(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090452
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】簡易堤防
(51)【国際特許分類】
E02B 3/10 20060101AFI20230622BHJP
【FI】
E02B3/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205414
(22)【出願日】2021-12-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】521553405
【氏名又は名称】株式会社ケイビ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大山 勇起
(72)【発明者】
【氏名】小針 隆正
【テーマコード(参考)】
2D118
【Fターム(参考)】
2D118AA20
2D118AA30
2D118BA07
2D118FA01
2D118FA04
2D118GA12
(57)【要約】
【課題】比較的小さな場所に保管しておくことができるだけでなく、軽量で取り扱いが容易あることにより設置や折り畳みの作業が迅速に行え、しかも止水効果が高い簡易堤防を提供する。
【解決手段】底面シート部1と、底面シート部1から起立する方向に揺動自在の止水面シート部2と、底面シート部1に対する止水面シート部2の起立角度を維持する角度維持部3と、底面シート部の先端に設けられた重り部4と、止水面シート部2の先端に設けられた浮力発生部5とを備える。重り部4は、底面シート部1の先端に沿って所定間隔を存して配列された板状の重り部材41により形成され、浮力発生部5は、可撓性を有する板状の浮力材51によって形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に長手の底面シート部と、該底面シート部の長手方向に沿って設けられて該底面シート部から起立する方向に揺動自在の止水面シート部と、下端が前記底面シート部に連結され上端が前記止水面シート部に連結されて前記底面シート部に対する前記止水面シート部の起立角度を維持する角度維持部と、前記底面シート部の先端に設けられた重り部と、前記止水面シート部の先端に設けられた浮力発生部とを備える簡易堤防において、
前記重り部は、前記底面シート部の先端に沿って所定間隔を存して配列された板状の重り部材により形成され、前記浮力発生部は、可撓性を有する板状の浮力材によって形成されていることを特徴とする簡易堤防。
【請求項2】
前記浮力材は、板状に形成された合成樹脂製発泡体により形成されていることを特徴とする請求項1記載の簡易堤防。
【請求項3】
前記角度維持部は、前記底面シート部と前記止水面シート部との間に、前記底面シート部の長手方向に所定間隔を存して複数設けられたシート状の仕切り部を備え、
前記仕切り部は、前記底面シート部と前記止水面シート部との境界を基端側とし、前記重り部と前記浮力発生部との間の位置を先端側として、基端側から先端側にわたって延びる重合部を備えることを特徴とする請求項1又は2記載の簡易堤防。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易的に水を堰き止めることにより水害等を軽減する簡易堤防に関する。
【背景技術】
【0002】
水害を防止するとき、例えば、土嚢を積み上げて水を堰き止めるといった対策がとられている。しかし、土嚢は、水害の発生に備えて予め多数個準備しておく必要があり、土嚢の保管のために広い場所が必要となる。
【0003】
しかも、土嚢は重量が比較的大であるため取り扱いが容易ではなく、土嚢の移動と積み上げに多大な労力を要する不都合がある。
【0004】
そこで、扁平に畳むことができるバッグで、通常は折り畳んだ状態で比較的小さな場所に保管しておくことができ、必要時に内部に水を注入して膨らませることにより三角柱型や枕型となって、フェンスを形成することができる簡易堤防が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、防水シートにより底面と傾斜壁とからなるチリトリ型に形成された簡易堤防が提案されている(特許文献2参照)。このものでは、底面の端縁に重りが設けられ、傾斜壁の端縁に浮力材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-220721号公報
【特許文献2】特開2002-235311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものでは、複数のバッグの内部に水を注入するため、比較的長い時間を要し、緊急時にフェンスを迅速に形成することができないおそれがある。
【0008】
また、特許文献2のものでは、折り畳んだ状態の形状が十分に小さくならず、比較的広い保管場所が必要であるだけでなく、その大きさにより取り扱いも容易ではないため、使い勝手が悪い不都合がある。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑み、比較的小さな場所に保管しておくことができるだけでなく、軽量で取り扱いが容易あることにより設置や折り畳みの作業が迅速に行え、しかも止水効果が高い簡易堤防を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明は、横方向に長手の底面シート部と、該底面シート部の長手方向に沿って設けられて該底面シート部から起立する方向に揺動自在の止水面シート部と、下端が前記底面シート部に連結され上端が前記止水面シート部に連結されて前記底面シート部に対する前記止水面シート部の起立角度を維持する角度維持部と、前記底面シート部の先端に設けられた重り部と、前記止水面シート部の先端に設けられた浮力発生部とを備える簡易堤防において、前記重り部は、前記底面シート部の先端に沿って所定間隔を存して配列された板状の重り部材により形成され、前記浮力発生部は、可撓性を有する板状の浮力材によって形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、底面シート部の先端に設けた重り部は、所定間隔を存して配列された板状の重り部材であり、止水面シート部の先端に設けた浮力発生部は、可撓性を有する板状の浮力材であることにより、底面シート部と止水面シート部とが共に折り畳み容易となっている。
【0012】
即ち、重り部材は、例えば比重の大きい金属が用いられるが、複数の板材に分割されていることにより、底面シート部の柔軟性を維持することができる。可撓性を有する浮力材は、板状であることにより比較的薄手に形成することができ、止水面シート部の柔軟性を阻害することがない。
【0013】
よって、本発明の簡易堤防は、折り曲げ、或いは、巻くように丸める等の折り畳み形状を自由に選ぶことができ、特に巻くように丸めた場合には、一方に向かって反動をつけて転がすように広げることで、設置作業も極めて容易となる。
【0014】
本発明において、前記浮力材は、板状に形成された合成樹脂製発泡体により形成されていることが好ましい。これにより、止水面シート部の先端への浮力材の取り付けを容易に行うことができる。
【0015】
また、本発明において、前記角度維持部は、前記底面シート部と前記止水面シート部との間に、前記底面シート部の長手方向に所定間隔を存して複数設けられたシート状の仕切り部を備え、前記仕切り部は、前記底面シート部と前記止水面シート部との境界を基端側とし、前記重り部と前記浮力発生部との間の位置を先端側として、基端側から先端側にわたって延びる重合部を備えることを特徴とする。
【0016】
角度維持部をシート状の仕切り部を備えて構成することにより軽量とすることができ、仕切り部の重合部によって仕切り部の折り畳みが容易となる。これにより、底面シート部と止水面シート部との角度維持と折り畳み容易性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の簡易堤防の一部を示す説明的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に基づき説明する。本実施例の簡易堤防Aは防水性を有するシート材によって形成されており、
図1に示すように、所望の止水位置に設置した状態で地面等に接する底面シート部1と、底面シート部1上に流れ込んだ水を堰き止めるための止水面シート部2と、止水面シート部2が水を堰き止めた状態に維持するための角度維持部3とを備えている。
【0019】
本実施形態においては、底面シート部1、止水面シート部2、及び角度維持部3は何れも超強化PVCコートポリエステルを材料として形成されている。
【0020】
底面シート部1は、横方向に長手で、設置状態では下面が接地面となる。止水面シート部2は、底面シート部1の長手方向に沿った一側縁に一体的に連結され、底面シート部1から起立する方向に揺動自在に設けられている。
【0021】
底面シート部1と止水面シート部2とは防水性を有していることにより水が透過することはないが、底面シート部1と止水面シート部2との連結位置も防水性を有するように連結されている。
【0022】
底面シート部1の先端には、重り部4が設けられている。止水面シート部2の先端には、浮力発生部5が設けられている。
【0023】
図2に示すように、重り部4は、底面シート部1の先端に沿って所定間隔を存して配列された複数の板状重り部材41により形成されている。重り部材41は、底面シート部1の端部に設けられた底部袋状部11に収容され、当該袋状部11を縫合することにより底面シート部1に固定されている。
【0024】
また、
図1に示すように、重り部4は、その端部に、環状部材42を備えている。これによれば、例えば、水流が速い場合等に環状部材42を介してアンカーを地面等に打ち込むことにより、重り部4を固定することができる。
【0025】
図2に示すように、浮力発生部5は、帯状の浮力材51を備えている。浮力材51は、可撓性を有する合成樹脂製発泡体によって形成されている。浮力材51は、止水面シート部2の先端に形成された中空部21に挿入した状態で固定されている。
【0026】
角度維持部3は、底面シート部1に対して止水面シート部2が起立したときに生じる底面シート部1と止水面シート部2との間に形成される空間内に位置して、当該空間の長手方向に沿って所定間隔を存して複数の仕切り部30によって構成されている。
【0027】
各仕切り部30は上縁が止水面シート部2に連結された上部仕切り片31と、下縁が底面シート部1に連結された下部仕切り片32とによって構成されている。
【0028】
上部仕切り片31の下縁と下部仕切り片32の上縁とは、互いに重合して接合され、この接合部分に重合部33を形成している。即ち、重合部33は、底面シート部1と止水面シート部2との境界を基端とし、重り部4と浮力発生部5との間の位置を先端として、基端から先端にわたって設けられている。
【0029】
角度維持部3を構成する仕切り部30は、底面シート部1に止水面シート部2が重ねられているとき、重合部33を介して折り畳まれた状態で底面シート部1と止水面シート部2との間に収容される。そして、止水面シート部2が底面シート部1に対して起立したとき、角度維持部3は、仕切り部30が上下に張って、止水面シート部2の姿勢を所定の傾斜角度(例えば45°)に維持する。
【0030】
なお、止水面シート部2の起立角度が60°より大きいと、止水面シート部2の立ち上がりが大きくなるため、水に対する十分な強度が得られなくなるおそれがある。止水面シート部2の起立角度が30°より小さいと、水に対する強度が向上する反面、止水面シート部2の起立角度の立ち上がりが小さくなって堰き止めることができる水深が浅くなるおそれがある。よって、止水面シート部2の底面シート部1に対する起立角度は、30°以上、60°未満が好ましい。
【0031】
柔軟なシート材によって形成された止水面シート部2は、角度維持部3により底面シート部1から立ち上がった姿勢に維持され、水を堰き止めるのに適した状態となる。そして、止水面シート部2が水を堰き止めているときには、浮力発生部5の浮力によって止水面シート部2の起立状態が強固に維持され、水を堰き止めた状態を長時間にわたって維持することができる。
【0032】
また、仕切り部30の重合部33を境界として止水面シート部2と底面シート部1とが扁平になりやすく、折り畳み作業が極めて容易となる。このとき、複数の板状重り部材41により形成された重り部4は、底面シート部1の折り畳みを阻害することない。また、可撓性を有する合成樹脂製発泡体からなる帯状の浮力材51によって形成された浮力発生部5も、止水面シート部2の折り畳みを阻害することない。
【0033】
このように、本実施形態の簡易堤防Aは、図示しないが、畳み込むことにより広い保管スペースを必要とせず、軽量且つ構造簡単であることにより、持ち運びや設置作業を迅速に行うことができる。よって、小さなスペースに保管することができるだけでなく持ち運び等の作業性もよい。また、折り畳み状態の解除も容易であり、迅速に使用状態に広げることができる。
【0034】
なお、本実施形態においては、
図1に示すように、底面シート部1と止水面シート部2との境界位置の外側に環状のベルト部材6が縫着されている。ベルト部材6は、持ち手として用いることで、折り畳みや設置作業が容易となる。また、ベルト部材6を底面シート部1の長手方向に沿って所定間隔を存して複数設けておくことにより、使用後の乾燥等において、吊り下げ紐として用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
A…簡易堤防、1…底面シート部、2…止水面シート部、3…角度維持部、30…仕切り部、33…重合部、4…重り部、41…重り部材、5…浮力発生部、51…浮力材。