(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086512
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】調光シート
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20230615BHJP
G02F 1/1345 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1345
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201073
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青木 健二
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA06
2H088GA10
2H088GA13
2H088HA01
2H088HA02
2H088HA04
2H088HA05
2H088MA20
2H092GA13
2H092GA33
2H092GA35
2H092GA41
2H092GA43
2H092GA44
2H092GA49
2H092NA17
2H092PA01
2H092PA04
2H092QA15
2H092RA10
(57)【要約】
【課題】透明電極層の端部間でのイオンマイグレーションの発生を抑えることのできる調光シートを提供する。
【解決手段】調光シートが備える第1透明電極層22は、駆動電圧が印加される電極部30と、電極部30の外側に位置し、第1透明電極層22の端面を含む外周導電部31と、電極部30と外周導電部31との間でこれらを電気的に接続する高抵抗部33であって、電極部30よりも単位面積当たりにおいて高い抵抗を有する高抵抗部33と、線状に延びる非導電部32であって、電極部30と外周導電部31と高抵抗部33とを区画する非導電部32と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶組成物を含む調光層と、
前記調光層を挟む一対の透明電極層である第1透明電極層および第2透明電極層と、
を備える調光シートであって、
前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記第1透明電極層は、
駆動電圧が印加される電極部と、
前記電極部の外側に位置し、前記第1透明電極層の端面を含む外周導電部と、
前記電極部と前記外周導電部との間でこれらを電気的に接続する高抵抗部であって、前記電極部よりも単位面積当たりにおいて高い抵抗を有する前記高抵抗部と、
線状に延びる非導電部であって、前記電極部と前記外周導電部と前記高抵抗部とを区画する前記非導電部と、を備える
調光シート。
【請求項2】
前記調光シートの表面と対向する位置から見て、
前記高抵抗部は、前記非導電部が含む2つの線状部分に挟まれた帯状を有する
請求項1に記載の調光シート。
【請求項3】
前記調光シートの表面と対向する位置から見て、
前記高抵抗部は、直線状に延びる
請求項2に記載の調光シート。
【請求項4】
前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記第2透明電極層は、
駆動電圧が印加される電極部と、
前記電極部の外側に位置し、前記第2透明電極層の端面を含む外周導電部と、
前記電極部と前記外周導電部との間でこれらを電気的に接続する高抵抗部であって、前記電極部よりも単位面積当たりにおいて高い抵抗を有する前記高抵抗部と、
線状に延びる非導電部であって、前記電極部と前記外周導電部と前記高抵抗部とを区画する前記非導電部と、を備える
請求項1~3のいずれか一項に記載の調光シート。
【請求項5】
前記第1透明電極層は、酸化インジウムスズまたは銀を含む
請求項1~4のいずれか一項に記載の調光シート。
【請求項6】
液晶組成物を含む調光層と、
前記調光層を挟む一対の透明電極層である第1透明電極層および第2透明電極層と、
を備える調光シートであって、
前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記第1透明電極層は、
駆動電圧が印加される電極部と、
前記電極部の外側に位置し、前記第1透明電極層の端面を含む外周導電部と、を備え、
前記電極部が位置する部分での前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間の電位差が、電極電位差であり、前記外周導電部が位置する部分において前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間には、前記電極電位差に追従する電位差が与えられ、当該外周導電部が位置する部分での電位差が、外周電位差であり、
前記駆動電圧が印加されている状態において、前記外周電位差は、前記電極電位差の1/10以下である
調光シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過率の可変な調光シートに関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、調光層を挟む一対の透明電極層とを備えている。一対の透明電極層間には、駆動電圧が印加される。透明電極層間の電位差に応じて液晶分子の配向状態が変わることにより、調光シートの光透過率が変わる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調光シートの端面に、導電性の塵などの導電性不純物や水分等が付着すると、当該端面付近に位置する透明電極層の端部において短絡や腐食といった不良が生じる虞がある。特に、駆動電圧が印加された調光シートには高電界が生じているため、調光シートの端面に水分が付着すると、透明電極層の端部間でイオンマイグレーションが発生し、駆動不良の原因となる。
【0005】
従来から、こうした透明電極層の端部での不良の発生の抑制や、調光層への外気や水分の侵入による液晶組成物の劣化の抑制のために、調光シートの端部に、調光シートの端面を覆う樹脂製の封止部を設けた構造が提案されている。
【0006】
しかしながら、封止部の形成前に付着した水分の残留や封止部における水分の透過を完全に防ぐことは困難である。特に、イオンマイグレーションの進行が加速する高温高湿下においては、封止部が設けられている場合であっても、イオンマイグレーションの発生は依然として大きな問題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層である第1透明電極層および第2透明電極層と、を備える調光シートであって、前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記第1透明電極層は、駆動電圧が印加される電極部と、前記電極部の外側に位置し、前記第1透明電極層の端面を含む外周導電部と、前記電極部と前記外周導電部との間でこれらを電気的に接続する高抵抗部であって、前記電極部よりも単位面積当たりにおいて高い抵抗を有する前記高抵抗部と、線状に延びる非導電部であって、前記電極部と前記外周導電部と前記高抵抗部とを区画する前記非導電部と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、駆動電圧が印加されているとき、第1透明電極層が電極部のみからなる場合と比較して、第1透明電極層の端面付近での透明電極層間の電位差は小さくなる。そして、電極部が位置する領域と比較して、調光シートの端部付近での電界強度が弱くなる。そのため、透明電極層の端部間でのイオンマイグレーションの発生を抑えることができる。
【0009】
上記構成において、前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記高抵抗部は、前記非導電部が含む2つの線状部分に挟まれた帯状を有してもよい。
上記構成によれば、高い抵抗を有する高抵抗部を好適に実現することができる。
【0010】
上記構成において、前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記高抵抗部は、直線状に延びてもよい。
上記構成によれば、高抵抗部の形状や抵抗の大きさの設計が容易である。
【0011】
上記構成において、前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記第2透明電極層は、駆動電圧が印加される電極部と、前記電極部の外側に位置し、前記第2透明電極層の端面を含む外周導電部と、前記電極部と前記外周導電部との間でこれらを電気的に接続する高抵抗部であって、前記電極部よりも単位面積当たりにおいて高い抵抗を有する前記高抵抗部と、線状に延びる非導電部であって、前記電極部と前記外周導電部と前記高抵抗部とを区画する前記非導電部と、を備えてもよい。
【0012】
上記構成によれば、調光シートの端部付近での電界強度がより弱くなる。そのため、透明電極層の端部間でのイオンマイグレーションの発生をさらに抑えることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1透明電極層は、酸化インジウムスズまたは銀を含んでもよい。
一般に、透明電極層が銀やスズやインジウムを含む場合、イオンマイグレーションが生じやすい。上記構成によれば、透明電極層がイオンマイグレーションを発生させやすい材料を含んでいても、イオンマイグレーションの発生を的確に抑えられるため、これらの材料からなる透明電極層の欠点が抑えられ、高汎用性や低抵抗といった利点を大きく得ることができる。
【0014】
上記課題を解決する調光シートは、液晶組成物を含む調光層と、前記調光層を挟む一対の透明電極層である第1透明電極層および第2透明電極層と、を備える調光シートであって、前記調光シートの表面と対向する位置から見て、前記第1透明電極層は、駆動電圧が印加される電極部と、前記電極部の外側に位置し、前記第1透明電極層の端面を含む外周導電部と、を備え、前記電極部が位置する部分での前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間の電位差が、電極電位差であり、前記外周導電部が位置する部分において前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間には、前記電極電位差に追従する電位差が与えられ、当該外周導電部が位置する部分での電位差が、外周電位差であり、前記駆動電圧が印加されている状態において、前記外周電位差は、前記電極電位差の1/10以下であってもよい。
【0015】
上記構成によれば、駆動電圧が印加されている状態において、調光シートの端部付近での電界強度が十分に弱くなる。そのため、透明電極層の端部間でのイオンマイグレーションの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明電極層の端部間でのイオンマイグレーションの発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態の調光シートの平面構造を示す図。
【
図2】
図1のII-II線における断面構造を示す図。
【
図3】上記実施形態の第1透明電極層の平面構造を示す図。
【
図4】上記実施形態の第2透明電極層の平面構造を示す図。
【
図6】
図1のVI-VI線における断面構造を示す図。
【
図8】上記変形例の第2透明電極層の平面構造を示す図。
【
図9】他の変形例の第2透明電極層の平面構造を示す図。
【
図10】他の変形例の第2透明電極層の平面構造を示す図。
【
図11】他の変形例の第2透明電極層の平面構造を示す図。
【
図12】他の変形例の第1透明電極層の平面構造を示す図。
【
図13】他の変形例の第1透明電極層の平面構造を示す図。
【
図14】他の変形例の第1透明電極層の平面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、調光シートの一実施形態を説明する。
[調光シートの構成]
図1が示すように、調光シート10は、調光層および一対の透明電極層を含む層状体であるシート本体20と、シート本体20の端部を封止する封止部50と、シート本体20に駆動電圧を印加するための第1配線部60および第2配線部61とを備えている。
【0019】
シート本体20は、調光シート10の表面である第1面11Fと、第1面11Fとは反対側の面である第2面11Rとを有する。そして、シート本体20は、第1面11Fと対向する位置から見て、調光領域70と、外周領域71と、第1接続領域72および第2接続領域73とを有している。
【0020】
調光領域70は、シート本体20の中央部を中心に広がる領域であり、シート本体20への駆動電圧の印加状態に応じて、調光領域70の光透過率は変わる。外周領域71は、調光領域70の外周に位置する領域である。
【0021】
第1接続領域72には、第1配線部60が接続されており、第2接続領域73には、第2配線部61が接続されている。第1配線部60は、一対の透明電極層の一方に電圧を印加するための配線であり、第2配線部61は、一対の透明電極層の他方に電圧を印加するための配線である。各接続領域72,73は、シート本体20の端部に位置する。例えば、第1接続領域72と第2接続領域73とは、矩形形状を有するシート本体20の1つの辺に沿って並ぶ。
【0022】
封止部50は、外周領域71および各接続領域72,73にて、シート本体20を覆っている。
なお、図面においては、調光領域70に対して、外周領域71および各接続領域72,73の大きさを誇張して示すとともに、
図1では、封止部50の位置する領域にドットを付して示している。
【0023】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図であり、すなわち、調光領域70および外周領域71での調光シート10の断面構造を示す。
シート本体20は、調光層21、第1透明電極層22、第2透明電極層23、第1透明支持層24、および、第2透明支持層25を備えている。調光層21は、第1透明電極層22と第2透明電極層23とに挟まれ、これらの透明電極層22,23に接している。第1透明支持層24は、第1透明電極層22に対して調光層21と反対側で第1透明電極層22を支持している。第2透明支持層25は、第2透明電極層23に対して調光層21と反対側で第2透明電極層23を支持している。
【0024】
調光層21は、透明高分子層と液晶組成物とを含んでいる。透明高分子層は、液晶組成物が充填される空隙を有しており、当該空隙内に液晶組成物が保持されている。液晶組成物は液晶分子を含む。液晶分子としては、公知の材料を用いることができる。液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ジオキサン系の液晶分子である。なお、液晶組成物は、上述した液晶分子以外に、二色性色素等を含んでもよい。
【0025】
透明高分子層の構造および液晶組成物の保持型式は、例えば、ポリマーネットワーク型、高分子分散型、カプセル型である。ポリマーネットワーク型の調光層21は、3次元の網目状を有したポリマーネットワークを備える。ポリマーネットワークは、透明高分子層の一例であり、ポリマーネットワークにおける相互に連通した網目状の空隙のなかに液晶組成物が保持される。高分子分散型の調光層21は、孤立した多数の空隙を区画する透明高分子層を備え、透明高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物が保持される。カプセル型の調光層21は、透明高分子層のなかに分散したカプセル内の空隙に液晶組成物を保持する。
【0026】
第1透明電極層22および第2透明電極層23の各々は、導電性を有する材料から形成されており、可視領域の光に対して透明である。透明電極層22,23の材料には、公知の材料を用いることができる。透明電極層22,23の材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)、銀や銀合金等である。
【0027】
第1透明支持層24および第2透明支持層25の各々は、可視領域の光に対して透明な基材である。透明支持層24,25の材料には、公知の材料を用いることができる。透明支持層24,25の材料は、合成樹脂、または、無機化合物であってよい。合成樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリオレフィン等である。ポリエステルは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等である。ポリアクリレートは、例えば、ポリメチルメタクリレート等である。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等である。
【0028】
シート本体20の第1面11Fは、第1透明支持層24における第1透明電極層22に接する面とは反対側の面である。シート本体20の第2面11Rは、第2透明支持層25における第2透明電極層23に接する面とは反対側の面である。第2面11Rは、粘着層を介して、ガラスや樹脂等からなる透明板に貼り付けられる。透明板は、例えば、住宅、駅、空港等の各種の建物が備える窓ガラス、オフィスに設置されたパーティション、店舗に設置されたショーウインドウ、車両や航空機等の移動体が備える窓ガラスやウインドシールドである。透明板の表面は、平面であってもよいし、曲面であってもよい。
【0029】
第1面11Fと対向する位置から見て、第2透明電極層23と第2透明支持層25との積層体である第2積層体27は、調光層21と第1透明電極層22と第1透明支持層24との積層体である第1積層体26の外側まで延びている。そして、封止部50は、第2積層体27上で第1積層体26の端面を覆うとともに、第1積層体26上まで広がって第1面11Fの端部を覆っている。すなわち、調光層21と第1透明電極層22と第1透明支持層24との端面は、封止部50によって覆われている。
【0030】
封止部50の材料には、公知の樹脂材料を用いることができる。封止部50の材料は、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン‐チオール系樹脂、シリコーン系樹脂等である。
【0031】
第1透明電極層22は、電極部30と、外周導電部31と、非導電部32と、高抵抗部33とを備えている。これらの各部は、第1透明電極層22の広がる方向、言い換えれば、第1面11Fに沿った方向に沿って並んでいる。電極部30、外周導電部31、および、高抵抗部33の各々は導電性を有する。非導電部32は、導電性を有さない。非導電部32は、第1透明電極層22の材料である導電膜に対して例えばレーザー照射が行われることにより、導電膜が破壊あるいは改質されて、導電性を失った部分である。一方、電極部30、外周導電部31、および、高抵抗部33の各々は、導電膜が破壊あるいは改質されていない部分である。
【0032】
第1面11Fと対向する位置から見て、電極部30は、調光領域70および第1接続領域72に位置し、外周導電部31、非導電部32、および、高抵抗部33は、外周領域71に位置する。なお、外周領域71の一部は、封止部50に覆われていなくてもよい。例えば、第1面11Fと対向する位置から見て、非導電部32や高抵抗部33は、封止部50から露出する領域に位置していてもよい。
【0033】
図3を参照して、第1透明電極層22における上述した各部の配置について詳細に説明する。
図3は、第1透明電極層22と第1透明支持層24との積層体を、第1透明電極層22の位置する側から見た図である。
図3では、第1透明電極層22に接続された第1配線部60も共に図示している。以下に説明する構成は、第1透明電極層22の表面と対向する位置から見た構成であり、こうした構成は第1面11Fと対向する位置から見た場合にも共通する。
【0034】
電極部30は、第1透明電極層22の中央部を含む領域に位置し、電極部30の外側に、外周導電部31が位置する。第1透明電極層22の外縁に位置する端面は、外周導電部31に含まれる。電極部30と外周導電部31との間には、非導電部32が位置する。
【0035】
非導電部32は、電極部30と外周導電部31とを区切るように、線状に延びる。非導電部32の端部同士は繋がっておらず、非導電部32の一方の端部を含む区画部34aと、非導電部32の他方の端部を含む区画部34bとは、第1透明電極層22の外縁に沿って互いに平行に延びている。
図3に示す例では、区画部34aは、区画部34bの内側に位置する。そして、区画部34aと区画部34bとの間に、細長く延びる高抵抗部33が区画されている。言い換えれば、高抵抗部33は、非導電部32が含む2つの線状部分である区画部34aと区画部34bとの間に挟まれる帯状の部分である。
【0036】
電極部30から第1透明電極層22の外縁に向けて、高抵抗部33が位置する領域では、電極部30、非導電部32(区画部34a)、高抵抗部33、非導電部(区画部34b)、外周導電部31が、この順に並ぶ。高抵抗部33は、電極部30と外周導電部31との間に位置して、電極部30と外周導電部31との双方と繋がっている。詳細には、高抵抗部33の延びる方向における一方の端部は電極部30と繋がっており、高抵抗部33の延びる方向における他方の端部は外周導電部31と繋がっている。
電極部30から第1透明電極層22の外縁に向けて、高抵抗部33が位置しない領域では、電極部30、非導電部32、外周導電部31が、この順に並ぶ。
【0037】
電極部30には、第1配線部60が接続されている。すなわち、第1配線部60は、非導電部32の内側で第1透明電極層22に接続されている。第1透明電極層22と第1透明支持層24との積層体において、第2接続領域73に対応する部分は切り抜かれている。
以上のように、第1透明電極層22においては、導電性を有する電極部30と外周導電部31と高抵抗部33とが、非導電部32によって区切られている。
【0038】
図4は、第2透明電極層23の一例を示す図であって、第2透明電極層23と第2透明支持層25との積層体を、第2透明電極層23の位置する側から見た図である。
図4では、第2透明電極層23に接続された第2配線部61も共に図示している。
【0039】
第2透明電極層23は、第1透明電極層22のように非導電部によって導電性を有する部分が区切られた構造を有していない。第2透明電極層23は、一様な導電膜であり、その全体が導電性を有している。すなわち、第2透明電極層23は、その全体が電極部40である。
電極部40には、第2配線部61が接続されている。第2透明電極層23と第2透明支持層25との積層体において、第1接続領域72に対応する部分は切り抜かれている。
【0040】
図5は、
図1におけるV-V線に沿った断面図であり、第1接続領域72付近の断面構造を示す。
図6は、
図1におけるVI-VI線に沿った断面図であり、第2接続領域73付近の断面構造を示す。
【0041】
図5が示すように、第1接続領域72には、第1透明電極層22と第1透明支持層24との積層体が延びており、第1接続領域72にて、第1透明電極層22は調光層21から露出している。この露出した第1透明電極層22に、第1配線部60が接続されている。第1配線部60は、第1透明電極層22に接合された導電性接着層62と、導電性接着層62に接合された配線基板63とを備える。第1透明電極層22に第1配線部60が接続されている部分、および、第1配線部60の周囲で調光層21から第1透明電極層22が露出している部分は、封止部50で覆われている。
【0042】
図6が示すように、第2接続領域73には、第2透明電極層23と第2透明支持層25との積層体が延びており、第2接続領域73にて、第2透明電極層23は調光層21から露出している。この露出した第2透明電極層23に、第2配線部61が接続されている。第2配線部61は、第2透明電極層23に接合された導電性接着層64と、導電性接着層64に接合された配線基板65とを備える。第2透明電極層23に第2配線部61が接続されている部分、および、第2配線部61の周囲で調光層21から第2透明電極層23が露出している部分は、封止部50で覆われている。
【0043】
導電性接着層62,64は、例えば、異方性導電フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP : Anisotropic Conductive Paste)、等方性導電フィルム(ICF : Isotropic Conductive Film)、等方性導電ペースト(ICP : Isotropic Conductive Paste)等から形成される。配線基板63,65は、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC : Flexible Printed Circuits)である。
なお、第1配線部60および第2配線部61の各々は、導電性テープ等の導電性材料と導線とがはんだ付けによって接合された構造を有していてもよい。
【0044】
第1配線部60および第2配線部61は、駆動電圧を生成する駆動回路に接続されている。第1透明電極層22の電極部30には、第1配線部60を通じて電圧信号が印加され、第2透明電極層23の電極部40には、第2配線部61を通じて電圧信号が印加される。
【0045】
調光領域70において、調光層21は、2つの電極部30,40の間において生じる電圧の変化を受けて、液晶分子の配向を変える。液晶分子における配向の変化は、調光層21に入る可視光の散乱度合い、吸収度合い、および、透過度合いを変える。
【0046】
具体的には、電極部30,40に駆動電圧が印加されていないとき、液晶分子の長軸方向の向きは不規則である。そのため、調光層21に入射した光の散乱度合いは大きくなり、調光領域70は濁って見える。すなわち、駆動電圧が印加されていないとき、調光領域70は不透明である。一方、電極部30,40に駆動電圧が印加され、これらの電極部30,40間に所定値以上の電位差が生じると、液晶分子が配向され、液晶分子の長軸方向が電極部30,40間の電界方向に沿った向きとなる。その結果、調光層21を光が透過しやすくなり、調光領域70は透明となる。
【0047】
ここで、第1透明電極層22において、電極部30と高抵抗部33と外周導電部31とは、互いに導通している。一方で、電極部30に対して幅の狭い高抵抗部33の抵抗は高くなっており、電極部30と外周導電部31とは、高抵抗部33を介して電気的に接続されているため、電極部30から外周導電部31への電荷の移動が阻害される。その結果、駆動電圧が印加されているとき、第1透明電極層22が非導電部32および高抵抗部33を有していない場合と比較して、第1透明電極層22の端面付近での第1透明電極層22と第2透明電極層23との間の電位差は小さくなる。こうした構成においては、電極部30,40が位置する調光領域70と比較して、シート本体20の端面付近では電界強度が弱くなる。
【0048】
イオンマイグレーションの発生は、電界強度が強いほど加速する。これに対し、本実施形態では、第1透明電極層22が非導電部32および高抵抗部33を有していない場合と比較して、シート本体20の端面付近での電界強度が弱くなる。したがって、封止部50の形成前にシート本体20の端面に付着した水分が残留していることや、水分が封止部50を透過してシート本体20の端面に付着することがあったとしても、透明電極層22,23の端部間でのイオンマイグレーションの発生を抑えることができる。
【0049】
また、イオンマイグレーションの生じやすさは、透明電極層22,23が含む金属元素の種類によって変わる。具体的には、イオンマイグレーションは、透明電極層22,23が銀(Ag)を含む場合に最も起こりやすく、透明電極層22,23がスズ(Sn)やインジウム(In)を含む場合にも起こりやすい。酸化インジウムスズは、透明導電膜の材料として広く用いられており、銀を含む積層膜は、低抵抗な透明導電膜として着目されている。本実施形態の調光シート10であれば、透明電極層22,23が、酸化インジウムスズや銀を材料とする場合であっても、イオンマイグレーションの発生を抑えて、これらの材料からなる透明電極層22,23の利点を大きく得ることができる。
【0050】
イオンマイグレーションの発生を好適に抑えるためには、電極部30の位置する部分での第1透明電極層22と第2透明電極層23との間の電位差を電極電位差、外周導電部31の位置する部分での第1透明電極層22と第2透明電極層23との間の電位差を外周電位差とするとき、駆動電圧が印加されている状態において、外周電位差が電極電位差の1/10以下であることが好ましい。
【0051】
なお、外周導電部31は、電極部30と絶縁されてはいないため、外周電位差は、電極電位差に追従して変化する。すなわち、電極電位差が大きくなると、外周電位差も大きくなり、電極電位差が小さくなると、外周電位差も小さくなる。
【0052】
高抵抗部33の幅および長さは、外周電位差が電極電位差の1/10以下となるために必要な抵抗値を高抵抗部33が有するように、設定されればよい。なお、外周導電部31の幅は、例えば、10μm以上5mm以下であり、非導電部32の幅は、例えば、1μm以上100μm以下である。
【0053】
非導電部32は、調光層21と、透明電極層22,23となる透明導電膜と、透明支持層24,25との積層体に対するレーザー照射によって好適に形成できる。レーザー照射を用いれば、透明電極層22,23を破壊せずにその下層の透明導電膜に非導電部32を形成することができる。本実施形態の非導電部32の端部は互いに離間しているため、細線状の非導電部32の端部同士を繋げて非導電部32を環状に形成することと比較して、非導電部32の形成位置の精度確保に要する負担の軽減が可能である。
【0054】
[第2透明電極層の変形例]
図7~
図11を参照して、第1透明電極層22が先の
図3に示した構成を有している場合における第2透明電極層23の変形例を説明する。
【0055】
図7が示すように、第2透明電極層23は、第1面11Fと対向する位置から見て第1透明電極層22の高抵抗部33と重なる位置に、高抵抗部43を有していてもよい。すなわち、第2透明電極層23は、導電性を有する電極部40、外周導電部41、および、高抵抗部43と、導電性を有さない非導電部42とを備えており、
図8が示すように、非導電部42は、電極部40と、その外側の外周導電部41とを区切るように、線状に延びる。そして、非導電部42が含む2つの線状部分の間に、細長く延びる高抵抗部43が区画される。高抵抗部43の延びる方向における一方の端部は電極部40と繋がっており、高抵抗部43の延びる方向における他方の端部は外周導電部41と繋がっている。
【0056】
第1面11Fと対向する位置から見て、非導電部42の一部もしくは全部は、第1透明電極層の非導電部32と重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。非導電部42と非導電部32とが重なっていれば、レーザー照射を利用して、これらの非導電部32,42を一括して形成することも可能である。
【0057】
上記構成によれば、第2透明電極層23においても、電極部40と外周導電部41とが、抵抗の高い部分である高抵抗部43を介して電気的に接続されているため、電極部40から外周導電部41への電荷の移動が阻害される。その結果、第2透明電極層23が非導電部42および高抵抗部43を有していない場合と比較して、シート本体20の端面付近での電界強度がより弱くなることから、透明電極層22,23の端部間でのイオンマイグレーションの発生をさらに抑えることができる。
【0058】
図9が示すように、第2透明電極層23は、第1面11Fと対向する位置から見て第1透明電極層22の高抵抗部33と重ならない位置に、高抵抗部43を有していてもよい。また、第2透明電極層23は、2以上の高抵抗部43を有していてもよい。
図9が示す例では、第2透明電極層23は2つの高抵抗部43a,43bを有し、略矩形形状の第2透明電極層23における対向する2辺の各々に沿って、高抵抗部が位置している。
【0059】
詳細には、第2透明電極層23は、互いに離間した2つの非導電部42a,42bを有しており、第1の非導電部42aの一方の端部を含む区画部44aと、第2の非導電部42bの一方の端部を含む区画部44bとは、第2透明電極層23の外縁に沿って平行に延びている。そして、区画部44aと区画部44bとの間に、第1の高抵抗部43aが区画されている。また、第1の非導電部42aの他方の端部を含む区画部44cと、第2の非導電部42bの他方の端部を含む区画部44dとは、第2透明電極層23の外縁に沿って平行に延びている。そして、区画部44cと区画部44dとの間に、第2の高抵抗部43bが区画されている。
【0060】
上記構成によっても、電極部40と外周導電部41とが、高抵抗部43a,43bを介して電気的に接続されているため、第2透明電極層23が非導電部42a,42bおよび高抵抗部43a,43bを有していない場合と比較して、シート本体20の端面付近での電界強度が弱くなる。したがって、透明電極層22,23の端部間でのイオンマイグレーションの発生が抑えられる。
【0061】
なお、第2透明電極層23が有する高抵抗部43は1つであって、この高抵抗部43が、第1透明電極層22の高抵抗部33と重ならない位置に配置されていてもよい。また、第1透明電極層22が2以上の高抵抗部33を有していてもよい。
【0062】
図10が示すように、第2透明電極層23は、閉環状の非導電部42を有していてもよい。この場合、第2透明電極層23は、高抵抗部43を有さず、電極部40と外周導電部41とは、非導電部42によって完全に分離されている。すなわち、電極部40と外周導電部41とは絶縁されている。
【0063】
上記構成によれば、外周導電部41の電位は浮遊状態となるため、電極部40に駆動電圧が印加されても、外周導電部41の電位の変化は抑えられる。これによっても、第2透明電極層23が非導電部42を有していない場合と比較して、シート本体20の端面付近での電界強度が弱くなるため、透明電極層22,23の端部間でのイオンマイグレーションの発生が抑えられる。
【0064】
図11が示すように、第2透明電極層23において、非導電部42は、第1接続領域72に対応する部分、すなわち、シート本体20にて第1配線部60が配置される部分の周囲で、第2透明電極層23の外縁に沿って延びていてもよい。非導電部42は、第1接続領域72を囲むように、第2透明電極層23の外縁に沿って端部導電部45を区画する。端部導電部45以外の部分では、第2透明電極層23の外縁まで電極部40が広がっており、電極部40と端部導電部45とは、非導電部42によって分離されることにより絶縁されている。
【0065】
上記構成によれば、端部導電部45の電位は浮遊状態となるため、第2透明電極層23が非導電部42を有していない場合と比較して、駆動電圧が印加されているときに第1接続領域72の周囲においては、電界強度が弱くなる。駆動電圧が印加されているとき、透明電極層22,23にかかる実際の電圧は、配線部60,61の周囲において最も大きくなりやすいため、非導電部42が設けられていない場合には、第1配線部60の周囲でイオンマイグレーションが発生しやすい。したがって、第1配線部60の周囲において、第2透明電極層23の外縁に沿った部分を浮遊状態とすることで、イオンマイグレーションの発生を的確に抑えることができる。
【0066】
[第1透明電極層の変形例]
図12~
図14を参照して、第1透明電極層22における高抵抗部33の配置の変形例を説明する。
【0067】
第1透明電極層22の表面と対向する位置から見て、高抵抗部33は、第1透明電極層22の外縁に沿った直線状に延びていなくてもよく、
図12が示すように、九十九折り状に屈曲を繰り返す折れ線形状を有していてもよい。詳細には、区画部34aと区画部34bとは、これらの間に一定の間隔を保って屈曲を繰り返す折れ線形状を有しており、区画部34aと区画部34bとの間に、高抵抗部33が区画されている。
なお、電極部30よりも単位面積あたりにおいて高い抵抗を有していれば、高抵抗部33は、曲線状に延びていてもよいし、高抵抗部33の幅は一定でなくてもよい。
【0068】
また、
図13が示すように、非導電部32において高抵抗部33を挟む線状部分の各々は、1つの連続した線状でなくてもよく、すなわち、線状部分の途中に切れ目があってもよい。線状部分の切れ目の外側または内側に他の線状部分が配置されることで、高抵抗部33を形成することができる。
図13に示す例では、切れ目を有する環状に非導電部32が位置し、この切れ目とその近傍の外側に、第1透明電極層22の外縁に沿って延びる線分状の非導電部32が位置している。こうした構成によっても、内側の非導電部32と外側の非導電部32との間に、帯状に延びる高抵抗部33が区画される。
【0069】
また、非導電部32の配置によって、電極部30よりも単位面積あたりにおいて高い抵抗を有した高抵抗部33が形成されていれば、高抵抗部33は、並列して延びる2つの線状部分に挟まれていなくてもよい。具体的には、
図14が示すように、非導電部32は、第1透明電極層22の外縁に沿って、断続的に位置していてもよい。言い換えれば、非導電部32は、点線からなる環状を有してもよい。こうした構成においては、断続的に配置された非導電部32の隙間の部分が高抵抗部33として機能する。
【0070】
[試験例]
外周電位差を、電極電位差の1/10以下とするために必要な高抵抗部の構成について、試験を行った。
【0071】
図15および
図16は、試験に用いた調光シートの構成を示す。
図15の平面図が示すように、調光シートは、透明電極層が、2つの端子接続部100,101の間に、端子接続部100,101よりも幅の狭い高抵抗部110を有するように形成されている。なお、簡略化のために、高抵抗部110の周囲の非導電部等の図示を省略している。
図16の断面図が示すように、調光シートは、調光層140、上記構成の透明電極層141,142、および、透明支持層143,144を備え、調光層140を挟んで第1透明電極層141の高抵抗部110と第2透明電極層142の高抵抗部110とが向かい合う構造を有している。
【0072】
一方の端子接続部100が位置する部分の透明電極層141,142に、入力端子120,121を接続し、この入力端子120,121間に交流の印加電圧Voを印加する。印加電圧Voは80Vであり、周波数は40Hzである。他方の端子接続部101が位置する部分の透明電極層141,142に、測定端子130,131を接続し、この測定端子130,131間の電圧である測定電圧Vtを測定する。
【0073】
上記構成においては、入力端子120,121の位置する部分が、上記実施形態における電極部30,40の位置する部分に対応し、測定端子130,131の位置する部分が、上記実施形態における外周導電部31,41の位置する部分に対応すると見做せる。
【0074】
高抵抗部110の長さLtは10cmであり、高抵抗部110の幅Wtを変更して、測定電圧Vtを測定するとともに、高抵抗部110の抵抗値Rを算出した。透明電極層141,142の材料は、酸化インジウムスズであり、透明電極層141,142のシート抵抗値ρsは、130Ω/sqである。抵抗値Rは、R=ρs×Lt/Wtの式を用いて算出した。表1に結果を示す。
【0075】
【0076】
表1が示すように、幅Wtが0.1cmよりも小さくなると、測定電圧Vtが急激に低下する。幅Wtが0.05cm、すなわち0.5mmのとき、測定電圧Vtは、印加電圧Voの1/10以下であり、このときの抵抗値Rは、26KΩである。この結果から、入力端子120,121に与えられた電位差を、測定端子130,131にて1/10とするためには、高抵抗部110の抵抗値が、26KΩ以上であればよいことが確認された。
【0077】
以上のように、本実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)第1透明電極層22において、電極部30と外周導電部31とが高抵抗部33によって電気的に接続されている。そのため、シート本体20の端面付近での電界強度が弱くなることから、イオンマイグレーションの発生を抑えることができる。
【0078】
(2)駆動電圧が印加されている状態において、外周導電部31が位置する部分での電位差である外周電位差が、電極部30が位置する部分での電位差である電極電位差の1/10以下である。これにより、シート本体20の端面付近での電界強度が十分に弱まっていることから、イオンマイグレーションの発生を抑えることができる。
【0079】
(3)高抵抗部33が、非導電部32が含む2つの線状部分に挟まれた帯状を有していれば、高い抵抗を有する高抵抗部33を好適に実現することができる。
(4)高抵抗部33が直線状に延びていれば、高抵抗部33の形状や抵抗の大きさの設計が容易である。
【0080】
(5)第2透明電極層23において、電極部40と外周導電部41とが高抵抗部43によって電気的に接続されていれば、シート本体20の端面付近での電界強度がより弱くなる。したがって、イオンマイグレーションの発生をより抑えることができる。
【0081】
(6)透明電極層22,23が、イオンマイグレーションを発生させやすい材料である酸化インジウムスズまたは銀を含む場合であっても、上記実施形態の調光シート10であれば、イオンマイグレーションの発生を的確に抑えられる。それゆえ、これらの材料からなる透明電極層22,23の欠点が抑えられ、高汎用性や低抵抗といった利点を大きく得ることができる。
【0082】
[変形例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。また、以下の変形例を互いに組み合わせて実施してもよい。
【0083】
・シート本体20は、第1配向層および第2配向層を備えていてもよい。第1配向層は、調光層21と第1透明電極層22との間に位置し、これらの層と接する。第2配向層は、調光層21と第2透明電極層23との間に位置し、これらの層と接する。
【0084】
第1配向層および第2配向層の各々は、例えば、垂直配向膜である。垂直配向膜は、調光層21の厚さ方向に沿って、液晶分子の長軸方向を配向させる。第1配向層および第2配向層の各々の材料は、有機化合物、無機化合物、あるいは、これらの混合物である。有機化合物は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、シアン化化合物等である。無機化合物は、例えば、シリコン酸化物、酸化ジルコニウム等である。第1配向層および第2配向層の材料は、シリコーンであってもよい。シリコーンは、無機性の部分と有機性の部分とを有する化合物である。
【0085】
シート本体20が第1配向層および第2配向層を備える場合、調光領域70において、電極部30,40に駆動電圧が印加されていないとき、液晶分子の長軸方向の向きは調光層21の厚さ方向に沿った向きとなる。したがって、調光領域70は透明である。一方、電極部30,40に駆動電圧が印加されているとき、液晶分子の長軸方向の向きは調光層21の厚さ方向と交差する向きとなる。したがって、調光領域70は濁って見え、不透明となる。
【0086】
・上記実施形態では、シート本体20の第2面11Rが透明板に貼り付けられるが、これに代えて、第1面11Fが透明板に貼り付けられてもよい。
・上記実施形態では、シート本体20の端部にて第2透明電極層23と第2透明支持層25との積層体が突出し、この積層体上から第1面11Fに向けて封止部50が配置されている。封止部50が配置される部分のシート本体20の構造はこれに限られない。シート本体20の端部にて、調光層21、透明電極層22,23、透明支持層24,25の端面の位置が揃っており、各層の端面全体を覆うように封止部50が配置されてもよい。さらには、封止部50が設けられていなくてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…調光シート
11F…第1面
11R…第2面
20…シート本体
21…調光層
22,23…透明電極層
24,25…透明支持層
30,40…電極部
31,41…外周導電部
32,42…非導電部
33,43…高抵抗部
60,61…配線部
70…調光領域
71…外周領域
72,73…接続領域