(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087449
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】服薬管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20230616BHJP
A61J 3/07 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
G16H20/10
A61J3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021201837
(22)【出願日】2021-12-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 俊人
【テーマコード(参考)】
4C047
5L099
【Fターム(参考)】
4C047LL07
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】医師が処方した薬を患者が実際に服用したか否かを確実に確認することができるシステムを提供する。
【解決手段】薬の服薬がなされているか否かの判定を行う服薬管理システム1であって、音響インピーダンスの情報を取得する超音波センサーを内蔵した通信デバイス2と、音響インピーダンスの情報を通信デバイスから受信する検出デバイス3と、を有し、薬剤4が薬を金箔で包んだものであり、超音波センサーにより、服薬後体内にある薬剤の音響インピーダンスの情報を取得し、取得された音響インピーダンスの情報を検出デバイスに送信し、検出デバイスで、音響インピーダンスの情報に基づいて、服薬後の体内での薬剤の金箔の有無を検出し、金箔が検出されたときに、服薬がなされていると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬の服薬がなされているか否かの判定を行う服薬管理システムであって、
音響インピーダンスの情報を取得する超音波センサーを内蔵した通信デバイスと、
前記音響インピーダンスの情報を前記通信デバイスから受信する検出デバイスと、を有し、
前記薬剤が薬を金箔で包んだものであり、
前記超音波センサーにより、服薬後体内にある前記薬剤の音響インピーダンスの情報を取得し、
取得された前記音響インピーダンスの情報を前記検出デバイスに送信し、
前記検出デバイスで、前記音響インピーダンスの情報に基づいて、服薬後の体内での前記薬剤の金箔の有無を検出し、
前記金箔が検出されたときに、服薬がなされていると判定することを特徴とする服薬管理システム。
【請求項2】
前記薬剤が、さらにオブラートで包まれたものであることを特徴とする請求項1に記載の服薬管理システム。
【請求項3】
前記オブラートが、ゲラニオールを含むものであることを特徴とする請求項2に記載の服薬管理システム。
【請求項4】
前記薬剤が、金箔が印刷、塗布もしくは貼り付けられたカプセルに薬が封入されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の服薬管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処方された薬が実際に服薬されているかを確実に確認するための服薬管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超高齢社会が加速する現在、誤った薬の飲み合わせによる健康被害や、薬の過剰処方による医療保険財政の圧迫が社会問題化しつつある。その対策として、ICタグをつけた薬箱による「飲み忘れ」防止や、「残薬の見える化」による薬剤管理の精度向上などを図る試みがなされている。また普及が進んでいる携帯情報端末を利用した服薬管理システムなども提案されている。例えば特許文献1には、服用する薬剤を多数のポケットに収納し、ポケット内の薬剤の有無をセンサーで検出することで薬剤が服用されたか判定するシステムが開示されている。
【0003】
しかし、上記のようなシステムにおいては、薬の服用自体ではなく、その前段階である薬を取り出したか否かという行為に関する管理を行うもので、実施に飲んだのかどうかということについては確証が取れず、例えば取り出した薬をどこかに捨ててしまったり、なくしてしまったりした場合などについては確認することができない。
【0004】
一方で特許文献2には、錠剤などの形態として経口的に摂取可能とした事象マーカーが開示され、例えば胃の中に入った錠剤が胃液に触れると、事象マーカーが有する識別子(センサーと解釈される)から信号が出て患者の腹部に取り付けた検出器で取り込み、検出器からBluetooth(登録商標)で飛ばしてスマホで確認をする、いわゆるデジタル薬が提案されている。
【0005】
この様なデジタル薬は、薬を飲んだのに効いていないのか、そもそも飲んでいないのかがわかるため有益であると考えられる。しかしこの様な薬の中にセンサーを埋め込んだデジタル薬や、それを活用するシステムの開発、運用には多大なコストや手間が必要であり、またセンサー自身が体内にて毒性を示さないことが必要であり、また最終的に排泄物としてセンサーが回収されないときには不安感もある。
【0006】
特に毎日数回服用している薬の場合、かなり凡帳面に排泄での回収を確認できないと体にセンサーデバイスが蓄積されてしまっているかもしれない、という恐れが生じ、かなり不安感が生じる。また患者がいつも検出器を身に着けていなければならないことに対するストレスもある。またそもそも病院内で無線での利用が制限されているところで服用するときは、このシステムの運用自体が難しい可能性がある、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-12469号公報
【特許文献2】特許第5524626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、医師が処方した薬を患者が実際に服用したか否かを確実に確認することができるシステムを提供し、特に患者の不安やストレスが少なく、病院などの医療施設で使用が制限される可能性のある電波を使用せず、システム専用の大規模で特別な装置などを必要とせずに服薬の状況の確認が行える服薬管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、
薬の服薬がなされているか否かの判定を行う服薬管理システムであって、
音響インピーダンスの情報を取得する超音波センサーを内蔵した通信デバイスと、
前記音響インピーダンスの情報を前記通信デバイスから受信する検出デバイスと、を有し、
前記薬剤が薬を金箔で包んだものであり、
前記超音波センサーにより、服薬後体内にある前記薬剤の音響インピーダンスの情報を取得し、
取得された前記音響インピーダンスの情報を前記検出デバイスに送信し、
前記検出デバイスで、前記音響インピーダンスの情報に基づいて、服薬後の体内での前記薬剤の金箔の有無を検出し、
前記金箔が検出されたときに、服薬がなされていると判定することを特徴とする服薬管理システムである。
【0010】
上記服薬管理システムにおいて、
前記薬剤が、さらにオブラートで包まれたものであって良い。
【0011】
上記服薬管理システムにおいて、
前記オブラートが、ゲラニオールを含むものであって良い。
【0012】
上記服薬管理システムにおいて、
前記薬剤が、金箔が印刷、塗布もしくは貼り付けられたカプセルに薬が封入されてなるものであって良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の服薬管理システムによれば、従来のカプセル薬やカプセル内視鏡などの金属を多用した回路などを用いずに、安全で排泄に対しての心配がなく、服薬の確認に超音波を用いることで、無線などを用いずに病院内でも安心して使える服薬管理システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の服薬管理システムで薬剤を検出する態様の概要図である。
【
図2】本発明の服薬管理システムに使用される薬剤の製造工程の説明図である。
【
図3】本発明の服薬管理システムに使用される薬剤の別の製造工程の説明図である。
【
図4】本発明の服薬管理システムに使用される薬剤の製造装置の例の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また以下に示す実施形態では、発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0016】
図1は、本発明の服薬管理システムで服薬された薬剤を検出する態様の概要図である。服薬管理システム1は、超音波を受発信する機能を有する超音波センサーを内蔵した通信デバイス2と、検出デバイス3を含んでいる。検出デバイス3は例えばパーソナルコンピュータ(PC)3である。服薬管理システム1は、服薬されて胃の中にある薬剤4に向けて超音波21を発信し、その反射波22を超音波センサーで受信する。反射波22には薬剤4の音響インピーダンスの情報が含まれており、この情報を検出デバイス3に送信する
。検出デバイス3では、受信した音響インピーダンスの情報から、薬剤4を包んでいる金箔に起因する音響インピーダンスの情報の有無により金箔の有無を検出できるので、金箔が検出されれば、薬剤4が実際に服薬されていると判定することができる。
【0017】
超音波センサーでは、検出対象である薬剤4と体の軟組織との音響インピーダンスに明確な差があると確実に検出が容易である。そこで本システムでは、上述の様に薬をあらかじめ金箔で包んだ態様の薬剤4として服薬させ、体の軟組織と金箔の音響インピーダンスの差を利用して薬剤4を検出する。
【0018】
薬剤4を金箔で包んだ態様とするには、金箔として食用金箔を用いて薬剤を包み、丸薬状に丸めることで形成できる。また、扱いやすく、飲みやすくするために、これをさらにオブラートで包んでも良い。あるいは、あらかじめオブラートに食用金箔を貼りつける、または食用金箔を用いた塗布剤をオブラートに塗布するなどして、オブラートと金箔が積層されたシートを形成し、これに薬を包んで丸薬状にするなどしても良い。薬は、例えば錠剤状のものであれば包みやすくなる様に細かく粒状に砕いてから包んでも良く、または錠剤のまま包んでも良い。
【0019】
図2に、本発明の服薬管理システムに用いる薬剤4の作成工程の一例の概要図を示す。服薬する薬5は例えば錠剤や丸薬の形状のものである。同時に服用して差し支えのないものであれば、2個以上、また2種以上を同時に用いても良い。これにより、患者がある種類のものを飲んだが別のものを飲むのを忘れたということもなくなり、また薬を一遍に何個も飲むという手問もなくなる。ただし一緒に包んでよいのかどうかなどは、薬によりけりなので、種類の分け方などは適宜選択すれば良い。
【0020】
この薬5を粉砕して細かい粒状または粉状の薬5Pとする。薬5がもともと粉体または顆粒状のものであれば、粉砕の工程は省略できる。別に、食用金箔6とオブラート7を貼り合わせて積層シート8を作成しておき、この積層シート8に薬5Pを載せ、薬5Pを包み込むようにして丸め、丸薬のような形状の薬剤4とする。
【0021】
薬剤4は通常、水と一緒に服用されるため、胃が水で満たされている状態にて観察され得る。そのなかでの金属すなわち金箔に包まれた態様の薬剤4の存在を確認することができる。音響インピーダンスは、空気が0.00043(106kg/m2s)、水が1.5(106kg/m2s)、脂肪1.36(106kg/m2s)、軟部組織平均1,62(106kg/m2s)に対して金62.5(106kg/m2s)であり、金属と水や生体組織はかなり相違があるため、超音波センサーで金箔の存在確認ができる。オブラートの厚さなどを適宜調整することによって、より確認のしやすいものとすることができる。
【0022】
金箔の検出に用いる通信デバイス2の超音波センサーとしては、病院内で一般的に使用されている超音波エコー装置を用いることができる。超音波エコー装置は、据え置き型の大型のものであっても、簡易なハンディタイプのものであっても良い。超音波診断画像のガイドがあればさらに手軽に検査ができる。
【0023】
薬5Pと共に服用可能な金箔としては、「食用の金箔4号食色」という金箔が知られている。この金箔の金属成分は純金94.438%、純銀4.901%からできており、食品添加物として認められている。食品添加物なので金箔の原材料の表示名は「着色料」になる。この食用の金箔は全部が金や銀でできているわけではなく、食用金箔の90%以上は「プルラン」と呼ばれる多糖類のデンプンである。このタイプの金箔は市場では「金沢箔」とも呼ばれる。
【0024】
さらに金の純度を上げたものとして、真空中で金の粒子を飛ばしてPETフィルムに被
膜させる製箔法(スパッタリング)で製造された、純度999.9‰(パーミル)のものも知られており、いずれも好適に使用できる。金は食べても体に吸収されることは無いので、そのまま排出される。また金は非常に安定した性質を持っており、他の物質とはほとんど反応せず、胃液で溶けることもなく、唾液でもまったく変化することはないため、服用した場合の安全性は高い。
【0025】
オブラートは、日本ではデンプンから作られる水に溶けやすい半透明の薄い膜のことを指す。薬品や菓子などを包み、そのまま体内に摂取することができる。オブラートはデンプンを糊化させたものを急速乾燥して生成される。原料には馬鈴薯澱粉などを用いる。水分を10%から15%程度まで急速に乾燥させることで、デンプンが老化せず糊化状態が保たれる。菓子用のオブラートの厚さは40μm、薬用のオブラートの厚さは20μmである。オブラートは主にデンプン質で、融点の低いものなどを用いると再度の丸薬化を容易に行うことができる。
【0026】
オブラートは、通常、苦味のある薬や散剤など、そのままでは飲みづらい薬を内服する際に用いられる。オブラートを広げて薬を包み込んだ後、端に少量の水をつけて口を閉じると中身がこぼれにくい。口腔内に張り付きやすいため、コップ1杯程度の水またはぬるま湯で服用する。オブラートは円形、三角形、袋状など様々な形状のものが市販されており、適宜選択して用いることができる。イチゴ味その他のフレーバーつき製品であっても良く、ゼリー状やペースト状の薬用オブラートなどでも好適に用いることができる。
【0027】
オブラートにフレーバーを付加するものの例として、ゲラニオール(geraniol)が挙げられる。ゲラニオールはゼラニウムから発見された直鎖モノテルペノイドの一種である。主にローズオイル、パルマローザ油、シトロネラ油に含まれる。また、ゼラニウムやレモン、いくつかの精油にも含まれている。無色または薄い黄色の液体で、水には溶けないが多くの有機溶媒には溶ける。バラに似た芳香を持ち、広く香水に使われている。また、モモ、ラズベリー、グレープフルーツ、リンゴ、プラム、ライム、オレンジ、レモン、スイカ、パイナップル、ブルーベリーのような芳香としても用いられる。
【0028】
ゲラニオールの使用法の例としては、キャンディやガムなどの食品に添加して、これらを喫食することでバラの香りが吐息から出たり、体臭にバラの香りが香るようになるものがある。オブラートではすでにイチゴフレーバーのものが開発されているが、ゲラニオールを埋め込んだオブラートも同様に作製可能であり、これに薬を包んで服用すると、ゲラニオールの香りを確認することで服用が確認できる。
【0029】
ゲラニオールの確認方法は、匂いセンサーを用いる方法のほか、ゲラニオールは体臭から出ていることも確認されていることから、服用者の肌の匂いを嗅ぐことにより確認することが可能である。そのため口臭や体臭にて確認することが可能である。
【0030】
またゲラニオールを摂取した場合、3時問後には皮膚からもほぼ放出しなくなることが知られており、薬の服用が朝昼晩と3回あったとしても、通常食事のインターバルは3時間以下になることはないことから、前回の服用により発生するゲラニオールの香りと重なることはなく、当該回の薬の服用を確認することが可能である。ゲラニオール添加と金箔を両方利用して、服用の検出精度を高めることも可能である。
【0031】
ゲラニオール以外の香料を用いることも可能であるが、成分が薬の服用のインターバルの間に消えること、また食物に多く含まれるものであると食事と服用の区別がつかないため、あまり食用に用いられない香料を選択する必要がある。また2種類の薬に2種類の香料をあてがうことも可能だが、それぞれの独自の匂い成分が判別できるものを選択する必要がある。
【0032】
図3は、本発明の服薬管理システムに使用される薬剤の別の製造工程の説明図である。錠剤状等の薬5を粉砕してカプセルに収納し、カプセル薬としている例を示している。ゼラチンなどで形成された市販の薬剤用のカプセル9に、食用金箔入り塗料を塗る、または食用金箔を貼り付けるなどして、空カプセル9Pを準備する。そして錠剤や丸薬の形状の薬5を粉砕して細かい粒状または粉状の薬5Pとするのは前述の工程と同様である。次いで薬5Pを空カプセル9Pに収納し、カプセル薬4Cとする。カプセル薬4Cを服用後、検出する方法は前述と同様であり、空カプセル9Pに塗られた、または貼り付けられた食用金箔を検出して服薬したか否かの判定を行う。オブラートで包む場合よりも形状が一定であるので精度よく観察できる。また一部の薬(苦味健胃薬、消化薬など)は、オブラートに包んで飲むと効果が弱まるものがあるので、そのような場合にも適用に支障がない。薬5の体内での徐放の場所や時間にあわせて、前述のオブラートを用いる方法か、またはカプセルを用いる方法か、適宜選択すればよい。
【0033】
図4は、本発明の服薬管理システムに使用される薬剤の製造装置の例の概要図である。製造装置10では、スタッカー11から薬5をカッター12に投入して、粉砕し、スリット13を通過した細かい粒状または粉状の薬5Pを漏斗14で集め、カプセル9Aに収納し、カプセル9Bで封入してカプセル薬4Cとする。錠剤5は複数個投入されても良く、2種類以上が投入される構造とすることもできる。
【0034】
実際の薬の服用において、例えば2種類の薬を短い間隔で服用する場合は、最初のものにゲラニオール入りのオブラート、2回目に金箔付きのオブラートを使用する(またはその逆順とする)などと組み合わせた服用方法として、それぞれの薬の服用の検出を容易にすることもできる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・服薬管理システム
2・・・通信デバイス
3・・・検出デバイス
4・・・薬剤
4C・・・カプセル薬
5、5P・・・薬
6・・・食用金箔
7・・・オブラート
8・・・積層シート
9・・・カプセル
9P・・・空カプセル
10・・・製造装置
11・・・スタッカー
12・・・カッター
13・・・スリット
14・・・漏斗