IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山洋電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-防水ファン 図1
  • 特開-防水ファン 図2
  • 特開-防水ファン 図3
  • 特開-防水ファン 図4
  • 特開-防水ファン 図5
  • 特開-防水ファン 図6
  • 特開-防水ファン 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023008822
(43)【公開日】2023-01-19
(54)【発明の名称】防水ファン
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20230112BHJP
   H02K 3/44 20060101ALI20230112BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20230112BHJP
   H02K 1/00 20060101ALI20230112BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20230112BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230112BHJP
【FI】
H02K5/10
H02K3/44 B
H02K3/46 B
H02K1/00 Z
H02K11/33
H02K7/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022083141
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2021111556
(32)【優先日】2021-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 範昭
(72)【発明者】
【氏名】中沢 智史
(72)【発明者】
【氏名】西沢 敏弥
(72)【発明者】
【氏名】小野沢 泉
【テーマコード(参考)】
5H601
5H604
5H605
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
5H601BB12
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD02
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD23
5H601DD47
5H601GA02
5H601GB12
5H601GB33
5H601HH14
5H601JJ07
5H601KK26
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB15
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604PB03
5H604PE06
5H605AA02
5H605BB05
5H605BB10
5H605BB19
5H605CC04
5H605DD16
5H605EB06
5H605GG18
5H607AA05
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB17
5H607CC01
5H607CC07
5H607DD03
5H607FF04
5H607GG09
5H607JJ01
5H611BB01
5H611BB06
5H611TT01
5H611UA04
5H611UB02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱応力が繰り返し作用しても回路基板に水が浸入しにくい防水ファンを提供する。
【解決手段】防水ファンは、回転軸線X回りに回転可能な回転軸部と回転翼とを有するロータ2と、ステータ3と、回路基板7と、回路基板7を収容する収容空間64を有する樹脂製のフレーム6と、ステータ3を覆い収容空間64の開口を閉塞する防水樹脂部8と、回転軸部を回転軸線X回りに回転可能に支持する軸受4と、回転軸線Xに沿って延びる円筒状で軸受4を支持する金属製の軸受ホルダ5とを備える。フレーム6は、軸受ホルダ5の外周面の少なくとも一部を覆う筒状のホルダ保護部61を有し、ホルダ保護部61はステータ3を軸受ホルダ5から離間させている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転可能な回転軸部と、回転翼とを備えたロータと、
巻き線を備えたステータと、
前記巻き線に通電する回路基板と、
前記回転軸線の一方側に位置する底面を有し、前記回転軸線の他方側に開口して前記回路基板を収容する収容空間を有する樹脂製のフレームと、
前記ステータを覆い前記収容空間の開口を閉塞する防水樹脂部と、
前記回転軸部を前記回転軸線回りに回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸線に沿って延びる円筒状の、前記軸受を支持する金属製の軸受ホルダと、を有し、
前記フレームは、前記底面から前記回転軸線の他方側に延びて前記軸受ホルダの外周面の少なくとも一部を覆う筒状のホルダ保護部を有し、前記ホルダ保護部は前記ステータを前記軸受ホルダから離間させている、防水ファン。
【請求項2】
前記ステータは、
前記回転軸線に対して径方向に延びる複数のステータコアと、
前記ステータコアと前記巻き線との間を絶縁するインシュレータとを有し、
前記インシュレータの内周面は前記ホルダ保護部の外周面と接触しており、
前記ホルダ保護部は、前記ホルダ保護部と前記インシュレータとの接触部よりも前記回転軸線の他方側に延びて前記軸受ホルダと前記インシュレータとの間を遮っている、請求項1に記載の防水ファン。
【請求項3】
前記ホルダ保護部によって離間された前記ステータと前記軸受ホルダの間に前記防水樹脂部が存在している、請求項1に記載の防水ファン。
【請求項4】
前記ステータは、
前記回転軸線に対して径方向に延びる複数のステータコアと、
前記ステータコアと前記巻き線との間の絶縁を確保するインシュレータとを有し、
前記ホルダ保護部の外周面と前記インシュレータの内周面との間の周方向の一部に、前記回転軸線の一方側から他方側へ貫通する貫通孔が設けられている、請求項1に記載の防水ファン。
【請求項5】
前記ホルダ保護部の外周面に、前記回路基板を位置決めする位置決め部が設けられている、請求項1に記載の防水ファン。
【請求項6】
回転軸線回りに回転可能な回転軸部と、回転翼とを備えたロータと、
巻き線を備えたステータと、
前記巻き線に通電する回路基板と、
前記回転軸線の一方側に位置する底面を有し、前記回転軸線の他方側に開口して前記回路基板を収容する収容空間を有する樹脂製のフレームと、
前記ステータを覆い前記収容空間の開口を閉塞する防水樹脂部と、
前記回転軸部を前記回転軸線回りに回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸線に沿って延びる円筒状の、前記軸受を支持する金属製の軸受ホルダと、を有し、
前記フレームは、前記底面から前記回転軸線の他方側に延びて前記軸受ホルダの外周面の一部を覆う筒状の第一ホルダ保護部を有し、
前記軸受ホルダの外周面の他部を覆う筒状の第二ホルダ保護部が、前記第一ホルダ保護部よりも前記回転軸線の他方側に設けられ、
少なくとも前記第二ホルダ保護部は前記ステータを前記軸受ホルダから離間させている、防水ファン。
【請求項7】
前記ステータは、
前記回転軸線に対して径方向に延びる複数のステータコアと、
前記ステータコアと前記巻き線との間を絶縁するインシュレータとを有し、
前記第二ホルダ保護部は、前記第二ホルダ保護部と前記インシュレータとの接触部よりも前記回転軸線の他方側に延びて前記軸受ホルダと前記インシュレータとの間を遮っている、請求項6に記載の防水ファン。
【請求項8】
前記第二ホルダ保護部によって離間された前記ステータと前記軸受ホルダの間に前記防水樹脂部が存在している、請求項6に記載の防水ファン。
【請求項9】
前記ステータは、
前記回転軸線に対して径方向に延びる複数のステータコアと、
前記ステータコアと前記巻き線との間の絶縁を確保するインシュレータとを有し、
前記第二ホルダ保護部の外周面と前記インシュレータの内周面との間の周方向の一部に、前記回転軸線の一方側から他方側へ貫通する貫通孔が設けられている、請求項6に記載の防水ファン。
【請求項10】
前記第二ホルダ保護部の外周面に、前記回路基板を位置決めする位置決め部が設けられている、請求項6に記載の防水ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、回路基板などを含む電子部品が樹脂で覆われた防水ファンが知られている。特許文献1に記載の防水ファンでは、ロータを支持する軸受を、金属製の軸受支持用筒部で支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-88990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子部品(回路基板などを含む)を覆う防水樹脂は、軸受支持用筒部をなす金属とは線膨張性係数が大きく異なるため、防水ファンに繰り返し熱応力が作用すると、防水樹脂と軸受支持用筒部の界面に隙間が生じる虞がある。すると、この隙間から水が浸入する虞がある。
【0005】
このような場合、特許文献1に記載の防水ファンでは、軸受支持用筒部と防水樹脂との界面が外部に露出しているため、この界面から軸受支持用筒部を伝って防水ファンの内部に水が浸入し、浸入した水が回路基板に到達してしまう虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、熱応力が繰り返し作用しても回路基板に水が浸入しにくい防水ファンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る防水ファンは、
回転軸線回りに回転可能な回転軸部と、回転翼とを備えたロータと、
巻き線を備えたステータと、
前記巻き線に通電する回路基板と、
前記回転軸線の一方側に位置する底面を有し、前記回転軸線の他方側に開口して前記回路基板を収容する収容空間を有する樹脂製のフレームと、
前記ステータを覆い前記収容空間の開口を閉塞する防水樹脂部と、
前記回転軸部を前記回転軸線回りに回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸線に沿って延びる円筒状の、前記軸受を支持する金属製の軸受ホルダと、を有し、
前記フレームは、前記底面から前記回転軸線の他方側に延びて前記軸受ホルダの外周面の少なくとも一部を覆う筒状のホルダ保護部を有し、前記ホルダ保護部は前記ステータを前記軸受ホルダから離間させている。
【0008】
本発明の一側面に係る防水ファンは、
回転軸線回りに回転可能な回転軸部と、回転翼とを備えたロータと、
巻き線を備えたステータと、
前記巻き線に通電する回路基板と、
前記回転軸線の一方側に位置する底面を有し、前記回転軸線の他方側に開口して前記回路基板を収容する収容空間を有する樹脂製のフレームと、
前記ステータを覆い前記収容空間の開口を閉塞する防水樹脂部と、
前記回転軸部を前記回転軸線回りに回転可能に支持する軸受と、
前記回転軸線に沿って延びる円筒状の、前記軸受を支持する金属製の軸受ホルダと、を有し、
前記フレームは、前記底面から前記回転軸線の他方側に延びて前記軸受ホルダの外周面の一部を覆う筒状の第一ホルダ保護部を有し、
前記軸受ホルダの外周面の他部を覆う筒状の第二ホルダ保護部が、前記第一ホルダ保護部よりも前記回転軸線の他方側に設けられ、
少なくとも前記第二ホルダ保護部は前記ステータを前記軸受ホルダから離間させている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱応力が繰り返し作用しても回路基板に水が浸入しにくい防水ファンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る防水ファンの正面図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る防水ファンであって、図1に示すA-A線における断面図である。
図3】本発明の第一実施形態の変形例に係る図2と同様の図である。
図4】本発明の第一実施形態のフレームの斜視図である。
図5】本発明の第一実施形態の防水ファンの上面図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る防水ファンであって、図1に示すA-A線における断面図である。
図7】本発明の第二実施形態の変形例に係る図6と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、実施形態の説明において既に説明された部材と同一の参照番号を有する部材については、説明の便宜上、その説明は省略する。また、本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る防水ファン1の正面図である。図1に示すように、防水ファン1は、回転軸部20の回りに回転可能な複数(図に示す例では、7枚)の回転翼Wと、当該回転翼Wの外周を囲む円筒状のケーシングCと、を備える。防水ファン1は、回転翼Wの回転によって、回転軸部20の軸線の方向(図において表裏方向)の一方から他方へ流れる気流を生じさせる。なお、以降の説明において便宜的に、回転軸部20の軸線の方向を「回転軸線X」の方向と呼ぶことがある。また、回転軸線Xと直交する方向を「径方向」と呼ぶことがある。
【0013】
複数の回転翼Wは、インペラボス部21の周囲に放射状に取り付けられている。インペラボス部21は、略カップ状に形成されており、回転軸部20の周囲を囲うように設けられている。なお、図1に示す防水ファン1では、ステータ3の内部の様子を破線で描いている。
【0014】
インペラボス部21に取り付けられた回転翼Wは、当該回転翼Wの回転により、回転翼WとケーシングCとの間に気流を生じさせる。回転翼Wは、回転軸線Xの一方側から他方側へ向けて気流を生じさせる形状及び構造に形成されている。また、回転翼Wを囲むケーシングCは、矩形状に形成された枠部11と、当該枠部11の中央に区画形成されて、気流を案内する円形状の風洞部12と、を有する。
(第一実施形態)
【0015】
図2は、本発明の第一実施形態に係る防水ファンであって、図1に示すA-A線における断面図である。なお、以降の説明において便宜的に、回転軸線Xの一方側を後方B、回転軸線Xの一方側とは反対の他方側を前方Fと呼ぶことがある。
【0016】
図2に示すように、防水ファン1は、ロータ2と、ステータ3と、軸受4と、軸受ホルダ5と、フレーム6と、回路基板7と、防水樹脂部8と、を備える。なお、防水ファン1の構造は、回転軸線Xを挟んで対称であるので、以下の説明では、図2における上半分について説明する。
【0017】
ロータ2は、回転翼Wを有したインペラボス部21と、インペラボス部21内に設けられるロータカバー22と、ロータカバー22に固定される永久磁石23と、インペラボス部21及びロータカバー22の中心部にブッシュ(不図示)を介して圧入される回転軸部20と、を有する。なお、図2では、回転軸部20を省略している。
【0018】
ロータカバー22は、略カップ状を有しており、インペラボス部21内に嵌入されている。ロータカバー22は、例えば、炭素鋼鋳鋼品(SC材)などの磁性体で構成されている。ロータカバー22の径方向における内周面には、永久磁石23が周方向に並ぶように固着されている。ロータカバー22は、磁束を通し、磁気回路の一部となる。
【0019】
回転軸部20は、回転軸線X回りに回転可能に設けられている。回転軸部20は、第一軸受4aと第二軸受4bとを有する軸受4によって支持されている。
【0020】
ステータ3は、ロータ2よりも後方Bに設けられている。ステータ3は、複数のステータコア31と、当該ステータコア31のそれぞれに巻かれる巻き線32と、ステータコア31と巻き線32との間に設けられるインシュレータ33と、を有する。
【0021】
ステータコア31は、回転翼Wよりも径方向の内側に配置されている。各々のステータコア31は、回転軸線Xに対して径方向に延びている。ステータコア31の径方向の外側面は、ロータカバー22に固定された永久磁石23の径方向の内側面と対向するように設けられている。ステータコア31は、薄い金属板を板厚方向へ複数枚積層して形成されている。ステータコア31の材料としては、例えば、珪素鋼板が用いられる。
【0022】
各々のステータコア31は、インシュレータ33を介して、フレーム6を構成するホルダ保護部61(後述する)の径方向の外側に固定されている。インシュレータ33は、ステータコア31の前方Fの面に設けられた前インシュレータ33Aと、ステータコア31の後方Bの面に設けられた後インシュレータ33Bと、により構成されている。前インシュレータ33Aには、前方Fに延びる前内側突出部と前外側突出部とが設けられている。これら前内側突出部と前外側突出部との間に前スロット34Aが形成されている。後インシュレータ33Bには、後方Bに延びる後内側突出部と後外側突出部が設けられている。これら後内側突出部と後外側突出部との間に後スロット34Bが形成されている。
【0023】
巻き線32は、ステータコア31の周囲に巻かれている。巻き線32は、前スロット34Aおよび後スロット34Bに収容されている。巻き線32とステータコア31の前面との間には前インシュレータ33Aが設けられ、巻き線32とステータコア31の後面との間には後インシュレータ33Bが設けられている。このため、回転軸線Xの方向における、巻き線32とステータコア31との間の絶縁が確保されている。また、回転軸線Xの方向から見て、前インシュレータ33Aの形状はステータコア31の形状よりも大きく、後インシュレータ33Bの形状はステータコア31の形状よりも大きい。このため、前インシュレータ33Aと後インシュレータ33Bとの間に位置する巻き線32もステータコア31との間の絶縁が確保されている。
【0024】
軸受4は、後方Bに設けられる第一軸受4aと、前方Fに設けられる第二軸受4bと、で構成されている。第一軸受4aと第二軸受4bは、回転軸部20を回転軸線X回りに回転可能に支持する。
【0025】
軸受ホルダ5は、回転軸線Xに沿って延びる円筒状のホルダである。軸受ホルダ5は、金属製である。軸受ホルダ5内には、第一軸受4aおよび第二軸受4bが挿入される。軸受ホルダ5は、第一軸受4aおよび第二軸受4bを支持する。軸受ホルダ5は、後方Bに設けられる第一軸受支持部51と、前方Fに設けられる第二軸受支持部52と、第一軸受支持部51と第二軸受支持部52との間に設けられる小径部53と、を有する。第一軸受支持部51は、第一軸受4aを支持する。第二軸受支持部52は、第二軸受4bを支持する。小径部53は、第一軸受支持部51の内径および第二軸受支持部52の内径よりも小径に形成されている。
【0026】
フレーム6は、防水ファン1の構成において後方Bの位置に設けられている。フレーム6は概ねカップ状を呈している。フレーム6は、回転翼Wが取り付けられたインペラボス部21と、互いにカップ形状の内側を対向させた姿勢で回転軸線Xの方向に沿って設けられている。フレーム6は、樹脂製である。
【0027】
フレーム6は、径方向の内側に設けられるホルダ保護部61と、ホルダ保護部61よりも大径で径方向の外側に設けられる外筒部62と、後方Bに設けられてホルダ保護部61と外筒部62とを接続する底部63と、を有する。フレーム6は、ホルダ保護部61と外筒部62と底部63で構成される収容空間64を有する。収容空間64は、前方Fに開口する空間である。収容空間64には、回路基板7が収容される。
【0028】
底部63は、ホルダ保護部61の径方向の外周面から外筒部62の径方向の内周面に亘って径方向へ拡がるように設けられている。底部63は、ステータ3の後方Bを覆うように設けられている。
【0029】
回路基板7は、ステータ3よりも後方Bに設けられている。回路基板7は、収容空間64内に収容されている。回路基板7は、中央部に開口を有する円形のドーナツ状に形成されている。回路基板7は、開口にフレーム6のホルダ保護部61を挿通させ、ホルダ保護部61の周囲を囲うように設けられている。回路基板7の開口径は、開口の縁部とホルダ保護部61の外周面との間に所定の隙間が設けられる大きさに形成されている。回路基板7には、ロータ2とステータ3を制御するための配線パターンが形成されている。回路基板7は、ステータコア31に巻回された巻き線32に通電する。
【0030】
回路基板7の径方向の内側の端部は、ホルダ保護部61とインシュレータ33とにより支持されている。インシュレータ33の後方Bの先端部に形成された切欠き部に回路基板7の端部が嵌め込まれることにより回路基板7はインシュレータ33に対して位置決めされる。インシュレータ33の切欠き部は、インシュレータ33の周方向における一部の先端部のみに形成されている。インシュレータ33は、周方向の一部のみにより回路基板7を支持する。ホルダ保護部61は、ホルダ保護部61に設けられる段差部101c(図3で後述する)により回路基板7を支持する。
【0031】
防水樹脂部8は、ステータ3および回路基板7を覆うように設けられている。防水樹脂部8は、電気絶縁性の合成樹脂で構成されている。例えば、防水樹脂部8は、熱硬化型のエポキシ樹脂で構成される。防水樹脂部8は、ステータ3および回路基板7を覆うように樹脂を充填することにより、収容空間64の開口を閉塞する。防水樹脂部8の樹脂は、例えば、収容空間64において、ステータ3と回路基板7との間隙、フレーム6の底部63の底面63aと回路基板7との間隙などに充填される。
【0032】
上述したようにフレーム6はホルダ保護部61を有している。ホルダ保護部61は、底部63の径方向における内側の端部から連続して前方Fへ延びる筒状の部位である。ホルダ保護部61は、ステータ3の中央部に挿通されている。ホルダ保護部61内には、円筒状の軸受ホルダ5がインサート成形されている。ホルダ保護部61は、軸受ホルダ5の外周面の少なくとも一部を覆っている。これにより、ホルダ保護部61は、ステータ3を軸受ホルダ5の外周面から離間させている。
【0033】
本実施形態に係る防水ファン1は、回転軸線X回りに回転可能な回転軸部20と回転翼Wとを有するロータ2と、回転軸線Xに対して径方向に延びる複数のステータコア31と、ステータコア31と巻き線32との間の絶縁を確保するインシュレータ33と、回路基板7とを備えたステータ3と、後方Bに位置する底面63aを有し、前方Fに開口して回路基板7を収容する収容空間64を有する樹脂製のフレーム6と、ステータ3を覆い収容空間64の開口を閉塞する防水樹脂部8と、回転軸部20を回転軸線X回りに回転可能に支持する軸受4と、回転軸線Xに沿って延びる円筒状で軸受4を支持する金属製の軸受ホルダ5と、を備えている。
フレーム6は、底面63aから前方Fに延びて軸受ホルダ5の外周面の少なくとも一部を覆う筒状のホルダ保護部61を有している。このホルダ保護部61は、ステータ3を軸受ホルダ5から離間させている。
【0034】
ところで、軸受ホルダ5は金属製であり、ホルダ保護部61は樹脂などの軽量の非金属製の材料で構成することが一般的である。このため、防水ファン1に繰り返し熱応力が作用すると、軸受ホルダ5の外周面とホルダ保護部61の内周面との間には隙間が生じてしまうことがある。すると、水が軸受ホルダ5と防水樹脂部8との界面から浸入し、軸受ホルダ5の外周面を伝って防水ファン1の内部に位置するステータ3まで水が到達する恐れがある。
しかし本実施形態に係る防水ファン1によれば、ステータ3は、ホルダ保護部61によって軸受ホルダ5から離間されている。このため、軸受ホルダ5の外周面を伝って浸入した水がそのままステータ3に接触することがない。
【0035】
なお図示した例においては、ホルダ保護部61の前端は軸受ホルダ5の前端と一致する位置まで延ばされている。このため、軸受ホルダ5とホルダ保護部61との間に浸入した水は、ホルダ保護部61で阻まれて、ステータ3に到達することがない。
【0036】
より詳細には、本実施形態の防水ファン1のステータ3は、回転軸線に対して径方向に延びる複数のステータコア31と、各々のステータコア31に巻かれた巻き線32と、ステータコア31と巻き線32との間を絶縁するインシュレータ33(後インシュレータ33B)とを有する。インシュレータ33の内周面はホルダ保護部61の外周面と接触している。ホルダ保護部61は、ホルダ保護部61とインシュレータ33との接触部よりも前方(回転軸線の他方側)に延びて軸受ホルダ5とインシュレータ33との間を遮っている。このため、軸受ホルダ5の外周面を伝って浸入した水は、ホルダ保護部61よりもステータ3側に浸入することができない。
【0037】
なお、図2に示した例では、ホルダ保護部が軸受ホルダの外周面を完全に覆う形状を説明した。しかし本発明の防水ファン1によれば、図3に示したようにホルダ保護部61の前端が軸受ホルダ5の前端よりも後方に位置していてもよい。図3は、本発明の第一実施形態の変形例に係る防水ファン1を示す図である。この場合、図示したようにこのホルダ保護部61によって離間されているステータ3と軸受ホルダ5の間には、防水樹脂部8が存在していることが好ましい。
【0038】
図3に示した例では、軸受ホルダ5の外周面にはホルダ保護部61と防水樹脂部8の界面が存在する。このため、軸受ホルダ5の外周面を伝って浸入してきた水は、さらに、ホルダ保護部61と防水樹脂部8の界面からステータ3に浸入することが考えられる。しかしながら、ホルダ保護部61と防水樹脂部8はともに樹脂で構成されているため、熱応力が繰り返し作用してもホルダ保護部61と防水樹脂部8の界面が大きく開くことがない。このため、このホルダ保護部61と防水樹脂部8の界面からステータ3に水が浸入することは難しい。ホルダ保護部61と防水樹脂部8とを同じ樹脂で構成する、あるいは、ホルダ保護部61と防水樹脂部8のそれぞれを同等な線膨張係数を有する樹脂で構成することにより、水がステータ3に浸入することをさらに防ぎやすくなる。
【0039】
また、防水ファン1によれば、ステータ3は、回転軸線Xに対して径方向に延びる複数のステータコア31と、ステータコア31と巻き線32との間の絶縁を確保するインシュレータ33と、を有する。そして、ホルダ保護部61の外周面とインシュレータ33の内周面との間の周方向の一部に、前方Fから後方Bへ貫通する貫通孔9が設けられている。このため、防水樹脂部8をインサート成形にて成形する際に、防水樹脂が貫通孔9を伝って、前方Fから後方B、あるいは、後方Bから前方Fへ、円滑に流れることができる。したがって、防水樹脂を隙間なく充填して防水樹脂部8を形成することができ、回路基板7の高い防水性を確保できる。
【0040】
図4は、本発明の第一実施形態のフレーム6の斜視図である。図4に示すように、フレーム6のホルダ保護部61は、底部63の中央部に、回転軸線Xを中心として、底面63aから略垂直に延びている。
【0041】
ホルダ保護部61の外周面には、径方向に突出する複数条(図に示す例では4条)の突出部101が設けられている。4条の突出部101は、周方向に等間隔に設けられている。各々の突出部101には、突出する高さが相違する小径突出部101aと大径突出部101bとが設けられている。大径突出部101bは、小径突出部101aよりも突出する高さが高い突出部である。小径突出部101aと大径突出部101bと境には、両部の径の違いによって段差部101cが形成されている。この段差部101cは、回転軸線X方向における回路基板7の位置を決定する基板位置決め部として機能する。回路基板7の径方向の内側の端部がこの段差部101cで支持される。
【0042】
また、ホルダ保護部61の径方向における外周面には、ホルダ保護部61に対する周方向のインシュレータ33の位置を決定する位置決め部103が設けられている。位置決め部103は、例えば、回転軸線X方向に沿った溝部として形成されている。当該位置決め部103に対して、インシュレータ33の径方向における内周面に設けられた凸部(不図示)が嵌合することにより、ホルダ保護部61に対するインシュレータ33の位置が決定される。
【0043】
図5は、本発明の第一実施形態の防水ファン1の上面図(前方側から防水ファン1を見た図)である。図5においては、防水樹脂部8および巻き線32を省略している。図5に示すように、フレーム6のホルダ保護部61の外周面と、インシュレータ33の内周面との間には、回転軸線Xに沿う方向に貫通する貫通孔9が設けられている。貫通孔9は周方向の一部に設けられている。貫通孔9は、例えば、ホルダ保護部61の周方向における突出部101と突出部101との間に設けられている。貫通孔9は周方向に複数設けられている。これにより、ホルダ保護部61の外周部は、ホルダ保護部61の外周面に沿って防水ファン1の前方Fから底部63の底面63aまで連通する隙間が存在する構造になっている。
(第二実施形態)
【0044】
以下、図6、7を用いて、第2実施形態の防水ファンについて詳細に説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
【0045】
図6は、本発明の第二実施形態に係る防水ファンであって、図1に示すA-A線における断面図である。
【0046】
図6に示すように、第二実施形態の防水ファンでは、第一実施形態の防水ファンのホルダ保護部61(図2参照)が、第一ホルダ保護部61Aと第二ホルダ保護部61Bの2つの別体の部位から構成されている。つまり、第一ホルダ保護部61Aは、フレーム6が有する部位であり、第二ホルダ保護部61Bはフレーム6とは別体の部位である。第二ホルダ保護部61Bは、第一ホルダ保護部61Aの底部63と反対側の端部よりも前方(回転軸線の他方側)に設けられた筒状の部位である。第一ホルダ保護部61Aと第二ホルダ保護部61Bは、共にステータ3の中央部に挿通されている。
【0047】
第一ホルダ保護部61A内には、その外周面にローレット加工が施された軸受ホルダ5の一部がインサート成形されている。第一ホルダ保護部61Aは、軸受ホルダ5の外周面の一部を覆っている。
第二ホルダ保護部61Bは、軸受ホルダ5の外周面の他部に接着固定されている。第二ホルダ保護部61Bは、軸受ホルダ5の外周面の他部を覆っている。
これにより、第一ホルダ保護部61Aと第二ホルダ保護部61Bは、ステータ3を軸受ホルダ5の外周面から離間させている。このため、第一ホルダ保護部61Aまたは第二ホルダ保護部61Bの外周面を伝って浸入した水がそのままステータ3に接触することがない。
また、第一ホルダ保護部61Aと第二ホルダ保護部61Bの間は充填剤によって封止されてもよい。
これにより、第一ホルダ保護部61Aまたは第二ホルダ保護部61Bの外周面を伝って浸入した水が、第一ホルダ保護部61Aと第二ホルダ保護部61Bの隙間からステータ3に浸入することをさらに防ぎやすくなる。
【0048】
また、ホルダ保護部を第一ホルダ保護部61Aと第二ホルダ保護部61Bの2つの別体から構成することで、フレーム6が有するホルダ保護部(第一ホルダ保護部61A)の前方F方向の長さを短くすることができる。これにより、インサート成形時に、軸受ホルダ5を挿入するための第一ホルダ保護部61Aの軸受挿入口(不図示)の真円度を確保することができる。
【0049】
また、インシュレータ33の内周面は第二ホルダ保護部61Bの外周面と接触している。第二ホルダ保護部61Bは、第二ホルダ保護部61Bとインシュレータ33との接触部よりも前方(回転軸線の他方側)に延びて軸受ホルダ5とインシュレータ33との間を遮っている。このため、軸受ホルダ5の外周面を伝って浸入した水は、第二ホルダ保護部61Bよりもステータ3側に浸入することができない。
【0050】
なお、図6に示した例では、ホルダ保護部が軸受ホルダの外周面を完全に覆う形状を説明した。しかし本発明の防水ファン1によれば、図7に示したように第二ホルダ保護部61Bの前端が軸受ホルダ5の前端よりも後方に位置していてもよい。図7は、本発明の第二実施形態の変形例に係る防水ファン1を示す図である。この場合、図示したようにこの第二ホルダ保護部61Bによって離間されているステータ3と軸受ホルダ5の間には、防水樹脂部8が存在していることが好ましい。
【0051】
また、防水ファン1によれば、ステータ3は、回転軸線Xに対して径方向に延びる複数のステータコア31と、ステータコア31と巻き線32との間の絶縁を確保するインシュレータ33と、を有する。そして、第二ホルダ保護部61Bの外周面とインシュレータ33の内周面との間の周方向の一部に、前方Fから後方Bへ貫通する貫通孔9が設けられている。このため、防水樹脂部8をインサート成形にて成形する際に、防水樹脂が貫通孔9を伝って、前方Fから後方B、あるいは、後方Bから前方Fへ、円滑に流れることができる。したがって、防水樹脂を隙間なく充填して防水樹脂部8を形成することができ、回路基板7の高い防水性を確保できる。
【0052】
また、第二ホルダ保護部61Bの径方向における外周面には、第二ホルダ保護部61Bに対する周方向のインシュレータ33の位置を決定する位置決め部(不図示)が設けられている。位置決め部は、例えば、回転軸線X方向に沿った溝部として形成されている。当該位置決め部に対して、インシュレータ33の径方向における内周面に設けられた凸部(不図示)が嵌合することにより、ホルダ保護部61に対するインシュレータ33の位置が決定される。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0054】
1 防水ファン
2 ロータ
3 ステータ
4a 第一軸受
4b 第二軸受
5 軸受ホルダ
6 フレーム
7 回路基板
8 防水樹脂部
9 貫通孔
20 回転軸部
21 インペラボス部
22 ロータカバー
31 ステータコア
32 巻き線
33 インシュレータ
51 第一軸受支持部
52 第二軸受支持部
53 小径部
61 ホルダ保護部
61A 第一ホルダ保護部
61B 第二ホルダ保護部
62 外筒部
63 底部
63a 底面
64 収容空間
101 突出部
101c 段差部
103 位置決め部
W 回転翼
X 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7