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特開2023-87405温室効果ガス排出量算出装置、プログラム、及び温室効果ガス排出量算出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087405
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】温室効果ガス排出量算出装置、プログラム、及び温室効果ガス排出量算出方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230616BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201764
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 博一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 孝平
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼澤 宇史
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 麻由香
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】商材の温室効果ガス排出量を把握できるようにする。
【解決手段】材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、所定の商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出部と、前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出部と、前記材料対応排出量算出部が算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出部が算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出部とを備えて温室効果ガス排出量算出装置を構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出部と、
前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出部と、
前記材料対応排出量算出部が算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出部が算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出部と
を備える温室効果ガス排出量算出装置。
【請求項2】
前記材料対応排出量算出部は、算出対象の材料が複数の材料を成分として含むものである場合に、前記複数の材料ごとの前記温室効果ガス排出量の標準値に基づいて前記材料対応排出量を算出する
請求項1に記載の温室効果ガス排出量算出装置。
【請求項3】
前記工程対応排出量算出部は、1の工程における不良率に基づいて、前記1の工程の次の工程における前記材料の加工量を補正し、前記次の工程にて補正された加工量の材料の加工が行われる場合の工程対応排出量を算出する
請求項1または2に記載の温室効果ガス排出量算出装置。
【請求項4】
前記工程対応排出量算出部は、1の工程における不良率と、前記1の工程に対応する所定の単位数量の加工品の廃棄による温室効果ガス排出量を示す廃棄対応単位排出量情報とに基づいて、前記1の工程において発生する不良の加工品の廃棄量に応じた廃棄対応排出量を算出し、
前記商材対応排出量算出部は、前記材料対応排出量と前記工程対応排出量と前記廃棄対応排出量とに基づいて、前記商材対応排出量を算出する
請求項1から3のいずれか一項に記載の温室効果ガス排出量算出装置。
【請求項5】
温室効果ガス排出量算出装置としてのコンピュータを、
材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、所定の商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出部、
前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出部、
前記材料対応排出量算出部が算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出部が算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出部
として機能させるためのプログラム。
【請求項6】
材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、所定の商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出ステップと、
前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出ステップと、
前記材料対応排出量算出ステップが算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出ステップが算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出ステップと
を含む温室効果ガス排出量算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室効果ガス排出量算出装置、プログラム、及び温室効果ガス排出量算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出の削減が求められている状況にある。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン等の温室効果ガスは二酸化炭素に換算することができる。このようなことを背景として、生産設備及び用役設備の運転情報に基づいて、工場設備の二酸化炭素排出量を算出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-186570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、パウチや紙箱などの包装体、包装体に用いられるバリアフィルム、建装材の化粧シート等のような商材としての製品がある。このような商材は、例えば納入先にてさらに内容物が充填されたり建装材に貼り付けられたりすることで商品として販売される。環境問題等の観点から、このような商材についても温室効果ガス排出量を把握できるようにすることが求められている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、商材についての温室効果ガス排出量を把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するための本発明の一態様は、材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、所定の商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出部と、前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出部と、前記材料対応排出量算出部が算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出部が算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出部とを備える温室効果ガス排出量算出装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、温室効果ガス排出量算出装置としてのコンピュータを、材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、所定の商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出部、前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出部、前記材料対応排出量算出部が算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出部が算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出部として機能させるためのプログラムである。
【0008】
また、本発明の一態様は、材料ごとに対応する温室効果ガス排出量の標準値に基づいて、所定の商材の製造に用いられる材料の所定の単位数量に対応する温室効果ガス排出量である材料対応排出量を算出する材料対応排出量算出ステップと、前記商材の製造において所定の単位数量の材料を加工する工程に対応する温室効果ガス排出量を示す工程対応単位排出量情報に基づいて、前記工程により所定の加工量の材料の加工が行われる場合の温室効果ガス排出量である工程対応排出量を算出する工程対応排出量算出ステップと、前記材料対応排出量算出ステップが算出した材料対応排出量と前記工程対応排出量算出ステップが算出した工程対応排出量とに基づいて、前記材料が前記工程を経て製造される商材に対応する商材対応排出量を算出する商材対応排出量算出ステップとを含む温室効果ガス排出量算出方法である。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、商材についての温室効果ガス排出量を把握できるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態におけるGHG排出量算出装置によるGHG排出量の算出についての基本概念を示す図である。
図2】本実施形態におけるGHG排出量算出装置の機能構成例を示す図である。
図3】本実施形態における標準材料対応排出量情報の一例を示す図である。
図4】本実施形態における工程対応排出量情報の一例を示す図である。
図5】本実施形態における不良率情報の一例を示す図である。
図6】本実施形態における廃棄対応排出量情報の一例を示す図である。
図7】本実施形態におけるGHG排出量算出装置が実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態としてのGHG(温室効果ガス:greenhouse gas)排出量算出装置について図面を参照して説明する。本実施形態のGHG排出量算出装置は、各種商材に対応するGHG排出量を算出する。
本実施形態における商材は、包装体(パウチ等の軟包材や紙箱等の紙器、容器等の射出成型品など)や包装体用材料(バリアフィルム等の積層フィルムなど)や建装材(床材、化粧紙、壁紙、インテリア用装飾材など)を含み、工場にて製造される製品である。商材の製造に使用される材料や工程の内容は、商材に応じて異なる。材料としては、紙材料、樹脂材料、複合材料、インク(顔料や染料、溶剤)、接着剤(樹脂、溶剤)などがあげられる。本実施形態のGHG排出量算出装置は、算出対象の商材の材料や工程内容に応じてGHG排出量を算出するようにされる。
GHGには、例えば二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、一酸化二窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、六ふっ化硫黄(SF6)等のガスが含まれる。以降の説明において、本実施形態の温室効果ガス排出量算出装置は、GHG排出量として、地球温暖化係数を利用して換算した二酸化炭素相当量を算出するようにされた場合を例に挙げる。
【0012】
図1は、本実施形態のGHG排出量算出装置によるGHG排出量の算出についての基本概念を示している。
或る商材FCは、対応の材料MTを利用して、1以上の工程を経て製造される。同図においては、材料MTが第1工程PR-1、第2工程PR-2・・・第N工程PR-NまでのN段階の工程PRを経て商材FCが製造される例を示している。
【0013】
本実施形態のGHG排出量算出装置は、商材FCに対応するGHG排出量を算出するにあたり、材料MT自体のGHG排出量(材料対応排出量)を算出する。材料対応排出量は、対応の材料MTの製造にあたり発生したとされるGHG排出量である。
本実施形態のGHG排出量算出装置は、材料対応排出量の算出にあたり、材料について既知のGHG排出量のデータ(標準材料対応排出量情報)を用いてよい。この場合において、GHG排出量算出装置は、算出対象となる材料が複数の材料を成分とするものである場合には、成分となる複数の材料ごとの標準材料対応排出量情報を用いて、算出対象の材料の材料対応排出量を算出してよい。
【0014】
また、本実施形態のGHG排出量算出装置は、工程PRごとのGHG排出量(工程対応排出量)を算出する。同図においては、第1工程PR-1~第N工程PR-Nごとに、第1工程対応排出量~第N工程対応排出量のN個の工程対応排出量が算出された例が示される。
【0015】
各工程においては、或る一定の不良率のもとで加工不良が発生する。1の工程において加工不良となった加工品は次の工程に移行させることができない。1の工程において一定量の不良の加工品が発生することに応じて、次の工程における加工量は減少する。そこで、第2工程以降の工程対応排出量については、前段階の工程における不良の加工品の廃棄に応じた加工量の減少分を考慮して算出されてよい。
また、各工程PRにて発生した不良の加工品は廃棄の対象となる。GHGは、廃棄に伴っても発生する。そこで、本実施形態のGHG排出量算出装置は、工程PRごとに発生する不良の加工品の廃棄に応じたGHG排出量(廃棄対応排出量)を算出し、算出した廃棄対応排出量を工程対応排出量に反映させるようにする。
【0016】
本実施形態のGHG排出量算出装置は、上記のように算出した材料対応排出量、工程対応排出量、及び廃棄対応排出量を総合して、商材FCに対応するGHG排出量(商材対応排出量)を算出するようにされる。商材対応排出量は、例えば所定の単位数量(例えば、単位重量、単位個数など)に対応して算出されてよい。
【0017】
図2は、本実施形態のGHG排出量算出装置100の機能構成例を示している。同図に示されるGHG排出量算出装置100としての機能は、ハードウェアとしてのGHG排出量算出装置100において備えられるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。
【0018】
同図のGHG排出量算出装置100は、ユーザインターフェース部101、制御部102、及び記憶部103を備える。
ユーザインターフェース部101は、ユーザがGHG排出量算出装置100に対して操作を行うための入力デバイスと、GHG排出量算出装置100がユーザに向けて情報を出力する出力デバイスを含む。入力デバイスには、マウス、キーボード、タブレット、音声入力デバイスなどが含まれてよい。出力デバイスには、ディスプレイ、音出力デバイス、プリンタ等が含まれてよい。
【0019】
制御部102は、GHG排出量算出装置100における制御を実行する。制御部102は、材料対応排出量算出部121、工程対応排出量算出部122、及び商材対応排出量算出部123を備える。
材料対応排出量算出部121は、材料対応排出量を算出する。
工程対応排出量算出部122は、材料を用いて商材を製造するまでの工程ごとに対応する工程対応排出量を算出する。また、工程対応排出量算出部122は、工程ごとにおいて発生する不良品の廃棄に対応して発生する廃棄対応排出量も算出してよい。
商材対応排出量算出部123は、商材対応排出量を算出する。
【0020】
記憶部103は、GHG排出量算出装置100に対応する各種の情報を記憶する。記憶部103は、標準材料対応排出量情報記憶部131、工程対応排出量情報記憶部132、不良率情報記憶部133、及び廃棄対応排出量情報記憶部134を備える。
標準材料対応排出量情報記憶部131は、標準材料対応排出量情報を記憶する。標準材料対応排出量情報が示す排出量は、各種の商材の製造に用いられる各種の基本的な材料ごとに標準として定められるGHG排出量である。このような標準材料対応排出量情報が示すGHG排出量は、例えば材料ごとに既知とされたGHG排出量に基づくものであってよい。
【0021】
図3は、標準材料対応排出量情報記憶部131が記憶する標準材料対応排出量情報の一例を示している。同図の標準材料対応排出量情報は、材料(材料種別)ごとに既知とされた比重と、標準値としての単位排出量とを対応付けた情報である。同図では、単位排出量について、対応の材料の1kgあたりGHG排出量とした例が示されている。
材料としては、具体的にPETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ナイロンフィルム等を挙げることができる。
【0022】
説明を図2に戻す。工程対応排出量情報記憶部132は、工程対応排出量情報を記憶する。工程対応排出量情報は、各種商材の製造に関わる工程ごとに工程対応排出量を対応付けた情報である。
【0023】
工程としては、具体的に、巻き取り工程、枚葉工程、梱包工程等を挙げることができる。また、巻き取り工程については、グラビア印刷を伴う巻き取り工程、フレキソ印刷を伴う巻き取り工程、ラミネート印刷を伴う巻き取り工程などに分けられる。また、枚葉工程については、三方製袋による枚葉工程、合掌製袋等による枚葉工程などに分けられる。
【0024】
図4は、工程対応排出量情報記憶部132が記憶する工程対応排出量情報の一例を示している。同図の工程対応排出量情報は、工程ごとに導出された単位排出量を対応付けた情報である。同図では、単位排出量として、対応の工程において材料を加工して得られる加工品の枚数、個数、単位長さ、単位重量などの単位数量あたりの工程対応排出量を示すようにされた例を示している。
【0025】
工程対応排出量情報として示される単位排出量は、それぞれ対応の工程に対応して材料加工等のために工場にて実際に稼働する製造装置が消費するエネルギーの測定結果等に基づいて導出されたものであってよい。
この場合において、例えば工場において、同じ1の工程に対応して複数の規模の異なる複数の製造装置が設置される場合には、複数の製造装置ごとに算出したGHG排出量の値に基づいて正規化した1つの値を、工程対応排出量情報の単位排出量としてよい。具体的に、正規化としては、例えば複数の製造装置ごとに算出した単位排出量の値の平均値の算出であってよい。
あるいは、正規化は、例えば複数の製造装置が占有する空間あるいは面積の比率に応じて複数の製造装置ごとの単位排出量に重み付けを行ったうえで、重み付けされた単位排出量の平均値を算出することであってもよい。
【0026】
説明を図2に戻す。不良率情報記憶部133は、不良率情報を記憶する。不良率情報は、不良率情報記憶部133が記憶する不良率情報において示されるのと同じ工程ごとの不良率(不良率)を示す情報である。
1の工程に対応する不良率は、対応の製造装置のこれまでの不良品の発生率に基づいて求められてよい。この場合において、不良率は、一度求められた値を固定的に用いてもよいし、過去の一定期間ごとの不良品の発生率に基づいて更新されてもよい。
【0027】
図5は、不良率情報記憶部133が記憶する不良率情報の一例を示している。同図に示される不良率情報は、工程対応排出量情報において示されるのと同じ工程ごとに不良率を対応付けた情報である。
【0028】
説明を図2に戻す。廃棄対応排出量情報記憶部134は、廃棄対応排出量情報を記憶する。廃棄対応排出量情報は、工程ごとの不良率を示す情報である。廃棄対応排出量情報記憶部134は、廃棄対応排出量情報記憶部134が記憶する廃棄対応排出量情報において示されるのと同じ工程ごとの不良率を示す廃棄対応排出量情報を含むようにされてよい。
【0029】
図6は、廃棄対応排出量情報記憶部134が記憶する廃棄対応排出量情報の一例を示している。同図に示される廃棄対応排出量情報は、工程ごとに所定の単位数量(例えば、枚数、単位個数、単位長、単位重量など)による単位排出量(廃棄対応単位排出量)を対応付けた情報である。廃棄対応単位排出量は、例えば対応の工程により得られる加工品についての既知のGHG排出量に基づいて定められてよい。
【0030】
図7のフローチャートを参照して、GHG排出量算出装置100が実行する処理手順例について説明する。同図の処理は、ユーザインターフェース部101におけるディスプレイにて、GHG排出量算出用アプリケーションのアプリケーション画面が表示された状態のもとで開始される。
ユーザは、或る商材についてのGHG排出量をアプリケーションに算出させるにあたり、アプリケーション画面に対して、GHG排出量の算出対象である商材の材料に関する材料情報を入力する操作(材料情報入力操作)と、商材を製造するための工程ごとに関する工程情報を入力する操作(工程情報入力操作)とを行うようにされる。
ユーザは、材料情報入力操作と工程情報入力操作とについて任意の順序で行うことができる。また、材料情報が入力済みの状態のもとでは、入力済みの材料情報を変更するようにして材料情報入力操作を行うことができる。工程情報入力操作としては、工程情報を追加するための操作と、既に入力した工程情報を変更する操作とを行うことが可能とされている。
GHG排出量算出用アプリケーションは、現時点までの材料情報入力操作または工程情報入力操作が行われたことに応じて入力された情報(材料情報、工程情報)を利用して算出した商材対応排出量を算出し、算出した商材対応排出量をアプリケーション画面上で出力するようにされる。
【0031】
ステップS100:GHG排出量算出装置100において材料対応排出量算出部121は、GHG排出量の算出対象である商材の材料についての材料情報入力操作を受け付けたか否かを判定する。材料情報入力操作により新規に入力あるいは変更される材料情報は、材料の種別、材料の幅、厚み、坪量、単位投入量(例えば、シートとしての材料の長さ等により表されてよい)等を含んでよい。これらの幅、厚み、坪量、単位投入量等に基づいて、各工程にて加工対象となる単位加工量が求められる。このような単位加工量は、嵩(体積)を示すものとなる。また、単位加工量は、例えば標準材料対応排出量情報において示される比重の情報を利用することで重量として求めることができる。
以降において説明する材料対応排出量、工程対応排出量、廃棄対応排出量、商材対応排出量は、上記の重量としての単位加工量に対応するGHG排出量として求められる場合を例に挙げる。
【0032】
ステップS102:材料対応排出量算出部121は、ステップS100にて材料情報入力操作を受け付けると、入力された材料情報において示されるのと同じ対象の材料に対応付けられている標準の単位排出量を標準材料対応排出量情報記憶部131が記憶する標準材料対応排出量情報から取得する。
【0033】
ステップS104:材料対応排出量算出部121は、ステップS100に対応して入力された材料情報が示す対象の材料の単位加工量に応じた材料対応排出量を、ステップS102にて取得した標準の単位排出量を利用して算出する。
この際、材料対応排出量算出部121は、単位排出量に対応する材料の単位数量(重量)と単位加工量との比を、標準の単位排出量に乗算することで単位加工量に応じた材料対応排出量を算出してよい。
また、標準材料対応排出量情報における標準の単位排出量は、材料の単位体積あたりの排出量を示すものであってもよい。この場合には、材料の単位加工量も重量に代えて体積(嵩)によるものを用いるようにされる。そのうえで、材料対応排出量算出部121は、標準の単位排出量に対応する材料の単位量(例えば、体積)と単位加工量(例えば、体積)との比を、単位排出量に乗算することで単位加工量に応じた材料対応排出量を算出することができる。
【0034】
また、対象の材料が複数の材料を成分としたものである場合、材料対応排出量算出部121は、ステップS102にて、対象の材料の成分である複数の材料ごとの標準の単位排出量から取得する。材料対応排出量算出部121は、対象の材料における複数の材料の成分混合比と複数の材料ごとの標準の単位排出量とを利用して、対象の材料に対応する標準の単位排出量を算出してよい。例えば、対象の材料が材料A(混合率60%)、材料B(混合率40%)を合成したものである場合に、材料A、Bそれぞれの標準の単位排出量がa、bである場合には、対象の材料の標準の単位排出量Cは、以下の式1により求められる。
C=(0.6a+0.4b)・・・(式1)
この場合にも、材料対応排出量算出部121は、算出された標準の単位排出量が対応する単位量と単位加工量との比を、単位排出量に乗算することで単位加工量に応じた材料対応排出量を算出してよい。
【0035】
ステップS106:商材対応排出量算出部123は、今回のステップS104により算出された材料対応排出量が反映されるように商材対応排出量を算出する。この場合、商材対応排出量算出部123は、既に工程情報が入力された工程がある場合には、今回のステップS104により算出された材料対応排出量と、既に入力された工程情報ごとに対応して算出された工程対応排出量とを加算して商材対応排出量を算出する。また、工程情報が未だ1つも入力されていない場合には、商材対応排出量算出部123は、今回のステップS104により算出された材料対応排出量を、商材対応排出量の算出結果としてよい。
商材対応排出量算出部123は、算出した商材対応排出量がGHG排出量算出用アプリケーションのアプリケーション画面上にて表示されるように出力する。
【0036】
ステップS108:ステップS106の処理の後、あるいはステップS100にて材料情報入力操作を受け付けていないことが判定された場合、工程対応排出量算出部122は、第1工程に対応する工程情報を入力する操作(工程情報入力操作)を受け付けたか否かを判定する。工程情報には、対応の工程を示す情報が含まれる。ここでの工程情報入力操作には、既に入力された工程情報を変更する操作も含まれる。
【0037】
ステップS110:第1工程に対応する工程情報入力操作を受け付けた場合、工程対応排出量算出部122は、今回のステップS108に対応して入力された工程情報が示す現工程(この場合には、第1工程)に対応する不良率を、不良率情報記憶部133から取得する。
また、工程対応排出量算出部122は、現工程に対応する不良の加工品の廃棄に対応する単位排出量を、廃棄対応排出量情報記憶部134が記憶する廃棄対応排出量情報から取得する。
【0038】
ステップS112:工程対応排出量算出部122は、現工程に対応する廃棄対応排出量を算出する。廃棄対応排出量は、対応の工程で生じた不良の加工品の廃棄に対応して発生するとされるGHG排出量である。
当該ステップS112において、工程対応排出量算出部122は、ステップS110により取得した不良率を利用して、第1工程に投入される単位加工量の材料を加工した場合に発生する不良の加工品の量(不良品量)を算出する。算出された不良品量は、第1工程において生じる材料の廃棄量に相当する。工程対応排出量算出部122は、ステップS110により取得した廃棄対応の単位排出量を利用して、算出した不良品量に対応する廃棄対応排出量を算出する。このように算出された廃棄対応排出量は、現工程の単位加工量に応じた廃棄対応排出量である。
【0039】
ステップS114:工程対応排出量算出部122は、第1工程に対応して入力された工程情報が示すのと同じ工程が対応付けられた単位排出量情報を工程対応排出量情報記憶部132が記憶する工程対応排出量情報から取得する。
【0040】
ステップS116:工程対応排出量算出部122は、現工程に対応する工程対応排出量を算出する。具体的に、工程対応排出量算出部122は、ステップS114により取得した工程対応排出量情報の単位排出量を用いて、単位加工量に対応する排出量を算出する。そのうえで、工程対応排出量算出部122は、算出した単位加工量に対応する排出量に対して、ステップS112により算出した廃棄対応排出量を加算することで、現工程に対応する工程対応排出量を算出するようにされる。このようにして、本実施形態の工程対応排出量には、現工程における不良率に応じた廃棄対応排出量が反映される。
【0041】
ステップS118:商材対応排出量算出部123は、現在の材料情報と工程情報の入力状況に応じた商材対応排出量を算出する。
商材対応排出量の算出にあたり、商材対応排出量算出部123は、既に材料情報が入力済みとされていることで材料対応排出量が算出されていれば、今回のステップS116にて算出された現工程の工程対応排出量に、材料対応排出量を加算する。また、商材対応排出量の算出にあたり、商材対応排出量算出部123は、第1工程より後の他の工程の工程情報が入力済みとされて工程対応排出量が算出されていれば、他の工程に対応して算出されている工程対応排出量を、今回のステップS116にて算出された工程対応排出量に加算する。
商材対応排出量算出部123は、算出した商材対応排出量がGHG排出量算出用アプリケーションのアプリケーション画面上にて表示されるように出力する。
【0042】
ステップS120:ステップS118の処理の後、あるいはステップS108にて第1工程対応の工程情報入力操作を受け付けていないことが判定された場合、工程対応排出量算出部122は、第2工程以降の工程に対応する工程情報入力操作を受け付けたか否かを判定する。
【0043】
ステップS122:第2工程以降の工程に対応する工程情報入力操作を受け付けた場合、工程対応排出量算出部122は、直前の工程の不良率を不良率情報記憶部133から取得する。
なお、直前の工程に対応する工程情報が未だ入力されていない状態である場合には、当該ステップS122と次のステップS122はスキップされてよい。
【0044】
ステップS124:工程対応排出量算出部122は、ステップS122により取得した直前の工程の不良率を用いて、現工程が対応する単位加工量を補正する。具体的に、工程対応排出量算出部122は、例えば直前の工程の単位加工量をM、不良率をDとして、以下の式2により単位加工量の補正値Mcを算出してよい。
Mc=M(1-D)・・・(式2)
【0045】
工程において発生した不良の加工品は次の工程に移行させることができない。このため、材料の単位投入量に応じた単位加工量は、工程を経るごとに、工程ごとの不良率に応じて減少していく。以降の工程では、上記のように実質的な単位加工量が減少することに伴って工程対応排出量も減少していくことになる。そこで、本実施形態の工程対応排出量算出部122は、直前の工程の不良率に基づいて現工程に投入される単位加工量を補正することで、不良率に応じて実質的に減少する単位加工量による排出量の減少が工程対応排出量に反映されるようにする。これにより、第2工程以降に対応して算出される工程対応排出量の精度を向上させることができる。
【0046】
ステップS126:工程対応排出量算出部122は、現工程に対応する不良率を、不良率情報記憶部133から取得し、現工程に対応する廃棄対応単位排出量を廃棄対応排出量情報記憶部134から取得する。
【0047】
ステップS128:工程対応排出量算出部122は、現工程に対応する廃棄対応排出量を算出する。
当該ステップS128において、工程対応排出量算出部122は、ステップS126により取得した現工程の不良率を利用して、現工程に投入される単位加工量の材料を加工した場合に発生する不良品量を算出する。算出された不良品量は、現工程において生じる材料の廃棄量に相当する。工程対応排出量算出部122は、ステップS126により取得した廃棄対応の単位排出量を利用して、算出した不良加工品量に対応する廃棄対応排出量を算出する。このように算出された廃棄対応排出量は、現工程の単位加工量に応じた廃棄対応排出量である。
【0048】
ステップS130:工程対応排出量算出部122は、現工程に対応して入力された工程情報が示すのと同じ工程に対応付けられた単位排出量情報を工程対応排出量情報記憶部132から取得する。
【0049】
ステップS132:工程対応排出量算出部122は、現工程に対応する工程対応排出量を算出する。具体的に、工程対応排出量算出部122は、ステップS130により取得した工程対応排出量情報が示す単位排出量を用いて、ステップS124により補正された単位加工量に対応する排出量を算出する。そのうえで、工程対応排出量算出部122は、算出した単位加工量に対応する排出量に対して、ステップS128により算出した廃棄対応排出量を加算することで、現工程に対応する工程対応排出量を算出する。
【0050】
ステップS134:商材対応排出量算出部123は、現在の材料情報と工程情報の入力状況に応じた商材対応排出量を算出する。
商材対応排出量の算出にあたり、商材対応排出量算出部123は、既に材料情報が入力済みとされていることで材料対応排出量が算出されていれば、今回のステップS132にて算出された現工程の工程対応排出量に、材料対応排出量を加算する。また、商材対応排出量の算出にあたり、商材対応排出量算出部123は、第1工程より後の他の工程の工程情報が入力済みとされて工程対応排出量が算出されていれば、他の工程に対応して算出されている工程対応排出量を、今回のステップS132にて算出された工程対応排出量に加算する。
商材対応排出量算出部123は、算出した商材対応排出量がGHG排出量算出用アプリケーションのアプリケーション画面上にて表示されるように出力する。
【0051】
ステップS106、S118、S134による商材対応排出量の表示では、材料の単位加工量あたりの商材対応排出量が示されるようにしてよい。
また、例えば材料がシート状であって所定長のシートを巻いたロールなどの単位で供給されるような場合において、材料の単位加工量を所定個数のロールに対応させることができる。このような場合において、アプリケーション画面における商材対応排出量の表示においては、材料の1ロールあたりに換算した商材対応排出量が示されるようにしてもよい。
さらに、単位加工量に対応して製造される商材の数は既知とされている。そこで、アプリケーション画面における商材対応排出量の表示において、商材の1つあたりに換算した商材対応排出量が示されるようにしてもよい。
【0052】
なお、上述のGHG排出量算出装置100としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述のGHG排出量算出装置100としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 GHG排出量算出装置、101 ユーザインターフェース部、102 制御部、103 記憶部、121 材料対応排出量算出部、122 工程対応排出量算出部、123 商材対応排出量算出部、131 標準材料対応排出量情報記憶部、132 工程対応排出量情報記憶部、133 不良率情報記憶部、134 廃棄対応排出量情報記憶部
図1
図2
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図5
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図7