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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023086564
(43)【公開日】2023-06-22
(54)【発明の名称】ブドウ果汁含有飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/02 20060101AFI20230615BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230615BHJP
【FI】
A23L2/02 A
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201166
(22)【出願日】2021-12-10
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】青山 千尋
(72)【発明者】
【氏名】林 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】佐山 美奈穂
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC03
4B117LE10
4B117LG05
4B117LK06
4B117LL02
(57)【要約】
【課題】ブドウ果汁含有飲料の果汁感、および瑞々しさを向上できる技術を提供する。
【解決手段】本発明のブドウ果汁含有飲料は、レブリン酸エチル(a)を50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)を20ppb~2ppm含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レブリン酸エチル(a)を50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)を20ppb~2ppm含む、ブドウ果汁含有飲料。
【請求項2】
2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)をさらに含む、請求項1に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項3】
2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を50ppb~20ppm含む、請求項1または2に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項4】
非アルコール飲料である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項5】
果汁率(ストレート果汁換算)が3~70質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項6】
前記ブドウ果汁が、赤ブドウ果汁を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項7】
甘味料を含む、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項8】
pH(20℃)が2.8~4.6である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項9】
容器詰めされた、請求項1乃至8いずれか一項に記載のブドウ果汁含有飲料。
【請求項10】
レブリン酸エチル(a)が50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)が20ppb~2ppmとなるように調製する工程を含む、ブドウ果汁含有飲料の果汁感向上方法。
【請求項11】
レブリン酸エチル(a)が50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)が20ppb~2ppmとなるように調製する工程を含む、ブドウ果汁含有飲料の果汁感の向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブドウ果汁含有飲料に関する。より詳細には、ブドウ果汁含有飲料、ブドウ果汁含有飲料の果汁感向上方法、ブドウ果汁含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果汁含有飲料は、果汁風味が得られる嗜好性飲料として広く親しまれており、果汁らしい風味・香味を向上させるための研究開発が進んでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、コクを高める観点から、β-ダマセノンの含有量を0.1~300ppbとするブドウ果汁入り飲料が開示されている。特許文献2には、2-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールを有効成分とする、あるいは2-メルカプト-3-メチル-1-ブタノールと4-ビニルグアイアコール(2-メトキシ-4-ビニルフェノール)の双方を有効成分として含有する、飲食品の濃厚感付与増強剤が開示されている。実施例において、一例として、実施例14にグレープ果汁と2-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール0.3ppbと4-ビニルグアイアコール1×10-4pptとを併用したサンプルが開示されている。また、特許文献3には、風味付与するための無数の成分の一つとして吉草酸エチルが使用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-129727号公報
【特許文献2】特開2018-2013487号公報
【特許文献3】特表2019-501121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、ブドウ果汁含有飲料の風味改善に関する試みは様々行われてきたが、ブドウ果汁とレブリン酸エチル、またはブドウ果汁と吉草酸エチルとを組み合わせる技術は知られていなかった。本発明者らは、新たにレブリン酸エチル、または吉草酸エチルを用いることに着目し検討を行ったところ、ブドウ果汁にレブリン酸エチルまたは吉草酸エチルを所定量で適用することにより、ブドウ果汁含有飲料を飲用した際に得られる香味の中でも特に果汁感、および瑞々しさを向上できることを見出し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下のブドウ果汁含有飲料、ブドウ果汁含有飲料の果汁感向上方法、ブドウ果汁含有飲料の製造方法が提供される。
[1]
レブリン酸エチル(a)を50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)を20ppb~2ppm含む、ブドウ果汁含有飲料。
[2]
2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)をさらに含む、[1]に記載のブドウ果汁含有飲料。
[3]
2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を50ppb~20ppm含む、[1]または[2]に記載のブドウ果汁含有飲料。
[4]
非アルコール飲料である、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載のブドウ果汁含有飲料。
[5]
果汁率(ストレート果汁換算)が3~70質量%である、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載のブドウ果汁含有飲料。
[6]
前記ブドウ果汁が、赤ブドウ果汁を含む、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載のブドウ果汁含有飲料。
[7]
甘味料を含む、[1]乃至[6]のいずれか一つに記載のブドウ果汁含有飲料。
[8]
pH(20℃)が2.8~4.6である、[1]乃至[7]のいずれか一つに記載のブドウ果汁含有飲料。
[9]
容器詰めされた、[1]乃至[8]のいずれか一つに記載のブドウ果汁含有飲料。
[10]
レブリン酸エチル(a)が50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)が20ppb~2ppmとなるように調製する工程を含む、ブドウ果汁含有飲料の果汁感向上方法。
[11]
レブリン酸エチル(a)が50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)が20ppb~2ppmとなるように調製する工程を含む、ブドウ果汁含有飲料の果汁感の向上方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ブドウ果汁含有飲料の果汁感、および瑞々しさを向上できる技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0009】
<ブドウ果汁含有飲料>
本実施形態のブドウ果汁含有飲料は、ブドウ果汁と、レブリン酸エチル(a)を50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)を20ppb~2ppmと、を含む。これにより、ブドウらしい果汁感、および瑞々しさを向上できる。かかる理由の詳細は明らかではないが、レブリン酸エチル(a)および吉草酸エチル(b)は、構造が互いに類似し、いずれもエステル系の香気成分であり、甘い香調を呈する香気成分として知られる。そこで、適度な濃度のレブリン酸エチル(a)、吉草酸エチル(b)が、ブドウ果汁が有する香味を生かしつつ自然物らしい複雑味を向上するとともに、これらの香味がブドウ様のジューシー感、甘みに合致し、効果的に果汁感、および瑞々しさを向上できると推測される。また、本実施形態のブドウ果汁含有飲料によれば、甘味の良さ、ボディ感を良好にできる。
【0010】
以下、本実施形態のブドウ果汁含有飲料(以下、単に「飲料」とも表記する)に含まれる各成分について説明する。
【0011】
[ブドウ果汁]
本実施形態の飲料は、ブドウ由来の果汁を含む。
本実施形態において果汁とは、果物・果実を破砕して搾汁したり、あるいは裏ごししたりするなどして得られる液体成分をいう。また、果汁には、当該液体成分を濃縮したものや、これらの希釈還元物も含まれてもよく、パルプ分を含むもの、または、ろ過や遠心分離等の処理によりパルプ分を除去したものあってもよい。
また、本実施形態で用いられる果汁としては、ストレート果汁、濃縮果汁、濃縮還元果汁などが挙げられる。また、透明な果汁、半透明な果汁、または不透明な果汁のいずれであってもよく、安定した果汁感、コク、おいしさを得る観点からは透明な果汁であることが好適である。
【0012】
本実施形態の飲料の果汁率(ストレート果汁換算)は、100質量%であってもよく、好ましくは3~70質量%であり、より好ましくは5~50質量%である。
果汁率を、上記下限値以上とすることにより、果汁らしいおいしさ、果汁感、瑞々しさ、フレッシュ感が得られやすくなる。一方、果汁率を、上記上限値以下とすることにより、良好な果汁感を保持しつつ、ボディ感や甘味の良さが得られやすくなる。
【0013】
また、果汁率(ストレート果汁換算)は、低果汁としつつも果汁本来の風味、コク、果汁感を保持する観点からは、さらに好ましくは、40質量%以下、35質量%以下、30質量%、25質量%以下の順に好ましい。すなわち、本実施形態のブドウ果汁含有飲料によれば、低果汁でありながらも、果汁感、瑞々しさ、フレッシュ感、コクを得ることができる。
一方、果汁率(ストレート果汁換算)は、果汁感、コク、おいしさを得る観点からは、さらに好ましくは、6質量%以上、8質量%以上、10質量%以上の順に好ましい。
【0014】
なお、果汁率とは、果汁を搾汁して得られ、濃縮等の処理を行っていない果汁の搾汁(ストレート果汁)のBrix値または酸度を100%としたときの相対濃度である。果汁率をBrix値または酸度のいずれに基づいて算出するかはJAS規格に基づき果汁の種類ごとに定められている。また、果汁の果汁率をJAS規格のBrix値に基づいて換算する場合、果汁に加えられた糖類、はちみつ等のBrix値は除いて算出される。
【0015】
例えば、ブドウについてはJAS規格のBrix値が11であるため、Brix値が55の濃縮ブドウ果汁を飲料中10質量%配合した場合、50質量%の果汁率の飲料となる。
【0016】
本実施形態のブドウ果汁に用いられるブドウは、特に限定されないが、例えば、果皮の色味で、黄緑系の白ブドウと、赤系・黒系の赤ブドウとに分類した場合、白ブドウと赤ブドウを共に含むものであってもよく、少なくとも赤ブドウを含むことが好ましい。赤ブドウを含むことで、果汁感、瑞々しさの向上効果が一層顕著になる。
【0017】
黄緑系の白ブドウとしては、たとえば、ナイアガラ、ロザリオビアンコ、マスカット、シャルドネ等の品種が挙げられる。赤系・黒系の赤ブドウとしては、たとえば、コンコード、巨峰、ナガノパープル、ピオーネ、スチューベン、藤稔、キャンベル・アーリー等の黒系の赤ブドウ、デラウェア、ロザリオ・ロッソ、甲斐路、ゴルビー等の赤系の赤ブドウが挙げられる。なかでも、良好な果汁感、瑞々しさが得られやすくなる点から、コンコード種を用いることが好ましい。
【0018】
なお、ブドウ果汁の調製に用いることのできるブドウの産地、熟度、大きさなどは特に限定されず、適宜設定することができる。
【0019】
[レブリン酸エチル(a)]
レブリン酸エチル(a)は、3-アセチルプロピオン酸エチル、4-オキソペンタン酸エチル、4-オキソ吉草酸エチル等と呼ばれる。
【0020】
本実施形態の飲料は、レブリン酸エチル(a)濃度が50ppb~15ppmであり、0.5~12ppmであることが好ましく、1~10ppmであることがより好ましく、1.5~8ppmであることがさらに好ましい。
レブリン酸エチル(a)濃度を上記数値範囲内とすることにより、果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上しつつ、良好な甘味の良さ、ボディ感、およびおいしさをバランスよく得られる。
【0021】
[吉草酸エチル(b)]
吉草酸エチル(b)は、吉草酸(ペンタン酸)のエステル化物の一つである。リンゴ、アプリコット様の甘い香りを呈する。吉草酸エチル(b)は、ブドウ果汁に含まれるが、その濃度は極めて低く、数十ppbである。
【0022】
本実施形態の飲料は、吉草酸エチル(b)濃度が20ppb~2ppmであり、50ppb~1.5ppmであることが好ましく、70ppb~1ppmであることがより好ましく、80ppb~0.5ppmであることがさらに好ましい。
【0023】
吉草酸エチル(b)濃度を上記数値範囲内とすることにより、果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上しつつ、良好な甘味の良さ、ボディ感、およびおいしさをバランスよく得られる。
【0024】
[2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)]
本実施形態の飲料は、さらに、2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を含んでもよい。これにより、レブリン酸エチル(a)および/または吉草酸エチル(b)との組み合わせによる相乗効果として、果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上しつつ、さらに、甘味の強さ、ボディ感、まろやかさ、および後味の良さをバランスよく得られる。
【0025】
本実施形態の飲料は、2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)濃度が50ppb~20ppmであることが好ましく、100ppb~10ppmであることがより好ましく、200ppb~8ppmであることがより好ましい。
【0026】
2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)濃度を上記数値範囲内とすることにより、果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上しつつ、甘味の強さ、ボディ感、まろやかさ、および後味の良さをバランスよく得られる。
【0027】
[その他の成分]
本実施形態の果汁含有飲料においては、本発明の効果が奏される限り、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、ブドウ以外の果汁、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、乳酸およびクエン酸以外の酸味料、香料、ビタミン、着色料、食塩、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、増粘剤などの飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0028】
上記のブドウ以外の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、乳酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、酢酸、およびリン酸、ならびにそれらの塩類等が挙げられる。
【0031】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、例えば、糖度1~20が好ましく、糖度5~15がより好ましい。
糖度(Brix値)は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
また、糖度は、例えば、上記の甘味料、果汁、その他の各種成分の含有量により調整することができる。
【0032】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.2g/100ml以上、0.5g/100ml以下であることが好ましい。酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
【0033】
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0034】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、2.8~4.6であることが好ましく、3.1~4.2であることがより好ましく、3.2~3.5であることがさらに好ましい。これにより、果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上し、おいしさを良好に保持できる。
【0035】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、酸味料の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0036】
[炭酸ガス、アルコール]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを飲料中に含有させる方法は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。
【0037】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0038】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
【0039】
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000mlが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0040】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0041】
<ブドウ果汁含有飲料の製造方法>
本実施形態のブドウ果汁含有飲料の製造方法は、レブリン酸エチル(a)が50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)が20ppb~2ppmとなるように調製する工程を含む。これにより、ブドウ果汁含有飲料の果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上できる。混合方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。なお、飲料に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料と同様である。
【0042】
<ブドウ果汁含有飲料の果汁感の向上方法>
本実施形態のブドウ果汁含有飲料の果汁感の向上方法は、レブリン酸エチル(a)が50ppb~15ppm、および/または吉草酸エチル(b)が20ppb~2ppmとなるように調製する工程を含む。これにより、ブドウ果汁含有飲料の果汁感、瑞々しさ、フレッシュさをバランスよく向上できる。混合方法は特に限定されず公知の方法を用いることができる。なお、飲料に含まれる各成分およびその含有量等は上記飲料と同様である。
【0043】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。
【0045】
(1)飲料中の香気成分の定量
飲料中のレブリン酸エチル(a)、吉草酸エチル(b)、2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)の濃度(ppb、ppm)について、以下のようにして測定した。
ゲステル社製MPSを用いる2step-MVM(Multi-Volatile-Method)法により、GC/MS測定に供し、以下に示す条件で測定を行った。
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
定量イオン:吉草酸エチルm/z=88、レブリン酸エチルm/z=99、2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノールm/z=59
内標:シクロヘキサノール m/z=57
温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
キャリアガス流量:He 1ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0046】
(2)飲料の官能評価
(2-1)果汁入り飲料開発に精通した7名のパネルがそれぞれ飲料(20℃)を試飲し、以下の官能試験を実施した。比較対照を全項目4点とした場合に、それぞれの試験区において、各評価項目を7段階で評価した。評価基準は以下の通りである。
・評価基準
<瑞々しさ、果汁感、フレッシュさの評価基準>
評点7:とても感じられる
評点6:感じられる
評点5:やや感じられる
評点4:どちらでもない
評点3:やや感じられない
評点2:感じられない
評点1:全く感じられない
【0047】
(2-2)果汁入り飲料開発に精通した7名のパネルがそれぞれ飲料(20℃)を試飲し、以下の官能試験を実施した。比較対照を全項目4点とした場合に、それぞれの試験区において、各評価項目を7段階で評価した。評価基準は以下の通りである。
なお、「ボディ感」とは、果汁由来の自然な甘味や複雑味を伴う口当たりを意図するものとした。
・評価基準
<ボディ感の評価基準>
評点7:とても感じられる
評点6:感じられる
評点5:やや感じられる
評点4:どちらでもない
評点3:やや感じられない
評点2:感じられない
評点1:全く感じられない
<甘味の良さの評価基準>
評点7:とても良い
評点6:良い
評点5:やや良い
評点4:どちらでもない
評点3:やや悪い
評点2:悪い
評点1:とても悪い
<おいしさの評価基準>
評点7:とてもおいしい
評点6:おいしい
評点5:ややおいしい
評点4:どちらでもない
評点3:ややおいしくない
評点2:おいしくない
評点1:全くおいしくない
【0048】
(2-3)果汁入り飲料開発に精通した6名のパネルがそれぞれ飲料(20℃)を試飲し、以下の官能試験を実施した。比較対照を全項目4点とした場合に、それぞれの試験区において、各評価項目を7段階で評価した。評価基準は以下の通りである。
なお、「後味の良さ」とは、スッキリとした後ギレを意図するものとした。
・評価基準
<ボディ感、まろやかさの評価基準>
評点7:とても感じられる
評点6:感じられる
評点5:やや感じられる
評点4:どちらでもない
評点3:やや感じられない
評点2:感じられない
評点1:全く感じられない
<甘味の良さ、後味の良さ評価基準>
評点7:とても良い
評点6:良い
評点5:やや良い
評点4:どちらでもない
評点3:やや悪い
評点2:悪い
評点1:とても悪い
<甘味の強さ>
評点7:とても強い
評点6:強い
評点5:やや強い
評点4:どちらでもない
評点3:やや弱い
評点2:弱い
評点1:とても弱い
<おいしさの評価基準>
評点7:とてもおいしい
評点6:おいしい
評点5:ややおいしい
評点4:どちらでもない
評点3:ややおいしくない
評点2:おいしくない
評点1:全くおいしくない
【0049】
(3)原料
飲料の原料として、以下のものを用いた。
・果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖):糖度75.5、酸度0
・68°赤ブドウ透明果汁(コンコード種):糖度68.5
・クエン酸三ナトリウム
・無水クエン酸
なお、糖度(Brix)は糖用屈折計(ATAGO RX-5000α)を用いて測定される値、酸度は、クエン酸酸度(g/100ml)を示す。
【0050】
(4)実験1(レブリン酸エチル(a)濃度の影響)
以下の表1に示す含有量となるように、各原料およびレブリン酸エチル(a)を配合し、果汁率20%の各飲料を得た。
各飲料について、比較例1を対照として上記(2-1)および(2-2)の官能評価を行った。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(5)実験2(吉草酸エチル(b)濃度の影響)
以下の表2に示す含有量となるように、各原料および吉草酸エチル(b)を配合し、果汁率20%の各飲料を得た。
各飲料について、比較例3を対照として上記(2-1)および(2-2)の官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
(6)実験3(2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)の検証)
以下の表3に示す含有量となるように、各原料および2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を配合し、果汁率20%の各飲料を得た。
各飲料について、比較例1を対照として上記(2-1)の官能評価を行ったところ、いずれにおいても、「瑞々しさ」、「果汁感」、「フレッシュさ」において2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を配合したことによる向上効果は見られなかった。
さらに、比較例5を対照として上記(2-3)の官能評価を行ったところ、表3に示す結果が得られた。
【0055】
【表3】
【0056】
(7)実験4(レブリン酸エチル(a)と2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)との併用)
以下の表4に示す含有量となるように、各原料およびレブリン酸エチル(a)と2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を配合し、果汁率20%の各飲料を得た。
各飲料について、比較例10を対照として上記(2-1)の官能評価を行ったところ、いずれにおいても、「瑞々しさ」、「果汁感」、「フレッシュさ」においてレブリン酸エチル(a)と2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を配合したことによる向上効果が見られた。
さらに、上記(2-3)の官能評価を行ったところ、表4に示す結果が得られた。
【0057】
【表4】
【0058】
(7)実験5(吉草酸エチル(b)と2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)との併用)
以下の表5に示す含有量となるように、各原料および吉草酸エチル(b)と2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を配合し、果汁率20%の各飲料を得た。
各飲料について、比較例10を対照として上記(2-1)の官能評価を行ったところ、いずれにおいても、「瑞々しさ」、「果汁感」、「フレッシュさ」において吉草酸エチル(b)と2,7-ジメチル-2,7-オクタジエノール(c)を配合したことによる向上効果が見られた。
さらに、上記(2-3)の官能評価を行ったところ、表5に示す結果が得られた。
【0059】
【表5】