(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023087778
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法および焼結機
(51)【国際特許分類】
C22B 1/20 20060101AFI20230619BHJP
F27B 21/08 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
C22B1/20 L
F27B21/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202254
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】福田 啓之
(72)【発明者】
【氏名】野島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 一洋
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA40
4K001GA10
(57)【要約】
【課題】焼結機の幅方向において気体燃料の供給量を制御することで、焼結原料層における局所的な熱不足を解消し、焼結鉱の歩留の低下を抑制できる焼結鉱の製造方法および製造装置を提供する。
【解決手段】
焼結機の給鉱装置でパレットに鉄含有原料と凝結材とを含む焼結原料を装入して装入層を形成し、気体燃料供給装置からパレットの幅方向に異なる量の気体燃料を装入層に供給し、焼結原料を焼結して焼結ケーキとした後、破砕して焼結鉱とする焼結鉱の製造方法であって、気体燃料供給装置は、パレットの移動方向に複数の気体燃料吐出ノズルを有する気体燃料供給管と、整流板とを複数有し、気体燃料吐出ノズルは、気体燃料を装入層の上表面と平行な水平方向であって、幅方向に吐出するように設けられ、整流板の傾斜角度θは5°以上であり、かつ下記(1)式を満たす。
tanθ≦(W/2-D1)/H・・・(1)
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機の給鉱装置で無端移動式のパレットに鉄含有原料と凝結材とを含む焼結原料を装入して装入層を形成し、
前記給鉱装置の下流側に設けられる点火炉で前記装入層の上表面の前記凝結材に点火し、
前記点火炉の下流側に設けられる気体燃料供給装置から前記パレットの幅方向に異なる量の気体燃料を前記装入層に供給し、
前記パレットの下方に設けられた風箱で前記装入層内の空気を吸引し、前記凝結材を燃焼させて前記焼結原料を焼結して焼結ケーキとした後、前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする、焼結鉱の製造方法であって、
前記気体燃料供給装置は、前記パレットの移動方向に複数の気体燃料吐出ノズルを有する気体燃料供給管と、整流板とを複数有し、
複数の前記気体燃料供給管は、前記幅方向において異なる位置に設けられ、
前記気体燃料吐出ノズルは、前記気体燃料を前記上表面と平行な水平方向であって、前記幅方向に吐出するように設けられ、
前記整流板は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、
前記整流板の傾斜角度θは5°以上であって下記(1)式を満たし、かつ前記整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、焼結鉱の製造方法。
tanθ≦(W/2-D1)/H・・・(1)
(1)式において、θは前記上表面の垂線に対して前記整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記整流板の傾斜角度(°)であり、Wは前記幅方向に隣合う前記気体燃料供給管間の距離(m)であり、D1は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記整流板との距離(m)であり、Hは前記気体燃料供給管から前記上表面までの距離(m)である。
【請求項2】
前記気体燃料供給装置は、前記気体燃料供給管を囲むように設けられた筒状のフードと、前記フードの下端に設けられ前記フードの内側に突出する長さが20mm以上200mm以下の漏洩防止板と、前記フードと前記気体燃料供給管との間に設けられる端部整流板と、をさらに有し、
前記端部整流板は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、
前記端部整流板の傾斜角度φは、5°以上30°以下であって下記(2)式を満たし、かつ前記端部整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
(L-D2-B)/(H-S)≦tanφ・・・(2)
(2)式において、φは前記上表面の垂線に対して前記端部整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記端部整流板の傾斜角度(°)であり、Lは前記フードと前記気体燃料供給管との距離(m)であり、D2は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記端部整流板との距離(m)であり、Bは前記漏洩防止板の前記長さ(m)であり、Sは前記漏洩防止板と前記上表面との距離(m)である。
【請求項3】
前記装入層の前記幅方向の両端部への気体燃料の供給量を前記幅方向の全体の平均気体燃料供給量よりも増加させる、請求項1または請求項2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
焼結時の熱量が不足している前記幅方向における前記装入層の位置を特定し、前記位置への気体燃料の供給量を前記幅方向の全体の平均気体燃料供給量よりも増加させる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
鉄含有原料と凝結材とを含む焼結原料を供給する給鉱装置と、
前記焼結原料が装入されて装入層が形成される無端移動式のパレットと、
前記給鉱装置の下流側に設けられ、前記装入層の上表面の凝結材に点火する点火炉と、
前記点火炉の下流側に設けられ、前記パレットの幅方向に異なる量の気体燃料を前記装入層に供給する気体燃料供給装置と、
前記パレットの下方に設けられ前記装入層内の空気を吸引する風箱と、
を有する焼結機であって、
前記気体燃料供給装置は、前記パレットの移動方向に複数の気体燃料吐出ノズルを有する気体燃料供給管と、整流板とを複数有し、
複数の前記気体燃料供給管は、前記幅方向において異なる位置に設けられ、
前記気体燃料吐出ノズルは、前記気体燃料を前記上表面と平行な水平方向であって、前記幅方向に吐出するように設けられ、
前記整流板は、前記気体燃料吐出ノズルから前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、
前記整流板の傾斜角度θは5°以上であって下記(1)式を満たし、かつ前記整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、焼結機。
tanθ≦(W/2-D1)/H・・・(1)
(1)式において、θは前記上表面の垂線に対して前記整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記整流板の傾斜角度(°)であり、Wは前記幅方向に隣合う前記気体燃料供給管間の距離(m)であり、D1は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記整流板との距離(m)であり、Hは前記気体燃料供給管から前記上表面までの距離(m)である。
【請求項6】
前記気体燃料供給装置は、前記気体燃料供給管を囲むように設けられた筒状のフードと、前記フードの下端に設けられ前記フードの内側に突出する長さが20mm以上200mm以下の漏洩防止板と、前記フードと前記気体燃料供給管との間に設けられる端部整流板と、をさらに有し、
前記端部整流板は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、
端部整流板の傾斜角度φは5°以上30°以下であって下記(2)式を満たし、かつ前記端部整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、請求項5に記載の焼結機。
(L-D2-B)/(H-S)≦tanφ・・・(2)
(2)式において、φは前記上表面の垂線に対して前記端部整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記端部整流板の傾斜角度(°)であり、Lは前記フードと前記気体燃料供給管との距離(m)であり、D2は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記端部整流板との距離(m)であり、Bは前記漏洩防止板の前記長さ(m)であり、Sは前記漏洩防止板と前記上表面との距離(m)である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉原料である焼結鉱の製造方法および焼結機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼結鉱が製造される焼結機においては、焼結原料を無端移動式のパレットに装入し、当該パレットに装入して形成された焼結原料層(装入層)への点火及び気体燃料の吹き込み(供給)を行い、焼結原料を焼結することで焼結鉱の元となる焼結ケーキを製造している。
【0003】
特許文献1には、焼結原料層への気体燃料の供給について、パレット上の焼結原料層への点火を行う点火炉の下流側において、焼結原料層の表面から吸引される気体燃料を焼結機の幅方向で均一に供給する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に開示された気体燃料の供給方法では、焼結原料層に対して、焼結機の幅方向で均一に気体燃料を吹き込むことを目的とした設計思想となっている。このため、燃料ガス配管から水平方向にガスを吐出し、焼結機の幅方向で気体燃料が均一に拡散した後、焼結原料層に吸引される構成となっている。さらに、安全上の観点から、燃料ガス配管から供給される気体燃料について、吹き消え現象が起こる程の流速で噴出させることがあり、この場合、燃料ガス配管の周囲の気流の流速の方が大きいため、焼結原料層の表面に到達する前に、気体燃料が幅方向の広範囲に拡散することとなる。そのため、焼結原料層の中で部分的に熱不足となった箇所に対し、意図的に気体燃料の供給を強化することができず、成品の歩留が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたもので、焼結機の幅方向における気体燃料の供給量の調整を可能とすることで、装入層における局所的な熱不足を解消し、焼結鉱の歩留の低下を抑制できる焼結鉱の製造方法および焼結機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は以下のとおりである。
[1]焼結機の給鉱装置で無端移動式のパレットに鉄含有原料と凝結材とを含む焼結原料を装入して装入層を形成し、前記給鉱装置の下流側に設けられる点火炉で前記装入層の上表面の前記凝結材に点火し、前記点火炉の下流側に設けられる気体燃料供給装置から前記パレットの幅方向に異なる量の気体燃料を前記装入層に供給し、前記パレットの下方に設けられた風箱で前記装入層内の空気を吸引し、前記凝結材を燃焼させて前記焼結原料を焼結して焼結ケーキとした後、前記焼結ケーキを破砕して焼結鉱とする、焼結鉱の製造方法であって、前記気体燃料供給装置は、前記パレットの移動方向に複数の気体燃料吐出ノズルを有する気体燃料供給管と、整流板とを複数有し、複数の前記気体燃料供給管は、前記幅方向において異なる位置に設けられ、前記気体燃料吐出ノズルは、前記気体燃料を前記上表面と平行な水平方向であって、前記幅方向に吐出するように設けられ、前記整流板は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、前記整流板の傾斜角度θは5°以上であって下記(1)式を満たし、かつ前記整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、焼結鉱の製造方法。
tanθ≦(W/2-D1)/H・・・(1)
(1)式において、θは前記上表面の垂線に対して前記整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記整流板の傾斜角度(°)であり、Wは前記幅方向に隣合う前記気体燃料供給管間の距離(m)であり、D1は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記整流板との距離(m)であり、Hは前記気体燃料供給管から前記上表面までの距離(m)である。
[2]前記気体燃料供給装置は、前記気体燃料供給管を囲むように設けられた筒状のフードと、前記フードの下端に設けられ前記フードの内側に突出する長さが20mm以上200mm以下の漏洩防止板と、前記フードと前記気体燃料供給管との間に設けられる端部整流板と、をさらに有し、前記端部整流板は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、前記端部整流板の傾斜角度φは、5°以上30°以下であって下記(2)式を満たし、かつ前記端部整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
(L-D2-B)/(H-S)≦tanφ・・・(2)
(2)式において、φは前記上表面の垂線に対して前記端部整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記端部整流板の傾斜角度(°)であり、Lは前記フードと前記気体燃料供給管との距離(m)であり、D2は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記端部整流板との距離(m)であり、Bは前記漏洩防止板の前記長さ(m)であり、Sは前記漏洩防止板と前記上表面との距離(m)である。
[3]前記装入層の前記幅方向の両端部への気体燃料の供給量を前記幅方向の全体の平均気体燃料供給量よりも増加させる、[1]または[2]に記載の焼結鉱の製造方法。
[4]焼結時の熱量が不足している前記幅方向における前記装入層の位置を特定し、前記位置への気体燃料の供給量を前記幅方向の全体の平均気体燃料供給量よりも増加させる、[1]から[3]のいずれか一つに記載の焼結鉱の製造方法。
[5]鉄含有原料と凝結材とを含む焼結原料を供給する給鉱装置と、前記焼結原料が装入されて装入層が形成される無端移動式のパレットと、前記給鉱装置の下流側に設けられ、前記装入層の上表面の凝結材に点火する点火炉と、前記点火炉の下流側に設けられ、前記パレットの幅方向に異なる量の気体燃料を前記装入層に供給する気体燃料供給装置と、前記パレットの下方に設けられ前記装入層内の空気を吸引する風箱と、を有する焼結機であって、前記気体燃料供給装置は、前記パレットの移動方向に複数の気体燃料吐出ノズルを有する気体燃料供給管と、整流板とを複数有し、複数の前記気体燃料供給管は、前記幅方向において異なる位置に設けられ、前記気体燃料吐出ノズルは、前記気体燃料を前記上表面と平行な水平方向であって、前記幅方向に吐出するように設けられ、前記整流板は、前記気体燃料吐出ノズルから前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、前記整流板の傾斜角度θは5°以上であって下記(1)式を満たし、かつ前記整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、焼結機。
tanθ≦(W/2-D1)/H・・・(1)
(1)式において、θは前記上表面の垂線に対して前記整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記整流板の傾斜角度(°)であり、Wは前記幅方向に隣合う前記気体燃料供給管間の距離(m)であり、D1は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記整流板との距離(m)であり、Hは前記気体燃料供給管から前記上表面までの距離(m)である。
[6]前記気体燃料供給装置は、前記気体燃料供給管を囲むように設けられた筒状のフードと、前記フードの下端に設けられ前記フードの内側に突出する長さが20mm以上200mm以下の漏洩防止板と、前記フードと前記気体燃料供給管との間に設けられる端部整流板と、をさらに有し、前記端部整流板は、前記気体燃料供給管から前記気体燃料の吐出方向に150mm以内の位置に設けられ、端部整流板の傾斜角度φは5°以上30°以下であって下記(2)式を満たし、かつ前記端部整流板の垂線方向の長さは50mm以上である、請求項5に記載の焼結機。
(L-D2-B)/(H-S)≦tanφ・・・(2)
(2)式において、φは前記上表面の垂線に対して前記端部整流板の上端が前記気体燃料吐出ノズル側へ傾斜する方向を正とする前記端部整流板の傾斜角度(°)であり、Lは前記フードと前記気体燃料供給管との距離(m)であり、D2は前記吐出方向における前記気体燃料供給管と前記端部整流板との距離(m)であり、Bは前記漏洩防止板の前記長さ(m)であり、Sは前記漏洩防止板と前記上表面との距離(m)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、焼結機の幅方向における気体燃料の供給量の調整が可能となり、装入層において部分的に熱不足となる箇所が生じても、焼結機の幅方向において気体燃料の供給量を調整することで、装入層における局所的な熱不足を解消でき、焼結鉱の歩留の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】焼結鉱の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図3】気体燃料供給管及び整流板の配置構成を示す模式図である。
【
図4】幅方向端部における気体燃料供給管及び端部整流板の配置構成を示す模式図である。
【
図5】装入層の断面領域の歩留調査の結果を示す図である。
【
図6】コークス比と装入層の収縮量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。
図1は、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法が実施できる焼結鉱の製造装置10の一例を示す模式図である。ヤード11に保管された鉄含有原料12は、搬送コンベア14によって配合槽22に搬送される。鉄含有原料12は、種々の銘柄の鉄鉱石および製鉄所内発生ダストを含む。
【0011】
原料供給部20は、複数の配合槽22、24、25、26、28を備える。配合槽22には、鉄含有原料12が貯留される。配合槽24には、石灰石や生石灰等を含むCaO含有原料16が貯留される。配合槽25には、ドロマイトや精錬ニッケルスラグ等を含むMgO含有原料17が貯留される。配合槽26には、ロッドミルを用いて粒径1mm以下に破砕された粉コークスや無煙炭を含む凝結材18が貯留される。配合槽28には、焼結鉱の篩下となった粒径5mm以下の返鉱(焼結鉱篩下粉)が貯留される。
【0012】
原料供給部20の配合槽22~28から、各原料が所定量切り出され、これらが配合されて焼結原料となる。焼結原料は、搬送コンベア30によってドラムミキサー36に搬送される。MgO含有原料17は、任意配合原料であって、焼結原料に配合されてもよく、配合されなくてもよい。
【0013】
ドラムミキサー36に搬送された焼結原料は、適量の水34が添加されてドラムミキサー36に投入され、例えば、平均粒径3.0~6.0mmの擬似粒子に造粒される。造粒された焼結原料は、搬送コンベア38によって焼結機40の給鉱装置42に搬送される。ドラムミキサー36は、焼結原料を造粒する造粒装置の一例であり、ドラムミキサー36は複数あってもよく、ドラムミキサー36に代えてペレタイザー造粒機を用いてもよい。また、ドラムミキサー36及びペレタイザー造粒機の両方を用いてもよく、ドラムミキサー36の上流に高速撹拌機を設置して、焼結原料を撹拌してもよい。
【0014】
本実施形態において、擬似粒子の平均粒径は算術平均粒径であって、Σ(Vi×di)(但し、Viはi番目の粒度範囲の中にある粒子の存在比率であり、diはi番目の粒度範囲の代表粒径である。)で定義される粒径である。
【0015】
焼結機40は、例えば、下方吸引式のドワイトロイド焼結機である。焼結機40は、給鉱装置42と、無端移動式のパレット44と、点火炉46と、気体燃料供給装置47と、ウインドボックス等の風箱48とを有する。給鉱装置42において焼結原料がパレット44に装入され、焼結原料の装入層が形成される。そして、装入層が形成されたパレット44は、給鉱装置42の下流側に設けられる点火炉46に移動する。点火炉46において装入層の表層(上表面)に含まれる凝結材18が点火される。その後、パレット44の下方に設けられた風箱48を通じて空気を吸引しながら、点火炉46の下流側に設けられる気体燃料供給装置47において装入層に気体燃料および酸素富化空気を吸気させ、装入層内で気体燃料と凝結材18とを燃焼させつつ装入層内の燃焼を継続し、溶融帯を装入層の下方へ移動させる。これにより、装入層は焼結されて焼結ケーキが形成される。気体燃料として、高炉ガス、コークス炉ガス、高炉・コークス炉混合ガス、転炉ガス、天然ガス、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、都市ガス、シェールガスなどの可燃性ガスを用いてよい。
【0016】
本実施形態における焼結機40の機長方向はパレット44の移動方向と同じ方向であり、焼結機40の幅方向は当該移動方向に対して垂直な方向であって、パレット44の幅方向と同じ方向である。
【0017】
焼結ケーキは、破砕機50によって破砕され、冷却機60によって冷却され、篩分け装置70によって篩分けされる。このようにして、粒径5mm超の焼結鉱が製造され、搬送コンベア76によって高炉80へ装入される。一方、篩分け装置70により篩分けられる粒径5mm以下の返鉱74は、搬送コンベア78によって原料供給部20の配合槽28に搬送される。焼結鉱72の粒径および返鉱74の粒径は、篩によって篩分けられる粒径を意味し、例えば粒径5mm超とは、目開き5mmの篩を用いて篩上に篩分けされる粒径であり、粒径5mm以下とは、目開き5mmの篩を用いて篩下に篩分けされる粒径である。焼結鉱72および返鉱74の粒径の各値は、あくまで一例であり、この値に限定するものではない。
【0018】
次に、
図2を参照して、気体燃料供給装置47の構成について説明する。
図2は、気体燃料供給装置47の断面模式図である。
図2において、図面の横方向が焼結機40及びパレット44の幅方向に相当する。図面の奥行方向が焼結機40の機長方向であり、パレット44の移動方向に相当する。
【0019】
図2に示す気体燃料供給装置47は、四角筒状のフード6と、複数の酸素富化空気供給管1と、複数の気体燃料供給管3と、複数の遮蔽板2とを有する。
図2に示す通り、気体燃料供給装置47には、例えば、焼結機40及びパレット44の幅方向に向けて、9本の酸素富化空気供給管1と、5本の気体燃料供給管3と、31枚の遮蔽板2とが設けられている。これらは、四角筒状のフード6の中において、下方から上方に向けて気体燃料供給管3、遮蔽板2、酸素富化空気供給管1の順に設けられる。9本の酸素富化空気供給管1には、焼結機40の機長方向(パレット44の移動方向)において異なる位置に複数の酸素富化空気吐出ノズルが設けられており、5本の気体燃料供給管3にも機長方向において異なる位置に複数の気体燃料吐出ノズル3aが設けられている。また、気体燃料供給管3は、機長方向に対して垂直なパレット44の幅方向において異なる位置に設けられている。
【0020】
各々の酸素富化空気吐出ノズルから酸素富化空気が吐出され、装入層4に酸素富化空気が供給される。各々の気体燃料吐出ノズル3aからは気体燃料が吐出され、装入層4に気体燃料が供給される。装入層4の上層は、中層、下層に比べて焼結時の温度が低温になりやすく歩留りが低下しやすい。この点につき、本実施形態では、気体燃料や酸素富化空気を装入層4に供給することで、装入層4の上層の焼結時の温度を高めることができ、装入層4の上層の歩留の低下を抑制できる。また、遮蔽板2は気体燃料の上昇を防止し、上部(フード6内における酸素富化空気供給管1よりも上方の空間)での酸素富化空気と気体燃料との混合を抑制する。なお、
図2に示すように遮蔽板2を設けた場合であっても、気体燃料がフード6内の上部に流れる可能性があるため、遮蔽板2の上方に気体燃料の有無を検出する検出器(図示省略)を設けて、気体燃料の上昇の有無を常時監視することが好ましい。
【0021】
図2を用いて、気体燃料供給装置47に酸素富化空気供給管1および遮蔽板2を設けた構成を説明したが、酸素富化空気供給管1及び遮蔽板2は必ずしも設けられていなくてもよい。ただし、遮蔽板2を設けることで、焼結機40の周辺の風(気流)による気体燃料への影響が抑制され、気体燃料のフード6の外部への飛散が抑制されるため、気体燃料供給装置47には遮蔽板2を設けることが好ましい。気体燃料供給装置47は、各気体燃料供給管3への気体燃料の供給量を制御する制御装置(不図示)を有する。各気体燃料供給管3への気体燃料の供給量は当該制御装置によって制御される。
【0022】
次に、気体燃料供給管3と、気体燃料供給管3の近傍に配置される整流板5の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、気体燃料供給管3及び整流板5の配置構成を示す模式図である。
図3に示す通り、気体燃料供給管3の気体燃料吐出ノズル3aから吐出される気体燃料は、装入層4の上表面に対しほぼ平行(水平)な方向(図中矢印参照)であって、焼結機40及びパレット44の幅方向に向けて吐出される。そして、整流板5に衝突し、整流板5の傾斜角度に基づいて、装入層4の上表面において区分けされた供給領域に向けて、個別に調整された流量の気体燃料が供給されることとなる。
【0023】
整流板5は、気体燃料吐出ノズル3aに対し、気体燃料の吐出方向であって、気体燃料供給管3から150mm以内の距離となる位置に設けることが好ましい。気体燃料供給管3からの距離が150mmを超えると、吐出された気体燃料が、整流板5へ衝突する前に、装入層4へ吸気されている他の空気と拡散して下方へ流れてしまい、整流板5による気体燃料の供給位置の制御が不可能になるためである。そして、整流板5は、気体燃料供給管3から100mm以内の距離となる位置に設けることがより好ましい。気体燃料吐出ノズル3aから吐出された気体燃料は、100mm以内の距離であれば、水平方向への移動を概ね維持できるため、整流板5による流動制御が正確に実施できるからである。また、整流板5の垂線方向の長さは50mm以上であることが好ましい。整流板5の垂線方向の長さを50mm以上とすることで、整流板5に気体燃料が確実に衝突させ、気体燃料の供給位置を制御できる。
【0024】
図3に示す整流板5の傾斜角度θは5°以上であって以下の(1)式を満たすことが好ましい。
tanθ≦(W/2-D1)/H・・・(1)
ここで、θは装入層4の上表面の垂線Kに対して整流板5の上端が気体燃料吐出ノズル3a側へ傾斜する方向を正とする整流板5の傾斜角度(°)であり、Wは幅方向に隣合う気体燃料供給管3間の距離(m)であり、D1は、気体燃料の吐出方向における気体燃料供給管3と整流板5との距離(m)であり、Hは気体燃料供給管3から装入層4の上表面までの距離(m)である。
【0025】
整流板5の傾斜角度θが5°よりも小さいと、整流板5に衝突した後の気体燃料がフード6内における上方にも拡散し、気体燃料漏洩の問題が発生する。このため、整流板5の傾斜角度θを5°以上にすることで、整流板5への衝突の後に整流板5に沿った上方への流動を抑制でき、吸気されている空気と共に下方へ流れる。
【0026】
(1)式よりθが大きい場合((1)式を満たさない場合)には、幅方向に隣り合う気体燃料供給管3同士で気体燃料が供給される領域(装入層4の上表面)の一部が重なることとなり、装入層4の上表面にて区分けされた各供給領域に対して、気体燃料の供給量の個別の調整が困難となる。このため、(1)式を満たす構成とすることで、装入層4の上表面における気体燃料の供給領域を区分けでき、加えて、気体燃料供給管3への気体燃料の供給量を制御することで、区分けされた供給領域ごとへの気体燃料の供給量が調整可能となる。
【0027】
なお、整流板5を用いること無く、気体燃料吐出ノズル3aの向きを傾斜させた場合には、吐出流量に応じて吐出流速が変化することになり、装入層4の上表面に気体燃料が到達した際に、幅方向に大きく拡散してしまう。その一方で、整流板5を用いた場合には、整流板5に気体燃料を衝突させて気体燃料の運動量を低下させると共に、整流板5の傾斜角度に応じて気体燃料の流れの向きを調整できるため、吐出流量の変化が生じたとしても、気体燃料の流動制御が可能となる。
【0028】
次に、焼結機40の幅方向端部における気体燃料供給管3及び端部整流板7の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、幅方向端部における気体燃料供給管3及び端部整流板7の配置構成を示す模式図である。
図4に示す通り、フード6の内壁面に最も近い位置に設けられる気体燃料供給管3については、フード6の内壁面側に向けて気体燃料を吐出する方向であって、フード6と気体燃料供給管3との間に端部整流板7を設ける。そして、気体燃料供給管3を挟んで端部整流板7と対向する位置には、先述した整流板5が設けられる。
【0029】
ここで、パレット44を機長方向に移動可能とする装置の構成から、
図4に示す通り、気体燃料供給管3を囲むように設けられた四角筒状のフード6とパレット44との間には、隙間Sが存在する。このため、パレット44の幅方向の端部の装入層4に向けて、意図的に気体燃料を供給すると、装入層4の表面に気体燃料が衝突した際に当該気体燃料が拡散し、フード6とパレット44との間の隙間Sから気体燃料が漏洩し、効果的な気体燃料の供給が不可能となる。従来は、安全上の観点から、パレット44の幅方向端部の装入層4に向けた気体燃料の直接的な供給が行えず、その他の幅方向の空間に存在する気体燃料が幅方向端部の装入層4に低濃度でゆっくり吸引されて焼結が行われるため、幅方向端部の装入層4においては、最終的な製品としての歩留値は低くなっていた。
【0030】
このため、本実施形態においては、フード6の下方の位置にてフード6の内側に突出する20mm以上200mm以下の長さの水平部を有する漏洩防止板8を設けている。これにより、フード6とパレット44との間の隙間Sから気体燃料が漏洩することが防止され、幅方向端部の装入層4への気体燃料の直接的な供給を可能としている。ここで、漏洩防止板8の長さが20mmより短いと、漏洩防止効果が無くなる。漏洩防止板8の長さが200mmより長いと、装入層4の端部を広く覆う構成となるため、装入層4の端部への気体燃料の効率的な供給が不可能となる。なお、漏洩防止板8は、フード6の内壁面における設置位置が高くなるほど、後述する(2)式を満たすことが難しくなるため、四角筒状のフード6の内側であって、フード6の下端近傍に設置することが好ましい。
【0031】
図4に示す通り、焼結機40の幅方向端部においても、気体燃料供給管3の気体燃料吐出ノズル3aから吐出される気体燃料は、装入層4の上表面に対しほぼ平行(水平)な方向(図中矢印参照)であって、焼結機40及びパレット44の幅方向に向けて吐出される。そして、端部整流板7に衝突し、端部整流板7の傾斜角度に基づいて、漏洩防止板8の上面に向けて、気体燃料が流動制御される。
【0032】
端部整流板7は、整流板5と同様に気体燃料吐出ノズル3aに対し、気体燃料の吐出方向であって、気体燃料供給管3から150mm以内の距離となる位置に設けることが好ましい。気体燃料供給管3からの距離が150mmを超えると、吐出された気体燃料が、端部整流板7へ衝突する前に、装入層4へ吸気されている他の空気と拡散して下方へ流れてしまい、端部整流板7による供給位置の制御が不可能になるためである。そして、端部整流板7は、気体燃料供給管3から100mm以内の距離に設けることがより好ましい。気体燃料吐出ノズル3aから吐出された気体燃料は、100mm以内の距離であれば、水平方向への移動を概ね維持できるため、端部整流板7による流動制御が正確に実施できるからである。また、端部整流板7の垂線方向の長さも、整流板5と同様に50mm以上であることが好ましい。端部整流板7の垂線方向の長さを50mm以上とすることで、端部整流板7に気体燃料が確実に衝突させ、気体燃料の供給位置を制御できる。
【0033】
端部整流板7の傾斜角度φは、5°以上30°以下であって下記の(2)式を満たすことが好ましい。
(L-D2-B)/(H-S)≦tanφ・・・・(2)
ここで、φは装入層4の上表面の垂線Kに対して端部整流板7の上端が気体燃料吐出ノズル3a側へ傾斜する方向を正とする端部整流板7の傾斜角度(°)であり、Lはフード6と気体燃料供給管3との距離(m)であり、D2は、気体燃料の吐出方向における気体燃料供給管3と端部整流板7との距離(m)であり、Bは漏洩防止板8の水平部の長さ(m)であり、Sは漏洩防止板8と装入層4の上表面との距離(m)である。
【0034】
端部整流板7の傾斜角度φが5°よりも小さいと、端部整流板7に衝突した後の気体燃料がフード6内における上方にも拡散し、気体燃料漏洩の問題が発生する。このため、端部整流板7の傾斜角度φを5°以上にすることで、端部整流板7への衝突の後に端部整流板7に沿った上方への流動を抑制でき、吸気されている空気と共に下方へ流れる。
【0035】
なお、端部整流板7の傾斜角度φが30°よりも大きいと、気体燃料がフード6の壁面に衝突した際に、壁面の上方へ沿った流れが発生してフード6内における上方への拡散が起こるため、効果的な気体燃料の供給ができなくなる。そのため、(2)式を満たすことにより、装入層4の幅端部の漏洩防止板8の上面への気体燃料の供給を意図的に実施でき、フード6からの気体燃料の漏洩を防止できる。
【0036】
以上の通り、本実施形態においては、気体燃料を水平方向に向けて吐出可能な気体燃料吐出ノズル3aを設けると共に、気体燃料供給管3から150mm以内の距離となる位置に整流板5を設け、先述した(1)式を満たす構成とすることで、装入層4の上表面に対する気体燃料の供給について、気体燃料の供給領域の区分けが可能となり、複数ある供給領域から特定の供給領域を選択して気体燃料を供給できるようになる。
【0037】
さらに、焼結機40の幅方向端部に端部整流板7を設けると共に、フード6の内壁面の下部に漏洩防止板8を設け、先述した(2)式を満たす構成とすることで、装入層4の幅方向端部において、フード6からの気体燃料の漏洩を防止できる。
【0038】
次に、従来の焼結方法であって、整流板5や端部整流板7を用いずに焼結鉱を製造した場合の焼結鉱の歩留状況について、
図5を用いて説明する。
図5に示す寸法情報に関する数値単位は、mm(ミリメートル)である。
図5は、幅方向3.8m、装入層厚570mmの装入層4について、上層~下層に亘る断面方向において、3行10列で区分した断面領域の焼結鉱の歩留調査の結果を示す図である。各断面領域における数値は、当該断面領域における最終的な製品としての歩留値である。
【0039】
図5に示す通り、装入層4の下層に比べて上層の歩留が低く、パレット44の幅方向中央部に比べて両端部の歩留が特に低いことがわかる。このため、当該歩留を向上させるために気体燃料を装入層4に供給する場合、幅方向中央部の歩留を基準に気体燃料を幅方向に均一に供給すると、両端部の歩留を十分に上昇させることができない。一方、両端部の歩留を基準に気体燃料を幅方向に均一に供給すると、幅方向中央部への気体燃料の供給量が過剰となるので、当該過剰となる気体燃料分のコストが上昇してしまう。
【0040】
これに対し、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法および焼結機では、装入層4の上表面において、装入層4の幅方向における気体燃料の供給領域の区分けが可能となり、複数ある供給領域から特定の供給領域を選択すると共に当該供給領域への気体燃料の供給量を調整できる。このため、装入層4のパレット44の幅方向の気体燃料の供給量について、幅方向両端部への気体燃料の供給量を全体の平均気体燃料の供給量よりも増加させることができる。これにより、パレット44の幅方向の両端部の歩留を他の領域よりも向上できるので、気体燃料を過剰に供給することを抑制しつつ、焼結鉱の歩留を向上できる。
【0041】
次に、コークス比と装入層の収縮量との関係について、
図6を用いて説明する。
図6は、コークス比と装入層の収縮量との関係を示すグラフである。コークス比は、焼結原料に含まれる凝結材18である粉コークスの配合割合(質量%)である。装入層4の収縮量(mm)は、焼結原料をパレット44に装入して装入層4を形成させた後の装入層4の上表面位置が焼結後にどのくらい低下したかを示し、装入層4が形成された後の上表面高さと焼結後の装入層4の上表面高さとの差により算出される。
【0042】
図6に示す通り、焼結原料のコークス比が高くなるにしたがって装入層4の収縮量は大きくなることが確認できる。ここで、焼結原料のコークス比は焼結時の熱量を示すので、この結果から、焼結による装入層4の収縮量と焼結時の熱量とには相関関係があり、装入層4の収縮量を測定することで、焼結時の熱量が求められることがわかる。
【0043】
つまり、装入層4が形成された直後の位置、及び、焼結機の機端の位置(装入層4の焼結工程を終える位置)に非接触式の位置測定装置を設置して各々の位置で上表面の高さを測定し、焼結前後の装入層4の上表面の高さの差(収縮量)を算出することで、装入層4の幅方向において熱不足となる位置の特定が可能となる。非接触式の位置測定装置として、レーザー変位計または音波式の距離計を用いることができるが、位置測定が可能な測定器である限り、特定の測定器に限定されない。
【0044】
このため、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法および焼結機では、焼結後の装入層4の焼結後の収縮量を測定して、焼結時の熱量が不足している装入層4の幅方向の位置を特定し、当該位置に相当する供給領域の位置への気体燃料の供給量を、当該幅方向における全体の平均気体燃料供給量よりも増加させてもよい。
【0045】
また、焼結後の装入層4の収縮量の測定を行わなくとも、焼結時に熱不足となる位置(例えば、装入層4の幅方向両端部)が予め特定されている場合には、装入層4の熱不足となる位置への気体燃料の供給量を、全体の平均気体燃料供給量よりも増加させてもよい。
【0046】
このように、焼結原料の成分濃度の変動によりパレット44の幅方向において焼結時の熱量が少なくなる位置が発生した場合でも、熱量が低下した装入層4の位置を特定し、当該位置に相当する供給領域への気体燃料の供給量を、他の供給領域よりも増加させることで熱量を補填でき、熱量低下による焼結鉱の生産性低下(歩留低下)を抑制できる。
【実施例0047】
以下、本実施形態に係る焼結鉱の製造方法および焼結機を用いて、焼結鉱の歩留を調べた実施例を説明する。
【0048】
<実施例1>
本実施例では、幅3.8m、層厚570mmの装入層4に対し、
図2に示すように、装入層4の上表面から500mm上方の位置に、気体燃料供給管3を幅方向対称に800mmピッチで5本設置した。供給される気体燃料として都市ガスを使用し、吸引大気に対して、0.4vol.%になるように調整し、幅方向中央に設けた気体燃料供給管3の気体燃料吐出ノズル3aから水平に噴射した。
【0049】
また、気体燃料供給装置47におけるパレット44の移動方向の前後に、超音波式変位計を気体燃料供給管3と同じ幅方向の位置に5個設置した。整流板5の傾斜角度θ、吐出方向の距離D1および長さを変えた条件でそれぞれ焼成を実施した。焼成後のパレットを抜き出し、装入層4の上層である層高さ方向の1/3部分を幅方向にて10分割し、中央2カ所の平均歩留を調査した。表1に、整流板5の設置条件を示す。なお、整流板5を設置しなかった場合の平均歩留は79%であった。
【0050】
【0051】
発明例1は、長さ100mmの整流板5を気体燃料供給管3から100mm離れた位置において、傾斜角度θ=20°で設置することで、都市ガスを気体燃料供給管3の直下の中央2カ所の範囲に供給することができたため、当該範囲の平均歩留が2%向上した。
【0052】
比較例1は、整流板5と気体燃料供給管3との距離が300mmと大きかったため、中央2カ所の範囲に都市ガスを効果的に供給できなかった。このため、当該範囲の平均歩留は整流板5を設けなかった場合と同じとなり、平均歩留を向上させることができなかった。比較例2は、整流板5の傾斜角度θを0°としたため、都市ガスが上方へ漏洩してしまい、安全上の観点から、都市ガス供給を中止した。比較例3は、整流板5の傾斜角度θを60°としたため、先述した(1)式を満たさなくなり、中央2カ所の範囲に都市ガスを効果的に供給できなかった。このため、当該範囲の平均歩留は整流板5を設けなかった場合と同じとなり、平均歩留を向上させることができなかった。比較例4は、長さ40mmの整流板5を用いたため、中央2カ所の範囲に都市ガスを効果的に供給できなかった。このため、当該範囲の平均歩留は整流板5を設けなかった場合と同じとなり、平均歩留を向上させることができなかった。比較例5は整流板5を設置しない場合の結果であり、平均歩留は79%であった。
【0053】
<実施例2>
次に、幅方向の両端部の装入層4も含め、気体燃料供給管3の気体燃料吐出ノズル3aの全てを水平方向に噴射し、整流板5に加え端部整流板7も設置した。表2に、端部整流板7や漏洩防止板8に関する条件と結果を示す。整流板5は、長さ60mmの構成とし、気体燃料供給管3から50mm離れた位置にて傾斜角度θを30°として設置した。なお、装入層4の幅方向の端部に都市ガスを供給しなかった場合には、幅方向の両端部から300mmの部分であって、装入層4の上層である層高さ方向の1/3部分の歩留は67%であった。
【0054】
【0055】
発明例2は、長さ150mmの端部整流板7を気体燃料供給管3から80mm離れた位置にて傾斜角度φを20°として設置した。そして、装入層4の上表面から100mmの高さ位置に水平部が100mmの長さの漏洩防止板8を設置したので、フード6の下端の隙間から都市ガスが漏洩することなく、装入層4の端部に都市ガスを供給することができ、歩留が75%に向上した。
【0056】
参考例1は、端部整流板7の傾斜角度φを0°としたため、都市ガスが上方およびパレット44とフード6との隙間から拡散してしまい、安全上の観点から、都市ガス供給を中止した。参考例2は、端部整流板7の傾斜角度φを45°としたため、都市ガスが上方へ拡散してしまい、都市ガス供給を中止した。参考例3は、端部整流板7を気体燃料供給管3から200mmの位置に設置したので、都市ガスの流動制御を行うことができず、都市ガスが上方へ拡散してしまい、都市ガス供給を中止した。参考例4は、端部整流板7の長さを40mmとして設置したため、都市ガスの流動制御を行うことができず、都市ガスの一部が上方へ拡散したため、都市ガス供給を中止した。参考例5では、漏洩防止板8の長さを10mmとしたため、パレット44とフード6との隙間から都市ガスが漏洩したため、都市ガス供給を中止した。参考例6では、漏洩防止板8の水平部の長さを250mmとしたため、装入層4の幅方向の端部に都市ガスが効果的に供給されず、歩留は69%となった。参考例7は、漏洩防止板8を装入層4の上表面から200mmの位置に設置したため、パレット44とフード6との隙間から都市ガスが漏洩したため、都市ガス供給を中止した。
【0057】
以上の結果から、垂線方向の長さが50mm以上であり、気体燃料供給管からの距離が150mm以内であり、かつ、先述した(1)式を満たすように整流板5を設けることで気体燃料を特定範囲に選択的に供給でき、当該範囲の歩留を向上できることが確認された。さらに、焼結機40の幅方向端部に端部整流板7を設けると共に、フード6の内壁面の下部に漏洩防止板8を設け、先述した(2)式を満たす構成とすることで、装入層4の幅方向端部においてフード6からの気体燃料の漏洩を防止しつつ気体燃料を供給でき、当該範囲の歩留を向上できることが確認された。