(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086208
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】粘着テープ、粘着テープ巻回体及び流路管
(51)【国際特許分類】
C09J 7/29 20180101AFI20230615BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230615BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20230615BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230615BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230615BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20230615BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20230615BHJP
F16L 11/04 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
C09J7/29
B32B9/00 A
B32B9/04
B32B27/00 M
B32B27/34
B32B27/36
C09J7/25
F16L11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200566
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】糸瀬 純
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
4J004
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB23
3H111DA14
3H111DB01
4F100AA19B
4F100AA20B
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4J004AA05
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4J004CC03
4J004CD08
4J004CD09
4J004CE01
4J004EA01
4J004FA10
(57)【要約】
【課題】水含有流体が流通する樹脂製チューブを高いシール性で被覆することが可能であり、耐久性と形状追随性に優れる粘着テープを提供すること。
【解決手段】樹脂基材フィルム11と、バリア層12と、粘着剤層18と、樹脂基材フィルム11とバリア層12の間、及び、バリア層12と粘着剤層18の間の少なくとも一方に第1樹脂フィルム15と、を備え、バリア層12は、第2樹脂フィルム12Aと第2樹脂フィルム12Aに蒸着された無機酸化物の蒸着層12Bとを含む、水含有流体が流通する樹脂製チューブ被覆用の粘着テープ100を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基材フィルムと、
バリア層と、
粘着剤層と、
前記樹脂基材フィルムと前記バリア層の間、及び、前記バリア層と前記粘着剤層の間の少なくとも一方に第1樹脂フィルムと、を備え、
前記バリア層は、第2樹脂フィルムと当該第2樹脂フィルムに蒸着された無機酸化物の蒸着層とを含む、水含有流体が流通する樹脂製チューブ被覆用の粘着テープ。
【請求項2】
前記バリア層は、
前記樹脂基材フィルム側から、前記第2樹脂フィルムと、前記無機酸化物の蒸着層と、複合被膜層と、をこの順に有し、
前記無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記第1樹脂フィルムは、PETフィルム及びナイロンフィルムの少なくとも一方を含む、請求項1又は2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記第1樹脂フィルムは、前記バリア層と前記粘着剤層との間に設けられる積層フィルムであり、
当該積層フィルムは、PETフィルムとナイロンフィルムとを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
40℃、90%RHにおける水蒸気透過率が0.5g/(m2・day)未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記樹脂製チューブにおける前記水含有流体の流路から前記樹脂製チューブの外方への水蒸気の蒸散を抑制する、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着テープ。
【請求項7】
巻き芯と、前記巻き芯に巻き回された、請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着テープとを備える、粘着テープ巻回体。
【請求項8】
水含有流体が流通する樹脂製チューブと、当該樹脂製チューブの外表面を被覆する請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着テープと、を備える、流路管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粘着テープ、粘着テープ巻回体及び流路管に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、日用品、医薬及び精密機械の分野では、空気中の酸素及び水蒸気などによって品質が損なわれてしまうものがある。このような各種製品の包装には、密封性を維持するため、粘着テープが用いられている。例えば、特許文献1では、フィルム基材の片面に、蒸着薄膜層、被膜層及び粘着層が順次積層された密封用粘着テープが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造装置及び分析機器等の精密機械には、冷却水を循環して用いることがある。このような冷却水の循環流路は、通常、不純物混入の防止、並びに、設置及び取り回しの利便性から、フッ素樹脂等の樹脂製チューブが用いられている。ところが、精密機械等に用いられる水含有流体が流通する樹脂製チューブは小径のものが多く、また、狭い空間で取り廻して配置されるため、様々な角度で屈曲した状態で用いられる。このような樹脂製チューブを高いシール性で被覆するためには、変形に対する形状追随性と耐久性に優れることが求められる。
【0005】
そこで、本開示では、このような樹脂製チューブを高いシール性で被覆することが可能であり、耐久性と形状追随性に優れる粘着テープ、及び当該粘着テープを備える粘着テープ巻回体を提供する。また、高いシール性を有するとともに、耐久性に優れる流路管を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、一つの側面において、樹脂基材フィルムと、バリア層と、粘着剤層と、樹脂基材フィルムとバリア層の間、及び、バリア層と粘着剤層の間の少なくとも一方に第1樹脂フィルムと、を備え、バリア層は、第2樹脂フィルムと当該第2樹脂フィルムに蒸着された無機酸化物の蒸着層とを含む、水含有流体が流通する樹脂製チューブ被覆用の粘着テープを提供する。
【0007】
この粘着テープは、第2樹脂フィルムと当該第2樹脂フィルムに蒸着された無機酸化物の蒸着層を含むことから、シール性に優れる。また、このような無機酸化物の蒸着層は、アルミニウム等の金属製のバリア層に比べて、変形したときにピンホールが発生し難く耐久性に優れる。また、アルミニウム等の金属製のバリア層は巻き付けの際に折れ曲がって巻き付けの際の形状追随性が悪いのに対し、無機酸化物の蒸着層はこのような金属製のバリア層よりもチューブに巻き付ける際の形状追随性にも優れる。さらに、このようなバリア層に加えて、樹脂基材フィルムと第1樹脂フィルムとを兼ね備えることから、優れた形状追随性を有しつつも耐久性にも優れる。
【0008】
このような粘着テープで水含有流体が流通する樹脂製チューブを被覆すれば、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を十分に抑制することができる。これによって、水蒸気の蒸散による精密機械及び製品の汚染及び腐食を抑制することができる。
【0009】
上記バリア層は、樹脂基材フィルム側から、第2樹脂フィルムと、無機酸化物の蒸着層と、複合被膜層と、をこの順に有してよい。これによって、シール性を更に向上し、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を一層抑制することができる。蒸着層を構成する無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含んでよい。これによって、十分に優れた形状追随性と耐久性を有する粘着テープを低い製造コストで製造することができる。
【0010】
上記第1樹脂フィルムは、PETフィルム及びナイロンフィルムの少なくとも一方を含んでよい。PETフィルムを含むことによって、粘着テープの剛性が向上し、樹脂製チューブを被覆する際の作業性を向上することができる。ナイロンフィルムを含むことによって、樹脂製チューブに対する形状追随性を一層向上することができる。
【0011】
上記第1樹脂フィルムは、バリア層と粘着剤層との間に設けられる積層フィルムであり、当該積層フィルムは、PETフィルムとナイロンフィルムとを含んでいてよい。これによって、形状追随性と剛性を一層高い水準で両立することができる。このような粘着テープは、樹脂製チューブに十分に密着して、高いシール性を発揮することができる。また、剛性を有することから被覆の際の作業性にも優れる。このため、粘着テープによる被覆の信頼性を十分に高くすることができる。
【0012】
上記粘着テープは樹脂製チューブにおける水含有流体の流路から樹脂製チューブの外方への水蒸気の蒸散を抑制するものであってよい。上記粘着テープの40℃、90%RHにおける水蒸気透過率は0.5g/(m2・day)未満であってよい。これによって、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散をより一層抑制することができる。
【0013】
本開示は、一つの側面において、巻き芯と、巻き芯に巻き回された、上述のいずれかの粘着テープとを備える、粘着テープ巻回体を提供する。この粘着テープ巻回体は、上述のいずれかの粘着テープを備える。このような粘着テープは、シール性、形状追随性及び耐久性に優れることから、樹脂製チューブを被覆すれば、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を十分に抑制することができる。このような粘着テープ巻回体は、取り扱い性にも優れる。
【0014】
本開示は、一つの側面において、水含有流体が流通する樹脂製チューブと、当該樹脂製チューブの外表面を被覆する上述のいずれかの粘着テープと、を備える、流路管を提供する。このような流路管は、樹脂製チューブの外表面は上述の粘着テープで被覆されることから、高いシール性を有するとともに耐久性に優れる。このような流路管は、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を十分に抑制することができる。これによって、微量の水蒸気の蒸散のよる精密機械及び製品の汚染及び腐食を抑制することができる。上記流路管は、例えば装置を冷却する冷却水の循環流路に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
水含有流体が流通する樹脂製チューブを高いシール性で被覆することが可能であり、耐久性と形状追随性に優れる粘着テープ、及び当該粘着テープを備える粘着テープ巻回体を提供することができる。このような粘着テープは、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を十分に抑制することができる。また、高いシール性を有するとともに、耐久性に優れる流路管を提供することができる。このような流路管は、水蒸気の蒸散を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る粘着テープ巻回体の斜視図である。
【
図2】一実施形態に係る粘着テープの断面図である。
【
図3】別の実施形態に係る粘着テープの断面図である。
【
図4】一実施形態に係る流路管の径方向断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、場合により図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
図1に示す一実施形態に係る粘着テープ巻回体150は、円筒形の巻き芯30との巻き芯30に巻き回された粘着テープ100とを備える。粘着テープ巻回体150は、粘着テープ100の先端を引っ張り出すと、巻き芯30から繰り出されるようになっている。
【0019】
図2に示すように、粘着テープ100は、樹脂基材フィルム11、バリア層12、第1樹脂フィルム15及び粘着剤層18をこの順に備える。樹脂基材フィルム11は、
図1の粘着テープ巻回体150において、外周面側になるように配置される。樹脂基材フィルム11は、これよりも内側に形成される各層及び各フィルムを保護するとともに、粘着テープ100の強度を維持する機能を有する。
【0020】
樹脂基材フィルム11の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリルニトリルフィルム、並びにポリイミドフィルム等が挙げられる。これらは、一軸又は二軸延伸されたものであってもよいし、未延伸のものであってもよい。これらのうち、粘着テープ100の耐久性を向上する観点、及び、剛性を付与して作業性を向上する観点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0021】
樹脂基材フィルム11のバリア層12側とは反対側の表面には、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、及び滑剤等の添加剤又は安定剤が付与されていてもよい。樹脂基材フィルム11のバリア層12側の表面には、バリア層12との密着性向上の観点から、コロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、薬品処理、及び溶剤処理から選ばれる少なくとも一つを含む前処理が施されていてもよい。樹脂基材フィルム11の厚みは、耐久性と形状追随性を高い水準で両立する観点から、例えば5~30μmであってよく、10~20μmであってもよい。
【0022】
バリア層12は、ガスバリア性を有する層であり、酸素バリア及び水蒸気バリアの機能を有する。バリア層12は、例えば、第2樹脂フィルム12Aと第2樹脂フィルム12Aに蒸着された無機酸化物の蒸着層12Bと、複合被膜層12Cとを有する。第2樹脂フィルム12Aの材質としては、樹脂基材フィルム11で例示したものと同じものを用いることができる。粘着テープ100の耐久性を向上する観点、及び、剛性を付与して作業性を向上する観点から、第2樹脂フィルム12Aはポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)であることが好ましい。第2樹脂フィルム12Aの蒸着層12Bを設ける側の表面にリアクティブイオンエッチング(RIE)を利用したプラズマ処理を施すことによって、プラズマ前処理層を設けてもよい。プラズマ前処理層は、第2樹脂フィルム12Aの蒸着層12Bを設ける側と反対側の表面に形成してもよい。
【0023】
第2樹脂フィルム12AがPETフィルムである場合、未延伸及び延伸のどちらであってもよく、延伸の場合にも延伸倍率、並びに一軸延伸及び二軸延伸には特に制限はない。また、第2樹脂フィルム12Aは、単体フィルムであってもよいし積層フィルムであってもよい。第2樹脂フィルム12Aの厚みは、例えば、3~200μmであってよく、6~30μmであってもよい。第2樹脂フィルム12Aの樹脂基材フィルム11側の表面には、例えば、帯電防止剤、紫外線防止剤、可塑剤、滑剤等の添加剤又は安定剤が付与されていてもよい。
【0024】
蒸着層12Bは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む。蒸着層12Bは、透明性を有する層であってもよい。このような蒸着層12Bを備えることによって、優れたシール性と形状追随性を有しつつ、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を一層抑制することができる。
【0025】
蒸着層12Bの厚みは、高いバリア性と優れた形状追随性とを高水準で両立する観点から、例えば5~300nmであってよく、10~150nmであってもよい。厚みが小さくなり過ぎると均一な厚みを有する膜の形成が困難になる傾向にある。一方、厚みが大きすぎると、樹脂製チューブの径が小さい場合に巻き付けにくくなる場合がある。粘着テープ100におけるピンホールの発生及び折れ曲がりを抑制する観点から、バリア層12は、アルミニウム等の金属層を備えないことが好ましい。
【0026】
蒸着層12Bは、例えば、通常の真空蒸着法により形成することができる。プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いてもよい。蒸着層12Bは、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等の薄膜形成法を用いて形成してもよい。真空蒸着法の加熱手段としては、例えば、電子線加熱方式、抵抗加熱方式、及び誘導加熱方式が挙げられる。
【0027】
複合被膜層12Cは、ガスバリア性を持った被膜層であり、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド又はその加水分解物と水系溶媒(水或いは水とアルコールの混合溶媒)とを含むコーティング剤を用いて形成される。コーティング剤には、例えば、水溶性高分子を水系溶媒で溶解させたものに金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させるなど処理を行ったものを混合して調製してもよい。このようなコーティング剤を、無機酸化物を含む蒸着層12B上にコーティングした後、加熱乾燥して複合被膜層12Cを形成することができる。コーティング剤に含まれる各成分について以下に詳細に説明する。
【0028】
コーティング剤に含まれる水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びアルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、ガスバリア性を十分に高くする観点から、水溶性高分子はポリビニルアルコール(以下、PVAと略す)を含むことが好ましい。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるものである。PVAとしては、例えば、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVA等用いることができる。
【0029】
コーティング剤に含まれる金属アルコキシドとしては、一般式、M(OR)n(ただし、Mは金属原子を示し、Rはアルキル基を示す)で表される化合物が挙げられる。金属原子Mは、Si,Ti,Al又はZrであってよく、Rはメチル基又はエチル基であってよい。具体的な化合物としては、テトラエトキシシラン[Si(OC2H5)4]、及び、トリイソプロポキシアルミニウム[Al[OCH(CH3)2]3]が挙げられる。これらは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定である点で好ましく用いられる。
【0030】
コーティング剤に含まれるその他の成分としては、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0031】
コーティング剤の塗布方法としては、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法、及びグラビア印刷法等が挙げられる。複合被膜層12Cの厚みは、コーティング剤の種類、加工機及び加工条件を変えることによって調整できる。複合被膜層12Cの厚みは、高いバリア性と優れた形状追随性とを高水準で両立する観点から、0.01~50μmであってよく、0.1~10μmであってもよい。このようにして得られるバリア層12は、例えば接着剤を用いてドライラミネートによって樹脂基材フィルム11と接着されてもよい。
【0032】
本実施形態の粘着テープ100は、バリア層12を一層のみ備えているが、これに限定されない。幾つかの変形例では、粘着テープ100は、バリア層12を複数備えていてもよい。例えば、バリア層12を同じ向きに2つ以上重ねて、第1バリア層と第2バリア層を設けてもよい。第1バリア層と第2バリア層の層構成は同じであってもよいし、異なっていてもよい。第1バリア層と第2バリア層の積層構造及び材質は、上述のバリア層12で挙げたものを適宜採用することができる。
【0033】
第1樹脂フィルム15の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、炭素数2~10のオレフィンの重合体、プロピレン-エチレン共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン(例えば、ナイロン6、ナイロン6,6)等の脂肪族系ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド等の芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニル系樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル系単量体の単独又は共重合体等のアクリル系樹脂;セロファン;ポリカーボネート、ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。
【0034】
これらのうち、粘着テープ100の形状追随性を一層向上させる観点から、第1樹脂フィルム15は、ナイロンフィルム14を含むことが好ましい。また、粘着テープ100の剛性を向上させる観点から、第1樹脂フィルム15は、PETフィルム16を含むことが好ましい。第1樹脂フィルム15として、ナイロンフィルム14とPETフィルム16とを兼ね備えることによって、粘着テープ100の形状追随性と剛性とを一層高い水準で両立することができる。このような粘着テープ100は、樹脂製チューブに十分に密着して、高いシール性を発揮することができる。また、被覆の際の作業性にも優れることから、粘着テープの巻き付け信頼性も向上することができる。このため、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を高いレベルで且つ高精度に抑制することができる。ナイロンフィルム14とPETフィルム16は、それぞれドライラミネートによって順次接着して積層してよい。
【0035】
ナイロンフィルム14の厚みは、高いバリア性と優れた形状追随性とを高水準で両立する観点から、5~40μmであってよく、8~30μmであってよく、10~20μmであってもよい。PETフィルム16の厚みは、高いバリア性と優れた剛性を高水準で両立する観点から、5~30μmであってよく、8~25μmであってよく、10~20μmであってもよい。
【0036】
第1樹脂フィルム15は上述の構成に限定されない。例えば、ナイロンフィルム14とPETフィルム16の位置が逆になっていてもよい。ナイロンフィルム14及びPETフィルム16の一方が、樹脂基材フィルム11とバリア層12(第2樹脂フィルム12A)の間に設けられ、他方がバリア層12(複合被膜層12C)と粘着剤層18との間に設けられてもよい。
【0037】
粘着剤層18は、樹脂製チューブに接着可能なものを適宜用いることができる。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤及びゴム系粘着剤等が挙げられる。これらのうち、水分と接触しても高い接着強度を十分に維持する観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。粘着剤層18の厚みは、1~10μmであってよい。粘着剤層18は、例えばコーター等で第1樹脂フィルム15(PETフィルム16)の一方面上に塗布して形成することができる。
【0038】
図3に示す別の実施形態に係る粘着テープ110は、樹脂基材フィルム11、第1樹脂フィルム15A、バリア層12、第1樹脂フィルム15B及び粘着剤層18をこの順に備える。第1樹脂フィルム15Aはナイロンフィルム14であってよく、第1樹脂フィルム15BはPETフィルム16であってよい。粘着テープ110も、ナイロンフィルム14とPETフィルム16とを兼ね備えることによって、形状追随性と剛性とを一層高い水準で両立することができる。幾つかの変形例では、ナイロンフィルム14とPETフィルム16の位置が入れ替わっていてもよい。また、第1樹脂フィルム15A及び第1樹脂フィルム15Bの一方又は双方が、ナイロンフィルムとPETフィルムの積層フィルムで構成されていてもよい。
【0039】
粘着テープ100,110は、シール性に優れるとともに、形状追随性、耐久性及び剛性に優れる。粘着テープ100,110の水蒸気透過率(WVTR)は、例えば0.5gr/m2・day未満であり、好ましくは、0.05gr/m2・day未満であり、より好ましくは0.04gr/m2・day未満であり、さらに好ましくは0.03gr/m2・day未満である。この水蒸気透過率は、例えば、バリア層12の構成、又は蒸着層12Bの厚みを変えることで調整することができる。なお、本明細書における水蒸気透過率(WVTR)は、MOCON法によって、40℃、90%RHの雰囲気で測定される値である。測定には、例えば(MOCON,INC.製のMOCON AQUATRAN(商標登録))を用いることができる。
【0040】
このような粘着テープ100,110で水含有流体が流通する樹脂製チューブを被覆すれば、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散を十分に抑制することができる。すなわち、粘着テープ100,110及びこれらの変形例は、樹脂製チューブ被覆用の粘着テープとして好適に用いられる。このような粘着テープは、樹脂製チューブからの水蒸気の蒸散抑制用としても好適に用いられる。そして、水蒸気の蒸散による精密機械及び製品の汚染及び腐食を抑制することができる。
【0041】
一実施形態に係る流路管200は、
図4に示すように、水含有流体が流通する樹脂製チューブ40と、樹脂製チューブ40の外表面を被覆する粘着テープ100(110)と、を備える。樹脂製チューブ40は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂等で構成されていてよい。
【0042】
水含有流体は、樹脂製チューブ40の流路42を流通する。流路管200は、例えば、製造装置等の精密機械に接続されてよい。この場合、流路42を水含有流体として冷却水が流通してもよい。流路管200は、樹脂製チューブ40の表面を被覆する粘着テープ100(110)を備えるため、流路42から樹脂製チューブ40を透過して樹脂製チューブ40の外方に水蒸気が蒸散することを抑制できる。また、粘着テープ100(110)は、シール性のみならず、形状追随性及び耐久性に優れることから、流路管200が細かったり、屈曲していたりしても、樹脂製チューブ40に十分に密着して、高いシール性を維持することができる。粘着テープ100(110)は、樹脂製チューブ40の表面をらせん状に巻き付けられて被覆していてもよい。
【0043】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、粘着テープ巻回体は、巻き芯30に粘着テープ110が巻き回されていてもよい。
【実施例0044】
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[粘着テープ及び粘着テープ巻回体の作製]
(実施例1)
第2樹脂フィルムとして、厚み12μmの二軸延伸PETフィルムを準備した。電子線加熱方式による真空蒸着装置により、金属アルミニウムを蒸発させるとともに酸素ガスを導入して、上記PETフィルムの片面に酸化アルミニウムを蒸着させて、酸化アルミニウムで構成される厚み15nmの蒸着層を形成した。次いで、蒸着層の表面にコーティング剤をグラビアコート法により塗布した後、120℃で1分間乾燥させて厚み0.5μmの複合被膜層を形成した。このようにしてバリア層となるバリアフィルムを作製した。コーティング剤の組成は、以下の「A液」と「B液」とを、60:40の配合比(質量基準)で混合して調製したものである。
【0046】
「A液」:テトラエトキシシラン10.4gに塩酸(0.1N)89.6gを加え、30分間撹拌し加水分解させた、固形分3質量%(SiO2換算)の分散液
「B液」:3質量%のポリビニルアルコールを含む、水とイソプロピルアルコールの混合溶液(水:イソプロピルアルコール=90:10(質量基準))
【0047】
第1樹脂フィルムとして延伸ナイロンフィルム(厚み:15μm)、及び、樹脂基材フィルムとして二軸延伸PETフィルム(厚み:12μm)を、それぞれ準備した。二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネートにより、バリアフィルムの複合被膜層の表面に延伸ナイロンフィルムを貼り合わせた。また、二液硬化型ポリウレタン系接着剤を用いて、バリアフィルムの二軸延伸PETフィルムの表面に二軸延伸PETフィルムを貼り合わせた。貼り合わせ後、ナイロンフィルムの上にアクリル系粘着剤を塗布し、離型フィルムをアクリル系粘着剤の塗布層に貼り合わせながらロール状に巻き取った。その後、15mm幅にスリットするとともに離型フィルムを剥がしながら巻き取って、
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。
【0048】
このようにして得られた実施例1の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/接着層/延伸ナイロンフィルム/粘着剤層を有していた。接着層は、いずれも、二液硬化型ポリウレタン系接着剤の硬化物である。以下の各実施例及び各比較例の接着層も同じである。
【0049】
(実施例2)
ナイロンフィルムの位置を、バリア層と粘着剤層の間から、二軸延伸PETフィルムとバリア層の間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。
【0050】
このようにして得られた実施例2の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/延伸ナイロンフィルム/接着層/バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/粘着剤層を有していた。
【0051】
(実施例3)
バリア層と粘着剤層の間に、二軸延伸PETフィルム(厚み:12μm)をドライラミネートにより設けたこと以外は、実施例2と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。
【0052】
このようにして得られた実施例3の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/延伸ナイロンフィルム/接着層/バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/接着層/二軸延伸PETフィルム/粘着剤層を有していた。
【0053】
(実施例4)
ナイロンフィルムと粘着剤層の間に、二軸延伸PETフィルム(厚み:12μm)をドライラミネートにより設けたこと以外は、実施例1と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。
【0054】
このようにして得られた実施例4の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/接着層/延伸ナイロンフィルム/接着層/二軸延伸PETフィルム/粘着剤層を有していた。
【0055】
(比較例1)
バリアフィルムの二軸延伸PETフィルム側に二軸延伸PETフィルムを貼り合わせなかったこと以外は、実施例1と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。
【0056】
このようにして得られた比較例1の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/接着層/延伸ナイロンフィルム/粘着剤層を有していた。
【0057】
(比較例2)
バリアフィルムを2枚積層したこと以外は、比較例1と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。このようにして得られた比較例2の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/接着層/バリア層(二軸延伸PETフィルム/酸化アルミニウム蒸着層/複合被膜層)/接着層/延伸ナイロンフィルム/粘着剤層を有していた。
【0058】
(比較例3)
バリアフィルムの代わりに、アルミニウム箔(厚み:7~9μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。このようにして得られた比較例3の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/アルミニウム箔/接着層/延伸ナイロンフィルム/粘着剤層を有していた。
【0059】
(比較例4)
バリアフィルムの代わりに、アルミニウム箔(厚み:7~9μm)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。このようにして得られた比較例4の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/延伸ナイロンフィルム/接着層/アルミニウム箔/粘着剤層を有していた。
【0060】
(比較例5)
バリアフィルムの代わりに、アルミニウム箔(厚み:7~9μm)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。このようにして得られた比較例5の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/延伸ナイロンフィルム/接着層/アルミニウム箔/接着層/二軸延伸PETフィルム/粘着剤層を有していた。
【0061】
(比較例6)
バリアフィルムの代わりに、アルミニウム箔(厚み:7~9μm)を用いたこと以外は、実施例4と同様にして
図1に示すような構造を有する粘着テープ巻回体を得た。このようにして得られた比較例6の粘着テープ巻回体における粘着テープは、粘着テープ巻回体の外周から中心に向かって、二軸延伸PETフィルム/接着層/アルミニウム箔/接着層/延伸ナイロンフィルム/接着層/二軸延伸PETフィルム/粘着剤層を有していた。
【0062】
[粘着テープの評価]
<耐久性の評価>
各実施例及び各比較例で作製した粘着テープ(幅:15mm)の長手方向における両端を、粘着テープが水平になるように且つ粘着剤層が上方を向くように固定した。粘着テープの上方に三角柱形状を有する金属棒を配置した。このとき、この三角柱形状の一つの角が粘着剤層に向かうように且つ当該角の延在方向と粘着テープの長手方向とが直交するように配置した。
【0063】
金属棒の両端をガイドレールに挿入し、鉛直方向に沿って移動可能にした状態で、金属棒の両端部に5kgの重りを取り付けた。金属棒の角が粘着テープの粘着剤層に向かうように金属棒を粘着テープに接触させ、金属棒と粘着テープとが接した状態で1分間保持した。1分間経過しても粘着テープが破断せず、金属棒の角部との接触部にピンホールが発生しなかった場合を「A」とした。1分間経過しても粘着テープが破断しなかったが、金属棒の角部との接触部にピンホールが発生していた場合を「B」とした。1分間以内に粘着テープが破断した場合を「C」と評価した。結果は表1に示すとおりであった。
【0064】
<形状追随性の評価>
φ=5mmの樹脂製チューブを準備した。この樹脂製チューブに、作業員が各実施例及び各比較例で作製した粘着テープ(幅15mm)を巻き付けて、皺の有無を評価した。皺が全くなかったものを「A」、皺がわずかに発生したものを「B」、皺が大量に発生したものを「C」と評価した。結果は表1に示すとおりであった。
【0065】
<シール性の評価>
MOCON法によって、40℃、90%RHの雰囲気における水蒸気透過率(WVTR)を測定した。測定には、例えば(MOCON,INC.製のMOCON AQUATRAN(商標登録))を用いた。結果は表1に示すとおりであった。
【0066】
【0067】
表1に示すとおり、各実施例の粘着テープは、優れたシール性、優れた耐久性、及び優れた形状追随性を兼ね備えることが確認された。
水含有流体が流通する樹脂製チューブを高いシール性で被覆することが可能であり、耐久性と形状追随性に優れる水蒸気蒸散抑制用の粘着テープ、及び当該粘着テープを備える粘着テープ巻回体を提供することができる。また、高いシール性を有するとともに、耐久性に優れる流路管を提供することができる。
11…樹脂基材フィルム、12…バリア層、12A…第2樹脂フィルム、12B…蒸着層、12C…複合被膜層、14…ナイロンフィルム、15,15A,15B…第1樹脂フィルム、16…PETフィルム、18…粘着剤層、30…巻き芯、40…樹脂製チューブ、42…流路、100,110…粘着テープ、150…粘着テープ巻回体、200…流路管。