(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088580
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】自立性包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230620BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230620BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230620BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B9/00 A
B32B27/00 H
B32B27/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203400
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山下 香往里
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
4F100AA17C
4F100AA19
4F100AB01C
4F100AK01E
4F100AK04
4F100AK42
4F100AK63
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4F100YY00A
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4F100YY00C
4F100YY00D
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、紙層を含む積層体を用いながら、安定したガスバリア性を発揮する自立性包装袋を提案するものである。
【解決手段】紙層10とガスバリア層12とシーラント層16を有する表面積層体2ならびに裏面積層体3と、ガスバリア層とシーラント層を有し、紙層を有しない底テープ4とから構成される自立性包装袋1であって、前記ガスバリア層は、いずれも基材フィルム13面上に、金属または金属酸化物を蒸着したガスバリアフィルムであり、前記表面積層体ならびに裏面積層体を構成する紙層とガスバリア層とシーラント層は、それぞれ押出ラミネート樹脂層11、15を介して貼り合わされていることを特徴とする自立性包装袋である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層とガスバリア層とシーラント層を有する表面積層体ならびに裏面積層体と、
ガスバリア層とシーラント層を有し、紙層を有しない底テープとから構成される自立性包装袋であって、
前記ガスバリア層は、いずれも基材フィルム面上に、金属または金属酸化物を蒸着したガスバリアフィルムであり、
前記表面積層体ならびに裏面積層体を構成する紙層とガスバリア層とシーラント層は、それぞれ押出ラミネート樹脂層を介して貼り合わされていることを特徴とする自立性包装袋。
【請求項2】
表面積層体、裏面積層体、底テープの
酸素透過度は、いずれも1.0cc/m2/day/atm以下であり、
水蒸気透過度は、いずれも1.0g/m2/day以下であることを特徴とする請求項1に記載の自立性包装袋。
【請求項3】
内容物を注出するための注出筒が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自立性包装袋。
【請求項4】
内容物を注出するための口栓が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自立性包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立性を有する包装袋に関し、特に層構成中に紙を用いた自立性包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にスタンディングパウチと呼ばれる自立性を有する包装袋が、広く用いられている。スタンディングパウチは、表面積層体と裏面積層体の間に底テープを挿入し、それぞれの周縁を熱シールしたもので、内容物を充填することにより広い底面を形成するため、自立性を発揮するものである。
【0003】
従来スタンディングパウチは、2層以上の合成樹脂フィルムを積層した積層体を用いたものが一般的であったが、内容物の保存性を高めるために、用いる積層体の酸素透過量や水蒸気透過量を抑制したガスバリア性積層体を用いることも検討されている。特許文献1に記載されたガスバリア積層体は、基材フィルムにアンカーコート層を介して金属酸化物蒸着層を形成した後、さらにガスバリア被膜を形成したガスバリアフィルムをシーラント層と貼り合わせた積層体である。
【0004】
一方、近年の地球環境保護に対する意識の高まりに伴い、再生産可能な材料である紙を用いた包装材が検討されるようになってきた。しかし紙層を含む積層体を用いた場合、用いない場合と比較して柔軟性に欠けるため、充填時の展開が円滑に行われず、また充填時や輸送時に折り目がつき易いという問題があった。
【0005】
紙を用いた包装袋において、特にガスバリア性をも具備しようとすると、この折り目がつき易いという問題は、しばしばピンホール発生の原因ともなり得るため、致命的な欠陥となるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、紙層を含む積層体を用いながら、安定したガスバリア性を発揮する自立性包装袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、紙層とガスバリア層とシーラント層を有する表面積層体ならびに裏面積層体と、ガスバリア層とシーラント層を有し、紙層を有しない底テープとから構成される自立性包装袋であって、前記ガスバリア層は、いずれも基材フィルム面上に、金属または金属酸化物を蒸着したガスバリアフィルムであり、前記表面積層体ならびに裏面積層体を構成する紙層とガスバリア層とシーラント層は、それぞれ押出ラミネート樹脂層を介して貼り合わされていることを特徴とする自立性包装袋である。
【0009】
本発明に係る自立性包装袋は、その主たる構成要素である表面積層体と裏面積層体には紙層を含む積層体を使用し、底テープには、紙層を含まない積層体を使用したことにより、充填時における底面の展開、開口が円滑になり、また、紙層とガスバリア層とシーラント層の貼り合わせに押出ラミネート樹脂を用いたことにより、充填時や輸送時の折れ皺によるピンホールの発生を低下させることができた。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、表面積層体、裏面積層体、底テープの酸素透過度は、いずれも1.0cc/m2/day/atm以下であり、水蒸気透過度は、いずれも1.0g/m2/day以下であることを特徴とする請求項1に記載の自立性包装袋である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、内容物を注出するための注出筒が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自立性包装袋である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、内容物を注出するための口栓が取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の自立性包装袋である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る自立性包装袋は、表面積層体と裏面積層体には紙層を含む積層体を使用し、底テープには、紙層を含まない積層体を使用したことにより、充填時における底面の展開が円滑になり、充填適性が向上する。
【0014】
本発明に係る自立性包装袋は、その主たる構成要素である表面積層体と裏面積層体に紙層を含む積層体を使用したことにより、地球環境に対する負荷を低減することができる。
【0015】
本発明に係る自立性包装袋は、表面積層体、裏面積層体、底テープのいずれにもガスバリア層を有する積層体を使用したことにより、内容物保存性の高い自立性包装袋とすることができる。
【0016】
表面積層体および裏面積層体を製造するに当たって、従来のドライラミネート法を用いた方法によると、紙とガスバリアフィルムを貼り合わせた場合の初期接着力が弱いため、一定の養生期間を設けて接着力が向上した後にシーラント層とのドライラミネートを実施する必要があった。本発明の自立性包装袋においては、押出ラミネート法によって貼り合わせるため、3層を連続的に貼り合わせることができ、加工工程時間を大幅に短縮することができる。
【0017】
さらに、本発明に係る自立性包装袋においては、紙層、ガスバリア層、シーラント層の各層が押出ラミネート樹脂を介して接着されていることにより、従来のドライラミネート法やノンソルベントラミネート法による接着に比較して、屈曲時のピンホールが発生し難くなるという利点がある。
【0018】
本発明に係る自立性包装袋は、単純な形状の自立性包装袋の他、シール形状によって注出筒を形成したり、あるいは口栓を取り付けたりして、さまざまな用途に展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明に係る自立性包装袋の一実施態様を示した平面模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る自立性包装袋の他の実施態様を示した平面模式図であり、注出筒を有する例である。
【
図3】
図3は、
図2に示した実施態様において、注出筒の閉塞を防止するためのエンボスを設けた例である。
【
図4】
図4は、本発明に係る自立性包装袋の他の実施態様を示した斜視図であり、口栓を取り付けた例である。
【
図5】
図5は、本発明に係る自立性包装袋の表面積層体および裏面積層体の層構成を示した断面模式図である。
【
図6】
図6は、本発明に係る自立性包装袋の底テープの層構成を示した断面模式図である。
【
図7】
図7は、比較例1の自立性包装袋の表面積層体および裏面積層体の層構成を示した断面模式図である。
【
図8】
図8は、比較例2の自立性包装袋の表面積層体および裏面積層体の層構成を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面を参照しながら、本発明に係る自立性包装袋について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る自立性包装袋の一実施態様を示した平面模式図である。
図5は、本発明に係る自立性包装袋の表面積層体および裏面積層体の層構成を示した断面模式図である。また、
図6は、本発明に係る自立性包装袋の底テープの層構成を示した断面模式図である。
【0021】
本発明に係る自立性包装袋1は、
図5、
図6に示したように紙層10とガスバリア層12とシーラント層16を有する表面積層体2ならびに裏面積層体3と、ガスバリア層12とシーラント層16を有し、紙層を有しない底テープ4とから構成される自立性包装袋である。
【0022】
ガスバリア層12は、いずれも基材フィルム13面上に、金属または金属酸化物を蒸着した蒸着層14を有するガスバリアフィルムであり、表面積層体2ならびに裏面積層体3を構成する紙層10とガスバリア層12とシーラント層16は、それぞれ押出ラミネート樹脂層11、12を介して貼り合わされていることを特徴とする。
【0023】
底テープ4は、
図6に示したように、紙層を含まない層構成であり、この例では基材フィルム13に蒸着層14を形成したガスバリアフィルム12と中間層19とシーラント層16がドライラミネート接着剤層17によって貼り合わされている。
【0024】
底テープ4は、紙層を含まないため、このように従来のドライラミネート法によっても、問題なく貼り合わせることができるが、紙層10を含む表面積層体2および裏面積層体3は、従来のドライラミネート法やノンソルベントラミネート法によると初期接着力が弱く、紙層とガスバリアフィルムを貼り合わせた後に一定の養生期間を設けなければならなかった。この為、貼り合わせ工程に非常に時間が掛かるという問題があった。
【0025】
本発明に係る自立性包装袋1においては、表面積層体2および裏面積層体3の製造に当たって、各層の貼り合わせ方法として押出ラミネート法を採用した結果、初期接着力が十分であり、3層を連続して貼り合わせることができるので、貼り合わせ工程に要する時間が大幅に短縮された。
【0026】
図5に示した層構成の例では、紙層10とガスバリアフィルム12とシーラント層16がそれぞれ押出ラミネート樹脂層1、押出ラミネート樹脂層2によって貼り合わされている。図示しないが、紙層10には、予め印刷層や透明保護コート層などを設けておいても良い。
【0027】
紙層10としては、包装袋のサイズに応じて坪量が50~500g/m2程度の紙が使用できる。紙質としては、上質紙、白ボール紙、両面カード紙、裏白ボール紙、アイボリー紙、カートン原紙、カップ原紙等から選択する。
【0028】
ガスバリアフィルム12としては、基材フィルム13としてポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリエチレンテレナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム(ナイロンフィルム)、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の基材フィルムにアルミニウム、銅、銀等の金属や、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム等の金属酸化物を蒸着した蒸着フィルムを使用する。
【0029】
基材フィルムには、蒸着に先立ち必要に応じて、蒸着アンカーコートを施しても良い。また、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層などを併用しても良い。
【0030】
ガスバリア層として一般的に使用されるアルミニウム箔は、積層体の柔軟性を損なうばかりでなく、電子レンジによる加熱ができなくなるので、本発明においては、その使用は好ましくない。
【0031】
シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用される。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等を使用することができる。
【0032】
図2、
図3は、本発明に係る自立性包装袋1の他の実施態様を示した平面模式図であり、いずれも注出筒5を備えた例である。これらの包装袋は、液体充填用であり、外周のシール形状を工夫することにより、注出し易い注出筒5を形成している。
図3に示した例は、
図2の包装袋の注出筒5にエンボス7を付加したものであり、これにより注出時の注出筒の折れ曲がりや閉塞を防止する効果を発揮する。
【0033】
図4は、本発明に係る自立性包装袋1の他の実施態様を示した斜視図であり、口栓6を取り付けた例である。このように本発明に係る自立性包装袋は、さまざまな実施態様に展開することができるものである。以下実施例および比較例に基づいて、本発明に係る自立性包装袋についてさらに具体的に説明する。
【実施例0034】
表面積層体および裏面積層体として、坪量120g/m2の紙と、基材フィルムとして厚さ12μmのPET樹脂フィルムに酸化アルミニウムを蒸着したガスバリアフィルムと、シーラント層として厚さ60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムとを、押出ラミネート用ポリエチレン樹脂を用いた押出ラミネート法によって貼り合わせたものを使用した。ポリエチレン樹脂の厚さは、いずれの層も13μmとした。
【0035】
底テープとしては、表面積層体および裏面積層体に用いたものと同じガスバリアフィルムと、シーラント層を用い、中間層として厚さ15μmのナイロンフィルムを挿入し、こ
れら3層をドライラミネートしたものを用いた。
【0036】
これらの積層体を用いて幅110mm、高さ220mm、底折込幅30mmの
図1に示したような形状の自立性包装袋を作成した。
【0037】
<比較例1>
表面積層体および裏面積層体として、実施例に用いたものと同じ材料を用いて、各層をドライラミネート法によって貼り合わせたものを使用した。底テープは、実施例に用いたものと同じものを用いた。これらの積層体を用いて幅110mm、高さ220mm、底折込幅30mmの
図1に示したような形状の自立性包装袋を作成した。
【0038】
<比較例2>
表面積層体および裏面積層体として、実施例に用いたものと同じ材料を用いて、各層をノンソルベントラミネート法によって貼り合わせたものを使用した。底テープは、実施例に用いたものと同じものを用いた。これらの積層体を用いて幅110mm、高さ220mm、底折込幅30mmの
図1に示したような形状の自立性包装袋を作成した。
【0039】
それぞれの表裏面積層体について、酸素透過度および水蒸気透過度を測定した。またそれぞれの表裏面積層体についてゲルボフレックステスター試験を実施し、試験後のピンホール数を数えた。また、それぞれの自立性包装袋について輸送試験を実施した。
酸素透過度試験 :JIS K7126-2に従い、温度30℃、相対湿度70%の条件において測定した。
水蒸気透過度試験:JIS K7129-B法に従い、温度40℃、相対湿度90%の条件において測定した。
ゲルボフレックステスター試験:A4寸大のサンプルを切り出し、25℃1,000往復
440度ねじり×3.5インチ直進+2.5インチ直進
試験後のピンホール数を数える。N=3
輸送試験 :振動試験3G11Hz Z方向 30分
段ボールサイズ 幅360mm×奥行190mm×高さ230mm
12袋/1箱、振動試験後のピンホール数を数える。N=3
結果を表1にまとめた。
【0040】
【0041】
表1の結果から、本発明に係る自立性包装袋は、従来品に比較して輸送時や取扱時におけるピンホール発生の頻度が大幅に減少していることが分かる。