(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086460
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】同報システム及び同報方法
(51)【国際特許分類】
H04H 20/59 20080101AFI20230615BHJP
H04H 20/02 20080101ALI20230615BHJP
H04H 20/18 20080101ALI20230615BHJP
【FI】
H04H20/59
H04H20/02
H04H20/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021200990
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 伸一郎
(57)【要約】
【課題】同報情報を送信する同報システム及び同報方法を提供することを目的とする。
【解決手段】実施形態に係る同報システムは、親局と、前記親局から送信された同報情報を中継する複数の中継局と、前記複数の中継局から送信された同報情報を受信する複数の子局を有する同報システムにおいて、前記複数の中継局は、他の中継局との時刻同期をとって、それぞれ同一の搬送波周波数を含む無線信号を、送信タイミングを同期させて送信し、前記複数の中継局に他の中継局との時刻同期ができなくなった故障中継局が発生した場合は、前記複数の中継局から1以上の中継局を選択し、選択された中継局の送信タイミングをずらして無線信号を送信する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局と、前記親局から送信された同報情報を中継する複数の中継局と、前記複数の中継局から送信された同報情報を受信する複数の子局を有する同報システムにおいて、
前記複数の中継局は、他の中継局との時刻同期をとって、それぞれ同一の搬送波周波数を含む無線信号を、送信タイミングを同期させて送信し、
前記複数の中継局に他の中継局との時刻同期ができなくなった故障中継局が発生した場合は、前記複数の中継局から1以上の中継局を選択し、選択された中継局の送信タイミングをずらして無線信号を送信する、
同報システム。
【請求項2】
前記選択された1以上の中継局には、前記故障中継局と干渉エリアを共有する隣接故障中継局が含まれる、
請求項1に記載の同報システム。
【請求項3】
前記子局が前記干渉エリアに設置されている場合に、前記干渉エリアを無線信号到達エリアに含む故障中継局または隣接故障中継局を前記選択された1以上の中継局に含める、
請求項2に記載の同報システム。
【請求項4】
前記子局に対して前記同報情報を含む無線信号を送信することが予め決められている中継局であるグループ中継局を前記選択された1以上の中継局に含める、
請求項3に記載の同報システム。
【請求項5】
前記親局は、前記複数の中継局ごとの前記干渉エリアの有無についての中継局情報を備えている、
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の同報システム。
【請求項6】
前記中継局情報は、前記干渉エリアを有する中継局が、前記干渉エリアを共有する中継局についての情報を含む、
請求項5に記載の同報システム。
【請求項7】
前記親局は、前記故障中継局から障害通知を受けると、前記中継局情報に基づいて前記1以上の中継局を選択し、前記1以上の中継局に対して前記無線信号を送信させる送信命令を出力する、
請求項6に記載の同報システム。
【請求項8】
親局と、前記親局から送信された同報情報を中継する複数の中継局と、前記複数の中継局から送信された同報情報を受信する複数の子局を有する同報システムの同報方法において、
前記複数の中継局が、他の中継局との時刻同期をとって、それぞれ同一の搬送波周波数を含む無線信号を、送信タイミングを同期させて送信する手順と
前記複数の中継局に他の中継局との時刻同期ができなくなった故障中継局が発生した場合は、前記複数の中継局から1以上の中継局を選択する手順と、
前記1以上の中継局がそれぞれ送信タイミングをずらして無線信号を送信する手順と、
を備える同報方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、同報システム及び同報方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市町村防災無線などで用いられる防災行政無線システムは、親局(統制局)が、中継局(再送信子局)などを介して、公園等屋外に設置される子局(屋外子局)や、屋内に配置される子局(戸別受信機)などに対して、自治体からの災害情報や連絡事項を送信するシステムである。本システムにおいては、従来は複数の中継局が出力する複数の無線信号が重なって到達する干渉エリアを防ぐため、隣接するエリアの中継局は、異なる周波数によりエリアの子局に対して放送を行っていた。
【0003】
しかしながら、防災無線周波数の割当周波数の不足が生じており、防災行政無線システムの周波数帯においても周波数の有効活用が必要となってきている。このため、隣接エリアに対して、各中継局が同一周波数の無線信号を送信タイミングの同期を取って同時に送信することにより、干渉エリアに設置される戸別受信機へ同報情報を送信することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6007581号公報
【特許文献2】特許第6326907号公報
【特許文献3】特開2020-184679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、送信タイミングの同期を取るシステムにおいては、GPS受信機の故障や同期ユニットの故障などにより各中継局間の同期が取れなくなると、送信タイミングのずれが生ずることで、干渉エリアにおいて無線信号の干渉が発生し、子局は同報情報の受信ができない可能性がある。特にGPS受信機が故障した場合は中継局が内部に備える自走クロックでの動作となり、干渉エリアにおいて所望のD/U(希望波対干渉波の比)が取れなくなり、干渉エリアの子局は同報情報の受信に失敗する可能性が高い。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、同報情報を送信する同報システム及び同報方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る同報システムは、親局と、前記親局から送信された同報情報を中継する複数の中継局と、前記複数の中継局から送信された同報情報を受信する複数の子局を有する同報システムにおいて、前記複数の中継局は、他の中継局との時刻同期をとって、それぞれ同一の搬送波周波数を含む無線信号を、送信タイミングを同期させて送信し、前記複数の中継局に他の中継局との時刻同期ができなくなった故障中継局が発生した場合は、前記複数の中継局から1以上の中継局を選択し、選択された中継局の送信タイミングをずらして無線信号を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る防災行政無線システムの同報システムの概念図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る親局の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る親局の干渉グループテーブルのデータ例である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る中継局の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る子局の構成例を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る同報システムのモード変更処理時の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る親局の同報送信時の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る中継局の同報送信時の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る子局の同報送信時の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態においては、干渉エリアに設置される子局の情報などをあらかじめ親局(統制局)に登録し、干渉エリアに設置される子局の群(以下、干渉エリアグループという)へのみ再放送を実施する例を示す。
(実施形態)
防災行政無線の本同報システムでは、全国の市町村に周波数を割当てる必要があり、周波数が不足している。このため、周波数帯域の有効活用のため、同一市町村内の各中継局2が、それぞれ同一の無線周波数の無線信号の送信を実施する。
【0011】
図1は、実施形態に係る防災行政無線システムの同報システムの概念図である。
【0012】
実施形態に係る防災行政無線システムの同報システムは、親局(統制局)1(以下親局1と称する)、必要に応じて中継局2-1、2-2(特に区別しない場合は中継局2と称する)を介して、複数の子局3(
図1の子局3-1から3-7、3-11から3-17)を具備するデジタル無線による通信システムである。
また、
図1に示す防災行政無線の自治体に割り当てられた無線周波数をf1(MHz)(以下、無線周波数f1という)とする。また、親局1から中継局2や図示していない親局1の周辺の子局3に対して送信される無線信号をr1、中継局2から周辺の子局に対して送信される無線信号をr2とする。
なお、
図1に示した中継局2、子局3は設置例であり、設置数などの限定はない。
【0013】
図1において、設置エリアGA、GBは、それぞれ中継局2-1、2-2が送信する同報情報を受信する複数の子局3のグループ(以下、設置エリアと称する)を示している。例えば、中継局2-1が送信した同報情報は子局3-1から3-7で受信され、中継局2-2が送信した同報情報は子局3-11から3-17で受信される。
また、同じ設置エリア内の中継局2、子局3を設置グループのように称してもよい。例えば
図1の例では、中継局2-1、子局3-1から3-7を設置グループと称する。また子局3-1から3-7から見て中継局2-1をグループ中継局のように称することでもよい。
【0014】
親局1は、防災情報等の地域住民への同報情報を、無線周波数f1の無線信号r1で放送する統制局である。統制局は、例えば、市町村役所(役場)等に設置される。
【0015】
中継局2は、親局1と子局3との間の中継の機能を備える。中継局2は、親局1が送信する無線周波数f1の無線信号r1を受信し、受信した無線信号r1から同報情報を取得し、取得した同報情報を子局3へ向けて無線周波数f1の無線信号r2で放送する。
【0016】
子局3は、公園等屋外に設置される屋外子局や、屋内などに配置される複数の戸別受信機を含む。戸別受信機は、例えば、山間部等で、屋外子局からの放送が聞こえにくい家庭に対して、戸別受信機を配布されるものである。
【0017】
干渉エリアA1においては、中継局2-1と中継局2-2とからの送信電波が重複し干渉が生じるが、本同報システムは、各中継局2がそれぞれ同一の無線周波数f1の無線信号r2が同一の送信タイミングで送信されているが、各子局への中継局からの距離等の差異により受信レベルに差が生ずるため、D/U(希望波対干渉波の比)により、干渉エリアA1に設置された子局3も同報情報の受信が可能となっている。以下により詳細に示す。
【0018】
無線信号到達エリア(子局3の受信レベル)は、送信タイミング同期がとれている場合も取れていない場合も変わらない。送信タイミング同期が取れている場合は、所要D/U(D:中継局2-2からの希望波無線信号のレベルU:中継局2-1からの妨害波無線信号のレベル)は、送信タイミングの同期が取れていない場合よりも少なくなる。また送信タイミング同期がとれている場合は、中継局2-1からの周波数f1の無線信号が子局3-17へはD/Uの関係で影響を与えなかったものが、同期が外れると影響を与える。より具体的に以下に示す。
【0019】
送信タイミングの同期が取れている場合の所要D/Uを10dB、同期が取れていない場合の所要D/Uを17dBとする。また子局3-17の中継局2-2からのD波(希望波)の受信レベルが40dBμV、中継局2-1からのU波(干渉波)の受信レベルが30dBμVであったとする。この場合、送信タイミング同期が取れていれば、所要D/U10dBであるため、中継局2-1からのU波(干渉波)の受信レベルは30dBμVまでなら問題ない。一方、送信タイミング同期が取れていない場合は、所要D/U17dB必要なので、U波が30dBμVであると、D波(希望波)に対して干渉する。
【0020】
本同報システムにおいては、各中継局が、同一の送信タイミングで送信できるようにするため、時刻同期を行っている。各中継局の時刻同期の方法は、例えばGPSシステムなどにより複数の中継局2間の時刻同期を実施することでもよい。例えば各中継局2にGPS受信機を設置し、各中継局2はGPS受信機が生成する基準クロック、タイミング信号などに基づいて生成した送信周波数(搬送波周波数)、送信タイミング信号(フレーム信号と称する場合もある)を用いて同報情報を送信する。
【0021】
しかしながら、このようなシステムにおいては、GPS受信機の故障や同期ユニットの故障などにより各中継局2間の同期が取れなくなった場合に、干渉エリアA1において無線信号の干渉が発生し、子局3は同報情報の受信ができない可能性がある。以降、GPS受信機の故障や同期ユニットの故障などの生じた中継局2を特に故障中継局と称する。また、故障はないが故障中継局からの無線信号が干渉になるなど故障中継局に影響を受ける中継局2を隣接故障中継局と称する。
【0022】
図2は、実施形態に係る親局の構成例を示す機能ブロック図である。
親局1は、GPSアンテナ100、GPS同期ユニット部101、中継局向けアンテナ10、無線部11、無線制御部12を含み、CPU、メモリなどのコンピュータ機能を備えていてもよい。
【0023】
GPSアンテナ100は、GPS衛星などが送信する電波を受信する。
【0024】
GPS同期ユニット部101は、GPSアンテナ100から受信した電波を処理して得たGPS信号から基準クロック、タイミング信号(1PPS)などを取り出し出力する。
【0025】
中継局向けアンテナ10は、無線周波数f1の無線信号の送受信をする。
【0026】
無線部11は、中継局向けアンテナ10が受信した無線信号に対して、GPS同期ユニット部101から入力される基準クロック、タイミング信号を用いて、復調処理、復号化処理を行ったり、デジタルデータの符号化処理、変調処理などにより無線周波数r1の無線信号を中継局向けアンテナ10に出力したりする。
【0027】
無線制御部12は、無線部11へ出力する同報情報などのデジタルデータを生成したり、無線部11から入力されるデジタルデータを処理したりする。無線制御部12は、干渉グループテーブル121、干渉グループ再送信部122を備えることでもよい。
【0028】
また、無線制御部12は、同報情報の送信先である子局の指定を行うこともできる。同報情報の送信先である子局の指定方法は、送信先を示すフラグをデジタルデータに含めて送信することで、全子局向け、特定グループ向け、特定子局向けの選択を可能とする。ここで。特定グループは、必ずしも中継局単位とは限らず、自治体内で予め設定された地区毎に、同一のグループとしてもよい。
例えば、無線制御部12は、同報情報が全子局向けの送信の場合は、「全子局向け」を示すフラグなどを無線部11へ出力するデジタルデータに含めて送信することで、子局3は、同報情報が「全子局向け」であることを認識する。
【0029】
また特定グループ向けの場合は、送信対象の子局3のグループに対して予め定めてあるグループ番号などを無線部11へ出力するデジタルデータに含めて送信することで、当該子局3は、記憶部などに自分のグループ番号を格納しておき、中継局2から送信された無線信号からグループ番号を取得し、自分のグループ番号と一致した場合に、同報情報が自分のグループ向けであることを認識する。
【0030】
また無線制御部12は、同報情報が特定子局向けの場合は、子局毎に予め割り振られている子局の識別番号(子局ID)を無線部11へ出力するデジタルデータに含める。これにより子局3は、同報情報が自分宛であることを認識することができる。
【0031】
干渉グループテーブル121は、メモリなどに記憶されるデータであってよく、親局1が同報情報を送信する中継局2に関するデータを含む。
【0032】
図3は、実施形態に係る親局の干渉グループテーブルのデータ例である。データ列1211に示す中継局2に対するデータを行ごとに示す。
【0033】
データ列1211は、中継局2の識別番号を示す。例えば、データ列1211の中継局ID「2-1」、「2-2」は、
図1の中継局2-1、2-2に対応する。
データ列1212は、中継局2に障害があるかないかを示すデータである。具体的には、GPS受信機の故障や同期ユニットの故障など中継局2が無線周波数f1の無線信号r2を送信する際の基準信号や送信タイミングに関する障害のあるなしを示す。
データ列1213は、データ列1211に示される中継局2の出力する無線信号との間で干渉が発生する可能性のある中継局2の番号を示す。
データ列1214は、中継局2の設置エリアにおける干渉エリアのあるなしを示す。
データ列1215は、中継局2の設置エリアにおける干渉エリアに設置されている子局3のID(識別番号)を示す。
【0034】
図3の例では、中継局2-1は、中継局2-2が干渉中継局となるため、データ列1214の干渉エリアは「あり」となる。また中継局2-1の干渉エリア(
図1の干渉エリアA1)に設置されている子局のIDは、「3-5」、「3-6」、「3-7」であることを示している。
図3の中継局2-3(
図1には図示されていない)は、干渉中継局がない例であり、干渉エリアは「なし」、中継局2のIDは「なし」となる。
【0035】
なお
図3に示したデータは例であり、必ずしも
図3に示される全てのデータについてデータベースを備える必要はない。
【0036】
図2に戻り、干渉グループ再送信部122は、干渉グループテーブル121に基づいて、同報情報の再送信が必要か否かを判断し、判断結果に基づいて、同報情報の再送信を実施する。
【0037】
図4は、実施形態に係る中継局の構成例を示す機能ブロック図である。
中継局2は、中継部(親局向け)21と中継部(子局向け)22を備え、CPU、メモリなどのコンピュータ機能を備えていてもよい。
【0038】
中継部(親局向け)21は、無線部211、無線制御部212を備え、主に親局1との無線通信を行う。
【0039】
無線部211は、変復調処理、誤り訂正などの符号化復号化処理などを備える。より具体的には、無線部211は、親局向けアンテナ210が受信した無線周波数f1の無線信号r1の復調処理、復号化処理などによりデジタルデータを取得したり、デジタルデータの符号化処理、変調処理などにより無線周波数f1の無線信号r1を親局向けアンテナ210に出力したりする。
【0040】
無線制御部212は、無線部211へ出力する例えば障害通知などのデジタルデータを生成したり、無線部211から入力される例えば同報情報などのデジタルデータを処理する。
【0041】
中継部(子局向け)22は、無線制御部23、無線部24、GPS同期ユニット25を備える。
【0042】
無線制御部23は、無線制御部212から入力される例えば同報情報を含むデジタルデータを無線部24に出力したり、GPS同期ユニット25などの障害情報を中継部(親局向け)21に出力したりする。無線制御部23は、GPS同期ユニット25の故障時に親局1が出力するフレーム信号にタイミング信号を従属させる従属タイミング生成機能やGPS同期ユニット等の故障監視の機能を備える。
【0043】
障害監視部231は、中継部(子局向け)22が同報情報を送信する際の送信周波数や送信タイミングなどに関わる障害を監視する。障害監視部231は、例えばGPS同期ユニット25からGPS受信機252などの障害情報を収集し、障害を検知した場合には、親局1に対して障害情報を出力する。
【0044】
従属タイミング生成部232は、親局1が送信した同報情報が含められるデジタルデータなどからタイミング信号(フレーム信号)を生成する。
【0045】
無線部24は、変調部241、送信周波数生成部242、GPS同期ユニット25故障時などに自走する自走クロック部243、復調部244、送受信部245を備える。無線部24は、無線制御部23から入力される同報情報を含むデータや、GPS同期ユニット部25、従属タイミング生成部232などから入力される基準クロック、タイミング信号などに基づいて、同報情報を含む無線信号を子局向けアンテナ240に出力する。
【0046】
子局向けアンテナ240は、無線周波数f1の無線信号r2を出力する。
【0047】
変調部241は、無線制御部23から入力される同報情報を含むデータを子局向けアンテナ240から無線送信するために変調処理を実施する。
【0048】
送信周波数生成部242は、GPS同期ユニット25や自走クロック部243から入力される基準信号に基づいて、変調部241に入力する送信周波数を生成する。
【0049】
自走クロック部243は、GPS同期ユニット25が故障した時などに基準クロック(自走クロックとも称する)を出力する内部クロックである。
【0050】
復調部244は、子局向けアンテナ240から受信した無線信号の復調処理を実施する。
【0051】
送受信部245は、子局向けアンテナ240からの入力と子局向けアンテナ240への出力とを切り替える処理をする。
【0052】
タイミング信号切替部246は、GPS同期ユニット25の障害などをトリガにして、変調部241に入力するタイミング信号(フレーム信号)を従属タイミング生成部232の出力とタイミング出力部251の出力とのいずれかに切り替えるスイッチなどの切替機能を備える。
【0053】
基準信号切替部247は、GPS同期ユニット25の障害などをトリガにして、送信周波数生成部242に入力する基準信号をGPS受信機252が出力する基準クロックと自走クロック部25が出力する自走クロックとのいずれかに切り替えるスイッチなどの機能を備える。
【0054】
GPS同期ユニット25は、GPS受信機252が生成する高精度の基準クロックに同期した基準クロックを出力する。また、GPS受信機252が出力するGPS信号に同期したタイミング信号(フレーム信号)を生成送出するタイミング生成部251を備える。
【0055】
本実施形態における中継局2は、GPS同期ユニット25が故障などして故障中継局となった時に、受信したGPS信号に同期したフレーム信号及び基準信号を生成送出できなくなる。この時は、従属タイミング生成部232が生成したフレーム信号及び自走クロック部243が出力する自走クロックに基づいた基準信号にそれぞれ切り替える。これにより、故障中継局の近隣の中継局2(隣接故障中継局と称する)との間で所望の送信タイミング同期が取れなくなる。その結果、故障中継局や隣接故障中継局が共有する干渉エリアに設置されている子局3は所望のD/Uを満たせずに同報情報の受信が出来なくなる。
【0056】
GPS同期ユニット25が故障した中継局2は、障害監視部231を使用し、親局1に障害通知を送信する。障害通知を受けた親局1は、GPS同期ユニット25が故障した中継局2に対して通常の同報放送を行った後、親局1に事前に登録した干渉グループテーブル121を参照し、干渉グループ再送信部122を用いて故障中継局や隣接故障中継局の干渉エリア内の子局3(干渉グループ)への同報情報の再放送を順次行う。
【0057】
図5は、実施形態に係る子局の構成例を示す機能ブロック図である。
【0058】
子局3は、同報情報の無線受信機であり、CPU、メモリなどのコンピュータ機能を備えていてもよい。子局3において、中継局2の送信する無線周波数f1の無線信号r2をアンテナ30が受信し、親局1が送信した同報情報を取得する。
【0059】
無線部31はアンテナ30が受信した無線周波数f1の無線信号r2に対して復調、復号などの処理をし、デジタルデータを取得する。
【0060】
受信処理部32は、デジタルデータから親局1が送信した同報情報を取得する。取得した同報情報は、子局3のスピーカ34から音声として近隣にいる人に提供されることでもよい。
【0061】
記憶部33は、メモリなどであり、子局3に割り振られた受信機の識別番号(受信機IDと称する場合もある)などが格納されることでもよい。
【0062】
スピーカ34は、受信処理部32が取得した同報情報に基づいて、放送内容を音声出力したり、サイレンなどアラーム情報を音で出力したりする。
【0063】
図6は、実施形態に係る同報システムのモード変更処理時の動作例を示すフローチャートである。
【0064】
図6(a)は、親局1の処理動作を示す。
ここで、親局1が中継局2から障害通知を受信していない場合や全ての中継局2に故障が発生していない場合を通常運用の状態として通常モードと称することにする。一方、親局1が中継局2から障害通知などを受信した場合や少なくとも1つの中継局2に故障が発生している場合を故障運用の状態として障害モードと称することにする。
図6(a)において、ステップS101において、親局1は、通常モードで運用されている。
【0065】
ステップS102において、親局1が通常モードの状態において、1つ以上の中継局2から障害通知を受信したら(Yesの場合)、ステップS103に進み、親局1は障害モードに移行する。
【0066】
図6(b)は、各中継局2の処理動作を示す。
中継局2についても、故障が発生していない中継局2の状態を通常モードと称することにする。一方、中継局2が自身の障害の検知をし、自走クロック部243が自走クロックを起動した場合の中継局2の状態を障害モードと称することにする。
【0067】
図6(b)において、ステップS201において、中継局2は、故障が発生していない状態である通常モードとなっている。
ステップS202において、中継局2は、通常モードの状態で、自身の障害監視部231がGPS同期ユニット25の障害を検知したら(Yesの場合)、ステップS203に移行する。
ステップS203において、基準信号切替部247のスイッチを自走クロック部243に切り替える。自走クロック部243が出力したクロック信号(自走クロック信号)が基準信号として送信周波数生成部242に入力され、送信周波数生成部242は自走クロック信号に基づいて送信周波数の信号を生成する。なお通常モードにおいては、基準信号切替部247のスイッチはGPS同期ユニット25に接続される。
次に、ステップS204において、中継局2は、自身の障害を検知したら、自身が所属する設置グループの親局1に障害通知を送信する。
そして、ステップS205において、中継局2は、「障害モード」に移行する。
次に、ステップS206において、中継局2は、タイミング信号切替部246にてスイッチを従属タイミング生成部232に切り替える。
【0068】
図7は、実施形態に係る親局の同報送信時の動作例を示すフローチャートである。
【0069】
図7(a)は全体フローを示す。
図7(a)において、ステップS121において、親局1は、同報送信の要求が発生すると(Yesの場合)、ステップS122に進む。ここで、親局1における同報送信のトリガは、同報システムの外部からの要求でもよいし、親局1の内部において生成される自発的なトリガなど任意のトリガでよい。
ステップS122において、同報情報を無線周波数f1の無線信号r1を送信する。
次に、ステップS123において、親局1は、現在、自身が障害モードであるか否かを確認する。親局1は、図示せぬ記憶部などに格納されている
図3のデータ列1212などの情報から、自身が障害モードであるか否かを判断してもよい。親局1は、自身が障害モードであることを確認した場合(ステップS123のYes)、ステップS124に移行して、干渉グループへの同報情報の再送処理を実施する。
また、親局1は、同報情報の送信がない場合や、自身が障害モードでない場合は、ステップS121に戻り、同報送信のトリガが発生するまで待つことでもよい(ステップS121のNo、S123のNo)。以下にステップS124の処理についてより詳細に示す。
【0070】
図7(b)はステップS124の干渉グループ再送処理の詳細フローを示す。
図7(b)において、ステップS125において、親局1は、保有している例えば
図3の干渉グループテーブルのデータを参照し、データ列1212において障害が「あり」となっている中継局を選択する。
図3の場合は、中継局2-1が選択される。次に選択した中継局のデータ列1213の干渉中継局に含まれる中継局を選択する。例えば
図3においては、中継局2-2が選択される。
ここで、ステップS125において、中継局2-2は、自身には障害はないが、障害が発生している中継局2-1の影響を受けるために選択される。
次に、ステップS126において、親局1は、以上の手順により選択した中継局2-1、2-2に干渉エリアがあるか否かを確認する。親局1は、例えば
図3の干渉グループテーブルのデータの場合、データ列1214を参照して干渉エリアのある中継局2-1、2-2両方を、同報情報を再送すべき再送中継局として選択する。
ステップS127において、親局1は、ステップS126で選択した中継局2-1に対して同報情報を再送する。すなわち親局1は、ステップS122で実施した同報送信とは時間をずらして中継局2-1のみに同報情報を送信する。
更に、ステップS128において、親局1は、ステップS126で選択した中継局2-2に対して同報情報を再送する。すなわち親局1は、ステップS122で実施した同報送信またステップS127における中継局2-1への再送信とは時間をずらして中継局2-2のみに同報情報を送信する。このように親局1は、2つの中継局2に対して時間をずらして同報情報を再送することにより、送信データに各中継局2に固有のデータを入れることができる。ステップS127についてより詳細に示す。
【0071】
ステップS127において、親局1は、ステップS126で選択した中継局2-1に対して、無線周波数f1の無線信号r1で同報情報を再送する。この時、親局1は、同報情報に
図3の中継局IDや干渉情報を同報情報に付与することでもよい。親局1は、同報情報を特定の中継局2に送信する場合に、送信対象の中継局IDを同報情報に付与する。
【0072】
また、親局1は、送信対象の中継局IDの中継局2が含まれる設置エリアに干渉エリアがある場合に、干渉情報を例えば「1」とし、干渉エリアがない場合に、干渉情報を「0」とする。従って親局1は、ステップS127、S128を実施する際の干渉情報に「1」を設定する。
【0073】
親局1からの無線信号r1を受信した中継局2は、同報情報に付与された中継局IDに基づいて、自宛ての同報情報か否かを判断する。
【0074】
図8は、実施形態に係る中継局の同報送信時の動作例を示すフローチャートである。
【0075】
ステップS221において、中継局2は、
図7のステップS127において親局1から無線周波数f1で送信された無線信号r1を受信し(Yesの場合)、ステップS222において、復調処理などによりデータを取得して、データの中継局IDを確認する。ここで、受信したデータが自宛てのデータである場合(YESの場合)は、中継局2は、ステップS223において、通常モードにおける動作と同様に、受信したデータを子局3に向けて無線周波数f1の無線信号r2を送信する。
【0076】
一方、ステップS222において、中継局2は、受信したデータが自宛てのデータでなかった場合(Noの場合)は、ステップS224において、受信したデータを廃棄処理する。
【0077】
図9は、実施形態に係る子局の同報送信時の動作例を示すフローチャートである。
【0078】
ステップS301において、子局3は、無線周波数f1の無線信号r2を復調処理などによりデータ取得をすると(Yesの場合)、ステップS302に進む。
ステップS302において、そのデータが自宛てのデータか否かを判断する。子局3は、例えば受信したデータの中継局IDと干渉情報とから、データが自宛か否かを判断する。なお中継局IDや干渉情報は、子局3の記憶部33などに予め設定されている。子局3に設定される中継局IDは、
図1に示したような同一の設置エリアに設置される中継局2(グループ中継局)の中継局IDである。例えば、子局3-5、3-6、3-7には、中継局IDとして「2-1」が設定される。
【0079】
また子局3が
図1に示した干渉エリアA1に設置されている場合は、その子局3の記憶部33に干渉情報として「1」を設定し、それ以外に設置されている場合は、「0」を設定することでもよい。
【0080】
ステップS302において、子局3は、受信したデータの中継局ID及び干渉情報と自身の記憶部33に格納されている中継局ID及び干渉情報とを比較し、例えば両方一致した場合に、受信したデータを自宛てのデータであると判断する(Yesの場合)。
【0081】
ステップS303において、子局3は、受信したデータが自宛てのデータであると判断した場合は、受信処理をする。
【0082】
一方、子局3は、受信したデータが自宛てのデータでないと判断した場合(ステップS302のNoの場合)は、ステップS304において、受信したデータを廃棄する。
【0083】
以上のステップにより、干渉エリアA1に設置されている子局3のみが同報情報を受信することができる。ステップS303においては、子局3は、受信したデータから取得した同報情報をスピーカ34から音声として出力したり、アラームを鳴らしたりするなど同報情報をさまざまに利用することでもよい。
【0084】
ステップS128においてもステップS127と同様の処理となるが、ステップS127とは時間をずらして、中継局2-2のみが無線信号r2を送信することで、中継局2-2の設置グループの干渉エリアA1に設置されている子局3のみが同報情報を受信することができる。なお、上記の中継局ID及び干渉情報を含めて受信機IDとしてもよく、それぞれの子局3の設置時に記憶部33に受信機IDを格納しておくことでもよい。
【0085】
以上のように中継局2-1、2-2間で時間をずらして時分割で同報情報を送信することにより、中継局2-1からは、干渉エリアA1内の干渉グループに含まれる子局3-5、3-6,3-7のみに同報情報を送信することができ、中継局2-2からは、干渉エリアA1内の干渉グループに含まれる子局3-15、3-16,3-17のみに同報情報の送信することができる。
【0086】
以上の手順により、同報情報が受信されなかった子局3への同報情報の送信を可能とする。本実施形態により、一部の干渉エリアの子局3は、時差放送となるが、GPS受信機、同期ユニットの障害発生時でも、同報情報の受信が可能となる。
【0087】
(変形例)
実施形態においては、中継局2が2つの場合について示したが、3つ以上の中継局2がある場合についても適用可能である。
【0088】
図10は、変形例に係る同報システムの概念図である。
【0089】
図10(a)においては、無線信号到達エリア2A-1、2A-2、2A-3は、それぞれ中継局2-1、2-2、2-3が送信する無線周波数r0の無線信号到達エリアを示している。また子局3は、無線信号到達エリア2A-1、2A-2、2A-3が重複するエリアに設置されている。この場合、子局3のグループ中継局である中継局2のみが時間をずらして
図7(b)のステップS127(またはS128)の処理を実施することで実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
図10(b)において、無線信号到達エリア2A-1、2A-2、2A-3は、それぞれ中継局2-1、2-2、2-3が送信する無線周波数f1の無線信号r2の到達エリアを示している。無線信号r2の到達エリア2A-2には、2つの干渉エリアができており、それぞれの干渉エリアに子局3-1、3-2が設置されている例である。この場合も、子局3-1、3-2のそれぞれのグループ中継局である中継局2のみが時間をずらして
図7(b)のステップS127(またはS128)の処理を実施することで実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
なお、実施形態に適用できる場面は、本変形例に示した形態に限定されることなく任意の形態が考えられ、同様に実施形態が適用可能である。また実施形態、変形例においては、GPSシステムによって各中継局3が時刻同期された例を示したが、時刻同期の方法は任意の方法でもよい。また、各中継局3間の時刻同期が取られていない場合においても、本実施形態の一部や変形手法を適用することもできる。
【0092】
以上に述べた少なくとも1つの実施形態、変形例によれば、同報情報を送信する同報システム及び同報方法を提供することできる。
【0093】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
また、フローチャート、シーケンスチャートなどに示す処理は、ICチップ、デジタル信号処理プロセッサ(Digital Signal ProcessorまたはDSP)などのハードウェアもしくはマイクロコンピュータを含めたコンピュータなどで動作させるソフトウェア(プログラムなど)またはハードウェアとソフトウェアの組み合わせによって実現してもよい。
また請求項を制御ロジックとして表現した場合、コンピュータを実行させるインストラクションを含むプログラムとして表現した場合、及び前記インストラクションを記載したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として表現した場合でも本発明の装置を適用したものである。
また、使用している名称や用語についても限定されるものではなく、他の表現であっても実質的に同一内容、同趣旨であれば、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0094】
1…親局、2…中継局、3…子局、10…受信アンテナ、11…無線部、12…無線制御部、21…中継部(親局向け)、22…中継部(子局向け)、23…無線制御部、24…無線部、25…GPSアンテナ同期ユニット部、100…GPSアンテナ、101…GPSアンテナ同期ユニット部、121…干渉グループテーブル、122…干渉グループ再送信部、121…干渉グループテーブル、122…干渉グループ再送信部、210…親局向けアンテナ、211…無線部、212…無線制御部、232…従属タイミング生成部、231…障害監視部、241…変調部、242…送信周波数生成部、243…自走クロック部、244…復調部、245…送受信部、246…タイミング信号切替部、247…基準信号切替部、251…タイミング生成部、252…GPS受信機。