(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089592
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204191
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】今井 健一郎
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA15
3E013BB12
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF23
3E013BF35
(57)【要約】
【課題】引き裂き開封をする包装体であって、想定した広さをもつ開口部を確実に得られる包装体を提供する。
【解決手段】包装体1は、合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部3aと、これに直交するようにヒートシールされた端部シール部3b,3cと、胴部4とを備えてなり、前記包装材は、基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、背貼りシール部3a及び胴部4には、一対の開封誘導部5,5が設けられており、開封誘導部5は、開封開始部5aと、そこから続いて背貼りシール部3a及び胴部4とを横断する第1の誘導部5bと、その端点から続いて背貼りシール部3aの延在方向へ延びる第2の誘導部5cとを有しており、開封誘導部5,5は、包装材を貫通しない程度に設けられた切目線である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部と、前記背貼りシール部に直交するように前記包装材の他の一対の両端部がそれぞれヒートシールされて形成された端部シール部と、前記背貼りシール部及び前記端部シール部によって画成された空間を包囲している胴部と、を備える包装体であって、
前記包装材は、基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、
前記背貼りシール部及び前記胴部には、前記背貼りシール部を中心に見てその合掌の両側で対となる開封誘導部が設けられており、
前記開封誘導部は、前記背貼りシール部側の端縁において引き裂き開封の開始点となる開封開始部と、前記開封開始部から続いて前記背貼りシール部及び前記胴部とを横断する第1の誘導部と、前記第1の誘導部の端点から続いて前記背貼りシール部の延在方向へ延びる第2の誘導部とを有しており、
前記開封誘導部は、前記包装材を貫通しない程度に設けられた切目線である、包装体。
【請求項2】
前記開封開始部は、一つの前記第1の誘導部あたり、前記切目線の端点を複数有している、請求項1記載の包装体。
【請求項3】
前記背貼りシール側の端部にヒートシールされていない非シール部を有しており、
前記開封開始部は、前記非シール部に形成されている、請求項1又は2記載の包装体。
【請求項4】
前記第1の誘導部は、その延びる方向と前記背貼りシール部の延在方向とのなす角度が45°~85°になっている部分を有している、請求項1~3のいずれか一項記載の包装体。
【請求項5】
前記第2の誘導部は、前記背貼りシール部の延在幅の中央にあたる位置には達しない長さを有している、請求項1~4のいずれか一項記載の包装体。
【請求項6】
電子レンジ調理時に、当該包装体の内部圧力の上昇によって、前記開封誘導部において前記包装材を貫通する貫通孔が形成される、請求項1~5のいずれか一項記載の包装体。
【請求項7】
前記ヒートシール性樹脂層は、C4(ブテン-1)をコモノマーとして共重合したポリエチレンからなり、
前記ヒートシール性樹脂層は、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.2ギガパスカル(GPa)以上である、請求項1~6のいずれか一項記載の包装体。
【請求項8】
前記積層体は、前記開封誘導部が設けられた部分を対象とした、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.45ギガパスカル(GPa)以上である、請求項1~7のいずれか一項記載の包装体。
【請求項9】
前記基材層は、一軸延伸されたナイロンフィルムであり、
前記背貼りシール部の延在方向は、前記ナイロンフィルムの延伸方向と一致している、請求項1~8のいずれか一項記載の包装体。
【請求項10】
前記開封誘導部は、レーザ加工によって形成された連続線、破線、点線、又はこれらの組み合わせからなる、請求項1~9のいずれか一項記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、1枚の包装材を筒状にして合掌状の背貼りシール部を形成し、その内部空間に内容物を収容してその天部と底部をシールした、いわゆるピロー包装体が、さまざまな用途に使用されている。このような構造の包装体を開封するひとつの方法としては、背貼りシール部に開封開始部を設け、そこから一方向へ引き裂く方法がある。例えば特許文献1に開示されている包装体では、背貼りシール部に設けた開封開始部から出発した包装材の裂け目を、背貼りシール部の両側に設けた開封補助部で捕捉し、開封補助部に沿って開封を進める。これにより、内容物の取り出しに適した開口部が得られる。
【0003】
特許文献1に開示されている包装体では更に、調理済み又は半調理状態の食品を、常温、低温、又は冷凍で保存することが可能であり、調理時は開封せずに電子レンジで加熱する。開封補助部が引張張力に対して脆弱になっているので、加熱に伴う内圧の上昇によりそこに蒸気抜きのための小孔が形成されることで、包装体の破裂を防ぎながら、食品の蒸らしを十分に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている包装体は、開封の裂け目の進行方向の前方に開封補助部が設けられており、裂け目が開封補助部に合流することで、それ以降は開封補助部の形状に沿って開封できるというものである。しかしながら、実際には開封直後の裂け目が背貼りシール部を中心にして広がるようには進行せず、したがって開封補助部に合流できずに、背貼りシール部の近くを裂け目が進行してしまい大きな開口部を得られないことがある。そこで本発明は、引き裂き開封をする包装体であって、想定した広さをもつ開口部を確実に得られる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
略矩形の包装材の互いに略平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部と、背貼りシール部に直交するように包装材の他の一対の両端部がそれぞれヒートシールされて形成された端部シール部と、背貼りシール部及び端部シール部によって画成された空間を包囲している胴部と、を備える包装体であって、包装材は、基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を有する積層体であり、背貼りシール部及び胴部には、背貼りシール部を中心に見てその合掌の両側で対となる開封誘導部が設けられており、開封誘導部は、背貼りシール部側の端縁において引き裂き開封の開始点となる開封開始部と、開封開始部から続いて背貼りシール部及び胴部とを横断する第1の誘導部と、第1の誘導部の端点から続いて背貼りシール部の延在方向へ延びる第2の誘導部とを有しており、開封誘導部は、包装材を貫通しない程度に設けられた切目線である、包装体を提供する。
【0007】
この包装体によれば、背貼りシール部における引き裂き開封の開始点から胴部における開封誘導部の終点まで開封誘導部に沿って開封できるので、想定した広さをもつ開口部を確実に得ることができる。
【0008】
この包装体では、開封開始部は、一つの第1の誘導部あたり、切目線の端点を複数有していてもよい。この場合、開封誘導部を形成した包装材をヒートシールして背貼りシール部を形成したときに、端縁同士で開封開始部の位置ずれが生じたとしても、切目線の端点が複数あることで、位置ずれの影響を小さくすることができる。
【0009】
この包装体は、背貼りシール側の端部にヒートシールされていない非シール部を有していてもよく、併せて開封開始部が非シール部に形成されていてもよい。この場合、開封誘導部を形成した包装材をヒートシールして背貼りシール部を形成したときに、端縁同士で開封開始部の位置ずれが生じたとしても、ヒートシールされていないことで開封の端緒を得やすくなる。
【0010】
第1の誘導部は、その延びる方向と背貼りシール部の延在方向とのなす角度が45°~85°になっている部分を有していてもよい。これによれば、開封誘導部に沿った開封の確実性を高めることができる。
【0011】
また、第2の誘導部は、背貼りシール部の延在幅の中央にあたる位置には達しない長さを有していてもよい。これによれば、胴部に印刷を施す場合に、第2の誘導部が印刷デザインの妨げになりにくい。
【0012】
この包装体では、電子レンジ調理時に、当該包装体の内部圧力の上昇によって、開封誘導部において包装材を貫通する貫通孔(以下「通蒸口」と呼ぶ。)が形成されるものであってもよい。この場合、電子レンジ調理時に開封誘導部に適切に通蒸口が形成されるので、内圧の上昇による破裂を防止できるとともに、収容した食品を十分に蒸らすことができる。
【0013】
ヒートシール性樹脂層は、C4(ブテン-1)をコモノマーとして共重合したポリエチレンからなり、ヒートシール性樹脂層は、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.2ギガパスカル(GPa)以上であってもよい。この場合、通蒸口が一層適切に形成されやすい。
【0014】
積層体は、開封誘導部が設けられた部分を対象とした、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.45ギガパスカル(GPa)以上であってもよい。
【0015】
この包装体では、基材層が一軸延伸されたナイロンフィルムであり、背貼りシール部の延在方向がナイロンフィルムの延伸方向と一致していてもよい。この場合、開封時の引っ張り方向とナイロンフィルムの延伸方向とが一致するので、当該方向への引き裂きをしやすい。
【0016】
開封誘導部は、レーザ加工によって形成された連続線、破線、点線、又はこれらの組み合わせからなっていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、引き裂き開封をする包装体であって、想定した広さをもつ開口部を確実に得られる包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(A)は、包装体の外観を示す図である。(B)は、(A)の包装体を形成する前の包装材の平面図である。
【
図4】(A)と(B)のいずれも、実施例で使用した包装材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、いわゆるピロー型の包装体に関する。この包装体は、内部に食品を収容しており、その電子レンジ調理において包装体の一部に通蒸口を形成することで、内部圧による破裂を防止することができる。また、調理後には背貼りシール部に設けた開封開始部から開封して、包装体の長手方向に比較的大きな開口幅を有する開口部を容易に形成することができるので、食品を取り出しやすく、包装材を食器として兼用することも可能である。以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示されているとおり、本実施形態の包装体1は、食品を内部に密封した袋体であり、合掌状にヒートシールされて形成された背貼りシール部3aと、背貼りシール部3aに直交するようにヒートシールされた二か所の端部シール部3b,3cと、背貼りシール部3a及び端部シール部3b,3cで画成された空間を包囲している胴部4を備えている。当該空間に食品が収容されている。背貼りシール部3aが形成されている側と形成されていない側とで包装体1の表裏をなしており、その両側を接続する部分は包装体1の厚さに相当するマチを構成している。
【0021】
包装体1は背貼りシール部3a及び胴部4において、背貼りシール部3a側から見たときに、背貼りシール部3aの基部6を中心線として、背貼りシール部3aの合掌の両側で対となる開封誘導線(開封誘導部)5,5が線対称に設けられている。ここで基部6とは、背貼りシール部3aと胴部4との境目を指している。開封誘導線5,5は、包装体1を背貼りシール部3a側から見たときに、基部6から胴部4の裏側に回り込まない位置まで(ここでは胴部4のマチに達する手前まで)の範囲内にある。開封誘導線5,5の詳細については後述する。
【0022】
ここで、包装体1の構成材料である包装材100は、樹脂フィルムの積層体からなる矩形の樹脂シートである。包装体1を形成する前の包装材100は、その全ての周縁領域において、帯状に縁取られたヒートシール予定部3を有している。すなわち、ヒートシール予定部3は、矩形の縁から矩形の内側へ進入した所定の距離を幅として、矩形の全周に延在している。ただし、包装体1を形成したときに背貼りシール部3aとなる二辺においては、縁から所定の距離の分だけ非シール部2,2とされている。
図1(B)では、開封誘導線5,5が設けられている図示表面が包装体1の外面側、図示裏面が包装体1の内面側である。ヒートシール予定部3は、図示裏面にある。
図1(B)では、包装材100のうち、図示左右方向にあって図示上下方向に延在している互いに平行な一対の両端部が互いに合掌状にヒートシールされることで、背貼りシール部3aが形成される。
【0023】
包装材100を構成している積層体は、基材層と、ヒートシール性樹脂層と、を少なくとも備えている。ヒートシール性樹脂層は、包装体1の最内層として積層されている。基材層とヒートシール性樹脂層との間には、両者を貼合する接着剤や、印刷層を備えていてもよい。他に、ガスバリア層、遮光層、紫外線吸収層等を備えていてもよい。
【0024】
基材層を構成するフィルムとしては、通常、印刷加工適性を考慮して、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、延伸ポリプロピレン樹脂フィルム、延伸ナイロンフィルム等の延伸フィルムが用いられる。引き裂き開封時の裂け目を直進させる観点からは、一軸延伸されたフィルムであることが好ましい。一軸延伸されたフィルムの一軸延伸の方向は、包装体1の背貼りシール部3aの延在方向と一致していることが好ましい。基材層の厚さは、例えば10μm~30μmである。
【0025】
ヒートシール性樹脂層(シーラント)としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が最も一般的なものとして用いることができる。ポリエチレン樹脂の中でも、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。本実施形態の包装体1の場合には特に、C4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合した直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。このポリエチレンは手切れ性が良く、かつ、電子レンジでの加熱時に開封誘導線5,5が部分的に破断して開口し、蒸気抜きとして機能する通蒸口が形成されやすい。ヒートシール性樹脂層は、樹脂を溶融して基材層に押出して積層してもよいし、フィルムに成形されたものを貼り合せてもよい。
【0026】
本実施形態において、ヒートシール性樹脂層は、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.2ギガパスカル(GPa)以上である。このヤング率は0.3ギガパスカル以上であってもよく、0.4ギガパスカル以上であってもよい。ヤング率がこの範囲内にあるとヒートシール性樹脂層が伸びにくく、電子レンジでの加熱時に通蒸口が形成されやすくなる。
【0027】
ヒートシール樹脂層の厚さは、例えば10μm~50μmであってもよく、20μm~40μmであってもよい。
【0028】
また、積層体については、単位断面積あたりの応力-歪み直線の傾きとして示されるヤング率(引張弾性率)がJIS K7127に準拠した測定において0.45ギガパスカル(GPa)以上であることが好ましい。この測定では、開封誘導線5を形成したサンプルを用意し、これを測定対象として、開封誘導線5を跨いだ二か所(後述する切目線として伸びる方向に垂直な方向における二か所)を引っ張る。当該ヤング率の値が0.45ギガパスカル以上であると、電子レンジでの加熱時に、内圧による積層体の伸び(包装体1の破裂に耐える程度)と通蒸口の形成のされ具合がバランスしやすい。
【0029】
開封誘導線5,5は、包装材100を貫通しない程度の深さで設けられた切目線である。本実施形態において、開封誘導線5,5はいずれも、三つの部位からなっている。開封誘導線5,5はいずれも、背貼りシール部3a側の端縁にある非シール部2,2において端部シール部3bへ寄った位置に設けられた開封開始部5aと、開封開始部5aから引き続き、背貼りシール部3a及び胴部4とを直線的に横断する第1の誘導部5bと、第1の誘導部5bの端点から続いて背貼りシール部3aの延在方向かつ端部シール部3cへ向かって延びる第2の誘導部5cとを有している。
【0030】
ここで開封開始部5aは、引き裂き開封の開始点となるものであり。第1の誘導部5bがなす直線の延長線上にある。第1の誘導部5bは、第2の誘導部5cとの接続点の位置が、開封開始部5aとの接続点の位置よりも端部シール部3c側に寄っている。すなわち、開封開始部5aから胴部4へ向かう背貼りシール部3aの横断は、端部シール部3c側へ傾斜しながら進行しており、その傾斜を保持したまま胴部4の横断が続き、第1の誘導部5b全体として直線状になっている。また、第2の誘導部5cの終点は、背貼りシール部3aの延在幅の中央までは達しない位置にある。
【0031】
第1の誘導部5bがなす直線が延びる方向と、背貼りシール部3aの延在方向とのなす角度θは、45°~85°であることが好ましい。この角度θは、50°~80°であってもよく、55°~75°であってもよい。
【0032】
開封誘導線5,5における切れ目の深さは、当該部分を他の部分と比べて脆弱な構造とすることができ、かつ、包装材100を貫通しない程度(いわゆる「ハーフカット」)であればよく、例えば、ヒートシール性樹脂層以外の層が切れているように形成されてもよい。このような切目線は、ダイカッターやロータリーダイカッター等の刃物を用いる方法や、炭酸ガスレーザ等のレーザ加工機を用いる方法によって形成することができる。レーザ加工による場合は、レーザの線幅に基づいて材料が融けることで、幅のある切目線を形成することができる。この材料が融けて形成された切目線の幅は、例えば50~300μm、好ましくは100~250μmである。また、切目線の幅は、10μm~100μmであってもよく、30μm~70μmであってもよい。
【0033】
包装体1は、内部に収容した食品を電子レンジ調理によって加熱し蒸らすことができる。通常、密封された包装体を加熱すると内圧が高まって包装体が破裂するが、本実施形態の包装体1では、内圧が高まって膨らみ、胴部4全体に張力が掛かる格好となったときに、引張応力に対して脆弱とされた開封誘導線5,5が部分的に破断し、通蒸口が形成される。通蒸口から蒸気が噴出することで、内圧が下がって包装体1の破裂が防止されるとともに、内部に充満している蒸気によって食品を蒸らすことができる。
【0034】
包装体1を開封するときは、はじめに、倒れた状態になっている背貼りシール部3aを起こす。次に、背貼りシール部3aのうち開封開始部5a,5aの両側をそれぞれ指でつまんだ後、端部シール部3c側へ引っ張ることで包装体1の引き裂きが始まる。開封開始部5a,5aを起点として引き裂くと、裂け目9は第1の誘導部5bに沿いながら背貼りシール部3aを胴部4側へ下りて基部6に達し、基部6において二股に分かれて進行し、開口部11を形成しながら更に進行する(
図2)。その後、引き裂きを続けると、裂け目9は第1の誘導部5b、5bから第2の誘導部5c,5cへ誘導されて進行し、第2の誘導部5c,5cの終点に到達する。更に端部シール部3c側への引き裂きを続けると、開封誘導線5,5が存在しない部分において裂け目9が直線的に進行し、開口部11を大きく形成することができる(
図3)。これにより、食品13を取り出しやすくなる。また、開口部11が十分に大きいことから、包装材が食器を兼ねることができ、食品13を他の食器に移し替える必要がない。
【0035】
このような電子レンジ調理と開封の一連の処理において、包装体1を構成する包装材のヒートシール性樹脂層のヤング率が0.2ギガパスカル(GPa)以上であることから、通蒸口が適切に形成される。従来の包装体に用いていた包装材では、基材であるナイロンフィルムの吸湿性が高いために、開封誘導線5,5が設けられている部分でヒートシール性樹脂層を支持する力が弱くなり、ヒートシール性樹脂層が伸びてしまうことで通蒸口が形成されにくかったが、本実施形態の包装体1では一軸延伸ナイロンフィルムが吸湿しても、通蒸口が適切に形成される。
【0036】
そして、開封時には、開封開始部5a,5aが設けられている部分である非シール部2,2の端点をつまむことが必要であるが、場合によっては、包装材100をヒートシールして背貼りシール部3aを形成したときに、端縁同士で開封開始部5a,5aの位置ずれが生じていることがある。本実施形態の包装体1ではその端縁が非シール部2,2となっていることで、たとえ位置ずれが生じている場合であっても、開封の端緒を得やすくなる。引き裂き開始後には、第1の誘導部5bが背貼りシール部3aと胴部4との間で連続しているので、裂け目9が基部6から二股に分かれて進行するときに、裂け目9が第1の誘導部5bから逸れることなく進行する。そして、第1の誘導部5bは引き裂き方向(端部シール部3cへ向かう方向)に向けて角度θで傾斜しているので、裂け目9が開口部11の幅が広がる方向へ無理なく進行しやすい。また、包装材の基材層が一軸延伸ナイロンフィルムからなり、その延伸方向が引き裂く方向と一致しているので、開封誘導線5,5による誘導を終えた後の引き裂きにおいても直線的に引き裂きやすい。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、非シール部2に形成されている開封開始部5aが第1の誘導部5bの延長線上にある一本の切目線である態様を示したが、開封開始部5aは、
図4(A)に示されている包装材200のように、一本の第1の誘導部5bあたり、切目線の端点を複数有していてもよい。この場合、切目線の形成や背貼りシール部3aを形成するヒートシールにおいて位置ずれが生じたとしても、対面する非シール部2,2の互いの切目線の端点のいずれかが接近していることが期待されるので、位置ずれによる悪影響を小さくすることができる。なお、包装材200は、第2の誘導部5cの長さを包装材100におけるものよりも長くしている。
【0038】
また、上記実施形態では、第1の誘導部5bとして背貼りシール部3aに存在する部分と胴部4に存在する部分とが同一直線を構成している態様を示したが、
図4(B)に示されている包装材300のように、背貼りシール部3aに存在する部分と胴部4に存在する部分とが同一直線を構成していない態様としてもよい。包装材300では、第1の誘導部5bのうち背貼りシール部3aに存在する部分が背貼りシール部3aに直交する方向に延びている。なお、包装材300では開封開始部5aの形状を
図4(A)におけるものと同様の形状にしている。
【0039】
また、上記実施形態では胴部にマチがある形状の包装体を例にしたが、マチがない形状であってもよい。また、上記実施形態では開封誘導線の形状を連続線で構成したものとしたが、曲線で構成してもよく、連続線のみならず破線、点線、又はこれらの組み合わせからなるものとしてもよい。また、上記実施形態では開封開始部として包装材を貫通しない切目線である態様を示したが、開封開始部は貫通した線であるノッチであってもよい。なお、
図5に示されている包装材400は、本発明の実施形態に係るものではない。
【実施例0040】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0041】
<使用材料>
(基材層)
・一軸延伸ナイロンフィルム
一軸延伸されたナイロンフィルム。商品名「ユニアスロン」、出光ユニテック株式会社製。厚さ15μm。
・一軸延伸PETフィルム
一軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルム。商品名「エンブレットPC」、ユニチカ株式会社製。厚さ12μm。
【0042】
(ヒートシール性樹脂層)
C4(ブテン-1)をコモノマーとしてZiegler-Natta系の触媒を用いて共重合した直鎖状低密度ポリエチレンを用いた。
・LLDPE(KF101)
直鎖状低密度ポリエチレン。商品名「KF101」、スカイフィルム株式会社製。厚さ40μm,60μm。ヤング率0.40GPa。
・LLDPE(KF201)
直鎖状低密度ポリエチレン。商品名「KF201」、スカイフィルム株式会社製。厚さ40μm。ヤング率0.22GPa。
・LLDPE(XMTN)
直鎖状低密度ポリエチレン。商品名「XMTN」、フタムラ化学株式会社製。厚さ40μm。ヤング率0.16GPa。
・LLDPE(HR611)
直鎖状低密度ポリエチレン。商品名「HR611」、スカイフィルム株式会社製。厚さ40μm。ヤング率0.17GPa。
【0043】
<実施例1>
(積層体の作製)
基材層としての一軸延伸ナイロンフィルムに、インキ「リオグラン」(商品名、東洋インキ株式会社製)を用いて印刷を施した。この印刷面に対して、ヒートシール性樹脂層としての「LLDPE(KF101)」を接着剤「タケラックA626」(商品名、三井化学株式会社製)及び「タケネートA50」(商品名、三井化学株式会社製)を用いて貼り合わせ、積層体を作製した。
【0044】
(積層体のヤング率の測定)
積層体をヤング率測定のためのサンプルとして準備した。一軸延伸ナイロンフィルムの側からそのTD方向に炭酸ガスレーザを照射(出力25W、スキャン速度800mm/秒)し、ヒートシール性樹脂層を貫通しない脆弱加工線(開封誘導線)を形成した。MD方向が長手方向となるようにサンプルを15mm巾にカットし、チャック間距離50mm、引張速度200m/分の速度で脆弱加工部が試験片の中央にくるように配置して引っ張り、ヤング率を算出した(JIS K 7127準拠)。
【0045】
(包装体の形成)
基材層側から炭酸ガスレーザを照射し(出力25W、スキャン速度800mm/秒)、
図1(B)に示した形状となるように、ヒートシール性樹脂層を貫通しない開封誘導線を形成した。図示上下方向の存在領域が50mm、図示左右方向の存在領域が70mmであるようにした。内部に冷凍炒飯200gを充填し、
図1(A)に示した形状となるように各端部をヒートシールし、包装体を得た。包装体の大きさは、155mm×250mm×20mmであった。
【0046】
<実施例2~7及び比較例1>
表1に示した材料を用いて、実施例1と同様に包装体を作製した。使用した包装材の外観を、
図1(B)のほか
図4(A)、
図4(B)及び
図5に示している。
図5の符号7は、包装体にしたときにそこにノッチが設けられることを示している。
【0047】
(電子レンジ調理と通蒸性の評価)
実施例1~7、及び、比較例1の包装体を電子レンジにて1000Wで3分間加熱した。それぞれの包装体の電子レンジ調理中の通蒸性を確認した。通蒸口が形成され正常に蒸気が抜けた場合を「良好」、蒸気が抜けなかった場合や、開封誘導線以外の部分で破袋が発生した場合を「不良」とした。
【0048】
(開封性の評価)
電子レンジ調理した実施例1~7、及び、比較例1の包装体を開封開始部から引き裂き、開封した。開封誘導線上における引き裂き状況として、開封誘導線の形状に沿って開口できた場合を「良好」した。比較例1では、裂け目が開封誘導線に達することなく、背貼りシール部に近い部分に沿って裂けたので「不良」とした。また、開封誘導線の終端以降の引き裂き状況として、直線的に引き裂きができたものを「良好」、直線的な引き裂きができなかったものを「不良」とした。
【0049】
表1に示した結果によれば、
図1(B)、
図4(A)、
図4(B)に示した包装材を用いた場合に開封誘導線に沿った引き裂き開封を行えることが分かった。また、開封誘導線の終端以降の引き裂きも良好とするには、包装材の基材として一軸ナイロンフィルムが適していることが分かった。また、良好な通蒸性を得るにはヒートシール性樹脂層のヤング率が0.22GPa以上とするとよいことが分かった。
【0050】
1…包装体、2…非シール部、3…ヒートシール予定部、3a…背貼りシール部、3b,3c…端部シール部、4…胴部、5…開封誘導線(開封誘導部)、5a…開封開始部、5b…第1の誘導部、5c…第2の誘導部、6…基部、7…ノッチ(開封開始部)となる部分、9…裂け目、11…開口部、13…食品、100,200,300,400…包装材。