(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008688
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物の製造方法、成形品、及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230112BHJP
C08J 3/20 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
C08L101/00
C08J3/20 Z CER
C08J3/20 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112435
(22)【出願日】2021-07-06
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐田 光
(72)【発明者】
【氏名】木村 敏弥
(72)【発明者】
【氏名】今泉 正彦
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA45
4F070AB10
4F070AB11
4F070AB24
4F070AB26
4F070FA01
4F070FA17
4F070FB09
4J002AA02W
4J002AA02X
4J002CC03W
4J002CC03X
4J002CC16W
4J002CC16X
4J002CC18W
4J002CC18X
4J002CD00W
4J002CD00X
4J002CF21W
4J002CF21X
4J002CK02W
4J002CK02X
4J002FA08X
4J002FD010
(57)【要約】
【課題】成形品の外観及び衝撃強度を損ないにくい熱硬化性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)を含有する熱硬化性樹脂組成物であり、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を更に含有する。粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下であり、熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)を含有する熱硬化性樹脂組成物であり、
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を更に含有し、
前記粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下であり、
前記熱硬化性樹脂組成物に対する前記粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である、
熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記粉砕物(B)の50%粒子径が250μm以下である、
請求項1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物は、前記第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化させて成形品を作製する時に発生するスプルー、ランナー、カル、バリ及び成形不良品、並びに前記第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化させて作製する成形品よりなる群から選択される少なくとも一種である、
請求項1又は2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物に対する前記粉砕物(B)の百分比が、5.0質量%以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第一熱硬化性樹脂材料(A1)は熱硬化性樹脂(a1)を含有し、
前記第二熱硬化性樹脂材料(A2)は熱硬化性樹脂(a2)を含有し、
前記熱硬化性樹脂(a1)と前記熱硬化性樹脂(a2)との各々は、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記第一熱硬化性樹脂材料(A1)は熱硬化性樹脂(a1)を含有し、前記熱硬化性樹脂(a1)は部分的に架橋している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を製造する方法であり、
前記第一熱硬化性樹脂材料(A1)と前記粉砕物(B)とを混合する混合工程を含む、
熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記混合工程において前記第一熱硬化性樹脂材料(A1)と前記粉砕物(B)とを加熱せずに混合する、
請求項7に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
熱硬化性樹脂(a1)を含む材料を加熱混錬することで前記第一熱硬化性樹脂材料(A1)を作製する工程を更に含む、
請求項7又は8に記載の熱硬化性樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する、
成形品。
【請求項11】
請求項1から6のいずれか一項に記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることで成形品を作製する、
成形品の製造方法。
【請求項12】
前記熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させる際の温度は130℃以上180℃以下である、
請求項11に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、熱硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物の製造方法、成形品及び成形品の製造方法に関し、詳細には、熱硬化性樹脂材料を含有する熱硬化性樹脂組成物、この熱硬化性樹脂組成物の製造方法、この熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて作製される成形品、及びこの成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱硬化性樹脂成形材料を成形する時に発生するスプルー、ランナー又は成形不良品を粉砕し、この粉砕物を成形材料素材に添加し、加熱を行うことなく混錬して作製する熱硬化性樹脂成形材料について開示されている。さらに特許文献1には、スプルー、ランナーあるいは成形不良品は従来不要物として廃棄されていたが、これを粉末化し、配合することによってロール混練等のような加熱をしながら混練を行うことなく、目的とする流れ特性を有する成形材料を得ることができると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の調査によると、特許文献1に開示されているように熱硬化性樹脂材料の粉砕物を含有する材料から成形品を作製すると、成形品の外観及び衝撃強度が損なわれる場合がある。
【0005】
本開示の課題は、成形品を作製するために使用でき、かつ熱硬化性樹脂材料の硬化物を含有しながら、成形品の外観及び衝撃強度を損ないにくい熱硬化性樹脂組成物、この熱硬化性樹脂組成物の製造方法、この熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて作製する成形品、及びこの成形品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)を含有する熱硬化性樹脂組成物であり、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を更に含有する。前記粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下である。前記熱硬化性樹脂組成物に対する前記粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である。
【0007】
本開示の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、前記熱硬化性樹脂組成物を製造する方法であり、前記第一熱硬化性樹脂材料(A1)と前記粉砕物(B)とを混合する混合工程を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る成形品は、前記熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する。
【0009】
本開示の一態様に係る成形品の製造方法では、前記熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることで成形品を作製する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様によると、成形品を作製するために使用でき、熱硬化性樹脂材料の硬化物を含有しながら、成形品の外観及び衝撃強度を損ないにくい熱硬化性樹脂組成物、この熱硬化性樹脂組成物の製造方法、この熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることで作製する成形品、及びこの成形品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお本開示は下記の実施形態に限られない。下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一部に過ぎず、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
本開示の一態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)を含有し、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を更に含有する。粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下である。熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である。
【0013】
本実施形態によれば、熱硬化性樹脂組成物が粉砕物(B)を含有するにもかかわらず、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。
【0014】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物の、より具体的な構成について説明する。
【0015】
上述の通り、熱硬化性樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)及び第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を含有する。
【0016】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)は、例えば、熱硬化性樹脂(a1)(以下第一熱硬化性樹脂(a1)ともいう)を含有する。
【0017】
第一熱硬化性樹脂(a1)はモノマー、オリゴマー、及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。第一熱硬化性樹脂(a1)は主剤と、主剤と反応する硬化剤とを含有してもよい。
【0018】
第一熱硬化性樹脂(a1)の詳細については後に改めて説明する。
【0019】
第一熱硬化性樹脂(a1)は部分的に架橋していてもよい。この場合、熱硬化性樹脂組成物から作製される成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。これは、熱硬化性樹脂組成物が成形される際に、部分的に架橋した第一熱硬化性樹脂(a1)を含有した第一熱硬化性樹脂材料(A1)が、熱硬化性樹脂組成物中の第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の分散性を低下しにくくすることができるからであると、推察される。粉砕物(B)の分散性が低下しにくいのは、第一熱硬化性樹脂材料(A1)に含まれる第一熱硬化性樹脂(a1)が部分的に架橋していると、熱硬化性樹脂組成物が加熱成形される際に、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が過度に低下しにくくなり、そのため、粉砕物(B)が熱硬化性樹脂組成物に均一に分散して取り込まれた状態を保ちつつ、熱硬化性樹脂組成物が流動しやすくなるからであると、考えられる。
【0020】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)は、充填材、及びその他添加剤よりなる群から選択される少なくとも一種を含有してもよい。
【0021】
充填材は、成形品の要求特性を満たすために含有される。充填材は木粉、くるみ殻粉、パルプ、綿フロック、及び大豆粉等の有機物、並びにタルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土、炭酸カルシウム、クレー及びガラス繊維等の無機物などよりなる群から選択される少なくとも一種を含有してもよい。また、充填剤は、衝撃強度、若しくは線膨張係数等の成形品の要求性能に合わせて、適宜最適な配合量とすることができ、一定の値に限定されるものではない。
【0022】
添加剤は、例えば可塑剤、潤滑剤及び着色剤等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0023】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度は100Pa・s以上5000Pa・s以下であることが好ましい。第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が100Pa・s以上であれば、熱硬化性樹脂組成物から作製される成形品の外観及び衝撃強度が、損なわれにくくなる。これは、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が100Pa・s以上であれば、熱硬化性樹脂組成物が成形される際に、熱硬化性樹脂組成物中の第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の分散性が低下しにくくなるからであると、推察される。粉砕物(B)の分散性が低下しにくいのは、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が100Pa・s以上に調整されると、熱硬化性樹脂組成物が加熱成形される際に、粉砕物(B)が、熱硬化性樹脂組成物に均一に分散して取り込まれた状態を保ちつつ、熱硬化性樹脂組成物が流動しやすいから、と考えられる。また第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度は、例えば、第一熱硬化性樹脂(a1)の部分架橋の程度で調整される。第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が5000Pa・s以下であれば、熱硬化性樹脂組成物が成形される際に、熱硬化性樹脂組成物の流動性が良くなるため、成形性が損なわれにくくなる。第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度は、例えば、熱硬化性樹脂(a1)の部分架橋の程度で調整される。第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度は200Pa・s以上がより好ましい。第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度は2000Pa・s以下がより好ましい。
【0024】
また第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度はフローテスター(株式会社島津製作所製)を使用し、測定される。第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度の測定条件は、測定時の温度は150℃、荷重450kgfであり、Φ1.0×10mmのノズルを通過する際の溶融粘度を測定する。
【0025】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)は、例えば、熱硬化性樹脂(a2)(以下第二熱硬化性樹脂(a1)ともいう)を含有する。
【0026】
第二熱硬化性樹脂(a2)はモノマー、オリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。第二熱硬化性樹脂(a2)は主剤と、主剤と反応する硬化剤とを含有してもよい。
【0027】
また第二熱硬化性樹脂(a2)の詳細については後に改めて説明する。
【0028】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)は、充填材及びその他添加剤から選択される少なくとも一種を含有してもよい。
【0029】
充填材は、成形品の要求特性を満たすために含有される。充填材は木粉、くるみ殻粉、パルプ、綿フロック、大豆粉等の有機物、タルク、マイカ、硫酸バリウム、珪藻土、炭酸カルシウム、クレー及びガラス繊維等の無機物などよりなる群から選択される少なくとも一種を含有してもよい。また、充填剤は、衝撃強度、若しくは線膨張係数等の成形品の要求性能に合わせて、適宜最適な配合量とすることができ、一定の値に限定されるものではない。
【0030】
添加剤は、例えば可塑剤、潤滑剤及び着色剤等よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0031】
上述のとおり、粉砕物(B)の90%粒子径(D90)は300μm以下である。粉砕物(B)の90%粒子径(D90)が300μm以下であることで、熱硬化性樹脂組成物から作製される成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。90%粒子径(D90)は、レーザー回析・散乱法による粒度分布測定結果から得られる、縦軸を積算分率、横軸を粒径とする粒度分布における、積算分率90%での粒径である。粉砕物(B)の90%粒子径(D90)は、190μm以下であることが好ましい。粉砕物(B)の90%粒子径(D90)は、90μm以上であることが好ましい。この場合、成形品を作製する際の生産性の観点から好ましい。
【0032】
また粉砕物(B)の50%粒子径(D50)は250μm以下であることが好ましい。粉砕物(B)の50%粒子径(D50)が250μm以下であれば、熱硬化性樹脂組成物から作製された成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。50%粒子径(D50)は、レーザー回析・散乱法による粒度分布測定結果から得られる、縦軸を積算分率、横軸を粒径とする粒度分布における、積算分率50%での粒径、すなわちメジアン径である。また粉砕物(B)の50%粒子径(D50)は、115μm以下であることが好ましい。粉砕物(B)の50%粒子径(D50)は、60μm以上であることが好ましい。この場合、成形品を作製する際の生産性の観点から好ましい。
【0033】
上述のとおり、熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比は、10.0質量%以下である。このため、熱硬化性樹脂組成物から作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比は、5.0質量%以下であることが好ましい。第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比は、廃材の再利用を促進する観点から0.1質量%以上であることが好ましい。
【0034】
第一熱硬化性樹脂(a1)と第二熱硬化性樹脂(a2)との各々は、例えばユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、及びエポキシ樹脂等よりなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有することが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂組成物から作製される成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。なお、第一熱硬化性樹脂(a1)と第二熱硬化性樹脂(a2)との各々に含まれる樹脂の種類は、前記のみには制限されない。
【0035】
なお、上述のとおり、第一熱硬化性樹脂(a1)と第二熱硬化性樹脂(a2)との各々は、モノマー、オリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。例えばエポキシ樹脂は、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。また、ユリア樹脂は、尿素とホルムアルデヒドとを含むモノマー、並びにこのモノマーが重合して生成したオリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。また、メラミン樹脂は、メラミンとホルムアルデヒドとを含むモノマー、並びにこのモノマーが重合して生成したオリゴマー及びプレポリマーよりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
【0036】
第一熱硬化性樹脂(a1)が含有する樹脂の種類と、第二熱硬化性樹脂(a2)が含有する樹脂の種類とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。第一熱硬化性樹脂(a1)が含有する樹脂の種類と、第二熱硬化性樹脂(a2)が含有する樹脂の種類は同じであることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂組成物から作製される成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。
【0037】
熱硬化性樹脂(a1)と熱硬化性樹脂(a2)との各々は、アミノ樹脂を含有することが好ましい。すなわち、熱硬化性樹脂(a1)と熱硬化性樹脂(a2)との各々は、メラミン樹脂とユリア樹脂とのうち少なくとも一方を含有することが好ましい。この場合、成形品の機械的強度、電気特性、耐水性、及び耐薬品性等の特性が良好になりやすい。
【0038】
熱硬化性樹脂(a1)がユリア樹脂とメラミン樹脂とのうち少なくとも一方を含有し、かつ第一熱硬化性樹脂(a1)が部分的に架橋していれば、特に好ましい。この場合、第一熱硬化性樹脂(a1)が部分的に架橋したことによる作用が、特に発現しやすい。すなわち、成形品の外観及び衝撃強度が特に損なわれにくい。これは、第一熱硬化性樹脂材料(A1)が架橋していないユリア樹脂とメラミン樹脂とのうち少なくとも一方を含有すると、第一熱硬化性樹脂材料(A1)はホルムアルデヒド等の未反応のモノマーを含むため、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度は低くなるが、第一熱硬化性樹脂材料(A1)が部分的に架橋したユリア樹脂とメラミン樹脂とのうち少なくともいずれか一方を含有すれば、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が上昇し、熱硬化性樹脂組成物中に粉砕物(B)が顕著に分散されやすくなるからである、と推察される。
【0039】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)に含まれる成分及び各成分の配合割合と、第二熱硬化性樹脂材料(A2)に含まれる成分及び各成分の配合割合とは、同じであってもよい。この場合、熱硬化性樹脂組成物から作製された成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。
【0040】
熱硬化性樹脂組成物の製造方法について、詳細に説明する。
【0041】
本実施形態では、熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを混合する混合工程を含む。このため、熱硬化性樹脂組成物が粉砕物(B)を含有したとしても、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。
【0042】
熱硬化性樹脂組成物を製造するために、例えば、まず、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)とを準備する。
【0043】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)は、上述のとおり、例えば、熱硬化性樹脂(a1)を含有する。
【0044】
熱硬化性樹脂(a1)は、上述のとおり、部分的に架橋していてもよい。例えば、熱硬化性樹脂(a1)の原料である熱硬化性化合物を加熱しながら混合することで、熱硬化性化合物を部分的に反応させ、部分的に架橋している熱硬化性樹脂(a1)を得ることができる。熱硬化性化合物のうちの全てが反応していなくてもよく、すなわち、熱硬化性樹脂(a1)中に未反応の熱硬化性化合物が含まれていてもよい。熱硬化性化合物は、例えば主剤及び主剤と反応する硬化剤を含有する。例えば、熱硬化性樹脂(a1)がユリア樹脂を含有する場合、熱硬化性化合物は、主剤として尿素を含有し、かつ硬化剤としてホルムアルデヒドを含有する。加熱混合の条件は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)が所望の溶融粘度を有するように適宜調整される。また熱硬化性樹脂(a1)がメラミン樹脂を含有する場合、熱硬化性化合物は、主剤としてメラミンを含有し、かつ硬化剤としてホルムアルデヒドを含有する。加熱混合の条件は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)が所望の溶融粘度を有するように適宜調整される。
【0045】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)は、上述のとおり、充填材とその他添加剤のうち少なくとも一方を含有してもよい。この場合、熱硬化性化合物と、充填材とその他添加剤とのうち少なくとも一方を混合して得られる混合物を加熱混練してもよい。また熱硬化性化合物を加熱混練して得られた熱硬化性樹脂(a1)に充填材とその他添加剤とのうち少なくとも一方を混合してもよい。
【0046】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)は粒状であることが好ましい。すなわち、粒状の第一熱硬化性樹脂材料(A1)を準備することが好ましい。そのため、混合工程の前に、第一熱硬化性樹脂材料(A1)を粉砕して粒状にすることが好ましい。第一熱硬化性樹脂材料(A1)を粉砕する際には、粉砕機等が使用される。粉砕機は、例えば、ローラーミル、ジェットミル及びハンマーミル等よりなる群から選択される。
【0047】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)は、上述のとおり、例えば、熱硬化性樹脂(a2)を含有し、更に必要に応じて充填材とその他添加剤とのうち少なくとも一方を含有する。
【0048】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)は、例えば、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と同じ方法で作製できる。
【0049】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物は、第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化させることで作製できる。この時に発生した硬化物を粉砕することで粉砕物(B)が作製される。硬化物は、例えば、第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化し成形品を作製する時に発生するスプルー、ランナー、カル、バリ及び成形不良品、並びに第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化させて作製する成形品よりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0050】
粉砕物(B)は、粉砕機等を使用して硬化物を粉砕することで得ることができる。粉砕機は、例えば、ローラーミル、ジェットミル及びハンマーミル等よりなる群から選択される。
【0051】
硬化物を粉砕した後、さらに篩がけして粒度を調整することで、粉砕物(B)を作製してもよい。この場合、粉砕物(B)の粒度を、所望の90%粒子径を有し、或いは更に所望の50%粒子径を有するように、調整できる。
【0052】
熱硬化性樹脂組成物の製造方法に含まれる混合工程について、詳細に説明する。
【0053】
本実施形態では、混合工程は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを混合する。
【0054】
本開示の熱硬化性樹脂組成物は、混合工程において第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを加熱せずに混合することが好ましい。この場合、成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。その理由は、次のとおりであると推察される。加熱せずに混合することで、混合工程で熱硬化性樹脂(a1)の熱硬化反応が進みにくくなり、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が過度に高くなりにくくなる。そのため、熱硬化性樹脂組成物の成形性が保たれる。その結果、成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなると考えられる。特に熱硬化性樹脂(a1)が予め部分的に架橋している場合には、熱硬化性樹脂(a1)の架橋の程度が維持されるため、熱硬化性樹脂(a1)の架橋の程度によって調整された第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が変動しにくくなり、熱硬化性樹脂組成物の成形性が保たれながら、かつ粉砕物(B)が熱硬化性樹脂組成物中で分散されやすくなると、考えられる。その結果、成形品の外観及び衝撃強度が特に損なわれにくくなると考えられる。
【0055】
例えば、熱硬化性樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)を混合機やミキサー等を使用して加熱せずに混合することで、作製される。
【0056】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)が粉砕され、粒状である場合、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを加熱せずに混合することで、粒状の第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを含んだ粒状の熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0057】
熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し作製される成形品の製造方法について、詳細に説明する。
【0058】
本開示の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することにより本開示の成形品が作製される。すなわち、本開示の成形品は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)を含有し、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を更に含有する熱硬化性樹脂組成物を熱硬化することにより作製される。
【0059】
成形品は、例えば、熱硬化性樹脂組成物を射出成形、注入成形又は圧縮成形等の公知の成形方法により熱硬化性樹脂を加熱及び加圧をしながら成形することで、得られる。
【0060】
熱硬化性樹脂組成物を成形する際の成形温度は、熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂(a1)の種類に応じて適宜設定することができる。例えば、成形温度は130℃以上180℃以下である。成形温度が130℃以上180℃以下であれば、熱硬化性樹脂組成物から作製される成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。特に、熱硬化性樹脂(a1)がユリア樹脂とメラミン樹脂とのうち少なくとも一方を含む場合、成形温度は130℃以上180℃以下が好ましい。
【0061】
熱硬化性樹脂組成物を成形する際の成形圧力は、5MPa以上800MPa以下が好ましい。
【0062】
本実施形態では、成形時に加熱された熱硬化性樹脂組成物が流動する際に、熱硬化性樹脂組成物内での粉砕物(B)の分散性が良好に維持されやすく、粉砕物(B)の粗密が生じにくい。上述のとおり、熱硬化性樹脂組成物中で熱硬化性樹脂(a1)が部分的に架橋している場合、及び混合工程において第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを加熱せずに混合する場合は、熱硬化性樹脂組成物内で粉砕物(B)の分散性が特に良好に維持されやすい。
【0063】
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物を、第二熱硬化性樹脂材料(A2)とみなし、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の粉砕物を第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、新たな熱硬化性樹脂組成物の製造のために使用することもできる。すなわち、熱硬化性樹脂組成物を再リサイクルすることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて成形品を作製する時に発生するスプルー、ランナー、カル、バリ及び成形不良品、並びに熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて作製する成形品よりなる群から選択される少なくとも一種を、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物とみなす。この硬化物を粉砕して得られた粉砕物(B)を、新たな熱硬化性樹脂組成物を作製するために利用できる。
【実施例0064】
以下、本実施形態の、具体的な実施例について説明する。なお、本実施形態は、下記の実施例のみに制限されるものではない。
【0065】
実施例1
第一熱硬化性樹脂材料(A1)としては、部分的に架橋されたユリア樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度290Pa・s)を用いた。
【0066】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)としては、次のように作製した粉砕物1を用いた。部分的に架橋されたユリア樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度290Pa・s)を150℃で熱硬化させ硬化物を得た。得られた硬化物を粉砕機を用いて粉砕し、篩がけすることで粉砕物1を作製した。このとき得られた粉砕物1は、90%粒子径が190μm、50%粒子径が110μmであった。
【0067】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)と第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)とを粉体混合機を用いて加熱せずに混合することで、熱硬化性樹脂組成物を作製した。熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物1の百分比は、5.0質量%とした。
【0068】
次に得られた熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形することで、縦4.2cm×横7.4cm×高さ0.2cmの成形品を得た。圧縮成形する際の条件は、金型温度150℃、成形時間50秒とした。
【0069】
実施例2
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が85μm、50%粒子径が60μmである粉砕物2を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0070】
実施例3
熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が7.0質量%であることを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0071】
実施例4
熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が10.0質量%であることを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0072】
実施例5
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が85μm、50%粒子径が60μmである粉砕物2を用いたこと、熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が10.0質量%であることとを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0073】
実施例6
第一熱硬化性樹脂材料(A1)としては、部分的に架橋されたメラミン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度1288Pa・s)を用いた。
【0074】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)としては、次のように作製した粉砕物1を用いた。部分的に架橋されたユリア樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度290Pa・s)を150℃で熱硬化させ硬化物を得た。得られた硬化物を粉砕機を用いて粉砕し、篩がけすることで粉砕物1を作製した。このとき得られた粉砕物1は、90%粒子径が190μm、50%粒子径が110μmであった。
【0075】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)と第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)とを粉体混合機を用いて加熱せずに混合することで、熱硬化性樹脂組成物を作製した。熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物1の百分比は、5.0質量%とした。
【0076】
次に得られた熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形することで縦3.4cm×横6.2cm×高さ1.6cmの成形品を得た。圧縮成形する際の条件は、金型温度150℃、成形時間50秒とした。
【0077】
実施例7
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が85μm、50%粒子径が60μmである粉砕物2を用いたことを除いて、実施例6と同様の方法で成形品を作製した。
【0078】
実施例8
熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が10.0質量%であることを除いて、実施例6と同様の方法で成形品を作製した。
【0079】
実施例9
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が85μm、50%粒子径が60μmである粉砕物2を用いたこと、熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が10.0質量%であることとを除いて、実施例6と同様の方法で成形品を作製した。
【0080】
実施例10
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が299μm、50%粒子径が217μmである粉砕物4を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0081】
実施例11
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が300μm、50%粒子径が220μmである粉砕物5を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0082】
比較例1
第一熱硬化性樹脂材料(A1)としては、部分的に架橋されたユリア樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度290Pa・s)を用いた。
【0083】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)は混合せず、第一熱硬化性樹脂材料(A1)をそのまま、熱硬化性樹脂組成物として使用した。
【0084】
次に得られた熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形することで、縦4.2cm×横7.4cm×高さ0.2cmの成形品を得た。圧縮成形する際の条件は、金型温度150℃、成形時間50秒とした。
【0085】
比較例2
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が420μm、50%粒子径が260μmである粉砕物3を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0086】
比較例3
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が420μm、50%粒子径が260μmである粉砕物3を用いたこと、及び熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が10.0質量%であることとを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0087】
比較例4
熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が20.0質量%であることを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0088】
比較例5
第一熱硬化性樹脂材料(A1)としては、部分的に架橋されたメラミン樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度1288Pa・s)を用いた。
【0089】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)は混合せず、第一熱硬化性樹脂材料(A1)をそのまま熱硬化性樹脂組成物として使用した。
【0090】
次に得られた熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形することで縦3.4cm×横6.2cm×高さ1.6cmの成形品を得た。圧縮成形する際の条件は、金型温度150℃、成形時間50秒とした。
【0091】
比較例6
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が420μm、50%粒子径が260μmである粉砕物3を用いたことを除いて、実施例6と同様の方法で成形品を作製した。
【0092】
比較例7
熱硬化性樹脂組成物に対する第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の百分比が20.0質量%であることを除いて、実施例6と同様の方法で成形品を作製した。
【0093】
比較例8
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)として、90%粒子径が303μm、50%粒子径が224μmである粉砕物6を用いたことを除いて、実施例1と同様の方法で成形品を作製した。
【0094】
(粉砕物(B)の偏在確認結果)
成形品中で粉砕物(B)が偏在しているかどうかについては次の方法で確認を行った。
第一熱硬化性樹脂材料(A1)としては、部分的に架橋されたユリア樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度112Pa・s)を用いた。
【0095】
第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)としては、次のように作製した。部分的に架橋されたユリア樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物(150℃での溶融粘度290Pa・s)を、150℃で熱硬化させ硬化物を得た。得られた硬化物を粉砕機を用いて粉砕し、篩がけすることで粉砕物(B)を作製した。このとき得られた粉砕物(B)は、90%粒子径が190μm、50%粒子径が110μmであった。
【0096】
第一熱硬化性樹脂材料(A1)と第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)とを粉体混合機を用いて加熱せずに混合することで、熱硬化性樹脂組成物を作製した。熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比は、5.0質量%とした。
【0097】
次に得られた熱硬化性樹脂組成物を圧縮成形することで、縦6.9cm×横4.2cm×高さ1.8cmの成形品を得た。圧縮成形する際の条件は、金型温度150℃、成形時間50秒とした。
【0098】
作製した成形品の上面及び成形品の側面の写真を撮影し、写真の画像データを得た。画像データを、粉砕物(B)によって緑色になっている部分は黒(0)、それ以外の部分に関しては白(1)に変換されるように二値化処理を行った。二値化処理を行った画像データを用いて黒の部分の比率を計算した。なお、黒の部分の比率は、成形品の面積に対する粉砕物(B)が占めている領域の面積の百分比を算出することによって求められる。作製した成形品に関しては、成形品の上面の黒の部分の比率が60%であり、成形品の側面の黒の部分の比率が60%であった。
【0099】
以上の結果を下記表1に示す。上面と側面との間の、黒の部分の面積比率の差が小さい場合には、分散性がよいと判断できる。
【0100】
(外観検査及び衝撃強度試験結果)
(1)外観検査
各実施例及び比較例で得られた成形品について、成形品の表面に粒が見えるかどうかを目視で確認した。結果を以下の表記方法で示す。
「A」:成形品の表面に粒が見えない
「B」:成形品の表面に注視すれば粒が見える
「C」:成形品の表面にはっきりと粒が見える
(2)衝撃強度
各実施例及び比較例で得られた成形品について、デジタル衝撃試験機DG-UB(株式会社東洋精機製作所製)にてシャルピー衝撃強度を測定した。試験条件はJIS K7111―1を参考にした。
【0101】
以上の結果を下記表2に示す。ユリア樹脂を含有し、かつ第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下であり、熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である実施例1から5、10、及び11では、熱硬化性樹脂組成物中の粉砕物(B)の90%粒子径が300μmを超える比較例2及び3、あるいは熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%を超える比較例4と比べても、外観及び衝撃強度が損なわれておらず、かつ熱硬化性樹脂組成物中に粉砕物(B)を含有しない比較例1と同程度の評価が得られた。
【0102】
またメラミン樹脂を含有し、かつ第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下であり、熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である実施例6から9では、熱硬化性樹脂組成物中の粉砕物(B)の90%粒子径が300μmを超える比較例6、あるいは熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%を超える比較例7と比べても、外観及び衝撃強度が損なわれておらず、かつ熱硬化性樹脂組成物中に粉砕物(B)を含有しない比較例5と同程度の評価が得られた。
【0103】
【0104】
【0105】
上記の実施形態及び実施例から明らかなように、本開示の第一の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一熱硬化性樹脂材料(A1)を含有する熱硬化性樹脂組成物であり、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物の粉砕物(B)を更に含有し、粉砕物(B)の90%粒子径が300μm以下であり、熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、10.0質量%以下である。
【0106】
第一の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。
【0107】
本開示の第二の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一の態様において、粉砕物(B)の50%粒子径が250μm以下である。
【0108】
第二の態様によると、熱硬化性樹脂組成物中で粉砕物(B)がより分散しやすくなる。
【0109】
本開示の第三の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一又は第二の態様において、第二熱硬化性樹脂材料(A2)の硬化物が、第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化させて成形品を作製する時に発生するスプルー、ランナー、カル、バリ及び成形不良品、並びに第二熱硬化性樹脂材料(A2)を熱硬化させて作製する成形品よりなる群から選択される少なくとも一種である。
【0110】
第三の態様によると、廃材の再利用が可能となる。
【0111】
本開示の第四の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一から第三のいずれか一の態様において、熱硬化性樹脂組成物に対する粉砕物(B)の百分比が、5.0質量%以下である。
【0112】
第四の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。
【0113】
本開示の第五の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一から第四のいずれか一の態様において、第一熱硬化性樹脂材料(A1)は熱硬化性樹脂(a1)を含有し、第二熱硬化性樹脂材料(A2)は熱硬化性樹脂(a2)を含有し、熱硬化性樹脂(a1)と熱硬化性樹脂(a2)との各々は、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含む。
【0114】
第五の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。
【0115】
本開示の第六の態様に係る熱硬化性樹脂組成物は、第一から第五のいずれか一の態様において、第一熱硬化性樹脂材料(A1)は熱硬化性樹脂(a1)を含有し、熱硬化性樹脂(a1)は部分的に架橋している。
【0116】
第六の態様によると、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が、好ましい値に調整される。
【0117】
本開示の第七の態様に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、第一から第六のいずれか一の態様の熱硬化性樹脂組成物を製造する方法であり、第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを混合する混合工程を含む。
【0118】
第七の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。
【0119】
本開示の第八の態様に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、第七の態様において、混合工程において第一熱硬化性樹脂材料(A1)と粉砕物(B)とを加熱せずに混合する。
【0120】
第八の態様によると、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が、過度に高くなりにくくなる。
【0121】
本開示の第九の態様に係る熱硬化性樹脂組成物の製造方法は、第七又は第八の態様において、熱硬化性樹脂(a1)を含む材料を加熱混錬することで第一熱硬化性樹脂材料(A1)を作製する工程を更に含む。
【0122】
第九の態様によると、第一熱硬化性樹脂材料(A1)の溶融粘度が、好ましい値に調整される。
【0123】
本開示の第十の態様に係る成形品は、第一から第六のいずれか一の態様の熱硬化性樹脂組成物の硬化物を含有する。
【0124】
第十の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。
【0125】
本開示の第十一の態様に係る成形品の製造方法は、第一から第六のいずれか一の態様の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させることで成形品を作製する。
【0126】
第十一の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が損なわれにくくなる。
【0127】
本開示の第十二の態様に係る成形品の製造方法は、第十一の態様において、熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させる際の温度は130℃以上180℃以下である。
【0128】
第十二の態様によると、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて作製された成形品の外観及び衝撃強度が、より損なわれにくくなる。