含む。
【0126】
組成物は、治療的な治療のために投与することができる。組成物は、上述した標的細胞の実質的な除去に十分な量で患者に投与される。このことの達成に適した量は、「治療上有効な用量」として定義され、この量によって全生存率の改善がもたらされ得る。組成物の単回または複数回の投与は、患者に必要であり患者が耐容性を示す投与量及び頻度に応じて実施してよい。治療に必要な特定の用量は、哺乳類の病状及び病歴、ならびに年齢、体重、性別、投与経路、効率などの他の要素に依存することになる。
【実施例0127】
実施例1
抗CD47抗体と、CD40に対するアゴニスト抗体との併用
乳房脂肪体への皮下注射を介して乳癌細胞(25%Matrigelに含まれる100K個の細胞)をマウス(NSG)に注射し、生着させた。動物を4つの治療群に無作為化した。
・媒体対照(PBS)
・CD40アゴニスト単独(アゴニストである抗CD40抗体)
・CD47アンタゴニスト単独(アンタゴニストである抗CD47抗体)
・CD47アンタゴニスト+CD40アゴニスト
【0128】
CD47ab(5F9)は1日おきに投与し、CD40ab(FGK)は1週間に2回投与し、腫瘍増殖は、標識がん細胞(例えば、ルシフェラーゼ陽性細胞)を使用するルシフェラーゼ生物発光イメージングによって監視した。
【0129】
図1に示されるように、抗CD47抗体での治療は、腫瘍増殖を抑制する。アゴニストである抗CD40抗体での治療からは、腫瘍増殖の抑制は生じない。抗CD47抗体と抗CD40抗体とを併用して治療すると、腫瘍増殖の抑制が生じるだけでなく、腫瘍の退縮も生じる。
【0130】
実施例2
インビトロでの相乗効果実験
ADCCアッセイは、マウスまたはヒトのNK細胞(エフェクター)と、マウスまたはヒトのがん細胞(標的細胞)とを使用して実施する。マウスNK細胞は、末梢血、骨髄、または脾臓から単離し、ヒトNK細胞は、末梢血から単離する。ヒトがん細胞の株または初代試料は、標的細胞として使用するために(例えば、クロムまたは蛍光色素を用いて)標識する。
【0131】
NK細胞とがん細胞とは、インビトロで混合し、下記の治療を施して共培養する。
・媒体対照(例えば、PBS)
・チェックポイント阻害剤単独(イピリムマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブを含む)
・CD47アンタゴニスト単独
・CD47アンタゴニスト+チェックポイント阻害剤
【0132】
ADCCは、クロム放出アッセイまたはフローサイトメトリーによる細胞死アッセイ(例えば、アネキシンV/DAPI染色)を介して測定する。NK細胞のサイトカイン(例えば、IFN-ガンマ)の放出は、ELISAを介して測定する。チェックポイント阻害剤と抗CD47とを組み合わせて存在させたときの細胞死及びサイトカイン放出の変化を上記の単剤療法と比較して決定する。
【0133】
実施例3
インビボでの実験プロトコール
皮下、後腹膜、または末梢血への注射を介してがん細胞をマウスに注射し、生着させる。動物を4つの治療群に無作為化する。
・媒体対照(例えば、PBS)
・チェックポイント阻害剤単独(イピリムマブ、ニボルマブ、及びペンブロリズマブを含む)
・CD47アンタゴニスト単独
・CD47アンタゴニスト+チェックポイント阻害剤
【0134】
1日に1回、1週間に3回、1週間に2回、または1週間に1回、それぞれの治療をマウスに施す。腫瘍体積の測定、標識がん細胞(例えば、ルシフェラーゼ陽性細胞)を使用する生物発光、及び/または末梢血の分析によって腫瘍負荷を測定する。マウスの全生存期間も測定する。
【0135】
実施例4
T細胞アッセイ
抗原提示アッセイ.インビトロでの抗原提示アッセイについては、無血清RPMI培地において、104 個のマクロファージと、同数のDLD1-cOVA-GFPがん細胞とを一晩共培養する。翌日、同体積のRPMI+20%FCSを培養物に添加する。OT-I TCR遺伝子導入マウスまたはOT-II TCR遺伝子導入マウスから末梢リンパ節を収集し、0.5mMのCFSE(Molecular Probes)で標識する。ビオチン化された抗CD8抗体または抗CD4抗体を使用してT細胞を単離した後、抗ビオチン磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)で濃縮する。5×104 個のT細胞を上記培養物に添加し、3日目(OT-I T細胞について)または4日目(OT-II T細胞について)に分析する。インビボでの抗原提示アッセイについては、2×106 個のCFSE標識OT-I T細胞(CD45.2)をレシピエントマウス(CD45.1)に静脈内注射して養子移入する。がん細胞との共培養物からマクロファージを単離し、マウスの足蹠に注射する。膝窩リンパ節におけるCD45.2+細胞内のCFSEの希釈を4日目に分析する。
【0136】
インビボでの細胞死滅アッセイ.簡潔に記載すると、C57BL/Ka(CD45.1)マウスに由来する脾細胞を10μMのCFSE(CFSE-高)及び1μMのCFSE(CFSE-低)で標識する。6ウェルプレートにおいて1μMのSIINFEKLペプチドをCFSE-高脾細胞に1時間パルスする。この細胞と、ペプチドをパルスしないCFSE-低細胞とを1:1の比で混合した後、静脈内注射による移入を行う。ペプチド特異的な溶解が生じない場合のCFSE高/低比の変動を把握するために、マウスへの移入前にSIINFEKLペプチドをパルスせずにCFSE-高脾細胞をCFSE-低脾細胞と1:1の比で混合し、対照マウスに投与する。16時間後に流入領域リンパ節を分析する。SIINFEKLペプチドをパルスしていない脾細胞を投与した対照マウスの比に基準化した(1-%CFSE高/%CFSE低)として細胞傷害性パーセントを計算した。
【0137】
腫瘍負荷.レシピエントであるC57BL/Kaマウスに1×106 個のCD8濃縮OT-I T細胞を静脈内注射して養子移入する。同系C57BL/Kaマウスに由来するマクロファージを、DLD1-cOVA-GFP癌と共培養した後、磁気で濃縮することによって単離し、マウスの足蹠に注射する。腫瘍細胞株であるE.G7(ニワトリOVAのcDNAを発現するEL.4細胞)をマウス(ATCC)の腫瘍負荷に使用する。1×105 個のE.G7細胞と通常のmatrigelとを1:1の比でマウスの右後足に皮下注射する。精密ノギスを使用することによって腫瘍サイズを毎日測定し、長さ×幅×高さ×π/6に基づいて体積を計算する。
【0138】
T細胞の増殖.成熟T細胞は、その抗原特異的受容体(TCR)を介して抗原/MHC複合体を認識し、それに応答する。TCRの活性化によって最もすぐに得られる結果は、特定のタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)の誘導、ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)の分解、タンパク質キナーゼC(PKC)の活性化、及び細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を含む、シグナル伝達経路の開始である。こうした初期事象は核へと伝わり、その結果、T細胞のクローン増殖、細胞表面に存在する活性化マーカーの上方制御、エフェクター細胞への分化、細胞傷害性またはサイトカイン分泌の誘導、アポトーシスの誘導が生じる。
【0139】
T細胞の活性化は、TCRに対する抗原またはアゴニスト抗体を介してT細胞をインビトロで刺激し、その際のT細胞の増殖を測定することによって評価する。このプロトコールは、CD3を介して刺激されるマウス脾臓T細胞及びヒト末梢T細胞のインビトロでの増殖を調べるための開始点として記載するものである。非常に重要な臨床パラメーターには、細胞密度、抗体価、及び活性化動力学が含まれる。
【0140】
無菌PBSにおいて抗CD3e(145-2C11)の5~10μg/mLの溶液を調製する。各実験条件に必要なウェル数を計算し、各条件について試料を3連にする。例えば、プレートの2分の1(48ウェル)をコートするためには、抗体溶液が2.6mL必要である。96ウェルアッセイプレートの各ウェルに抗体溶液を50μLずつ分注する。刺激処理を行わない対照ウェルについては無菌PBSを50μL添加する。試料の蒸発を避けるためにParafilm(登録商標)でプレートをしっかりと覆い、37℃で2時間インキュベートするか、またはプレートをあらかじめ1日前に調製し、4℃で一晩保持する。細胞を添加する直前に、マルチチャンネルピペットで50μLの抗体溶液を除去する。200μLの無菌PBSで各ウェルをすすぎ、PBSを捨てる。
【0141】
脾臓を収集し、無菌条件下で単細胞懸濁液を調製し、例えば、抗CD47、チェックポイント阻害剤などの所望の薬剤を存在させた完全RPMI-1640に106 個/mLで再懸濁する。各ウェルに200μLずつ細胞懸濁液を添加し、37℃、5%CO2 雰囲気とした加湿インキュベーター内に置く。可溶性抗CD28を2μg/mLで細胞に添加する。2~4日間インキュベートする。定量化に向けて細胞を収集及び処理することができる。
【0142】
実施例5
進行悪性腫瘍におけるアベルマブとCD47遮断剤との併用試験(JAVELIN Medley)
これは、局所的に進行した固形腫瘍または転移性の固形腫瘍[例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、メラノーマ、及び頭頸部の扁平上皮癌(SCCHN)]を有する患者においてCD47遮断剤及び他のがん免疫療法と組み合わせてアベルマブ(MSB0010718C)の安全性、薬物動態、薬力学、及び抗腫瘍活性を評価するための用量最適化試験である。主目的は、限られた一連の兆候において、必要に応じて投与レジメンを最適化し、CD47遮断剤とのさまざまな組み合わせの安全性及び効力を評価することである。最初に、試験では、5F9-G4(CD47とSIRPαとの間の相互作用を遮断するヒト化抗体)と組み合わせてアベルマブ(抗PD-L1モノクローナル抗体(mAb))の安全性及び抗腫瘍活性を評価することになる。
【0143】
主要評価項目:治療の最初の8週間(最初の2サイクル)の間に用量制限毒性(DLT)が生じる参加者の数。
【0144】
客観的奏効-客観的奏効、すなわち、RECISTバージョン1.1による完全奏功または部分奏功が確認される参加者の数。腫瘍縮小効果(Tumor Response)までの期間(TTR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から客観的腫瘍縮小効果が最初に認められるまでの期間として定義される。効果持続期間(DR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、客観的腫瘍縮小効果が最初に認められてから、客観的腫瘍進行が最初に認められるか、または任意の原因に起因して死に至るまでの期間(客観的腫瘍進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。無増悪生存期間(PFS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)からRECIST v1.1による疾患進行(disease progression)日または任意の原因に起因する死までの期間(疾患進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。全生存期間(OS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から死亡日までの期間として定義される。
【0145】
【表1】
【0146】
実施例7
頭頸部癌患者を対象とする抗OX40抗体とCD47遮断剤との併用
これは、下記の主要評価項目と併せて抗OX40抗体(MEDI6469)の安全性、薬物動態、薬力学、及び抗腫瘍活性を評価するための用量最適化試験である。
【0147】
主要評価項目:治療の最初の8週間(最初の2サイクル)の間に用量制限毒性(DLT)が生じる参加者の数。
【0148】
客観的奏効-客観的奏効、すなわち、RECISTバージョン1.1による完全奏功または部分奏功が確認される参加者の数。腫瘍縮小効果(Tumor Response)までの期間(TTR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から客観的腫瘍縮小効果が最初に認められるまでの期間として定義される。効果持続期間(DR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、客観的腫瘍縮小効果が最初に認められてから、客観的腫瘍進行が最初に認められるか、または任意の原因に起因して死に至るまでの期間(客観的腫瘍進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。無増悪生存期間(PFS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)からRECIST v1.1による疾患進行(disease progression)日または任意の原因に起因する死までの期間(疾患進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。全生存期間(OS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から死亡日までの期間として定義される。
【0149】
【表2】
【0150】
実施例8
固形腫瘍を有する患者における4-1BBアゴニスト(PF-05082566)と抗CD47抗体(5F9-G4)との併用試験
【0151】
主要評価項目:治療の最初の8週間(最初の2サイクル)の間に用量制限毒性(DLT)が生じる参加者の数。
【0152】
客観的奏効-客観的奏効、すなわち、RECISTバージョン1.1による完全奏功または部分奏功が確認される参加者の数。腫瘍縮小効果(Tumor Response)までの期間(TTR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から客観的腫瘍縮小効果が最初に認められるまでの期間として定義される。効果持続期間(DR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、客観的腫瘍縮小効果が最初に認められてから、客観的腫瘍進行が最初に認められるか、または任意の原因に起因して死に至るまでの期間(客観的腫瘍進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。無増悪生存期間(PFS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)からRECIST v1.1による疾患進行(disease progression)日または任意の原因に起因する死までの期間(疾患進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。全生存期間(OS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から死亡日までの期間として定義される。
【0153】
【表3】
【0154】
実施例9
メラノーマ、頭頸部癌(SCHNC)、卵巣、肉腫、ホジキンリンパ腫におけるPF-06801591と5F9-G4との併用試験
【0155】
主要評価項目:治療の最初の8週間(最初の2サイクル)の間に用量制限毒性(DLT)が生じる参加者の数。
【0156】
客観的奏効-客観的奏効、すなわち、RECISTバージョン1.1による完全奏功または部分奏功が確認される参加者の数。腫瘍縮小効果(Tumor Response)までの期間(TTR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から客観的腫瘍縮小効果が最初に認められるまでの期間として定義される。効果持続期間(DR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、客観的腫瘍縮小効果が最初に認められてから、客観的腫瘍進行が最初に認められるか、または任意の原因に起因して死に至るまでの期間(客観的腫瘍進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。無増悪生存期間(PFS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)からRECIST v1.1による疾患進行(disease progression)日または任意の原因に起因する死までの期間(疾患進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。全生存期間(OS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から死亡日までの期間として定義される。
【0157】
【表4】
【0158】
実施例10
進行した固形腫瘍またはリンパ腫(T細胞リンパ腫を含む)を有する患者における5F9-G4とモガムリズマブとの併用試験
【0159】
主要評価項目:治療の最初の8週間(最初の2サイクル)の間に用量制限毒性(DLT)が生じる参加者の数。
【0160】
客観的奏効-客観的奏効、すなわち、RECISTバージョン1.1、免疫関連効果判定基準、リンパ腫を対象とする国際作業部会(IWG)または特別効果判定基準による完全奏功または部分奏功が確認される参加者の数。腫瘍縮小効果(Tumor Response)までの期間(TTR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から客観的腫瘍縮小効果が最初に認められるまでの期間として定義される。効果持続期間(DR)は、客観的奏効(CRまたはPR)が確認される患者について、客観的腫瘍縮小効果が最初に認められてから、客観的腫瘍進行が最初に認められるか、または任意の原因に起因して死に至るまでの期間(客観的腫瘍進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。無増悪生存期間(PFS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)からRECIST v1.1による疾患進行(disease progression)日または任意の原因に起因する死までの期間(疾患進行または死のどちらか先に生じる方までの期間)として定義される。全生存期間(OS)は、無作為化日(NSCLC)または試験治療での初回投与日(メラノーマ及びSCCHN)から死亡日までの期間として定義される。
【0161】
【表5】
【0162】
実施例11
CD47遮断剤は、抗CTLA-4を含む、現在の免疫療法と共に相乗的に作用する。1×106 個のMCA肉腫細胞を野生型129雄性マウスの皮下に移植した。CD47遮断剤、抗CTLA-4、または組み合わせをマウスに腹腔内投与して治療した。ノギス測定によって腫瘍サイズを測定し、任意の方向で腫瘍が2cmを超えたときに動物を安楽死させた。図2にデータが示される。A)PBS、抗CTLA-4、またはCD47遮断剤/抗CTLA-4の併用についてのマウス(N=5)のスパイダープロット。B)単剤療法または併用療法を施したマウスの生存プロット。C)単剤療法及び併用療法における腫瘍サイズ(mm3)。
【0163】
本明細書で引用される刊行物はそれぞれ、すべての目的を対象としてその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0164】
本発明は、記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物の種または属、及び試薬に限定されず、したがって、こうしたものは変わり得ると理解されることになる。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明の範囲の限定は意図されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることになるとも理解されることになる。
【0165】
文脈上明確に示されない限り、本明細書で使用される「a」、「and」、及び「the」という単数形は、複数の参照対象を含む。したがって、例えば、「細胞」に対する参照は、複数のそのような細胞を含み、「培養物」に対する参照は、1つまたは複数の培養物、及び当業者に知られるその同等物などに対する参照を含む。別段の明確な記載がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。
【0166】
本明細書で引用される刊行物はそれぞれ、すべての目的を対象としてその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0167】
本発明は、記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、動物の種または属、及び試薬に限定されず、したがって、こうしたものは変わり得ると理解されることになる。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態の説明のみを目的としており、本発明の範囲の限定は意図されず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって限定されることになるとも理解されることになる。
【0168】
文脈上明確に示されない限り、本明細書で使用される「a」、「and」、及び「the」という単数形は、複数の参照対象を含む。したがって、例えば、「細胞」に対する参照は、複数のそのような細胞を含み、「培養物」に対する参照は、1つまたは複数の培養物、及び当業者に知られるその同等物などに対する参照を含む。別段の明確な記載がない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味と同一の意味を有する。
【0169】
相互参照
本出願は、2016年1月21日出願の米国仮特許出願第62/281,571号、及び2016年3月1日出願の米国仮特許出願第62/301,981号の優先権を主張し、これらの出願は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-04-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん細胞を標的化するために使用される薬剤の組み合わせであって、
(i)抗CD47抗体と、
(ii)免疫枯渇のために標的化されるがん細胞との接触に使用されるための、CD47をアゴナイズする、標的細胞の枯渇増加に有効な用量の抗体と
を含む、薬剤の組み合わせ。
【請求項2】
前記標的細胞に存在する抗原に結合する抗体を更に含む、請求項1に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項3】
前記接触が、インビトロで実施される、請求項1または2に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項4】
哺乳類個体の前記標的細胞を枯渇するために、前記接触が、前記哺乳類個体でのインビボで実施される、請求項1または2に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項5】
前記接触によって前記哺乳類個体の全生存期間が増加する、請求項4に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項6】
前記標的細胞の枯渇が、単剤療法として用いられる任意の単一薬剤の単剤療法で観測される枯渇と比較して増進する、請求項4に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項7】
前記抗CD47抗体が、IgG4のFc領域を含む、請求項1に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項8】
前記抗CD47抗体が、hu5F9-G4である、請求項1に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項9】
前記哺乳類個体が、ヒトである、請求項4~8のいずれか1項に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項10】
前記抗CD47抗体とCD47をアゴナイズする前記抗体とが、同時または別々に投与される、請求項1に記載の薬剤の組み合わせ。
【請求項11】
CD47をアゴナイズする抗体と組み合わせて投与される抗CD47抗体を活性成分として含む、がん治療剤。
【請求項12】
抗CD47抗体と組み合わせて投与される、CD47をアゴナイズする抗体を活性成分として含む、がん治療剤。
【請求項13】
前記抗CD47抗体が、5F9-G4である、請求項11または12に記載のがん治療剤。
【請求項14】
前記抗CD47抗体とCD47をアゴナイズする前記抗体とが、同時または別々に投与される、請求項11~13のいずれか1項に記載の薬剤の組み合わせ。