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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085813
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】頭蓋骨用プレート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/28 20060101AFI20230614BHJP
   A61B 17/80 20060101ALI20230614BHJP
【FI】
A61F2/28
A61B17/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200067
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】599140507
【氏名又は名称】株式会社パイオラックスメディカルデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA01
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC03
4C097CC05
4C097DD01
4C097DD09
4C097DD10
4C097EE06
4C097MM03
4C097MM07
4C160LL22
4C160LL33
(57)【要約】
【課題】頭蓋骨の欠損部や切除部の所望位置に、正確に位置決めして取付けることができる、頭蓋骨用プレート及びその製造方法を提供する。
を提供する。
【解決手段】この頭蓋骨用プレート10は、頭蓋骨1の欠損部2を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるものであって、欠損部2に適合する形状及び大きさに湾曲形成され、且つ、ネジを挿通可能な孔21が複数設けられたプレート本体20を有し、プレート本体20には、頭蓋骨1の縫合線3,4に整合するように、その外周縁23からプレート本体20の内側に向けて、1個以上の孔21を切欠いてなる、位置決め用溝部25,27が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭蓋骨の欠損部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるか、又は、前記頭蓋骨にバーホールを介して形成された切除部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられる、頭蓋骨用プレートであって、
前記欠損部又は前記切除部に適合する形状及び大きさに湾曲形成され、且つ、ネジを挿通可能な孔が複数設けられたプレート本体を有しており、
該プレート本体には、前記頭蓋骨の縫合線又は前記バーホールに整合するように、その外周縁から前記プレート本体の内側に向けて、1個以上の前記孔を切欠いてなる、位置決め用溝部が設けられていることを特徴とする頭蓋骨用プレート。
【請求項2】
前記位置決め用溝部は、2個以上の前記孔を切欠いて、前記縫合線のラインに沿って形成されている請求項1記載の頭蓋骨用プレート。
【請求項3】
前記位置決め用溝部は、前記孔の最大内側寸法よりも小さい、幅狭部分を有している請求項1又は2記載の頭蓋骨用プレート。
【請求項4】
頭蓋骨の欠損部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるか、又は、前記頭蓋骨にバーホールを介して形成された切除部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられる、頭蓋骨用プレートの製造方法であって、
ネジを挿通可能な孔が全域に設けられた金属板を、前記欠損部又は前記切除部に適合する形状に湾曲形成し、且つ、前記欠損部又は前記切除部に適合する大きさに切断して、プレート本体を形成するプレート本体形成工程と、
前記頭蓋骨の縫合線又は前記バーホールに整合するように、前記プレート本体の外周縁から前記プレート本体の内側に向けて、1個以上の前記孔を切欠いて、位置決め用溝部を形成する、溝部形成工程とを有していることを特徴とする頭蓋骨用プレートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭蓋骨の欠損部又は頭蓋骨にバーホールを介して形成された切除部を覆うように頭蓋骨に取付けられる、頭蓋骨用プレート、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、事故等によって頭蓋骨が損傷して欠損した場合に、その欠損部を覆うために、メッシュ状のプレートを用いることがある。また、頭蓋骨に複数のバーホールを形成し、これらのバーホールを介して頭蓋骨の一部を切除した場合、この切除部を覆うために、メッシュ状のプレートを用いることもある。このようなプレートは、通常、患者個人の、頭蓋骨の欠損部や切除部に適合する形状に予め形成しておき(カスタムメイドのプレート、人工骨とも言える)、これを欠損部や切除部に対して位置決めして、ネジによってネジ止め固定する。
【0003】
しかし、上記のようなプレートを手術中において、頭蓋骨の欠損部や切除部の所望位置に、正確に位置決めすることは難しい。
【0004】
そこで、下記特許文献1には、頭蓋骨に形成されている縫合線を利用して、頭蓋骨の欠損部に対して、人工骨を位置決めすることが記載されている。具体的に下記特許文献1には、頭蓋骨の欠損部に対応する領域に設けられ、複数の開口が形成された網状部と、網状部より外側に設けられ、頭蓋骨に固定される固定部と、網状部より外側に設けられるとともに、頭蓋骨の縫合線と欠損部の縁との少なくとも一つのライン上に一致し、頭蓋骨に対する人工骨の位置を決定可能な貫通孔が形成された位置決め部とを有する、人工骨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3174242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1記載の人工骨における貫通孔は、その周囲に、孔ではなく厚さを有する部分が存在している。しかし、貫通孔周囲の厚さを有する部分については、縫合線や欠損部の縁を視認できないため、位置決めに利用することができず、頭蓋骨の欠損部に対する位置決めが難しいことがあった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、頭蓋骨の欠損部や切除部の所望位置に、正確に位置決めして取付けることができる、頭蓋骨用プレート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る頭蓋骨用プレートは、頭蓋骨の欠損部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるか、又は、前記頭蓋骨にバーホールを介して形成された切除部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるものであって、前記欠損部又は前記切除部に適合する形状及び大きさに湾曲形成され、且つ、ネジを挿通可能な孔が複数設けられたプレート本体を有しており、該プレート本体には、前記頭蓋骨の縫合線又は前記バーホールに整合するように、その外周縁から前記プレート本体の内側に向けて、1個以上の前記孔を切欠いてなる、位置決め用溝部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
一方、本発明に係る頭蓋骨用プレートの製造方法は、頭蓋骨の欠損部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるか、又は、前記頭蓋骨にバーホールを介して形成された切除部を覆うように前記頭蓋骨に取付けられるものであって、ネジを挿通可能な孔が全域に設けられた金属板を、前記欠損部又は前記切除部に適合する形状に湾曲形成し、且つ、前記欠損部又は前記切除部に適合する大きさに切断して、プレート本体を形成するプレート本体形成工程と、前記頭蓋骨の縫合線又は前記バーホールに整合するように、前記プレート本体の外周縁から前記プレート本体の内側に向けて、1個以上の前記孔を切欠いて、位置決め用溝部を形成する、溝部形成工程とを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る頭蓋骨用プレートによれば、プレート本体には、頭蓋骨の縫合線又はバーホールに整合するように、その外周縁からプレート本体の内側に向けて、1個以上の孔を切欠いてなる、位置決め用溝部が設けられているので、頭蓋骨の欠損部又は切除部に頭蓋骨用プレートを取付ける際に、位置決め用溝部を通して縫合線を確認しつつ、位置決め用溝部に縫合線が入り込むように頭蓋骨用プレートを配置したり、又は、位置決め用溝部を通してバーホールの内周を確認しつつ、バーホールに対して特定した部分が整合するように頭蓋骨用プレートを配置したりすることによって、頭蓋骨用プレートを頭蓋骨の欠損部又は切除部の予め設定した箇所に位置ずれすることなく、作業性よく設置することができる。その後、孔にネジを挿通して頭蓋骨に螺着することで、頭蓋骨の欠損部又は切除部の所望位置に、頭蓋骨用プレートを正確に位置決めして取付けることができる。
【0011】
そして、位置決め用溝部は、プレート本体の外周縁に達しているため、その長さを比較的長く確保することができるので、プレート本体の外周縁に至るまで縫合線と整合するように、頭蓋骨の欠損部に頭蓋骨用プレートを配置でき、又は、バーホールに重なる部分を増大させて、バーホールに対して位置決めしやすくして、頭蓋骨の切除部に頭蓋骨用プレートを配置できる。そのため、特許文献1(実用新案登録第3174242号)の人工骨に形成された貫通孔で位置決めする場合に比べて、頭蓋骨の欠損部又は切除部に対する頭蓋骨用プレートの位置決め精度を高めることができる。
【0012】
一方、本発明に係る頭蓋骨用プレートの製造方法によれば、溝部形成工程を有しているので、プレート本体に、頭蓋骨の縫合線又はバーホールに整合するように、その外周縁からプレート本体の内側に向けて、1個以上の孔を切欠いてなる、位置決め用溝部を設けた頭蓋骨用プレートを製造することができる。そして、位置決め用溝部を利用して、頭蓋骨の欠損部又は切除部の所望位置に、頭蓋骨用プレートを正確に位置決めして取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る頭蓋骨用プレートの一実施形態を示しており、頭蓋骨の欠損部に取付ける前の状態の斜視図である。
図2】同頭蓋骨用プレートの拡大斜視図である。
図3】同頭蓋骨用プレートを頭蓋骨の欠損部に取付けた状態の斜視図である。
図4】同頭蓋骨用プレートを、頭蓋骨の冠状縫合線を利用して、頭蓋骨の欠損部に取付けた状態の拡大斜視図である。
図5】同頭蓋骨用プレートを、頭蓋骨の鱗状縫合線を利用して、頭蓋骨の欠損部に取付けた状態の拡大斜視図である。
図6】同頭蓋骨用プレートを頭蓋骨に取付けた状態の断面図である。
図7】本発明に係る頭蓋骨用プレートの製造方法の一実施形態を示しており、(а)はその第1工程の説明図、(b)は第2工程の説明図である。
図8】本発明に係る頭蓋骨用プレートの製造方法の、第3工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(頭蓋骨用プレートの一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る頭蓋骨用プレートの、一実施形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、この実施形態における頭蓋骨用プレート10(以下、単に「プレート10」ともいう)は、頭蓋骨1の欠損部2を覆うように頭蓋骨1に取付けられるものである。頭蓋骨1には、縫合線3,4が形成されている。前記縫合線3は冠状縫合線であり、前記縫合線4は鱗状縫合線である。なお、これら以外の縫合線としては、ラムダ縫合線や矢状縫合線がある。
【0016】
そして、このプレート10は、上記の縫合線3,4を利用して、頭蓋骨1の欠損部2に対して位置決めするものである。
【0017】
なお、頭蓋骨1に、複数のバーホール5を開けて、これらのバーホール5を介して、頭蓋骨1の一部を切除して、切除部を形成しておき、この切除部を覆うように、頭蓋骨用プレート10を取付ける場合もある。この場合、頭蓋骨用プレート10は、バーホール5を利用して、頭蓋骨1の切除部に対して位置決めされることになる。
【0018】
以下、プレート10について詳述する。
【0019】
図1~3に示すように、このプレート10は、欠損部2又は切除部に適合する形状及び大きさに湾曲形成され、且つ、ネジ7を挿通可能な孔21が複数設けられたプレート本体20を有している。
【0020】
なお、図6に示すように、この実施形態におけるネジ7は、円盤状の頭部7аと、該頭部7аの裏面中央から延出し、外周に雄ネジが形成された軸部7bとからなり、頭蓋骨1に対してねじ込むことで締め付け固定される、いわゆるタッピングネジとされている。
【0021】
この実施形態のプレート本体20は、頭蓋骨1の欠損部2の周囲の湾曲形状に適合するように、三次元的に湾曲した形状をなしていると共に、欠損部2の全領域を被覆できるような大きさで形成されている。
【0022】
また、プレート本体20の厚さは、0.3~0.7mmであることが好ましく、0.5~0.7mmであることがより好ましい。
【0023】
更に図2に示すように、この実施形態における孔21は、プレート本体20を厚さ方向に貫通する円形状の丸孔であって、プレート本体20の全域に亘って、ほぼ均等な間隔を空けて複数形成されている。
【0024】
また、図6に示すように、孔21の軸方向途中(プレート本体20の厚さ方向途中)には、段状をなしたザグリ部21аが形成されている。このザグリ部21а上に、ネジ7の頭部7аが載置され、ネジ7の頭部7аが、プレート本体20の表面から突出しないようになっている(図6参照)。なお、プレート本体20の表面とは、頭蓋骨1との接触面である裏面と反対側の面を意味する。
【0025】
また、孔21の最大内側寸法D(ここでは孔21の内径)としては、プレート本体20を湾曲形成する前の状態において、1.6~2.6mmであることが好ましく、1.9~2.3mmであることがより好ましい。
【0026】
そして、プレート本体20には、頭蓋骨1の縫合線3,4又はバーホール5に整合するように、その外周縁23からプレート本体20の内側に向けて、1つ以上の孔21を切欠いてなる、位置決め用溝部25,27が設けられている。ここで、プレート本体20の内側とは、プレート本体20を平面的に見たときに、言い換えると、プレート本体20の面方向に対して交差する方向から見たときに、外周縁23よりも内側の部分を意味する。
【0027】
この実施形態においては、プレート本体20の外周縁23から内側に向けて、プレート本体20の面方向に沿って隣接して配置された3個の孔21を互いに連通するように所定幅でもって切欠いて、略直線状をなすように所定長さで延びる、位置決め用溝部25,27が設けられている。
【0028】
また、位置決め用溝部25は、縫合線3に対応して、同縫合線3のラインに沿って形成される一方、位置決め用溝部27は、縫合線4に対応して、同縫合線4のラインに沿って形成されている。更に、位置決め用溝部25,27は、プレート本体20の表面から、縫合線3,4の一部を視認可能であると共に、その内側に、縫合線3,4の一部が入り込むようになっている。
【0029】
また、図2の部分拡大図に示すように、位置決め用溝部25,27は、孔21の最大内側寸法Dに適合した寸法W1(ここでは図面の便宜上、孔21よりもやや大きい)で形成された幅広部分25а,27аと、同幅広部分25а,27аよりも幅狭(幅広部分25a,27aの寸法W1よりも小さい)で、且つ、孔21の最大内側寸法Dよりも小さい寸法W2で形成された幅狭部分25b,27bとを有している。
【0030】
すなわち、位置決め用溝部25,27は、延出方向の基端部(プレート本体20の内側に位置する端部)から延出方向の先端部(プレート本体20の外周縁23側の端部)に向けて、幅広部分25а,27аと幅狭部分25b,27bとが交互に連設された形状となっている。
【0031】
また、位置決め用溝部25,27の幅広部分25а,27аの寸法W1(最大内側寸法)は、1.6~2.6mmであることが好ましく、1.9~2.3mmであることが好ましい。更に、位置決め用溝部25,27の幅狭部分25b,27bの寸法W2(幅)は、1.0~2.0mmであることが好ましく、1.6~2.0mmであることが好ましい。
【0032】
また、位置決め用溝部25の延出方向の先端部であって、その幅方向一側部には、位置決め溝部25の開口幅を、外周縁23に向けて次第に広げる切欠き部29が形成されている。
【0033】
以上説明したプレート10は、例えば、Tiや、Ti-Al-V系、Ti-Al-Nb-Ta系、Ti-Zr-Nb-Ta系、Ti-Mo-Zr-Al系等のTi系合金、ステンレス、Ni-Ti系合金、Co-Cr系合金、その他の生体適合性金属等からなる金属材料、又は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)や、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の、生体適合性を有する樹脂材料によって形成されている。
【0034】
(頭蓋骨用プレートの製造方法の一実形態)
次に、本発明に係る頭蓋骨用プレートの製造方法の、一実施形態について説明する。
【0035】
この頭蓋骨用プレートの製造方法(以下、単に「製造方法」ともいう)は、ネジ7を挿通可能な孔21が全域に設けられた金属板Pを、欠損部2又は切除部に適合する形状に湾曲形成し、且つ、欠損部2又は切除部に適合する大きさに切断して、プレート本体20を形成するプレート本体形成工程と、頭蓋骨1の縫合線3,4又はバーホール5に整合するように、プレート本体20の外周縁23からプレート本体20の内側に向けて、1つ以上の孔21を切欠いて、位置決め用溝部25,27を形成する、溝部形成工程とを有している。
【0036】
より具体的には、この実施形態における製造方法においては、まず、患者個人の頭蓋骨1をCT検査して、その欠損部2や切除部の形状や大きさのデータを取得する。
【0037】
次いで、金属板Pの全域に、複数の孔21を予め形成して、金属板Pをメッシュ状に加工しておく。その後、上記データに基づいて、例えば、図7(а)に示すような、近接離反可能な一対の型30,31を形成する。一方の型30には、上記データに基づいて、所定の湾曲形状をなした凹部30аが形成されており、他方の型31には、型30の凹部30аに適合する、湾曲形状をなした凸部31аが形成されている。
【0038】
そして、図7(а)に示すように、金属板Pの周縁部分を固定ピン32で型30に固定した状態で、他方の型31を近接させて、両型30,31を閉じる。すると、図7(b)に示すように、金属板Pの中央部分が、凹部30а及び凸部31аによって挟持されて、凹部30аや凸部31аに沿った湾曲形状となるように湾曲形成される。その後、枠30,31から金属板Pを取外し、欠損部2又は切除部に適合する大きさとなるように、金属板Pの周縁部の不要な部分を適宜切除することで、所定の三次元湾曲形状をなしたプレート本体20を形成することができる。以上が、上記の「プレート本体形成工程」となっている。
【0039】
また、金属板Pの、縫合線3,4に整合する位置に、位置決め用溝部25,27を形成するためには、例えば、上記データに基づいて予め作製された頭蓋骨モデルの欠損部や切除部に、湾曲形成した金属板Pを当てて、頭蓋骨モデルに形成された縫合線やバーホールに位置合わせする。その後、図8に示すように、メッシュカッター9によって、頭蓋骨モデルの縫合線やバーホールに沿って、複数の孔21(ここでは3つの孔21)を互いに連通するように切欠くことで、位置決め用溝部25,27が形成される。以上が、上記の「溝部形成工程」となっている。
【0040】
なお、位置決め用溝部25,27を形成するためには、上記のような頭蓋骨モデルを用いる以外にも、例えば、マーカーM(図8参照)を適宜施した後(例えば、型30,31による湾曲形成後に、型30,31から取外した金属板Pに対して、CT検査データに基づいて、レーザー等で印字することでマーカーMを付したり、或いは、型30,31の一方又は両方に、縫合線3,4に整合するような突条等を設けておき、両型30,31の閉じ時に、金属板Pに、マーカーMをなす凹溝を形成したりする)、同マーカーMに沿って、複数の孔21を切欠くことで形成してもよい。
【0041】
更に、上記プレート本体形成工程や溝部形成工程に伴って、プレート本体20に生じたバリやエッジを、ヤスリ等で適宜削ることによって、図1図2に示すようなプレート10を製造することができる。
【0042】
(変形例)
以上説明した実施形態におけるプレート本体や、孔、位置決め用溝部等の、形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。
【0043】
例えば、この実施形態における孔21は、円形状の丸孔となっているが、孔としては、例えば、楕円形状や、長孔、三角形状、四角形状、五角以上の角形状等であってもよく、ネジを挿通可能で頭蓋骨との螺着用に用いられるものであればよい。また、この実施形態における孔21は、プレート本体20の全域に亘って形成されているが、孔としては、プレート本体20の所定部分のみに設けてもよい。
【0044】
更に、位置決め用溝部を設けるために切欠かれる孔は、この実施形態では3個となっているが、位置決め用溝部を設けるために切欠かれる孔としては、例えば、1個でもよく、或いは、2個、4個以上であってもよい。
【0045】
また、この実施形態の位置決め用溝部25,27は、略直線状をなすように所定長さで延びた溝となっているが、例えば、曲線状を描きつつ延びた溝としたり、波形状を描きつつ延びた溝としたり、蛇行しつつ延びた溝としたりしてもよく、縫合線やバーホールの形状に応じて適宜形成することができる。
【0046】
更に、位置決め用溝部は、その延出方向の基端部から延出方向の先端部に向けて次第に幅広又は段階的に幅広となる形状としたり、或いは、延出方向の先端部から基端部に向けて次第に幅広又は段階的に幅広となる形状としたりしてもよい。
【0047】
また、この実施形態における頭蓋骨用プレートの製造方法では、プレート本体形成工程後に、溝部形成工程が行われるようになっているが、例えば、溝部形成工程後にプレート本体形成工程を行うようにしてもよく、頭蓋骨用プレートの製造方法としては、プレート本体形成工程と溝部形成工程とを有していればよい。
【0048】
(作用効果)
次に、上記構造からなる本発明に係る頭蓋骨用プレート10、及び、その製造方法の作用効果について説明する。
【0049】
すなわち、図1に示すように、頭蓋骨1の縫合線3,4に、位置決め用溝部25,27を位置合わせし(位置決め用溝部25,27に、縫合線3,4が入り込むようにする)、頭蓋骨1の欠損部2を覆うように、頭蓋骨1の表面上にプレート10を配置して、プレート本体20の外周縁部を、頭蓋骨1の欠損部2の外周縁部に当接させる。
【0050】
その後、プレート本体20の、頭蓋骨1の欠損部2の外周縁部に当接した部分の孔21に、ネジ7を挿通して、図6に示すように、頭蓋骨1に螺着させることで、図3に示すように、頭蓋骨1の欠損部2を覆うように、プレート10を取付けることができる。
【0051】
そして、このプレート10においては、図1図2に示すように、プレート本体20には、頭蓋骨1の縫合線3,4に整合するように、その外周縁23からプレート本体20の内側に向けて、1個以上の孔21を切欠いてなる、位置決め用溝部25,27が設けられている。
【0052】
そのため、上述したように、頭蓋骨1の欠損部2にプレート10を取付ける際に、位置決め用溝部25,27を通して、縫合線3,4を確認しつつ、位置決め用溝部25,27に縫合線3,4が入り込むように、プレート10を配置することによって、プレート10を頭蓋骨1の欠損部2の、予め設定した箇所に位置ずれすることなく、作業性よく設置することができる。
【0053】
なお、頭蓋骨1に複数のバーホール5を介して切除部が形成されている場合には、位置決め用溝部25,27を通してバーホール5の内周を確認しつつ、バーホール5に対して特定した部分が整合するように、プレート10を配置することによって、プレート10を頭蓋骨1の切除部の、予め設定した箇所に位置ずれすることなく、作業性よく設置することができる。
【0054】
その後、孔21にネジ7を挿通して頭蓋骨1に螺着することで、頭蓋骨1の欠損部2又は切除部の所望位置に、プレート10を正確に位置決めして取付けることができる。
【0055】
そして、位置決め用溝部25,27は、プレート本体20の外周縁23に達しているため、その長さを比較的長く確保することができるので、プレート本体20の外周縁23に至るまで縫合線3,4と整合するように、頭蓋骨1の欠損部2にプレート10を配置することができる。
【0056】
同様に、位置決め用溝部25,27は、プレート本体20の外周縁23に達しているため、その長さを比較的長く確保することができるので、バーホール5に重なる部分を増大させて、バーホール5に対して位置決めしやすくすることができ、頭蓋骨1の切除部にプレート10を配置することができる。
【0057】
その結果、特許文献1(実用新案登録第3174242号)の人工骨に形成された貫通孔で位置決めする場合に比べて、頭蓋骨1の欠損部2又は切除部に対する頭蓋骨用プレート10の位置決め精度を高めることができる。
【0058】
また、位置決め用溝部25,27は、プレート本体20の外周縁23から内側に向けて設けられているので、頭蓋骨1の欠損部2又は切除部を覆う面積を、最大限に確保することができる。
【0059】
更に、プレート本体20の外周縁23に位置決め用溝部25,27が設けられているので、この位置決め用溝部25,27を利用して、その周囲の形状を変形させやすくすることができ、プレート本体20の湾曲形状を調整しやすくなる。また、位置決め用溝部25,27は、1個以上の孔21を利用して形成するので、プレート本体20に位置決め用溝部25,27を形成しやすい。
【0060】
また、この実施形態においては、位置決め用溝部25,27は、2個以上の孔21を切欠いて、縫合線3,4のラインに沿って形成されている。
【0061】
この態様によれば、位置決め用溝部25,27を、縫合線3,4のラインに沿って長く形成することができるので、頭蓋骨1の欠損部2又は切除部に対して、プレート10をより正確に位置決めした状態で、取付けることができる(位置決め用溝部25,27が長いと、短い場合に比べて、頭蓋骨1の欠損部2又はバーホール5に対する取付け位置がブレにくくなるため)。
【0062】
更に、この実施形態においては、位置決め用溝部25,27は、孔21の最大内側寸法Dよりも小さい、幅狭部分25b,27bを有している。
【0063】
上記態様によれば、位置決め用溝部25,27は、孔21の最大内側寸法Dよりも小さい、幅狭部分25b,27bを有しているので、プレート本体20の剛性を確保しながら、幅狭部分25b,27bによって、より精度の高いプレート10の位置決め機能を得ることができる(幅狭部分25b,27bの内側に、縫合線3,4が入り込むように、プレート10を配置すればよいので、位置決め用溝部25,27の幅が広い場合に比べて、位置決め用溝部25,27の内側のどの位置に、縫合線3,4を配置すればよいか分かりやすくなり、プレート10の位置決め精度が高まる。)。
【0064】
一方、本発明に係る頭蓋骨用プレートの製造方法は、上述したように、溝部形成工程を有しているので(図8参照)、プレート本体20に、頭蓋骨1の縫合線3,4又はバーホール5に整合するように、その外周縁23からプレート本体20の内側に向けて、1個以上の孔21を切欠いてなる、位置決め用溝部25,27を設けた頭蓋骨用プレート10を製造することができる。そして、位置決め用溝部25,27を利用して、頭蓋骨1の欠損部2又は切除部の所望位置に、プレート10を正確に位置決めして取付けることができる。
【0065】
また、上記のように、位置決め用溝部25,27は、1個以上の孔21を利用して形成するので、プレート本体20に位置決め用溝部25,27を形成しやすい。
【0066】
更に、ネジ7を挿通可能な孔21が全域に設けられた金属板Pを利用して、プレート本体20を形成するので、特許文献1のような固定孔を別途設ける必要がなく、金属板Pを共通化することができ、汎用性を高めることができる。
【0067】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 頭蓋骨
2 欠損部
3,4 縫合線
5 バーホール
7 ネジ
10 頭蓋骨用プレート(プレート)
20 プレート本体
21 孔
23 外周縁
25,27 位置決め用溝部
25b,27b 幅狭部分
29 切欠き部
P 金属板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8