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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023085946
(43)【公開日】2023-06-21
(54)【発明の名称】光リピータ装置および中継方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20230614BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20230614BHJP
【FI】
H04W56/00 110
H04W16/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200274
(22)【出願日】2021-12-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 恭介
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA22
5K067EE02
5K067EE06
5K067EE10
5K067EE37
(57)【要約】
【課題】複数の光リピータシステムの間で、子機のRF出力点における同期を取ることが可能な光リピータ装置および中継方法を提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態の光リピータ装置は、タイミング検出部と、タイミング取得部と、同期部とを備える。タイミング検出部は、複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングをそれぞれ検出する。タイミング取得部は、他の光リピータ装置に接続される複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングに関する情報を取得する。同期部は、タイミング検出部が検出した切替タイミングと、タイミング取得部が取得した情報とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される複数の基地局装置からの信号を同期させる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信網に接続され互いに異なる周波数帯の無線信号を送受信する複数の基地局装置と、移動通信端末と無線通信する複数の子機との間を時分割多重方式で接続する光リピータ装置であって、
前記複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングをそれぞれ検出するタイミング検出部と、
他の光リピータ装置に接続される複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングに関する情報を取得するタイミング取得部と、
前記タイミング検出部が検出した切替タイミングと、前記タイミング取得部が取得した情報とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される前記複数の基地局装置からの信号を同期させる同期部と、
を備える光リピータ装置。
【請求項2】
前記同期部は、
前記タイミング検出部が検出した、前記複数の基地局装置の切替タイミングのうち、最も遅い切替タイミングを検出して、この最も遅い切替タイミングと各基地局装置の切替タイミングの差を内部遅延量として検出する内部遅延量検出部と、
前記タイミング取得部が取得した情報から、他の光リピータ装置に接続される複数の基地局装置について、最も遅い切替タイミングを検出する外部遅延量検出部と、
前記内部遅延量検出部が検出した最も遅い切替タイミングおよび前記内部遅延量と、前記外部遅延量検出部が検出した最も遅い切替タイミングとに基づいて、当該光リピータ装置に接続される前記複数の基地局装置からの信号をそれぞれ遅延させて同期させる遅延調整部と、
を備える請求項1に記載の光リピータ装置。
【請求項3】
さらに、前記内部遅延量検出部が検出した最も遅い切替タイミングを、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングに関する情報として、前記他の光リピータ装置に送信するタイミング情報送信部を備える請求項2に記載の光リピータ装置。
【請求項4】
移動通信網に接続され互いに異なる周波数帯の無線信号を送受信する複数の基地局装置と、移動通信端末と無線通信する複数の子機との間を時分割多重方式で接続する光リピータ装置であって、
前記複数の子機との間の伝送遅延量をそれぞれ検出する遅延量検出部と、
他の光リピータ装置に接続される複数の子機と前記他の光リピータ装置との間の伝送遅延量に関する情報を取得する遅延量取得部と、
前記遅延量検出部が検出した伝送遅延量と、前記遅延量取得部が取得した情報とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される前記複数の子機から前記移動通信端末に送信する信号を同期させるための情報を前記複数の子機にそれぞれ送信する同期制御部と、
を備えることを特徴とする光リピータ装置。
【請求項5】
前記同期制御部は、
前記遅延量検出部が検出した、前記複数の子機との間の伝送遅延量のうち、最も大きい伝送遅延量を検出して、この最も大きい伝送遅延量と各子機の伝送遅延量の差を内部遅延量として検出する内部遅延量検出部と、
前記遅延量取得部が取得した情報から、他の光リピータ装置に接続される複数の子機について、最も大きい伝送遅延量を検出する外部遅延量検出部と、
前記内部遅延量検出部が検出した最も大きい伝送遅延量および前記内部遅延量と、前記外部遅延量検出部が検出した最も大きい伝送遅延量とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される前記複数の子機から前記移動通信端末に送信する信号をそれぞれ遅延させるための遅延量を前記情報として生成する遅延情報生成部と、
を備える請求項4に記載の光リピータ装置。
【請求項6】
さらに、前記内部遅延量検出部が検出した最も大きい伝送遅延量を、当該光リピータ装置に接続される複数の子機との間の伝送遅延量に関する情報として、前記他の光リピータ装置に送信する遅延情報送信部を備える請求項5に記載の光リピータ装置。
【請求項7】
移動通信網に接続され互いに異なる周波数帯の無線信号を送受信する複数の基地局装置と、移動通信端末と無線通信する複数の子機との間を時分割多重方式で接続する光リピータ装置の中継方法であって、
前記複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングをそれぞれ検出するタイミング検出工程と、
他の光リピータ装置に接続される複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングに関する情報を取得するタイミング取得工程と、
前記タイミング検出工程で検出した切替タイミングと、前記タイミング取得工程で取得した情報とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される前記複数の基地局装置からの信号を同期させる同期工程と、
を備える中継方法。
【請求項8】
移動通信網に接続され互いに異なる周波数帯の無線信号を送受信する複数の基地局装置と、移動通信端末と無線通信する複数の子機との間を時分割多重方式で接続する光リピータ装置の中継方法であって、
前記複数の子機との間の伝送遅延量をそれぞれ検出する遅延量検出工程と、
他の光リピータ装置に接続される複数の子機と前記他の光リピータ装置との間の伝送遅延量に関する情報を取得する遅延量取得工程と、
前記遅延量検出工程で検出した伝送遅延量と、前記遅延量取得工程で取得した情報とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される前記複数の子機から前記移動通信端末に送信する信号を同期させるための情報を前記複数の子機にそれぞれ送信する同期制御工程と、
を備える中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、移動通信網の通信エリアを拡大する光リピータ装置および中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、携帯電話、スマートフォン等の移動通信端末の不感エリアを解消するために、光リピータシステム(DAS(Distributed Antenna System))の導入が進んでいる。光リピータシステムは、移動通信網の無線基地局と接続された親機(MU)、すなわち光リピータ装置と、移動通信端末と無線信号を送受信する子機(RU)とが光回線で接続され、この子機を複数、分散配置することで通信エリアを拡大している。特に、大規模な商業施設やオフィスビルといった広範囲の室内エリアをカバーするのに有用である。
【0003】
一般に、無線基地局と移動通信端末の間の通信方式としては、上り(以下、UL(Up Link))と下り(以下、DL(Down Link))の各通信で、異なる周波数を使用するFDD(Frequency Division Duplex)方式と、1つの周波数を時分割で使用するTDD(Time Division Duplex)方式の2種類がある。
【0004】
近年、複数の周波数帯を同時に時分割で使用することで、通信速度の向上を実現する技術であるキャリアアグリゲーション(以下、CA(Career Aggregation))が実用化された。5G(第5世代移動通信システム)のようなTDD方式の周波数帯でCAを実現する場合、周波数帯間でのUL/DLの切替タイミング差は3μ秒以内であることと3GPP(登録商標)に規定されている。
【0005】
しかしながら、上記規定は、無線基地局のRF出力点での規定であって、無線基地局の光リピータシステムを導入した場合を考慮したものではない。このため、光リピータシステムの複数の子機でのRF出力点で、周波数帯間でのUL/DL切替タイミング差が3GPP(登録商標)の規定内に収まらず、CAの効果が得られない可能性があった。
【0006】
さらに近時、複数の光リピータシステム(あるいは、複数の親機)を導入して、共通の通信エリアをカバーする場合がある。この場合、各光リピータシステムにおいて子機間でRF出力点の同期を取ることができたとしても、光リピータシステム(親機)間で同期は取られていないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第6602813号公報
【特許文献2】特許第6567438号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】5G通信向けの携帯端末不感エリア対策用光リピーター装置、東芝レビューVol.76 No.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、複数の光リピータシステムの間で、子機のRF出力点における同期を取ることが可能な光リピータ装置および中継方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態の光リピータ装置は、タイミング検出部と、タイミング取得部と、同期部とを備える。タイミング検出部は、複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングをそれぞれ検出する。タイミング取得部は、他の光リピータ装置に接続される複数の基地局装置について、ダウンリンクとアップリンクの切替タイミングに関する情報を取得する。同期部は、タイミング検出部が検出した切替タイミングと、タイミング取得部が取得した情報とに基づいて、当該光リピータ装置に接続される複数の基地局装置からの信号を同期させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明に係わる光リピータ装置を備えた光リピータシステムの構成例を示す図。
図2図1に示した光リピータシステムの具体的な構成を示す機能ブロック図。
図3図2に示したTDDタイミング比較部の処理を説明するためのフローチャート。
図4図2に示した監視制御部の処理を説明するためのフローチャート。
図5図2に示した信号処理部110-1~110-3の他の例を示す機能ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係わる光リピータ装置を備えた光リピータシステムの構成と、このシステムによるUL/DLの切替タイミング差の補正方法の概念を示すものである。
【0013】
この光リピータシステムは、光リピータ装置(MU:Master Unit)に相当する親機100a、100bと、RU(Remote Unit)に相当する子機200a-1~200a-3、200b-1~200b-3と、中継機300(HUB)を備える。
【0014】
なお、この例では、説明を簡明にするために、上述のように親機を2つ(100a、100b)、これにそれぞれ収容される子機を3つずつ(200a-1~200a-3、200b-1~200b-3)としているが、これに限定されるものではない。
【0015】
親機100aは、通信事業者の移動通信網に接続される基地局装置であるTDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cと同軸ケーブルによって接続される。同様に、親機100bは、通信事業者の基地局装置であるTDD無線機BS-a、BS-b、BS-cと同軸ケーブルによって接続される。親機100aと親機100bとの間は、例えば、ツイストペアケーブルなどにより接続される。
【0016】
この同軸ケーブルによる接続では、各基地局(TDD無線機)毎に、例えば、100MHzバンド×4(4×4MIMO)で、4系統の無線信号が伝送される。
【0017】
また以下の説明では、TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cは互いに異なる周波数帯fA、fB、fCの無線信号を送受信し、同様に、TDD無線機BS-a、BS-b、BS-cは互いに異なる周波数帯fa、fb、fcの無線信号を送受信するものとする。
【0018】
この例では、説明を簡明にするために、各親機100a、100bがそれぞれ3つのTDD無線機(BS-A、BS-B、BS-CおよびBS-a、BS-b、BS-c)を収容する場合を例に挙げて説明しているが、3つに限定されるものではない。
【0019】
なお、TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cは、互いに同じ通信事業者の基地局装置であったとしても、UL/DLの切替タイミング差は、3μ秒以内の範囲内で生じ得る。同様に、TDD無線機BS-a、BS-b、BS-cは、互いに同じ通信事業者の基地局装置であったとしても、UL/DLの切替タイミング差は、3μ秒以内の範囲内で生じ得る。
【0020】
親機100aにおけるTDD無線機BS-A、BS-B、BS-C間のUL/DLの切替タイミング差は、親機100aによって調整でき、同様に、親機100bにおけるTDD無線機BS-a、BS-b、BS-c間のUL/DLの切替タイミング差は、親機100bによって調整できる。
【0021】
しかしながら、親機100aと親機100bとの間で、切替タイミング差の調整後に遅延差が生じ得る。この原因としては、親機100aと親機100bとの間で、GMCの精度、eNB/gNBのズレ、同軸ケーブル長の差が考えられる
これに対し、本実施形態では、親機100aと親機100bとの間で互いに情報を交換し、各親機において、実質的に同じ情報に基づく同じロジックにしたがった第1の補正処理を実施して、それぞれ接続されるTDD無線機に関する遅延差を補正する。第1の補正処理の具体的な方法については、後に詳述する。
【0022】
一方、親機100aは、子機200a-1~200a-3を収容する。親機100aと各子機200a-1~200a-3との間は、それぞれ光ファイバで接続され、例えば、25Gビット/sでデジタル伝送が行われる。
【0023】
同様に、親機100bは、子機200b-1~200b-3を収容するが、親機100bと子機200b-1は、直接、光ファイバで接続され、親機100bと子機200b-2、200b-3との間は、中継機300を介して、それぞれ光ファイバで接続される。同様に、光ファイバでは、例えば、25Gビット/sでデジタル伝送が行われる。
【0024】
なお、親機100aの子機200a-1~200a-3への出力端において、UL/DLの切替タイミングが同期していたとしても、子機200a-1~200a-3間では、UL/DLの切替タイミング差が生じ得る。子機200b-1~200b-3間でも同様である。これは、親機と子機の間の光ファイバ長の違いや、各機器における処理遅延差などに起因する伝送遅延が原因である。
【0025】
親機100aにおける各子機200a-1~200a-3とのUL/DLの切替タイミング差は、親機100aによって調整でき、同様に、親機100bにおける各子機200b-1~200b-3とのUL/DLの切替タイミング差は、親機100bによって調整できる。
【0026】
親機100aにおいて、子機200a-1~200a-3間の伝送遅延差に起因するUL/DLの切替タイミング差は、親機100aによって調整できる。同様に、親機100bにおいて、子機200b-1~200b-3間の伝送遅延差に起因するUL/DLの切替タイミング差は調整できる。
【0027】
しかしながら、親機100aと親機100bとの間で、子機に対する調整の遅延差が生じ得る。この原因も同様に、光ファイバ長の違いや、各機器における処理遅延差などに起因する伝送遅延が原因である。
【0028】
これに対し、本実施形態では、親機100aと親機100bとの間で互いに情報を交換し、各親機において、実質的に同じ情報に基づく同じロジックにしたがった第2の補正処理を実施して、それぞれの配下の子機に関する遅延差を補正する。第2の補正処理の具体的な方法については、後に詳述する。
【0029】
図2は、親機100aと親機100b、子機200a-1~200a-3と200b-1~200b-3について、構成を説明するための機能ブロック図である。なお、親機100bについては、親機100aと同様であることより図示と説明の一部を省略し、同様に、子機200a-2~200a-3、200b-1~200b-3については、子機200a-1と同様であることより図示と説明の一部を省略する。
【0030】
親機100aは、信号処理部110-1~110-3、TDDタイミング比較部120、多重分離部130、監視制御部140を備える。なお、TDDタイミング比較部120および監視制御部140は、プロセッサとメモリにより構成することができる。すなわち、メモリに記憶された制御プログラムと制御データに基づいて、プロセッサが動作することにより実現できる。
【0031】
信号処理部110-1~110-3は、それぞれ対応するTDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cと同軸ケーブルによって接続され、移動通信端末UEとの間で送受信される無線信号を上記同軸ケーブルを通じて送受信するものである。
【0032】
具体的には、信号処理部110-1~110-3は、それぞれ、送受切替スイッチ(SW)111、検波器112、A/D変換器(ADC)113、TDDタイミング同期部114、TDDタイミング遅延調整部115、D/A変換器(DAC)116、伝送遅延検出部117を備える。
【0033】
なお、信号処理部110-1~110-3は、同様の構成であることより、以下では、信号処理部110-1を中心に説明するが、信号処理部110-2、110-3の説明として適宜読み替えることは、当業者にとって容易であろう。
【0034】
送受切替スイッチ111は、後述するTDDタイミング同期部114から与えられるタイミング信号に同期したタイミングで、TDD無線機BS-Aとの間の送信と受信のタイミングを切り換え、TDDによる通信を実現する。
【0035】
検波器112は、TDD無線機BS-Aから受信したRF信号を検波して、アップリンクとダウンリンクの切替タイミングを検出する。すなわち、検波器112によって検波を行う場合には、送受切替スイッチ111が一時的にダウンリンクの受信を継続するように、TDDタイミング同期部114はタイミング信号を出力する。なお、検波器112およびTDDタイミング同期部114は、タイミング検出部の一例である。
【0036】
A/D変換器113は、TDD無線機BS-Aから受信したRF信号をベースバンド信号にダウンコンバートしたのち、A/D変換し、TDDタイミング遅延調整部115に出力する。
【0037】
TDDタイミング同期部114は、検波器112が検出した切替タイミングに同期したタイミング信号(パルス信号)を生成し、このタイミング信号を送受切替スイッチ111およびTDDタイミング比較部120に出力する。
【0038】
TDDタイミング比較部120は、内部遅延差検出処理と、親機間タイミング差検出処理と、合計遅延差検出処理とを実施する。なお、TDDタイミング比較部120は、タイミング取得部、同期部(内部遅延検出部、外部遅延検出部)、タイミング情報送信部の一例である。
【0039】
以下、図3を参照して、TDDタイミング比較部120の処理について説明する。
内部遅延差検出処理において、TDDタイミング比較部120は、ステップS301として、信号処理部110-1~110-3からそれぞれタイミング信号を取得する。すなわち、TDDタイミング比較部120は、TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cについて、それぞれ検出されたタイミング信号を取得する。
【0040】
そして、TDDタイミング比較部120は、ステップS302として、3つのタイミング信号を比較して、TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cの間の遅延差を補正するための内部遅延量DA、DB、DCを検出する。
【0041】
すなわち、内部遅延量DA、DB、DCは、所定の基準タイミングに各TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cからの信号の切替タイミングを同期させるための、信号処理部110-1~110-3における送受信タイミングの調整量に相当する。
【0042】
この検出をより具体的に説明すると、例えば、最も遅い切替タイミングのTDD無線機にタイミングを合わせるために、その最も遅い切替タイミング(あるいはこれに基づく所定のタイミング)を内部目標タイミングT100Aとして定め、この内部目標タイミングT100Aと各信号処理部110-1~110-3で検出されたタイミング信号との差を内部遅延量DA、DB、DCとして検出する。
【0043】
次に、親機間タイミング差検出処理において、TDDタイミング比較部120は、ステップS303として、内部目標タイミングT100Aを他の親機100bに通知(送信)するとともに、ステップS304として、他の親機100bで同様にして定めた内部目標タイミングT100Bの通知を検出(受信)する。
【0044】
そして、TDDタイミング比較部120は、ステップS305として、内部目標タイミングT100Aと内部目標タイミングT100Bとの間の親機間タイミング差D100を検出する。
【0045】
この検出をより具体的に説明すると、例えば、最も遅い内部目標タイミングの親機に合わせるために、その最も遅い内部目標タイミング(あるいはこれに基づく所定のタイミング)を共通目標タイミングS100として定め、この共通目標タイミングS100と自己の内部目標タイミングT100Aとの差を親機間タイミング差D100として検出する。
【0046】
次に、合計遅延差検出処理において、TDDタイミング比較部120は、ステップS306として、内部遅延差検出処理で求めた内部遅延量DA、DB、DCと、親機間タイミング差検出処理で求めた親機間タイミング差D100とに基づいて、各信号処理部110-1~110-3で遅延調整に用いる遅延調整量DA100、DB100、DC100を求め、それぞれ対応する信号処理部110-1~110-3に出力する。
【0047】
すなわち、遅延調整量DA100、DB100、DC100は、親機100a内におけるTDD無線機BS-A、BS-B、BS-C間の遅延差と、親機100aと親機100bとの間の遅延差を、ともに補正する情報である。
【0048】
TDDタイミング遅延調整部115は、TDDタイミング比較部120から出力される遅延調整量DA100にしたがった遅延をA/D変換器(ADC)113の出力に与えて遅延させ、切替タイミングを調整する。これにより、図1で示した第1の補正処理が実現される。なお、TDDタイミング遅延調整部115は、同期部(遅延調整部)の一例である。
【0049】
多重分離部130は、各信号処理部110-1~110-3のTDDタイミング遅延調整部115から出力される信号をそれぞれ光信号に変換したのち多重化し、光ファイバを通じて子機200a-1~200a-3に伝送する。
【0050】
また多重分離部130は、光ファイバを通じて各子機200a-1~200a-3から光信号を受信し、光電変換してデジタル信号を抽出する。このデジタル信号は、D/A変換器(DAC)116にてアナログ信号に変換された後、無線周波にアップコンバートされ、送受切替スイッチ111および同軸ケーブルを通じてTDD無線機BS-Aに伝送される。
【0051】
伝送遅延検出部117は、子機200a-1との制御信号のやりとりにより、親機100aと子機200a-1との間の伝送遅延量を検出する。信号処理部110-2の伝送遅延検出部117と、信号処理部110-3の伝送遅延検出部117も同様にして、親機100aと子機200a-2の間あるいは親機100aと子機200a-3の間の伝送遅延量を検出する。これらの伝送遅延量は、監視制御部140に出力される。なお、伝送遅延検出部117は、遅延量検出部の一例である。
【0052】
監視制御部140は、内部伝送差検出処理と、親機間伝送差検出処理と、合計伝送差検出処理とを実施する。なお、監視制御部140は、遅延量取得部、同期制御部(内部遅延検出部、外部遅延検出部、遅延情報生成部)、遅延情報送信部の一例である。
【0053】
以下、図4を参照して、監視制御部140の処理について説明する。
内部伝送差検出処理において、監視制御部140は、ステップS401として、信号処理部110-1~110-3からそれぞれ伝送遅延量を取得する。すなわち、監視制御部140は、子機200a-1~200a-3について、それぞれ検出された伝送遅延量を取得する。
【0054】
そして、監視制御部140は、ステップS402として、3つの伝送遅延量を比較して、子機200a-1~200a-3間の伝送遅延差を補正するための内部遅延量D1、D2、D3を検出する。
【0055】
すなわち、内部遅延量D1、D2、D3は、所定の基準遅延量に各子機200a-1~200a-3の遅延量を一致させるための、子機200a-1~200a-3における伝送遅延の調整量に相当する。
【0056】
この検出をより具体的に説明すると、例えば、最も遅延の大きい子機(図1の例では、子機200a-3)に合わせるように、その最も大きい遅延量(あるいはこれに基づく所定の遅延量)を内部目標遅延量T200Aとして定め、この内部目標遅延量T200Aと各子機200a-1~200a-3の伝送遅延量との差を内部遅延量D1、D2、D3として検出する。
【0057】
次に、親機間伝送差検出処理において、監視制御部140は、ステップS403として、内部目標遅延量T200Aを他の親機100bに通知(送信)するとともに、ステップS404として、他の親機100bで同様にして定めた内部目標遅延量T200Bの通知を検出(受信)する。
【0058】
そして、監視制御部140は、ステップS405として、内部目標遅延量T200Aと内部目標遅延量T200Bとの間の親機間遅延差D200を検出する。
【0059】
この検出をより具体的に説明すると、例えば、最も大きい遅延量の内部目標遅延量の親機(図1の例では、親機100a。子機200a-3が最も大きい遅延。)に合わせるように、その最も大きい内部目標遅延量(あるいはこれに基づく所定の遅延量)を共通目標遅延量S200として定め、この共通目標遅延量S200と自己の内部目標遅延量T200Aとの差を親機間遅延差D200として検出する。
【0060】
次に、合計伝送差検出処理において、監視制御部140は、ステップS406として、内部伝送差検出処理で求めた内部遅延量D1、D2、D3と、親機間伝送差検出処理で求めた親機間遅延差D200とに基づいて、各子機200a-1~200a-3で伝送遅延の調整に用いる遅延調整量D1200、D2200、D3200を求め、それぞれ対応する子機200a-1~200a-3に出力する。
【0061】
すなわち、遅延調整量D1200、D2200、D3200は、親機100aにおける子機200a-1~200a-3との間の伝送遅延量の差と、親機100aと親機100bとの間の伝送遅延量の差を、ともに補正する情報である。
【0062】
監視制御部140は、多重分離部130を通じて、遅延調整量D1200を子機200a-1に送信する。同様に、監視制御部140は、多重分離部130を通じて、遅延調整量D2200、D3200を対応する子機200a-2、200a-3に送信する。
【0063】
子機200a-1は、多重分離部210、監視制御部220、遅延調整部230、D/A変換器(DAC)240、送受切替スイッチ(SW)250、A/D変換器(ADC)260を備える。
【0064】
なお、子機200a-1~200a-3は、同様の構成であることより、以下では、子機200a-1を中心に説明するが、子機200a-2、200a-3の説明として適宜読み替えることは、当業者にとって容易であろう。
【0065】
多重分離部210は、多重化された光信号を分離し、光信号を電気信号に変換して、デジタルのダウンリンク信号を抽出する。
【0066】
監視制御部220は、上記ダウンリンク信号から当該子機200a-1宛ての信号を検出するとともに、この信号に含まれる親機100aの監視制御部140から送られた遅延調整量D1200を検出し、遅延調整部230に出力する。
【0067】
遅延調整部230は、監視制御部220から出力された遅延調整量D1200に基づいて、ダウンリンク信号の送信タイミングを遅延させ、D/A変換器240に出力する。これにより、図2で示した第2の補正処理が実現される。
【0068】
D/A変換器240は、ダウンリンク信号をアナログ信号に変換し、搬送波の変調に用いられる。変調された搬送波は、無線周波にアップコンバートされたのち、送受切替スイッチ250およびアンテナを通じて空間に放射される。
【0069】
移動通信端末UEは、子機200a-1から受信した無線信号(ダウンリンク)に基づくタイミングで送受信(アップリンク/ダウンリンク)を切替制御して通信を行う。これにより移動通信端末UEから送信されたRF信号は、上記アンテナおよび送受切替スイッチ250を介して、A/D変換器260に出力される。
【0070】
A/D変換器260は、移動通信端末UEから受信したRF信号をベースバンド信号にダウンコンバートしたのち、A/D変換し、多重分離部210に出力する。
【0071】
多重分離部210は、A/D変換器260から出力されるデジタル信号を光信号に変換したのち多重化し、光ファイバを通じて親機100aに伝送する。
【0072】
以上のように、上記構成の光リピータシステムでは、親機100aにおいて、内部遅延差検出処理により内部目標タイミングT100Aを定めて、各TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cについて遅延量(内部遅延量DA、DB、DC)を検出し、その後、親機間タイミング差検出処理により、内部目標タイミングT100Aと他の親機100bの内部目標タイミングT100Bとの間の親機間タイミング差D100を検出して、合計遅延差検出処理によって、すべてのTDD無線機(BS-A、BS-B、BS-CおよびBS-a、BS-b、BS-c)に同期するようにUL/DLの切替タイミングを調整している。
【0073】
したがって、上記構成の光リピータシステムの親機100aによれば、TDD無線機BS-A、BS-B、BS-CおよびTDD無線機BS-a、BS-b、BS-cの間のUL/DLの切替タイミング差が補正されるので、配下の子機200a-1~200a-3への出力端のみならず、親機100bの配下の子機200b-1~200b-3への出力端に対しても、UL/DLの切替タイミングの同期を取ることができる。
【0074】
なお、上述したような上記親機100a(親機100b)におけるUL/DLの切替タイミングの同期処理は、TDD無線機BS-A、BS-B、BS-Cと、TDD無線機BS-a、BS-b、BS-cについて、UL/DLの切替タイミング差を検出して、すべてのTDD無線機に同期するようにUL/DLの切替タイミングを調整しているとことと等価であることは、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0075】
また、上記構成の光リピータシステムでは、親機100aにおいて、内部伝送差検出処理により内部目標遅延量T200Aを定めて、各子機200a-1~200a-3について伝送遅延量(内部遅延量D1、D2、D3)を検出し、その後、親機間伝送差検出処理により、内部目標遅延量T200Aと他の親機100bの内部目標遅延量T200Bとの間の親機間遅延差D200を検出して、合計伝送差検出処理によって、すべての子機(200a-1~200a-3および200b-1~200b-3)に同期するようにUL/DLの切替タイミングを調整している。
【0076】
したがって、上記構成の光リピータシステムの親機100aによれば、子機200a-1~200a-3および子機200b-1~200b-3の間のUL/DLの切替タイミング差が補正されるので、配下の子機200a-1~200a-3から移動通信端末UEへの出力端のみならず、親機100bの配下の子機200b-1~200b-3から移動通信端末UEへの出力端に対しても、UL/DLの切替タイミングの同期を取ることができる。
【0077】
上述したような上記親機100a(親機100b)におけるUL/DLの切替タイミングの同期処理は、子機200a-1~200a-3と、子機200b-1~200b-3について、伝送遅延量を検出して、すべての子機に同期するようにUL/DLの切替タイミングを調整しているとことと等価であることは、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0078】
なお、この発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0079】
例えば、上記実施形態では、2つの親機100a、親機100bが存在する場合について説明したが、3つ以上の親機が存在する場合でも、同様にして同期が実現されることは、当業者によって容易に理解されるであろう。
【0080】
また、図1で示した第1の補正処理と、図2で示した第2の補正処理は、いずれも遅延処理を伴うので、子機200a-1~子機200a-3からダウンリンク送信されるRF信号のタイミングが、3GPP(登録商標)で規定されたタイミングから離れてしまう場合がある。そこで、第1の補正処理、および第2の補正処理で遅延させる分を見越して、TDD無線機BS-A~BS-C側でTDDタイミングを早めるようにしてもよい。このようにすれば、子機200a-1~子機200a-3の無線周波数(RF)出力点において、3GPP(登録商標)で規定されたTDDタイミングに合わせることが可能になる。
【0081】
また、図2の信号処理部110-1において、TDD無線機BS-Aから受信したRF信号を検波器112で検波して、アップリンクとダウンリンクの切替タイミングを検出する構成を示した。これに代えて、次の図5に示すような構成としても良い。
図5は、信号処理部110-1~110-3の他の例を示す機能ブロック図である。図5に示される信号処理部110-1は、A/D変換器113の後段に接続されるタイミング検出部118を備える。タイミング検出部118は、RF信号をデジタル変換して得られたデジタル信号から、アップリンクとダウンリンクの切替タイミングを検出する。つまりタイミング検出部118は、デジタル信号を復調して当該デジタル信号に含まれるデータを解釈することにより、TDDタイミングを抽出する。このように、デジタル領域でTDDタイミングを検出するようにしても良い。
【0082】
その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を施しても同様に実施可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0083】
100a…親機、100b…親機、110-1~110-3…信号処理部、111…送受切替スイッチ、112…検波器、113…A/D変換器、114…TDDタイミング同期部、115…TDDタイミング遅延調整部、116…D/A変換器、117…伝送遅延検出部、118…タイミング検出部、120…TDDタイミング比較部、130…多重分離部、140…監視制御部、200a-1~200a-3…子機、200b-1~200b-3…子機、210…多重分離部、220…監視制御部、230…遅延調整部、240…D/A変換器、250…送受切替スイッチ、260…A/D変換器、300…中継機、BS-A~BS-C…TDD無線機、BS-a~BS-c…TDD無線機。
図1
図2
図3
図4
図5