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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
  • 特開-空気入りタイヤ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087147
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20230616BHJP
   B60C 13/00 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C13/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201347
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新濱 猛司
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA39
3D131BA02
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB04
3D131BC31
3D131BC34
3D131BC36
3D131DA34
3D131DA43
3D131EA02U
3D131KA02
(57)【要約】
【課題】ショルダー部の偏摩耗や故障の発生を抑制できる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】一対のビード部の間に設けられたカーカスと、そのカーカスのタイヤ径方向外側に積層されたベルト層と、前記ベルト層の端部と前記カーカスとの間に介在したクッションゴムと、を備える。クッションゴムは、前記ベルト層の最外端よりもタイヤ軸方向外側の位置からタイヤ軸方向内側に且つタイヤ径方向内側に向かって延びる界面と、前記界面のタイヤ軸方向内側に位置する内側ゴムと、前記界面のタイヤ軸方向外側に位置する外側ゴムと、を含む。100%伸長時モジュラスは、トレッドの外表面を形成するキャップゴム、前記内側ゴム、前記外側ゴムの順に高い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部と、
一対の前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
一対の前記サイドウォールの各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッドと、
一対の前記ビード部の間に設けられたカーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に積層されたベルト層と、
前記ベルト層の端部と前記カーカスとの間に介在したクッションゴムと、を備え、
前記クッションゴムは、前記ベルト層の最外端よりもタイヤ軸方向外側の位置からタイヤ軸方向内側に且つタイヤ径方向内側に向かって延びる界面と、前記界面のタイヤ軸方向内側に位置する内側ゴムと、前記界面のタイヤ軸方向外側に位置する外側ゴムと、を含み、
100%伸長時モジュラスが、前記トレッドの外表面を形成するキャップゴム、前記内側ゴム、前記外側ゴムの順に高い空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記キャップゴムの100%伸長時モジュラスと、前記外側ゴムの100%伸長時モジュラスとの差が1.5MPa以上である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記内側ゴムの100%伸長時モジュラスは、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に積層されたベースゴムの100%伸長時モジュラスよりも大きい、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記外側ゴムの100%伸長時モジュラスは、前記サイドウォールの外表面を形成するサイドウォールゴムの100%伸長時モジュラスよりも小さい、請求項1~3いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記界面は、タイヤ径方向に対して80±5度の角度で傾斜して延びている、請求項1~4いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ベルト層の最外端と、前記クッションゴムの外周面における前記界面の位置とを結ぶ仮想直線を考えたとき、前記界面は、前記仮想直線に対して30±10度の角度で傾斜して延びている、請求項1~5いずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベルト層の端部とカーカスとの間にクッションゴムが介在した空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベルト層の端部とカーカスとの間にクッションゴムを介在させた空気入りタイヤが記載されている。このタイヤでは、クッションゴムのタイヤ軸方向外側に、そのクッションゴムよりも高い硬度を有する補強ゴムを配設し、それによってトレッドのショルダー部の故障の防止を図っている。しかし、トレッドゴムの物性によっては、タイヤ転動時にショルダー部に作用した力が十分に分散されないため、ショルダー部がセンター部に優先して早期に摩耗する偏摩耗を生じたり、ベルト層の端部に歪みが集中することによるセパレーションなどの故障を生じたりする恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-026111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ショルダー部の偏摩耗や故障の発生を抑制できる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の空気入りタイヤは、
一対のビード部と、
一対の前記ビード部の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォールと、
一対の前記サイドウォールの各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッドと、
一対の前記ビード部の間に設けられたカーカスと、
前記カーカスのタイヤ径方向外側に積層されたベルト層と、
前記ベルト層の端部と前記カーカスとの間に介在したクッションゴムと、を備え、
前記クッションゴムは、前記ベルト層の最外端よりもタイヤ軸方向外側の位置からタイヤ軸方向内側に且つタイヤ径方向内側に向かって延びる界面と、前記界面のタイヤ軸方向内側に位置する内側ゴムと、前記界面のタイヤ軸方向外側に位置する外側ゴムと、を含み、
100%伸長時モジュラスが、前記トレッドの外表面を形成するキャップゴム、前記内側ゴム、前記外側ゴムの順に高い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の空気入りタイヤの一例を概略的に示すタイヤ子午面に沿った半断面図
図2図1の要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の空気入りタイヤの実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0008】
図1,2に示す空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、一対のビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール2と、一対のサイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3と、一対のビード部1の間に設けられたカーカス4と、カーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト層5と、ベルト層5の端部とカーカス4との間に介在したクッションゴム6とを備える。
【0009】
ここで、タイヤ径方向は、タイヤTの直径に沿った方向であり、図面の上下方向に相当する。図1,2において上側がタイヤ径方向外側となり、下側がタイヤ径方向内側となる。タイヤ軸方向は、タイヤTの回転軸と平行な方向であり、図面の左右方向に相当する。タイヤ赤道面TCに近付く側(図1,2では左側)がタイヤ軸方向内側となり、タイヤ赤道面TCから離れる側(図1,2では右側)がタイヤ軸方向外側となる。タイヤ周方向は、タイヤTの回転軸周りの方向である。
【0010】
ビード部1には、環状のビードコア1aが埋設されている。ビードコア1aは、鋼線などの収束体をゴムで被覆して形成されている。ビードコア1aのタイヤ径方向外側には、ビードフィラー1bが配置されている。ビードフィラー1bは、ビードコア1aからタイヤ径方向外側に延びた断面三角形状のゴムにより形成されている。ビードコア1a及びビードフィラー1bのタイヤ軸方向外側には、ビード部1の外表面を形成するリムストリップゴム11が設けられている。
【0011】
カーカス4は、一対のビード部1の間に跨ってトロイド状に延在している。カーカス4は、ビードコア1a及びビードフィラー1bを挟み込むようにしてタイヤ軸方向の内側から外側に巻き上げられている(即ち、ターンアップされている)。換言すると、カーカス4は、トレッド3からサイドウォール2を経てビード部1に至る本体部に、ビードコア1a及びビードフィラー1bのタイヤ軸方向外側に配置された巻き上げ部を一連に設けてある。カーカス4のタイヤ軸方向外側には、サイドウォール2の外表面を形成するサイドウォールゴム12が設けられている。
【0012】
カーカス4は、カーカスコードをゴム被覆して形成されたカーカスプライにより構成されている。カーカスコードの材料には、スチールなどの金属や、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、アラミドなどの有機繊維が好ましく用いられる。カーカスコードは、タイヤ周方向に対して略直交する方向(例えば、タイヤ周方向に対して75~90度の角度となる方向)に引き揃えられている。本実施形態では、カーカス4を構成するカーカスプライが一枚である例を示すが、二枚以上であっても構わない。タイヤ内面には、カーカス4に沿ってインナーライナー14が配設されている。
【0013】
ベルト層5は、ベルトコードをゴム被覆して形成された複数枚のベルトプライにより構成されている。ベルトコードの材料には、スチールが好ましく用いられる。本実施形態では、ベルト層5が四枚のベルトプライ51~54で構成されている例を示す。このうちワーキングベルトとして機能するベルトプライ52,53は、ベルトコードがタイヤ周方向に対して20~30度の傾斜角度で引き揃えられ、該ベルトコードがプライ間で互いに逆向きに交差するように配置されている。尚、ベルト層5を構成するベルトプライの枚数は、これに限られない。
【0014】
ベルト層5のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム13が設けられている。トレッドゴム13には、周方向溝15を含む溝部が設けられ、要求されるタイヤ性能や使用条件に応じたトレッドパターンが形成されている。トレッドゴム13は、トレッド3の外表面を形成するキャップゴム13aと、そのキャップゴム13aのタイヤ径方向内側に積層されたベースゴム13bとを有する。本実施形態では、サイドウォールゴム12のタイヤ径方向外側の端部がトレッドゴム13の側方部に載せられるSWOT(sidewall on tread)構造が採用されている。
【0015】
クッションゴム6は、いわゆるバットレスに配設されている。バットレスは、サイドウォール2のタイヤ径方向の外側部分に相当し、平坦な舗装路での通常走行時には接地しない部位である。クッションゴム6は、ベルト層5の端部とカーカス4とで挟まれつつ、ベルト層5よりもタイヤ軸方向外側にはみ出し、ベルト層5の端部(更に言えば、後述する最外端5Eを含むベルトプライ52の端)にタイヤ径方向内側から接している。クッションゴム6は、タイヤ赤道面TCを挟んで一対で設けられている。即ち、図1において図示しない側のバットレスにも同様のクッションゴム6が配設されている。
【0016】
クッションゴム6は、三日月状(または台形状)の断面形状を有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。クッションゴム6のタイヤ軸方向内側端6aは、カーカス4からベルト層5が離れ始める箇所に相当する。クッションゴム6のタイヤ軸方向外側端6bは、カーカス4からサイドウォールゴム12が離れ始める箇所に相当する。クッションゴム6の厚みは、内側端6aからタイヤ軸方向外側に向かって漸増するとともに、外側端6bからタイヤ軸方向内側に向かって漸増している。このクッションゴム6の厚みは、カーカス4の外周面の法線方向に沿って測定される。
【0017】
図2に拡大して示すように、クッションゴム6は、界面6cと、その界面6cのタイヤ軸方向内側に位置する内側ゴム61と、その界面6cのタイヤ軸方向外側に位置する外側ゴム62とを含む。界面6cは、ベルト層5の最外端5Eよりもタイヤ軸方向外側の位置P1からタイヤ軸方向内側に且つタイヤ径方向内側に向かって延びている。ベルト層5の最外端5Eは、ベルトプライ51~54のうち最も幅広なベルトプライ52のタイヤ軸方向外側端である。界面6cは、クッションゴム6の外周面における位置P1から内周面における位置P2まで延びてクッションゴム6を分割している。本実施形態では、クッションゴム6が内側ゴム61と外側ゴムと62との二層で構成されている。
【0018】
このタイヤTでは、100%伸長時モジュラス(以下、単に「モジュラス」と呼ぶことがある)が、キャップゴム13a、内側ゴム61、外側ゴム62の順に高い。即ち、キャップゴム13aのモジュラスは内側ゴム61のモジュラスよりも大きく、内側ゴム61のモジュラスは外側ゴム62のモジュラスよりも大きい。モジュラス(M100)は、JISK6251に準拠した25℃での引張試験(3号ダンベルを使用)により100%伸長時の引張応力として求められる。
【0019】
上記のモジュラスの関係を満たすことにより、タイヤ転動時にショルダー部に作用した力を適切に分散して接地圧の均一化を促し、ショルダー部の偏摩耗の発生を抑制できる。それでいて、クッションゴム6の界面6cが、最外端5Eよりもタイヤ軸方向外側の位置P1からタイヤ軸方向内側に且つタイヤ径方向内側に向かって延びることにより、ベルト層5の端部に作用する歪みを緩和し、セパレーションなどの故障の発生を抑制できる。これに対し、界面6cの位置P1が、ベルト層5の端部か、それよりもタイヤ軸方向内側にある場合は、界面6c(及びベルト層5の端部)に歪みが集中することによる故障の発生が懸念される。
【0020】
ショルダー部の歪みエネルギー密度を低く抑える観点から、キャップゴム13aと外側ゴム62とのモジュラス差を十分に確保することが好ましい。具体的には、キャップゴム13aのモジュラスと、外側ゴム62のモジュラスとの差が1.5MPa以上であることが好ましく、2.0MPa以上であることがより好ましい。キャップゴム13aと内側ゴム61とのモジュラス差は、例えば1.0MPa以上である。内側ゴム61と外側ゴム62とのモジュラス差は、例えば0.8MPa以上である。キャップゴム13aのモジュラスは、例えば2.7~3.7MPaである。内側ゴム61のモジュラスは、例えば2.5~3.3MPaである。外側ゴム62のモジュラスは、例えば1.2~2.2MPaである。
【0021】
内側ゴム61のモジュラスを適度に大きく確保する観点から、内側ゴム61のモジュラスは、ベースゴム13bのモジュラスよりも大きいことが好ましい。内側ゴム61とベースゴム13bとのモジュラス差は、例えば1.0MPa以上である。また、外側ゴム62のモジュラスを適度に小さく確保する観点から、外側ゴム62のモジュラスは、サイドウォールゴム12のモジュラスよりも小さいことが好ましい。サイドウォールゴム12と外側ゴム62とのモジュラス差は、例えば0.4MPa以上である。更に、ベースゴム13bのモジュラスは、サイドウォールゴム12のモジュラスよりも大きいことが好ましい。本実施形態では、モジュラスが、キャップゴム13a、内側ゴム61、ベースゴム13b、サイドウォールゴム12、外側ゴム62の順に高い例を示す。
【0022】
本実施形態では、ベルト層5の端部にパッドゴム7が設けられている。パッドゴム7は、ベルトプライ51~54のうち最も幅広なベルトプライ52と、そのタイヤ径方向外側に積層されたベルトプライ53との間に介在している。パッドゴム7は、クッションゴム6に接しておらず、クッションゴム6とは別個の部材として設けられている。パッドゴム7は、三日月状(または台形状)の断面形状を有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。パッドゴム7のモジュラスは、キャップゴム13aのモジュラスよりも大きい。かかるパッドゴム7を設けることにより、ベルト層5の端部に作用する歪みを軽減する効果が得られる。
【0023】
界面6cは、タイヤ径方向に対して80±5度の角度θ1で傾斜して延びていることが好ましい。この角度θ1が75度以上であることにより、ショルダー部に作用するタイヤ径方向の力に対する界面6cでの接着強度を確保しやすい。また、角度θ1が85度以下であることにより、内側ゴム61のボリュームを適度に確保するうえで都合がよい。界面6cは、位置P1を通るクッションゴム6の外周面の法線L1に対してタイヤ軸方向内側に傾斜していることが好ましい。
【0024】
ベルト層5の最外端5Eと、クッションゴム6の外周面における界面6cの位置P1とを結ぶ仮想直線L2を考えたとき、界面6cは、その仮想直線L2に対して30±10度の角度θ2で傾斜して延びていることが好ましく、30±5度の角度θ2で傾斜して延びていることがより好ましい。この角度θ2が20度以上であることにより、タイヤ径方向に沿ってショルダー部に作用する力に対する界面6cでの接着強度を確保しやすい。また、角度θ2が40度以下であることにより、内側ゴム61のボリュームを適度に確保するうえで都合がよい。
【0025】
クッションゴム6の外周面における界面6cの位置P1は、クッションゴム6の外周面(クッションゴム6とベースゴム13bとの界面)に沿ってベルト層5の最外端5Eからタイヤ軸方向外側に3~10mm離れていることが好ましい。これらが3mm以上で離れていることにより、ベルト層5の端部や界面6cに歪みが集中することによる故障の発生を抑えるうえで都合がよい。また、これらが10mm以下で離れていることにより、外側ゴム62のボリュームを適度に確保するうえで都合がよい。
【0026】
クッションゴム6の外周面における界面6cの位置P1は、トレッド端TEを通ってタイヤ径方向に延びる直線L3上に、または、その直線L3よりもタイヤ軸方向外側に配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、界面6cの位置P1がベルト層5の端部から適度に離して配置されるので、ベルト層5の端部や界面6cに歪みが集中することによる故障の発生を抑えるうえで都合がよい。
【0027】
本実施形態では、タイヤ子午面に沿った断面において界面6cが直線状に延びる例を示したが、これに限られず、界面6cが緩やかに湾曲していても構わない。その場合、上述した界面6cの傾斜角度などは、クッションゴム6の外周面における位置P1と内周面における位置P2とを結ぶ直線に基づいて求められる。また、そのような湾曲した界面6cは、タイヤ子午面に沿った断面において、タイヤ径方向外側に向かって凸となる円弧状に延びることが好ましい。
【0028】
本明細書で延べた形状や寸法などは、特に断らない限り、タイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態に基づくものである。正規リムとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAにおける「標準リム」、TRAまたはETRTOにおける「Measuring Rim」である。正規内圧とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAにおける「最高空気圧」、TRAにおける表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、またはETRTOにおける「INFLATION PRESSURE」である。
【0029】
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、一対のビード部1の各々からタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール2と、一対のサイドウォール2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド3と、一対のビード部1の間に設けられたカーカス4と、カーカス4のタイヤ径方向外側に積層されたベルト層5と、ベルト層5の端部とカーカス4との間に介在したクッションゴム6と、を備える。クッションゴム6は、ベルト層5の最外端5Eよりもタイヤ軸方向外側の位置P1からタイヤ軸方向内側に且つタイヤ径方向内側に向かって延びる界面6cと、界面6cのタイヤ軸方向内側に位置する内側ゴム61と、界面6cのタイヤ軸方向外側に位置する外側ゴム62とを含む。100%伸長時モジュラスは、トレッド3の外表面を形成するキャップゴム13a、内側ゴム61、外側ゴム62の順に高い。かかる構成によれば、トレッド3のショルダー部に作用した力を適切に分散して接地圧の均一化を促し、ショルダー部の偏摩耗の発生を抑制できる。また、ベルト層5の端部に作用する歪みを緩和し、ショルダー部におけるセパレーションなどの故障の発生を抑制できる。
【0030】
キャップゴム13aの100%伸長時モジュラスと、外側ゴム62の100%伸長時モジュラスとの差が1.5MPa以上であることが好ましい。これにより、クッションゴム6による歪み緩和作用を高めて、ショルダー部の歪みエネルギー密度を低く抑え、改善効果を向上することができる。
【0031】
内側ゴム61のモジュラスを適度に大きく確保する観点から、内側ゴム61の100%伸長時モジュラスは、キャップゴム13aのタイヤ径方向内側に積層されたベースゴム13bの100%伸長時モジュラスよりも大きいことが好ましい。
【0032】
外側ゴム62のモジュラスを適度に小さく確保する観点から、外側ゴム62の100%伸長時モジュラスは、サイドウォール2の外表面を形成するサイドウォールゴム12の100%伸長時モジュラスよりも小さいことが好ましい。
【0033】
界面6cは、タイヤ径方向に対して80±5度の角度θ1で傾斜して延びていることが好ましい。かかる構成によれば、ショルダー部に作用するタイヤ径方向の力に対する界面6cでの接着強度を確保しやすく、それでいて内側ゴム61のボリュームを適度に確保するうえで都合がよい。
【0034】
ベルト層5の最外端5Eと、クッションゴム6の外周面における界面6cの位置P1とを結ぶ仮想直線L2を考えたとき、界面6cは、仮想直線L2に対して30±10度の角度θ2で傾斜して延びていることが好ましい。かかる構成によれば、ショルダー部に作用するタイヤ径方向の力に対する界面6cでの接着強度を確保しやすく、それでいて内側ゴム61のボリュームを適度に確保するうえで都合がよい。
【0035】
空気入りタイヤTは、上記の如き作用を奏してショルダー部の偏摩耗や故障の発生を抑制できることから、トラックやバス、産業車両、建設車両などの車両重量が重い車両に使用される重荷重用空気入りタイヤとして特に有用である。但し、これに限られず、本開示の空気入りタイヤは、乗用車やライトトラックなどに用いられる各種タイヤとして採用することができる。
【0036】
本開示の空気入りタイヤは、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
4 カーカス
5 ベルト層
5E 最外端
6 クッションゴム
6c 界面
12 サイドウォールゴム
13a キャップゴム
13b ベースゴム
61 内側ゴム
62 外側ゴム
L2 仮想直線
図1
図2