(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088067
(43)【公開日】2023-06-26
(54)【発明の名称】孔合わせ治具、及び棒状部材挿入方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20230619BHJP
E21D 11/40 20060101ALI20230619BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20230619BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E21D11/40 B
E04H9/02
E04H9/02 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021202700
(22)【出願日】2021-12-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】521547334
【氏名又は名称】三誓金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 義彬
(72)【発明者】
【氏名】井野口 力也
(72)【発明者】
【氏名】小竹 龍一
(72)【発明者】
【氏名】水野 寛之
(72)【発明者】
【氏名】前田 泰典
【テーマコード(参考)】
2D155
2E139
2E174
【Fターム(参考)】
2D155BA01
2D155GB01
2E139AC20
2E139BA12
2E139CB15
2E174DA37
(57)【要約】
【課題】構造が単純化された孔合わせ治具を提供することを目的とする。
【解決手段】孔合わせ治具50は、互いに対向するとともに、複数の挿入孔26,36に亘って挿入される一対の可動部材52と、一対の可動部材52から、互いに相手側へ向けて突出する一対の雄ネジ部54と、一対の雄ネジ部54がそれぞれ捻じ込まれるとともに、互いに逆向きの一対の雌ネジ部を有し、一対の雄ネジ部54の連結する回転連結体60と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するとともに、複数の孔に亘って挿入される一対の可動部材と、
一対の前記可動部材から、互いに相手側へ向けて突出する一対の雄ネジ部と、
一対の前記雄ネジ部がそれぞれ捻じ込まれるとともに、互いに逆向きの一対の雌ネジ部を有し、前記一対の雄ネジ部の連結する回転連結体と、
を備える孔合わせ治具。
【請求項2】
一対の前記可動部材の外面は、外側へ凸状を成す湾曲面とされる、
請求項1に記載の孔合わせ治具。
【請求項3】
前記回転連結体は、工具が取り付けられる工具取付部を有する、
請求項1又は請求項2に記載の孔合わせ治具。
【請求項4】
複数の孔に亘って、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の一対の前記可動部材を挿入する設置工程と、
前記回転連結体を回転することにより一対の前記可動部材の間隔を広げ、該可動部材の外面を複数の前記孔の内周面にそれぞれ接触させる孔合わせ工程と、
前記回転連結体を逆回転することにより一対の前記可動部材の間隔を狭くし、該可動部材の前記外面と複数の前記孔の前記内周面との間に隙間を形成した状態で、複数の孔から一対の前記可動部材を引き抜く撤去工程と、
複数の前記孔に亘って棒状部材を挿入する挿入工程と、
を備える棒状部材挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔合わせ治具、及び棒状部材挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの内周に組み立てられるセグメントのボルト孔同士の位置を合わせるボルト孔合わせ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、配管のフランジのボルト孔同士の位置を合わせる位置合わせ工具が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に開示されたボルト孔合わせ装置は、ボルト孔同士に亘って挿入された複数の爪を径方向外側へ移動させることにより、ボルト孔同士が位置決められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-180099号公報
【特許文献2】特開2016-068244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたボルト孔合わせ装置では、シリンダによってリンクギアを回転させることにより、人手によらずに、複数の爪を径方向に移動させることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたボルト孔合わせ装置は、シリンダ及びリンクギアを備えるため、装置の重量が重く、かつ構造が複雑化する。
【0008】
本発明は、上記の事実を考慮し、構造が単純化された孔合わせ治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の孔合わせ治具は、互いに対向するとともに、複数の孔に亘って挿入される一対の可動部材と、一対の前記可動部材から、互いに相手側へ向けて突出する一対の雄ネジ部と、一対の前記雄ネジ部がそれぞれ捻じ込まれるとともに、互いに逆向きの一対の雌ネジ部を有し、前記一対の雄ネジ部の連結する回転連結体と、を備える。
【0010】
請求項1に係る孔合わせ治具によれば、一対の可動部材は、互いに対向するとともに、複数の孔に亘って挿入される。また、一対の雄ネジ部は、一対の可動部材から互いに相手側へ向けて突出する。この一対の雄ネジ部は、回転連結体の一対の雌ネジ部にそれぞれ捻じ込まれる。これにより、一対の雄ネジ部が、回転連結体を介して連結される。
【0011】
ここで、一対の雌ネジ部は、互いに逆向きとされる。これにより、一対の雄ネジ部に対して回転連結体を所定方向に回転させると、一対の可動部材の間隔が広くなり、一対の可動部材の外面が複数の孔の内周面にそれぞれ接触される。この結果、複数の孔が位置決められる。
【0012】
一方、回転連結体を逆回転させると、一対の可動部材の間隔が狭くなり、一対の可動部材の外面と複数の孔の内周面との間に隙間が形成される。これにより、複数の孔から一対の可動部材を容易に引き抜くことができる。
【0013】
このように本発明では、ターンバックルと同様の伸縮機構を用いることにより、単純な構成で、一対の可動部材を対向方向に移動させることができる。したがって、孔合わせ治具の構造を単純化することができる。
【0014】
請求項2に記載の孔合わせ治具は、請求項1に記載の孔合わせ治具において、一対の前記可動部材の外面は、外側へ凸状を成す湾曲面とされる。
【0015】
請求項2に係る孔合わせ治具によれば、一対の可動部材の外面は、外側へ凸状を成す湾曲面とされる。これにより、一対の可動部材の外面を複数の孔の内周面に接触させた場合に、複数の孔の内周面に傷等が付くことが抑制される。
【0016】
請求項3に記載の孔合わせ治具は、請求項1又は請求項2に記載の孔合わせ治具において、前記回転連結体は、工具が取り付けられる工具取付部を有する。
【0017】
請求項3に係る孔合わせ治具によれば、回転連結体は、工具取付部を有する。この工具取付部に工具を取り付けることにより、一対の雄ネジ部に対して回転連結体を容易に回転させることができる。
【0018】
請求項4に記載の棒状部材挿入方法は、複数の孔に亘って、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の一対の前記可動部材を挿入する設置工程と、前記回転連結体を回転することにより一対の前記可動部材の間隔を広げ、該可動部材の外面を複数の前記孔の内周面にそれぞれ接触させる孔合わせ工程と、前記回転連結体を逆回転することにより一対の前記可動部材の間隔を狭くし、該可動部材の前記外面と複数の前記孔の前記内周面との間に隙間を形成した状態で、複数の孔から一対の前記可動部材を引き抜く撤去工程と、
複数の前記孔に亘って棒状部材を挿入する挿入工程と、を備える。
【0019】
請求項4に係る棒状部材挿入方法によれば、先ず、設置工程において、複数の孔に亘って、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の一対の可動部材を挿入する。次に、孔合わせ工程において、回転連結体を回転することにより一対の可動部材の間隔を広げ、可動部材の外面を複数の孔の内周面にそれぞれ接触させる。これにより、複数の孔が位置決められる。
【0020】
次に、撤去工程において、回転連結体を逆回転することにより一対の可動部材の間隔を狭くし、可動部材の外面と複数の孔の内周面との間に隙間を形成した状態で、複数の孔から一対の可動部材を引き抜く。次に、挿入工程において、複数の孔に亘って棒状部材を挿入する。
【0021】
このように本発明では、孔合わせ工程において、複数の孔を予め位置決めしておくことにより、複数の孔に棒状部材を容易に挿入することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、構造が単純化された孔合わせ治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係る棒状部材挿入方法によって連結ピンが施工されたダンパを示す側面図である。
【
図2】
図1に示される連結ピンを示す縦断面図である。
【
図3】一実施形態に係る孔合わせ治具を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示される孔合わせ治具を示す横断面図である。
【
図5】一実施形態に係る棒状部材挿入方法の施工過程を示す縦断面図である。
【
図6】一実施形態に係る棒状部材挿入方法の施工過程を示す縦断面図である。
【
図7】一実施形態に係る棒状部材挿入方法の施工過程を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る孔合わせ治具、及び棒状部材挿入方法について説明する。
【0025】
(孔合わせ治具)
図1には、本実施形態に係る棒状部材挿入方法によって連結ピン40が施工されたダンパ30が示されている。ダンパ30は、例えば、構造物10の免震層に設置される免震ダンパとされる。構造物10は、水平方向に相対変位する一対の連結体12を備えている。
【0026】
一対の連結体12は、例えば、鉄筋コンクリート造とされる。この一対の連結体12には、ブラケット20がそれぞれ設けられている。これらのブラケット20にダンパ30の両端部が連結ピン40を介してそれぞれ連結されている。
【0027】
ダンパ30は、例えば、オイルダンパーとされる。このダンパ30は、シリンダ32と、シリンダ32に抜き差し可能に挿入されるロッド34とを有している。シリンダ32の一端部は、連結ピン40を介して、一方のブラケット20に回転可能に連結されている。また、ロッド34の先端部(以下、「ロッド先端部34T」という)は、連結ピン40を介して他方のブラケット20に回転可能に連結されている。
【0028】
なお、ロッド先端部34T及びブラケット20の連結構造と、シリンダ32及びブラケット20の連結構造とは、同様とされている。そのため、以下では、ロッド先端部34T及びブラケット20の連結構造について説明し、シリンダ32及びブラケット20の連結構造の説明は省略する。
【0029】
ブラケット20は、ベースプレート22と、一対のフランジ24とを有している。ベースプレート22は、例えば、連結体12の側面に重ねられた状態でアンカーボルト等によって固定される。このベースプレート22からは、一対のフランジ24が張り出している。
【0030】
図2に示されるように、一対のフランジ24は、鋼板等によって形成されており、上下方向に互いに対向して配置されている。各フランジ24には、挿入孔26が形成されている。挿入孔26は、フランジ24を厚み方向(上下方向)に貫通する円形状の貫通孔とされている。この一対のフランジ24の間に、ロッド先端部34Tが挿入されている。
【0031】
なお、一対のフランジ24は、第一部材の一例であり、ロッド先端部34Tは、第二部材の一例である。
【0032】
ロッド先端部34Tは、平面視にて、リング状に形成されている。また、ロッド先端部34Tには、挿入孔36が形成されている。挿入孔36は、ロッド先端部34Tを厚み方向(上下方向)に貫通する円形状の貫通孔とされている。また、挿入孔36の半径は、一対のフランジ24の挿入孔26の半径と略同じとされている。これらの挿入孔26,36には、連結ピン40が上下方向に挿入されている。
【0033】
連結ピン40は、挿入孔26,36よりも半径が若干小さい円柱状に形成されている。また、連結ピン40の両端部には、抜け止め部材42がそれぞれ取り付けられている。この連結ピン40を介して、一対のフランジ24とロッド先端部34Tとが回転可能に連結されている。
【0034】
なお、挿入孔26,36は、孔の一例である。また、連結ピン40は、棒状部材の一例である。
【0035】
ここで、
図2に示されるように、一対のフランジ24及びロッド先端部34Tの挿入孔26,36に連結ピン40を挿入するためには、一対のフランジ24及びロッド先端部34Tの3つの挿入孔26,36を位置決めする必要がある。
【0036】
しかしながら、3つの挿入孔26,36を目視で位置決めするには、時間を要する。特に、ダンパ30では、各挿入孔26,36の内周面26S,36Sと連結ピン40の外周面40Aとのクリアランスが小さく、3つの挿入孔26,36を位置決めすることが難しい。
【0037】
(孔合わせ治具)
そこで、本実施形態では、孔合わせ治具50(
図3参照)を用いて3つの挿入孔26,36を位置決めした後、これらの挿入孔26,36に連結ピン40を挿入する。以下、孔合わせ治具50の構成について説明する。
図3及び
図4に示されるように、孔合わせ治具50は、一対の可動部材52と、回転連結体60とを有している。
【0038】
(可動部材)
図5、及び
図6に示されるように、一対の可動部材(ブレード)52は、例えば、金属製とされる。この一対の可動部材52は、3つの挿入孔26,36に亘って挿入される長手部材とされている。一対の可動部材52は、互いに対向するとともに、略平行に配置されている。
【0039】
図4に示されるように、一対の可動部材52の横断面形状は、外側へ凸状を成す円弧状とされている。これにより、一対の可動部材52の外面52Aは、可動部材52の長手方向から見て、外側へ凸状を成す円弧状とされている。
【0040】
図7に示されるように、一対の可動部材52の外面52Aは、挿入孔26,36の内周面26S,36Sに接触される。また、一対の可動部材52の外面52Aの曲率は、挿入孔26,36の曲率以上とされている。つまり、一対の可動部材52の外面の曲率半径は、挿入孔26,36の曲率半径以下とされている。これにより、一対の可動部材52の外面52Aが、挿入孔26,36の内周面26S,36Sに接触した際に、当該内周面26S,36Sが傷付くことが抑制されている。
【0041】
図4に示されるように、一対の可動部材52の内面52Bには、互いに相手側へ向けて突出する一対の雄ネジ部54が設けられている。一対の雄ネジ部54は、例えば、スタッドボルト(全ネジボルト)によって形成されている。各雄ネジ部54の外周面には、雄ネジが形成されている。
【0042】
一対の雄ネジ部54の一端部は、可動部材52の内面52Bにおける長手方向の中央部に突き当てられた状態で溶接等によって接合されている。これにより、一対の雄ネジ部54が、可動部材52の内面52Bにおける長手方向の中央部から、互いに相手側へ向けて突出している。この一対の雄ネジ部54は、回転連結体60によって連結されている。
【0043】
(回転連結体)
図3に示されるように、回転連結体60は、例えば、長ナット(高ナット)によって形成されている。この回転連結体60は、多角柱状に形成されている。これにより、回転連結体60にメガネレンチ等の工具70(
図5参照)が着脱可能に取り付け可能となっている。つまり、回転連結体60の外周部は、工具70を取り付け可能な工具取付部60Aとされている。工具取付部60Aは、回転連結体60の全長に亘って形成されている。
【0044】
図4に示されるように、回転連結体60は、軸方向に延びる貫通孔62を有している。この貫通孔62には、一対の雌ネジ部64が形成されている。一対の雌ネジ部64は、互いに逆向き(逆ネジ)とされている。一方の雌ネジ部64は、貫通孔62の一端側に形成されている。また、他方の雌ネジ部64は、貫通孔62の他端側に形成されている。
【0045】
回転連結体60の一対の雌ネジ部64には、一対の雄ネジ部54がそれぞれ捻じ込まれている。これにより、回転連結体60を介して、一対の可動部材52が連結されている。
【0046】
また、一対の雌ネジ部64は、前述したように、互いに逆向きとされている。これにより、一対の雄ネジ部54に対して回転連結体60を所定方向に回転させると、一対の雌ネジ部64から一対の雄ネジ部54が突出し、一対の可動部材52の間隔が広くなる。また、一対の雄ネジ部54に対して回転連結体60を所定方向とは逆方向に回転(逆回転)させると、一対の雌ネジ部64に一対の雄ネジ部54が捻じ込まれ、一対の可動部材52の間隔が狭くなる。
【0047】
このように一対の雄ネジ部54に対して回転連結体60を回転又は逆回転させることにより、一対の可動部材52を対向方向に移動させることができる。つまり、回転連結体60、及び一対の雄ネジ部54は、ターンバックルと同様に、ネジを利用した伸縮機構とされる。
【0048】
(棒状部材挿入方法)
次に、連結ピン40を例として、孔合わせ治具50を用いた棒状部材挿入方法の一例について説明する。
【0049】
(仮孔合わせ工程)
先ず、仮孔合わせ工程について説明する。仮孔合わせ工程では、
図5に示されるように、ブラケット20の一対のフランジ24の間にロッド先端部34Tを挿入する。そして、一対のフランジ24及びロッド先端部34Tの3つの挿入孔26,36に孔合わせ治具50を挿入可能な程度に、目視にて、3つの挿入孔26,36を揃える。
【0050】
(孔合わせ工程)
次に、孔合わせ工程について説明する。
図6に示されるように、孔合わせ工程では、3つの挿入孔26,36に亘って、孔合わせ治具50の一対の可動部材52を挿入する。この際、3つの挿入孔26,36の軸方向の中央部付近、すなわちロッド先端部34Tの挿入孔36内に回転連結体60を位置させる。この状態では、一対の可動部材52の両端部が、一対のフランジ24の挿入孔26から外側へ突出する。また、工具70の端部(操作部)が、一方の可動部材52の挿入孔26から突出する。
【0051】
なお、一対の可動部材52の間隔は、挿入孔26,36の直径よりも予め狭くしておく。また、孔合わせ治具50の回転連結体60には、メガネレンチ等の工具70を予め取り付けておく。工具70は、例えば、回転連結体60から一方の可動部材52を取り外した状態で、回転連結体60に取り付けられる。また、工具70は、例えば、ラチェットレンチ等のラチェット式工具が望ましい。
【0052】
次に、3つの挿入孔26,36に亘って一対の可動部材52を挿入した状態で、工具70によって回転連結体60を所定方向に回転し、一対の可動部材52の間隔を広げる。これにより、例えば、一方の可動部材52の外面52Aを一対のフランジ24の挿入孔26の内周面26Sに接触させ、他方の可動部材52の外面52Aをロッド先端部34Tの挿入孔36の内周面36Sに接触させる。
【0053】
この状態で、工具70によって回転連結体60を所定方向にさらに回転させ、一対の可動部材52の間隔を広げる。これにより、一方の可動部材52の外面52Aによって、一対のフランジ24の挿入孔26の内周面26Sが押されるとともに、他方の可動部材52の外面52Aによって、ロッド先端部34Tの挿入孔36の内周面36Sが押される。この結果、一対のフランジ24及びロッド先端部34Tが、互いに離れる方向に相対移動する。
【0054】
そして、
図7及び
図8に示されるように、一対の可動部材52の外面52Aが、3つの挿入孔26,36の全ての内周面26S,36Sに接触するまで、工具70によって回転連結体60を回転し、一対の可動部材52の間隔を広げる。これにより、3つの挿入孔26,36が、同軸上に位置決められる。
【0055】
(撤去工程)
次に、撤去工程について説明する。撤去工程では、工具70によって回転連結体60を逆回転させ、一対の可動部材52の間隔を狭くする。これにより、一対の可動部材52の外面52Aと、3つの貫通孔62の内周面26S,36Sとの間に、図示しない隙間が形成される。この状態で、3つの挿入孔26,36から、一対の可動部材52を引き抜く。
【0056】
(挿入工程)
次に、挿入工程について説明する。挿入工程では、位置決めされた3つの挿入孔26,36に連結ピン40を挿入する。そして、一対のフランジ24の挿入孔26,36から突出する連結ピン40の両端部に抜け止め部材42を取り付ける。これにより、連結ピン40を介して、一対のフランジ24とロッド先端部34Tとが回転可能に連結される。
【0057】
(作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0058】
図6、及び
図7に示されるように、本実施形態によれば、孔合わせ治具50の一対の可動部材52は、互いに対向するとともに、複数の挿入孔26,36に亘って挿入される。また、一対の雄ネジ部54は、一対の可動部材52から互いに相手側へ向けて突出している。この一対の雄ネジ部54は、回転連結体60の一対の雌ネジ部64にそれぞれ捻じ込まれる。これにより、一対の雄ネジ部54が、回転連結体60を介して連結される。
【0059】
ここで、一対の雌ネジ部64は、互いに逆向きとされている。これにより、一対の雄ネジ部54に対して回転連結体60を所定方向に回転させると、
図8に示されるように、一対の可動部材52の間隔が広くなり、一対の可動部材52の外面52Aが複数の挿入孔26,36の内周面26S,36Sにそれぞれ接触される。この結果、複数の挿入孔26,36が位置決められる。
【0060】
一方、回転連結体60を逆回転させると、一対の可動部材52の間隔が狭くなり、一対の可動部材52の外面52Aと複数の挿入孔26,36の内周面26S,36Sとの間に隙間が形成される。これにより、複数の挿入孔26,36から一対の可動部材52を容易に引き抜くことができる。
【0061】
このように本実施形態では、ターンバックルと同様の伸縮機構を用いることにより、単純な構成で、一対の可動部材52を対向方向に移動させることができる。したがって、孔合わせ治具50の構造を単純化することができる。
【0062】
また、
図8に示されるように、一対の可動部材52の外面52Aは、外側へ凸状を成す湾曲面とされている。これにより、一対の可動部材52の外面52Aを複数の挿入孔26,36の内周面26S,36S(
図7参照)に接触させた場合に、これらの挿入孔26,36の内周面26S,36Sに傷等が付くことが抑制される。
【0063】
さらに、
図7に示されるように、回転連結体60は、工具取付部60Aを有している。この工具取付部60Aに工具70を取り付けることにより、一対の雄ネジ部54に対して回転連結体60を容易に回転させることができる。
【0064】
また、3つの挿入孔26,36に一対の可動部材52を挿入する前に、工具取付部60Aに工具70を予め取り付けておくことにより、一対の可動部材52の間隔を容易に調整することができる。
【0065】
さらに、一対の可動部材52の長手方向の中央部に回転連結体60を配置することにより、一対の可動部材52の外面52Aを挿入孔26,36の内周面26S,36Sに接触させた場合に、一対の可動部材52の傾き等が抑制される。
【0066】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0067】
上記実施形態では、一対の可動部材52の外面52Aが、湾曲面とされている。しかし、一対の可動部材52の外面52Aは、湾曲面に限らず、例えば、平坦面等でも良い。
【0068】
また、上記実施形態では、回転連結体60が、長ナットされている。しかし、回転連結体は、長ナットに限らず、例えば、ターンバックルのバックル胴でも良い。
【0069】
また、上記実施形態では、一対の可動部材52が3つの挿入孔26,36に亘って挿入される。しかし、一対の可動部材52は、少なくとも2つの孔に亘って配置することができる。つまり、上記実施形態に係る孔合わせ治具50は、少なくとも2つの孔の位置決め(位置合わせ)に使用することができる。
【0070】
また、上記実施形態では、棒状部材が、連結ピン40とされている。しかし、棒状部材は、連結ピン40に限らず、例えば、ボルトの軸部等であっても良い。
【0071】
また、上記実施形態に係る孔合わせ治具50は、ダンパ30に限らず、種々の孔の位置決めに使用することができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0073】
26 挿入孔
26S 内周面
36 挿入孔
36S 内周面
40 連結ピン(棒状部材)
50 孔合わせ治具
52 可動部材
52A 外面
54 雄ネジ部
60 回転連結体
60A 工具取付部
64 雌ネジ部
70 工具
G 隙間