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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087605
(43)【公開日】2023-06-23
(54)【発明の名称】骨伝導スピーカー
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/00 20060101AFI20230616BHJP
   H04R 25/00 20060101ALI20230616BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20230616BHJP
【FI】
H04R1/00 317
H04R25/00 F
H04R9/02 102E
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021203465
(22)【出願日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】10-2021-0177912
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520409589
【氏名又は名称】株式会社エムアイジェー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ホ ジン スク
【テーマコード(参考)】
5D012
5D017
【Fターム(参考)】
5D012CA09
5D012FA02
5D012GA01
5D017AB13
(57)【要約】
【課題】共振周波数100Hz以下を成し遂げて、難聴患者に低音域の音もまた円滑に認識させるようにする骨伝導スピーカーを提供する。
【解決手段】本発明は、骨伝導スピーカーに関するものであり、収容空間が形成されるハウジングと、前記ハウジングの収容空間内に配設され、容器状を呈するヨークと、マグネットと、マグネット支持部と、コイルと、ヨークカバーと、ハウジング内においてヨークとハウジングとを繋ぎ合わせるサスペンションと、を備え、サスペンションは、平面をなし、中空が形成され、一定の幅を有する一体型の円形環状に形成されており、中空と隣り合い、中空の周方向に延びる内輪部と、外周を形成する外輪部と、内輪部と外輪部とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、を備え、ブリッジ部は、4組が前記周方向に沿って等間隔にて互いに離れるように配置され、それぞれの組は周方向に沿って延びる連結ブリッジを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間が形成されるハウジングと、
前記ハウジングの収容空間内に配設され、容器状を呈するヨークと、
前記ヨークの上部に配設されるマグネットと、
前記マグネットの上部に配設されるマグネット支持部と、
前記マグネット支持部を取り囲むコイルと、
前記ヨークの周りを包み込むように配置されるヨークカバーと、
前記ハウジング内において前記ヨークとハウジングとを繋ぎ合わせるサスペンションと、
を備え、
前記サスペンションは、平面をなし、中空が形成され、一定の幅を有する一体型の円形環状に形成されており、中空と隣り合い、前記中空の周方向に延びる内輪部と、外周を形成する外輪部と、前記内輪部と外輪部とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、を備え、
前記ブリッジ部は、4組が前記周方向に沿って等間隔にて互いに離れるように配置され、それぞれの組は前記周方向に沿って延びる連結ブリッジを備えることを特徴とする骨伝導スピーカー。
【請求項2】
前記ブリッジ部は、
外輪部から内輪部に向かって半径方向に延びる第1の連結胴体と、
前記内輪部から外輪部に向かって半径方向に延びる第2の連結胴体と、
前記第1の連結胴体と第2の連結胴体とを繋ぎ合わせ、外輪部と内輪部との間にそれぞれギャップを形成した状態で延びる連結ブリッジと、
を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項3】
前記周方向に沿って、前記連結ブリッジは、両端から中央に向かって半径方向の幅が次第に減少する形状の波形領域を備えることを特徴とする請求項2に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項4】
前記波形領域の角度は、前記円形の中心に対して40°~80°の範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項5】
前記内輪部の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記連結ブリッジの最小幅は0.3mm~0.6mmの範囲にあることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項6】
前記内輪部の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記ブリッジ部の厚さは0.06mm~0.3mmの範囲にあることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項7】
前記波形領域は、前記円形の中心に対して70°、前記連結ブリッジの最小幅は0.3mm、前記ブリッジ部の厚さは0.09mmになるように形成されることを特徴とする請求項3に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項8】
前記ハウジングは、容器状の収容部と、前記収容部の開口を覆い、デジタルシグナルプロセッシング(DSP)回路を適用した回路基板部と、から構成され、前記収容部に面する前記回路基板部の一方の面にはコイルが配設されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項9】
電磁気力を整える機能を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の骨伝導スピーカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨伝導スピーカーに係り、共振周波数が所定の範囲内にあるようにして低音域帯の音質を向上させて、難聴患者が使用上の不便さを感じないようにする骨伝導スピーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、耳の外耳道を介して入ってきた音が鼓膜を通って蝸牛殻において電気的な信号に切り替えられて伝わることにより、音を認識しかつ音が聞こえることになる。
ところが、鼓膜の損傷や中耳炎など各種の病気や激しい騒音による音響性外傷または老化などにより聴力が損なわれる場合には、このような一般的な音伝達の機構が破壊されてしまい、その結果、音を上手く聞けなくなる。
【0003】
このように、音伝達機構が損なわれた難聴患者は、普通、補聴器を着用して音の認識を補助される。
前記補聴器は、耳に差し込む方式の気導補聴器と、骨を介して振動を伝える骨伝導補聴器と、に大別でき、気導補聴器は、空気を振動させて音を認識するのに対し、骨伝導補聴器は、蝸牛殻を包み込む側頭骨を振動させて聴神経を介して音を認識することになる。
【0004】
気導補聴器は、外耳道に異常がなく、蝸牛殻や聴神経に問題がある患者に対して適用可能であるのに対し、鼓膜の穿孔や中耳腔内への滲出液の漏れなど伝導性難聴患者や先天性外耳奇形、深刻な慢性中耳炎または偏側性深度難聴患者にとっては気導補聴器が使用し難く、骨伝導補聴器が使われる必要がある。
【0005】
図1には従来の技術による骨伝導スピーカーが示されており、胴体10の内部にヨーク11と、マグネット12と、ボイスコイル13と、下振動板14と、振動バネ15と、上振動板16と、が下側から上側へとこの順に形成されている。
【0006】
ここで、重さが相対的に重いヨーク11とマグネット12を胴体10の下部に配置し、重さが相対的に軽いボイスコイル13、下振動板14、振動バネ15および上振動板16を胴体10の上部に配置するようになっている。
【0007】
信号入力部17に電気信号が入力されれば、前記ボイスコイル13から前記下振動板14、前記振動バネ15および上振動板16へと順次に振動が伝えられ、前記上振動板16の振動が使用者の頭骨を介して人体の聴神経を刺激することにより、音を聞くことが可能になる。
【0008】
しかしながら、従来の技術の場合、硬い骨を振動させなければならず、骨を経る間に様々な音成分が打ち消されるが故に、低音性能が良好ではなく、その結果、聞く上で非常に不便さを感じてしまうという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2167455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した従来の技術の問題を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、共振周波数100Hz以下を成し遂げることによって、難聴患者に低音域の音もまた円滑に認識させるようにする骨伝導スピーカーを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明に係る骨伝導スピーカーは、収容空間が形成されるハウジングと、前記ハウジングの収容空間内に配設され、容器状を呈するヨークと、前記ヨークの上部に配設されるマグネットと、前記マグネットの上部に配設されるマグネット支持部と、前記マグネット支持部を取り囲むコイルと、前記ヨークの周りを包み込むように配置されるヨークカバーと、前記ハウジング内において前記ヨークとハウジングとを繋ぎ合わせるサスペンションと、を備え、前記サスペンションは、平面をなし、中空が形成され、一定の幅を有する一体型の円形環状に形成されており、中空と隣り合い、前記中空の周方向に延びる内輪部と、外周を形成する外輪部と、前記内輪部と外輪部とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、を備え、前記ブリッジ部は、4組が前記周方向に沿って等間隔にて互いに離れるように配置され、それぞれの組は前記周方向に沿って延びる連結ブリッジを備えることを特徴とする。
【0012】
前記ブリッジ部は、外輪部から内輪部に向かって半径方向に延びる第1の連結胴体と、前記内輪部から外輪部に向かって半径方向に延びる第2の連結胴体と、前記第1の連結胴体と第2の連結胴体とを繋ぎ合わせ、外輪部と内輪部との間にそれぞれギャップを形成した状態で延びる連結ブリッジと、を備えてなることを特徴とする。
【0013】
前記周方向に沿って、前記連結ブリッジは、両端から中央に向かって半径方向の幅が次第に減少する形状の波形領域を備えることを特徴とする。
前記波形領域の角度は、前記円形の中心に対して40°~80°の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
前記内輪部の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記連結ブリッジの最小幅は0.3mm~0.6mmの範囲にあることを特徴とする。
【0015】
前記内輪部の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記ブリッジ部の厚さは0.06mm~0.3mmの範囲にあることを特徴とする。
【0016】
前記波形領域は、前記円形の中心に対して70°、前記連結ブリッジの最小幅は0.3mm、前記ブリッジ部の厚さは0.09mmになるように形成されることを特徴とする。
前記ハウジングは、容器状の収容部と、前記収容部の開口を覆い、デジタルシグナルプロセッシング(DSP:Digital Signal Processing)回路を適用した回路基板部と、から構成され、前記収容部に面する前記回路基板部の一方の面にはコイルが配設されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る骨伝導スピーカーは、電磁気力を整える機能を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
上述したような構成を有する本発明によれば、前記サスペンションは、平面をなし、中空が形成され、一定の幅を有する一体形の円形環状に形成されており、中空と隣り合い、前記中空の周方向に延びる内輪部と、外周を形成する外輪部と、前記内輪部と外輪部とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、を備え、前記ブリッジ部は、4組が前記周方向に沿って等間隔にて互いに離れるように配置され、それぞれの組は前記周方向に沿って延びる連結ブリッジを備えることを特徴とすることから、共振周波数100Hz以下を成し遂げて難聴患者に低音域の音もまた円滑に認識させることができる。
【0019】
また、本発明によれば、前記ブリッジ部は、外輪部から内輪部に向かって半径方向に延びる第1の連結胴体と、前記内輪部から外輪部に向かって半径方向に延びる第2の連結胴体と、前記第1の連結胴体と第2の連結胴体とを繋ぎ合わせ、外輪部と内輪部との間にそれぞれギャップを形成した状態で延びる連結ブリッジと、を備えてなることを特徴とすることから、共振周波数を基準値以下に保持して可聴音質を向上させることができるとともに、応答変位と最大応力を基準値以下に保持して耐久性を格段に高めることができるというメリットもある。
【0020】
さらに、本発明によれば、前記周方向に沿って、前記連結ブリッジは、両端から中央に向かって半径方向の幅が徐々に減少する形状の波形領域を備えることを特徴とすることから、耐久性を保持しながらも、ヨークなど振動子から発せられる振動を物理的に柔らかく支持することが可能になるというメリットもある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来の技術による骨伝導スピーカーの構造を示す縦断面図である。
図2】本発明に係る骨伝導スピーカーの構造を示す斜視図である。
図3】本発明に係る骨伝導スピーカーの構造を示す縦断面図である。
図4】本発明に係る骨伝導スピーカーの構造を示す分解斜視図である。
図5a図4におけるサスペンションの構造を示す斜視図である。
図5b図4におけるサスペンションの構造を示す平面図である。
図6a】本発明に係るサスペンション構造の共振周波数に対する主効果度を示すグラフである。
図6b】本発明に係るサスペンション構造の応答変位に対する主効果度を示すグラフである。
図6c】本発明に係るサスペンション構造の最大応力に対する主効果度を示すグラフである。
図7】本発明に係るサスペンションの適用時の骨伝導スピーカーの音圧レベル(SPL)特性を示すグラフである。
図8】本発明に係るサスペンションの1次共振モードにおける応力分布を示す斜視図である。
図9】本発明に係るサスペンションの共振モードを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に基づいて、本発明の好適な実施形態について詳しく説明する。
図2から図4に示すように、本発明に係る骨伝導スピーカー1000は、収容空間110が形成されるハウジング100と、前記ハウジング100の収容空間110内に配設され、凹んだ容器状を呈するヨーク200と、前記ヨーク200の凹んだ箇所の上部に配設されるマグネット300と、前記マグネット300の上部に配設されるマグネット支持部400と、前記ハウジング100に固定された状態で前記マグネット支持部400を取り囲み、固定子を構成するコイル500と、前記ヨーク200の周りを包み込むように配置されるヨークカバー600および前記ハウジング100内において前記ヨーク200とハウジング100とを繋ぎ合わせるサスペンション700を備える。
【0023】
前記ハウジング100は、各種の部品を収める容器状の収容部120と、前記収容部120の開口を覆う回路基板部130と、から構成されてもよい。
特に、骨伝導スピーカー1000の共振周波数に影響を及ぼす核心部品である前記サスペンション700は、平面をなし、金属製であり、中空710が形成され、一定の幅を有する一体型の円形環状に形成されており、中空710と隣り合い、前記中空710の周方向に延びる内輪部720と、外周を形成する外輪部730と、前記内輪部720と外輪部730とを繋ぎ合わせるブリッジ部740と、を備え、前記ブリッジ部740は、4組が前記周方向に沿って等間隔にて互いに離れるように配置され、それぞれの組は前記周方向に沿って延びる連結ブリッジ743を備える。
【0024】
図中、前記サスペンション700の内輪部720は、ヨーク200のフランジ210とヨークカバー600との間に介在され、外輪部730はハウジング100の収容部120内側面に固定されている。
【0025】
具体的に、ハウジング100の収容部120の内側面には周方向に刻み込まれた係合溝150が形成され、前記係合溝150には環状の嵌合リング140が着脱自在に係合されていて、前記サスペンション700の外輪部730が前記嵌合リング140と係合溝150との間に介在され、前記回路基板部130もまた前記嵌合リング140とともに係合溝150に嵌合できるようになっている。
【0026】
前記内輪部720は振動子に相当するヨーク200に連結され、外輪部730はハウジング100に連結されるような構造となっているため、振動するヨーク200をハウジング100に対して弾性的に緩衝させかつ支持する役割を果たす。
【0027】
前記ヨーク200とヨークカバー600は、収容部120の底面から離れた状態で配置される。
前記ヨーク200の他に、マグネット300は振動子として機能する。
【0028】
前記サスペンション700は、ステンレス鋼、バリリル銅、黄銅またはリン青銅などの金属から形成されてもよい。
実験の結果、前記ブリッジ部740が3組以下に形成される場合、機械的な強さに劣るため耐久性が低下してしまうという欠点があり、5組以上に形成される場合、共振周波数が100Hzを大幅に上回ってしまうという欠点があるため、本発明に係るブリッジ部740は、4組に固定されて配置される。
【0029】
また、前記ブリッジ部740は、外輪部730から内輪部720に向かって半径方向に延びる第1の連結胴体741と、前記内輪部720から外輪部730に向かって半径方向に延びる第2の連結胴体742と、前記第1の連結胴体741と第2の連結胴体742とを繋ぎ合わせ、外輪部730と内輪部720との間にそれぞれギャップ750を形成した状態で延びる連結ブリッジ743と、を備えてなる。
【0030】
前記第1の連結胴体741と第2の連結胴体742は、一種の支持部であって、機械的な強さを保持して耐久性を高める役割を果たす。
また、前記連結ブリッジ743は、ある程度の幅を有し、第1の連結胴体741と第2の連結胴体742との間に連結されているので、応答変位と最大応力を基準値以下に合わせることが可能になる。
【0031】
特に、前記周方向に沿って、前記連結ブリッジ743は、両端から中央に向かって半径方向の幅が徐々に減少する形状の波形領域743aを備えていることから、耐久性を保持しながらも、ヨーク200など振動子から発せられる振動を物理的に柔らかく支持することが可能になる。
【0032】
以下においては、一実施形態として、外周13±0.1mm、幅5mmの寸法を有する円筒状の骨伝導スピーカー1000に組み込まれるサスペンション700の要部の寸法について説明する。前記骨伝導スピーカー1000の幅は、±20%内において選択可能である。
【0033】
いうまでもなく、前記骨伝導スピーカー1000の外径の寸法が異なってくると、サスペンション700の相対的な寸法もまた異なってくる可能性がある。
まず、前記波形領域743aは、前記円形の中心に対して40°~80°の範囲にあるようにすることが好ましい。
【0034】
前記波形領域743aの角度αが円形の中心に対して40°よりも小さな場合、共振周波数が急激に大きくなって受信される音響の質が低下し、80°よりも大きな場合には、応答変位と最大応力が過剰に大きくなって耐久性が大幅に低下してしまう。
【0035】
図8に示すように、1次共振モードにおいて所定の電磁気力を働かせるとき、前記ブリッジ部740の最大応力は連結ブリッジ743の両端に現れ、これは、予想の通りである。
【0036】
このとき、拘束条件として、ハウジング100の回路基板部130と収容部120の上端を固定し、軸方向の電磁気力を働かせた。
また、前記内輪部720の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部730の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記連結ブリッジ743の最小幅wは0.3mm~0.6mmの範囲にあることが好ましい。
【0037】
前記連結ブリッジ743の最小幅を0.3mmよりも小さく形成すれば、応答変位が過剰に大きくなって耐久性が大幅に低下し、0.6mmよりも大きく形成すれば、共振周波数が100Hzを超えてしまう結果、受信される音響の質が低下してしまう。
【0038】
また、内輪部720の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部730の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記ブリッジ部740の厚さtは0.06mm~0.3mmの範囲にあることが好ましい。
【0039】
前記ブリッジ部740の厚さが0.06mmに満たなければ、応答変位と最大応力が過剰に大きくなって耐久性が大幅に低下し、0.3mmを超えると、共振周波数が急増してしまう結果、受信される音響の質が低下してしまう。
【0040】
このように、ブリッジ部740の各種の寸法(連結ブリッジの波形領域の角度、最小幅および厚さ)の最適な選択を通して共振周波数、応答変位および最大応力の適切な制限が行われることが可能になる。
【0041】
このような内容を踏まえて、上述した制限条件を満たすサスペンションの最適な寸法を得ることができる。
この場合に考慮すべことは、波形領域743aの角度、連結ブリッジ743の最小幅、およびブリッジ部740の厚さと応答変位および最大応力との間の関係である。
【0042】
図6aから図6cに示すように、実験的に、波形領域の角度は共振周波数に半比例し、応答変位と最大応力に比例するということが判明し、連結ブリッジ743の幅は共振周波数に比例し、変位に半比例し、最大応力とは無関係であるということが判明し、ブリッジ部740の厚さは共振周波数に比例し、応答変位と最大応力に対しては非線形特性を示すということが判明している。
【0043】
このような関係に基づいて、共振周波数(F)と応答変位(δ)、最大応力(σmax)に対する予測モデルを下記の式のような回帰方程式を用いて立てることができる。
まず、共振周波数(F)の回帰方程式は、下記の[式1]の通りである。
【0044】
【数1】
次いで、応答変位(δ)の回帰方程式は、下記の[式2]の通りである。
【0045】
【数2】
そして、最大応力(σmax)の回帰方程式は、下記の[式3]の通りである。
【0046】
【数3】
これらの関係式を用いて、所定の制限条件(constraints)を満たす波形領域743aの角度、連結ブリッジ743の最小幅、およびブリッジ部740の厚さの最適な値を得ることができる。
【0047】
数値的には、前記ブリッジ部740の4組に対してサスペンション700の主な要求条件である共振周波数(F)100Hz以下、応答変位(δ)0.62mm以下、最大応力(σmax)2,300Mpa以下の制限条件を適用したとき、波形領域743aの角度70°、連結ブリッジ743の最小幅0.3mm、およびブリッジ部740の厚さ0.09mmが得られた。
【0048】
このように、ブリッジ部740の4組を基準としてコンピューターシミュレーションを用いて導き出された波形領域743aの角度、連結ブリッジ743の最小幅およびブリッジ部740の厚さを対象として実験的に検証した場合、上記の制限条件をいずれも満たすということが明らかになった。
【0049】
実験的に、たとえ前記波形領域743aの角度は70°±2°に、連結ブリッジ743の最小幅は0.3mm+0.03mmに、かつ、ブリッジ部740の厚さは0.09mm±0.01mmに定めたとしても、制限条件の範囲内にあるということを言及しておく。
【0050】
一方、前記制限条件のうち、応答変位(δ)と最大応力(σmax)を両方とも満たさないこともあるが、この場合には、電磁気力を整えて応答変位(δ)と最大応力(σmax)を整えてもよい。
【0051】
これは、マグネット300とコイル500により形成される磁気線速および磁場を整えることにより可能になる。
ちなみに、電磁気力が弱くなるにつれて、応答変位(δ)と最大応力(σmax)の値が低くなり、疲労寿命を延ばすという傾向にある。
【0052】
図7の音圧レベル(SPL:Sound Pressure Level)から明らかなように、本発明に係るサスペンション700を適用するとき、骨伝導スピーカー1000は、高音域においてだけではなく、低音域における音質に非常に優れているということがわかる。
【0053】
また、図9に示すように、固有振動数の応答解析を通して、軸方向に往復動するモードが1次モードとして得られるということがわかり、チルディングなどの運動は残りのモードにおいて現れるということがわかる。
【0054】
この場合、周波数入力範囲は10Hz~10kHzにし、減衰比(Damping Ratio)は0.0216にし、荷重条件として0.019485 Nの電磁気力を適用し、拘束条件としてハウジング100の回路基板部130と収容部120の上端を固定した状態でヨーク200の中央点における変位を測定した。
【0055】
前記コイル500が配設されたハウジング100の端部には回路基板部130が配設されているので、各種の制御機能を行うことができ、代表的に、前記回路基板部130は、デジタルシグナルプロセッシング(DSP:Digital Signal Processing)回路を備えていてもよい。
【0056】
以上、本発明者により案出された発明を前記実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱しない範囲において種々に変更可能であるということはいうまでもない。
【符号の説明】
【0057】
100 ハウジング
110 収容空間
120 収容部
130 回路基板部
200 ヨーク
300 マグネット
400 マグネット支持部
500 コイル
600 ヨークカバー
700 サスペンション
710 中空
720 内輪部
730 外輪部
740 ブリッジ部
741 第1の連結胴体
742 第2の連結胴体
743 連結ブリッジ
743a 波形領域
750 ギャップ
1000 骨伝導スピーカー
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-05-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容空間が形成されるハウジングと、
前記ハウジングの前記収容空間内に配設され、容器状を呈するヨークと、
前記ヨークの上部に配設されるマグネットと、
前記マグネットの上部に配設されるマグネット支持部と、
前記マグネット支持部を取り囲むコイルと、
前記ヨークの周りを包み込むように配置されるヨークカバーと、
前記ハウジング内において前記ヨークと前記ハウジングとを繋ぎ合わせるサスペンションと、
を備え、
前記サスペンションは、平面をなし、中空が形成され、一定の幅を有する一体型の円形環状に形成されており、前記中空と隣り合い、前記中空の周方向に延びる内輪部と、外周を形成する外輪部と、前記内輪部と前記外輪部とを繋ぎ合わせるブリッジ部と、を備え、
前記ブリッジ部は、4組が前記周方向に沿って等間隔にて互いに離れるように配置され、それぞれの組は前記周方向に沿って延びる連結ブリッジを備え
前記ブリッジ部は、
前記外輪部から前記内輪部に向かって半径方向に延びる第1の連結胴体と、
前記内輪部から前記外輪部に向かって半径方向に延びる第2の連結胴体と、
を備え、
前記連結ブリッジは、
前記第1の連結胴体と前記第2の連結胴体とを繋ぎ合わせ、前記外輪部と前記内輪部との間にそれぞれギャップを形成した状態で延びるとともに、
前記周方向に沿って、両端から中央に向かって半径方向の幅が次第に減少する形状の波形領域を備え
ことを特徴とする骨伝導スピーカー。
【請求項2】
前記波形領域の両端が前記円形の中心に対してなす角度は、40°~80°の範囲にあることを特徴とする請求項に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項3】
前記内輪部の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記連結ブリッジの最小幅は0.3mm~0.6mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項4】
前記内輪部の内周面の直径は8.85±0.03mm、前記外輪部の外周面の直径は12.25±0.03mmの寸法を有し、前記ブリッジ部の厚さは0.06mm~0.3mmの範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項5】
前記波形領域は、その両端が前記円形の中心に対してなす角度が70°、前記連結ブリッジの最小幅は0.3mm、前記ブリッジ部の厚さは0.09mmになるように形成されることを特徴とする請求項に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項6】
前記ハウジングは、容器状の収容部と、前記収容部の開口を覆い、デジタルシグナルプロセッシング(DSP)回路を適用した回路基板部と、から構成され、前記収容部に面する前記回路基板部の一方の面にはコイルが配設されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨伝導スピーカー。
【請求項7】
電磁気力を整える機能を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の骨伝導スピーカー。
【外国語明細書】