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  • 特開-レンズアレイおよび固体撮像素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088476
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】レンズアレイおよび固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 3/00 20060101AFI20230620BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230620BHJP
   H04N 23/55 20230101ALI20230620BHJP
【FI】
G02B3/00 A
H01L27/146 D
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203223
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】野崎 渉
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊
(72)【発明者】
【氏名】松澤 宏
【テーマコード(参考)】
4M118
5C122
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AA09
4M118AB01
4M118CA02
4M118EA11
4M118FA06
4M118GC08
4M118GC14
4M118GD04
4M118GD07
5C122EA35
5C122FB02
5C122FB05
5C122FC06
5C122GE06
(57)【要約】
【課題】ペタルフレアを抑制しつつ、高精細化に対応可能なレンズアレイを提供する。
【解決手段】整列配置された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイにおいて、開口302aを有するスクリーン302をレンズアレイの上方に配置した状態で開口302aを経由してレンズアレイにレーザー光Lを照射した際にスクリーン302に生じる回折パターンPの輝度の平均値が36以下である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列配置された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイであって、
開口を有するスクリーンを前記レンズアレイの上方に配置した状態で前記開口を経由して前記レンズアレイにレーザー光を照射した際に前記スクリーンに生じる回折パターンの輝度の平均値が36以下である、
レンズアレイ。
【請求項2】
形状が異なる複数種類の前記マイクロレンズを有し、かつ隣接する前記マイクロレンズの形状が異なるように配置されている、
請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】
前記レンズアレイの平面視において、前記マイクロレンズが配置された領域に占める前記マイクロレンズの面積の割合が96%以下である、
請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のレンズアレイを備える、
固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイに関する。このレンズアレイを用いた固体撮像素子についても言及する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子に入射する光の経路に、特定の波長の光を選択的に透過する複数色の着色透明パターンを平面配置したカラーフィルタを設けることで、対象物の色情報を得ることを可能とした単板式の固体撮像素子が普及している。
固体撮像素子の薄型軽量化と高精細化に伴い、光電変換素子の配列基板上に直接カラーフィルタを形成するオンチップタイプの固体撮像素子が増えている。
【0003】
オンチップタイプの固体撮像素子には、光電変換素子に効率よく光を導くために、マイクロレンズが配置されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-8777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デジタル・イメージ機器の高画質化や小型化が進んでおり、オンチップタイプの固体撮像素子においてもさらに高精細化が要請されている。
発明者は、このような固体撮像素子の高精細化に対応する検討を進める過程で、従来問題視されていなかったペタルフレア(petal flare)という新たな問題点を認識し、解決した。
【0006】
本発明は、ペタルフレアを抑制しつつ、高精細化に対応可能なレンズアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、整列配置された複数のマイクロレンズを有するレンズアレイである。
このレンズアレイは、開口を有するスクリーンをレンズアレイの上方に配置した状態で開口を経由してレンズアレイにレーザー光を照射した際にスクリーンに生じる回折パターンの輝度の平均値が36以下である。
【0008】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係るレンズアレイを備える固体撮像素子である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ペタルフレアを抑制しつつ、高精細化に対応可能なレンズアレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。
図2】従来のマイクロレンズ部の平面視写真である。
図3】ペタルフレアの評価方法を説明するための図である。
図4】隣接するマイクロレンズの平面視寸法が異なるレンズアレイの一例を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図5】ペタルフレアを評価した3つのレンズアレイを示すSEM写真である。
図6】ペタルフレアを評価した3つのレンズアレイを示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る固体撮像素子の模式断面図である。固体撮像素子100は、複数の光電変換素子PDを有するウェハ基板101と、ウェハ基板101上に形成されたオンチップカラーフィルタ1とを備えている。
【0012】
オンチップカラーフィルタ1は、複数種類の色フィルタを含むフィルタ部10と、フィルタ部10上に配置されたレンズアレイ20とを有する。本実施形態のレンズアレイ20は、本発明に係るレンズアレイである。
フィルタ部10は、色フィルタ11、12、13の3種類の色フィルタを含む。フィルタ部10の色の種類や数、および配分は、適宜決定でき、公知のものを採用できる。例えば、赤、緑、青の三色を用いたベイヤ配列などを例示できる。固体撮像素子100の平面視において、各色フィルタは、光電変換素子PDの1つと重なっている。
【0013】
レンズアレイ20は、複数のマイクロレンズ21を有する。本実施形態において、マイクロレンズ21は、二次元マトリクス状に配列されており、フィルタ部10の色フィルタと概ね同様の配置態様を有する。固体撮像素子100の平面視において、各色フィルタは、マイクロレンズ21の1つと重なっている。
【0014】
以上の様に構成された固体撮像素子100においては、マイクロレンズ21に入射した光が対応する色フィルタを経て光電変換素子PDに導かれることにより、撮像機能を発揮する。
固体撮像素子の感度を向上させるためには、マイクロレンズによりできるだけ多くの光を光電変換素子に導くことが必要である。このため、図2に示すように、従来のレンズアレイ200の各マイクロレンズ21は、熱リフローおよびエッチバック等の公知の技術を用いて、光学面が平面視においてほぼ隙間なく配置されるよう形成されるのが常識であった。
【0015】
ところが、マイクロレンズの直径あるいはマイクロレンズが配置された色フィルタの一辺の寸法が1.2μm以下に高精細化された固体撮像素子において、十分な色純度が得られない現象が散見されるようになった。
発明者がこの現象について検討したところ、マイクロレンズによるペタルフレアがその大きな要因であることをつきとめた。
【0016】
ペタルフレアは、マイクロレンズの光軸まわりに間隔を空けて花びら状に生じるフレアであり、マイクロレンズの光学面で生じる法線方向以外の反射光の干渉により生じると考えられている。ペタルフレア自体は、原理上これまでのマイクロレンズアレイでも発生していたと考えられるが、従来は、光電変換素子が受光する光量が多かったことや、隣接する色フィルタ領域との距離(ピッチ)が大きかったことにより、問題として顕在化していなかったと考えられる。
【0017】
ペタルフレアが問題として十分認識されていないこともあり、現時点において、ペタルフレアの測定や評価ができる装置は存在しない。そこで、まず発明者らは、作製したレンズアレイにおけるペタルフレアを評価する方法を構築した。
図3に示すように、測定対象のレンズアレイ301を平坦な状態で静置し、レンズアレイ301の上方に、中央部に開口302aを有する半透明のスクリーン302を、隙間を空けて配置する。隙間は、0.5cm~5cm程度とできる。
【0018】
次に、スクリーン302の上方からレーザー光Lを発射し、開口302aを通してレンズアレイ301に垂直にレーザー光を照射する。レーザー光のスポット径は、少なくとも3×3の二次元マトリクス状に配列された9個のマイクロレンズを覆う程度であればよく、例えば800μm程度とできる。
【0019】
照射されたレーザー光Lはレンズアレイ301に設けられた複数のマイクロレンズで反射され、各々の反射光により生じる回折パターンPが、開口302aの周囲のスクリーン302に光点として投影される。この回折パターンPをスクリーン302の上方から撮像した画像から求められる回折パターンPの輝度値により、レンズアレイ301に生じるペタルフレアの強さを評価できる。
上記方法は、輝度値に基づいた絶対評価、従来品と改良品とで輝度値を比較することにより、改良品においてペタルフレアの改善が見込まれるか否かを推測する等の相対評価、のいずれにも用いることができる。
絶対評価の場合、暗室環境下において、レンズアレイ301とスクリーン302間の距離を120mmにした状態で、強度クラス2、発振波長670nmのレーザー光LをJIS C 6802に準拠した手順でレンズアレイ301に照射する。スクリーン302に投影された回折パターンPを撮像し、8ビットのモノクロ画像として取得する。この画像中の回折パターンPの輝度平均値を36以下とすることにより、固体撮像素子等に適用した際にもペタルフレアを十分抑制できる。
【0020】
発明者らは、上記評価方法を用いて、ペタルフレアを生じにくいレンズアレイの構成について種々検討した。その結果、少なくとも以下の2通りの構成が有効であることを見出した。
【0021】
一つは、隣接するマイクロレンズの形状を異ならせることである。図4に示すレンズアレイでは、マイクロレンズ21Aと、図4において、マイクロレンズ21Aの上下左右に位置するマイクロレンズ21Bとの寸法を異ならせることにより、隣接するマイクロレンズの形状を異ならせている。形状を異ならせる手段は、図4に示したような、平面視における寸法変更には限られず、高さ(厚さ)の変更、平面視形状の変更(例えば円形と楕円形等)、光学面の曲率半径の変更等であってもよい。
このようなレンズアレイでは、隣接するマイクロレンズの形状が異なっていることにより、回折現象自体が発生しにくくなることで、ペタルフレアが抑制されると考えられる。
【0022】
図5に示す、隣接するマイクロレンズの平面視寸法を異ならせた3つのレンズアレイ(a)、(b)、および(c)について、上記方法でペタルフレアを評価したところ、(a)、(b)、(c)における回折パターンの輝度値は、それぞれ27.6、19.0、および35.9であり、いずれもペタルフレアが抑制されていた。また、隣接するマイクロレンズの形状差の小さい(c)のレンズアレイよりも、より形状差の大きい(a)および(b)のレンズアレイの輝度値の方が小さく、隣接するマイクロレンズの形状差が大きくなるにつれて、輝度値が小さくなる傾向が認められた。
【0023】
もう一つは、マイクロレンズのフィルファクターを低減することである。フィルファクターとは、レンズアレイの平面視において、マイクロレンズごとに区画された領域(本実施形態では、平面視略正方形の領域)においてマイクロレンズが占める面積の割合を意味する。
図6に示す、フィルファクターが異なる3つのレンズアレイ(a)、(b)、および(c)について、上記方法でペタルフレアを評価したところ、(a)、(b)、(c)における回折パターンの平均輝度値は、それぞれ38.4、35.4、および32.4であった。(a)のレンズアレイのフィルファクターは従来の一般的なレンズアレイと同程度の約99%であったが、(b)および(c)のレンズアレイのフィルファクターは、それぞれ一般的なレンズアレイよりも小さい92.2%および84.4%であり、いずれも平均輝度値が(a)よりも小さく、フィルファクターが小さくなるにつれてペタルフレアが強く抑制される傾向が認められた。発明者らの検討では、フィルファクターを96%以下とすることで回折パターンPの平均輝度値を36以下とできることを確認している。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係るレンズアレイは、開口を有するスクリーンをレンズアレイの上方に配置した状態で開口を経由してレンズアレイにレーザー光を照射した際にスクリーンに生じる回折パターンの輝度の平均値が36以下であることにより、マイクロレンズのサイズを小さくして高精細化に対応させた場合にもペタルフレアを好適に抑制できる。
【0025】
本実施形態に係るレンズアレイはフォトリソグラフィを用いて製造できるが、上述したいずれの構成についても、レンズを形成するためのフォトマスクのデザインを適宜設定し、例えば図5の(a)、(b)や図6の(b)、(c)のような態様にレンズアレイを形成することで実現できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。
【0027】
・上述の実施形態では、基板上に直接カラーフィルタが形成されたオンチップタイプの固体撮像素子を示したが、本発明に係る技術思想の適用範囲はこれには限られず、例えば有機EL(OLED)上に配置されるレンズシート等にも適用できる。
【0028】
・本発明に係るレンズアレイは、マイクロレンズ上に各種の機能層を備えてもよい。機能層としては、回折格子の層、低屈折率層、防眩層、防汚層等を例示できる。
【符号の説明】
【0029】
1 オンチップカラーフィルタ
10 フィルタ部
11、12、13 色フィルタ
20 レンズアレイ
21 マイクロレンズ
100 固体撮像素子
302 スクリーン
302a 開口
L レーザー光
P 回折パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6