(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023089704
(43)【公開日】2023-06-28
(54)【発明の名称】ガス漏れ補修方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/16 20060101AFI20230621BHJP
【FI】
F16L55/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021204378
(22)【出願日】2021-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】中田 幸児
(72)【発明者】
【氏名】戸澤 和男
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 収
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025EA03
3H025EB13
3H025ED01
3H025EE04
(57)【要約】
【課題】ガス漏れの補修作業を軽減すること。
【解決手段】互いにガス道が連なった複数のガス漏れ箇所を補修するガス漏れ補修方法は、いずれかのガス漏れ箇所(S1,S2)から漏れ出したガス(G)を吸引して、複数のガス漏れ箇所(S1,S2)の少なくとも一部を負圧にする工程と、複数のガス漏れ箇所(S1,S2)の少なくとも一部を負圧にした後、負圧になったガス漏れ箇所(S1,S2)を補修材(4)で塞ぐ工程と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いにガス道が連なった複数のガス漏れ箇所を補修するガス漏れ補修方法であって、
いずれかのガス漏れ箇所から漏れ出したガスを吸引して、前記複数のガス漏れ箇所の少なくとも一部を負圧にする工程と、
前記複数のガス漏れ箇所の少なくとも一部を負圧にした後、負圧になったガス漏れ箇所を補修材で塞ぐ工程と、
を有することを特徴とするガス漏れ補修方法。
【請求項2】
吸引対象となるガス漏れ箇所を囲むように管材の一端部を補修対象物に突き当てる工程を有し、
前記ガス漏れ箇所を負圧にする工程では、前記管材内部に漏れ出したガスを吸引して前記管材の内部を負圧にし、
前記管材の内部を負圧にした後、硬化型の補修材を用いて、前記管材の一端部を前記補修対象物で覆って固定する工程を有し、
負圧になったガス漏れ箇所を補修材で塞ぐ工程では、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所以外の負圧になったガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞いだ後、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞ぐことを特徴とする請求項1に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項3】
前記管材の内部を負圧にする前に、紫外線硬化型の補修材を用いて、前記管材の一端部を前記補修対象物に仮固定する工程を有することを特徴とする請求項2に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項4】
前記管材の一端部を前記補修対象物に仮固定する工程においては、
前記管材の一端部の周囲のうち、一部を前記紫外線硬化型の補修材を用いて前記補修対象物に仮固定することを特徴とする請求項3に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項5】
前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞ぐ際には、
前記管材を透明な材料から形成し、前記管材の内部に紫外線硬化型の補修材を注入し、紫外線を前記管材の外部から照射して前記管材の内部の前記紫外線硬化型の補修材を硬化させることを特徴とする請求項2から4までのいずれか一項に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項6】
前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞ぐ際には、
ガス漏れの吐出圧以上の圧力で前記硬化型の補修材を注入し、ガス漏れ箇所の原因となっている前記補修対象物のガス漏れ箇所を前記硬化型の補修材で埋めることを特徴とする請求項2から5までのいずれか一項に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項7】
前記管材の一端部を、先端に向かうにつれて内壁が外壁に向かって近づくように形成することを特徴とする請求項2から6までのいずれか一項に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項8】
前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞いだ後、
前記管材を切断して短くする工程と、
前記切断された前記管材を硬化型の補修材で覆って硬化させる工程と、
を有することを特徴とする請求項2から7までのいずれか一項に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項9】
前記切断された前記管材を硬化型の補修材で覆って硬化させる工程の後、
硬化した補修材全体をさらに硬化型の補修材で覆って硬化させる工程を有することを特徴とする請求項8に記載のガス漏れ補修方法。
【請求項10】
硬化した補修材全体をさらに硬化型の補修材で覆って硬化させる工程の後、
露出した補修材を保護する塗装を行う工程を有することを特徴とする請求項9に記載のガス漏れ補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス絶縁機器からガス漏れが発生した際に、ガス漏れ箇所を補修するガス漏れ補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁機器が経年劣化すると、フランジ部のピンホール形成、フランジ部のパッキンのシール性能低下、溶接部のひび割れ等が発生し、ガス絶縁機器内部の絶縁ガスが外部に漏れてしまうおそれがある。ガス漏れを放置しておくと、ガス絶縁機器内の絶縁ガスが失われ、絶縁性能が低下して機能停止に至る可能性があるため、早急にガス漏れ箇所を補修する必要がある。
例えば、管の損傷部(ガス漏れ箇所)の表面に補修材(硬化性樹脂)を埋め、この補修材を硬化させることにより、損傷部を覆ってガス漏れ箇所を補修する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フランジ部のパッキン等のように、互いに連なるガス漏れ箇所(フランジ部の合わせ面、フランジ部と連結部材との隙間)が複数存在する場合においては、ガス漏れ箇所を順番に埋めていくにつれて、残されたガス漏れ箇所からのガスの吐出圧が高くなるため、補修材で埋める作業が困難になってくる。
また、ガス絶縁機器において、ガス漏れ箇所が大量に存在する場合には、それぞれのガス漏れ箇所ごとに補修材で埋める作業を行う必要があったので、補修作業に手間がかかるものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、ガス漏れの補修作業を軽減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る態様は、互いにガス道が連なった複数のガス漏れ箇所を補修するガス漏れ補修方法であって、いずれかのガス漏れ箇所から漏れ出したガスを吸引して、前記複数のガス漏れ箇所の少なくとも一部を負圧にする工程と、前記複数のガス漏れ箇所の少なくとも一部を負圧にした後、負圧になったガス漏れ箇所を補修材で塞ぐ工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、吸引対象となるガス漏れ箇所を囲むように管材の一端部を補修対象物に突き当てる工程を有し、前記ガス漏れ箇所を負圧にする工程では、前記管材内部に漏れ出したガスを吸引して前記管材の内部を負圧にし、前記管材の内部を負圧にした後、硬化型の補修材を用いて、前記管材の一端部を前記補修対象物で覆って固定する工程を有し、負圧になったガス漏れ箇所を補修材で塞ぐ工程では、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所以外の負圧になったガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞いだ後、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞ぐことが好ましい。
【0008】
また、前記管材の内部を負圧にする前に、紫外線硬化型の補修材を用いて、前記管材の一端部を前記補修対象物に仮固定する工程を有することが好ましい。
【0009】
また、前記管材の一端部を前記補修対象物に仮固定する工程においては、前記管材の一端部の周囲のうち、一部を前記紫外線硬化型の補修材を用いて前記補修対象物に仮固定することが好ましい。
【0010】
また、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞ぐ際には、前記管材を透明な材料から形成し、前記管材の内部に紫外線硬化型の補修材を注入し、紫外線を前記管材の外部から照射して前記管材の内部の前記紫外線硬化型の補修材を硬化させることが好ましい。
【0011】
また、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞ぐ際には、ガス漏れの吐出圧以上の圧力で前記硬化型の補修材を注入し、ガス漏れ箇所の原因となっている前記補修対象物のガス漏れ箇所を前記硬化型の補修材で埋めることが好ましい。
【0012】
また、前記管材の一端部を、先端に向かうにつれて内壁が外壁に向かって近づくように形成することが好ましい。
【0013】
また、前記管材によって囲まれたガス漏れ箇所を硬化型の補修材で塞いだ後、前記管材を切断して短くする工程と、前記切断された前記管材を硬化型の補修材で覆って硬化させる工程と、を有することが好ましい。
【0014】
また、前記切断された前記管材を硬化型の補修材で覆って硬化させる工程の後、硬化した補修材全体をさらに硬化型の補修材で覆って硬化させる工程を有することが好ましい。
【0015】
また、硬化した補修材全体をさらに硬化型の補修材で覆って硬化させる工程の後、露出した補修材を保護する塗装を行う工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る態様によれば、ガス漏れの補修作業を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)はガス漏れ補修方法の対象となるガス絶縁機器のパッキンのシール性能が低下したフランジ部の連結箇所の斜視図であり、(b)は(a)におけるA-A断面図であり、(c)は(a)におけるB-B断面図である。
【
図2】フランジ部に管材を仮固定する方法を説明する図である。
【
図3】管材の内部を負圧にしてフランジ部に管材を固定する方法を説明する図である。
【
図4】管材の内部に補修材を注入する方法を説明する図である。
【
図5】管材の内部に注入された補修材を硬化させる方法を説明する図である。
【
図6】管材を切断後、管材を補修材で埋める方法を説明する図である。
【
図7】管材を補修材で埋めた後、さらに補修材で埋める方法を説明する図である。
【
図8】補修材を保護する保護層を形成する方法を説明する図である。
【
図9】ガス漏れ補修方法の対象となるガス絶縁機器のブッシングのセメンチング箇所の断面図である。
【
図10】ガス漏れ補修方法の対象となるガス絶縁機器のピンホールが発生した溶接部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施の形態は一例であり、本発明の範囲において、種々の実施の形態をとりうる。
【0019】
ガス漏れ補修方法は、例えば、発電所や変電所に設置されているガス絶縁機器におけるフランジ部の継手箇所、フランジ部同士を連結する連結部材(例えば、ボルト、ナット)の周囲、ブッシングのセメンチングの周囲、フランジ部に発生した亀裂やピンホール等の損傷部からのガス漏れの補修に用いられる。すなわち、ガス漏れ補修方法は、互いにガス道が連なった複数のガス漏れ箇所を補修するのに適した方法である。以下では、ガス絶縁機器のフランジ部の継手箇所において、フランジ部の合わせ面に設けられたパッキン(シール部材)が劣化等により損傷して、フランジ部の外周や、連結部材とフランジ部との隙間(例えば、ボルト孔)からガスが漏れている場合のガス漏れ補修方法について説明する。
【0020】
図1(a)は、パッキンのシール性能が低下したフランジ部の連結箇所の斜視図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるA-A断面図であり、
図1(c)は、
図1(a)におけるB-B断面図である。
図1に示すように、フランジ部1同士の連結部分において、フランジ部1の合わせ面には、ガス絶縁機器内のガスが外部に漏れることを防止するパッキン(シール部材)20が設けられている。パッキン20は、経年劣化等によって亀裂が発生すると、シール機能が低下し、この亀裂からガスが外部に漏れ出すため、パッキン20の外側に存在するガス漏れ箇所を補修して、ガス漏れを止めることが必要となる。パッキン20からのガス漏れの確認は、ガス漏れ検出器や、石鹸水の塗布により簡単に発見することができる。具体的に、パッキン20から漏れ出したガスGは、フランジ部1の合わせ面の隙間S1(
図1(b)参照)、及び、フランジ部1と連結部材30(ボルト31、ナット32)との隙間S2(
図1(c)参照)からフランジ部1の外部に排出される。すなわち、隙間S1,S2は、フランジ部1のパッキン20から漏れ出たガスGのガス漏れ箇所となる。
なお、以下においては、ガス漏れ補修の際に、漏れ出したガスを隙間S1から吸引する場合を例に挙げて説明する。
【0021】
フランジ部1におけるパッキン20からのガス漏れを補修する際には、ガス漏れ箇所である隙間S1の周囲(フランジ部1の外周面)をケレン処理した後、
図2に示すように、隙間S1の一部の領域を囲むように管材3の一端部をフランジ部1の外周面に突き当てる。管材3は、例えば、円筒状に形成された無色透明のアクリル管を用いることが好ましい。無色透明としたのは、紫外線を透過させて管材3の内部に注入された紫外線硬化型の補修材を硬化させるためである。なお、管材3は、紫外線を透過させるものであれば、必ずしも無色透明のアクリル管に限られることはない。
【0022】
管材3の一端部は、先端に向かうにつれて内壁が外壁に向かって近づくように形成されている。具体的には、管材3の一端部は、先端に向かうにつれて内壁が外壁に向かって傾斜するように内径が拡径されている。これは、管材3の内部に注入された補修材が硬化した際に、拡径部3aの補修材がストッパとして機能することで、管材3の他端部側への硬化した補修材の抜けを防止するためである。拡径部3aの高さは、3mm~5mm程度の高さに形成されている。
【0023】
フランジ部1の合わせ面の隙間S1の一部を囲むように管材3の一端部をフランジ部1の外周面に突き当てた後、紫外線硬化型の補修材4(以下、UV補修材4という。)を管材3の一端部の周囲に盛り、管材3の一端部とフランジ部1の外周面との境界(隙間)を埋める。このとき、管材3の一端部の周囲全域にわたってUV補修材4で埋めるのではなく、管材3の一端部の周囲のうち、一部をUV補修材4で埋める。これは、最初から管材3の一端部の周囲全域を埋めようとすると、ガス漏れ箇所が小さくなるにつれて管材3の一端部とフランジ部1の外周面との境界からのガスGの吐出圧が徐々に上昇していくので、UV補修材4で埋める作業が困難になっていくことを考慮してのものである。また、管材3の一端部をUV補修材4で埋める際には、後に照射される紫外線が管材3の内部のUV補修材7(後述する)まで確実に届くように、フランジ部1の表面から3mm~5mm程度の高さにとどめておくことが好ましい。
【0024】
なお、UV補修材4としては、例えば、一液性の紫外線硬化型アクリル等が挙げられるが、紫外線照射により硬化する材料であれば、この補修材に限定されるものではない。また、補修材は、UV補修材4に限らず、二液性硬化型の補修材(例えば、二液性エポキシ樹脂等)を用いてもよい。
そして、すぐに紫外線照射器を用いて紫外線をUV補修材4に照射し、硬化させる。紫外線照射器は、例えば、波長が365nm、または405nmの紫外線を照射するものを用いる。UV補修材4は、硬化前は半透明の液体状であり、硬化後は白色の固体となるため、硬化したか否かを目視で確認することができる。UV補修材4は、すぐに硬化し、UV補修材4の硬化により、管材3は、フランジ部1の外周面に立設された状態となっている。したがって、この段階では管材3の一端部をフランジ部1の外周面に仮固定した状態となる。この状態においては、パッキン20から漏れ出たガスGは、管材3の他端部と、管材3の一端部とフランジ部1の外周面との境界の一部と、管材3によって囲まれていない隙間S1と、隙間S2とから漏れ出ることになる。
【0025】
次に、
図3に示すように、管材3の他端部にチューブ5を介して真空ポンプ6を接続し、管材3の内部に漏れ出したガスGを吸引して、管材3の内部、フランジ部1の合わせ面の隙間S1、及び、フランジ部1と連結部材30(ボルト31、ナット32)との隙間S2を負圧にする。すなわち、真空ポンプ6によるガスGの吸引により、フランジ部1におけるパッキン20の外側部分に形成された空間内を負圧にする。具体的には、真空ポンプ6は、パッキン20から漏れ出すガス量よりも多くの量を吸引することで、管材3の内部、隙間S1,S2の圧力を負圧にすることができる。これにより、パッキン20から漏れ出したガスGは、フランジ部1と管材3の一端部との境界、及び隙間S1,S2から外部に漏れ出すことはなくなり、全て管材3内に集約され、真空ポンプ6にて吸引される。なお、真空ポンプ6は、管材3が破損したり、ガスGと共にUV補修材4が吸引されることを防止するため、管材3の内部を真空に近い値まで負圧にする必要はない。どの程度まで負圧にするかに関しては、フランジ部1の大きさやボルト31の径、ガスGの吐出圧に応じて適宜調整することが可能である。
【0026】
真空ポンプ6で管材3の内部を負圧にした後、UV補修材4を用いて、管材3の一端部の周囲のうち、UV補修材4で埋められていない残された部分を埋め、紫外線照射器を用いて紫外線をUV補修材4に照射し、硬化させる。これにより、管材3の一端部の周囲全域にわたってUV補修材4で埋められた状態となり、管材3の一端部は、フランジ部1に完全に固定される。したがって、フランジ部1と管材3の一端部との境界は、UV補修材4によって完全に塞がれた状態となるので、管材3によって囲まれた隙間S1から漏れ出したガスGは、管材3の内部から漏れ出すことはない。また、UV補修材4で残された部分を埋める際に、負圧によりUV補修材4を管材3の一端部に向けて吸い込むことができるので、管材3の周囲を隙間なく埋めることができる。
【0027】
管材3のフランジ部1への固定後、管材3によって囲まれていない隙間S1と隙間S2をUV補修材4にて埋め、紫外線照射器を用いて紫外線をUV補修材4に照射し、硬化させる。これにより、管材3によって囲まれていない隙間S1と隙間S2のうち、負圧になっている箇所が塞がれる。このとき、補修材は、UV補修材4に限らず、二液性硬化型の補修材(例えば、二液性エポキシ樹脂等)を用いてもよい。ここで、真空ポンプ6によるガスGの吸引で隙間S1,S2の全ての領域が負圧にされていないときは、負圧になっているガス漏れ箇所のみを補修材で埋め、負圧にできなかった残りのガス漏れ箇所に関しては、再度、隙間S1に管材3を立てて真空ポンプ6で吸引して、上記と同様の補修を行うとよい。すなわち、いずれかのガス漏れ箇所から漏れ出したガスを吸引して、複数のガス漏れ箇所の少なくとも一部を負圧にして、負圧にしたガス漏れ箇所を補修材で塞げばよい。
【0028】
次に、
図4に示すように、管材3の内部に紫外線硬化型の補修材7(以下、UV補修材7という。)を注入して充填する。具体的には、管材3の他端部に取り付けられているチューブ5及び真空ポンプ6を取り外し、管材3の他端部にチューブ8を介してシリンジ9を接続する。
【0029】
シリンジ9の接続後、シリンジ9からUV補修材7を管材3の内部に注入する。UV補修材7を漏れ出すガスGの吐出圧以上の圧力で注入することで、UV補修材7はガス漏れの原因となっている隙間S1にも進入する。UV補修材7を最後まで注入した後、
図5に示すように、シリンジ9によるUV補修材7の押圧を維持した状態で、紫外線照射器Lを用いて紫外線を管材3の外部から管材3の内部のUV補修材7に照射し、UV補修材7を硬化させる。このとき、紫外線は管材3内のUV補修材7のみに照射する。管材3は、無色透明のアクリル管から形成されているので、紫外線は管材3を透過し、UV補修材7に当たることになる。これにより、管材3の内部及び隙間S1のUV補修材7が硬化することで、管材3によって囲まれた隙間S1が塞がれる。
【0030】
UV補修材7は、管材3の内部だけでなく、隙間S1も埋めているので、ガス溜まりがない状態となり、UV補修材7の接触面積を最大限に確保することができる。また、管材3内のUV補修材7と隙間S1内のUV補修材7が一体化されるので、より強固な補修が可能となる。管材3の拡径部3aのUV補修材7は、漏れ出そうとするガスの吐出圧によりUV補修材7が管材3の他端部に向かって移動しようとするのを止めるストッパ(栓)としての機能を果たすので、ガス漏れを防ぐ機能を高めることができる。
【0031】
なお、UV補修材7としては、UV補修材4と同じく、例えば、一液性の紫外線硬化型アクリル等が挙げられるが、紫外線照射により硬化する材料であれば、この補修材に限定されるものではない。さらに、管材3の内部に注入される補修材は、UV補修材7に限らず、二液性硬化型の補修材(例えば、二液性エポキシ樹脂等)を用いてもよい。ただし、二液性の補修材を用いる場合には、すぐに硬化するものではないので、補修材がガスの圧力で押し戻されないよう、硬化するまでシリンジ9で補修材に圧力をかけ続ける必要がある。この場合、管材3は、紫外線を透過する無色透明の材料で形成されている必要はない。
【0032】
管材3の内部のUV補修材7を硬化させた後、チューブ8とシリンジ9を取り外し、管材3の一端部近傍を残した状態で管材3を切断して短くする。管材3の切断に際しては、超音波カッターで切断することにより、硬化したUV補修材7に過度の負荷をかけることなく切断することができる。管材3を切断した後、管材3の一部がUV補修材4から露出した状態となっている。
【0033】
次に、
図6に示すように、UV補修材4から露出した管材3の一部を紫外線硬化型の補修材10(以下、UV補修材10という。)により埋め、紫外線照射器Lを用いて紫外線をUV補修材10に照射し、硬化させる。これにより、管材3はUV補修材4,10によって完全に覆われた状態となる。UV補修材10は、UV補修材4,7と同じ材料でもよいし、UV補修材10に代えて、二液性硬化型の補修材(例えば、二液性エポキシ樹脂等)を用いてもよい。
【0034】
次に、
図7に示すように、管材3を覆っているUV補修材4,10の全体を紫外線硬化型の補修材11(以下、UV補修材11という。)により埋め、紫外線照射器Lを用いて紫外線をUV補修材11に照射し、硬化させる。これにより、管材3はUV補修材11によってさらに補強された状態となる。ここで、UV補修材11は、隙間S1から少なくとも20mm以上の半径を確保するよう、UV補修材4,10の全体を完全に覆うように埋める。これにより、補修箇所の最終的な表面仕上げを行うことができると共に、強度を高めるための肉厚、接地面積を確保することができる。UV補修材11は、UV補修材4,7,10と同じ材料でもよいし、UV補修材11に代えて、二液性硬化型の補修材(例えば、二液性エポキシ樹脂等)を用いてもよい。
【0035】
次に、
図8に示すように、外部に露出したUV補修材11を保護する塗装を行う。具体的には、長期間にわたる耐候性を考慮し、UVカットを目的として保護塗装を複数回に分けて行い、保護層12,13を形成する。保護塗装を複数回に分けて行うのは、一つの保護塗装を薄塗りで行ってすぐに乾燥させることで、UV補修材11への影響をできるだけ抑えるためである。保護層12,13は、二層に限られるものではなく、二層以上形成してもよい。また、各保護層12,13は、同じ材料で形成してもよいし、別の材料で形成してもよい。
【0036】
以上のようなガス漏れ補修方法によれば、フランジ部1のパッキン20からのガス漏れ箇所である隙間S1,S2を負圧にすることで、フランジ部1におけるパッキン20の外側に形成された空間内に漏れ出すガスGを吸引箇所(真空ポンプ6)に集約することができる。これにより、構造上、広域に漏れ出すガスGを集約して他からのガス漏れを防いだ状態で補修することができるので、それぞれのガス漏れ箇所ごとに補修材で埋めていく作業を行う必要がなくなり、ガス漏れの補修作業を軽減することができる。また、ガス漏れ補修の手順として、ガスGを吸引して集約していた箇所を最後に塞ぐので、ガス漏れ箇所の大部分を負圧にした状態で補修することができ、ガス漏れ箇所の補修作業を軽減することができる。
また、ガス漏れ箇所である隙間S1,S2を囲むように管材3の一端部をフランジ部1等の補修対象物に突き当てて、管材3の内部に漏れ出したガスGを吸引して管材3を負圧にすることにより、管材3が突き当てられたガス漏れ箇所の近くに存在するガス漏れ箇所も負圧にすることができる。したがって、ガス漏れ箇所が広域に存在する場合であっても、従来のようにガス漏れ箇所を順番に覆っていくにつれて、残されたガス漏れ箇所からのガスGの吐出圧が高くなって、補修材で覆うことが難しくなるといった問題が起こることもなく、負圧になっているガス漏れ箇所を補修材で簡単に埋めることができる。また、管材3を用いることにより、漏れ出たガスGが集約しやすくなる。
よって、ガス漏れ箇所の補修作業を軽減することができ、ガス漏れ箇所の補修作業を短時間で終わらせることができるので、ガス漏れ量を減らすことができ、漏れたガスGを補うガス補充時間を短縮することができる。
【0037】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。
例えば、上記のガス漏れ補修方法において、管材3を立てて漏れ出したガスGを吸引する箇所は、フランジ部1の合わせ面の隙間S1に限らず、
図1(c)に示すように、フランジ部1と連結部材30(ボルト31、ナット32)との隙間S2であってもよい。
また、隙間S1,S2の一部を囲むように管材3を固定し、管材3内のガスGを吸引して隙間S1,S2を負圧にする方法に限らず、隙間S1,S2に真空ポンプ等を近接させて漏れ出るガスGを吸引して隙間S1,S2を負圧にしてもよい。
【0038】
ガス漏れ補修方法は、例えば、
図9に示すように、ガス絶縁機器におけるブッシングのセメンチング箇所からのガス漏れ補修にも適用することができる。具体的に、ブッシングは、金属製のタンク91と陶器製の碍管92とがガスケット93によってシールされており、ガスケット93よりも外側部分において、タンク91と碍管92とがセメンチング部94により接合されている。
このような構造において、ガスケット93が経年劣化等により損傷すると、タンク91内のガスGがガスケット93から漏れ出し、さらに、多孔質材料から形成されているセメンチング部94や、タンク91と連結部材95との隙間S3から漏れ出すことがある。このような場合、セメンチング部94からガスGを吸引して負圧にすることで、ガスケット93の外側に形成された空間内に漏れ出すガスGを吸引箇所(真空ポンプ6)に集約することができ、構造上、広域に漏れ出すガスGを集約した状態で補修することができるので、ガス漏れの補修作業を軽減することができる。
【0039】
ガス漏れ補修方法は、例えば、
図10に示すように、ガス絶縁機器におけるピンホール14a,14b,14cが発生したフランジ部15と配管16との溶接部17の補修にも適用することができる。この場合、破線で囲んだピンホール14aを負圧にすることで、ピンホール14aの近くに存在するピンホール14b,14cからもガスが漏れ出さなくなるので、ピンホール14b,14cを簡単に補修材で埋めることができる。よって、従来のように、各ピンホール14a,14b,14cのそれぞれにおいて、ガスの吐出圧に抵抗しながら補修作業を行う必要がなくなるので、ガス漏れの補修作業を軽減することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 フランジ部
3 管材
3a 拡径部
4 UV補修材
5 チューブ
6 真空ポンプ
7 UV補修材
8 チューブ
9 シリンジ
10 UV補修材
11 UV補修材
12 保護層
13 保護層
14a,14b,14c ピンホール
15 フランジ部
16 配管
17 溶接部
20 パッキン(シール部材)
30 連結部材
31 ボルト
32 ナット
G ガス
L 紫外線照射器
S1,S2,S3 隙間(ガス漏れ箇所)