(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088689
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】配管型撹拌造粒ユニットおよび配管型撹拌造粒固液分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20230620BHJP
B01D 21/26 20060101ALI20230620BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20230620BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20230620BHJP
【FI】
B01D21/01 G
B01D21/01 B
B01D21/01 H
B01D21/26
B01D21/30 A
B01D21/30 Z
C02F1/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203588
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仕入 英武
(72)【発明者】
【氏名】出 健志
(72)【発明者】
【氏名】早見 美意
(72)【発明者】
【氏名】早見 徳介
(72)【発明者】
【氏名】毛受 卓
(72)【発明者】
【氏名】田中 夕佳
【テーマコード(参考)】
4D015
【Fターム(参考)】
4D015BA21
4D015BA26
4D015BB09
4D015BB14
4D015CA10
4D015CA14
4D015DC07
4D015DC08
4D015EA08
4D015EA12
4D015EA16
4D015EA39
(57)【要約】
【課題】構造や制御が容易であり、原水の量が変動する場合でも造粒に適した流速を確保し易い、配管型撹拌造粒ユニットを提供する。
【解決手段】配管型撹拌造粒ユニットは、撹拌モジュールと添加部とシャッター部材と制御部とを備える。撹拌モジュールは、原水が流動可能な流路に螺旋状のエレメントが固定された個別管状部材を複数本並列配置して、個別管状部材ごとに流動する原水の撹拌を行う。添加部は、撹拌モジュールの上流側に配置され、個別管状部材を流動する原水にフロックを形成させるための薬品を添加する。シャッター部材は、撹拌モジュールの上流端部と下流端部の少なくとも一方に配置され、複数の個別管状部材の流路の全てを閉塞する全閉位置と、流路のうち少なくとも一本の流路を開放する開放位置との間を移動可能な板状の部材である。制御部は、シャッター部材の移動位置を制御して原水の処理に利用する個別管状部材を決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の原水が流動可能な流路に螺旋状のエレメントが固定された個別管状部材を複数本並列配置して、前記個別管状部材ごとに流動する前記原水の撹拌を行う撹拌モジュールと、
前記撹拌モジュールの上流側に配置され、前記個別管状部材を流動する前記原水にフロックを形成させるための薬品を添加する添加部と、
前記撹拌モジュールの上流端部と下流端部の少なくとも一方に配置され、複数の前記個別管状部材の流路の全てを閉塞する全閉位置と、複数の前記個別管状部材の流路のうち少なくとも一本の前記流路を開放する開放位置との間を移動可能な板状のシャッター部材と、
前記シャッター部材の移動位置を制御して前記原水の処理に利用する前記個別管状部材を決定する制御部と、
を備える、配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項2】
前記シャッター部材は、前記撹拌モジュールの前記上流端部および前記下流端部に設けられ、
前記制御部は、前記上流端部側の前記シャッター部材の第1開放位置と前記下流端部側の前記シャッター部材の第2開放位置を異ならせ、前記第1開放位置と前記第2開放位置との組合せによって、前記原水の処理に利用する前記個別管状部材の位置を決定する、請求項1に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項3】
前記シャッター部材は、前記撹拌モジュールの端部に複数配置される、請求項1または請求項2に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項4】
前記制御部は、前記配管型撹拌造粒ユニットから排出されて後処理が実施された処理済み流体の状態に基づいて、前記シャッター部材の開放位置を制御し、前記原水の処理に利用する前記個別管状部材の本数を決定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項5】
前記制御部は、前記配管型撹拌造粒ユニットに流入する前記原水の処理量に基づいて、前記シャッター部材の開放位置を制御し、前記原水の処理に利用する前記個別管状部材の本数を決定する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項6】
前記撹拌モジュールの上流に前記撹拌モジュールに流入する前記原水の圧力状態を検出する圧力検出部を備え、
前記制御部は、前記原水が前記撹拌モジュールを通過する際の圧力状態に基づいて、前記シャッター部材の開放位置を制御し、前記原水の処理に利用する前記個別管状部材の位置を決定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項7】
前記制御部は、前記圧力検出部の検出する検出値が所定値以上の場合、前記原水の処理に利用する前記個別管状部材を変更することを示す警報を出力する、請求項6に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項8】
前記制御部は、前記配管型撹拌造粒ユニットから排出されて後処理が実施された処理済み流体の状態に基づいて、前記添加部で添加する前記薬品の量と種類の少なくとも一方の調整を行う、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の配管型撹拌造粒ユニット。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の配管型撹拌造粒ユニットの下流側に、前記配管型撹拌造粒ユニットから排出される撹拌済み流体の後処理を行う固液分離ユニットを備える、配管型撹拌造粒固液分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配管型撹拌造粒ユニットおよび配管型撹拌造粒固液分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水場や産業排水をはじめとするプラントや発電所等において、原水から金属イオンや有機物、無機塩等の懸濁物質を分離し、除去するために、固液分離装置が使用されている。固液分離装置としては、例えば、遠心分離技術を用いたシステムが知られている。遠心分離技術を用いた固液分離装置の場合、例えば、原水に含まれる固形物をフロック化する前処理を行った後、フロックを含む原水を遠心分離機に投入して、遠心力を利用して、所定の粒径以上のフロックを原水から分離している。
【0003】
上述のような遠心分離機を用いた固液分離装置の場合、前処理で形成されたフロックが遠心力によって分裂したり微細化したりしないように、高密度かつ高強度のフロックを形成することが望ましい。そのため、前処理工程にフロック形成槽を備えるタイプのシステムがある。また、フロック形成槽を備えるシステムより全体構成の小型化が可能なシステムとして、原水に無機凝集剤、カチオン系高分子凝集剤、アニオン系高分子凝集剤等の薬品を添加した後に撹拌して造粒することでフロックを形成するシステムが提案されている。このシステムの場合、添加した薬品と原水とを撹拌する技術として、例えば、配管型混合器を用いる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4875129号公報
【特許文献2】特開2010-214248号公報
【特許文献3】特許第5907273号公報
【特許文献4】特許第6805282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような配管型混合器を用いる場合、原水の処理量の変動(増減)に対応し得るように、大径の混合管(撹拌モジュール)を用いたり、小径の混合管を複数並列配置して用いたりする必要がある。しかしながら、大径の混合管を用いる場合、処理する原水の量が減少した場合、流速が低下して十分な造粒ができなかったり、凝集した固形物が混合管内で沈殿してしまったりするという問題がある。一方、小径の混合管を複数並列配置して用いる場合、小径の混合管ごとに流量調整バルブ等を設けて制御することにより、処理する原水の量に応じて流速の調整が可能になる反面、構造や制御が複雑化してしまうという問題がある。
【0006】
したがって、構造や制御が容易であり、処理対象の原水の量が変動する場合でも造粒に適した流速を確保し易い、配管型撹拌造粒ユニットを提供できれば、有意義である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態における配管型撹拌造粒ユニットは、例えば、撹拌モジュールと、添加部と、シャッター部材と、制御部と、を備える。撹拌モジュールは、処理対象の原水が流動可能な流路に螺旋状のエレメントが固定された個別管状部材を複数本並列配置して、個別管状部材ごとに流動する原水の撹拌を行う。添加部は、撹拌モジュールの上流側に配置され、個別管状部材を流動する原水にフロックを形成させるための薬品を添加する。シャッター部材は、撹拌モジュールの上流端部と下流端部の少なくとも一方に配置され、複数の個別管状部材の流路の全てを閉塞する全閉位置と、複数の個別管状部材の流路のうち少なくとも一本の流路を開放する開放位置との間を移動可能な板状の部材である。制御部は、シャッター部材の移動位置を制御して原水の処理に利用する個別管状部材を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットを含む配管型撹拌造粒固液分離装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1ゲート弁(第1シャッター部材)を上流側から見た場合の個別管状部材の上流端部の開放状態を示す正面図である。
【
図3】
図3は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第2ゲート弁(第2シャッター部材)を下流側から見た場合の個別管状部材の下流端部の開放状態を示す正面図である。
【
図4】
図4は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1シャッター部材と第2シャッター部材の制御によって利用可能になる個別管状部材を下流側から見た場合を示す正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1シャッター部材と第2シャッター部材の制御によって利用可能になる大流動対応時の個別管状部材を下流側から見た場合を示す正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1シャッター部材と第2シャッター部材の制御によって利用可能になる小流動対応時の個別管状部材を下流側から見た場合を示す正面図である。
【
図7】
図7は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットの凝集剤添加部で凝集剤の添加量を変化させた場合の処理水の濁度や懸濁物質(SS)の変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットのpH調整剤添加部で添加されるpH調整剤でpH調整を行った場合の処理水の金属イオン濃度の変化を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1ゲート弁の第1シャッター部材と第2ゲート弁の第2シャッター部材をそれぞれ2枚構成として、下流側から見た場合の個別管状部材の下流端部の開放状態を示す正面図である。
【
図10】
図10は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1ゲート弁の第1シャッター部材と第2ゲート弁の第2シャッター部材をそれぞれ2枚構成として、下流側から見た場合の個別管状部材の下流端部の別の開放状態を示す正面図である。
【
図11】
図11は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれる第1シャッター部材から第4シャッター部材の動作により、それぞれの撹拌モジュールの個別管状部材の端部の開放状態を変化させることを示す正面図である。
【
図12】
図12は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれるシャッター部材の移動方向のバリエーションを示す下流側から見た場合の正面図である。
【
図13】
図13は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニットに含まれるシャッター部材を3枚で構成した場合を示す上流側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および結果(効果)は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0010】
図1は、実施形態における配管型撹拌造粒ユニット10と固液分離ユニット12とを含む配管型撹拌造粒固液分離装置100の構成を示す構成図である。
【0011】
図1に示す配管型撹拌造粒固液分離装置100の場合、複数(例えば3台)の配管型撹拌造粒ユニット10(10A,10B,10C)を直列に接続した構成を示しているが、配管型撹拌造粒ユニット10の接続台数は、配管型撹拌造粒固液分離装置100を含む水処理プラントの仕様や処理対象となる原水W0の種類や状態等に応じて適宜変更可能である。したがって、配管型撹拌造粒固液分離装置100における配管型撹拌造粒ユニット10の接続台数は、用途に応じて1台でもよいし、2台以上でもよい。なお、
図1において、各配管型撹拌造粒ユニット10(10A~10C)の基本構成は同じであり、説明上で区別する必要がある場合には、第1配管型撹拌造粒ユニット10A、第2配管型撹拌造粒ユニット10B、第3配管型撹拌造粒ユニット10C等と表記し、区別する必要がない場合には、配管型撹拌造粒ユニット10と表記する。
【0012】
図1において、説明の都合上、配管型撹拌造粒ユニット10の直列配列方向をX方向とし、原水W0の流動方向(下流方向)をX1方向、その逆方向(上流方向)をX2方向とする。また、X方向と直交する紙面上下方向をY方向とし、紙面上方向をY1方向、紙面下方向をY2方向とする。また、X方向と直交する紙面鉛直方向をZ方向とし、紙面の裏面に向く方向をZ1方向、紙面手前に向く方向をZ2方向とする。
【0013】
配管型撹拌造粒ユニット10は、撹拌モジュール14、添加部として凝集剤添加部16およびpH調整剤添加部18、シャッター部材20、制御部22等を備える。
【0014】
撹拌モジュール14は、処理対象の原水W0が流動可能な流路24aに螺旋状のエレメント26が固定されたX方向に延びる個別管状部材24を複数本並列配置して(束ねて)、個別管状部材24ごとに流動する原水W0の撹拌を行う。個別管状部材24は、例えば、周知のラインミキサー(スタティックミキサー)で、流路24aは、例えば中空円筒状の管流路であり、内部にエレメント26が固定された駆動部のない静止型混合器である。撹拌モジュール14は、例えば複数本(後述する
図2等の場合は、60本を図示)の個別管状部材24が並列に束ねられ、例えば円筒状のハウジング28に収納されている。使用する(束ねる)個別管状部材24の直径や本数は、処理対象となる原水W0の処理量や性状等により事前の実験結果等に基づき決定(設計)することができる。個別管状部材24を原水W0が流動(通過)すると、螺旋状のエレメントの作用により旋回流が発生し原水W0に強い剪断力が加わる。その結果、個別管状部材24を原水W0が流動(通過)するときに凝集剤添加部16で添加された凝集剤やpH調整剤添加部18で添加されたpH(水素イオン濃度)調整材と原水W0の撹拌混合が行われる。
【0015】
図1の配管型撹拌造粒固液分離装置100の場合、撹拌モジュール14の端部にはシャッター部材20を図中Y1方向、Y2方向またはZ1方向、Z2方向に移動可能に支持するゲート弁30を備える。
【0016】
例えば、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aの場合、原水W0が流入する上流側端部10Aaには、第1シャッター部材20Aを支持する第1ゲート弁30Aが水密状態で固定されている。
【0017】
図2は、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)の上流側に設けられた第1ゲート弁30A(第1シャッター部材20A)を上流側から見た場合の個別管状部材24の上流端部の開放状態を示す正面図である。第1シャッター部材20Aは、図中Y1方向、Y2方向に移動可能であり、Y1方向の終端位置まで移動したときに、第1開動状態となり第1配管型撹拌造粒ユニット10Aを構成する個別管状部材24の全てにおいて原水W0の流入が可能になる。また、第1シャッター部材20Aが第1開動状態からY2方向に移動した場合、その移動量(第1開放位置)に応じて個別管状部材24の上流側である流入口が順次閉塞され、原水W0の流入を妨げる。つまり、閉塞された個別管状部材24は利用不可となり、閉塞されていない個別管状部材24のみが原水W0の流入を許容する。つまり、第1シャッター部材20Aは、全開位置と全閉位置との間で少なくとも一本の個別管状部材24を開放するように移動可能である。他のシャッター部材20も同様である。
【0018】
また、
図1に示されるように、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aの下流側端部10Abには、第2シャッター部材20Bを支持する第2ゲート弁30Bが水密状態で固定されている。
【0019】
図3は、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)の下流側に設けられた第2ゲート弁30B(第2シャッター部材20B)を下流側から見た場合の個別管状部材24の下流端部の開放状態を示す正面図である。第2シャッター部材20Bは、図中Z1方向、Z2方向に移動可能であり、Z1方向の終端位置まで移動したときに、第2開動状態となり第1配管型撹拌造粒ユニット10Aを構成する個別管状部材24の全てにおいて原水W0の流出が可能になる。また、第2シャッター部材20Bが第2開動状態からZ2方向に移動した場合、その移動量(第2開放位置)に応じて個別管状部材24の下流側である流出口が順次閉塞され、原水W0の流出を妨げる。つまり、閉塞された個別管状部材24は利用不可となり、閉塞されていない個別管状部材24のみが原水W0の流出を許容する。
【0020】
このように、シャッター部材20は、撹拌モジュール14の上流側と下流側に設けられている。従って、第1シャッター部材20Aと第2シャッター部材20Bの少なくとも一方によって閉塞された個別管状部材24は利用不可となる。
【0021】
図4は、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)に含まれる第1ゲート弁30A(不図示)に支持される第1シャッター部材20Aと第2ゲート弁30Bに支持される第2シャッター部材20Bの制御によって、利用可能になる個別管状部材24を下流側から見た場合を示す正面図である。
【0022】
例えば、第1シャッター部材20Aによって個別管状部材24の上流側の流入口が閉塞されていれば、第2シャッター部材20Bによる閉塞の有無に拘わらず、閉塞された個別管状部材24内での原水W0の流動は発生しない。また、第1シャッター部材20Aによって個別管状部材24の上流側の流入口が閉塞されていない場合であっても下流側で第2シャッター部材20Bによって、その流出口が閉塞されている場合、閉塞されている個別管状部材24内では、原水W0の流動は発生しない。つまり、第1シャッター部材20Aと第2シャッター部材20Bの少なくとも一方により閉塞された個別管状部材24では、原水W0の撹拌は実行されない。
図4の場合、左下領域において実線で示された17本の個別管状部材24のみが原水W0の流入および流出を許容し、原水W0の流動による撹拌が実行される。
【0023】
図5は、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)の第1ゲート弁30A(不図示)に支持される第1シャッター部材20Aと第2ゲート弁30Bに支持される第2シャッター部材20Bの制御によって利用可能になる原水W0の大流動対応時の個別管状部材24を下流側(第2ゲート弁30B側)から見た場合を示す正面図である。
図5に示される例では、第1シャッター部材20Aによって個別管状部材24の入口側が閉塞され、第2シャッター部材20Bによって個別管状部材24の出口側が閉塞される。その結果、実線で示される例えば45本の個別管状部材24において、原水W0の流動が可能になり、大量の原水W0の撹拌が可能になる。なお、第1シャッター部材20AをY1方向の終端位置に移動させ、第2シャッター部材20BをZ1方向の終端位置に移動させることにより、全60本の個別管状部材24を原水W0の流動(撹拌)に利用することができる。
【0024】
また、
図6は、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)の第1ゲート弁30A(不図示)に支持される第1シャッター部材20Aと第2ゲート弁30Bに支持される第2シャッター部材20Bの制御によって利用可能になる原水W0の小流動対応時の個別管状部材24を下流側(第2ゲート弁30B側)から見た場合を示す正面図である。
図6に示される例では、第1シャッター部材20Aによって個別管状部材24の入口側が閉塞され、第2シャッター部材20Bによって個別管状部材24の出口側が閉塞される。その結果、実線で示される例えば9本の個別管状部材24において、原水W0の流動が可能になり、小量の原水W0の撹拌が可能になる。なお、第1シャッター部材20AをY2方向の終端位置に移動させるか第2シャッター部材20BをZ2方向の終端位置に移動させることにより、全60本の個別管状部材24を閉塞し、原水W0の流動(撹拌)を停止することができる。
【0025】
このように、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aの上流端部側の第1シャッター部材20Aの第1開放位置と第1配管型撹拌造粒ユニット10Aの下流端部側の第2シャッター部材20Bの第2開放位置を異ならせるように制御する。その結果、第1シャッター部材20Aの第1開放位置と第2シャッター部材20Bの第2開放位置との組合せによって、原水W0の処理に利用する個別管状部材24の位置や本数を決定することができる。つまり、容易に個別管状部材24の開閉バリエーション(制御バリエーション)を向上することができる。また、第1シャッター部材20Aや第2シャッター部材20Bは、単純な直線移動によって複数の個別管状部材24の開閉制御を一括で可能となるので、個別管状部材24を個別に開閉制御する場合に比べ、構造がシンプルであり、制御が容易である。その結果、設計コスト、製造コスト、運転コスト等の軽減に寄与できる。
【0026】
図1に示されるように、第1ゲート弁30Aには凝集剤添加部16として第1凝集剤添加部16Aが接続されている。第1凝集剤は、ポンプ16Aaにより圧送されて、所定量が第1ゲート弁30Aに供給されて、原水導入流路32から流入する原水W0に添加される。同様に、第2ゲート弁30Bには第2凝集剤添加部16Bが接続される。第2凝集剤は、ポンプ16Baにより圧送されて、所定量が第2ゲート弁30Bに供給されて、第1撹拌モジュール14Aで第1凝集剤が添加され撹拌された原水W0に追加される。また、第3ゲート弁30Cには第3凝集剤添加部16Cが接続されている。第3凝集剤は、ポンプ16Caにより圧送されて、所定量が第3ゲート弁30Cに供給される。すなわち、第1撹拌モジュール14Aで第1凝集剤が添加され、第2撹拌モジュール14Bで第2凝集剤が添加されて撹拌された原水W0に第3凝集剤がさらに追加される。
【0027】
第1凝集剤添加部16A、第2凝集剤添加部16B、第3凝集剤添加部16Cには、例えば異なる種類の凝集剤が充填され、第1シャッター部材20A、第2シャッター部材20B、第3シャッター部材20Cが開動作して原水W0の流入が可能になった個別管状部材24に、原水W0の流量に対して所定量の添加剤を添加する。第1凝集剤添加部16Aは、第1凝集剤として例えば無機凝集剤を第1ゲート弁30A(第1撹拌モジュール14A)に添加し、第2凝集剤添加部16Bは、第2凝集剤として例えばカチオン系高分子凝集剤を第2ゲート弁30B(第2撹拌モジュール14B)に添加し、第3凝集剤添加部16Cは、第3凝集剤として例えばアニオン系高分子凝集剤を第3ゲート弁30C(第3撹拌モジュール14C)に添加する。なお、各凝集剤添加部16が添加する凝集剤は、上述した凝集剤に限られず、原水W0の状態、取り除きたい物質、配管型撹拌造粒固液分離装置100の利用状況等に応じて適宜変更可能である。また、同一のゲート弁30に複数種類の凝集剤を添加するようにしてもよい。
【0028】
また、配管型撹拌造粒ユニット10の上流側に接続された原水導入流路32には、pH調整剤添加部18が接続されている。pH調整剤は、ポンプ18aにより圧送されて、所定量が原水導入流路32に供給されて、原水W0に添加される。
【0029】
図1に示されるように、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)の上流側(入口側)には、第1ゲート弁30A(Y1-Y2方向に移動可能な第1シャッター部材20A)が配置されている。そして、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aの下流側(出口側)には、第2ゲート弁30B(Z1-Z2方向に移動可能な第2シャッター部材20B)が配置されている。また、第2配管型撹拌造粒ユニット10B(第2撹拌モジュール14B)の上流側(入口側)には、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aと共用される第2ゲート弁30B(第2シャッター部材20B)が配置されている。そして、第2配管型撹拌造粒ユニット10Bの下流側(出口側)には、第3ゲート弁30C(Y1-Y2方向に移動可能な第3シャッター部材20C)が配置されている。また、第3配管型撹拌造粒ユニット10C(第3撹拌モジュール14C)の上流側(入口側)には、第2配管型撹拌造粒ユニット10Bと共用される第3ゲート弁30C(第3シャッター部材20C)が配置されている。そして、第3配管型撹拌造粒ユニット10Cの下流側(出口側)に第4ゲート弁30D(Z1-Z2方向に移動可能な第4シャッター部材20D)が配置されている。したがって、第1シャッター部材20Aと第3シャッター部材20Cの移動位置を同じにするとともに、第2シャッター部材20Bと第4シャッター部材20Dの移動位置を同じにするように制御することにより、第1配管型撹拌造粒ユニット10A、第2配管型撹拌造粒ユニット10B、第3配管型撹拌造粒ユニット10Cにおいて同じ位置に存在する個別管状部材24が利用可能になる。この場合、原水W0の流入量(処理対象量)に応じて、利用可能とする個別管状部材24の本数を決定することにより、原水W0の流動時の流速を、凝集剤やpH調整剤の撹拌や原水W0に含まれる固形物の凝集や造粒に適した値にするとともに、配管型撹拌造粒ユニット10を流動する原水W0の流速を全体としてほぼ均一にすることができる。その結果、原水W0の前処理工程において、撹拌、造粒品質の安定化に寄与することができる。
【0030】
なお、
図1において、第1撹拌モジュール14AのX方向の長さと第2撹拌モジュール14BのX方向の長さはほぼ同じであり、第3撹拌モジュール14CのX方向の長さが第1撹拌モジュール14Aおよび第2撹拌モジュール14Bより長い。第1撹拌モジュール14A、第2撹拌モジュール14Bが、それぞれ上流側で添加された凝集剤やpH調整剤と原水W0との撹拌を行う。一方、第3撹拌モジュール14Cは、上流側で添加された凝集剤やpH調整剤と原水W0との撹拌に加え、原水W0中の固形物を凝集、造粒を行う。第3撹拌モジュール14Cは、当該第3撹拌モジュール14Cの下流側に配置された固液分離ユニット12で遠心分離処理が行われても微細化しない強い結合力を有するフロックに成長させるのに必要な時間を確保するように、事前の実験等に基づき長さが設定(設計)される。なお、第1撹拌モジュール14Aや第2撹拌モジュール14Bの長さについても、凝集剤やpH調整剤に対する必要な撹拌時間や既に添加されている凝集剤による凝集、造粒に必要な撹拌時間に対応し適宜決定するようにしてもよい。
【0031】
原水導入流路32には、流量検出部34および圧力検出部36が配置されている。流量検出部34は、配管型撹拌造粒固液分離装置100に流入する原水W0の流量を測定することができる。また、圧力検出部36は、配管型撹拌造粒固液分離装置100に流入する原水W0の水圧を測定することができる。配管型撹拌造粒固液分離装置100に流入する原水W0の流量および水圧を検出することにより、撹拌モジュール14で流動する原水W0の状態の把握が可能になる。流量検出部34および圧力検出部36で得られた検出結果は、第1制御部22Aに提供される。第1制御部22Aは、原水W0の流量および水圧に基づき、原水W0の流速が、原水W0の撹拌、つまりフロックの生成に適した値になるように、各シャッター部材20(20A~20D)の移動状態を制御する。つまり、原水W0が配管型撹拌造粒固液分離装置100の上流側から不図示のポンプ等により所定の水圧で圧送されるときに、各配管型撹拌造粒ユニット10を通過する際の流速が所定値になる流路径を形成するように、原水W0が流動可能な個別管状部材24の本数を決定する。なお、各シャッター部材20は、例えば、電動モータや流体圧シリンダ等の駆動装置によって連続的に動作可能である。
【0032】
図1に示されるように、配管型撹拌造粒固液分離装置100の下流側には、固液分離ユニット12が接続されている。固液分離ユニット12は、周知の固液分離装置が利用可能である。固液分離ユニット12は、例えば、円筒部と中空円錐部とを結合して形成されるコーン形状のサイクロンを複数備える。固液分離ユニット12は、第3配管型撹拌造粒ユニット10Cから供給される凝集済みのフロックを含む原水W0を、サイクロン内に流入させて、遠心分離処理を行う。固液分離ユニット12に流入した原水W0は、遠心力により固形物が除去された処理水W1と、分離除去された固形物である汚泥Sおよび分離効率向上のために行われるブローダウンにより発生するブロー水W2とに分離される。汚泥Sとブロー水W2とはブローダウン部42で分離される。汚泥Sはバルブ44の開放により適宜排出される。一方、ブロー水W2は、配管型撹拌造粒固液分離装置100の上流側に順次返送される。
【0033】
処理水W1の排出流路38には第1水質検出部46が設けられ、ブロー水W2の返送流路40には第2水質検出部48が設けられ、それぞれ常に水質を監視している。第1水質検出部46および第2水質検出部48は周知の検出機器が利用可能であり、それぞれが監視する水質は、処理対象の原水W0に応じて定められた、例えば濁度や金属イオン濃度、固形物量等である。したがって、第1水質検出部46や第2水質検出部48は、定められた水質検出に準じた検出機能を備える。第1水質検出部46および第2水質検出部48から出力される信号(検出結果)は、第2制御部22Bに提供される。第2制御部22Bは、第1水質検出部46や第2水質検出部48の検出結果に基づき、凝集剤添加部16における凝集剤の種類や添加量、pH調整剤添加部18におけるpH調整剤の添加量を制御する。
【0034】
図7は、配管型撹拌造粒ユニット10の凝集剤添加部16で添加する無機凝集剤の添加量を変化させた場合の処理水の濁度や懸濁物質(SS)の変化を示すグラフである。左側縦軸は、処理水W1の濁度である。濁度は、水のにごりの程度を表す指標で、水1リットル中にホルマジン1mgを含むときのにごりに相当するものを1度とする。右側縦軸は、処理水のSSを示す。処理水のSSは、水中に浮遊、分散する粒の大きさが1μm~2mmの物質を懸濁物質、または浮遊物質の水1リットルあたりに含まれる重量(mg/L)である。このように、第1水質検出部46、第2水質検出部48および第2制御部22Bを用いて凝集剤添加部16における凝集剤の添加量を制御することで、原水W0の水質が変動する場合でも配管型撹拌造粒固液分離装置100における水質管理の精度、品質を向上することができる。
【0035】
図8は、配管型撹拌造粒ユニット10のpH調整剤添加部18で添加されるpH調整剤でpH調整を行った場合の水質(金属イオン濃度)変化を示すグラフである。このように、第1水質検出部46、第2水質検出部48、および第2制御部22Bを用いてpH調整剤添加部18におけるpH調整剤の添加量を制御することで、原水W0の水質が変動する場合でも配管型撹拌造粒固液分離装置100における水質管理の精度、品質を向上することができる。
【0036】
このように第2制御部22Bは、配管型撹拌造粒ユニット10から排出されて、固液分離ユニット12にて後処理(固液分離処理)が実施された処理水W1(処理済み流体)の状態に基づいて、凝集剤添加部16やpH調整剤添加部18で添加する薬品(凝集剤やpH調整剤)の量と種類の少なくとも一方の調整を行うことで、より安定した水質管理を行うことができる。
【0037】
また、上述したように、制御部22(第1制御部22A)は、配管型撹拌造粒ユニット10から排出されて、固液分離ユニット12により後処理(固液分離処理)が実施された処理水W1の状態に基づいて、原水W0の処理に利用する個別管状部材24の本数を決定してもよい。この場合、第2制御部22Bによって適量の薬品(凝集剤やpH調整剤等)が添加された原水W0を最適な流速で流動させ、最適な撹拌、凝集、造粒等を実現することができる。また、前述したように、制御部22(第1制御部22A)は、配管型撹拌造粒ユニット10に流入する原水W0の処理量に基づいて、シャッター部材20の開放位置を制御し、原水W0の処理に利用する個別管状部材24の本数を決定するので、第2制御部22Bによって適量の薬品(凝集剤やpH調整剤等)が添加された原水W0を最適な流速で流動させ、最適な撹拌、凝集、造粒等を実現することができる。
【0038】
なお、
図1において、第1制御部22Aと第2制御部22Bと設ける構成を示しているが、第1制御部22Aと第2制御部22Bとをまとめて制御部22としてもよい。
【0039】
配管型撹拌造粒ユニットにおいて、原水W0の流動を可能にする本数を常に同じとした場合、原水W0の流量が変動すると個別管状部材24を流動する原水W0の流速が変動してしまう。例えば、原水W0の流量が減少した場合、個別管状部材24内の流速は低下し、原水W0に与える剪断力が低下し凝集、造粒性能が低下する場合がある。逆に原水W0の流量が増加した場合、個別管状部材24内の流速は増加し原水W0に与える剪断力が増大して凝集・造粒性能が向上するが、圧力損失の増加によりエネルギ費が増大する場合がある。このように、原水W0の流動を可能にする個別管状部材24の本数を常に一定とした場合、凝集、造粒処理が不安定になったり、運転コストのロスの原因になったりする場合があった。一方、本実施形態の配管型撹拌造粒ユニット10の場合、流量検出部34や圧力検出部36により配管型撹拌造粒ユニット10(配管型撹拌造粒固液分離装置100)に流入する原水W0の流量や水圧を監視して、原水W0の流量変動に応じてシャッター部材20の位置を制御して、原水W0が流動する個別管状部材24の本数を制御する。その結果、常に個別管状部材24内の流速が概ね一定となるようになり、凝集、造粒性能を概ね一定に保つことが可能になり、安定した水質の維持が可能になる。また、圧力損失の安定化により、配管型撹拌造粒ユニット10(配管型撹拌造粒固液分離装置100)を運転するエネルギ費の増大を抑制することができる。
【0040】
図9、
図10は、一つのゲート弁30が複数(例えば2枚)のシャッター部材20を備える配管型撹拌造粒ユニット10を下流側から見た場合の個別管状部材24の下流端部の開放状態を示す正面図である。
図9の場合、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aに含まれる不図示の第1ゲート弁30Aには、第1シャッター部材20Aa,20Abが含まれ、それぞれY1方向およびY2方向に移動可能である。また、第2ゲート弁30Bには、第2シャッター部材20Ba,20Bbが含まれ、それぞれZ1方向およびZ2方向に移動可能である。
【0041】
図9、
図10に示されるように、一つのゲート弁30が複数(例えば2枚)のシャッター部材20を備えることにより、原水W0の流動を可能にする個別管状部材24の位置選択をより詳細に行うことができる。例えば、原水W0の流動を可能にする12本の個別管状部材24を選択する場合でも、
図9に示されるように、第1撹拌モジュール14Aの中央領域で4行×3列で個別管状部材24を選択したり、
図10に示されるように、第1撹拌モジュール14Aの左領域で6行2列で個別管状部材24を選択したりすることができる。
【0042】
このように、個別管状部材24の選択位置を変更することにより、原水W0の流動に利用する個別管状部材24の選択の自由度が向上できる。例えば、配管型撹拌造粒ユニット10を長期間利用した場合、個別管状部材24の内壁に凝集、造粒した固形物が付着し堆積して流路の一部を閉塞して圧力損失が増大してしまう場合がある。このような場合、利用する個別管状部材24の本数を管理しても原水W0の流速の維持ができなくなる場合がある。そこで、例えば圧力検出部36から得られる検出結果に基づき、利用する個別管状部材24の本数を維持しつつ、利用する個別管状部材24の位置を変える(開放位置を制御する)ことにより、上述したような固形物の堆積した個別管状部材24を避けて不具合を回避することができる。その結果、原水W0の流速の維持を良好に行うことができるとともに、原水W0を流動させるための駆動エネルギの増大を防ぐとともに、処理水質を所定値に維持し易くなる。
【0043】
なお、第1制御部22Aは、原水W0の流入量が増加したり、個別管状部材24の利用本数を変更したりしていないにも拘わらず、圧力検出部36の検出する検出値が所定値以上になった場合に、原水W0の処理に利用する個別管状部材24を変更することを示す警報を出力してもよい。つまり、利用している個別管状部材24において、固形物が堆積した可能性があると判定される場合である。この場合、個別管状部材24(配管型撹拌造粒ユニット10)のメンテナンスが必要になる。配管型撹拌造粒ユニット10(配管型撹拌造粒固液分離装置100)の管理者は、この警報に基づき、配管型撹拌造粒ユニット10のメンテナンス計画を立案することが容易になり、配管型撹拌造粒ユニット10(配管型撹拌造粒固液分離装置100)の管理が容易になる。また、配管型撹拌造粒ユニット10が例えば溶剤等を用いた自動洗浄機能を備える場合、制御部22は、上述の警報に基づき、配管型撹拌造粒ユニット10(配管型撹拌造粒固液分離装置100)の休止時等に自動洗浄を実行するようにしてもよい。
【0044】
図11は、配管型撹拌造粒ユニット10に含まれる第1シャッター部材20Aから第4シャッター部材20Dの動作により、それぞれの撹拌モジュール14の個別管状部材24の端部の開放状態を変化させるパターンMを示す正面図である。具体的には、第1撹拌モジュール14A、第2撹拌モジュール14B、第3撹拌モジュール14Cで利用する個別管状部材24の本数や位置を変化させている。
【0045】
図11において、第1段(最上段)に図示される状態は、第1配管型撹拌造粒ユニット10A(第1撹拌モジュール14A)を上流側からみた状態であり、第1シャッター部材20Aによって、上側領域の6行の個別管状部材24が閉塞されている。また、第2シャッター部材20Bによって、右側領域の4列の個別管状部材24が閉塞されている。第2段に図示される状態では、第2配管型撹拌造粒ユニット10B(第2撹拌モジュール14B)を上流側からみた状態であり、第2シャッター部材20Bによって、右側領域の4列の個別管状部材24が閉塞されている。また、第3シャッター部材20Cによって、上側領域の2行の個別管状部材24が閉塞されている。第3段に図示される状態では、第3配管型撹拌造粒ユニット10C(第3撹拌モジュール14C)を上流側からみた状態であり、第3シャッター部材20Cによって、上側領域の2行の個別管状部材24が閉塞されている。また、第4シャッター部材20Dによって、右側領域の6列の個別管状部材24が閉塞されている。そして、第4に図示される状態では、第3配管型撹拌造粒ユニット10C(第3撹拌モジュール14C)を下流側からみた状態であり、第4シャッター部材20Dによって、右側領域の6列の個別管状部材24が閉塞されている。
【0046】
つまり、第1段に示されるように、第1撹拌モジュール14Aは、左下領域の9本の個別管状部材24において、原水W0の流動が許容される。また、第2段に示されるように、第2撹拌モジュール14Bは、左領域の25本の個別管状部材24において、原水W0の流動が許容される。そして、第3段、第4段に示されるように、第3撹拌モジュール14Cは、左領域の11本の個別管状部材24において、原水W0の流動が許容される。この場合、第1撹拌モジュール14Aの、左下領域から流出したpH調整剤および第1凝集剤が撹拌された原水W0は、第1撹拌モジュール14Aと第2撹拌モジュール14Bとの間に存在する第2ゲート弁30Bの内部を移動して、第2撹拌モジュール14Bにおいて流動が許容される左領域の25本の個別管状部材24に流入(流動)が許容される。同様に、第2撹拌モジュール14Bの、左領域から流出したpH調整剤および第1凝集剤、第2凝集剤が撹拌された原水W0は、第2撹拌モジュール14Bと第3撹拌モジュール14Cとの間に存在する第3ゲート弁30Cの内部を移動して、第3撹拌モジュール14Cにおいて流動が許容される左側の11本の個別管状部材24に流入し、流動が許容される。この場合、第1撹拌モジュール14A、第2撹拌モジュール14B、第3撹拌モジュール14Cで原水W0の流動が許容される個別管状部材24の本数が異なる。このように、各撹拌モジュール14において、撹拌状態の調整が可能になる。例えば、第2撹拌モジュール14Bでは第1撹拌モジュール14Aより原水W0の流速を遅くして緩い撹拌を行い、第3撹拌モジュール14Cにおいて,再度の原水W0の流速を早めて強めの撹拌を行うことができる。つまり、添加する薬品の種類や量に応じて撹拌態様の変更が可能になる。
【0047】
また、異なる撹拌モジュール14で同数の個別管状部材24を利用する場合でも,
図9、
図10で説明したように、利用する個別管状部材24の位置を容易に変更することができるので、個別管状部材24内の固形物の堆積が発生した場合でも経路変更も容易に行うことできる。なお、前述したように、第1ゲート弁30Aと第3ゲート弁30Cを同じ位置に移動し、第2ゲート弁30Bと第4ゲート弁30Dを同じ位置に移動させることにより、第1撹拌モジュール14A、第2撹拌モジュール14B、第3撹拌モジュール14Cにおいて、同じ本数で同じ位置の個別管状部材24を用いて原水W0の流動を行うことができる。
【0048】
図12は、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aに含まれる第1シャッター部材20Fの移動方向のバリエーションを示す下流側から見た場合の正面図である。
図12の場合、第1撹拌モジュール14Aの上流側に位置する第1ゲート弁30A(不図示)に支持される第1シャッター部材20Fは、他のシャッター部材20と同様に略矩形の板形状であるが、その移動方向が約45°反時計回り方向にずれて、F1方向、F2方向に移動可能になっている。なお、第1撹拌モジュール14Aの下流側の第2ゲート弁30Bに支持される第2シャッター部材20Bは、
図3の例と同様にZ1方向、Z2方向に移動可能である。その結果、
図12に示されるように、第1シャッター部材20Fと第2シャッター部材20Bの移動量に応じて利用できる個別管状部材24の位置バリエーションを増やすことができる。
【0049】
図13は、第1配管型撹拌造粒ユニット10Aに支持される第1シャッター部材20Ga~20Gcの形状と移動方向のバリエーションを示す上流側から見た場合の正面図である。
図13の場合、第1撹拌モジュール14Aの上流側に略五角形の板状の第1シャッター部材20Ga~20Gcが3枚配置されている。第1シャッター部材20Gaは、
図2に示す第1シャッター部材20Aと同様にY1-Y2方向に移動可能である。また、第1シャッター部材20Gbは、第1シャッター部材20Gaに対して時計回り方向に約135°傾き、G1方向、G2方向に移動可能である。同様に第1シャッター部材20Gcは、第1シャッター部材20Gaに対して反時計回り方向に約135°傾き、H1方向、H2方向に移動可能である。したがって、第1シャッター部材20Ga~20Gcがそれぞれ、同量だけ第1撹拌モジュール14Aの中央向かい移動した場合、各頂部が第1撹拌モジュール14Aの中央付近で集合し、全ての個別管状部材24を閉塞することができる。また、各第1シャッター部材20Ga~20Gcが外径方向や内径方向に移動した場合、
図13に示されるように、変則的な個別管状部材24の閉塞が可能になり、第1シャッター部材20Ga~20Gcの移動量に応じて利用できる個別管状部材24の位置のバリエーションを増やすことができる。
【0050】
図12、
図13で示されるように、シャッター部材20の移動方向や形状を変更することで原水W0の流動に利用できる個別管状部材24の位置のバリエーションを容易に増やすことが可能である。この場合、特に、上述したように配管型撹拌造粒ユニット10(配管型撹拌造粒固液分離装置100)の長期間の利用により個別管状部材24の内部に固形物が堆積して、原水W0の流動がスムーズにできなくなった場合に、その個別管状部材24を避けて、利用する個別管状部材24を選択する場合に、その選択がより容易になり、配管型撹拌造粒固液分離装置100の運転効率の低下を回避し易くなる。
【0051】
なお、シャッター部材20の形状や一つのゲート弁30に配置するシャッター部材20の枚数は、上述の例に限定されず、撹拌モジュール14の全ての個別管状部材24の閉塞と開放を可能にする形状や枚数であれば、適宜変更可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0052】
上述した例では、上流側の撹拌モジュール14の流出側のシャッター部材20を下流側に隣接する撹拌モジュール14の流入側のシャッター部材20としても利用する例を示した。他の実施形態では、撹拌モジュール14の流入側および流出側に専用のシャッター部材20を設けてもよい。つまり、隣接する撹拌モジュール14に挟まれたゲート弁30には、上流側の撹拌モジュール14の流出側のシャッター部材20と下流側の撹拌モジュール14の流入側のシャッター部材20とが設けられてもよい。この場合も上述したようなシャッター部材20を流出側と流入側で共用する場合と同様に個別管状部材24の選択が可能であり、同様の効果を得ることできる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10 配管型撹拌造粒ユニット
10A 第1配管型撹拌造粒ユニット
10B 第2配管型撹拌造粒ユニット
10C 第3配管型撹拌造粒ユニット
12 固液分離ユニット
14 撹拌モジュール
14A 第1撹拌モジュール
14B 第2撹拌モジュール
14C 第3撹拌モジュール
16 凝集剤添加部
16A 第1凝集剤添加部
16B 第2凝集剤添加部
16C 第3凝集剤添加部
18 pH調整剤添加部
20 シャッター部材
20A,20F,20Ga,20Gb,20Gc 第1シャッター部材
20B 第2シャッター部材
20C 第3シャッター部材
20D 第4シャッター部材
22 制御部
22A 第1制御部
22B 第2制御部
24 個別管状部材
24a 流路
26 エレメント
28 ハウジング
30 ゲート弁
30A 第1ゲート弁
30B 第2ゲート弁
30C 第3ゲート弁
30D 第4ゲート弁
34 流量検出部
36 圧力検出部
46 第1水質検出部
48 第2水質検出部
100 配管型撹拌造粒固液分離装置