(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023088743
(43)【公開日】2023-06-27
(54)【発明の名称】建物ユニットの上面雨仕舞構造および上面雨仕舞方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/28 20060101AFI20230620BHJP
E04G 21/24 20060101ALI20230620BHJP
E04B 1/348 20060101ALI20230620BHJP
【FI】
E04G21/28 B
E04G21/24 A
E04B1/348 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021203662
(22)【出願日】2021-12-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】津川 智紀
(57)【要約】
【課題】主に、防水シートを小型化すると共に、防水シートをまくり上げなくても建物ユニットを吊上げ得るようにする。
【解決手段】
建物ユニット2の上面雨仕舞構造に関する。
建物ユニット2の上縁部11に沿って形成された細長い未防水部分12を覆う細長い水切シート13が設けられる。
水切シート13は、両端部14に吊具挿通孔16を有している。
水切シート13は、未防水部分12を上から覆った状態で、両端部14の、少なくとも吊具挿通孔16の周囲が、建物ユニット2の上縁部11の周辺を面接触状態で覆う上縁接触面部17とされる。
建物ユニット2には、吊具挿通孔16を通して吊具18が取付けられる。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物ユニットの上縁部に沿って形成された細長い未防水部分を覆う細長い水切シートが設けられ、
該水切シートは、両端部に吊具挿通孔を有し、
前記水切シートは、前記未防水部分を上から覆った状態で、前記両端部の、少なくとも前記吊具挿通孔の周囲が、前記建物ユニットの上縁部の周辺を面接触状態で覆う上縁接触面部とされ、
前記建物ユニットには、前記吊具挿通孔を通して吊具が取付けられることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建物ユニットの上面雨仕舞構造であって、
前記水切シートは、前記両端部の近傍に切込部を有し、
前記水切シートは、前記切込部間の中間部が、前記上縁接触面部よりも高い位置に設置されることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項3】
請求項2に記載の建物ユニットの上面雨仕舞構造であって、
前記未防水部分は、防水性を有する屋根パネルを、前記建物ユニットの上に、前記上縁部から内側へズラして設置することで、前記上縁部に沿って細長く形成され、
前記水切シートは、前記屋根パネルの、前記未防水部分に面した側面に取付けられ、
前記水切シートは、前記中間部が、前記屋根パネルの前記側面の位置から前記建物ユニットの前記上縁部へ向かう下り形状に設置されると共に、
前記両端部は、前記屋根パネルの前記側面に沿って下へ延びる縦面部分と、前記建物ユニットの前記上縁部の周辺に沿って横へ延びる前記上縁接触面部とを有するL字状に設置されることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞構造。
【請求項4】
防水性を有する屋根パネルを、建物ユニットの上に、上縁部から内側へズラして設置することで、前記上縁部に沿って細長く延びる未防水部分を形成し、
前記屋根パネルの、前記未防水部分に面した側面に取付けた細長い水切シートで、前記未防水部分を覆い、
前記水切シートは、両端部の近傍に設けた切込部の間に位置する中間部を、前記建物ユニットの前記未防水部分に対し前記上縁部よりも高く持上げて、前記屋根パネルの側面から前記建物ユニットの前記上縁部へ向かう下り形状に設置すると共に、
前記切込部の外側に位置する前記両端部を、前記建物ユニットの前記上縁部の周辺に対し面接触状態で設置することによって上縁接触面部を形成し、
前記水切シートの前記上縁接触面部に設けた吊具挿通孔を通して前記建物ユニットに吊具を取付けることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞方法。
【請求項5】
請求項4に記載の建物ユニットの上面雨仕舞方法であって、
前記建物ユニットの据付後に、前記吊具を取外し、
前記吊具が取外された前記吊具挿通孔を、防水テープで塞ぐと共に、
前記切込部を前記防水テープで繋いで、前記水切シートの前記両端部を前記中間部と共に下り形状にすることを特徴とする建物ユニットの上面雨仕舞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物ユニットの上面雨仕舞構造および上面雨仕舞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物には、ユニット建物で構成されたものがある。ユニット建物は、予め工場で製造された直方体状の建物ユニットを建築現場へ搬送して、建築現場で組み立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなユニット建物では、建物ユニットの出荷からユニット建物が完成するまでの間に建物ユニットの内部に雨水が入り込まないようにする必要がある。そのために、特許文献1では、例えば、降雨時に、建物ユニットの上部に、建物ユニットの上面全体を覆う大きさの防水シートを被せて、建物ユニットを工場から建築現場へ出荷するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、降雨時に建物ユニットの上部に、建物ユニットの上面全体を覆う大きさの防水シートを被せて出荷した場合、防水シートが大判の部材となるため、防水シートの取扱いが大変であった。また、建築現場で建物ユニットを吊上げる際などには、建物ユニットに吊具を取付けるために、大判の防水シートの少なくとも一部をまくり上げなければならない。防水シートをまくり上げた状態で建物ユニットの吊上げを行うと、防水シートのまくり上げた部分から建物ユニット内に雨水が浸入するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
建物ユニットの上縁部に沿って形成された細長い未防水部分を覆う細長い水切シートが設けられ、
該水切シートは、両端部に吊具挿通孔を有し、
前記水切シートは、前記未防水部分を上から覆った状態で、前記両端部の、少なくとも前記吊具挿通孔の周囲が、前記建物ユニットの上縁部の周辺を面接触状態で覆う上縁接触面部とされ、
前記建物ユニットには、前記吊具挿通孔を通して吊具が取付けられる建物ユニットの上面雨仕舞構造を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成によって、防水シートを小型化すると共に、防水シートをまくり上げなくても建物ユニットを吊上げることなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態にかかる上面雨仕舞構造を有するユニット建物の全体斜視図である。
【
図2】
図1のユニット建物に使用される下階の建物ユニットの全体斜視図である。
【
図3A】最上階のユニット建物における、外壁側の上縁部周辺の部分拡大縦断面図である。
【
図3B】
図3Aの反対側(隣接側)の上縁部の周辺の部分拡大縦断面図である。
【
図4A】
図3Aの(外壁側の)水切シートの両端部に吊具を取付けた状態を示す部分拡大斜視図である。
【
図4B】
図3Bの(隣接側の)水切シートの両端部に吊具を取付ける状態を示す部分拡大斜視図である。
【
図5】水切シートの部品図である。このうち、(a)は中間部を省略した両端部の平面図、(b)は水切シートの両端部の吊具挿通孔の近傍の縦断面図、(c)は水切シートの両端部の最も外側の部分の縦断面図である。
【
図6A】屋根パネルの側面に水切シートを取付ける状態を示す斜視図である。
【
図6B】屋根パネルに対する水切シートの取付け状態を示す部分拡大断面図である。
【
図6C】水切シートを取付けた屋根パネルの両端部の拡大縦斜視図である。
【
図7A】水切シートを取付けた屋根パネルを建物ユニットの上部の上に設置する状態を示す斜視図である。
【
図7B】屋根パネルを設置した建物ユニットの上縁部の周辺を示す拡大縦断面図である。
【
図8A】建物ユニットの上縁部の周辺の未防水部分に、屋根パネルに取付けた水切シートを拡げる状態を示す斜視図である。
【
図8B】水切シートを拡げた状態を示す建物ユニットの上縁部の周辺の縦断面図である。
【
図9】水切シートの両端部に上から吊具を取付ける状態を示す部分拡大斜視図である。
【
図10A】吊具を取付けた吊具挿通孔を、防水テープで塞ぐ状態を示す水切シートの両端部の部分拡大斜視図である。
【
図10B】水切シートをシート受梁に貼付ける状態を示す部分拡大斜視図である。
【
図10C】水切シートをシート受梁に貼付けた状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図10D】切込部を防水テープで繋ぐ状態を示す水切シートの両端部の部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1~
図10Dは、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
戸建住宅や集合住宅などの建物を、
図1に示すようなユニット建物1で構成する。
【0013】
ユニット建物1は、箱型(直方体状)の建物ユニット2(
図2)を予め工場で製造して建築現場へ搬送し、建築現場で組み合わせて設置することにより、短期間のうちに構築できるようにした建物である。
【0014】
ユニット建物1は、下階Lの建物ユニット2の上に、上階Hの建物ユニット2を設置した多階建ての建物となっている。上階Hには、バルコニー3も設置されている。なお、ユニット建物1は、建物ユニット2を上下方向4に設置する必要はなく、平屋としても良い。
【0015】
建物ユニット2は、平面視ほぼ矩形状をした上面および下面と、側方から見てほぼ矩形状をした4つの側面と、を有するほぼ六面体となっている。4つの側面は、建物ユニット2の長辺に沿った平行な一対の側面と、短辺に沿った平行な一対の側面とを有している。
【0016】
ユニットフレームの屋外側となる側面やコーナー部分には、外壁5が取付けられる。なお、コーナー部分の外壁5については、図示を省略する場合がある。
【0017】
ユニットフレームの室内側となる側面は開放される。そのため、室内側の側面は、仮雨仕舞シート6によって一時的に塞がれる。なお、
図2の建物ユニット2は、下階Lに設置されるものとなっている。
【0018】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えても良い。
【0019】
(1)
図3A~
図4B(主に、
図4A参照)に示すように、建物ユニット2の上面雨仕舞構造は、
建物ユニット2の上縁部11に沿って形成された細長い未防水部分12を覆う細長い水切シート13(
図5)が設けられる。
水切シート13は、両端部14に吊具挿通孔16を有している。
水切シート13は、未防水部分12を上から覆った状態で、両端部14の、少なくとも吊具挿通孔16の周囲が、建物ユニット2の上縁部11の周辺を面接触状態で覆う上縁接触面部17とされる。
そして、建物ユニット2には、吊具挿通孔16を通して吊具18が取付けられる。
【0020】
ここで、建物ユニット2の上面雨仕舞構造は、建物ユニット2の上面や上部を雨仕舞するための構造である。上面雨仕舞とは、雨水から建物ユニット2の上面や上部を保護することである。雨仕舞には、ユニット建物1の構築前に行われる一時的な仮雨仕舞と、ユニット建物1の構築後にも継続される本雨仕舞とがあるが、この例では、少なくとも仮雨仕舞ができるものとする。なお、仮雨仕舞に限らず、本雨仕舞をも同時にできるようにしても良い。
【0021】
仮雨仕舞は、少なくとも、降雨時に建物ユニット2を工場から建築現場へ搬送し、建築現場に据付けて、ユニット建物1の外形がほぼできた後、屋根部分ができあがるまでの間に必要となる。仮雨仕舞を施していない場合には、降雨時に上記作業を行うことができないため、その分、工期が延びてしまう。この実施例では、特に、上階H(最上階)の建物ユニット2の上面または上部に対する仮雨仕舞を対象にしている。
【0022】
建物ユニット2は、ユニット建物1を構成する単位構造体である。上記したように、建物ユニット2は、ほぼ直方体状をしており、内部には、ボックスラーメン構造のユニットフレームが設けられている。ユニットフレームは、
図2に示すように、4本の柱2aの上端間に4本の天井梁2bを矩形状に連結し、4本の柱2aの下端間に4本の床梁2cを矩形状に連結した箱枠状のものとされる。柱2aと、天井梁2bおよび床梁2cとの間の接合には、それぞれジョイントピース2dが用いられる。
【0023】
上縁部11は、ほぼ直方体状をした建物ユニット2の上面の縁部分、または、平面視ほぼ矩形状の上面を構成する各辺である。上縁部11の周辺は、上縁部11とその近くの一定範囲の部分のことである。
【0024】
具体的には、建物ユニット2の上面は、4本の柱2aの上端部と4本の天井梁2bの上面(およびジョイントピース2dの上面)とによって構成された平面視ほぼ矩形状の領域の内側の面である。上縁部11には、柱2aの上端部や天井梁2bの上面(およびジョイントピース2dの上面)を含む場合がある。上縁部11は、4本の天井梁2bのうちのどれでも良いが、この実施例では、矩形状をした上面の長辺を形成する2本の天井梁2b、または、そのうちのどちらか一方の天井梁2bを対象とした場合について説明する。
【0025】
未防水部分12は、建物ユニット2の上面における、防水処理を施していない(上縁部11の周辺の)部分である。建物ユニット2は、工場で、ほぼ全体が防水部分21(
図3A)となるように製造される。
【0026】
この際、上縁部11の周辺に沿った部分については、建物ユニット2の吊上げ作業に使う必要があるため、建築現場での据付作業が終わるまでは、防水性を持たせるための仕上作業を行うことができず、防水がなされない未完成の状態のままで残される。なお、未防水部分12は、建築現場での建物ユニット2の据付け後の雨が止んだときに、屋根部分の仕上作業が行われることで、完全に防水(本雨仕舞)される。
【0027】
未防水部分12は、上縁部11に沿い、所要の幅で形成されることにより、細長い形状となる。所要の幅は、例えば、天井梁2bの幅とほぼ同じか、または、それよりも若干(2~3倍程度)広い幅などとされる。
【0028】
水切シート13は、防水性を有する薄くて柔軟なポリエチレンなどの樹脂製のシートやフィルムである。水切シート13は、例えば、屋根の下葺き材(ルーフィング)や、建物の外壁5の内側(裏側)などに設置されているものとほぼ同様のものが使われる。水切シート13は、少なくとも、上縁部11の周辺の未防水部分12を完全に覆えるように、未防水部分12よりも幅および長さが一回り程度以上大きい細長い形状とされる。よって、水切シート13は、建物ユニット2の上面全体を覆う大きさの大判のものにする必要がない。
【0029】
水切シート13は、その延設方向(この実施例では、建物ユニット2の長辺の方向)に沿った少なくとも一方の縁部に、防水性を有する粘着テープ22(
図4A、
図5など)が予め取付けられても良い。
【0030】
粘着テープ22は、水切シート13に対し、両端部14の最も外側の部分を除いた、ほぼ全域に亘って(例えば、吊具挿通孔16を越える位置まで)連続して取付けられる。粘着テープ22は、少なくとも、未防水部分12と防水部分21との境界線とほぼ同じ長さで水切シート13に取付けられて、境界線に対し、延設方向の位置を合わせて貼付けられる。
【0031】
この実施例では、粘着テープ22は、一部が水切シート13の一方の縁部から所要幅だけ、幅方向にはみ出すように取付けられており、はみ出した粘着部分が境界線に貼付けられる。境界線は、建物ユニット2の長辺とほぼ同じかそれ以下の長さとなる。なお、例えば、粘着テープ22は、両面テープにして、水切シート13の裏面側に貼付けるようにすれば、一部を水切シート13からはみ出すように貼付けなくても良くなる。
【0032】
粘着テープ22には、上記はみ出した粘着部分に離型紙22a(
図5(b))が取付けられており、離型紙22aを剥がすことで水切シート13を境界線に合わせた適正な位置に簡単に貼付けられるようになっている。なお、水切シート13の、最も外側となる部分、例えば、未防水部分12を越えて建物ユニット2の外側に延びる部分(
図5(c))などについては、粘着テープ22は特に貼る必要はない。
【0033】
両端部14は、細長い形状の水切シート13における、延設方向の両側の端末部分およびその周辺部分である(シート両端部)。具体的には、両端部14は、建物ユニット2の長辺の両側に位置する柱2aやジョイントピース2dなどとほぼ重なる部分、および、それよりも外側となる部分などとなる。両端部14には、建物ユニット2の長辺から延設方向にはみ出した部分も含まれる。
【0034】
吊具挿通孔16は、水切シート13の両端部14の上縁接触面部17に直接形成された貫通孔である。吊具挿通孔16は、建物ユニット2の柱2aの上端部に形成された、吊具18を取付けるための取付孔23と合致する位置に設けられる。
【0035】
吊具挿通孔16には、吊具18の下部に設けられたネジ部18a(
図4B)が通される。そのため、吊具挿通孔16は、ネジ部18aや取付孔23とほぼ同じかそれよりも若干大きな径とされる。吊具挿通孔16は、水切シート13の両端部14の上縁接触面部17のほぼ中央にそれぞれ1箇所ずつ設けられる。そして、吊具挿通孔16は、単なる開口とされる。吊具挿通孔16は、例えば、開口を覆い隠すための蓋状の付随物などを有さずに、完全に外部に露出した孔となるように水切シート13に形成される。
【0036】
水切シート13の吊具挿通孔16を形成する部分(上縁接触面部17)の片面または両面には、防水性を有するアクリルテープなどの補強テープ(補強材24)を貼付けても良い。吊具挿通孔16は、水切シート13および補強材24の両方を貫通するように、同じ位置および大きさに形成される。
【0037】
また、水切シート13は、両端部14における、補強材24を貼った部分の厚みが増し、平坦化されることで、建物ユニット2の上縁部11に対する吊具挿通孔16の周辺の密着性が部分的に高められる。そのため、補強材24は、上縁接触面部17にシール性の高い部分を形成する部材にもなる。この実施例では、補強材24は、柱2aの上端部とほぼ同じ形状および大きさとされて、柱2aの上端部の位置に貼付けられることで、上縁接触面部17を柱2aの上端部に密着させる。
【0038】
上縁部11を面接触状態で覆うとは、水切シート13の両端部14の大部分または一部分(少なくとも吊具挿通孔16の周辺)が、柱2aの上端部(取付孔23の周辺)や、ジョイントピース2dの上面や、天井梁2bの端部の上面に対し、ほぼ隙間なく面で接した状態となるように上から被せられることである。
【0039】
上縁接触面部17は、水切シート13の両端部14の全部または一部分に形成される。上縁接触面部17は、少なくとも柱2aの上端部や、ジョイントピース2dの上面や、天井梁2b端部の上面などのほぼ水平でほぼ平坦な面に対して、上側からほぼ面接触状態で覆うようにほぼ水平に設置される部分である。
【0040】
なお、上縁接触面部17は、少なくとも柱2aの上端部に対する密着度が最も高くなっていれば、他の部分の密着度は多少低くても良い。これにより、上縁接触面部17は、少なくとも取付孔23の周囲をほぼ隙間なく覆うシール部となって、取付孔23をシールする。
【0041】
吊具18は、建物ユニット2をクレーンなどで吊り上げる際に、建物ユニット2の上面の、4つのコーナー部分に一時的に取付けられる補助治具である。吊具18には様々なタイプのものが存在しているが、この実施例では、吊具18は、上記したように、下部がネジ部18aとなっており、取付孔23がネジ穴とされて、取付孔23に直接螺着される。
【0042】
吊具18は、上部がネジ部18aよりも大きくなっており、下面にネジ部18aと面直で、ネジ部18aの周囲を取囲む平坦面を有している。吊具18は、建物ユニット2に取付けたときに、上部の下面が、上縁接触面部17を挟んだ状態で建物ユニット2の上面に圧着することで、シール面となって、取付孔23をより確実にシールする。
【0043】
吊具18は、上部に、クレーンのフックを引掛ける係止部分18bを有している。係止部分18bは、吊具18の上部に対して固定状態で設置されていも良いし、可動し得るように設置されても良い。吊具18は、例えば、工場からの出荷時に建物ユニット2の上面の4つのコーナー部に上から取付けられ、建築現場での建物ユニット2の据付け後に、建物ユニット2の上面から取外される。
【0044】
(2)水切シート13は、両端部14の近傍に切込部25(
図4A)を有し、水切シート13は、切込部25間の中間部26が、上縁接触面部17よりも高い位置に設置されても良い。
【0045】
ここで、切込部25は、水切シート13に形成した切れ目であり、両端部14を完全に水切シート13から切り離さないように、連結部分13aを残して水切シート13に形成される。
【0046】
切込部25は、水切シート13における、下側となる縁部から上側となる縁部へ向けて、上側の縁部に達しないように、水切シート13のほぼ幅方向に向けて形成される。これにより、水切シート13は、両端部14と中間部26とが分かれて、形状が比較的自由になる。水切シート13は、切込部25の上側の縁部の周辺(のほぼ粘着テープ22が貼られた位置まで)が連結部分13aとなる。
【0047】
切込部25は、ユニット建物1の屋外側に向いた上縁部11(の周辺の未防水部分12)を覆う水切シート13に対して設けられる(
図4A)。または、切込部25は、建物ユニット2の外壁5が取付けられた側面の上に設置される水切シート13に対して設けられる。
【0048】
一方、切込部25は、互いに隣接する建物ユニット2間に位置する上縁部11(の周辺の未防水部分12)を覆う水切シート13に対しては、特に設けなくて良い(
図4B)。なお、少なくとも、互いに隣接する建物ユニット2間に位置する上縁部11を覆う水切シート13の上には、更に、厚手の仮雨仕舞シート27(
図3B)を被せて仮雨仕舞手段を二重化しても良い。
【0049】
この実施例では、切込部25を有する水切シート13が設けられるのは、ユニット建物1の上階Hにおける、バルコニー3に面した未防水部分12と、バルコニー3から最も離れた反対側の未防水部分12との2箇所となっている(
図1)。
【0050】
中間部26は、水切シート13の長手方向の両端部14の間の部分である(シート中間部)。
図4Aの場合には、中間部26は、水切シート13の長手方向の両側に形成された2つの切込部25の間に位置する部分(主要部)となる。
【0051】
中間部26は、水切シート13の長手方向の両端部14以外の大部分を占める。中間部26と両端部14との境は、おおむね、天井梁2bの端部とジョイントピース2dとの境目の位置周辺とされる。
【0052】
上縁接触面部17よりも高い位置に設置するとは、中間部26を(両端部14の)上縁接触面部17よりも上側に位置させることである。
上縁接触面部17は、建物ユニット2の上縁部11の周辺を面接触状態で覆っているので、中間部26は、それよりも高い位置に設置されるようにする。このような状態は、切込部25を設けて、中間部26と両端部14を分けることによって容易にできる。好ましくは、中間部26は、後述するような下り形状にする。
【0053】
(3)より具体的には、未防水部分12は、防水性を有する屋根パネル31(
図6A)を、
図7A(
図7B)に示すように、建物ユニット2の上に、上縁部11から内側へズラして設置することで、上縁部11に沿って細長く形成されても良い。
図6B(
図6C)に示すように、水切シート13は、屋根パネル31の、未防水部分12に面した側面32に取付けられても良い。
そして、
図8A、
図8Bに示すように、水切シート13は、切込部25間の中間部26が、屋根パネル31の側面32の位置から建物ユニット2の上縁部11へ向かう下り形状に設置されても良い。
図9に示すように、水切シート13は、両端部14が、屋根パネル31の側面32に沿って下へ延びる縦面部分34と、建物ユニット2の上縁部11の周辺に沿って横へ延びる上縁接触面部17とを有するL字状に設置されても良い。
【0054】
ここで、屋根パネル31は、ユニット建物1の屋根部分を構成するパネルである。この実施例では、上階H(最上階)の建物ユニット2の上(上面のコーナー部分)に屋根パネル31を並べて設置することで、ユニット建物1は、屋根部分を建物ユニット2に直接構築するようにしている。屋根パネル31が防水性を有することで、建物ユニット2は、上面の大部分が防水部分21となる。
【0055】
上縁部11から内側へズラして設置するとは、屋根パネル31が建物ユニット2の取付孔23を覆い隠さないように、屋根パネル31を建物ユニット2の上面の内側へ所要量寄せて設置することである。
【0056】
これにより、屋根パネル31は、建物ユニット2の上縁部11および取付孔23と重ならないように建物ユニット2の上面に設置される。そして、建物ユニット2の上面は、上に屋根パネル31が存在しないことで、上縁部11の周辺の細長い部分が未防水部分12となる。未防水部分12は、建物ユニット2の上縁部11に対する屋根パネル31のズレ量(例えば、天井梁2bの幅のほぼ2~3倍程度)と等しい幅に形成される。
【0057】
屋根パネル31は、防水性を有していればどのようなものとしても良い。屋根パネル31は、例えば、
図6A、
図6Bに示すように、一対の平行な屋根フレーム35の間に、野地板36aや、防水性を有する下地鋼板36bなどの面材36を架設連結して一体化し、全体を面状に整えたものとされる。野地板36aは、屋根フレーム35の内側面に取付けられた受桟36c(
図6B)によって両側部を下側から支持固定される。
【0058】
屋根フレーム35は、屋根パネル31の側面32を形成する部材(側面形成部材)であり、建物ユニット2の長辺とほぼ同じ長さとされる。そして、各建物ユニット2の屋外側に位置する屋根フレーム35は、未防水部分12と防水部分21との境界線になる。
【0059】
屋根フレーム35は、
図7Bに示すように、縦向きのウェブ面35aと、横向きの上下のフランジ面35b,35cとを有する内向きC字断面の部材とされる。フランジ面35b,35cは、ウェブ面35aの上下の縁部から屋根パネル31の内側へ向けて横に延びる。
【0060】
下地鋼板36bの上側には、例えば、太陽電池パネル37が、単数または屋根フレーム35に沿うように複数枚(例えば、4枚)並べて設置される。太陽電池パネル37は、取付金具38を介してネジで屋根フレーム35(の上側のフランジ面35b)に上側から取付けられる。なお、出荷時には、太陽電池パネル37は、上面に、保護シート37aが被せられる。また、太陽電池パネル37は必ずしも必要なものではないため、なくても良いし、太陽電池パネル37を模したダミーパネルなどとしても良い。
【0061】
屋根パネル31は、連結梁39の上に単数または複数枚(例えば、2枚)横に並べた状態で、連結梁39に固定されて一体化される。複数枚の屋根パネル31は、建物ユニット2の長辺とほぼ同じ長さ、および、建物ユニット2の短辺よりも短い幅の矩形状となるように一体化される。
【0062】
そして、一体化された屋根パネル31は、建物ユニット2の上面と向きを揃えて、連結梁39ごと(最)上階Hの建物ユニット2の上面の中央部に上から設置される。
【0063】
連結梁39は、建物ユニット2の上面とほぼ同じかそれよりも若干下側となる位置に設置される。連結梁39の端部39aは、屋根パネル31の側面32から横へ突出して、ユニットフレームの天井梁2bの上に、上側から係止され、ボルト・ナットなどの締結固定具39bによって上下方向4に固定される。なお、連結梁39の端部39aは、連結梁39の本体部分よりも僅かに高くなるように段違い形状とされている。
【0064】
側面32は、屋根パネル31の屋外側に位置する部分(パネル側面)であり、屋根フレーム35となる。水切シート13は、屋根フレーム35に中間部26を合わせた状態で、一方の縁部に取付けられた粘着テープ22を、屋根フレーム35(の上部)に対し、屋根フレーム35のほぼ全長に亘って連続するように貼付けられる。
【0065】
この際、水切シート13は、粘着テープ22の側を上にして設置される。そして、水切シート13は、屋根フレーム35の上側のフランジ面35bや、取付金具38がある位置では、取付金具38の上端面などに、粘着テープ22(のはみ出した粘着部分)で貼付けられる。なお、粘着テープ22は、はみ出した粘着部分の幅が、屋根フレーム35の上側のフランジ面35bの幅よりも若干広くなっている。そのため、粘着テープ22は、はみ出した粘着部分の先端を、上側のフランジ面35bの端縁部や取付金具38の縦面などに対し、
図6Bに示すように、先の尖ったヘラなど工具Tで下へ押し込むようにして、下向きになるように貼付けるのが好ましい。
【0066】
下り形状は、未防水部分12に設置された水切シート13の中間部26の形状が、建物ユニット2の内側から外側へ向けて、全体として下り状態になっていることである。例えば、下り形状は、水平部分や逆勾配の部分が見られない形状である。下り形状は、水切シート13が途中で上がることなく下って行けば、どのような形状でも良い。内側は、各建物ユニット2の室内側、外側は、各建物ユニット2の屋外側である。
【0067】
これにより、水切シート13は、内側(屋根パネル31側)の縁部が高くなり、水切シート13の外側(建物ユニット2の上縁部11側)の縁部が低くなって、雨水が溜まり難く、雨水が屋外側へ排水され易い形状になる。なお、水切シート13は、中間部26を、上記とは反対に、建物ユニット2の内側から外側へ向かう上り形状にして、雨水を屋根パネル31の側へ向けて排水させるようにしても良いが、下り形状とするのが好ましい。
【0068】
この際、中間部26は、例えば、
図8Bに示すように、屋根パネル31の側面32(の上部)の位置から建物ユニット2の上縁部11へ向けて自然に垂らすように斜めに設置する。これにより、中間部26は、建物ユニット2の未防水部分12に対し上縁部11よりも高くなるようにほぼ持ち上がった状態に張られる(離間張設部)。
【0069】
なお、中間部26は、例えば、ピンと張ることで、連続した一定角度の勾配を有する傾斜状態に設置しても良いが、図の左側のように緩く張ることで、一定角度の勾配を有さない不均等な状態にしても良い。
【0070】
図の左側は、隣接する建物ユニット2間の位置に形成される未防水部分12に対して水切シート13を張る場合を示している。この場合、屋根フレーム35の上部には、必要に応じて、水切シート13を屋根フレーム35の側面32から横へ離隔させる離隔用部材40が取付けられても良い。水切シート13は、離隔用部材40の先端の位置からほぼ真下へ導かれた後に、建物ユニット2の上面に沿って横へ導かれ、上縁部11の位置で建物ユニット2の側面に沿うように設置される。但し、連結梁39の端部39aの位置では、水切シート13の横へ導かれる部分は、例外的に端部39aの上に被せられる。
【0071】
離隔用部材40は、隣接する建物ユニット2の屋根パネル31間に、繋ぎとして設置される野地板を受ける野地板受梁などを用いることで、仮雨仕舞の後もそのまま残して使用することができる。
【0072】
あるいは、図の右側のように未防水部分12にシート受梁41を取付けて、中間部26の幅方向の一部をシート受梁41で下側から受けさせることで、中間部26を上縁部11よりも高く持ち上げるようにしても良い。
【0073】
シート受梁41は、天井梁2bの上に、天井梁2bに沿って単数または複数本並べて取付けられる。シート受梁41は、水切シート13の中間部26とほぼ合致する範囲に、ほぼ連続するように設けられる。但し、シート受梁41は、連結梁39の端部39aと干渉する部分については、必要に応じて切欠いたり分割したりしても良い。
【0074】
シート受梁41を設置することで、中間部26は、少なくとも幅方向の一部が、シート受梁41の上面41aに上から接するように設置される。シート受梁41は、上面41aが室内側から屋外側へ向けて下り勾配に傾斜されている。また、シート受梁41は、上面41aの屋外側の部分が、屋根フレーム35の上側のフランジ面35bと、上縁部11または外壁5の上端部とを結んだ直線よりも高くなっている。そのため、中間部26は、シート受梁41で下側から支持されることにより、確実に下り形状になると共に、建物ユニット2の未防水部分12に対して上縁部11よりも高くなるように持上げられた状態に保持される。なお、中間部26は、緩く張ることでシート受梁41の上面41a全体に接触するように設置しても良いし、ピンと張るなどによって一部のみに接触するように設置しても良い。
【0075】
なお、図の右側は、隣接する建物ユニット2がない、ユニット建物1の屋外側の位置に形成される未防水部分12に対して水切シート13の中間部26を張る場合を示している。シート受梁41は、ユニット建物1の屋根部分に最終仕上材(例えば、桁カバーや雨樋など)を取付けるための受材を用いることで、仮雨仕舞の後もそのまま残して使用することができる。
【0076】
この実施例では、シート受梁41は、屋外側の側面が開放されたほぼ外向きC字断面の部材とされる。これにより、水切シート13の中間部26は、緩く張ると、上端からシート受梁41の上面41aに接するまでの間が比較的急勾配となり、シート受梁41の上面41aに接する部分が緩勾配となり、シート受梁41よりも先の部分が急勾配となる。
【0077】
屋根パネル31は、その上面が、太陽電池パネル37などとなっているが、少なくとも屋根フレーム35の厚み(ウェブ面35aの高さ)の分だけ建物ユニット2の上縁部11よりも高くなる。そして、水切シート13を取付ける屋根パネル31の側面32の位置は、例えば、屋根フレーム35の上下方向4の中央部よりも上側であれば良いが、上記したように、屋根フレーム35の上側のフランジ面35bなどのような高い位置とするのが好ましい。
【0078】
そして、
図9に示すように、水切シート13の両端部14における、縦面部分34は、上縁接触面部17よりも上側となる部分であり、屋根フレーム35の上側の位置(上側のフランジ面35b)からほぼ真下へ向けて垂直に下降する部分(垂直下降部)である。縦面部分34は、例えば、屋根パネル31の側面32の高さに合わせた長さとされる。そして、自重や適切なクセ付けなどによって、側面32にほぼ沿った垂直下降形状に形成される。
なお、縦面部分34は、水切シート13に切込部25を設けた場合には、両端部14のみに形成されるが、水切シート13に切込部25を設けない場合には、水切シート13の全長に亘って形成しても良い。
【0079】
上縁接触面部17は、水切シート13の両端部14の幅方向の中間部分(縦面部分34の下側)に形成されるほぼ水平な面の部分またはその一部である。上縁接触面部17は、屋根パネル31の側面32から建物ユニット2の上縁部11までの距離に合わせた長さとされる。そして、自重や適切なクセ付けなどによって、柱2aの上端部などの水平面にほぼ沿った水平な横行形状に形成される。
【0080】
特に、上縁接触面部17では、吊具挿通孔16が取付孔23と合致される。そのため、吊具挿通孔16を通して吊具18を建物ユニット2の上に上方から取付けることで、上縁接触面部17は、少なくとも一部が吊具18の上部の下面で押さえられて、水平な形状に保持される。
【0081】
そして、縦面部分34(垂直下降部分)と上縁接触面部17(横行部分)とにより、両端部14は全体として、側面視でほぼ下に凹んだL字状になる。
【0082】
また、上記したように、ユニット建物1の屋外側に設置される水切シート13では、中間部26と両端部14とで、未防水部分12の上に設置したときの形状が異なることから、高低差により切込部25が開いて、切込部25の位置に開口部分42が形成される。開口部分42の周辺は、水切シート13の内側(下面側)に設けた局部カバー43によって保護される。
【0083】
局部カバー43は、切込部25を通して水切シート13の内側へ浸入した雨水から建物ユニット2の未防水部分12を局部的に保護する部材である。
【0084】
局部カバー43は、防水性を有する樹脂製の薄板材などを加工して形成される。局部カバー43は、水切シート13の両端部14および切込部25を所要量だけ越えた中間部26側の位置の下に設置されて、未防水部分12の両側部分の周辺を直接覆う。
【0085】
局部カバー43は、屋根パネル31に予め取付けられる(
図6A)。そして、屋根パネル31を建物ユニット2の上部に取付けることで、屋根パネル31と共に、建物ユニット2の上縁部11の上に局所的に設置される(
図8A)。局部カバー43は、特に、水切シート13に対して接続しなくても良い。
【0086】
局部カバー43は、
図6Cに示すように、少なくとも段下面43aと、段差面43bと、段上面43cと、縦面部43d,43eとを一体に有している。
【0087】
段下面43aは、矩形状の横面とされて、建物ユニット2の柱2aの上端面や、ジョイントピース2dの上面などを上から覆う。段下面43aは、柱2aの上端面から(天井梁2bの延設方向の)外側へ若干はみ出す大きさとされる。
【0088】
段上面43cは、矩形状の横面とされて、シート受梁41の端部の上面41aを上から覆う(
図9)。
【0089】
段差面43bは、矩形状の縦面とされて、段下面43aと段上面43cとを繋ぐ。段差面43bは、シート受梁41とほぼ同じ高さとされる。段差面43bは、シート受梁41の端部にほぼ当接されて、シート受梁41の端部が水切シート13に直接当たるのを防止し、水切シート13の損傷を保護する。段差面43bは、例えば、切込部25から段上面43cの幅程度以下の距離だけ奥側の位置に形成される。
【0090】
第一の縦面部43dは、局部カバー43の全域に亘る長さと、屋根フレーム35とほぼ等しい高さとを有している。縦面部43dは、シート受梁41側の下部が、段差面43bおよび段上面43cの形状に切欠かれた凸形状とされる。縦面部43dは、屋根パネル31の側に位置して、屋根フレーム35の外側面を覆う。即ち、縦面部43dは、屋根フレーム35のウェブ面35aの外側面に当接配置される。
【0091】
第二の縦面部43eは、矩形状とされて、建物ユニット2の上縁部11の側に位置し、段上面43cと段差面43bとを繋ぐ。縦面部43eは、段上面43cと同じ幅、および、段差面43bよりも若干高い上下寸法を有している。
【0092】
また、段下面43aには、吊具挿通孔16および取付孔23と合致する位置に、連通孔43f(
図10B)が形成される。連通孔43fは、吊具挿通孔16や取付孔23とほぼ同じ大きさか、それより若干大きなものとされる。
【0093】
更に、局部カバー43は、周縁部に沿って所要幅のフランジ部を設けても良い。例えば、フランジ部は、段下面43aの段差面43bや縦面部43dとは反対側の縁部などに下へ向けて形成された下向フランジ43gとすることができる。この下向フランジ43gは、水切りなどとなる。
【0094】
また、フランジ部は、縦面部43dの上側の縁部などに横へ向けて形成された内向フランジ43h(
図6C)などとすることができる。この内向フランジ43hは、屋根フレーム35の上側のフランジ面35bに対する係止部や取付代などとなる。
局部カバー43は、例えば、内向フランジ43hを、屋根フレーム35の上側のフランジ面35bに上から係止させた状態で、屋根フレーム35に粘着テープなどで固定される。
【0095】
更に、水切シート13は、未防水部分12よりも大きめに形成された(両端部14や中間部26の)下側の縁部(はみ出し部分)を、粘着テープ44で建物ユニット2の(例えば、柱2aや外壁5の)側面上部に貼り付けられて仮止めされる(
図9)。
【0096】
同様に、水切シート13は、未防水部分12よりも大きめに形成された(両端部14の)外側の部分(はみ出し部分)を、適宜折り畳んで、粘着テープ44で仮止めされる(
図10A)。例えば、上記はみ出し部分は、建物ユニット2の(例えば、短辺側の外壁5の)側面上部や屋根パネル31の上面などに貼り付けられる。
【0097】
(4)以下、建物ユニット2の上部雨仕舞方法について説明する。
【0098】
建物ユニット2の上部雨仕舞方法は、以下の工程を行うようにする。
防水性を有する屋根パネル31を、建物ユニット2の上に、上縁部11から内側へズラして設置することで、上縁部11に沿って細長く延びる未防水部分12を形成する(屋根パネル設置工程図、
図7A、
図7B)。
屋根パネル31の、未防水部分12に面した側面32に取付けた細長い水切シート13で、未防水部分12を覆う(水切シート設置工程、
図8A、
図8B)。
この際、水切シート13は、両端部14の近傍に設けた切込部25の間に位置する中間部26を、建物ユニット2の未防水部分12に対し上縁部11よりも高くなるように持上げられる。そして、中間部26は、屋根パネル31の側面32から建物ユニット2の上縁部11へ向かう下り形状に設置される。
また、水切シート13は、切込部25の外側に位置する両端部14を、建物ユニット2の上縁部11の周辺に対して面接触状態で設置することによって(ほぼ水平な)上縁接触面部17を形成する(
図9)。
そして、水切シート13の上縁接触面部17に設けた吊具挿通孔16を通して建物ユニット2に吊具18を取付ける(吊具取付工程、
図9)。
【0099】
ここで、(屋根パネル設置工程)の前には、屋根パネル31を連結梁39の上に載置固定して一体化する(パネル一体化工程)。
【0100】
また、
図6Aに示すように、屋根パネル31の側面32の両端に、予め、局部カバー43を取付けておく(部分カバー取付工程)。
【0101】
そして、屋根パネル31に対し、予め、屋根パネル31の側面32(屋根フレーム35の上部)に沿って細長い水切シート13を取付けておく(水切シート取付工程)。部分カバー取付工程と水切シート取付工程は、どちらを先に行っても良い。
【0102】
水切シート13には、両端部14と中間部26との間に、切込部25を設ける。切込部25は、取付前に予め設けても良いし、取付中に同時に設けても良いし、取付後に設けても良い。
【0103】
水切シート13は、一時的に、折り畳んだり丸めたりして屋根パネル31の上面や側面32などに粘着テープで仮止めする。これにより、水切シート13は、屋根パネル31の建物ユニット2への取付けの邪魔にならないようになる(水切シート仮止工程)。
【0104】
そして、(屋根パネル設置工程)で、
図7Aに示すように、屋根パネル31を連結梁39によって一体化した状態のまま、吊り治具51を用いて建物ユニット2の上に設置する。これにより、建物ユニット2の上面に、未防水部分12と防水部分21とがそれぞれ形成される。なお、屋根パネル31は、建物ユニット2の上に設置する直前に、連結梁39を用いて一体化しても良い。
【0105】
(屋根パネル設置工程)の後には、
図8Aに示すように、建物ユニット2の外壁5が取付けられた位置の上縁部11(天井梁2b)に沿った中間部26と対応する位置にシート受梁41を取付ける(シート受梁取付工程)。
【0106】
(水切シート設置工程)では、屋根パネル31に対する粘着テープによる仮止めを外して水切シート13を未防水部分12の上に拡げ、建物ユニット2の側面に向かって垂らす。この際、シート受梁41を取付けた位置では、水切シート13の大部分を占める中間部26を、シート受梁41の上に被せることで、建物ユニット2の未防水部分12に対し上縁部11よりも高くなるように持上げて下り形状に設置する。その後、水切シート13は、中間部26の下部を建物ユニット2の側面の外壁5に沿って垂らした状態にして、下縁部を、外壁5の上部などに粘着テープ44で貼り付けておく。
【0107】
(吊具取付工程)の前には、水切シート13は、切込部25によって中間部26から一部分離された両端部14を、屋根パネル31の側面32(屋根フレーム35の外側面)に沿ってほぼ真下へ垂らす(縦面部分34)。更に、両端部14を、柱2aの上端や、ジョイントピース2dの上面に沿ってほぼ水平に被せる(上縁接触面部17)。
【0108】
その後に、両端部14の吊具挿通孔16(や連通孔43f)などを通して建物ユニット2(の取付孔23)に、上から吊具18を取付ける。そして、水切シート13は、両端部14の下部を建物ユニット2の側面の外壁5に沿って垂らした状態にして、下縁部を、外壁5の上部などに粘着テープ44で貼り付けておく。
【0109】
上記した各工程は、工場での建物ユニット2の製造後に、工場にて、降雨時に備えた仮雨仕舞いのために行われる。
【0110】
(5)更に、建物ユニット2の上部雨仕舞方法は、以下の工程を行っても良い。
建物ユニット2の据付後に、
図10Aに示すように、(建物ユニット2から)吊具18を取外す(吊具取外工程)。
吊具18が取外された吊具挿通孔16を、防水テープ61で塞ぐ(穴埋工程)。
図10Dに示すように、切込部25を防水テープ62で繋いで、水切シート13の両端部14を中間部26と共に下り形状にする(一体化工程)。
【0111】
ここで、(穴埋工程)では、吊具挿通孔16は、防水テープ61を貼るだけで簡単に塞ぐことができ確実に防水される。
【0112】
(穴埋工程)で、吊具挿通孔16を防水テープ61で塞いで防水した後は、
図10Bに示すように、両端部14の下縁部を、一旦、建物ユニット2の側面上部から外してまくり上げ、未防水部分12を露出させる。そして、連通孔43fの上から取付孔23を防水テープ63で塞ぐ。なお、局部カバー43を取外して、取付孔23を防水テープ63で直接塞ぐようにしても良い。
【0113】
これと並行して、中間部26の下縁部を、一旦、建物ユニット2の側面上部から外してまくり上げ、未防水部分12を露出させる。そして、シート受梁41の上面に予め取付けておいた両面テープ64の離型紙64aを剥がす。
【0114】
そして、水切シート13は、
図10Cに示すように、全体を元のように未防水部分12の上に垂らすことで、シート受梁41の上面に予め取付けておいた両面テープ64を用いて中間部26をシート受梁41の上面に貼り付ける。水切シート13は、下側の縁部全体を建物ユニット2の側面32に対して粘着テープ44で貼り直す。この状態にて、(一体化工程)で、切込部25を防水テープ62で繋ぐ。
【0115】
(一体化工程)では、切込部25は、中間部26と両端部14とをほぼ面一状態に揃えた状態にして両者間に跨るように防水テープ62を貼るのが好ましい。防水テープ62は、切込部25に沿い、切込部25の全長に亘って連続して貼るようにする。これにより、切込部25が防水テープ62できれいに繋がれて中間部26と両端部14とが一体に接合され、防水される。なお、両端部14の下には、シート受梁41がないため、中間部26と繋いでも両端部14は、中間部26と全く同じ下り形状にはならないものの、中間部26と似通った下り形状になる。
【0116】
その後、雨が止んだときに、ユニット建物1の屋根部分の仕上作業を行って、建物ユニット2の上縁部11の周辺の未防水部分12を防水すると共に、屋根部分を完成させる。水切シート13は、状況に応じて、そのまま残しても良いし、取外しても良い。
【0117】
なお、上記した各工程は、建築現場での建物ユニット2の据付け後に行われる。防水テープ61~63は、防水性を有する粘着テープのことである。
【0118】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果が得られる。
【0119】
(作用効果 1)建物ユニット2の上面雨仕舞構造は、建物ユニット2の上縁部11に沿って形成された細長い未防水部分12に、未防水部分12を覆う細長い水切シート13が設けられても良い。これにより、水切シート13は、建物ユニット2の上縁部11に沿って形成された細長い未防水部分12のみを覆うものにできる。そのため、水切シート13は小型化され、水切シート13の取扱いが容易になる。
【0120】
水切シート13は、両端部14に吊具挿通孔16を有しても良い。水切シート13は、未防水部分12を上から覆った状態で、両端部14の、少なくとも吊具挿通孔16の周囲が、建物ユニット2の上縁部11の周辺を面接触状態で覆う上縁接触面部17とされても良い。建物ユニット2には、吊具挿通孔16を通して吊具18が取付けられても良い。
【0121】
これにより、両端部14に設けた吊具挿通孔16へ吊具18を通すことで、建物ユニット2の未防水部分12を水切シート13で覆ったままの状態でも、両端部14をまくり上げずに、吊具18を建物ユニット2に取付けることができる。
【0122】
そして、上縁接触面部17は、建物ユニット2の上縁部11に対し面接触状態に被せられることで、雨水が浸入する隙間がほとんどないシール状態にする。よって、吊具挿通孔16の周囲を上縁接触面部17でシールし、この状態で吊具挿通孔16に吊具18を通して吊具挿通孔16を塞ぐことで、水切シート13の両端部14は、建物ユニット2の内部への雨水の浸入をほぼ確実に防止することができる。また、水切シート13の両端部14から雨水が浸入しないように保護しつつ、建物ユニット2に吊具18を取付けることが、簡単・確実にできる。
【0123】
そして、工場で予め水切シート13の両端部14に吊具挿通孔16が作られるので、建物ユニット2(の取付孔23と合致する位置)に、最小限の大きさの吊具挿通孔16を正確に形成することが可能になる。そのため、建物ユニット2の上縁部11に沿って水切シート13を設置し、吊具挿通孔16を通して建物ユニット2に吊具18を取付けた際に、水切シート13を無駄なくきれいに整った状態で設置することができる。よって、両端部14にほとんどシワなどのない状態の上縁接触面部17を形成して、上縁接触面部17にて吊具挿通孔16の周囲を隙間なく覆うことが可能になる。これにより、上縁接触面部17が少なくとも吊具挿通孔16の周囲を覆うシール部となって、吊具挿通孔16を効果的にシールすることができる。
【0124】
また、両端部14には、吊具挿通孔16の周囲に、予め補強や防水処理などを施すことができる。これにより、吊具挿通孔16の強度を高めて吊具挿通孔16の周囲を破れ難くすると共に、吊具挿通孔16をより雨水が浸入に難くできる。そのため、水切シート13の信頼性を向上できる。
【0125】
(作用効果 2)建物ユニット2の上面雨仕舞構造では、水切シート13は、両端部14の近傍に切込部25を有しても良い。水切シート13は、切込部25間の中間部26が、(建物ユニット2の上縁部11の周辺を面接触状態で覆う)上縁接触面部17よりも高い位置に設置されても良い。
【0126】
これにより、水切シート13は、切込部25によって、両端部14を中間部26から分けて、中間部26と両端部14とにそれぞれ異なる形状や機能を、無理なく容易に付与することができる。即ち、切込部25によって、両端部14は、上縁接触面部17を吊具18の取付けにより適した形状になる。また、切込部25によって、中間部26は、上縁接触面部17よりも高い位置に設置することで、より雨水を排水し易い形状になる。そして、中間部26や両端部14は、シワや突っ張りが少ない状態になる。
【0127】
(作用効果 3)建物ユニット2の上面雨仕舞構造では、
未防水部分12は、防水性を有する屋根パネル31を、建物ユニット2の上に、上縁部11から内側へズラして設置することで、上縁部11に沿って細長く形成されても良い。
水切シート13は、屋根パネル31の、未防水部分12に面した側面32に取付けられても良い。
【0128】
これにより、建物ユニット2は、上部の大部分を、屋根パネル31によって防水部分21にできる。そして、建物ユニット2は、屋根パネル31を設置していない部分を細長い未防水部分12にできる。未防水部分12は、建物ユニット2の上縁部11に沿った細長い形状となり、最小化される。
【0129】
そのため、水切シート13を、未防水部分12に合った細長い形状の小型のものにでき、小型の水切シート13のみで未防水部分12を容易かつ確実に覆うことができる。更に、小型化によって、細長い水切シート13は、取扱い易くなる。水切シート13は、屋根パネル31の側面32に取付けることで、未防水部分12に容易に設置できる。
【0130】
水切シート13は、切込部25間の中間部26が屋根パネル31の側面32の位置から建物ユニット2の上縁部11へ向かう下り形状に設置されても良い。また、両端部14は、屋根パネル31の側面32に沿って下へ延びる縦面部分34と、建物ユニット2の上縁部11の周辺に沿って横へ延びる上縁接触面部17とを有するL字状に設置されても良い。
【0131】
これにより、水切シート13は、(大部分を占める)中間部26を、屋根パネル31の側面32から建物ユニット2の上縁部11へ向かう下り形状にすることで、雨水の排水を促進することができる。
【0132】
また、水切シート13は、両端部14を、縦面部分34と、上縁接触面部17とを有するL字状にすることで、両端部14を屋根パネル31の側面32と建物ユニット2の上縁部11にきれいに沿うように設置できる。そのため、両端部14の位置から雨水が浸入する隙間を極力なくすことができる。
【0133】
よって、水切シート13は、切込部25によって、一枚の水切シート13を立体的に使うことができ、水切シート13に雨水の排水に適した中間部26と、吊具18の取付けに適した両端部14の上縁接触面部17とを同時に形成することが可能になる。
【0134】
(作用効果 4)建物ユニット2の上部雨仕舞方法は、
防水性を有する屋根パネル31を、建物ユニット2の上に、上縁部11から内側へズラして設置することで、上縁部11に沿って細長く延びる未防水部分12を形成し、
屋根パネル31の、未防水部分12に面した側面32に取付けた細長い水切シート13で、未防水部分12を覆い、
水切シート13は、両端部14の近傍に設けた切込部25の間に位置する中間部26を、建物ユニット2の未防水部分12に対し高くなるように持上げて、屋根パネル31の側面32から建物ユニット2の上縁部11へ向かう下り形状に設置すると共に、
切込部25の外側に位置する両端部14を、建物ユニット2の上縁部11の周辺に対し面接触状態で設置することによって上縁接触面部17を形成し、
水切シート13の上縁接触面部17に設けた吊具挿通孔16を通して建物ユニット2に吊具18を取付けるようにしても良い。
【0135】
これにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0136】
(作用効果 5)また、建物ユニット2の上部雨仕舞方法は、
建物ユニット2の据付後に、(建物ユニット2から)吊具18を取外し、
吊具18が取外された吊具挿通孔16を、防水テープ61で塞ぐと共に、
切込部25を防水テープ62で繋いで、水切シート13の両端部14を中間部26と共に下り形状にしても良い。
【0137】
これにより、吊具18の取外後に、水切シート13は、吊具挿通孔16が塞がれると共に、両端部14を含めた全体が下り形状となって、全体で雨水を排水できるようになる。よって、最も効率的に仮雨仕舞ができる。