(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023090876
(43)【公開日】2023-06-29
(54)【発明の名称】高濃度抗C5抗体製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230622BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230622BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230622BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230622BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20230622BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230622BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230622BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230622BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230622BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230622BHJP
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A61P 27/02 20060101ALI20230622BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230622BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230622BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230622BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230622BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230622BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230622BHJP
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A61P 5/14 20060101ALI20230622BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230622BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230622BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230622BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230622BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/18
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P13/12
A61P9/10
A61P13/02
A61P25/00
A61P27/02
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A61P7/00
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A61P17/00
A61P25/28
A61P1/00
A61P3/10
A61P21/04
A61P21/00
A61P9/10 101
A61P31/04
A61P37/06
A61P5/14
A61P17/06
A61P7/06
A61P43/00 105
C07K16/18 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076675
(22)【出願日】2023-05-08
(62)【分割の表示】P 2022083775の分割
【原出願日】2018-07-27
(31)【優先権主張番号】62/537,741
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】503102674
【氏名又は名称】アレクシオン ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ステファン オルティス
(72)【発明者】
【氏名】ジリアン ジェンティーレ
(72)【発明者】
【氏名】リーナ フィロミナタン
(72)【発明者】
【氏名】エリック ラウサー
(72)【発明者】
【氏名】ブルース メイソン
(57)【要約】
【課題】本開示は、高濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含む安定的水溶液、および当該水溶液を作製する方法を提供すること。
【解決手段】本開示はさらに、例えば発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)などの補体に関連する障害を、当該溶液を使用して治療または予防する方法も提供する。さらに1つまたは複数の当該溶液、およびそうした治療を必要とする患者に当該溶液を投与するための手段を含有する治療用キットも特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月27日に出願された米国仮出願番号第62/537,741号の利益を主張する。上述の仮特許出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は配列表を含んでおり、該配列表はASCIIフォーマットで電子的に提出されたものであり、かつその全体が参照により本明細書に援用される。このASCIIコピーは2018年7月26日に作成され、AXJ-226PC_SL.txtという名称であり、サイズは32,987バイトである。
【背景技術】
【0003】
補体系は、身体の他の免疫系と共に作用することで、細胞性病原体およびウイルス性病原体の侵入に対して防御する。少なくとも25個の補体タンパク質が存在しており、それらは血漿タンパク質と膜補因子の複合体の集まりとして存在していた。血漿タンパク質は、脊椎動物血清中のグロブリンの約10%を占める。補体成分は、複雑だが正確な一連の酵素的切断および膜結合イベントにおいて相互作用することにより、それらの免疫防御機能を達成する。その結果である補体カスケードが、オプソニン作用、免疫調節作用および溶解作用を有する産物の産生を導く。補体活性化に関連付けられた生物学的活性の簡潔な要約が、例えば、The Merck Manual,16th Editionで提供される。
【0004】
適切に機能する補体系は感染性微生物に対する安定的な防御を提供する一方で、補体系が不適切に制御または活性化されると、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)を含む様々な障害の病態に関与する(例えば、Socie G,et al.,French Society of Haematology.Lancet.1996;348(9027):573-577;Brodsky,R.,Blood.2014;124(18):2804-2811);Hillmen,P.,et al,Am.J.Hematol.2010;85(8):553-559;Caprioli et al.(2006)Blood 108:1267-1279;およびKavanagh et al.(2006)British Medical Bulletin 77 and 78:5-22を参照のこと)。
【0005】
PNHまたはaHUSなどの補体が関連する障害を有する患者は、相当な罹患率および死亡率のリスクがあった。したがって本発明の目的は、補体が関連する障害を有する患者を治療するための改善された組成物および方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Socie G,et al.,French Society of Haematology.Lancet.1996;348(9027):573-577
【非特許文献2】Brodsky,R.,Blood.2014;124(18):2804-2811
【非特許文献3】Hillmen,P.,et al,Am.J.Hematol.2010;85(8):553-559
【非特許文献4】Caprioli et al.(2006)Blood 108:1267-1279
【非特許文献5】Kavanagh et al.(2006)British Medical Bulletin 77 and 78:5-22
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書において、抗C5抗体の安定的で高濃度水溶液、ならびに当該製剤を作製する方法および使用する方法が提供される。特に本開示は、高濃度溶液中の抗C5抗体(例えばラブリズマブ(ravulizumab)であり、「抗体BNJ441」および「ALXN1210」としても知られる)の長期間にわたる物理的および機能的な安定性の維持に適した製剤条件を提供する。例えば本開示は、抗体がおよそ100mg/mL以上の濃度の溶液中に維持された場合であっても、2℃~8℃で最大2年間、主に単量体の形態で抗C5抗体を維持することができる製剤条件を提供する。さらに本明細書において記載され、実施例において例示されるように、そのような製剤は高濃度溶液内の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の凝集、断片化または分解も最小化する。例えば本開示は、抗体断片化または抗体分解の産物が検出されずに(サイズ排除クロマトグラフィー-高速液体クロマトグラフィー法(SEC-HPLC)、例えばHPLC-ゲル透過法を使用して測定される場合)、そして2%以下の凝集で、高濃度状態で抗C5抗体を2年間維持することができる製剤条件を提供する。また本明細書において、例えば200mg/mL超のラブリズマブなどの抗C5抗体溶液の製剤化に適した条件が提供された。
【0008】
安定的で高濃度の抗C5抗体溶液の利点は多い。第一に、抗体を少ない体積で患者に投与する必要がある治療応用に関して、治療有効性はしばしば、その少ない体積で投与することができる抗体量に依存する。抗C5抗体を高濃度に製剤化することができない場合、例えば皮下送達、硝子体内送達および/または関節内送達などの経路の使用はしばしば除外されてしまう。これと関連し、高濃度抗体製剤は投与経路に関して、患者により多くの選択肢を与えることができる。頻繁で慢性的な投与を必要とする、および/または自己送達を必要とする治療応用に関し、高濃度製剤による投与はこれを可能とし、静脈点滴よりも患者にとってより好ましいものとなるだろう。例えば高濃度の抗C5抗体製剤により、患者は、例えば皮下注射または静脈内注射などによる抗体の自己投与が可能となるであろう。ゆえに抗体を高濃度で製剤化することによって、簡便な家庭内での代替投与が提供され、補体関連障害を有する患者の投与コンプライアンスを上昇させることができる。
【0009】
さらに本明細書に記載される水溶液を作製する方法は、凍結乾燥工程を必要とせず、さらには当該高濃度水溶液を凍結乾燥材料から再構成させる必要もない。当該高濃度抗体溶液は、再構成される凍結乾燥抗体製剤を越える利点をいくつか提供する。まず最初に、医師は現場で無菌的に凍結乾燥抗体溶液を再構成しなければならないが、この作業は投与前に溶液を細菌汚染する機会を増大させる。さらに再構成には、注意深く再構成用の管に含まれている固形物をすべて適切に溶液中に確実に溶解させる必要がある。ゆえに本明細書に提供される高濃度水溶液は、医師、介護人および/または患者に、その必要のある患者に対して迅速、簡便、安全で効率的な治療用抗体を送達する手段を提供する。
【0010】
高濃度製剤のその他の利点としては例えばバルク保管スペースの減少、および/または製品の必要数の減少に伴う製造コスト削減が挙げられる。さらに、長い保存可能期間を有する製品を製造することで最終的には必要とする生産数が少なくなる。これによって最終的には高濃度治療抗体の製造者および消費者のコストが減少する。
【0011】
例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号14および11で示す配列を有する重鎖および軽鎖を含むラブリズマブ(抗体のBNJ441およびALXN1210としても知られている)、またはその抗原結合断片およびバリアントである。他の実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖および軽鎖の相補性決定領域(CDR)または可変領域(VR)を含む。したがって1つの実施形態では、抗体は、配列番号12に記載された配列を有するラブリズマブの重鎖可変(VH)領域のCDR1ドメイン、CDR2ドメインおよびCDR3ドメインと、配列番号8に記載された配列を有するラブリズマブの軽鎖可変(VL)領域のCDR1ドメイン、CDR2ドメインおよびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に記載されたCDR1、CDR2、およびCDR3の重鎖配列と、それぞれ配列番号4、5および6に記載されたCDR1、CDR2、およびCDR3の軽鎖配列を含む。
【0012】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH領域およびVL領域を含む。
【0013】
別の実施形態では、抗体は、配列番号13に記載される重鎖定常領域を含む。
【0014】
別の実施形態では、抗体は、ヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、当該バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングで、天然型ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428およびアスパラギン434に対応する残基に、Met-429-LeuおよびAsn-435-Serの置換を含む。
【0015】
別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に記載されたCDR1、CDR2、およびCDR3の重鎖配列、ならびにそれぞれ配列番号4、5および6に記載されたCDR1、CDR2、およびCDR3の軽鎖配列、ならびにヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域を含み、当該バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングで、天然型ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428およびアスパラギン434に対応する残基に、Met-429-LeuおよびAsn-435-Serの置換を含む。
【0016】
別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と結合に関して競合するか、および/または上述の抗体と同じC5上のエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体は、上述の抗体と、少なくとも約90%の可変領域アミノ酸配列の同一性を有する(例えば配列番号12および配列番号8と、少なくとも約90%、95%または99%の可変領域同一性)。
【0017】
別の実施形態では、抗体は、pH7.4および25℃で、0.1nM≦KD≦1nMの範囲にあるアフィニティ解離定数(KD)でヒトC5に結合する。別の実施形態では、抗体は、pH6.0および25℃で、KD≧10nMでヒトC5に結合する。さらに別の実施形態では、抗体の[(pH6.0および25℃でのヒトC5に対する抗体またはその抗原結合断片のKD)/(pH7.4および25℃でのヒトC5に対する抗体またはその抗原結合断片のKD)]は、25よりも大きい。
【0018】
1つの態様では、安定的な水溶液(例えば滅菌溶液)が提供され、当該溶液は、約100mg/mLの濃度の抗C5抗体を含み、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む。別の実施形態では、溶液は、約105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295または300mg/mLの濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含む。
【0019】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、1つまたは複数の追加の剤(例えば安定化剤、緩衝剤、界面活性剤および/または保存剤)を含む。例えば1つの実施形態では、安定的な水溶液は、安定剤を含む。例示的な安定剤としては限定されないが、ポリオール類、糖類(例えばスクロースまたはトレハロース)、アミノ酸類(例えばアルギニン)、アミン類、および塩析塩類が挙げられる。1つの実施形態では、溶液は、両端を含み、2~10%の濃度で少なくとも1つの安定化剤を含む。1つの実施形態では、溶液は、5%スクロースを含む。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~50mMの濃度で少なくとも1つまたは複数の安定化剤を含む。別の実施形態では、安定化剤は、20mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、安定化剤は、少なくとも25mMまたは25mMの濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、安定化剤は、50mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、溶液は、25mMのアルギニンを含む。
【0020】
別の実施形態では、溶液は、少なくとも1つまたは複数の緩衝剤を含む。洗浄溶液中に含有することができる典型的な緩衝剤の非限定的な例としては、トリス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、ビス-トリス、ビス-トリスプロパン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ギ酸塩、酢酸塩、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、リン酸塩、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、クエン酸塩、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TAPS(3{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、Bicine(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Tricine(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、カコジル酸塩(ジメチルアルシン酸)、SSC(塩類クエン酸ナトリウム)、およびリン酸ナトリウムが挙げられる。別の実施形態では、緩衝剤は、アミノ酸である。アミノ酸は、例えばヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)、セリン(例えばL-セリン)およびグリシン(例えばL-グリシン)からなる群から選択されるアミノ酸であってもよい。別の実施形態では、溶液は、2種以上の緩衝剤を含む。特定の実施形態では、緩衝剤は、リン酸ナトリウムである。
【0021】
別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~300mMの濃度で少なくとも1つまたは複数の緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~200mMの濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~100mMの濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~50mMの濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、20mM~50mMの濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、緩衝剤は、20mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、25mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、50mM以上の濃度で溶液中に存在する。
【0022】
別の実施形態では、溶液は、0.1~5%の濃度で糖類の賦形剤を含む。1つの実施形態では、糖類賦形剤は、1.5%以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、糖類賦形剤は、3%以上の濃度で溶液中に存在する。糖類賦形剤は、例えばソルビトールおよびマンニトールからなる群から選択される糖類であってもよい。別の実施形態では、溶液は、2つ以上の糖類賦形剤を含む。
【0023】
別の実施形態では、溶液は、界面活性剤を含む。本発明製剤における使用に適した界面活性剤としては限定されないが、脂肪酸エステル(例えばモノカプリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン)、ソルビタントリオレイン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル(例えばモノカプリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノパルミチン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンテトラステアリン酸ソルビトール、ポリオキシエチレンテトラオレイン酸ソルビトール)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えばポリエチレンモノステアリン酸グリセリル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばポリエチレンジステアリン酸グリコール)、ポリオキシエチレンアルキルエステル(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油(例えばポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体(例えばポリオキシエチレンソルビトールミツロウ)、ポリオキシエチレンラノリン誘導体(例えばポリオキシエチレンラノリン)、およびポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えばポリオキシエチレンステアリン酸アミド);C12-C18アルキル硫酸塩(例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム)、平均で2~4モルのエチレンオキシド単位が付加されたポリオキシエチレンC10-C18アルキルエーテル硫酸塩(例えばポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、およびC10-C18アルキルスルホコハク酸エステル塩(例えばラウリルスルホコハク酸ナトリウムエステル);ならびに例えばレシチン、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質などの天然界面活性剤(例えばスフィンゴミエリン)、およびC12-C18脂肪酸のスクロースエステルが挙げられる。
【0024】
1つの実施形態では、製剤中の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。特定の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20、40、60、80、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせである。1つの実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート80(Tween 80)である。別の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート60である。別の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート40である。別の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート20(Tween 20)である。溶液中の界面活性剤の濃度は、例えば両端を含み、0.001%~0.02%であってもよい。例えば界面活性剤は、約0.001%~約1%、または約0.001%~約0.5%、または約0.01%~約0.2%の量で製剤中に存在し得る。1つの実施形態では、水溶液は、少なくとも、またはおよそ、0.001(例えば少なくとも、またはおよそ0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、または0.5以上)%の濃度で界面活性剤を含有する。別の実施形態では、水溶液は、0.2(例えば0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002または0.001)%以下の薬学的に許容可能な界面活性剤を含有する。特定の実施形態では、界面活性剤は、0.05%のポリソルベート80である。
【0025】
別の実施形態では、溶液は、保存剤を含む。例示的な保存剤としては限定されないが、ベンジルアルコール、m-クレゾールおよびフェノールが挙げられる。
【0026】
1つの実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて5つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて4つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて3つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて2つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて1つ以下の剤を含む。
【0027】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、ならびに25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニンを含み、この場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0028】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、ならびに25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニン、からなり、この場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0029】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニン、ならびに0.05±0.03(例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07および0.08)%のポリソルベート80を含み、この場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0030】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニン、ならびに0.05±0.03(例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07および0.08)%のポリソルベート80、からなりこの場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0031】
別の実施形態では、安定的水溶液が提供され(例えば滅菌溶液)、この場合において当該溶液は、(a)抗C5抗体(例えばラブリズマブ)、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液が提供され(例えば滅菌溶液)、この場合において当該溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、a)抗C5抗体(例えばラブリズマブ)、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニンを含む。
【0032】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、a)抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニンを含む。
【0033】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニンを含む。
【0034】
別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて4つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて3つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて2つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて1つ以下の剤を含む。
【0035】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニン、からなる。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニン、からなる。
【0036】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニン、からなる。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニン、からなる。
【0037】
1つの実施形態では、安定的な水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニンを含む。
【0038】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニンを含む。
【0039】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニンを含む。
【0040】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニンを含む。
【0041】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニン、からなる。
【0042】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニン、からなる。
【0043】
1つの実施形態では、pHは、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9である。別の実施形態では、溶液のpHは、7.0~7.4である。別の実施形態では、溶液のpHは、7.2~7.8である。別の実施形態では、溶液のpHは、7.2~7.6である。特定の実施形態では、溶液のpHは、7.4である。
【0044】
本明細書に記載される溶液は、任意の適切な投与形式用に製剤化されてもよい。1つの実施形態では、溶液は、非経口様式による投与(例えば静脈内、皮下、腹腔内、または筋肉内注射)用に製剤化される。特定の実施形態では、溶液は、皮下投与用に製剤化される。例えば1つの実施形態では、安定的水溶液は、100mg/mLの濃度の抗C5抗体を含み、皮下投与用に製剤化される。別の特定の実施形態では、溶液は、静脈内投与用に製剤化される。例えば1つの実施形態では、安定的水溶液は、100mg/mLの濃度の抗C5抗体を含み、静脈内投与用に製剤化される。
【0045】
本明細書に記載される溶液のいずれかの1つの実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、SEC-HPLC(例えばゲル浸透HPLC)により決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも6カ月間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも9カ月間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも1年間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも18カ月間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも2年間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。
【0046】
本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の5%未満が、SEC-HPLC(例えばゲル浸透HPLC)により決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の4%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の3%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の2%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の1%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。
【0047】
本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも6カ月間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも9カ月間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも1年間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも18カ月間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも2年間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも3年間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。
【0048】
本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも9カ月間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも6カ月間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも1年間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも18カ月間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも2年間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも3年間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。
【0049】
別の態様では、100mg/mLの濃度の抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、および25mMのアルギニンを含む安定的な濃縮抗体溶液を作製する方法が提供され、当該方法は、
【0050】
i)抗C5抗体を含む第一の水溶液を提供することであって、当該第一の水溶液は、第一の製剤を有し、および10mg/mL以下の抗C5抗体を含むこと、
【0051】
ii)当該第一の水溶液に、pH7.4で50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、および25mMのアルギニンを含む製剤への透析ろ過を行い、それにより第二の水溶液を作製することであって、当該第二の水溶液は、当該透析ろ過の結果として第二の製剤を有すること、および
【0052】
iii)当該第二の水溶液を濃縮し、100mg/mLの抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロースおよび25mMのアルギニンを含む安定的な濃縮抗体溶液を作製すること、を含む。
【0053】
別の実施形態では、100mg/mLの濃度の抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、25mMのアルギニン、および0.05%のポリソルベート80を含む安定的な濃縮抗体溶液を作製する方法が提供され、当該方法は、
【0054】
i)抗C5抗体を含む第一の水溶液を提供することであって、当該第一の水溶液は、第一の製剤を有し、および10mg/mL以下の抗C5抗体を含むこと、
【0055】
ii)当該第一の水溶液に、pH7.4で50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、25mMのアルギニン、および0.05%のポリソルベート80を含む製剤への透析ろ過を行い、それにより第二の水溶液を作製することであって、当該第二の水溶液は、当該透析ろ過の結果として第二の製剤を有すること、および
【0056】
iii)当該第二の水溶液を濃縮し、100mg/mLの抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、25mMのアルギニンおよび0.05%のポリソルベート80を含む安定的な濃縮抗体溶液を作製すること、を含む。
【0057】
補体が関連した状態を有するヒト患者を治療する方法も提供され、当該方法は、本明細書に記載される安定的水溶液を、当該補体が関連した状態を治療するのに有効な量で、当該患者に(例えば皮下または静脈内)投与することを含む。補体が関連した状態の例としては限定されないが、リウマチ性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血再かん流障害、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、典型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、デンスデポジット病、視神経脊髄炎、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、黄斑変性症、HELLP症候群、自然胎児消失、血栓性血小板減少性紫斑病、血管炎微量免疫(pauci-immune)型、表皮水疱症、習慣性流産、外傷性脳損傷、心筋炎、脳血管障害、末梢血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸管血管障害、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、リウマチ性関節炎に関連した血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病、静脈ガス塞栓症(venous gas embolus)、ステント留置後の再狭窄、回転性粥腫切除術、経皮経管冠動脈形成術、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、発作性寒冷血色素尿症、抗リン脂質抗体症候群、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身性炎症反応性の敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、移植片拒絶、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、デゴス病、および劇症型抗リン脂質抗体症候群が挙げられる。特定の実施形態では、補体が関連した状態は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)である。別の実施形態では、補体が関連した状態は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)である。
【0058】
さらに本明細書に記載される方法における使用に適合された、本明細書に記載される安定的水溶液を治療有効量で含むキットが提供された。1つの実施形態では、キットは、(i)本明細書に記載される溶液のいずれか、および(ii)当該溶液を、その必要のある患者に送達するための手段(例えばシリンジ)を含む。1つの実施形態では、手段は、患者への当該溶液の皮下送達に適している。1つの実施形態では、手段は、患者への当該溶液の静脈内送達に適している。別の実施形態では、キットは、対象における、補体が関連した状態の治療における使用のための追加的活性剤を少なくとも1つさらに含む。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
安定的水溶液であって、
(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、を含む抗C5抗体、
(b)約50mMのリン酸緩衝液、
(c)約5%のスクロース、および
(d)約25mMのアルギニンを含む、安定的水溶液。
(項目2)
安定的水溶液であって、
(a)抗C5抗体であって、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3、を含む抗C5抗体、
(b)約50mMのリン酸緩衝液、
(c)約5%のスクロース、
(d)約0.05%のポリソルベート80、および
(e)約25mMのアルギニンを含む、安定的水溶液。
(項目3)
界面活性剤をさらに含む、項目1に記載の安定的水溶液。
(項目4)
前記界面活性剤が、約0.05%のポリソルベート80である、項目3に記載の安定的水溶液。
(項目5)
前記抗C5抗体が、約100mg/mLの濃度である、項目2に記載の安定的水溶液。
(項目6)
前記抗C5抗体が、ヒト新生児型Fc受容体(FcRn)に結合するバリアントヒトFc定常領域をさらに含み、前記バリアントヒトFc CH3定常領域は、各々EUナンバリングで、天然型ヒトIgG Fc定常領域のメチオニン428およびアスパラギン434に対応する残基に、Met-429-LeuおよびAsn-435-Serの置換を含む、項目1~5のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目7)
前記抗C5抗体が、配列番号12に記載される重鎖可変領域と、配列番号8に記載される軽鎖可変領域を含む、項目1~6のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目8)
前記抗C5抗体が、配列番号13に記載される重鎖定常領域を含む、項目1~7のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目9)
前記抗C5抗体が、配列番号14に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチドと、配列番号11に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む、項目1~8のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目10)
前記抗C5抗体が、ALXN1210(ラブリズマブ)である、項目1~9のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目11)
前記溶液のpHが、7.2~7.6である、項目1~10のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目12)
前記溶液のpHが、7.4である、項目11に記載の安定的水溶液。
(項目13)
前記溶液が、滅菌されている、項目1~12のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目14)
前記抗C5抗体が、少なくとも6カ月間、2℃~8℃で保存中、SEC-HPLCにより決定されたときに少なくとも97%の単量体を維持している、項目1~13のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目15)
前記抗C5抗体が、少なくとも1年間、2℃~8℃で保存中、SEC-HPLCにより決定されたときに少なくとも97%の単量体を維持している、項目1~14のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目16)
前記溶液中、前記抗C5抗体の3%未満が、SEC-HPLCにより決定されたときに凝集している、項目1~15のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目17)
前記溶液中、前記抗C5抗体の2%未満が、SEC-HPLCにより決定されたときに凝集している、項目1~16のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目18)
前記溶液中、前記抗C5抗体の1%未満が、SEC-HPLCにより決定されたときに凝集している、項目1~17のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目19)
少なくとも6カ月間、2℃~8℃で保存中、前記抗C5抗体が、保存前の前記抗C5抗体と比較して、そのC5結合活性を少なくとも90%維持している、項目1~18のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目20)
少なくとも6カ月間、2℃~8℃で保存中、前記抗C5抗体が、保存前の前記抗C5抗体と比較して、その溶血阻害能力を少なくとも95%維持している、項目1~19のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目21)
前記溶液が、皮下投与に適している、項目1~20のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目22)
前記溶液が、静脈内投与に適している、項目1~21のいずれか1項に記載の安定的水溶液。
(項目23)
100mg/mLの濃度の、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、および25mMのアルギニンを含む、安定的な濃縮抗体溶液を作製する方法であって、
i)前記抗C5抗体を含む第一の水溶液を提供することであって、前記第一の水溶液は、第一の製剤を有し、10mg/mL以下の前記抗C5抗体を含む、提供することと、
ii)前記第一の水溶液に、pH7.4で50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、および25mMのアルギニンを含む製剤への透析ろ過を行い、それにより第二の水溶液を作製することであって、前記第二の水溶液は、前記透析ろ過の結果として第二の製剤を有する、行うことと、
iii)前記第二の水溶液を濃縮し、100mg/mLの抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロースおよび25mMのアルギニンを含む安定的な濃縮抗体溶液を作製することと、を含む、方法。
(項目24)
補体が関連する状態を有するヒト患者を治療する方法であって、前記患者に、項目1~21のいずれか1項に記載の安定的水溶液を、前記補体が関連する状態を治療するのに有効な量で投与することを含む、方法。
(項目25)
前記補体が関連する状態が、リウマチ性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血再かん流障害、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、典型溶血性尿毒症症候群、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、デンスデポジット病、視神経脊髄炎、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、黄斑変性症、HELLP症候群、自然胎児消失、血栓性血小板減少性紫斑病、血管炎微量免疫(pauci-immune)型、表皮水疱症、習慣性流産、外傷性脳損傷、心筋炎、脳血管障害、末梢血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸管血管障害、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎、全身性紅斑性狼瘡関連血管炎、リウマチ性関節炎に関連した血管炎、免疫複合体血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管症、川崎病、静脈ガス塞栓症(venous gas embolus)、ステント留置後の再狭窄、回転性粥腫切除術、経皮経管冠動脈形成術、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、発作性寒冷血色素尿症、抗リン脂質抗体症候群、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、全身性炎症反応性敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、移植片拒絶、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、グッドパスチャー症候群、デゴス病、および劇症型抗リン脂質抗体症候群からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目26)
前記補体が関連する状態は、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)である、項目24に記載の方法。
(項目27)
前記補体が関連する状態は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)である、項目24に記載の方法。
(項目28)
前記安定的水溶液が、前記患者に皮下投与される、項目24~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目29)
前記安定的水溶液が、前記患者に静脈内投与される、項目24~26のいずれか1項に記載の方法。
(項目30)
(i)項目1~21のいずれか1項に記載の前記安定的水溶液、および(ii)前記安定的水溶液をヒトに送達するための手段、を含む治療用キット。
(項目31)
前記手段が、シリンジである、項目28に記載の治療用キット。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】50mg/mLのヒスチジン緩衝液交換ラブリズマブ(ALXN1210)の塩滴定に関する動的光散乱法の結果を示す。
【
図2】50mg/mLの緩衝液交換ラブリズマブ(ALXN1210)のL-アルギニン滴定に関する動的光散乱法の結果を示す。
【
図3】50mg/mLのリン酸緩衝液交換ラブリズマブ(ALXN1210)の塩滴定に関する動的光散乱法の結果を示す。
【
図4】50mg/mLの緩衝液交換ラブリズマブ(ALXN1210)の差動走査蛍光法の結果を示す。
【
図5】L-アルギニンを含まない10mg/mLおよび114mg/mLのラブリズマブ(ALXN1210)、およびL-アルギニンが添加された114mg/mLのラブリズマブ(ALXN1210)に対する動的光散乱法の結果を示す。
【
図6】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性データを示す(T=0~T=2週、2~8℃)。
【
図7】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性データを示す(T=3週~T=2月、2~8℃)。
【
図8】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性データを示す(T=0~T=3週、23~27℃)。
【
図9】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性データを示す(T=1月~T=2月、23~27℃)。
【
図10】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性データを示す(T=1週~T=3週、37℃)。
【
図11】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性データを示す(T=1月~T=2月、37℃)。
【
図12】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=2月、2~8℃)。
【
図13】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=2月、23~27℃)。
【
図14】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=2月、37℃)。
【
図15】ラブリズマブ(ALXN1210)およびヒスチジンのサンプル(T=0)の安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図16】ラブリズマブ(ALXN1210)ヒスチジンASサンプル(T=0)の安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図17】ラブリズマブ(ALXN1210)リン酸塩サンプル(T=0)の安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図18】ラブリズマブ(ALXN1210)リン酸塩サンプル(T=2月、2~8℃)の安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図19】ラブリズマブ(ALXN1210)の凍結融解に関する安定性データを示す (T=0~サイクル2、T=1M -20℃にて)。
【
図20】ラブリズマブ(ALXN1210)の凍結融解サイクル3~サイクル5、T=1M、-20℃での安定性データを示す。
【
図21】ラブリズマブ(ALXN1210)の安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=1月、-20℃での凍結融解)。
【
図22】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=0月~T=2月、2~8℃)。
【
図23】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=3月~T=6月、2~8℃)。
【
図24】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=9月~T=12月、2~8℃)。
【
図25】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=1月~T=2月、23~27℃)。
【
図26】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=3月~T=6月、23~27℃)。
【
図27】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=9月~T=12月、23~27℃)。
【
図28】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=2週~T=2月、37℃)。
【
図29】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=1月~T=3月、-20℃)。
【
図30】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性データを示す(T=6月~T=12月、-20℃)。
【
図31】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性試験の結果を示す(T=3月~T=6月、-80℃)。
【
図32】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性試験の結果を示す(T=12月、-80℃)。
【
図33】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=12月、2~8℃)。
【
図34】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=12月、23~27℃)。
【
図35】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=12月、37℃)。
【
図36】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=12月、-20℃)。
【
図37】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す(T=0~T=12月、-80℃)。
【
図38】75mg/mLのラブリズマブ ALXN1210リン酸塩サンプル(T=0)のプロトタイプの安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図39】75mg/mLのラブリズマブ ALXN1210リン酸塩サンプル(T=1月、2~8℃)のプロトタイプの安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図40】100mg/mLのラブリズマブ ALXN1210リン酸塩サンプル(T=1月、2~8℃)のプロトタイプの安定性動的光散乱法のデータを示す。
【
図41】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す-凍結融解サイクル1~3、T=1月、-20℃。
【
図42】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す-凍結融解サイクル4~5、T=1月、-20℃。
【
図43】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す-凍結融解サイクル1~3、T=3月、-80℃。
【
図44】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す-凍結融解サイクル4~5、T=3月、-80℃。
【
図45】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す。凍結融解サイクル1~5、T=1月、-20℃。
【
図46】ラブリズマブ(ALXN1210)のプロトタイプの安定性サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)データ、単量体割合の%を示す。凍結融解サイクル1~5、T=3月、-80℃。
【
図47】健康な対象42名において、皮下投与されたラブリズマブ(ALXN1210)の単回投与量400mgを、静脈内投与された単回投与量400mgのラブリズマブ(ALXN1210)または皮下投与されたプラセボと比較した、安全性、忍容性、PK、PDおよび免疫原性を評価するために設計された第I相試験の全体的な設計を示す。
【
図48】すべての対象の治験継続状況に関する概要を提示する。
【
図49】予定時間に対する個々のALXN1210血清濃度を、線形スケールを使用して示すグラフである。
【
図50】予定時間に対する個々のALXN1210血清濃度を、対数線形スケールを使用して示すグラフである。
【
図51】プラセボSC、ALXN1210 SC、およびALXN1210 IVを投与された対象に関する、基準時からの経時的な遊離C5血清濃度における平均(±SD)変化割合を示すグラフである。
【
図52】プラセボSC、ALXN1210 SC、およびALXN1210 IVを投与された対象に関する、基準時からの経時的な総C5血清濃度における平均(±SD)変化割合を示すグラフである。
【
図53】プラセボSC、ALXN1210 SC、およびALXN1210 IVを投与された対象に関する、基準時からの経時的なニワトリ赤血球(cRBC)溶血における平均(±SD)変化割合を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本開示は、高濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含有する安定的水溶液を特徴とする。当該溶液は、例えば補体が関連する障害の治療または予防など、様々な治療応用において使用することができる。限定の意図はないが、例示的な溶液、製剤、治療用キットならびに前述のいずれかを作製する方法および使用する方法が以下に詳述され、および実施例において例示される。
【0061】
I.定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者により普遍的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似した、または均等の任意の方法および組成物を、本発明の実施または検証に使用することができるが、本明細書では好ましい方法および組成物を記載する。
【0062】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により別途明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0063】
「約」という用語は、特に所与の数量または数字に関する場合、プラスマイナス10パーセント(±10%)の内の偏差を包含することを意味する(例えば±5%)。
【0064】
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物活性を明白に有効とすることができる形態にある調製物を指し、当該製剤が投与される対象に対し、著しい毒性がある追加の構成要素を含まない。
【0065】
本明細書で使用される場合、「水性」の医薬組成物は、薬学的な使用に適した組成物であり、この場合において当該水性担体は水である。薬学的使用に適した組成物は、滅菌、均質および/または等張であってもよい。水性医薬組成物は、水性の形態で直接調製されてもよく、および/または凍結乾燥物から再構成されてもよい。
【0066】
「等張」の製剤は、ヒト血液と本質的に同一の浸透圧を有する製剤である。等張製剤は概して約275~350mOsm/kgの浸透圧を有する。「低張性」という用語は、ヒトの血液を下回る浸透圧を有する製剤を記載する。それに応じて、「高張性」という用語は、ヒトの血液を上回る浸透圧を有する製剤を記載するために使用される。等張性は例えば蒸気圧または氷凍結型浸透圧計を使用して測定することができる。「等張化剤」は、製剤を等張性にする化合物である。
【0067】
本明細書で使用される場合、溶液の「浸透圧」は、溶媒1キログラム当たりの溶質のオスモル数である。浸透圧は、溶液中に存在する粒子数の測定単位であり、粒子のサイズまたは重量とは独立している。粒子濃度のみに依存する溶液の特性を使用することによってのみ測定することができる。これらの特性は、蒸気圧降下、氷点降下、沸点上昇および浸透圧であり、これらはまとめて束一的性質と呼称される。
【0068】
「滅菌」製剤は無菌であるか、または生きている全微生物体もしくはその胞子が無い、または実質的に無い。
【0069】
「安定的」製剤は、本明細書で使用される場合、製剤中の抗体が、保存時にその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物活性を本質的に保持する製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当該技術分野で利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)and Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29-90(1993)に概要が記載されている。抗C5抗体製剤の安定性は、選択された期間後の選択された温度で測定することができる。例えば保存後の凝集塊形成の増加は、水性抗C5抗体製剤の不安定性を示すものである。凝集塊の形成に加えて、保存可能期間を通じた元々の透明性、色および臭いの保持は、本明細書に記載される抗C5抗体水溶液の安定性を監視するために利用される指標である。
【0070】
色および/または透明性の目視検査を行ったとき、またはUV光散乱もしくはサイズ排除クロマトグラフィーによって測定したときに、凝集、沈殿および/または変性の兆候が実質的に見られない場合、抗体は、医薬製剤中で、「その物理的安定性」を保持している。
【0071】
「凝集」という用語は、天然のフォールディング済みタンパク質が、非天然構造を含む凝集塊へとアセンブリされることを指す。凝集は、生理学的な非変性条件下であっても発生する可能性があり、そしてしばしば不可逆的であり、不活性で、時には免疫原性で毒性のある非天然の凝集塊を生じさせる。
【0072】
本明細書で使用される場合、「低~検出不可能なレベルの凝集」という文言は、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィー(GP-HPLC)、高速サイズ排除クロマトグラフィー(HPSEC)または静的光散乱(SLS)法により測定されたときに、タンパク質重量の約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、および約0.5%以下の凝集を含むサンプルを指す。
【0073】
所与の時点での化学的安定性は、以下に定義されるように抗体がその生物活性を未だ保持しているとみなされる場合、その抗体は、医薬製剤中で、「その化学的安定性を保持している」。化学的安定性は、抗体の化学的に変化した形態を検出および定量することにより評価することができる。化学的変化には、サイズ改変(例えばクリッピング)、脱アミド、ラセミ化、加水分解、酸化、ベータ脱離、およびジスルフィド交換が含まれ得、それらは公知の技術、例えばサイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、マトリクス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型質量分析(MALDI/TOF MS)および/またはイオン交換クロマトグラフィーなどにより評価することができる。
【0074】
抗体が、医薬製剤中で、その意図された目的に対して生物学的に活性である場合、抗体は、医薬製剤中で、「その生物活性を保持している」。例えば、医薬製剤中の抗体の生物活性が、医薬製剤が調製された時点で呈される生物活性(例えば抗原結合アッセイで決定される)の約30%、約20%、または約10%(アッセイの誤差範囲)以内である場合、生物活性は保持されている。本明細書では、モノクローナル抗体の「生物活性」は、抗原に結合する抗体の能力を指す。抗原に結合し、それによりインビトロまたはインビボで測定することができる、測定可能な生物学的反応を生じさせる抗体をさらに含めることができる。
【0075】
医薬品、例えば抗C5抗体を含む水溶液などの「保存可能期間」は、製品が保存される時間の長さであり、その後に分解が生じる。例えば保存可能期間は、製品の0.1%、0.5%、1%、5%、または10%が分解される時間として定義され得る。
【0076】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つの抗体由来の抗原結合部位(例えばVH/VL領域またはFvまたはCDR)を含むポリペプチドを記載する。抗体は、公知の抗体型を含む。例えば抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、二特異性抗体、またはキメラ抗体であってもよい。抗体は、Fab、Fab’2、ScFv、SMIP、Affibody(登録商標)、ナノボディまたはドメイン抗体であってもよい。抗体はさらに以下のアイソタイプのいずれかであってもよい:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgAsec、IgDおよびIgE。抗体は天然の抗体であってもよく、またはタンパク質改変技術(例えば変異、欠失、置換、非抗体部分との複合体化など)により変更された抗体であってもよい。例えば抗体は、抗体の特性(例えば機能的特性)を(天然型抗体を比較して)変化させる1つまたは複数のバリアントアミノ酸を含んでもよい。例えば半減期、エフェクター機能、および/または患者において抗体への免疫反応に影響を与える、多くのそのような改変が当分野に公知である。抗体という用語は、少なくとも1つの抗体由来の抗原結合部位を含有する人工の、または改変されたポリペプチド構築体も含む。
【0077】
本明細書において使用される場合、「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」という用語は、規定抗原上のエピトープに結合するが、他の抗原には結合しない抗体を指す。典型的には、抗体は、(i)例えば分析物としてC5などの規定の抗原およびリガンドとして抗体を使用して、例えばBIACORE(登録商標)2000表面プラズモン共鳴装置において表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定されたときに、または抗原陽性細胞に対する抗体のスキャッチャード分析により、約10-7 M未満、例えばおよそ10-8M未満、10-9M未満もしくは10-10M未満またはさらに低い平衡解離定数(KD)で結合し、および(ii)所定の抗原または近縁の抗原以外の非特異的抗原(例えばBSA、カゼインなど)への結合のアフィニティよりも少なくとも2倍超高いアフィニティで所定の抗原に結合する。したがって別段の示唆が無い限り、「ヒトC5に特異的に結合する」抗体とは、10-7 M以下、例えばおよそ10-8M未満、10-9M未満もしくは10-10M未満またはさらに低いKDで可溶性または細胞結合型のヒトC5に結合する抗体を指す。
【0078】
本明細書において使用される場合、「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIAcoreシステム(Pharmacia Biosensor AB社、スウェーデン、ウプサラ、およびニュージャージー州ピスカタウェイ)を使用してバイオセンサーマトリクス内のタンパク質濃度の変化を検出することにより、リアルタイムでの生体特異的相互作用の解析が可能な光学現象を指す。詳細については、Jonsson,U.,et al.(1993)Ann.Biol.Clin.51:19-26;Jonsson,U.,et al.(1991)Biotechniques 11:620-627;Johnsson,B.,et al.(1995)J.Mol.Recognit.8:125-131;およびJohnnson,B.,et al.(1991)Anal.Biochem.198:268-277を参照のこと。
【0079】
本明細書において使用される場合、「Koff」という用語は、抗体が、抗体/抗原複合体から解離する解離速度定数を指すことが意図される。
【0080】
本明細書において使用される場合、「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原の相互作用の解離定数を指すことが意図される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用され、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、サル、ウシ、ウマ、ブタなどの哺乳動物を指す。1つの実施形態では、患者は、ヒト患者(例えば補体が関連した状態を有するヒト患者)である。
【0082】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、本明細書に記載される治療的手段を指す。「治療」方法は、疾患もしくは障害または再発疾患もしくは再発障害の1つまたは複数の症状を、治癒させる、遅延させる、重大性を減少させる、または改善させるために、またはそのような治療を行わなかった場合に予測される期間を越えて対象の生存期間を延長させるために、本明細書に開示される組み合わせの対象への投与を行う。
【0083】
本明細書で使用される場合、「効果的な治療」とは、有益な効果、例えば疾患または障害の少なくとも1つの症状の改善などを生じさせる治療を指す。有益な効果は、基準を越える改善、すなわち本方法に従う療法を開始するまえに行われた測定の結果または観察の結果を越える改善の形態であってもよい。効果的な治療とは、疾患または状態の少なくとも1つの症状の軽減を指す場合がある。
【0084】
「有効量」という用語は、望ましい生物学的、治療的、および/または予防的な結果をもたらす剤の量を指す。その結果は、疾患または症状の兆候、症状または原因のうちの1つまたは複数の減少、改善、緩和、減弱、遅延および/または軽減であってもよく、または生物システムの任意の他の望ましい変化であってもよい。1つの例では、「有効量」は、疾患または状態の少なくとも1つの症状を軽減する安定的水溶液の量である。有効量は、1回または複数回の投与で投与されることができる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「誘導」および「誘導相」という用語は相互交換可能に使用され、治療の第一相を指す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「維持」および「維持相」という用語は相互交換可能に使用され、治療の第二相を指す。特定の実施形態では、治療は、臨床利益が観察される限り継続されるか、または管理できない毒性もしくは疾患進行が発生するまで継続される。
【0087】
II.抗C5抗体
本明細書に記載の抗C5抗体は、補体成分のC5(例えばヒトC5)に結合し、C5aとC5bの断片にC5が切断されることを阻害する。上述のとおり、当該抗体は例えば、治療目的に使用される他の抗C5抗体(例えばエクリズマブ)と比較して薬物動態特性も改善されている。
【0088】
本発明での使用に適した抗C5抗体(またはそれから誘導されるVH/VLドメイン)は、当技術分野で周知の方法を使用して生成することができる。あるいは、当技術分野で認識されている抗C5抗体を使用できる。C5に結合する、これら当技術分野で認識されている抗体のいずれかと競合する抗体もまた使用できる。
【0089】
抗C5抗体の例は、それぞれ配列番号14および11に示される配列を有する重鎖と軽鎖を含有するラブリズマブ、またはその抗原結合断片およびそのバリアントである。ラブリズマブ(BNJ441およびALXN1210としても知られる)は、国際特許出願第PCT/US2015/019225号および米国特許第9,079,949号に記載されており、その教示内容は参照により本明細書に援用される。ラブリズマブ、BNJ441およびALXN1210という用語は本書面全体を通じて相互交換可能に使用され得る。ラブリズマブはヒト補体タンパク質のC5に選択的に結合し、補体活性化の間にC5がC5aとC5bに切断されることを阻害する。この阻害により、炎症促進性メディエーターC5aの放出と、細胞溶解性の孔を形成する膜侵襲複合体(MAC)のC5b-9の形成が妨害される一方で、微生物のオプソニン化と免疫複合体のクリアランスに必須である、補体活性化の基部の構成要素または早期の構成要素(例えばC3およびC3b)は保存される。
【0090】
他の実施形態では、抗体は、ラブリズマブの重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含む。したがって1つの実施形態では、抗体は、配列番号12に記載された配列を有するラブリズマブのVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、配列番号8に記載された配列を有するラブリズマブのVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に記載された配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5、および6に記載された配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH領域およびVL領域を含む。
【0091】
別の例示的な抗C5抗体は、それぞれ配列番号20および11で示す配列を有する重鎖および軽鎖を含む抗体BNJ421であるか、またはその抗原結合断片およびバリアントである。BNJ421(ALXN1211としても知られる)は、国際特許出願第PCT/US2015/019225号および米国特許第9,079,949号に記載されているが、その教示は参照により本明細書に援用される。
【0092】
他の実施形態では、抗体は、BNJ421の重鎖および軽鎖のCDRまたは可変領域を含む。したがって1つの実施形態では、抗体は、配列番号12に記載された配列を有するBNJ421のVH領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、配列番号8に記載された配列を有するBNJ421のVL領域のCDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号19、18および3に記載された配列を有する重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインと、それぞれ配列番号4、5、および6に記載された配列を有する軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3ドメインを含む。別の実施形態では、抗体は、それぞれ配列番号12および配列番号8に記載されるアミノ酸配列を有するVH領域およびVL領域を含む。
【0093】
CDRの正確な境界は、異なる方法に従って様々に定義されている。一部の実施形態では、軽鎖可変ドメインまたは重鎖可変ドメイン内のCDRまたはフレームワーク領域の位置は、Kabatらの [(1991)“Sequences of Proteins of Immunological Interest.”NIH Publication No.91-3242,U.S.Department of Health and Human Services,Bethesda,MD]に定義されているとおりであり得る。このような場合には、CDRは、「Kabat CDR(カバットCDR)」(例えば、「Kabat LCDR2」または「Kabat HCDR1」)と称することがある。一部の実施形態では、軽鎖可変領域または重鎖可変領域のCDRの位置は、Chothia et al.(1989)Nature 342:877-883によって規定されているとおりとすることができる。したがって、これらの領域は、「Chothia CDR」(例えば、「Chothia LCDR2」または「Chothia HCDR3」)と称することがある。一部の実施形態では、軽鎖可変領域および重鎖可変領域のCDRの位置は、KabatとChothiaとを(Kabat-Chothia)組み合わせた定義によって規定されているとおりとすることができる。このような実施形態では、これらの領域を「Kabat-ChothiaコンビCDR」と称することがある。Thomasら[(1996)Mol Immunol 33(17/18):1389-1401]は、KabatおよびChothiaの定義に従うCDR境界の特定を例示する。
【0094】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる、重鎖CDR1を含む:GHIFSNYWIQ(配列番号19)。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含むまたはアミノ酸配列からなる、重鎖CDR2を含む:EILPGSGHTEYTENFKD(配列番号18)。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む:QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGHIFSNYWIQWVRQAPGQGLEWMGEILPGSGHTEYTENFKDRVTMTRDTSTSTVYMELSSLRSEDTAVYYCARYFFGSSPNWYFDVWGQGTLVTVSS(配列番号12)。
【0095】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、以下のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む:DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCGASENIYGALNWYQQKPGKAPKLLIYGATNLADGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQNVLNTPLTFGQGTKVEIK(配列番号8)。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、そこから変異ヒトFc定常領域が誘導される天然のヒトFc定常領域の親和性よりも高い親和性を有するヒト新生児Fc受容体(FcRn)に結合する変異ヒトFc定常領域を含むことができる。例えば、Fc定常領域は、そこから変異ヒトFc定常領域が誘導される天然のヒトFc定常領域と比べて、一つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、または8、またはそれ以上)のアミノ酸置換を含むことができる。置換により、相互作用のpH依存性を維持しながら、pH6.0における変異Fc定常領域を含有するIgG抗体のFcRnに対する結合親和性を増加させることができる。抗体のFc定常領域内の一つ以上の置換が、pH6.0におけるFcRnに対するFc定常領域の親和性を増加させる(相互作用のpH依存性を維持しながら)か否かを試験する方法は、当技術分野で公知であり、実施例に例証する。例えば、国際特許出願第PCT/US2015/019225号および米国特許第9,079949号を参照されたく、このそれぞれの開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0097】
FcRnに対する抗体Fc定常領域の結合アフィニティを強化する置換は当分野において公知であり、例えば(1)Dall’Acqua et al.(2006)J Biol Chem 281:23514-23524に記載されているM252Y/S254T/T256Eの三重置換、(2)Hinton et al.(2004)J Biol Chem 279:6213-6216およびHinton et al.(2006)J Immunol 176:346-356に記載されているM428LまたはT250Q/M428Lの置換、および(3)Petkova et al.(2006)Int Immunol 18(12):1759-69に記載されているN434AまたはT307/E380A/N434Aの置換が挙げられる。さらなる置換の組み合わせとしては、P257I/Q311I、P257I/N434HおよびD376V/N434Hが、例えば、Datta-Mannan et al.(2007)J Biol
Chem 282(3):1709-1717に記載されており、その開示はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0098】
一部の実施形態では、変異定常領域(variant constant region)は、EUアミノ酸残基255における、バリンに対する置換を有する。一部の実施形態では、変異定常領域は、EUアミノ酸残基309における、アスパラギンに対する置換を有する。一部の実施形態では、変異定常領域は、EUアミノ酸残基312における、イソロイシンに対する置換を有する。一部の実施形態では、変異定常領域は、EUアミノ酸残基386における置換を有する。
【0099】
一部の実施形態では、変異Fc定常領域は、それの由来であるネイティブ定常領域と比べて、30以下(例えば、29個、28個、27個、26個、25個、24個、23個、22個、21個、20個、19個、18個、17個、16個、15個、14個、13個、12個、11個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個)のアミノ酸の置換、挿入または欠失を含む。一部の実施形態では、変異Fc定常領域は、以下からなる群から選択される一つ以上のアミノ酸置換を含む:M252Y、S254T、T256E、N434S、M428L、V259I、T250IおよびV308F。一部の実施形態では、変異ヒトFc定常領域は、それぞれEUナンバリングで、428位にメチオニンと434位にアスパラギンを含む。一部の実施形態では、変異Fc定常領域は、例えば、米国特許第8,088,376号に記載される428L/434Sの二つの置換を含む。
【0100】
いくつかの実施形態では、これらの変異の正確な位置は、抗体エンジニアリングによって天然のヒトFc定常領域位置からシフトされてもよい。例えば、IgG2/4キメラFcで使用される場合、428L/434Sの二つの置換は、ラブリズマブ(BNJ441)に見られてその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,079,949号に記載されているM429LおよびN435S変異体のように、429Lおよび435Sに対応し得る。
【0101】
一部の実施形態では、変異定常領域は、ネイティブヒトFc定常領域と比べて、アミノ酸位置237、238、239、248、250、252、254、255、256、257、258、265、270、286、289、297、298、303、305、307、308、309、311、312、314、315、317、325、332、334、360、376、380、382、384、385、386、387、389、424、428、433、434、または436(EUナンバリング)における置換を含む。一部の実施形態では、置換は、237位におけるグリシンに対するメチオニン;238位におけるプロリンに対するアラニン;239位におけるセリンに対するリシン;248位におけるリシンに対するイソロイシン;250位におけるトレオニンに対する、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、メチオニン、グルタミン、セリン、バリン、トリプトファン、またはチロシン;252位におけるメチオニンに対する、フェニルアラニン、トリプトファン、またはチロシン;254位におけるセリンに対するトレオニン;255位におけるアルギニンに対するグルタミン酸;256位におけるトレオニンに対する、アスパラギン酸、グルタミン酸、またはグルタミン;257位におけるプロリンに対する、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、セリン、トレオニン、またはバリン;258位におけるグルタミン酸に対するヒスチジン;265位におけるアスパラギン酸に対するアラニン;270位におけるアスパラギン酸に対するフェニルアラニン;286位におけるアスパラギンに対する、アラニンまたはグルタミン酸;289位におけるトレオニンに対するヒスチジン;297位におけるアスパラギンに対するアラニン;298位におけるセリンに対するグリシン;303位におけるバリンに対するアラニン;305位におけるバリンに対するアラニン;307位におけるトレオニンに対する、アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリン、トリプトファン、またはチロシン、308位におけるバリンに対する、アラニン、フェニルアラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、またはトレオニン;309位におけるロイシンまたはバリンに対する、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、もしくはアルギニン;311位におけるグルタミンに対する、アラニン、ヒスチジン、またはイソロイシン;312位におけるアスパラギン酸に対する、アラニンまたはヒスチジン;314位におけるロイシンに対する、リシンまたはアルギニン;315位におけるアスパラギンに対する、アラニンまたはヒスチジン;317位におけるリシンに対するアラニン;325位におけるアスパラギンに対するグリシン;332位におけるイソロイシンに対するバリン;334位におけるリシンに対するロイシン;360位におけるリシンに対するヒスチジン;376位におけるアスパラギン酸に対するアラニン;380位におけるグルタミン酸に対するアラニン;382位におけるグルタミン酸に対するアラニン;384位におけるアスパラギンまたはセリンに対するアラニン;385位におけるグリシンに対するアスパラギン酸またはヒスチジン;386位におけるグルタミンに対するプロリン;387位におけるプロリンに対するグルタミン酸;389位におけるアスパラギンに対する、アラニンまたはセリン;424位におけるセリンに対するアラニン;428位におけるメチオニンに対する、アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、またはチロシン;433位におけるヒスチジンに対するリシン;434位におけるアスパラギンに対するアラニン、フェニルアラニン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、またはチロシン;および、436位におけるチロシンまたはフェニルアラニンに対するヒスチジン、からなる群からのために選択され、すべてEUナンバリングによる。
【0102】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するための抗C5抗体に適したものは、配列番号14で示すアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、および/または配列番号11で示すアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。あるいは、一部の実施形態では、本明細書に記載の方法で使用するための抗C5抗体は、配列番号20で示すアミノ酸配列を含む重鎖ポリペプチド、および/または配列番号11で示すアミノ酸配列を含む軽鎖ポリペプチドを含む。
【0103】
1つの実施形態では、抗体は、少なくとも0.1(例えば少なくとも0.15、0.175、0.2、0.25、0.275、0.3、0.325、0.35、0.375、0.4、0.425、0.45、0.475、0.5、0.525、0.55、0.575、0.6、0.625、0.65、0.675、0.7、0.725、0.75、0.775、0.8、0.825、0.85、0.875、0.9、0.925、0.95または0.975)nMのアフィニティ解離定数(KD)で、pH7.4および25℃(または別手段により生理学的条件下)で、C5に結合する。一部の実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片のKDは、1nM以下(例えば0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3または0.2nM以下)である。
【0104】
他の実施形態では、[(pH6.0、℃でのC5に対する抗体のKD)/(pH7.4、25℃でのC5に対する抗体のKD)]は、21よりも大きい(例えば22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、 5000、5500、6000、6500、7000、7500または8000よりも大きい)。
【0105】
抗体がタンパク質抗原に結合しているか否か、および/または、タンパク質抗原に対する抗体の親和性を決定する方法は、当技術分野において公知である。例えば、タンパク質抗原への抗体の結合は、ウェスタンブロット、ドットブロット、表面プラズモン共鳴(SPR)法(例えば、BIAcoreシステム;Pharmacia Biosensor AB社、スウェーデン、ウプサラおよびニュージャージー州ピスカタウェイ)または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの様々な技術を使用して検出および/または定量化することができる。例えば、Benny K.C.Lo(2004)“Antibody Engineering:Methods and Protocols,”Humana Press(ISBN:1588290921);Johne et al.(1993)J Immunol Meth 160:191-198;Jonsson et al.(1993)Ann Biol Clin 51:19-26;およびJonsson et al.(1991)Biotechniques 11:620-627を参照のこと。さらにアフィニティ(例えば解離および会合定数)の測定方法を、実施例に記載する。
【0106】
本明細書において使用される場合、「Ka」という用語は、抗原に抗体が会合する速度定数を指す。「kd」という用語は、抗体/抗原複合体から抗体が解離する速度定数を指す。そして「KD」という語は、抗体-抗原の相互作用の平衡解離定数を指す。平衡解離定数は、運動速度定数KD = ka/kdの比から推定される。そのような決定は、25℃または37℃で測定されることが好ましい(実施例を参照のこと)。例えば、ヒトC5に結合する抗体の動態は、抗体を固定する抗Fc抗体捕捉法を使用して、BIAcore 3000機器上の表面プラズモン共鳴(SPR)を介して、pH8.0、7.4、7.0、6.5および6.0で決定することができる。
【0107】
1つの実施形態では、抗C5抗体またはその抗原結合断片は、C5タンパク質(例えばヒトC5タンパク質)のC5aおよび/もしくはC5bの活性断片の生成または活性を阻害する。この阻害作用を通じて、抗体は、例えばC5aの炎症促進性効果、および細胞表面でのC5b-9膜侵襲複合体(MAC)の形成などを阻害する。
【0108】
本明細書に記載される特定の抗体がC5開裂を阻害するか否かを決定する方法は当分野に公知である。ヒト補体成分C5の阻害は、対象の体液中の補体の細胞溶解能を低下させることができる。体液中に存在する補体の細胞溶解能のかかる低下は、例えば、Kabat and Mayer(eds),“Experimental Immunochemistry,2nd Edition,”135-240,Springfield,IL,CC Thomas(1961),pages 135-139に記載される溶血性アッセイなどの従来の溶血性アッセイ、または、例えば、Hillmen et al.(2004)N Engl J Med 350(6):552によって記載されるニワトリ赤血球の溶血法等の従来の種々のアッセイ等である、当技術分野で周知の方法によって測定することができる。候補化合物がヒトC5の形態C5aおよびC5bへの切断を阻害するかどうかを判断する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Evans et al.(1995)Mol Immunol 32(16):1183-95に記載されている。例えば、体液中のC5aおよびC5bの濃度および/または生理学的活性は、当技術分野において周知の方法によって測定することができる。C5bについては、溶血性アッセイまたは本明細書に記載される溶解性C5b-9に対するアッセイを使用することができる。当技術分野で公知の他のアッセイも使用することができる。これらのアッセイ、または他の適切なアッセイ型を使用して、ヒト補体成分C5を阻害することができる候補物質をスクリーニングすることができる。
【0109】
例えば限定されないがELISAなどの免疫技術を使用して、C5および/またはその分割産物のタンパク質濃度を測定し、抗C5抗体またはその抗原結合断片が、C5が生物活性産物へ転換することを阻害する能力を決定することができる。一部の実施形態では、C5aの生成が測定される。一部の実施形態では、C5b-9ネオエピトープ特異的抗体が使用され、終末補体の形成が検出される。
【0110】
溶血アッセイを使用して、抗C5抗体またはその抗原結合断片の補体活性化に対する阻害活性を決定することができる。インビトロの血清被験溶液における抗C5抗体またはその抗原結合断片の古典的補体経路-介在性溶血に対する効果を決定するために、溶血素でコーティングされたヒツジの赤血球、または抗ニワトリ赤血球抗体で感受性化させたニワトリの赤血球を標的細胞として使用する。溶血割合は、阻害剤の非存在下で発生する溶解を100%の溶解とすることにより標準化される。一部の実施形態では、例えばWieslab(登録商標)Classical Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL CP310、Euro-Diagnostica社、スウェーデン)において利用される場合、古典的補体経路はヒトIgM抗体により活性化される。簡潔に述べると、被験血清を抗C5抗体またはその抗原結合断片とともにヒトIgM抗体の存在下でインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、抗C5b-9抗体と複合体化された酵素、および蛍光発生基質と、この混合物を接触させ、適切な波長の吸光度を測定することにより測定される。対照として、被験血清は、抗C5抗体またはその抗原結合断片の非存在下でインキュベートされる。一部の実施形態では、被験血清は、C5ポリペプチドを用いて再構成されたC5欠損血清である。
【0111】
抗C5抗体またはその抗原結合断片の代替的経路-介在性溶血に対する効果を決定するために、非感受性のウサギまたはモルモットの赤血球を標的細胞として使用することができる。一部の実施形態では、血清被験溶液は、C5ポリペプチドを用いて再構成されたC5欠損血清である。溶血割合は、阻害剤の非存在下で発生する溶解を100%の溶解とすることにより標準化される。一部の実施形態では、例えばWieslab(登録商標)Alternative Pathway Complement Kit(Wieslab(登録商標)COMPL AP330、Euro-Diagnostica社、スウェーデン)において利用される場合、代替的補体経路はリポ多糖分子により活性化される。簡潔に述べると、被験血清を抗C5抗体またはその抗原結合断片とともにリポ多糖体の存在下でインキュベートする。生成されるC5b-9の量は、抗C5b-9抗体と複合体化された酵素、および蛍光発生基質と、この混合物を接触させ、適切な波長の蛍光を測定することにより測定される。対照として、被験血清は、抗C5抗体またはその抗原結合断片の非存在下でインキュベートされる。
【0112】
一部の実施形態では、C5活性またはその阻害は、CH50eqアッセイを使用して定量される。CH50eqアッセイは、血清中の総古典的補体活性を測定する方法である。この検査は溶解アッセイであり、古典的補体経路のアクチベーターとして抗体感受性化赤血球、および様々な希釈の被験血清を使用して、50%の溶解(CH50)を得るために必要とされる量を決定する。溶血割合は例えば分光光度計を使用して決定することができる。CH50eqアッセイは、終末補体複合体(TCC:terminal complement complex)形成の間接的な測定尺度を提供し、TCCそれ自体は、測定される溶血の直接的な原因でなる。
【0113】
このアッセイは公知であり、当分野の当業者により普遍的に実施されている。簡潔に述べると、古典的補体経路を活性化させるために未希釈の血清サンプル(例えば再構成済みヒト血清サンプル)を、抗体感受性化赤血球が入ったマイクロアッセイウェルに添加し、TCCを発生させる。次に、捕捉試薬(例えばTCCの1つまたは複数の構成要素に結合する抗体)でコーティングされたマイクロアッセイウェル中で活性化された血清を希釈する。活性化サンプル中に存在するTCCは、マイクロアッセイウェルの表面を覆うモノクローナル抗体に結合する。ウェルを洗浄し、検出可能なように標識され、結合したTCCを認識する検出試薬を各ウェルに添加する。検出可能な標識は、例えば蛍光標識または酵素標識であってもよい。アッセイの結果は、1ミリリットル当たりのCH50単位当量(CH50 U Eq/mL)で表される。
【0114】
例えば終末補体活性に付随した場合の阻害は、例えば溶血アッセイまたはCH50eqアッセイにおける終末補体活性における、類似条件下および等モル濃度での対照抗体(またはその抗原結合断片)の効果と比較して、少なくとも5%(例えば少なくとも6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55または60%)の減少を含む。本明細書において使用される場合、実質的な阻害とは、少なくとも40%(例えば少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%以上)の所与の活性(例えば終末補体活性)の阻害を指す。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、エクリズマブのCDR(すなわち配列番号1~6)と比較して1つまたは複数のアミノ酸置換を含むが、溶血アッセイまたはCH50eqアッセイにおけるエクリズマブの補体阻害活性の少なくとも30%(例えば少なくとも31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90または95%)を保持している。
【0115】
本明細書に記載される抗C5抗体は、少なくとも20日(例えば少なくとも21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54または55日)のヒトにおける血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいて少なくとも40日の血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいておよそ43日の血清半減期を有する。別の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体は、ヒトにおいて39~48日の血清半減期を有する。抗体の血清半減期を測定する方法は当分野に公知である。一部の実施形態では、本明細書に記載される抗C5抗体またはその抗原結合断片は、例えば実施例に記載されるマウスモデル系(例えばC5欠損/NOD/SCIDマウスモデル系またはhFcRnトランスジェニックマウスモデル系)の内の1つにおいて測定されたときに、エクリズマブの血清半減期よりも少なくとも20%(例えば少なくとも30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150、175、200、250、300、400、500%)高い血清半減期を有する。
【0116】
1つの実施形態では、抗体は、本明細書に記載される抗体と同じC5上のエピトープとの結合に競合するか、および/または本明細書に記載される抗体と同じC5上のエピトープに結合する。二つ以上の抗体に言及して「同じエピトープに結合する」という語は、所与の方法によって決定されるように、抗体がアミノ酸残基のうちの同一セグメントに結合することを意味する。抗体が、本明細書に記載される抗体と「C5上の同じエピトープ」に結合しているか否かを決定する技術としては、例えば、エピトープの原子解析が提供される抗原抗体複合体の結晶のX線解析などのエピトープマッピング法、および水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)が挙げられる。その他の方法には、抗原配列内のアミノ酸残基の修飾に起因する結合の喪失が、エピトープ成分の表れとしばしばみなされるものである、ペプチド抗原断片または抗原の突然変異型のバリエーションに対する抗体の結合を監視することがある。さらに、エピトープマッピングのための計算的なコンビナトリアル法も使用することができる。これらの方法は、コンビナトリアルファージディスプレイペプチドライブラリから特定の短いペプチドをアフィニティ単離する、関心の抗体の能力に依存している。同じVHおよびVLまたは同じCDR1、2および3配列を有する抗体は、同じエピトープに結合することが予想される。
【0117】
「標的との結合に別の抗体と競合する」抗体は、他の抗体の該標的への結合を阻害(一部または完全に)する抗体を指す。二つの抗体が、標的への結合に関して相互に競合するか否か、すなわち、一方の抗体が、もう一方の抗体の標的への結合を阻害するかどうか、そしてどの程度まで阻害するかを、公知の競合実験を使用して決定することができる。特定の実施形態では、抗体は、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%だけ、別の抗体と競合して、該別の抗体の標的への結合を阻害する。阻害または競合のレベルは、どの抗体が「阻害している抗体」(すなわち、最初に標的と共にインキュベートされた低温抗体)であるかによって、異なるものでありうる。競合抗体は、同じエピトープ、オーバーラップするエピトープ、または隣接し合うエピトープ(例えば、立体障害から明らかなように)に結合する。
【0118】
本明細書に記載され、本明細書に記載される方法で使用される抗C5抗体、またはその抗原結合断片は、当技術分野において認識される様々な技術を使用して生成することができる。モノクローナル抗体は、当業者によく知られている様々な技術によって得られ得る。簡潔に述べると、所望の抗原で免疫化された動物由来の脾臓細胞は、通常、骨髄腫細胞との融合によって不死化される(Kohler & Milstein,Eur.J.Immunol.6:511-519(1976)を参照されたい)。代替的な不死化法としては、エプスタイン・バーウイルス、癌遺伝子、またはレトロウイルス、または当技術分野で周知の他の方法を用いた形質転換が挙げられる。単一の不死化細胞から生じるコロニーは、抗原に対して所望の特異性および親和性をもつ抗体の産生のためにスクリーニングされ、かかる細胞によって産生されるモノクローナル抗体の産生量は、脊椎動物宿主の腹膜腔への注射を含めた様々な技術によって増強されてもよい。あるいは、Huse,et al.,Science 246:1275-1281(1989)により概説される一般的なプロトコルに従って、ヒトB細胞からのDNAライブラリーをスクリーニングすることによって、モノクローナル抗体またはその結合断片をコードするDNA配列を単離してもよい。
【0119】
III.高濃縮抗C5抗体溶液
本明細書において、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)を含有する安定的水溶液が提供される。本明細書に記載される水溶液は、例えばPNHまたはaHUSなどの補体が関連した障害の治療または予防のための対象への投与用など、滅菌された医薬グレードの組成物であってもよい。本明細書に記載の溶液は、標準的な方法に従って製剤化することができる。医薬の製剤化は充分に確立された技術であり、例えばGennaro(2000)“Remington:The Science and Practice of Pharmacy,”20th Edition,Lippincott,Williams & Wilkins(ISBN:0683306472);Ansel et al.(1999)“Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,”7th Edition,Lippincott Williams & Wilkins Publishers(ISBN:0683305727);およびKibbe(2000)“Handbook of Pharmaceutical Excipients American Pharmaceutical Association,”3rd Edition(ISBN:091733096X)に詳述されている。本明細書に記載の高濃度抗体溶液に適した製剤化方法は、実施例において例示されている。
【0120】
本明細書に記載される水溶液は、例えばラブリズマブなどのヒト補体成分C5に結合する抗体を高濃度で含む。かかる溶液は本明細書において「高濃度抗体溶液」と呼称される場合がある。本明細書において使用される場合、水溶液における抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の「高濃度」は、少なくとも、または40mg/mL以上(例えば少なくとも、または45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295もしくは300mg/mL以上)の抗体濃度である。1つの実施形態では、抗C5抗体は、100mg/mLを越える(例えば105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190または195mg/mLを越える)濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、抗C5抗体は、200mg/mLを越える(例えば200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290または295mg/mLを越える)濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、抗C5抗体は、300mg/mLを越える濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、抗体は、例えば40mg/mL~200mg/mL、50mg/mL~200mg/mL、60mg/mL~200mg/mL、70mg/mL~200mg/mL、80mg/mL~200mg/mL、90mg/mL~200mg/mL、100mg/mL~200mg/mL、110mg/mL~200mg/mL、120mg/mL~200mg/mL、130mg/mL~200mg/mL、140mg/mL~200mg/mL、150mg/mL~200mg/mL、40mg/mL~100mg/mL、50mg/mL~100mg/mL、60mg/mL~100mg/mL、70mg/mL~100mg/mL、80mg/mL~100mg/mL、90mg/mL~100mg/mL、40mg/mL~150mg/mL、50mg/mL~150mg/mL、60mg/mL~150mg/mL、70mg/mL~150mg/mL、80mg/mL~150mg/mL、90mg/mL~150mg/mL、100mg/mL~150mg/mL、110mg/mL~150mg/mL、120mg/mL~150mg/mL、40mg/mL~50mg/mL、40mg/mL~250mg/mL、50mg/mL~250mg/mL、60mg/mL~250mg/mL、70mg/mL~250mg/mL、80mg/mL~250mg/mL、90mg/mL~250mg/mL、100mg/mL~250mg/mL、110mg/mL~250mg/mL、120mg/mL~250mg/mL、130mg/mL~250mg/mL、140mg/mL~250mg/mL、150mg/mL~250mg/mL、160mg/mL~250mg/mL、170mg/mL~250mg/mL、180mg/mL~250mg/mL、190mg/mL~250mg/mL、200mg/mL~250mg/mL、200mg/mL超(例えば少なくとも201mg/mL)~250mg/mL、または200mg/mL超(例えば201 mg/mL以上)~300mg/mLの濃度で溶液中に存在する。
【0121】
本明細書に記載されるように、および実施例において例示されるように、本発明の水溶液は、著しい物理的および化学的安定性ならびに機能的安定性を伴い当該水溶液中で製剤化された抗C5抗体を提供する。例えば本明細書に記載される製剤は、溶液中に高濃度で存在する抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の構造的完全性を維持することができる。1つの実施形態では、溶液は、2~8℃(例えば4℃)での保存に適している。別の実施形態では、溶液は、0℃を下回る温度(例えば-20℃または-80℃)での保存用に製剤化される。別の実施形態では、溶液は、3年以内(例えば1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、1年、1年半、2年、2年半、または3年)、2~8℃(例えば4℃)での保存用に製剤化される。別の実施形態では、溶液は、少なくとも1年、2年または3年の2~8℃(例えば4℃)での保存に適している。
【0122】
本明細書に記載される実施例において例示されるように、本明細書に記載の溶液は、およそ2℃~8℃で2年以内、主に単量体型で、およそ100mg/mLに抗C5抗体を維持することに適している。本明細書において使用される場合、本発明の水溶液において高濃度で製剤化された抗C5抗体は、当該溶液中に存在する抗体が、例えばサイズ排除クロマトグラフィー高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC、例えばゲル浸透HPLC)により測定されたときに、少なくとも95%(例えば少なくとも95.1、95.2、95.3、95.4、95.5、95.6、95.7、95.8、95.9、96、96.1、96.2、96.3、96.4、96.5、96.6、96.7、96.8、96.9、97、97.1、97.2、97.3、97.4、97.5、97.6、97.7、97.8、97.9、98、98.1、98.2、98.3、98.4、98.5、98.6、98.7、98.8、98.9、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8または99.9%以上)が単量体である場合、「主に単量体」であるか、または「主に単量体型」である。1つの実施形態では、本明細書に記載される溶液中の抗C5抗体は、少なくとも1か月(例えば少なくとも2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月以上)、およそ2℃~8℃で保存(例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10℃での保存)された後、主に単量体で維持されることができる。
【0123】
本明細書に記載される溶液のいずれかの1つの実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、SEC-HPLC(例えばゲル浸透HPLC)により決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも6カ月間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも9カ月間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも1年間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも18カ月間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。別の実施形態では、抗C5抗体は、SEC-HPLCにより決定されたとき、2℃~8℃で少なくとも2年間の保存期間中に少なくとも95(例えば少なくとも96、97、98または99)%の単量体を保持する。
【0124】
別の実施形態では、溶液中の抗体の5%(例えば4.9.4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1%)未満が、オリゴマーであり、凝集し、および/または断片化している。本明細書において使用される場合、抗体断片化とは、全抗体よりも低い分子量を有する不適切に組み立てられた全抗体の構成物質または分解産物を指す。そのような断片化形態としては限定されないが、遊離単量体型の重鎖ポリペプチド、二量体型の重鎖ポリペプチド(例えばジスルフィド結合した重鎖ポリペプチド)、1つの軽鎖ポリペプチドに結合した二量体型の重鎖ポリペプチド、1つの軽鎖ポリペプチドに結合した単量体型の重鎖ポリペプチド、または軽鎖ポリペプチドもしくは重鎖ポリペプチドのさらなる分解産物または断片が挙げられる。一部の実施形態では、抗体の2%(例えば1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1%)未満が、少なくとも1か月(例えば少なくとも2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月以上)、2℃~8℃で保存された後に凝集する。一部の実施形態では、抗体の1%(0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2または0.1%)未満が、少なくとも1か月(例えば少なくとも2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月以上)、2℃~8℃で保存された後に断片化する。単量体型抗体の量を決定する方法、ならびに溶液中に存在する抗C5抗体のオリゴマー型、凝集型または断片化型の量を決定する方法は本明細書に記載され、実施例において例示される。例えば当業者であれば、サイズ排除クロマトグラフィー高速液体クロマトグラフィー法(SEC-HPLC、例えばゲル浸透HPLC)、静的光散乱法(SLS)、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、円偏光二色性分析(CD)、尿素誘導タンパク質アンフォールディング法、内因性トリプトファン蛍光法、非還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)および示差走査熱量測定法(DSC)などを使用し、所与の溶液中に存在する全抗体、断片化抗体、アンフォールディング中間体抗体および/または凝集抗体の割合を決定することができる。
【0125】
本明細書に記載される溶液のいずれかの1つの実施形態では、溶液中の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)の5%未満が、SEC-HPLC(例えばゲル浸透HPLC)により決定されたときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の4%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の3%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の2%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。別の実施形態では、溶液中の抗C5抗体の1%未満が、SEC-HPLCにより決定されるときに、凝集されている。
【0126】
本明細書に記載され、実施例において例示されるように、抗C5を含有する本発明溶液は、少なくとも1か月(例えば少なくとも2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月、25か月、26か月、27か月、28か月、29か月、30か月、31か月、32か月、33か月、34か月、35か月、36か月以上)、2℃~8℃で保存された後にその生物活性/機能的活性(例えばヒトC5に結合する能力)を少なくとも90%(例えば91、92、93、94、95、96、97、98、99またはさらには100%)、保持することができる。
【0127】
別の実施形態では、本明細書に記載の溶液中に存在する抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、少なくとも1か月(例えば少なくとも2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、14か月、15か月、16か月、17か月、18か月、19か月、20か月、21か月、22か月、23か月、24か月、25か月、26か月、27か月、28か月、29か月、30か月、31か月、32か月、33か月、34か月、35か月、36か月以上)、2℃~8℃で保存された後に、その溶血阻害活性を少なくとも90%(例えば91、92、93、94、95、96、97、98、99またはさらには100%)、保持することができる。本発明溶液中の抗体がその活性を保持しているか否かを決定するための適切な溶血アッセイ法は、本明細書に記載され、および当分野に公知であり、例えばトリまたはブタの赤血球を使用したインビトロ溶血アッセイがある。ヒト補体成分C5に結合する抗体調製物の能力を評価するための適切な方法は当分野に公知であり、本明細書に記載される。
【0128】
本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも6カ月間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも9カ月間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも1年間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも18カ月間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも2年間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも3年間、そのC5結合活性を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。
【0129】
本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも9カ月間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも6カ月間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも1年間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも18カ月間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも2年間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。本明細書に記載される溶液のいずれかの別の実施形態では、抗C5抗体(例えばラブリズマブ)は、保存前の抗C5抗体に相当する参照抗C5抗体と比較して、2℃~8℃で少なくとも3年間、その溶血阻害能力を少なくとも80(例えば少なくとも81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、または99)%維持する。
【0130】
本明細書に記載の水溶液は、1つまたは複数の普遍的な剤(例えば緩衝剤、糖類もしくは単糖類、塩類、界面活性剤、可溶化剤、希釈剤、結合剤、安定剤、塩類、親油性溶媒、アミノ酸、キレーターおよび/または保存剤などの賦形剤および/または添加剤を1つまたは複数)を含有することができる。
【0131】
1つの実施形態では、水溶液は、1つまたは複数の緩衝剤を含む。本明細書で使用される場合、「緩衝剤」という用語は、水溶液に添加されたとき、酸またはアルカリの添加によるpHの変動、または溶媒を用いた希釈時のpHの変動から溶液を保護することができる1つまたは複数の成分を指す。1つの実施形態では、溶液は、少なくとも1つまたは複数の緩衝剤を含む。洗浄溶液中に含めることができる典型的な緩衝剤の非限定的な例としては、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、ビス-Tris、ビス-Trisプロパン、ヒスチジン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、ギ酸塩、酢酸塩、MES(2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸)、リン酸塩、HEPES(4-2-ヒドロキシエチル-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、クエン酸塩、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、TAPS(3{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸)、Bicine(N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン)、Tricine(N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン)、TES(2-{[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸)、PIPES(ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)、カコジル酸塩(ジメチルアルシン酸)SSC(塩類クエン酸ナトリウム)およびリン酸ナトリウムが挙げられる。
【0132】
別の実施形態では、緩衝剤は、アミノ酸である。アミノ酸は、例えばヒスチジン(例えばL-ヒスチジン)、セリン(例えばL-セリン)およびグリシン(例えばL-グリシン)からなる群から選択されるアミノ酸であってもよい。別の実施形態では、溶液は、2種以上の緩衝剤を含む。特定の実施形態では、緩衝剤は、リン酸ナトリウムである。1つの実施形態では、本発明溶液は、緩衝剤として遊離アミノ酸を含まない。別の実施形態では、本発明溶液は、緩衝剤として1つの遊離アミノ酸(例えばヒスチジン)のみを含む。別の実施形態では、本発明溶液は、例えばセリンおよびヒスチジンなど2つ以上(例えば2、3、4、5、6、または7以上)の異なるアミノ酸を緩衝剤として含んでもよい。
【0133】
緩衝剤の濃度は、所望のpHを維持するのに充分な量であり、および例えば製剤の等張性を維持するために変化させてもよい。非経口製剤に採用される標準的な緩衝剤の典型的な濃度は、以下に見出すことができる:Pharmaceutical Dosage Form:Parenteral Medications,Volume 1,2nd
Edition,Chapter 5,p.194,De Luca and Boylan,“Formulation of Small Volume Parenterals”,Table 5:Commonly used additives in
Parenteral Product。1つの実施形態では、製剤中の1つまたは複数の緩衝剤の濃度は、両端を含み、約10mM~300mMである。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~200mMの濃度で少なくとも1つの緩衝剤を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の水溶液は、少なくとも10mM(例えば少なくとも15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300mM以上)の濃度で緩衝剤を含む。別の実施形態では、水溶液は、約10mM~50mM、15mM~50mM、20mM~50mM、25mM~50mM、30mM~50mM、40mM~50mM、10mM~100mM、15mM~100mM、20mM~100mM、25mM~100mM、30mM~100mM、40mM~100mM、10mM~150mM、15mM~150mM、20mM~150mM、25mM~150mM、30mM~150mM、40mM~150mM、50mM~100mM、60mM~100mM、70mM~100mM、80mM~100mM、50mM~150mM、60mM~150mM、70mM~150mM、80mM~150mM、90mM~150mM、100mM~150mM、10mM~200mM、15mM~200mM、20mM~200mM、25mM~200mM、30mM~200mM、40mM~200mM、50mM~200mM、60mM~200mM、70mM~200mM、80mM~200mM、90mM~200mM、100mM~200mM、150mM~200mM、10mM~250mM、15mM~250mM、20mM~250mM、25mM~250mM、30mM~250mM、40mM~250mM、50mM~250mM、60mM~250mM、70mM~250mM、80mM~250mM、90mM~250mM、100mM~250mM、150mM~250mMまたは200mM~250mMの濃度で緩衝剤を含む。別の実施形態では、製剤中の緩衝剤の濃度は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、90mM、95mMまたは約100mMである。別の実施形態では、緩衝剤は、20mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、25mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、緩衝剤は、50mM以上の濃度で溶液中に存在する。本発明溶液が2つ以上(例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10以上)の異なる緩衝剤を含む実施形態において、その2つ以上の緩衝剤のそれぞれが独立して、例えば上述の濃度のいずれか1つの濃度で存在し得る。
【0134】
1つの実施形態では、水溶液は、中性のpHを有するか、または中性のpHを有するように調製され得る。本明細書において使用される場合、「中性のpH」は、両端を含み、7~8のpHである。従って本明細書において使用される場合、中性のpHは、例えば7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9および8.0など、特定のpH値を含む。一部の実施形態では、中性のpHは、少なくともpH7(例えば少なくともpH7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.7または7.9)であるが、pH8未満(例えばpH7.9、7.8、7.7、7.6、7.5、7.4、7.3、7.2または7.1未満)である。したがって一部の実施形態では、中性のpHは、例えば少なくともpH7であるが、pH7.5未満であってもよい。一部の実施形態では、中性のpHは、pH7~pH7.5であってもよい。一部の実施形態では、中性のpHは、pH7~pH7.2であってもよい。別の実施形態では、溶液のpHは、7.0~7.4である。別の実施形態では、溶液のpHは、7.2~7.8である。別の実施形態では、溶液のpHは、7.2~7.6である。一部の実施形態では、中性のpHは、例えばpH7であってもよい。当分野の当業者であればさらに、ヒトの血液(例えば健康な対象からのヒトの血液)は、本明細書に規定される中性pHを有すること、例えばヒトの血液のpHは、およそpH7.35~pH7.45であると認識するであろう。例えば、Boron and Boulpaep(2003)“Medical physiology:a cellular and molecular approach,”W.B.Saunders,New York(ISBN:0721632564)を参照のこと。一部の実施形態では、本明細書に記載される高濃縮抗体溶液のpHは、両端を含み、およそ6.4~7.5(例えばおよそ6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6または7.7)である。1つの実施形態では、溶液のpHは、7.2~7.6である。特定の実施形態では、溶液のpHは、7.4である。
【0135】
1つの実施形態では、溶液は、例えばアニオン性、カチオン性、または非イオン性の界面活性剤などの界面活性剤を1つまたは複数、含む。本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、疎水性部分(例えばアルキル鎖)と親水性部分(例えばカルボキシル基およびカルボン酸基)の両方を含有する表面活性分子を指す。本発明製剤における使用に適した界面活性剤としては限定されないが、脂肪酸エステル(例えばモノカプリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン)、ソルビタントリオレイン酸塩、グリセリン脂肪酸エステル(例えばモノカプリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばモノステアリン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリル)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンモノパルミチン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレントリステアリン酸ソルビタン)、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレンテトラステアリン酸ソルビトール、ポリオキシエチレンテトラオレイン酸ソルビトール)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えばポリエチレンモノステアリン酸グリセリル)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えばポリエチレンジステアリン酸グリコール)、ポリオキシエチレンアルキルエステル(例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油(例えばポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油)、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体(例えばポリオキシエチレンソルビトールミツロウ)、ポリオキシエチレンラノリン誘導体(例えばポリオキシエチレンラノリン)、およびポリオキシエチレン脂肪酸アミド(例えばポリオキシエチレンステアリン酸アミド);C12-C18アルキル硫酸塩(例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム)、平均で2~4モルのエチレンオキシド単位が付加されたポリオキシエチレンC10-C18アルキルエーテル硫酸塩(例えばポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、およびC10-C18アルキルスルホコハク酸エステル塩(例えばラウリルスルホコハク酸ナトリウムエステル);ならびに例えばレシチン、グリセロリン脂質、スフィンゴリン脂質などの天然界面活性剤(例えばスフィンゴミエリン)、およびC12-C18脂肪酸のスクロースエステルが挙げられる。
【0136】
1つの実施形態では、製剤中の界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。特定の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、例えば、ポリソルベート20、40、60、80、またはそれらのうちの1つまたは複数の組み合わせである。1つの実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート80(Tween 80)である。別の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート60である。別の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート40である。別の実施形態では、製剤中の界面活性剤は、ポリソルベート20(Tween 20)である。
【0137】
製剤に添加される界面活性剤の量は、製剤化された抗体の凝集を減少させるのに充分な量であり、および/または製剤中の微粒子形成を最小化するのに充分な量である。例えば界面活性剤は、約0.001%~約1%、または約0.001%~約0.5%、または約0.01%~約0.2%の量で製剤中に存在し得る。1つの実施形態では、水溶液は、少なくとも、またはおよそ、0.001(例えば少なくとも、またはおよそ0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.4、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、または0.5以上)%の濃度で界面活性剤を含有する。別の実施形態では、水溶液は、0.2(例えば0.19、0.18、0.17、0.16、0.15、0.14、0.13、0.12、0.11、0.10、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002または0.001)%以下の薬学的に許容可能な界面活性剤を含有する。
【0138】
別の実施形態では、製剤は、約0.001%~約0.5%、約0.005%~約0.2%、約0.01%~約0.1%、または約0.02%~約0.06%、または約0.03%~約0.05%(w/v)の濃度でポリソルベートを含む。特定の実施形態では、製剤は、0.01%、または0.02%、または0.03%、または0.04%、または0.05%、または0.06%、または0.07%、または0.08%、または0.09%、または0.1%、または0.15%、または0.2%(w/v)の濃度でポリソルベートを含む。特定の実施形態では、界面活性剤は、0.02%または約0.04%(w/v)の量で製剤中に存在する。1つの実施形態では、界面活性剤は、0.05%(w/v)の量で製剤中に存在する。
【0139】
1つの実施形態では、製剤は、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.02%、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、または少なくとも約0.5%のポリソルベート80を含む。特定の実施形態では、製剤は、約0.01%~約0.5%、約0.01%~約0.3%、約0.001%~約0.2%、約0.02%~約0.5%、約0.02%~約0.3%、約0.02%~約0.2%、約0.05%~約0.5%、約0.05%~約0.3%、約0.05%~約0.2%、約0.075%~約0.5%、約0.075%~約0.3%、または約0.075%~約0.2%のポリソルベート80を含む。さらなる実施形態では、製剤は、約0.01%、約0.02%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、または約0.5%のポリソルベート80を含む。1つの実施形態では、製剤は、約0.05%のポリソルベート80を含む。1つの実施形態では、製剤は、約0.04%のポリソルベート80を含む。1つの実施形態では、製剤は、約0.03%のポリソルベート80を含む。1つの実施形態では、製剤は、約0.02%のポリソルベート80を含む。1つの実施形態では、製剤は、約0.01%のポリソルベート80を含む。
【0140】
1つの実施形態では、水溶液は、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは塩化マグネシウムなどの塩を1つまたは複数含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の水溶液は、少なくとも10mM(例えば少なくとも15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300mM以上)の濃度で塩を含む。一部の実施形態では、本明細書に記載の水溶液は、およそ200mMまたはそれ未満(例えばおよそ190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20、15または10mM、またはそれ未満)の濃度で塩を含んでもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載の水溶液は、約10mM~50mM、15mM~50mM、20mM~50mM、25mM~50mM、30mM~50mM、40mM~50mM、10mM~100mM、15mM~100mM、20mM~100mM、25mM~100mM、30mM~100mM、40mM~100mM、10mM~150mM、15mM~150mM、20mM~150mM、25mM~150mM、30mM~150mM、40mM~150mM、50mM~100mM、60mM~100mM、70mM~100mM、80mM~100mM、50mM~150mM、60mM~150mM、70mM~150mM、80mM~150mM、90mM~150mM、100mM~150mM、10mM~200mM、15mM~200mM、20mM~200mM、25mM~200mM、30mM~200mM、40mM~200mM、50mM~200mM、60mM~200mM、70mM~200mM、80mM~200mM、90mM~200mM、100mM~200mM、150mM~200mM、10mM~250mM、15mM~250mM、20mM~250mM、25mM~250mM、30mM~250mM、40mM~250mM、50mM~250mM、60mM~250mM、70mM~250mM、80mM~250mM、90mM~250mM、100mM~250mM、150mM~250mMまたは200mM~250mMの濃度で塩を含む。本発明溶液が2つ以上(例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10以上)の異なる塩を含む実施形態において、その2つ以上の塩のそれぞれが独立して、例えば上述の濃度のいずれか1つの濃度で存在し得る。
【0141】
1つの実施形態では、水溶液は、1つまたは複数の炭水化物の賦形剤を含む。適切な炭水化物の賦形剤は、例えば、Katakam and Banga(1995)J Pharm Pharmacol 47(2):103-107;Andya et al.(2003)AAPS PharmSci 5(2):Article 10;およびShire(2009)“Current Trends in Monoclonal Antibody Development and Manufacturing,”Volume 11,Springer、354ページに記載されている。本明細書に記載の溶液における使用に適した炭水化物賦形剤としては限定されないが、例えば、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、およびソルボースなどの単糖類;例えばラクトース、スクロース、トレハロース、およびセロビオースなどの二糖類;例えばマルトデキストリン、デキストラン、およびデンプンなどの多糖類;ならびに例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールおよびソルビトールなどの糖アルコールが挙げられる。1つの実施形態では、炭水化物賦形剤は、少なくとも、またはおよそ0.5%(例えば少なくとも、またはおよそ0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.25、3.5、3.75、4、4.25、4.5、4.75、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10%以上)の濃度で本発明溶液中に存在する。本発明溶液が2つ以上(例えば少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10以上)の異なる炭水化物賦形剤を含む実施形態において、各賦形剤が独立して、上述の濃度のいずれかで存在し得る。
【0142】
別の実施形態では、安定的水溶液は、1つまたは複数の安定化剤を含む。例示的な安定剤としては限定されないが、ポリオール類、糖類(例えばスクロースまたはトレハロース)、アミノ酸類(例えばアルギニン)、アミン類、および塩析塩類が挙げられる。1つの実施形態では、溶液は、両端を含み、2~10%の濃度で少なくとも1つの安定化剤を含む。1つの実施形態では、溶液は、5%スクロースを含む。別の実施形態では、溶液は、両端を含み、10mM~50mMの濃度で少なくとも1つまたは複数の安定化剤を含む。別の実施形態では、安定化剤は、20mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、安定化剤は、少なくとも25mMまたは25mMの濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、安定化剤は、50mM以上の濃度で溶液中に存在する。別の実施形態では、溶液は、25mMのアルギニンを含む。
【0143】
1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、1つまたは複数の保存剤を含む。
【0144】
本明細書で使用される場合、「保存剤」という用語は、細菌の作用を減少させる剤を指し、任意で本明細書の製剤に添加され得る。保存剤の添加により、例えば複数回使用(複数回投与)の製剤の製造が容易となり得る。可能性のある保存剤の例としては、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンズアルコニウム(塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムの混合物であり、この中でアルキル基は長鎖化合物である)および塩化ベンズエトニウムが挙げられる。他のタイプの保存剤としては、例えばフェノール、ブチルアルコールおよびベンジルアルコールなどの芳香族アルコール、例えばメチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン、カテコール、レゾルシノール、シクロヘキサノール、3ペンタノールおよびm-クレゾールが挙げられる。
【0145】
1つの実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて5つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて4つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて3つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて2つ以下の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、抗C5抗体に加えて1つ以下の剤を含む。
【0146】
1つの実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、ならびに25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニンを含み、この場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0147】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、ならびに25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニン、からなり、この場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0148】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニン、ならびに0.05±0.03(例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07および0.08)%のポリソルベート80を含み、この場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0149】
別の実施形態では、安定的水溶液は、100±20(例えば80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119または120)mg/mLの濃度の配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗C5抗体、50±15(例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65)mMのリン酸緩衝剤、5±3(例えば2、3、4、5、6、7または8)%のスクロース、25±10(例えば15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35)mMのアルギニン、ならびに0.05±0.03(例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07および0.08)%のポリソルベート80、からなりこの場合において当該溶液は、7.4±0.5のpH(例えば6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8または7.9)を有する。
【0150】
別の実施形態では、安定的水溶液が提供され(例えば滅菌溶液)、この場合において当該溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体(例えばラブリズマブ)、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニンを含む。
【0151】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニンを含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニンを含む。
【0152】
別の実施形態では、安定的水溶液は、3つ以下の追加の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、2つ以下の追加の剤を含む。別の実施形態では、安定的水溶液は、1つ以下の追加の剤を含む。
【0153】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニン、からなる。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニン、からなる。
【0154】
別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニン、からなる。別の実施形態では、安定的水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニン、からなる。
【0155】
1つの実施形態では、安定的な水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、および(d)約25mMのアルギニンを含む。
【0156】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、および(d)25mMのアルギニンを含む。
【0157】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニンを含む。
【0158】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニンを含む。
【0159】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)約100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)約50mMのリン酸緩衝剤、(c)約5%のスクロース、(d)約0.05%のポリソルベート80、および(e)約25mMのアルギニン、からなる。
【0160】
別の実施形態では、安定的な水溶液は、(a)100mg/mLの濃度の抗C5抗体であって、当該抗C5抗体は、配列番号19に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、配列番号18に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、配列番号3に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、配列番号4に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、配列番号5に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、および配列番号6に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む抗体、(b)50mMのリン酸緩衝剤、(c)5%のスクロース、(d)0.05%のポリソルベート80、および(e)25mMのアルギニン、からなる。
【0161】
IV.高濃縮抗体溶液を作製する方法
本明細書において、高濃縮抗C5抗体溶液を作製する方法も提供される。1つの実施形態では、100mg/mLの濃度の抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、および25mMのアルギニンを含む安定的な濃縮抗体溶液を作製する方法が提供され、当該方法は、
i)抗C5抗体を含む第一の水溶液を提供することであって、当該第一の水溶液は、第一の製剤を有し、および10mg/mL以下の抗C5抗体を含むこと、
ii)当該第一の水溶液に、pH7.4で50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、および25mMのアルギニンを含む製剤への透析ろ過を行い、それにより第二の水溶液を作製することであって、当該第二の水溶液は、当該透析ろ過の結果として第二の製剤を有すること、および
iii)当該第二の水溶液を濃縮し、100mg/mLの抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロースおよび25mMのアルギニンを含む安定的な濃縮抗体溶液を作製すること、を含む。
【0162】
別の実施形態では、100mg/mLの濃度の抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、25mMのアルギニン、および0.05%のポリソルベート80を含む安定的な濃縮抗体溶液を作製する方法が提供され、当該方法は、
i)抗C5抗体を含む第一の水溶液を提供することであって、当該第一の水溶液は、第一の製剤を有し、および10mg/mL以下の抗C5抗体を含むこと、
ii)当該第一の水溶液に、pH7.4で50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、25mMのアルギニン、および0.05%のポリソルベート80を含む製剤への透析ろ過を行い、それにより第二の水溶液を作製することであって、当該第二の水溶液は、当該透析ろ過の結果として第二の製剤を有すること、および
iii)当該第二の水溶液を濃縮し、100mg/mLの抗C5抗体、50mMのリン酸緩衝剤、5%のスクロース、25mMのアルギニンおよび0.05%のポリソルベート80を含む安定的な濃縮抗体溶液を作製すること、を含む。
【0163】
V.投与経路
本明細書に記載の溶液は、様々な方法を使用して患者に投与されることができ、当該方法は部分的には投与経路に依存する。経路は、非経口の様式、例えば静脈内注射または点滴(IV)、皮下注射(SC)、腹腔内注射(IP)、眼内注射、関節内注射、または筋肉内注射(IM)であってもよい。本明細書において使用される場合、「非経口投与」、「非経口で投与される」および他の文法的に同等の文言は、腸内投与および局所投与以外の投与様式を指し、通常、注射により行われ、限定されないが、静脈内、鼻腔内、眼内、経肺、筋肉内、動脈内、髄腔内、関節包内、眼窩内、心腔内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、大脳内、頭蓋内、頸動脈内および胸骨下の注射ならびに点滴が挙げられる。
【0164】
特定の実施形態では、溶液は、皮下注射を介して投与される。皮下投与は、デバイス手段により実施することができる。デバイス手段は、シリンジ、前充填シリンジ、ディスポーザブルまたは再利用可能なオートインジェクター、ペンインジェクター、パッチインジェクター、ウェアラブルインジェクター、皮下点滴セットを備えた歩行用シリンジ点滴ポンプ、または他のデバイスであってもよい。
【0165】
1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、局所投与を介して対象に送達される。本明細書で使用される場合、「局所投与」または「局所送達」とは、血管系を介した目的の標的組織または標的部位への組成物または活性剤(例えば抗C5抗体)の輸送に頼らない送達を指す。標的組織または標的部位の周辺で局所投与を行った後、溶液、またはその1つもしくは複数の成分が目的の標的組織または標的部位へと拡散し得る。
【0166】
例えば溶液は、注射を介して、または溶液を含有するデバイスの移植を介して、送達され得る。移植物は、例えばシリコンゴム膜などの膜またはファイバーを含む、多孔質、非多孔質またはゼラチン質の物質のものであってもよい。移植物は、対象への持続的または周期的な溶液の放出用に構成されることができる。例えば米国特許出願公開20080241223、米国特許第5,501,856号、第4,863,457号および第3,710,795号、EP488401およびEP 430539を参照のこと。これら各公開文献は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の溶液は、例えば拡散性、浸食性、または対流性のシステム、例えば浸透圧ポンプ、生分解性移植物、電気拡散システム、電気浸透システム、蒸気圧ポンプ、電解ポンプ、発泡ポンプ、圧電ポンプ、浸食系システムまたは電気機械システムなどを基にした移植可能なデバイスを経て対象に送達されることができる。
【0167】
1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、関節(例えば関節接合物)に局所投与されることができる。例えば障害が関節炎である実施形態において、治療に適した溶液は、直接関節に投与されることができ(例えば関節腔内に)、または関節周辺に投与されることができる。本明細書に記載される組成物が局所投与され得る関節内接合部の例としては、例えば股関節、膝関節、肘関節、手関節、胸鎖関節、顎関節、手根管関節、足根関節、足関節、および関節炎状態となる任意の他の接合部が挙げられる。本明細書に記載される組成物は、例えば肩峰、二頭筋橈骨、肘橈骨(cubitoradial)、三角筋、膝蓋滑液、座骨などの嚢、および医学分野に公知の任意の他の嚢にも投与されることができる。
【0168】
別の実施形態では、本明細書に記載の溶液は、眼に局所投与されることができる。本明細書で使用される場合、「眼」という用語は、眼に関連する任意の、およびすべての解剖学的組織および構造を指す。1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、眼の後眼房に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の溶液は、硝子体内に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の溶液は、経強膜投与される。
【0169】
一部の実施形態、例えばCOPDまたは喘息などの障害の治療または予防に関する実施形態では、本明細書に記載の溶液は、肺を経て対象に投与されることができる。肺薬物送達は、吸入によって実施されてもよく、および本明細書において吸入による投与は、口腔および/または鼻腔であってもよい。1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、ネブライザーを経て対象の肺に投与されることができる。ネブライザーは圧縮空気を使用して化合物を液化エアロゾルまたはミストとして送達する。ネブライザーは例えばジェットネブライザー(例えばエアまたはリキッド-ジェットネブライザー)または超音波ネブライザーであってもよい。追加のデバイスおよび肺内投与法は、例えば米国特許出願公開20050271660および20090110679に記載されている。それら各開示内容は、その全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0170】
別の実施形態では、本明細書に記載の溶液は、単位剤型で存在し、これは特に自己投与に適している。本開示の製剤製品は、容器、典型的には例えばバイアル、カートリッジ、前充填シリンジまたはディスポーザブルペンなどの中に含まれることができる。米国特許第6,302,855号に記載される投与用デバイスなどの投与装置も使用され得る。注射システムには、米国特許第5,308,341号に記載される送達ペンを含むことができる。ペンデバイスは、糖尿病患者に対するインスリンの自己送達用に最も普遍的に使用されており、当分野で公知である。そのようなデバイスは少なくとも1つの注射針(例えば約5~8mmの長さの31ゲージ針)を含むことができ、典型的には、1つまたは複数の治療単位投与量の溶液で前もって充填されており、可能な限り僅かな痛みで対象に溶液を迅速に送達するのに有用である。
【0171】
VI.治療方法
記載される溶液を使用して、ヒト患者の様々な疾患および状態を治療することができる。1つの実施形態では、溶液を使用して、限定されないがリウマチ性関節炎(RA)、抗リン脂質抗体症候群、ループス腎炎、虚血再かん流障害、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、典型または感染性の溶血性尿毒症症候群(tHUS)、デンスデポジット病(DDD)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、視神経脊髄炎(NMO)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、多発性硬化症(MS)、黄斑変性症(例えば加齢黄斑変性(AMD)など)、溶血・肝酵素上昇および血小板減少(HELLP)症候群、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自然胎児消失、pauci-immune型血管炎、表皮水疱症、習慣性流産および外傷性脳損傷を含む補体が関連した障害を治療することができる(例えばHolers(2008)Immunological Reviews 223:300-316 and Holers and Thurman(2004)Molecular Immunology 41:147-152を参照のこと)。
【0172】
別の実施形態では、補体が関連した障害は、例えば限定されないが糖尿病が関連した(例えば眼の)血管障害、網膜中心静脈閉塞症、心血管障害、心筋炎、脳血管障害、末梢(例えば、筋骨格)血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸血管障害、移植および/または再移植に対する血管再開通術、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病腎炎、全身性エリテマトーデス関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体性血管炎、高安病、拡張型心筋症、糖尿病性血管障害、川崎病(動脈炎)、静脈ガス塞栓症(VGE)ならびにステント留置、回転性のアテレクトミーおよび経皮経管冠動脈形成術(PTCA)の後の再狭窄などの補体が関連した血管障害である(例えば米国特許出願公開20070172483を参照のこと)。
【0173】
追加の補体が関連した障害としては限定されないが、重症筋無力症、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、グレーブス病、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、ギランバレー症候群、デゴス病、移植片拒絶(例えば移植による拒絶反応)、敗血症、火傷(例えば重度の火傷)、全身性炎症反応性の敗血症、敗血性ショック、脊髄損傷、糸球体腎炎、橋本甲状腺炎、I型糖尿病、乾癬、天疱瘡、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、グッドパスチャー症候群、抗リン脂質症候群(APS)、劇症型APS(CAPS)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病および慢性炎症性脱髄性多発神経障害が挙げられる。
【0174】
別の実施形態では、本明細書に記載される溶液を使用して、血栓性微小血管症(TMA)、例えば本明細書に記載される補体関連障害のいずれかなどの補体が関連した障害と関連したTMAなどを治療することができる。
【0175】
補体関連障害には、例えば限定されないが、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患、α-1 抗トリプシン欠損症、肺気腫、気管支拡張症、閉塞性細気管支炎、肺胞炎、サルコイドーシス、肺線維症および膠原血管病などの補体が関連した肺障害も挙げられる。
【0176】
別の実施形態では、本明細書に記載される溶液は、対象において補体が関連した炎症性反応(例えば補体関連障害の補体が関連した炎症性反応態様)の少なくとも1つの症状を治療、予防または改善するために対象に投与される。例えば組成物を使用して、移植片拒絶/移植片対宿主病(GVHD)、再かん流障害(例えば心肺バイパス形成後または組織移植後)、および例えば火傷(例えば重度の火傷)、鈍傷、脊髄損傷または凍傷など他のタイプの外傷の後の組織損傷など、補体が関連した炎症性反応と関連した1つまたは複数の症状を治療、予防および/または改善することができる。例えば、Park et al.(1999)Anesth Analg 99(1):42-48;Tofukuji et al.(1998)J Thorac Cardiovasc Surg 116(6):1060-1068;Schmid et al.(1997)Shock 8(2):119-124;およびBless et al.(1999)Am J Physiol 276(1):L57-L63を参照のこと。
【0177】
別の実施形態では、補体介在障害は、限定されないが、心血管障害、心筋炎、脳血管障害、末梢(例えば、筋骨格)血管障害、腎血管障害、腸間膜/腸血管障害、移植および/または再移植に対する血管再開通術、血管炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病腎炎、全身性エリテマトーデス関連血管炎、関節リウマチ関連血管炎、免疫複合体性血管炎、臓器移植または組織移植、高安病、毛細血管漏出症候群、拡張型心筋症、糖尿病性血管障害、胸部-腹部大動脈瘤、川崎病(動脈炎)、静脈ガス塞栓症(VGE)ならびにステント留置、回転性のアテレクトミーおよび経皮経管冠動脈形成術(PTCA)の後の再狭窄などの補体介在血管障害である(例えば米国特許出願公開20070172483を参照のこと)。
【0178】
VII.併用治療
1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、単剤療法として患者に投与される。別の実施形態では、本明細書に記載の溶液は、1つまたは複数の追加の剤および/または他の治療(例えば補体関連障害の治療に適したもの)と併せて投与される。例えば併用療法は、患者に治療利益をもたらす追加の剤(例えば抗凝固剤、降圧剤、または抗炎症性薬剤(例えばステロイド))を1つまたは複数、ヒト患者に投与することを含むことができる。1つの実施形態では、本明細書に記載の溶液は、抗炎症剤(例えばNSAID、コルチコステロイド、メトトレキサート、ヒドロキシクロロキン、抗TNF剤、例えばエタネルセプトおよびインフリキシマブ、B細胞枯渇剤、例えばリツキシマブ、インターロイキン-1アンタゴニスト、またはT細胞共刺激阻害剤、例えばアバタセプト)と併用されて投与される。
【0179】
対象において補体関連障害を治療するための追加の剤は、治療される特定の障害に応じて変化し、限定されないが、1つまたは複数の降圧剤(例えばアンギオテンシン転換酵素阻害剤、ラベタロール、ヒドララジン、ニフェジピン、カルシウムチャンネルアンタゴニスト、ニトログリセリンまたはニトロフェリシアン化ナトリウム)、抗凝固剤、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)、免疫抑制剤(例えばビンクリスチンまたはシクロスポリンA)、抗凝固剤(例えばワーファリン(Coumadin)、アスピリン、ヘパリン、フェニンジオン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス)、トロンビン阻害剤(例えばアルガトロバン、レピルジン、ビバリルジンまたはダビガトラン)、線維素溶解薬(例えばアンクロッド、α-アミノカプロン酸、抗プラスミン-a1、プロスタサイクリンおよびデフィブロタイド)、降圧剤(例えばラベタロール、ヒドララジン、ニフェジピン、カルシウムチャンネルアンタゴニスト、ニトログリセリンまたはニトロフェリシアン化ナトリウム)、脂質低下剤(例えばヒドロキシメチルグルタリルCoAリダクターゼの阻害剤)抗けいれん薬(例えば硫酸マグネシウム)、抗血栓剤(例えばヘパリン、アンチトロンビン、プロスタサイクリンまたは低用量アスピリン)、交感神経様作用薬(例えばアルブテロール)、抗生物質、デオキシリボヌクレアーゼ(例えばPulmozyme(登録商標))、抗コリン作用薬、抗IgE阻害剤(例えば抗IgE抗体)、コルチコステロイド、または非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が挙げられる。多くの様々なNSAIDが利用可能である。いくつかは店頭販売されており、イブプロフェン(Advil(登録商標)、Motrin(登録商標)、Nuprin(登録商標))およびナプロキセン(Alleve(登録商標))が挙げられ、その他も多くが処方箋により利用可能であり、メルキシカム(Mobic(登録商標))、エトドラク(Lodine(登録商標))、ナブメトン(Relafen(登録商標))、スリンダク(Clinoril(登録商標))、トルメチン(tolementin)(Tolectin(登録商標))、サリチル酸コリンマグネシウム(Trilasate(登録商標))、ジクロフェナク(Cataflam(登録商標)、Voltaren(登録商標)、Arthrotec(登録商標))、ジフルシナル(Diflusinal)(Dolobid(登録商標))、インドメタシン(Indocin(登録商標))、ケトプロフェン(Orudis(登録商標)、Oruvail(登録商標))、オキサプロジン(Daypro(登録商標))、およびピロキシカム(Feldene(登録商標))が挙げられる(例えばMihu et al.(2007)J Gastrointestin Liver Dis 16(4):419-424を参照のこと)。別の実施形態では、本明細書に記載される溶液は、静脈内ガンマグロブリン療法(IVIG)、血漿交換法、血漿補充療法、または血漿交換療法とともに、患者に投与するために製剤化されることができる。
【0180】
1つの実施形態では、溶液、ならびに1つまたは複数の追加の剤および/または治療法は、同時に投与される。別の実施形態では、溶液は、1つまたは複数の追加の剤および/または治療法の投与の前に、投与される。別の実施形態では、溶液は、1つまたは複数の追加の剤および/または治療法の投与の後に、投与される。
【0181】
本明細書に記載される抗体溶液が第二の活性剤と併用して使用される場合、当該剤(例えば抗C5抗体と第二の剤)は、別個に、または一緒に製剤化されることができる。例えば当該溶液と剤は、例えば投与直前に混合されることができ、および同時に、または別の時に、一緒に投与され、または別個に投与されることができる。
【0182】
VIII.キットおよび単位剤形
本明細書において、抗C5抗体またはその抗原結合断片、例えばラブリズマブまたはBNJ421をヒト患者(例えば補体関連障害を有する患者)への投与に適した治療有効量で含有する安定的水溶液を含むキットも提供される。キットは任意で例えば投与スケジュールを含めた説明書を含むことができ、それにより従事者(例えば、医師、看護師または患者)が、その中に含まれている組成物を投与することが可能となり、患者に当該溶液が投与される。
【0183】
またキットは、その必要のある患者、例えば補体関連障害に苦しむ患者、補体関連障害を有すると疑われる患者、または補体関連障害を発症するリスクがある患者に、1つまたは複数の溶液を送達する適切な手段を含むこともできる。1つの実施形態では、その手段は、患者への侵襲性(例えば血管内(例えば静脈内)、皮下、関節内、眼内、硝子体内または筋肉内)の溶液送達に適している。別の実施形態では、その手段は、患者への当該溶液の皮下送達に適している。別の実施形態では、その手段は、患者への当該溶液の静脈内送達に適している。例えばその手段はシリンジまたは浸透圧ポンプであってもよい。別の実施形態では、溶液は、点眼薬として製剤化されてもよく、その手段は点眼器となる。
【0184】
任意でキットは、単回投与溶液の複数のパッケージを含み、それらは各々単回投与用の溶液の有効量を含む。溶液の投与に必要な装置またはデバイスがキットに含まれてもよい。例えばキットは、溶液を含む1つまたは複数の前充填シリンジを提供してもよい。
【0185】
以下の実施例は、単に例示的なものであり、何ら本開示の範囲を制限するものとして解釈されるべきではないが、これは、数多くの変化形及び等価物が、本開示を読むことにより当業者に明らかになるからである。
【0186】
本明細書全体を通じて引用される全ての参照文献、Genbankエントリー、特許および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例0187】
実施例1:皮下投与用ラブリズマブ(AXLN1210)の高濃度製剤の開発
本実施例は、皮下投与用のALXN1210高濃度製剤の開発を要約するものである(例えば100mg/mLで、50mMのリン酸緩衝液、5%スクロース、25mM アルギニン、pH7.4)。予備的実験を初期の製剤開発において実施し、ALXN1210に関して、製剤前のスクリーニングデータを得て、乳白色の外観における、より高濃度での減少を評価した。ALXN1210(10mMリン酸塩、150mM塩化ナトリウム、pH7.0、0.02% Tween 80、10mg/mL)の初期製剤は無色であり、わずかに乳白色であった。ALXN1210の濃度を上昇させるにつれ、乳白色の外観も増していった。製剤前スクリーニングの結果とともに、安定性試験が実施され、リードの安定性データを取得した。初期安定性試験に続いてプロトタイプの安定性試験を実施し、バルク原薬および薬剤製品に対する最適な製剤を得た。予備的試験および安定性試験を以下に詳細に検討する。
【0188】
1. 方法
A.外観
外観は、白および黒の背景の両方に対して通常の実験室光を使用した目視観察によって決定された。
【0189】
B. C5結合
C5結合ELISAは、ALXN1210に対する有効性アッセイである。この検査の手順は比色検出を用いた直接結合式アッセイであり、ALXN1210がその標的であるヒトC5補体タンパク質に結合する能力を検証するために使用された。Polysorpマイクロタイタープレートを、ヒトC5タンパク質でコーティングし、ウシ血清アルブミン(BSA)でブロッキングした。標準曲線は、ALXN1210の参照材料から作成した。参照材料および被験サンプルは、アッセイの動作範囲内に収まるように定められた3つの希釈で調製された。標準物とサンプルを用いてインキュベーションした後、プレートを洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と複合体化されたマウス抗ヒトIgG4とインキュベートした。プレートを再度洗浄し、その後、基質である2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)、(ABTS)を使用して発色させた。反応した基質の量は、405nmでプレートリーダー上で分光光度光測定法により読み取られた。吸収測定値は、プレート上のC5に結合したALXN1210の濃度に比例した。4つのパラメータ曲線適合が標準曲線に適用され、酸法材料および被験サンプルの結果が曲線から内挿された。被験サンプルの結果は、参照材料の結果と比較され、相対活性(%)が報告された。
【0190】
C. 密度
DMA 4500密度計を使用した密度測定は、U管原理を介して決定された。中空のU字型ガラス管をサンプルで充填し、その後、可能な限り最低の振幅で電子的に励起させた。密度は以下の関係性を介して決定された:
ρ=A(τ2)-B
ρ = 密度
τ = 振動の期間
【0191】
AおよびBは計器の定数であり、密度が公知の2つの物質を用いた機器校正を介して決定された。
【0192】
D.示差走査蛍光法
示差走査蛍光法は、例えばSypro Orangeなどの蛍光色素の存在下で熱変性曲線を実行することにより、熱安定性変化を測定する。タンパク質が広げられると、暴露された疎水性表面が色素に結合し、蛍光が増加し、疎水暴露Thの温度での特徴的な中間点値を有する安定性曲線が作成される。
【0193】
E.動的光散乱法
動的光散乱は、マイクロプレート中のウェルが3メガピクセルの搭載カメラを使用して画像化可能となる照明装置を使用することにより、タンパク質、ナノ粒子およびその他の巨大分子のサイズおよび相互作用を、in situでマイクロウェルプレート中で測定する。ブラウン運動による光散乱の変動は拡散係数を与え、この係数は溶液中に存在する粒子の流体力学半径に関連する。
【0194】
F.HPLCゲル浸透法
ゲル浸透(サイズ排除)HPLCを使用して、単量体の凝集から生じ得る、より大きな多量体抗体種から単量体IgGを識別した。被験サンプルを、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.0を用いて平衡化されたTSK gel G3000 SWXLカラム上に注入し、その後、定組成溶離を行った。214nmでタンパク質ピークをモニターし、単量体IgGの純度割合を、総積分ピーク面積の割合として表した。より大きな質量の多量体の検出は、単量体ピーク前に溶出するピークを観察することで行われた。
【0195】
G.画像化キャピラリー電気泳動(iCE)
この方法はProtein Simple iCE280またはiCE3システムを使用する。このシステムはキャピラリーカラムにおいて遊離溶液IEFを実施し、全カラムUV検出器を使用し焦点を合わせられたタンパク質ゾーンを検出する。サンプルは、ALXN1210、担体の両性電解質、およびpIマーカーを前もって混合することにより調製された。サンプルをキャピラリーカートリッジに装填し、キャピラリーの各端の電解質タンクを酸および塩基で満たした。電圧が適用され、分析物は、そのpIで焦点が合わせられた。CCDカメラは、30秒ごとにキャピラリーカラム全体のUV光吸光画像を撮影し、フォーカス工程のリアルタイムの監視を可能とした。得られた分離パターンを捕捉し、分析した。サンプル中に存在するタンパク質のpIは、サンプル内に混ぜたpIマーカーの位置から内挿された。
【0196】
H.Lab on Chip(LoC)
この方法は、製品の均質性および純度を検査する。非還元サンプルは、ドデシル硫酸リチウム(LDS)で処理することにより変性された。還元サンプルは、ドデシル硫酸リチウム(LDS)で処理することにより変性され、ジスルフィド結合がジチオスレイトール(DTT)で破壊された。ポリペプチド鎖を蛍光色素と混合させ、これがLDSに結合し、マイクロキャピラリー電気泳動により分子サイズに従って分離された。タンパク質が検出され、レーザー誘導蛍光によって定量された。
【0197】
I.浸透圧
サンプルの浸透圧は、氷点降下浸透圧計を使用して決定された。浸透圧計は使用前に、サンプル範囲を囲う50mOsm/kgおよび850mOsm/kgの市販の承認済み浸透圧標準物を用いて較正された。参照の290mOsm/kg溶液を使用して、サンプルを検証する前に較正がうまくいったことを確認した。サンプルは三重に検証し、サンプル測定値の平均が報告された。
【0198】
J.pH
pH測定は、タンパク質耐性の飽和銀を含まないKCl複合電極と、関連するメーターおよび温度モニターを使用して実施された。メーターは使用前に、適切なpH範囲(すなわちpH4.0~pH7.0)の市販の溶液を使用して較正された。
【0199】
K.SoloVPEを使用したタンパク質濃度
280nmの吸光度を使用して、理論的に決定された1.479の吸光係数を使用した被験サンプル中の光路長可変技術を使用して、タンパク質濃度を決定した。この方法では1サンプル当たり三重の吸光度読み取りを実施した。
【0200】
L.粘度
AMVn粘度計を使用した粘度測定値は、回転球(rolling ball)の原理を介して決定された。中空管に、サンプルと密度が公知の固形ボールを満たし、次いで公知の角度に傾斜させた。ボールが管の片側から他方の側に移動する時間が決定され、これを使用して、以下の関係を介して粘度を算出した。
η=K*(ρb-ρs)*tr
η=動的粘度(mPa*s)
K=比例定数
ρb=球の密度(g/mL)
ρs=サンプルの密度(g/mL)
tr=球の回転時間
【0201】
粘度を計算するために、DMA 4500M密度計を使用して決定されたサンプル密度を、ρsとして使用した。
【0202】
M.マイクロフロー撮像による不溶性微粒子(Sub-visible particle)の決定(MGI)。
製剤中のすべての不溶性微粒子をマイクロフロー撮像(MFI)により評価することが目的である。2~8℃の保管場所からサンプルを取り出し、BOT1オートサンプラーを使用して直接MFIにおいて検証した。サンプルの反転は6回行われ、その後、サンプルをBOT1内に装填し、粒子を確実に完全に混合させた。サンプルは3個の連続するウェルに装填され、各ウェルは合計3回の反復実験で1つの測定結果とした。3回の混合サイクルをBOT1内に組み込んで、さらに確実に均一に混合した。
【0203】
2.
製剤開発
図1~5および表1~5は、高濃度でのALXN1210の初期の製剤開発の実験結果を示す。
【0204】
最初の実験において、リン酸ナトリウム緩衝液中、ALXN1210にアミノ酸を添加することで、乳白色に対する効果が観察された。乳白色の原因は、溶液中の高濃度の抗体分子間の電荷斥力に対する電荷の欠落であると決定された。以下に記載されるよう一連の実験が実施され、安定的な透明溶液を作製するために必要な特定のアミノ酸と濃度の最適化が為された。これらの実験に基づき、正電荷アミノ酸(L-アルギニン)を添加することで、リン酸ナトリウム緩衝液中の50mg/mL ALXN1210サンプルの乳白色が減少することが決定された。バイアルの目視検査でも同じ結論に達した(データは示さず)。
【0205】
さらに、以下の実験は10mg/mLのALXN1210 IV製剤を使用して抗体を濃縮し、そして緩衝液交換を実施することで、高濃縮ALXN1210製剤を見出すための様々な初期緩衝システムの評価が行われた。以下の表1に示すように、プールされた全サンプルは、1:1000の最終緩衝液交換を行うことで、所望のpHを得た。プールされたサンプルの濃度範囲は、35.3~54.0 mg/mLであった。緩衝液交換後の回収率%は、70.6%~108%の範囲であった。外観結果は、25mMのヒスチジンpH7と25mMのリン酸塩pH7の緩衝液交換が為されたバイアルが、エクリズマブと比較して透明で無色であり、そしてすべての他の緩衝液交換バイアル中の溶液は、乳白色であったことが示される。画像化キャピラリー電気泳動(iCE)の結果から、5.98~6.54のpI範囲が示され、主要pI範囲は6.19~6.24、面積%は63.1%~65.9%であったことが示された。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の結果から、98.48%~98.98%の単量体%(純度)が示された。
【0206】
表1:緩衝液交換 ALXN1210 10mg/mLから50mg/mL(プールされたセット1-3)
【表1】
【0207】
図1に示すように、DLSを使用した、pH7のヒスチジン緩衝液交換サンプルの塩滴定の結果から、塩濃度が上昇するにつれ、ALXN1210中の自己結合も増加することが示される。
【0208】
図2に示すように、動的光散乱法(DLS)を使用したL-アルギニン滴定の結果から、25mMのL-アルギニンが、50mg/mLのALXN1210の乳白色を減少させるために必要な最小量であることが示される。
【0209】
図3に示すように、DLSを使用した、pH7のリン酸緩衝液交換サンプルの塩滴定の結果から、塩を含まないこと、および150mMの塩添加が、ALXN1210中で自己結合が最も少なかったことも示される。2および5と標識されたピークを比較する。
【0210】
図4に示すように、DSFを使用した緩衝液交換試料の結果から、ALXN1210において疎水性ポケットは露出していないことが示される。pH5および6のクエン酸ならびに酢酸緩衝液は熱安定性が低く、最も低い融点(Tm)を有し、pH7のヒスチジンおよびリン酸緩衝液は、最も安定的で、最も高いTmを有している。
【0211】
表2に示す外観結果に示されるように、pH7の25mMリン酸緩衝液中、25mMのL-アルギニンを添加された約100mg/mLのALXN1210は透明で無色である。
【0212】
表2:ALXN1210 100mg/mLサンプルの外観
【表2】
【0213】
図5に示されるように、10mg/mLのALXN1210、ならびにL-アルギニンを含む、およびL-アルギニンを含まない114mg/mLのALXN1210に対する、DLSを使用した結果から、少なくとも100mg/mLのサンプルに25mMのL-アルギニンを添加することが、10mg/mLの参照サンプルに最も近いことが示される。L-アルギニンが添加されなかった少なくとも100mg/mLのサンプルは、より高次の種となっており、自己結合が示唆される。
【0214】
表3に示す浸透圧の結果から、8%スクロースまたは4.5%ソルビトールを含む、25mMヒスチジンpH7.2中のALXN1210が、275~320の望ましい浸透圧範囲にあることが示される。7%スクロースまたは4%ソルビトールを補充された25mMリン酸塩、25mMのL-アルギニン、pH7中のALXN1210の浸透圧も、望ましい浸透圧範囲内に収まっている。
【0215】
表3:様々な製剤でのALXN1210の浸透圧
【表3】
【0216】
表4で表される粘度の結果から、ALXN1210の濃度が上昇すると、ALXN1210のヒスチジンおよびリン酸緩衝溶液の粘度も上昇することが示される。表4に示す密度結果は、濃度が変化したときに、ヒスチジンおよびリン酸緩衝液の密度に大きな変化はないことが示される。
【0217】
表4:様々な濃度でのALXN1210サンプルの粘度および密度
【表4】
【0218】
表5に示すように、L-アルギニン塩基の添加は、サンプルのpHを大きく上昇させた。リン酸ナトリウム一塩基を含むL-アルギニンQSをサンプルに入れると、1pH単位までpHが上昇した。L-アルギニンHClをサンプルに入れると、pHが約0.25pH単位下がった。しかしL-アルギニンHClの添加から、L-アルギニンQSリン酸ナトリウム一塩基の添加、L-アルギニン塩基の添加へと、乳白色の外観は減少した。
【0219】
表5:25mM L-アルギニン添加用のL-アルギニン緩衝液 ALXN1210に対するpHおよび外観への効果
【表5】
【0220】
3.用語 安定性
図6~21は、初期の安定性試験の結果を示す。これらの結果から、2~8℃、23~27℃、および37℃で2カ月後、ヒスチジン製剤は最も安定性が低く、リン酸製剤が最も安定的であることが示される。また、サイズ排除クロマトグラフィーにより明らかであるように、リン酸製剤において、ソルビトールとスクロースは、2~8℃および23~27℃で2カ月後に同等であった。しかしスクロースと比較してソルビトールのほうが2カ月後、37℃でやや安定性が高かった。動的光散乱法の結果から、スクロースまたはソルビトールの添加があっても、2~8℃で2カ月後、25mMのL-アルギニンを含むリン酸サンプルにおいて大きな変化はないことが示された。ヒスチジンサンプルのT=2か月での動的光散乱法の結果は、取得データ間での高い分散性が原因で重ね合わせることができなかった。このことから、リン酸製剤よりも安定性が低い製剤であることが示される。5日間の凍結融解サイクルの結果では、T=0と5サイクルの凍結融解の間に大きな変化は示されなかった。
【0221】
4.プロトタイプ製剤
図22~46は、プロトタイプ安定性試験の結果を示す。これらの結果から、75mg/mLおよび100mg/mL(バルク原薬(BDS)および薬剤製品(DP))のすべてのリン酸製剤が、2~8℃、-20℃、および-80℃での安定性試験の経過にわたり安定的であることが示される。100mg/mLのバルク原薬製剤のすべてが-20℃および-80℃での5回の凍結融解サイクルの後で安定的であり、大きな変化は示さなかった。
【0222】
5.短期分解試験前の暫定的結論
これらの試験結果に基づき、ALXN1210の高濃度材料に最適な製剤が決定された。予備的実験から、L-アルギニンを添加することで、100mg/mLのALXN1210の乳白色の外観が減少することが示唆された。初期の安定性試験から、50mg/mL超のL-アルギニンを含むリン酸緩衝液のリード製剤選択が為された。プロトタイプ安定性試験の結果から、ALXN1210の初期最適製剤は、100mg/mLで、50mM リン酸緩衝液、5%スクロース、25mMアルギニン、pH7.4であると決定された。
【0223】
6.最終最適製剤の開発
初期最適製剤(製剤緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、および5%スクロース、pH7.4)中、100mg/mLのALXN1210)の適合性に、短期分解試験を行い、ポリソルベート80(PS80)または他の界面活性剤が分解予防に必要であるかどうかを評価した。99%超の純度のオレイン酸から構成されていると報告されている0.05%(w/v)のNOF America Corporation
POLYSORBATE 80(HX2)(商標)と、オレイン酸とパルミチン酸を含む脂肪酸ブレンドからなる、広く使用されている界面活性剤であるAVANTOR(商標)4117,J.T.Baker(登録商標)ポリソルベート80の2つの銘柄のPS80とした。両製品はしばしば、TWEEN 80(登録商標)と呼称され、エチレンオキシドの多量体に由来する親水性基を含む、ポリエトキシ化ソルビタンとオレイン酸から誘導された非イオン性界面活性剤である。
【0224】
100mg/mLのALXN1210製剤における、J.T.baker avantor 4117 PS80の使用可能性評価に使用された試験方法を、以下の表6に列記する。個々の試験方法の詳細と、方法の説明に言及する。
【0225】
表6:J.T.Baker Avantor 4117 PS80の使用可能性に関する試験方法
【表6】
【0226】
J.T.Baker avantor 4117 PS80またはHX2 NOF PS80のいずれかを含む100mg/mLのALXN1210を含有するバイアルを目視検査した。45℃の分解的保存と、2~8℃で5日間の追加的な攪拌に曝されたすべてのサンプルが可視粒子を示さず、またはすべてのサンプルで明白な色調の変化を示さなかった。結果を表7に示す。
【0227】
表7.J.TBaker avantor 4117 PS80またはHX2 NOF PS80のいずれかを含有する、5ccバイアル中の100mg/mLのALXN1210の目視検査
【表7】
【0228】
分解条件によって、ALXN1210 mg/mLの濃度においてわずかな減少が示された。表8に、すべての濃度測定結果を言及する。
【0229】
0.05%のAvantor PS80またはHX2 NOF PS80のいずれかを含有するALXN1210 100mg/mLの製剤は、
図2に示すとおり、同じ分解条件に曝されたとき、大きな濃度変化が無かった。
【0230】
【0231】
上記の表8に示されるように、0.05%のAvantor PS80またはHX2 NOF PS80のいずれかを含有するALXN1210 100mg/mLの製剤は、同じ分解条件に曝されたとき、大きな濃度変化が無かった。0.05%のAvantor
PS80またはHX2 NOF PS80のいずれかを含有するALXN1210 100mg/mL製剤の間で、濃度は同等で維持された。
【0232】
濁度は、650nmの吸光度をモニターすることにより測定された。測定結果を表9に示す。
【0233】
0.05%のAvantor PS80または0.05%のHX2 NOF PS80のいずれかを含有するALXN1210 100mg/mL製剤は、大きな濁度変化が無かった。本試験のすべての時点で、および分解条件で、濁度は安定であった。
【0234】
表9:濁度は、Abs 650nmをモニターすることにより測定された。
【表9】
【0235】
45℃で7日間または14日間のインキュベートに加え、2~8℃での追加的な振とう(200RPM)が行われたサンプルに対し、単量体割合に減少が観察された。これは分解条件によるものと予測された。しかしながら単量体割合は、0.05% Avantor PS80または0.05% HX2 NOF PS80のいずれかを含有するALXN1210 100mg/mL製剤の両方の間で同時間および同条件に曝されたときに有意な差は示さなかった。
【0236】
単量体割合のデータを表10に示す。
図4は、分解条件後の予測された単量体%の減少と、0.05% Avantor PS80または0.05% HX2 NOF PS80のいずれかを含有するALXN1210 100mg/mL製剤の両方の間で同時間および同条件に曝されたときに有意な差が無かったことを示す。
【0237】
表10:45℃で7日間または14日間インキュベートされ、2~8℃でさらに振とう(200RPM)されたサンプルの単量体割合
【表10】
【0238】
表11に示されるように、酸性種に向かう偏移は、45℃で7日間および14日間、0.05% J.T.Baker Avantor Polysorbate 80または0.05% HX2 NOF Polysorbate 80のいずれかとともにALXN1210をインキュベートした後の等電点泳動で検出された。サンプルに追加の振とうを行っても、さらなる主要ピークの酸性種への偏移に大きな影響は無かった。
【0239】
表11:CE-SDSによる等電点電気泳動
【表11】
【0240】
0.05%の濃度で含有された2つの銘柄のPS80の存在下、および非存在下で、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、および5%スクロース、pH7.4を含む100mg/mLのALXN1210製剤緩衝液の初期最適製剤に対して振とうストレス検査を実施した。不溶性微粒子の形成を使用して分解を評価した。サンプルは、2~8℃の温度、200rpmで振とうされた。不溶性微粒子形成の有無を測定する時点は、0、1、3、および5日であった。表12に示されるように、結果は、製剤に0.05%のPS80を添加することで、高濃度製剤が例えば200rpmの振とうなどの短期ストレスに曝されたときの不溶性微粒子の形成を大きく減少させることを示している。
【0241】
表12:不溶性微粒子の発生は、PS80の添加およびろ過により減少した。
【表12】
【0242】
7.結論
結論として、100mg/mLのALXN1210に対する最適なsubQの製剤化は、50mMリン酸ナトリウム、25mMアルギニン、および5%スクロース、ならびに0.05% PS80を含有するpH7.4の緩衝液である。
【0243】
実施例2:健常対象における、皮下投与と静脈内投与を比較する、ALXN1210の単回投与を評価するための第1相試験。
第I相試験は、健常対象において皮下投与(SC)と静脈内投与(IV)を比較し、抗体BNJ441(ALXN1210としても知られる)の安全性、忍容性、薬物動態効果(PK)/薬力学効果(PD)および免疫原性を評価するために実施された。
【0244】
1.目的
本試験の主要目的は、(1)身体検査所見、バイタルサイン測定、免疫原性、臨床検査分析および有害事象(AE)査定により査定される、健常対象において皮下投与されるALXN1210と静脈内投与されるALXN1210を比較する、単回投与の安全性および忍容性を評価すること、および(2)皮下投与されたALXN1210の絶対バイオアベイラビリティを決定すること、であった。
【0245】
副次的な目的は、遊離C5レベルおよびニワトリ赤血球(cRBC)溶血により査定される、皮下投与されるALXN1210と静脈内投与されるALXN1210を比較する、PD効果の評価であった。
【0246】
2.試験デザイン
全体の試験デザインを
図47に示されるように実施した。本試験は、健康な対象42名において、皮下投与されたALXN1210の単回投与量400mgを、静脈内投与された単回投与量400mgのALXN1210、または皮下投与されたプラセボと比較する、安全性、忍容性、PK、PDおよび免疫原性を評価するために設計された第I相試験である。対象全員が適格性についてスクリーニングされた。適格性基準を満たしていなかった対象は、適格性失格につながった条件が一過性、自己限定性で治療が容易であり、投与の時点で解消されることが予測されたときには本試験参加について再スクリーニングされた。
【0247】
6名の対象が最初に2:1の比率でコホート1aに盲目的に割り当てられ、400mg単回皮下投与量のALXN1210、または単回皮下投与量のプラセボのいずれかを投与された。投与後の最初の48時間の臨床安全性データを、コホート1aの対象に関して評価し、その後、コホート1bまたは2への登録を開始した。次いで36名の対象を2:1の比率でコホート1b(N=24)またはコホート2(N=12)のいずれかに無作為に割り当てた。コホート1b内で、24名の対象が5:1の比率でさらに盲目的に割り当てられ、それぞれ400mg単回皮下投与量のALXN1210(20名の対象)、または単回皮下投与量のプラセボ(4名の対象)のいずれかを投与された。コホート2の12名の対象は、非盲検的にALXN1210の400mg単回静脈内投与量を投与された。
【0248】
登録された全対象が必要に応じて分析に含められた。コホート1aおよびコホート1bの対象は、分析用に1つにまとめられた。対象は、最大70日間のスクリーニング期間とその後の被験薬投与後の安全性、PK、PD、および免疫原性評価の200日間の追跡期間を含め、最大で39週間、試験に参加した。
【0249】
42名の対象が本試験の主要目的と副次的目的に関し評価された。コホート1aには6名の対象(4名がALXN1210の皮下投与、2名がプラセボの皮下投与);コホート1bには24名の対象(20名がALXN1210の皮下投与、4名がプラセボの皮下投与)、およびコホート2には12名の対象(ALXN1210のIV)。
【0250】
3.投与量の根拠
400mgの単回投与量は4mLに匹敵し、腹部に1mLの注射を4回行い、皮下投与された。ALXN1210 SCの400mgの単回投与量の投与は、許容可能な安全性プロファイルを有することが予測された。本プロトコルに記載されているように投与された400mgのALXN1210 SCおよびプラセボSCの単回投与量は、複数回の投与シミュレーションを作成することができるデータを提供することが予測され、そのデータによって、患者において治療血清濃度(50μg/mL超)を達成するために必要な投与レジメンを計画することができた。
【0251】
コホート1aの6名の対象から得られた投与後の最初の48時間の臨床安全性データの概要に基づき、36名の対象をコホート1bおよびコホート2に並行して無作為化した。コホート1bおよびコホート2への登録は、表13に記載されるように進行された。
【0252】
毒性集団の規則は以下の通りであった。毒性とは、臨床的に重大な薬剤に関連した有害反応を指す。「コホート進行」とは、投与進行規則と最小データ要件に沿った連続的投与/投与レジメンへの進行を指す。「停止(suspension)」とは、該当する投与レベル/投与レジメンでさらなるIMPが投与されないこと、およびさらなるコホート進行が停止されることを指す。
表13:毒性規則
【表13-1】
【表13-2】
【0253】
4.評価スケジュール
使用される試験手順のタイミングを、表14~15に提示する。
【0254】
表14:評価スケジュール:スクリーニングから来院1まで
【表14-1】
【表14-2】
【0255】
表15:評価スケジュール:来院2~来院14
【表15】
【0256】
5.対象の選定および離脱
対象は、本試験に適格となるためには、以下の基準のすべてを満たしていなければならない:
1.投与の時点で健康な対象であり、年齢は両端を含み25~55歳。
2.肥満度指数(BMI)は両端を含み18~29.9kg/m2、および体重は両端を含み50~100kg。
3.スクリーニング時および1日目の投与前でのFridericia式を使用して補正されたQT間隔(QTcF)は、男性に対しては≦450、女性に対しては≦470。
4.書面のインフォームドコンセントの提出、および試験来院スケジュールを遵守する意思があり、可能であること。
5.投与の少なくとも56日前および3年以内に、MCV4を用いたワクチン接種の書面があること。書面には陽性抗体力価が含まれ、被験薬剤投与前に免疫反応が確認されなければならない。
6.1日目の投与の少なくとも56日前に血清群B髄膜炎菌ワクチンの接種、1日目の投与の少なくとも28日前にブースター投与、1回目と2回目の注射の間に少なくとも28日。
7.妊娠の可能性がある女性対象は、異性愛活動がある場合、以下に規定されるような高度に有効的、または受容可能な避妊方法を使用しなければならず、それをスクリーニング時に開始して、被験薬剤投与後少なくとも6カ月まで継続する。本試験期間中、抗生物質の予防的投与が必要であり、予防的投与がホルモン避妊法の有効性を損なう可能性がある。したがってホルモン避妊法を使用する対象は、抗生物質の予防的投与期間中は障壁的避妊法(例えばコンドームまたは殺精子剤を含むペッサリー)も使用することが推奨された。男性対象は、異性愛活動がある場合、および妊娠の可能性がある女性の配偶者もしくはパートナー、または妊娠している、もしくは母乳育児中の女性の配偶者またはパートナーがある場合、治療期間中および被験薬剤投与後少なくとも6カ月間、障壁的避妊法(男性コンドーム)を使用することに同意しなければならない。精管切除術が成功したことについての書面での医学的評価があった場合でも、障壁的避妊法を必要とした。妊娠の可能性がある男性対象の女性配偶者またはパートナーは、上記に規定されるような高度に有効的な避妊法、または以下に規定されるような受容可能な避妊方法を使用しなければならず、それをスクリーニング時に開始して、被験薬剤投与後少なくとも6カ月まで継続する。スクリーニング期間中および治療期間中、ならびに被験薬剤投与後少なくとも6ヵ月間、男性対象は精子提供をしてはいけない。
【0257】
以下の除外基準のいずれかを満たす対象は、本試験の参加適格ではなかった:
1.2歳よりも若い、または65歳よりも高齢の人々と親密であり、長期的に接触している(同じ屋根の下で生活している、または身の回りの世話を行っていると規定される)対象、または免疫不全であるか、もしくは以下の基礎疾患の内の1つを有している対象:解剖学的無脾症または機能的無脾症(鎌状赤血球症を含む);先天性の補体欠損症、プロパージン欠損症、D因子欠損症または原発性抗体欠損症;後天性の補体欠損症(例えばエクリズマブ投与を受けた);またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)。
2.以下の内の1つである対象:髄膜炎菌症のリスクが高い環境に曝されたことがある専門家;髄膜炎菌に日常的に暴露されていた研究者、産業研究所従事者、および臨床検査室従事者;新兵訓練中の軍関係者(軍関係者は市街戦の状況に置かれたとき髄膜炎菌に感染するリスクが上昇し得る);デイケアセンター勤務者;大学または大学構内に住んでいる;および本試験の経過中に髄膜炎菌性髄膜炎の流行地域(例えばインド、サハラ砂漠以南のアフリカ、ハッジのためのサウジアラビアへの巡礼)に旅行に行く予定がある、または投与前の6か月以内に旅行したことがある。
3.いずれかナイセリア感染症の既往歴。
4.解明されていない再発性の感染症、または投与前の90日以内に全身の抗生物質処置を必要とする感染症の既往歴。
5.HIV感染症(HIV-1またはHIV-2抗体力価による証明)。
6.急性または慢性のB型肝炎ウイルス(HBV)感染症。登録前のすべての対象にB型肝炎表面抗原(HBsAg)検査を要求した。HBsAg陽性の対象は登録されない。HBsAg陰性の対象に関しては、以下の検査アルゴリズムを要求した:B型肝炎コア抗体(HBcAb)が陰性であった場合、対象は登録適格とした。HBcAbが陽性の場合、B型肝炎表面抗体(HBsAb)を検査した。HBcAbおよびHBsAbの両方が陽性であった場合、対象は登録適格とした。HBcAbが陽性でHBsAbが陰性の場合、対象は登録されなかった。
7.急性または慢性のC型肝炎ウイルス(HCV)感染症(抗体力価による証明)。
8.投与前の14日以内に急性の全身性ウイルス感染または真菌感染。
9.QuantiFERON(登録商標)-TB検査が陽性または不確定は、結核(TB)感染の可能性を示唆する。
10.潜伏型TBまたは活性型TBの既往歴、またはスクリーニング来院前の8週以内に流行地域への暴露。
11.母乳育児中の女性対象、または異性愛活動があり、避妊法の実施に前向きでなく、閉経前である女性対象。閉経とは、別の原因が無く、連続的な12カ月以上が無月経であり、被験薬剤投与前の6か月以内に血清卵胞刺激ホルモンレベルが≧40mlU/mL、およびエストラジオール濃度が≦110pmol/Lであることが記録されていることと規定された。
12.スクリーニング時または-1日目に血清妊娠検査が陽性。
13.スクリーニング時または-1日目に、血清クレアチニンが検査室の基準範囲の正常上限(ULN)よりも高い。
14.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が、スクリーニング時に検査室の基準範囲のULNよりも高い、または-1日目に検査室の基準範囲のULNの1.5倍超である。
15.以下の血液検査結果のいずれか:スクリーニング時または-1日目に、ヘモグロビンが男性に対しては<130g/L、女性に対しては<115g/L、ヘマトクリットが男性に対しては<0.37L/L、女性に対しては<0.33L/L、白血球(WBC)数が<3.0x103/μL、絶対好中球数が<2.0x103/μL、および血小板数が、<150または>400x103/μL。-1日目に、治験責任医師により臨床的に関連があり、受容できないとみなされる完全血球算定(CBC)の臨床検査結果。
16.補体欠損症の既往歴、またはスクリーニング時にCAP ELISAにより評価されたときに正常基準範囲を下回る補体活性。
17.悪性腫瘍の既往歴。ただし、治療され、再発の証拠が無い非メラノーマ性皮膚癌または子宮頸部の上皮内癌は除く。
18.1日目の投与開始前の30日以内に、臨床試験に参加。または1日目の投与の30日以内にいずれか実験的低分子治療の使用。
19.複数回のmAbの臨床試験に参加。またはスクリーニング前の12か月以内にmAbの臨床試験に参加し、この期間中に対象が活性被験薬剤に暴露された。ただ1回のみmAbの試験に参加した対象は、スクリーニングの12か月よりも前にその試験が完了した場合に登録とみなされ得た。
20.ALXN1210への曝露前。
21.投与前の90日以内に大手術または入院。
22.ALXN1210の賦形剤に対するアレルギーの既往歴(例えばポリソルベート80)。
23.ペニシリンまたはセファロスポリンに対するアレルギー歴の記録。
24.任意の製品(食物、医薬品など)に対する重大なアレルギー反応(例えばアナフィラキシーまたは血管性浮腫)の既往歴。
25.現在、毎日10本超の喫煙(過去の喫煙は治験責任医師の裁量で登録が許可される場合がある)。
26.スクリーニング来院前の1年以内の不正薬物中毒の既往歴、重大なアルコール中毒の既往歴。またはスクリーニング来院前の6か月以内のアルコールの常用(1週当たり、14単位を越えるアルコール[1単位=ワイン150mL、ビール360mL、または40%アルコールは45mL])。
27.スクリーニング時または-1日目に、薬物中毒の尿スクリーニング検査陽性。
28.被験薬剤投与前の48時間以内にアルコール摂取、または-1日目でのアルコール呼気テスト陽性。
29.投与前の7日以内に血漿献血。投与前の30日以内に、50mLを越える血液、または投与前の56日以内に、499mLを越える血液の献血または消失(スクリーニング時の採取量は除く)。
30.28日を越える継続的な局所、吸入または全身的なステロイドの使用の既往。または被験薬剤投与前の90日以内の任意の吸入または局所的な免疫抑制療法の既往。
31.被験薬剤投与前の14日以内に処方薬(経口避妊薬を除く)の使用。ただし前もってスポンサーの承認がある場合を除く。
32.被験薬剤投与前の14日以内に、植物性の生薬およびサプリメントを含む非処方薬、OTC薬の常用。マルチビタミン、1日当たり≦2gのアセトアミノフェン、および著しい全身吸収を伴わない局所皮膚用製品は許可される。
33.いずれか自己免疫性疾患またはリウマチ性疾患の臨床診断(例えば全身性エリテマトーデス、リウマチ性関節炎)。
34.投与の28日前に弱毒化生ワクチンの接種、または試験経過中にワクチン接種の予定(試験プロトコルに予定されたワクチン接種は除く)。不活化または組み換え型のインフルエンザワクチンの接種は許可された。
35.投与前の14日以内に発熱(37.6℃を越える体温が確認される)があった(例えば症候性のウイルス感染または細菌感染と関連した発熱)。
36.治験責任医師の意見において、対象の本試験の完全参加に干渉し得るとした、またはプロトコルの遵守に干渉し得るとした、または対象に何らかの追加のリスクがもたらされ得るとした、または対象もしくは試験結果の評価を混乱させ得るとした任意の既往歴、状態またはリスクを有する対象。
【0258】
6.感染症
終末補体阻害に関連した感染のリスクを軽減させるために、本試験の対象は以下を投与された:
1.1日目のALXN1210投与の少なくとも56日前にMCV4ワクチン接種(直近3年以内にMCV4接種がされていなかった場合、または対象はすでにワクチン接種されていたが過去のワクチン接種を立証する適切な書面が無かった場合)。
2.血清群B髄膜炎菌ワクチンの2回の注射。1日目の投与の少なくとも56日前に最初の注射が投与され、1日目の投与の少なくとも28日前にブースター投与が為されなければならず、1回目と2回目の注射の間に少なくとも28日あける。
3.(CH50アッセイにより決定される)補体活性の正常化まで、予防的な抗生物質処置の経口ペニシリンV 500mgを1日2回(1×106単位に相当)。
抗生物質の最初の投与量は、-1日目の夜、被験薬剤の1日目(の投与量の投与)の前に経口投与される。本試験の外来患者となる部分については、対象は予定された各日でほぼ同じ時間(1日2回)に抗生物質を摂取するよう指導された。適切なシステム(例えば書面のメッセージ送付)を使用して、対象が抗生物質の予防的レジメンを遵守していることを毎日監視した。
【0259】
以下の所見は、この単回投与試験における抗生物質の予防的投与をサポートするものである:
1.ペニシリンは、キャリアにおける髄膜炎菌の除去の選択薬剤であった。
2.2~4年間にわたる再発性の髄膜炎菌疾患に対する予防としてベンザチンペニシリンGの注射を毎月受けていた補体欠損患者は、予防的投与を受けなかった欠損患者よりも有意にナイセリア感染症状の出現が少なかった(Figueroa JE,et al.,Clin.Microbiol.Rev.1991 Jul;4(3):359-95)。
3.プラスミドにコードされたβ-ラクタマーゼにより生じる、ペニシリン対する高レベル抵抗性は、髄膜炎菌系統では稀であった(Yazdankhah SP,et al.,J.Med.Microbiol.2004 Sep;53(Pt 9):821-32)。
4.1日2回のペニシリンV 500mgの経口投与による抗生物質の予防的投与は、一部の医師によりエクリズマブを用いたPNHおよびaHUSの患者の治療において提供されていた(Kelly RJ,et al.,Blood 2011 Jun 23;117(25):6786-92およびLeeds Teaching Hospitals NHS Trust,Kings College Hospital NHS Foundation Trust.National Specialised Commissioning Team(NSCT)Service Specification Paroxysmal Nocturnal Haemoglobinuria(PNH).2013))。
5.免疫不全患者におけるワクチンの有効性に関する不確実性は、例えばフランスなどのいくつかの国で提唱されており、PNHおよびaHUSの患者のエクリズマブ治療期間中、継続的な抗生物質の予防的投与が推奨されている(Zuber J,Fakhouri F,Roumenina LT,Loirat C,Fremeaux-Bacchi V.Use of eculizumab for atypical haemolytic uraemic syndrome and C3 glomerulopathies.Nat.Rev.Nephrol.2012 Nov;8(11):643-57)。
【0260】
7.過去および併用される薬剤ならびに医療行為
過去の薬剤(対象がICFに署名した時点の前、14日以内から被験薬剤が投与されるまでに対象により摂取された任意の薬剤または物質)および併用薬(被験薬剤の投与後から最後の試験来院が完了するまでに対象により摂取された任意の薬剤または物質)は、対象の電子的症例報告書(eCRF)に記録された。過去の医療行為(対象がインフォームドコンセントに署名した時点の前、14日以内から被験薬剤が投与されるまでに実施された任意の治療的介入[例えば外科手術/生検、理学療法])、および併用される医療行為(被験薬剤が投与された後、最後の試験来院が完了するまでに実施された任意の治療的介入[例えば外科手術/生検、理学療法])は対象のeCRFに記録された。
【0261】
併用療法は、対象が試験のためのスクリーニングを受けた時点から、最後の試験来院が完了するまでに投与された任意の薬剤または物質とした。試験期間中、対象は、治験責任医師の許可を受けない限り、非処方薬および植物性調製物を含む新たな医薬品をいずれも摂取し始めないよう指導を受けた。OTCの解熱薬または鎮痛剤(例えばアセトアミノフェン)の随時使用は本試験期間中にも許可された。
【0262】
併用医療行為は、対象がインフォームドコンセントに署名した時点から最後の試験来院までに実施された任意の治療的介入(例えば外科手術/生検、理学療法)または非試験的診断評価(例えば血液ガス測定、細菌培養など)とした。医学的に適応されない限り、併用医療行為は許可されなかった。
【0263】
8.無作為化および盲検化
試験対象患者基準および除外基準に合致した適格患者は、登録および無作為化のための固有番号に割り当てられた。
本試験は以下のように部分的盲検化試験であった:
・コホート1a.投与(単回400mg投与量のALXN1210 SCまたはプラセボ SC)は二重盲検であった。コホート1aの対象は、2:1の比率で無作為に割り当てられた(4名がALXN1210 SC、2名がプラセボSC、N=6)。
・コホート1b.投与(単回400mg投与量のALXN1210 SCまたはプラセボ SC)は二重盲検であった。コホート1bの対象は、5:1の比率で無作為に割り当てられた(20名がALXN1210 SC、4名がプラセボSC、N=24)。
・コホート2.投与(単回400mg投与量のALXN1210 IV)は非盲検であった(N=12)。
コホート2の投与中、対象および現場の医療/看護スタッフの両方が、投与される薬剤/投与量を知っていた。
コホート1aおよび1bの投与中、対象およびの試験センターの現場の医療/看護スタッフは、被験薬剤の割り当てに対して盲検化されていた。SC注射を準備する薬局スタッフは盲検化されておらず、被験薬剤を投与する者も盲検化されていなかった。一方で、安全性評価に関与する他のすべての試験センタースタッフは、被験薬剤の割り当てに対して盲検化されたままであった。必要に応じてスポンサーのスタッフは非盲検化され(例えば、SC注射が適切に準備されていることを監視するため、SAEの報告義務性について決定するため)たが、被験薬剤割り当てに関するいずれの情報も試験センタースタッフと共有することは控えられた。
【0264】
9.被験薬剤の説明
調査対象の製品を表16に記載する。
【0265】
【0266】
10.ALXN1210およびプラセボ
ALXN1210 SCの各バイアルは、50mMのリン酸ナトリウム、25mMのアルギニン、5%スクロースおよび0.05%のポリソルベート80中、100mgのALXN1210(100mg/mL)を含有した。ALXN1210 SCはpH7.4で製剤化され、完全製剤化された滅菌済みの保存剤を含まない100mg/mLのALXN1210水溶液として2mLの単回使用バイアル中に供給されて提供された。ALXN1210 SCの各バイアルには、投与用に1mL(100mgのALXN1210)が確実に引き抜かれ得るようにわずかに過充填を含んだ。
【0267】
プラセボSCの各投与量は、0.9%塩化ナトリウム注射液、pH EurまたはBPを含み、コホート1aおよび1bに指定された量と同量であった。
【0268】
ALXN1210 IVの各バイアルは、10mMのリン酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、0.02%のポリソルベート80、および注射用水中に150mgのALXN1210を含有する。ALXN1210 IVはpH7.0で製剤化され、完全製剤化された滅菌済みの保存剤を含まない10mg/mLのALXN1210水溶液として20mLの単回使用バイアル中に供給されて提供された。ALXN1210 IVは、0.9%塩化ナトリウム注射液、Ph EurまたはBPで希釈され、333mL/時の最大速度でIV点滴により投与された。安全性および技術的な理由による中断を除く。
【0269】
ALXN1210のバイアルは、2℃~8℃(36°F~46°F)の冷蔵条件下で保存され、遮光された。ALXN1210のバイアルは、凍結されず、または振とうされなかった。ALXN1210 SCおよびプラセボSCは、SC投与用のシリンジ内で盲検様式で調製された。ALXN1210 SCまたはプラセボSCは希釈されなかった。ALXN1210 SCおよびプラセボSCは、シリンジ内に直接入れられた。
【0270】
ALXN1210 IVは、市販の生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム注射液、Ph
EurまたはBP)に希釈し、安全性および技術的な理由による中断を除き、333mL/時の最大速度でのIV点滴用に設計された。
【0271】
ALXN1210 IVは、0.9%塩化ナトリウム注射液、Ph EurまたはBPで希釈され、その後投与された(投与溶液)。投与溶液の使用時の保存期間は、室温の15℃~25℃(59°F~77°F)で4時間であった。投与溶液の有効期限と残余時間は、最初のバイアルを割った時から算出された。投与量は、有効期限および残余時間内に投与された。引き込まれたALXN1210 SCまたはプラセボSCの各1mLシリンジ(対象1名当たり4本のシリンジ)は、バイアルからシリンジに引き込んでから1時間以内に投与された。
【0272】
11.投与
ALXN1210 SCまたはプラセボSCの全投与量は、腹部においてそれぞれ1mL中100mgのSC注射を4回行うことにより投与された(表17)。4回の1mL注射はすべて15分かけて投与された。1人の対象での注射の終了と、次の対象での注射の開始の間には少なくとも15分間置かなければならない。
【0273】
表17:ALXN1210 SCおよびプラセボSCの調製に関する投与基準チャート
【表17】
【0274】
ALXN1210 IVの全投与量は、インラインフィルターを備えたIVセットを使用し、安全性または技術的な理由での中断を除き、333mL/時の最大速度でIV点滴により投与された。1人の対象での点滴の終了と、次の対象での点滴の開始の間には少なくとも15分間置かなければならない。
【0275】
表18:ALXN1210 IVの調製に関する投与基準チャート
【表18】
【0276】
12.被験薬剤投与中の潜在的な有害事象の管理
モノクローナル抗体のIV点滴で治療された一部の対象は、急性アレルギー反応/過敏反応またはサイトカイン放出症候群として分類できる兆候または症状を伴う、同時発生的な点滴関連反応を経験した。
【0277】
循環系および/もしくは呼吸器系の変化または停止、または蕁麻疹、関節痛、筋肉痛もしくは他の関連反応兆候を含む、アナフィラキシーおよび他の過敏反応のいずれか症状に関し、対象は被験薬剤の投与中、および投与後に注意深く監視された。適切な治療が直ちに利用可能であった。点滴に関連した有害事象が発生する可能性があり、そのタイプと重大性に応じて、点滴の中止が要求され得る。蕁麻疹、顔、まぶた、唇もしくは舌の腫れ、または呼吸困難を含む過敏反応の早期症状および兆候について対象は情報を受けた。急性点滴反応アルゴリズムを使用して、点滴関連反応を管理した。本試験において、点滴反応および点滴部位反応を監視する定期的評価が実施された。確実に反応に対して迅速に取り組めるよう、1人の対象における点滴/注射の終了と、次の対象における点滴/注射の開始の間には少なくとも15分おいた。1日当たり、6人以下の対象に実施された。全ての反応が治療され、投与継続/漸増および毒性規則に考慮された。アナフィラキシー反応が発生した場合、UK Resuscitation Councilの最新の「UK Treatment Guideline for Anaphylactic Reactions」に従った。
【0278】
13.薬物動態(PK)および薬力学的(PD)評価
被験薬剤の投与後、血清ALXN1210濃度の決定用、ならびに総C5濃度および遊離C5濃度、cRBC溶血、ならびに潜在的なC5活性化の他の測定尺度の分析用の血清サンプルを以下の時点で採取した。実際の血清サンプル採取の日付と時間が記録され、PKおよびPDの算出に使用された:
・ ALXN1210の血清濃度は、以下のサンプル採取時点から分析された:投与前(点滴/注射の開始[SOI]前の15分以内);1日目の点滴/注射の終了(EOI)時、EOIの30分後、およびSOI後の以下の時点:2時間、4時間および8時間;2日目(24時間);3日目(48時間);5日目(96時間);8日目(168時間);15日目(336時間);22日目(504時間);29日目(672時間);36日(840時間);43日(1008時間);50日(1176時間);57日(1344時間);71日(1680時間);90日(2136時間);120日(2856時間);150日(3576時間);および200日(4776時間)。
適切な数の血清PKサンプルを提供し、濃度-時間プロファイルを特徴解析された全対象者が、PK分析集団に含まれた。PDサンプルを提供した全対象者が、PD分析集団に含まれた。
【0279】
14.免疫原性の評価
血清サンプルは以下の時点で採取された:投与前(SOI前の15分以内)および15日目(336時間)、29日目(672時間)、57日目(1344時間)、90日目(2136時間)、120日目(2856時間)、150日目(3576時間)および200日目(4776時間)。そしてALXN1210に対するADAに関して分析された。抗体反応のさらなる特徴解析は、必要に応じてALXN1210のPK/PDデータおよび安全性データに基づき実施された。
【0280】
ADA用の投与前および投与後のサンプルを提供する全患者が、免疫原性分析集団に含まれた。
【0281】
免疫原性アッセイは、ALXN1210に対する抗薬剤抗体(ADA:antidrug antibody)を評価するものである。免疫原性分析用の血清サンプルを収集、処理、保存、および輸送するための手順に関する詳細な説明は、臨床検査マニュアルに提示されている。
【0282】
15.安全性評価
安全性評価には、TB検査、身体検査所見、バイタルサイン測定、免疫原性(ADA)検査、臨床検査の評価、ECG、点滴部位および注入部位の評価(例えば出血、痣、紅斑、腫脹、硬結および痛みなど)、および有害事象のモニタリングが含まれた。有害事象は、2010年6月14日に公開されたNational Cancer Institute Common Terminology Criteria for Adverse Events v4.03(CTCAE v4.03)に従って等級分けされた。臨床検査の評価には、血液検査、化学検査および凝固パネル;鑑別を伴うCBC;尿検査;および女性対象用の血清妊娠検査が含まれた。
【0283】
臨床評価および臨床検査評価を実施して、ALXN1210の安全性を評価した。評価のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。異常な結果は、解消または安定化されるまで追跡された。
【0284】
年齢、性別、人種および民族を含むデモグラフィックパラメータのレビューは、評価スケジュールに記載されるように実施された。完全な既往歴が収集された。
【0285】
バイタルサインの測定は、対象が仰臥位または半横臥位で休んだ後に少なくとも5分間収集され、体温(℃、経口)、呼吸数、臥位血圧および脈拍が含まれる。バイタルサイン測定のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。範囲外の血圧または脈拍の測定は、治験責任医師の裁量で繰り返された。すべての確認された臨床的に重大なバイタルサインの測定値は、有害事象として記録された。
【0286】
体重、身長およびBMIは、評価スケジュールに記載されるように記録された。各検査には、以下の評価が含められた:全身外観;皮膚;頭部、耳、眼、鼻および喉;頸部;リンパ節;胸部;心臓;腹腔;四肢;中枢神経系;および筋骨格系。
【0287】
対象が少なくとも5分間休息した後に、三重12-リードのECGを取得した。ECGのタイミングは、評価スケジュールに記載されている。さらに各投与時に、コホート2においてIV点滴の投与前から投与終了まで、コホート1aおよび1bにおいてSC注射の投与前から終了の3時間後までの継続的な心電図の登録が行われた。心拍数、PR、QRS、RRおよびQTが測定され、補正QTcF間隔が算出された。
【0288】
血液検査、臨床化学検査、凝固検査およびウイルス血清検査のための血液サンプル、ならびに尿検査、尿化学検査のための尿サンプル、ならびに薬剤およびアルコールのスクリーニングが、評価スケジュールに記載されるように収集された。
【0289】
血液サンプルは以下の血液パラメータに関して分析された:血小板、赤血球(RBC)数およびWBC数;自動化鑑別(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球);ヘモグロビン;ヘマトクリット;およびRBC指数(平均赤血球量、平均赤血球ヘモグロビン、および平均赤血球ヘモグロビン濃度)。血液評価のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0290】
血液サンプルは、以下の臨床化学パラメータに関して分析された:血液尿素窒素、クレアチニン、グルコース;ナトリウム;リン;カリウム;塩化物;総二酸化炭素;総カルシウム;マグネシウム;AST;ALT;ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ;アルカリホスファターゼ;乳酸デヒドロゲナーゼ;総ビリルビン、直接ビリルビンおよび間接ビリルビン;尿酸;アルブミン;および総タンパク質。間接ビリルビンは総ビリルビン値と直接ビリルビン値から算出されることを考慮すると、直接ビリルビンが定量限界を下回った場合には間接ビリルビンの結果は得られない。
【0291】
血清卵胞刺激ホルモン値とエストラジオール濃度は、閉経後女性対象に関してスクリーニング時に計測され、閉経状態が確認された。
【0292】
化学的評価のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0293】
血液サンプルは、プロトロンビン時間、国際標準化比、および部分トロンボプラスチン時間に関して分析された。凝固評価のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0294】
尿検査には、比重、pH、グルコース、タンパク質、血液、およびケトン類が含まれる。異常所見に対してのみ、尿サンプルの顕微鏡検査が行われた。尿サンプルをさらに病理検査室に送付し、タンパク質とクレアチニンを測定して、尿タンパク質:クレアチニン比が算出された。尿検査および尿化学的評価のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0295】
スクリーニング時に採取された血液サンプルは、HIV-1、HIV-2、HBsAgおよびHCVの抗体力価に関して分析された。登録前のすべての対象に、B型肝炎表面抗原検査を要求した。HBsAg陽性の対象は登録されなかった。HBsAg陰性の対象に関しては、以下の検査アルゴリズムを要求した:
1.HBcAbが陰性であった場合、対象は登録適格とした。
2.HBcAbが陽性の場合、B型肝炎表面抗体(HBsAb)を検査した。
a.HBcAbおよびHBsAbの両方が陽性であった場合、対象は登録適格とした。
b.HBcAbが陽性でHBsAbが陰性の場合、対象は登録されなかった。
【0296】
薬剤スクリーニングのための尿サンプルは、以下の化合物に関して分析された:アンフェタミン、バルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、コカイン、メタドン、アヘン、フェンシクリジン、メタンフェタミン、3,4-メチレンジオキシ-メタンフェタミン、およびテトラヒドロカンナビノール(カンナビノイド)。アルコール呼気検査を実施した。投与前に陽性であった場合、投与に進行しなかった。尿薬物検査およびアルコール呼気検査のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0297】
全ての女性対象において、妊娠検査(ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン)を行った。妊娠検査のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0298】
QuantiFERON-TB試験用の血清サンプルは、評価スケジュールに記載されるように収集された。
【0299】
補体活性を決定するための適切なアッセイ、例えばCAP ELISA/C5(溶血)阻害などをスクリーニング時に実施して、対象が補体欠損を有していないことを確認した。補体欠損が判明した対象は、本試験の参加から除外された。
【0300】
基準時、およびインビトロ LIAを使用したCH50活性の測定のための追跡期間中に血清サンプルは集められ、補体活性の正常化が確認された。追跡期間中に収集された、対象の最初のCH50サンプルから正常なCH50結果が得られた場合には、抗生物質の予防的投与を中止してもよく、そして予定にある2回目のCH50サンプルは必須ではなかった。最初と2番目のCH50サンプルが正常ではなかった場合、基準サンプルを分析してもよく、補体活性が回復するまでさらにCH50サンプルを採取した。
【0301】
髄膜炎菌血清群A、C、W135およびYに対する血清殺菌抗体(SBA:serum
bactericidal antibody)の力価決定が、スクリーニング時に実施された。力価測定値を使用して、免疫反応が無い対象を、投与から除外した。
【0302】
皮下注射またはIV点滴の部位評価を実施した。SC注射部位またはIV点滴部位の痛みは、Visual Analog Scale(0-10)を使用して評価された。痛みは投与前には評価されなかった。1cmの大きさの硬結または反応は、24時間を超えて持続した場合を除き、有害事象として記載されなかった。
【0303】
血清サンプルを、抗薬剤抗体(ADA)に対して分析した。ADA血清サンプル収集のタイミングは、評価スケジュールに記載されている。
【0304】
16.有害事象の管理
治験責任医師は、すべての有害事象(AE)を検出し、評価し、文書化し、報告する責任を負う。インフォームドコンセント用紙の署名時から、試験完了までのすべてのAEが記録された。因果関係があると考えられるSAEに対しては、期限を設けなかった。
【0305】
因果関係に関係なく、観察された、または自発的なすべてのAEが報告され、データ取り込みシステムに記録された。対象および/または親もしくは法的保護者によって報告された有害事象、ならびに/または試験関係者からの自由回答式の質問に応答して特定された有害事象、または観察、身体検査もしくは他の試験手順によって明らかになった有害事象が集められ、記録された。
【0306】
AEは、医薬品または医療行為と関連するとみなされたかどうかに関わらず、臨床試験の経過中に発生した、医薬品の使用または医療行為と時間的に関連づけられたすべての好ましくない、意図していない兆候(例えば異常な検査室所見)、症状、または疾患と規定された。
【0307】
慢性的または断続的な既存の状態の憎悪は、当該状態の頻度および/または強度の増加のいずれかを含み、すべてAEとみなされた。
【0308】
異常な検査所見はAEとみなされた。異常な検査値が特定された場合、治験責任医師は、分離された異常検査値ではなく、診断、または兆候もしくは症状を報告することが強く推奨された。以下の条件のいずれかに合致した場合、異常な検査所見はAEとして文書化された:兆候または症状と関連づけられた;追加の診断検査を必要とした(反復検査は追加検査とはみなされない);医学的または外科的な介入を必要とした;プロトコルで規定された投与から外れた、試験投与の変化が生じた、または試験の中断が生じた;大幅な追加的処置を必要とした;上記の条件のいずれにも合致しなかった。
【0309】
この定義には、以下に起因する兆候または症状も含まれる:薬剤過剰摂取、薬剤の離脱症状、薬剤乱用、薬剤間の相互作用、溢出、妊娠中の暴露、母乳を介した暴露、投薬ミス、および職業性暴露。
【0310】
AEは、必ずしも以下を含むとは限らない:
・医学的手段または外科的手段(例えば手術、内視鏡、抜歯、輸血);当該医療行為に繋がる状態は、AEとした(例えば腹腔鏡下胆嚢摘出術は、壊死性胆嚢のSAEに対する医療行為または治療であった)。
・スクリーニング評価の前に存在し、または検出されていた既存の疾患または状態であって、悪化しないもの。
・有害な医学的事象が発生していない状況(例えば予約手術のための入院。本試験の開始前に予定されていたものであった場合;社会的および/または利便性からの入院)。
【0311】
以下に列記される基準のいずれか1つを満たすAEはすべて、SAEと記録されるものとした:
SAEは、すべての投与量で、以下のいずれか有害な医学的事象として記録された:
1.死者が生じさせる
2.生命を脅かすa
3.入院または入院期間の延長を必要とするb 入院は、必ずしも以下を含まれるとは限らない:
・リハビリテーション/ホスピス/看護施設
・24時間未満の救急来院
・予約または予定されていた入院/手術/日帰り手術
・プロトコルに指定された入院
・新たなAE、または既存のAEの悪化のいずれとも関連していない既存の状態のための入院
4.持続的もしくは重大な障害/不適格を生じさせる
5.先天異常/出生異常である
6.重要な医学的事象であるc
a 「重大」という定義における「生命を脅かす」という用語は、対象が当該事象の時点で死亡するリスクがある事象を指す;仮定としてより重度であった場合に死をもたらし得る事象は指さない。
b 入院には、患者の入院または、すでに入院している期間の延長を必要とする。入院または入院期間の延長に関連したAEは、SAEとみなされた。
c 重要な医学的事象:例えば直ちに生命を脅かすものではない、または死をもたらさない、もしくは入院が生じないが、対象を危険にさらす、または上記の定義に列記される他の転帰のうちの1つを予防するために介入を必要とするであろう重要な医学的事象など他の状況において、迅速報告が適切であるかどうかの決定に、医学的判断および科学的判断が為されなければならない。これらも通常、重大であるとみなされるものとする。そうした事象の例は、アレルギー性気管支けいれんに対する、救急診療部または自宅での集中治療;入院を必要としない造血機能障害もしくはけいれん;または薬物依存もしくは薬物乱用の発現である。
【0312】
重大度と重大性は差別化されるものとした。重大度は、AEの強度について記載したものであり、一方で重大性という用語は、上述のようにSAEの基準を満たしたAEを指す。
【0313】
すべてのAEは、2010年6月14日に公開されたCTCAE v4.03の以下の基準に従って等級分けされた。
・グレード1:軽度(兆候または症状の認識があるが、容易に忍容される)
・グレード2:中程度(通常の活動に干渉を生じさせるのに十分な不快感)
・グレード3:重度(通常の活動を実施できないほどの身体機能の喪失)
・グレード4:生命を脅かす
・グレード5:致命的
AEの重大度の変化は書面化され、評価される各強度レベルでのAE持続時間の評価を可能とした。断続的と特徴付けられた有害事象は、その断続的事象の重大度が変化した場合、症状の発現ごとに発生と持続期間の書面化を必要とした。
【0314】
すべてのAE(重大および非重大の両方)について、治験責任医師の因果関係評価が提出された。この評価は、必要に応じてデータ捕捉システムに記録され、任意の追加形式に記録された。因果関係評価の定義は以下のとおりであった:
・関連しない(無関係):この関係性からは、被験製品と報告された事象の間に関連性が無かったことが提唱される。
・関連した可能性は低い:この関係性からは、臨床像が被験製品以外の原因と高度に一致したが、寄与を絶対的確実性で無かったことにはできず、被験製品とAEの間の関係性を完全な信頼で排除することはできないことが提唱される。
・関連したと思われる:この関係性からは、被験製品を用いた治療がAEの原因または寄与していた可能性が提唱される。すなわち当該事象は、被験薬剤投与時からの合理的な時系列に従ったもの、および/または被験製品に対する公知の反応パターンに従ったものだが、他の因子により発生する場合もあり得る。
・おそらく関連した:この関係性からは、本被験製品投与と当該事象の合理的な時系列が存在し、ならびに当該事象と被験製品が関連する可能性が提唱される。これは、被験製品の公知の薬理学的作用、被験製品もしくは薬物群に対して公知の、または過去に報告された有害反応、または治験責任医師の臨床経験に基づく判断に基づく。
・完全に関連した:被験製品との時間的関連性。他の状態(同時に発生した病気、同時に発生した投薬反応、または疾患状態の進行/発現)は、当該事象を説明しないと思われる。当該事象は、公知の薬学的プロファイル、中断に対する改善、再投与での再発と一致する。
【0315】
対象が、死の転帰を伴うSAEを経験する場合、以下の手順を実施した: 死をもたらすSAEは、死亡/致死として結果を書面化し、終了日は死亡日とする。死亡時に進行中の追加のAE/SAEが対象にあった場合、これらの事象は終了日なしで継続中として文書化された。剖検報告書または治験責任医師が別段であることを述べない限り、死亡/致死の結果もたらす事象は1つのみである。
【0316】
17.統計
データベースのロックの前に、正式な統計解析計画(SAP)が作成され、最終化された。
安全性集団は、少なくとも1回の被験薬剤の投与を受けたすべての対象から構成される。この集団の対象を安全性分析に使用した。
【0317】
PK集団は、PKパラメータの算出を可能にするのに充分な血清濃度データを有するすべての対象から構成される。PK集団を、PKの要約に使用した。
【0318】
PD集団は、充分な総C5濃度データおよび遊離C5濃度データ、ならびにcRBC溶血データを有するすべての対象から構成される。PD集団を、PDの要約に使用した。
【0319】
免疫原性分析集団は、収集された投与前および投与後のADAサンプルを有するすべての対象から構成される。
【0320】
評価可能なサンプルサイズの合計は36名の対象であり、24名がコホート1のALXN1210 SC対象であり、12名がコホート2のALXN1210 IV対象であった。これによりALXN1210 SCとIVのバイオアベイラビリティの比率に対する90%信頼区間の下限が>0.4であったと推論するための>80%のパワーが与えられ、絶対的バイオアベイラビリティが0.6、および変動計数が0.35と仮定された。さらに、6名の対象がプラセボSCを投与され、コホート1aで2名、およびコホート1bで4名であった。コホート1aに対する無作為化は2:1の比率で、コホート1bは5:1の比率で実施され、ALXN1210 SCまたはプラセボ SCのいずれかを投与された。これにより、予定総数でN=42の対象が得られた。
【0321】
概して、連続変数に関する記述統計学には、非欠損値数、算術平均、標準偏差、中央値、最小値および最大値を含む。PKパラメータに関する記述統計学には、観察数、算術平均、標準偏差、算術変動係数(%CV)、中央値、最小値、最大、幾何平均および幾何%CVが含まれる。カテゴリ変数は、百分率および頻度カウントを使用して、コホートおよびタイムポイントによって要約された。
【0322】
すべての対象が、対象治験継続状況の要約に含められた。この要約は、スクリーニングおよび治療されて本試験を完了した、または中止した対象の頻度と百分率を、コホートごとに中止の理由とともに要約するものである。デモグラフィックおよび基準時の特性が、コホートごとに、および全体的に、全ての対象に関して要約された。
【0323】
安全性分析は安全性集団で実施され、各コホートごとに報告された。安全性解析には、すべてのAE、ECG、臨床検査データ、身体検査、およびバイタルサイン測定値の分析が含まれ、記述統計学を使用して提示された。本試験の安全性パラメータに対し、推論統計解析は計画されなかった。被験薬剤投与下のAEおよびSAEの発生率は、被験薬剤との関連性により、各コホートおよび全体に対し、器官別大分類および基本語により要約された。また、被験薬剤投与下のAEは、重大度により、コホートごとに、および全体で要約された。本試験からの離脱を生じさせる重大なAEが列記された。カテゴリ(例えば全体、器官別大分類、基本語)内で複数のAEを有する対象は、そのカテゴリ中で1回とカウントされた。重大度の表については、カテゴリ内の対象の最も重大な事象がカウントされた。
【0324】
バイタルサイン測定値および臨床検査評価(例えば、化学、鑑別を伴うCBC、および尿検査)における基準値からの変化は、各コホートごとに要約された。検査室パラメータ値は、CTCAEに従って等級分けされた。これらの検査室パラメータに対し、コホートごとにシフト表が作成された。これらの表は、参照範囲と比較した各基準等級の対象数、および本試験中、投与後に評価された最も悪い等級への変化を要約する。
【0325】
指定時点で、心拍数、PR、RR、QRS、QT、および補正QTcF間隔を含むECGパラメータが測定された。収集した時点での三重ECG測定値の平均を計算し、治療前基準からの変化をコホートごとに評価した。
【0326】
各来院時に以下の異常値基準のいずれかを満たす対象の頻度および百分率をコホートごとに要約する異常値分析が実施された。
・QT、QTcF間隔>450ミリ秒
・QT、QTcF間隔>480ミリ秒
・QT、QTcF間隔>500ミリ秒
・QT、QTcF間隔が、基準から30ミリ秒超増加する
・QT、QTcF間隔が、基準から60ミリ秒超増加する
【0327】
すべての併用薬は、WHO Drug Dictionaryを使用してコード化され、併用薬の頻度および百分率が要約された。
【0328】
ALXN1210治療対象に対する個別の血清濃度データを、実際のサンプリングの日付と時間とともに使用して、Phoenix WinNonlin 6.3以上を使用したノンコンパートメント分析法によりPKパラメータを導いた。
【0329】
以下のPKパラメータが導かれた:観察された最大血中濃度(Cmax)、観察された最大血中濃度までの時間(Tmax)、ゼロ時から最後の定量可能濃度までの血清濃度と時間の曲線下面積(AUCt)、ゼロ時から無限までの曲線下面積(AUC∞)、終末相排泄速度定数(λZ)、終末相排泄半減期(T1/2)、総クリアランス(CLまたはCL/F)および分布量(VdまたはVd/F)。
【0330】
幾何平均比(ALXN1210 SC/ALXN1210 IV)およびその90%CIが、Cmax、AUCtおよびAUC∞に対してコンピューター計算され、一覧にされた。CIは、対象間の分散を使用してコンピューター計算された。経時的な濃度評価が提示された。
【0331】
ALXN1210 SCおよびIVのPD効果は、血清総C5濃度および血清遊離C5濃度、cRBC溶血ならびに経時的なC5活性化に関する他の測定尺度における変化を評価することにより査定された。評価スケジュールに記載されるように収集されたサンプルに対して分析が実施された。
【0332】
ADAにより測定される免疫原性が、コホートごとに、および対象ごとの項目により表形式で要約された。
【0333】
実施例3:健常対象における、皮下投与と静脈内投与を比較する、ALXN1210の単回投与を評価するための第1相試験の結果。
以下は、実施例2で記載されるように実質的に実施された、単回投与の第I相試験からのデータの要約である。具体的には、本試験は、健康な対象42名において、皮下投与されたALXN1210の単回投与量400mgを、静脈内投与された単回投与量400mgのALXN1210、または皮下投与されたプラセボと比較する、安全性、忍容性、薬物動態(PK)、薬力学(PD)および免疫原性を評価するために設計された。
【0334】
1.対象の治験継続状況
スクリーニングされた161名の対象のうち、42名(26.09%)の対象を無作為に割り当てて被験薬剤を投与した:プラセボSC(n=6)、ALXN1210 SC(n=24)、およびALXN1210 IV(n=12)(
図48)。無作為化された対象のいずれも、早期に治験を中止した者はいなかった。
【0335】
2.プロトコルの逸脱
少なくとも1回のプロトコルの逸脱が、36名の対象(プラセボSC:n=6;ALXN1210 SC:n=20;およびALXN1210 IV:n=10)に対して報告された。プロトコル逸脱のカテゴリには、時間枠の逸脱、対象のコンプライアンス、評価が実施されない、除外基準、および投薬量の投与が含まれた。
【0336】
ALXN1210 IV集団の2名の対象において、プロトコル逸脱が重大として評価された。1人の対象において、29日目のADA、PK、PDおよび臨床検査の評価は、当該対象が追跡来院に来なかったために実施されなかった。他の対象において、71日目のPKおよびPDのサンプルが、当該対象が追跡来院に来なかったために、収集されなかった。これらの逸脱は、試験デザインの性質(PK関連のプライマリーエンドポイント)が原因の重大な逸脱として評価されたが、これらは結果の解釈に影響を与えるとはみなされなかった。他のプロトコル逸脱のいずれも、結果の解釈または対象の安全性に影響を与えたとはみなされなかった。血清妊娠試験の結果は、試験中、全ての対象において陰性であった。
【0337】
3.薬物動態評価、薬力学的評価、免疫原性の評価
42名の無作為化対象の全員が被験薬剤の投与を受け、安全性セットに含まれた(表19)。これらの対象の全員が定義に基づきPDセットおよび免疫原性分析セットにも含まれた。ALXN1210 SCまたはALXN1210 IVのいずれかを投与された安全性セットの36名の対象は充分な血清濃度データを有し、PKパラメータの計算が可能であり、PKセットに含められた(表19)。
【0338】
表19:分析集団(全員が無作為化対象)
【表19】
【0339】
4.デモグラフィックおよび他の基本特性
治療集団全体で、大部分の対象は男性(66.7%)および白人(69.0%)であり、平均(±SD)年齢は35.0(±7.65)歳であった。全集団に対する平均(±SD)BMIは、24.035(±3.1582)であった。概して、デモグラフィックは治療集団全体で良好なバランスが取れていた(表20)。
【0340】
表20:デモグラフィックデータ-治療ごとの記述統計(安全性セット)
【表20】
【0341】
過去の医薬品の使用は、ALXN1210 SC集団において5名(20.8%)の対象に報告があった。
【0342】
プラセボSC集団およびALXN1210 IV集団においては、過去の医薬品の使用に関する報告は無かった。
【0343】
併用薬の使用は、プラセボSC集団、ALXN1210 SC集団およびALXN1210 IV集団のそれぞれにおいて、3名(50.0%)、13名(54.2%)、および8名(66.7%)の対象に報告があった。最も多く使用された併用薬は、AE治療用のアニリド、例えばアセトアミノフェン/パラセタモール(15名の対象)、次いで避妊用のプロゲストゲンとエストロゲンの多剤混合薬(7名の対象)であった。本試験の結果に影響を与えると予測される併用薬の報告は無かった。
【0344】
いかなる非薬理学的な治療および医療行為も受けた対象はいなかった。ALXN1210 SCまたはプラセボSCの全投与量は、腹部においてそれぞれ1mL中100mgのSC注射を4回行うことにより投与された。ALXN1210 IVの全投与量は、インラインフィルターを備えたIVセットを使用し、IV点滴により投与された。全対象が、自身に割り当てられた投与を受けた。
【0345】
5.薬物動態、薬力学、および免疫原性の結果および個別の対象データの一覧
PK分析は、PKセットに対して実施され、当該PKセットは、ALXN1210 SCまたはALXN1210 IVのいずれかを投与され、PKパラメータの計算が可能な充分な血清濃度のデータを有する安全性セットの全対象から構成された。
【0346】
図49~50は、ALXN1210のSC投与およびIV投与の後の、健常な対象の平均(±SD)血清濃度-時間のプロファイルを示す(線形スケールおよび対数線形スケール)。個々のALXN1210血清濃度と予定時間のプロットは、線形スケール(
図49)および対数線形スケール(
図50)をそれぞれ使用して提示される。
【0347】
SC投与およびIV投与後のALXN1210の薬物動態パラメータは、表21に要約する。合計で24名の対象がALXN1210 SC投与を受けた;SC注射後のt
max中央値(範囲)は、169.8(96.0~508.1)時間であった。幾何平均(CV%)t
1/2は、ALXN1210のSC投与およびIV投与に対してそれぞれ31.3(13.6)日および29.9(15.4)日で類似していた。ALXN1210の排出も、IV経路とSC経路の間で類似していた(
図49)。
【0348】
表21:ALXN1210の薬物動態パラメータの要約(薬物動態セット)
【表21】
【0349】
表22は、ALXN1210 SCの絶対的バイオアベイラビリティを要約したものである。ALXN1210 SCのPKパラメータ(Cmax、AUCt、およびAUC∞)は、データの対数変換後の混合モデルを使用した統計解析によって、基準(ALXN1210 IV)と比較された。ALXN1210(SC/IV)に対するCmaxのGMRは、26.1%(95% CI:21.3、32.0)であった。AUC∞推定値(SC/IV)のGMRに基づいて決定されたALXN1210 SCの絶対的バイオアベイラビリティは、60.4%(95% CI:49.7、73.3)であった。
【0350】
表22:ALXN1210の絶対的バイオアベイラビリティの統計解析 皮下(薬物動態セット)
【表22】
【0351】
PD解析はPDセットに対して実施され、当該PDセットは、充分な遊離C5濃度および総C5濃度のデータならびにcRBC溶血データを有する安全性セットの全対象から構成された。
【0352】
図51は、プラセボSC、ALXN1210 SC、およびALXN1210 IVを投与された対象に関する、基準時からの経時的な遊離C5血清濃度における平均(±SD)変化割合を示す。プラセボのSC投与後、平均遊離C5は比較的一定であった。ALXN1210 IV 400mgの単回投与量の投与により、IV投与後から8日目まで、即時的でほぼ完全な遊離C5阻害(≧99%)が生じた。ALXN1210 SC 400mgの単回投与量の投与でも遊離C5の減少が生じたが、同程度ではないか、またはIV投与後に見られたような即時的な発生ではなかった。ALXN1210 SCの投与後、遊離C5の最大平均阻害率(77%)は、投与から1週間後に生じた。
【0353】
平均遊離C5濃度減少の持続時間および程度は、暴露依存性であった。
図52は、プラセボSC、ALXN1210 SC、およびALXN1210 IVを投与された対象に関する、基準時からの経時的な総C5血清濃度における平均(±SD)変化割合を示す。プラセボのSC投与後、平均総C5は比較的一定であった。しかしながらALXN1210 400mgの単回投与量を投与することで、SC投与およびIV投与の後の総C5において、基準時と比較してそれぞれ82%および107%の最大平均増加率が生じた。
【0354】
図53は、プラセボSC、ALXN1210 SC、およびALXN1210 IVを投与された対象に関する、基準時からの経時的なニワトリ赤血球(cRBC)溶血における平均(±SD)変化割合を示す。プラセボのSC投与後、平均cRBC溶血は比較的一定であった。ALXN1210 IV 400mgの単回投与量を投与することで、平均cRBC溶血に即時的な阻害が生じ、最大平均減少は88%であった。ALXN1210
SC 400mgの単回投与量の投与でもcRBC溶血の減少が生じたが、IV投与と比較して同程度ではないか、または即時的な発生ではなかった。ALXN1210 SC投与の約1週間後で、29%のcRBC溶血の最大平均阻害が発生した。cRBC阻害の期間および程度は暴露依存性であった。
【0355】
免疫原性分析を免疫原性分析セットに対して行った。当該免疫原性分析セットは、投与前および投与後のADAサンプルが収集された安全性セットの全対象から構成された。抗薬物抗体試験を、15、29、57、90、120、150および200日目に、投与前および投与後に行った。
【0356】
ALXN1210 SC治療集団の1名の対象(対象0344-185)は、基準時(投与前)サンプルおよびすべての投与後サンプルで、ADA陽性サンプルが確認された。この対象において、すべての投与後の抗体力価は、投与前の力価を下回っていた。この対象における抗薬剤抗体陽性反応は、臨床的に重大であるとはみなされず、またはALXN1210に関連するともみなされなかった。したがってこの対象は、以下に提示される免疫原性の要約には含まれていない。
【0357】
合計で4名の対象(ALXN1210 SC集団:3/23[13%]の対象、およびALXN1210のIV集団:1/12[8.3%]の対象)が、被験薬剤投与下のADAを発生させた。ALXN1210 SC集団において:最初の対象は57、90、120、150、および200日目にADA陽性であった。すべてのADA陽性値が、エクリズマブ交差反応性が陽性であった。2番目の対象は29、57、90、120、150、および200日目にADA陽性であった。90日目の陰性を除き、すべてのADA陽性値が、エクリズマブ交差反応性が陽性であった。3番目の対象は、90、120、150、および200日目にADA陽性であった。すべてのADA陽性値が、エクリズマブ交差反応性が陽性であった。
【0358】
ALXN1210 IV集団において:1名の対象が、15、29、90、120、150および200日目にADA陽性であった。すべてのADA陽性値が、エクリズマブ交差反応性が陰性であった。
【0359】
SC投与およびIV投与のそれぞれに対し、29日目および15日目に最も早い投与後陽性ADA反応が見られた。ADA陽性サンプルのADA力価は低く、<1.0~27の範囲であった。ほとんどのSC投与後ADA陽性サンプルにおいて、ADAはエクリズマブに交差反応性であった。IV投与後は、ADAはエクリズマブに交差反応性ではなかった。すべてのADA陽性対象は、追跡期間の終了まで陽性であった。PKおよびPDに対するADAの正式な影響評価は、ADA陽性対象が少数であったために実施できなかった。これら対象における限定的な個々のPKとPDの結果を検証することにより、PKまたはPDに対し、ALXN1210には明白な免疫原性的影響はないことが示唆される。
【0360】
6.薬物動態、薬力学、免疫原性の結論
中央値(範囲)tmaxは、SC注射後に169.8(96.0~508.1時間)であった。幾何平均終末相排泄半減期は、ALXN1210 SCおよびIVの投与後それぞれ31.3日および29.9日で類似していた。
【0361】
Cmax推定値(SC/IV)のGMRは、26.1%(95% CI:21.3、32.0)であった。AUC∞推定値(SC/IV)のGMRに基づくALXN1210 SCの絶対的バイオアベイラビリティは、60.4%(95% CI:49.7、73.3)であった。
【0362】
遊離C5血清濃度および総C5血清濃度ならびにcRBC溶血により評価した場合のPD反応の程度および持続時間は、暴露依存性であった。ALXN1210 IV 400mgの単回投与量の投与により、被験薬剤投与後から8日目まで、即時的でほぼ完全な遊離C5阻害(≧99%)が生じた。4回の100mg SC注射として投与されたALXN1210 SC 400mgの単回投与量の投与でも遊離C5の減少が生じたが、同程度ではないか、またはIV投与後と同じような即時的な発生ではなかった。遊離C5における最大平均阻害は77%であり、SC投与の約1週間後に発生した。ALXN1210
400mgの投与によって、SC投与およびIV投与の後の総C5において、基準時と比較してそれぞれ82%および107%の最大平均増加率が生じた。ALXN1210 IV 400mgの単回投与量を投与することで、平均cRBC溶血に即時的な阻害が生じ、最大平均減少は87%であった。ALXN1210 SC 400mgの単回投与量の投与でもcRBC溶血の減少が生じたが、IV投与と比較して同程度ではないか、または即時的な発生ではなかった。29%のcRBC溶血の最大平均阻害は、SC投与後およそ8日目に発生した。
【0363】
被験薬剤投与下のADAは、ALXN1210 SC集団およびALXN1210 IV集団でそれぞれ3/23名の対象(13%)および1/12名の対象(8.3%)に報告され、低いADA力価は<1.0~27の範囲であった。SC投与およびIV投与のそれぞれに対し、29日目および15日目に最も早い投与後ADA反応が見られた。SC投与後、ほとんどのADA陽性サンプルにおいて、ADAはエクリズマブに交差反応性であった。IV投与後は、ADAはエクリズマブに交差反応性ではなかった。すべてのADA陽性対象は、追跡期間の終了まで陽性であった。ALXN1210のPKまたはPDに対する免疫原性の明白な影響はなかった。
【0364】
ALXN1210 SC治療集団でさらに1名の対象は、基準時(投与前)サンプルおよびすべての投与後サンプルで、ADA陽性サンプルが確認された。この対象において、すべての投与後の抗体力価は、投与前の力価を下回っていた。この対象における抗薬物抗体陽性対応はALXN1210に関連していなかった。
【0365】
7.暴露の程度
被験薬剤の単回投与量を投与された全ての対象が、安全性セット(N=42):プラセボSC(n=6)、ALXN1210 SC(n=24)およびALXN1210 IV(n=12)に含められた。ALXN1210 IV投与に割り当てられた各対象に、総点滴量(80mL)の被験薬剤が投与された。1名の対象において、点滴を完了するための充分な時間がポンプにプログラムされていなかったため、点滴が数分中断された。ALXN1210 SCまたはプラセボSCのいずれかを投与された各対象に、被験薬剤の総量(4mL)が投与された。
【0366】
8.有害事象
3つの治療集団全体で、35/42名の対象(83.3%)が、75件のTEAE(全てグレード1)を経験した。少なくとも1つのTEAEを有する対象の割合は、ALXN1210 IV集団、プラセボSC集団、およびALXN1210 SC集団でそれぞれ91.7%、83.3%、および79.2%であった。試験中に報告された死亡事故またはSAEはなかった。TEAEが理由で被験薬剤を中止した、または本試験から離脱した対象はいなかった(表23)。本試験の経過中にすべてのTEAEは解消された。TEAEの大部分は治療を全く必要とせず、いずれの時点でも非薬学的な介入を必要とした対象はいなかった。
【0367】
表22:被験薬剤投与下の有害事象(TEAE)-全体的な概要(安全性セット)
【表23】
【0368】
合計で、35名の対象に対して75のTEAEが報告された。治療集団全体にわたって、最も頻繁に報告されたTEAEは、鼻咽頭炎(23/42人の対象、54.8%)および頭痛(7/42人の対象、16.7%)であった。すべてのTEAEは、表23において治療ごとに器官別大分類(SOC)および基本語により要約されている。
【0369】
表23:被験薬剤投与下の有害事象-器官別大分類および基本語による頻度表(安全性セット)
【表24-1】
【表24-2】
【0370】
TEAEの大部分(72/75 TEAE、96%)は、ALXN1210治療に関連していないとみなされた。治療集団全体にわたり、3/42名(7.1%)の対象が、3件のTEAEを報告した。それらはALXN1210治療に関連しており(「恐らく関連する」)、グレード1(軽度)として治験責任医師により評価された:(1)ALXN1210 SC集団の1名の対象において上気道感染症、(2)ALXN1210 SC集団の1名の対象において片頭痛、および(3)ALXN1210 IV集団の1名の対象において頭痛。75件のTEAEの全てがグレード1(軽度)として分類された。SAEを経験した対象で死亡した者はおらず、TEAEにより被験薬剤を中止または試験を中止した者もいない。
【0371】
概して、血液検査、凝固検査、血液化学検査、尿検査、および尿化学検査の平均値は基準範囲内であり、基準値からの平均変化において明白な傾向はなかった。
【0372】
大部分の対象は、血液検査、尿検査、凝固検査、血液化学検査、および尿化学検査のパラメータに関して正常値(すなわち、それぞれの基準範囲内である)を有して試験に参加した。治療集団全体にわたり、偏移において明白な傾向は観察されなかった。試験中に基準時での正常値から異常値(グレード1[軽度]またはグレード2[中程度])へと偏移することは検査室パラメータの内のいくつかで観察された。しかしこれらは臨床的に重大であるとはみなされなかった。偏移の大部分は一過性であり、試験中に解消された。
【0373】
試験中、グレード3の異常値へのシフトは、ALXN1210 SC集団の3名の対象に報告された。AEとして報告されるグレード3の異常値への偏移はなかった。
【0374】
最初に、好中球数の減少が1名の対象において報告された。この対象において基準時の好中球数は、3.77×10^9/Lであった。43日目に評価された好中球数は0.95×10^9/L(正常範囲:2.0~7.5×10^9/L)であった。好中球数は57日目で正常範囲内となった。
【0375】
カリウムレベルの増加(正常範囲:3.5~5.1mmol/L)が、2名の対象に報告された。1名の対象は基準時のカリウムレベルが4.5mmol/Lであり、150日目に評価されたカリウムレベルは6.1mmol/Lであった。同日(予定にない来院)に繰り返してカリウムレベルを測定したところ、正常範囲内であった。別の対象は基準時のカリウムレベルが4.6mmol/Lであり、90日目に評価されたカリウムレベルは6.4mmol/Lであった。この対象はスクリーニング時(異なるスクリーニング来院の間で5.2~6.2mmol/Lの範囲)およびほとんどの試験来院を通して異常なカリウム値を呈していた。カリウムレベルの増加は一過性であった。記録された値は150日目および200日目で正常範囲内であった。
【0376】
個々の対象に対して、バイタルサイン測定において基準時からの観察可能な変化はなく、同じくバイタルサインにおいて臨床的に重大で一貫して観察される異常はなかった。
【0377】
AEとして報告される所見以外の、臨床的に重大な身体検査所見を有する対象はいなかった。ECGまたはテレメトリー監視結果において基準時からの顕著な平均変化はなかった。
【0378】
QT間隔の変化は、Fridericiaの式を使用して補正された(QTcF)。プラセボSC集団の1名の対象において、スクリーニング時(510.0msec)、2日目(508.7msec)、150日目(516.6msec)および200日目(612.9msec)で、>500msecの平均QT間隔が観察された。同じ対象において平均QTcF間隔は、スクリーニング時ならびに2日目、150日目および200日目にそれぞれ449.7msec、443.7msec、451.9msec、および501.3msecであった。QTおよびQTcF間隔の増加は、プラセボであったこの女性対象において臨床的に重大とはみなされなかった。これらの変化もAEとして報告されなかった。試験中、平均QT間隔およびQTcF間隔における基準時からの顕著な変化は観察されなかった。
【0379】
点滴部位または注射部位の評価は、30分、2時間、4時間、8時間、および2日目(48時間)、3日目(72時間、合計6回の評価)で、SOIの15分以内±15分で実施された。。1cm未満の硬結または反応は、24時間を超えて持続した場合を除き、有害事象とはみなされなかった。ALXN1210 SC集団の5/24名の対象において、EOIの30分後に紅斑が観察された。1名の対象では、2/4回の注射部位で、注射の2時間後に最小(3mm)の紅斑があり、最後の時点ではなかった。最小の硬結または腫脹(10mm)が、ALXN1210 SC集団において1/24名の対象にEOIの30分後に報告されたが、最後の評価のときには観察されなかった。しかしながら、これらのいずれも、有害事象と見なされるとプロトコルに規定される基準を満たさなかった。点滴部位または注射部位の痛みは、VAS(0~100mm)を使用して対象により等級付けが行われた。点滴および注射の大部分に関して、注入部位の痛みはすべての評価で0mmと等級付けされた。SC集団の2名の対象が、1日目に3~5mmの一過性の痛みを報告し、IV集団の3名の対象が、点滴後に最小(1~5mm)の痛みを報告した。
【0380】
9.安全性に関する結論
被験薬剤の単回投与量を投与された全ての対象が、安全性セット(N=42)に含められた(プラセボSC、ALXN1210 SCおよびALXN1210 IV)。3つの治療集団全体で、35/42名の対象(83.3%)が、75件のTEAEを経験した。3/75件のTEAE(4%)のみがALXN1210に関連したとみなされ、一方で72/75件(96%)はALXN1210治療とは無関係とみなされた。すべてのTEAEが軽度(グレード1)であり、本試験の経過中に解消された。TEAEの大部分は治療を全く必要とせず、いずれの時点でも非薬学的な介入を必要とした対象はいなかった。最も頻繁に報告されたTEAEは、鼻咽頭炎(23/42人の対象、54.8%)および頭痛(7/42人の対象、16.7%)であった。
【0381】
試験中に死亡事故またはSAEはなかった。被験薬剤の中止、または本試験からの対象の離脱につながるTEAEは報告されなかった。概して、検査室パラメータ、バイタルサイン、身体検査、ECG、またはテレメトリーにおいて、本試験期間中または追跡期間中に臨床的に重大な変化はなかった。SC注射またはIV点滴のいずれの単回投与の間、またはその後に過感受性の臨床的な証拠はなかった。ADA陽性の結果を有する対象において、アレルギー反応または過感受性と関連付けられる臨床兆候または症状はなかった。
【0382】
10.考察および全体的な結論
この第I相試験の目的は、健康な対象における安全性、忍容性、PK、PDおよび免疫原性を評価することであり、ALXN1210 IV 400mgまたはプラセボSC注射の単回投与と、ALXN1210 SC 400mgの単回投与を比較している。合計42名の対象を無作為化し、被験薬剤:プラセボSC(n=6);ALXN1210 SC(n=24);およびALXN1210 IV(n=12)が投与された。
【0383】
400mg投与量でのALXN1210の投与は、SC投与経路を介した健康な対象において忍容性良好であった。AUC∞推定値(SC/IV)のGMRに基づくALXN1210 SCの絶対的バイオアベイラビリティは、60.4%(95% CI:49.7、73.3)であった。幾何平均t1/2の推定値は、ALXN1210 SC投与およびIV投与の後、それぞれで31.3日および29.9日であった。遊離C5血清濃度および総C5血清濃度ならびにcRBC溶血により評価した場合のPD反応の程度および持続時間は、暴露依存性であった。
【0384】
抗薬剤抗体は、ALXN1210 SC集団およびALXN1210 IV集団でそれぞれ3/23名の対象(13%)および1/12名の対象(8.3%)に報告され、ADA陽性力価は<1.0~27の範囲であった。SC投与およびIV投与のそれぞれに対し、29日目および15日目に最も早い投与後反応が見られた。ほとんどのSC投与後ADA陽性サンプルにおいて、ADAはエクリズマブに交差反応性であった。ADA反応が陽性を示す対象において、アレルギー反応または過感受性(アナフィラキシーを含む)に合致する臨床兆候または症状は無かった。さらに、ALXN1210のPKまたはPDに対し、明白な影響は特定できなかった。
【0385】
本試験中、すべての治療集団において、予想外の安全性の懸念点は無かった。本試験中、死亡事故もSAEも発生せず、被験薬剤の中止または試験からの離脱につながる何らかのTEAEを経験した対象もいなかった。
【0386】
配列の概要
【表25-1】
【表25-2】
【表25-3】