(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091302
(43)【公開日】2023-06-30
(54)【発明の名称】採光制御窓
(51)【国際特許分類】
G06F 3/01 20060101AFI20230623BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20230623BHJP
【FI】
G06F3/01 510
E06B9/24 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021205976
(22)【出願日】2021-12-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敬
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA48
5E555BA08
5E555BA15
5E555BA38
5E555BA90
5E555BB08
5E555BB15
5E555BB38
5E555BB40
5E555BE10
5E555CA42
5E555CB66
5E555CB67
5E555EA14
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】個々の利用者が感じる眩しさに応じて光透過率を変更する採光制御窓を提供すること。
【解決手段】窓本体10aに光の透過率を制御できる調光フィルム10bを貼り合せて、光の透過率を制御できる窓10とする。そして、検出部20としてのカメラで利用者Uの顔の表情や仕草を撮影する。そして、この撮影画面に基づいて、判定部30で、利用者の感じている眩しさの有無を判断する。利用者が眩しさを感じていると判断した場合には、制御部40を通じて、窓10の光透過率を制御変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の透過率を制御できる窓と、前記窓の光透過率を制御する制御部と、前記窓の一方に位置する利用者の顔の表情や仕草を検出する検出部と、前記検出部で検出した表情や仕草に基づいて利用者の感じている眩しさの程度をまぶしさ評価値として数値化することで前記利用者の眩しさを判断する判定部とを備え、
前記判定部が判断したまぶしさ評価値に応じて、前記窓の光透過率を前記制御部で制御することを特徴とする採光制御窓。
【請求項2】
前記窓が、光透過性の窓本体と、前記窓本体に貼り合わされ、光の透過率を制御できる調光フィルムとで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の採光制御窓。
【請求項3】
前記判定部は利用者の表情や仕草と眩しさとを関連付けた参照テーブルを記憶しており、前記まぶしさ評価値と、前記参照テーブルとを対比して、眩しさの程度を判断することを特徴とする請求項1又は2に記載の採光制御窓。
【請求項4】
前記参照テーブルが、次の第1から第4のパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の採光制御窓。
第1のパラメータ:利用者の目の細め方。
第2のパラメータ:利用者の眉間のしわの寄り方。
第3のパラメータ:利用者がその顔の前に手をかざす仕草。
第4のパラメータ:利用者がその顔を窓から逸らす仕草。
【請求項5】
前記検出部がカメラから成ることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の採光制御窓。
【請求項6】
前記カメラで撮影した画面が、利用者の表情や仕草を検出できないほど明るい場合又は暗い場合、窓の光透過率を制御する機能を前記制御部が有することを特徴とする請求項5に記載の採光制御窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過率を制御できる窓に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の外壁に設けられた窓からは、自然光がその内部に差し込む。差し込んだ自然光によって建物内部が明るくなるが、その反面、建物の内部にいる利用者が眩しいと感じることがある。このように窓から差し込む光が眩しいと感じるのは、電車等の乗り物の窓の場合も同様である。
【0003】
そこで、透過率を制御して、適正な採光を可能とする窓が知られている。特許文献1に記載の窓は、室内に利用者がいるか否かを検知して、いる場合といない場合とで光透過率を変える窓である。また、特許文献2は、人の体内時計、すなわち、サーカディアンリズムを利用して、例えば、午前と午後とで光透過率を変える窓である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-67546号公報
【特許文献2】国際公開2019/225245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1,2では、室内に利用者がいるか否か、あるいは、時刻に応じて光透過率を変えて、室内に差し込む光の量を調整している。
【0006】
しかしながら、室内にいる利用者が眩しいと感じるか否かということは、その時刻に応じているわけではない。例えば、晴天の日と雨天の日とでは自然光の量が異なるから、晴天の日の午後には眩しいと感じても、雨天の午後には眩しいとは思わないことがある。また、その感じ方は人それぞれであり、体調によっても眩しいと感じたり感じなかったりすることがある。
【0007】
そこで、本発明は、個々の利用者が感じる眩しさに応じて光透過率を変更する採光制御窓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第一の態様は、光の透過率を制御できる窓と、前記窓の光透過率を制御する制御部と、前記窓の一方に位置する利用者の顔の表情や仕草を検出する検出部と、前記検出部で検出した表情や仕草に基づいて利用者の感じている眩しさの程度をまぶしさ評価値として数値化することで前記利用者の眩しさを判断する判定部とを備え、
前記判定部が判断したまぶしさ評価値に応じて、前記窓の光透過率を前記制御部で制御することを特徴とする採光制御窓である。
【0009】
前記窓は、光透過性の窓本体と、前記窓本体に貼り合わされ、光の透過率を制御できる調光フィルムとで構成することが可能である。
【0010】
また、前記判定部は利用者の表情や仕草と眩しさとを関連付けた参照テーブルを記憶しており、前記まぶしさ評価値と、前記参照テーブルとを対比して、眩しさの程度を判断するように構成することができる。
【0011】
前記参照テーブルが、次の第1から第4のパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを含むことができる。
【0012】
第1のパラメータ:利用者の目の細め方。
第2のパラメータ:利用者の眉間のしわの寄り方。
第3のパラメータ:利用者がその顔の前に手をかざす仕草。
第4のパラメータ:利用者がその顔を窓から逸らす仕草。
【0013】
なお、前記検出部はカメラから構成することができる。そして、このように検出部がカメラから成る場合には、このカメラで撮影した画面が、利用者の表情・仕草を検出できないほど明るい場合又は暗い場合、窓の光透過率を制御する機能を、前記制御部に持たせることも可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、窓の一方に位置する利用者の顔の表情や仕草を検出して、検出部で検出した表情・仕草に基づいて利用者の感じている眩しさの有無を判断し、この眩しさに応じて窓の光透過率を制御するから、個々の利用者に対応して光透過率を変更することができる。そして、このため、例えば晴天と雨天とで透過率を変えて最適な採光を実現したり、利用者の体調等に応じて採光を変えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は本発明の採光制御窓の実施の形態を説明するための説明図である。
【
図2】
図2は本発明の採光制御窓の実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本開示の具体例を説明する。
図1は本発明の採光制御窓の実施の形態を説明するための説明図である。
【0017】
図1から分かるように、この採光制御窓100は、窓10、検出部20、判定部30及び制御部40で構成されている。
【0018】
そして、
図1ではこの採光制御窓100の利用方法を説明するため、その一方に、利用者Uが椅子に腰かけている。採光制御窓100は、例えば建物の外壁に設けられた窓で、その一方は屋内、他方は屋外であり、利用者Uは屋内に位置している。あるいは、採光制御窓100は電車等の乗り物の窓であってもよく、この場合には、利用者Uは車内に位置している。また、採光制御窓100は同じ建物の2つの領域を区切るものであってもよい。例えば、暗い室内と明るいロビーとを区切る窓である。
【0019】
ところで、窓10は光の透過率を制御できるもので、例えば、光透過性の窓本体10aと、この窓本体に貼り合わされ、光の透過率を制御できる調光フィルム10bとで構成することができる。
【0020】
光透過性の窓本体10aは、例えば、慣用の窓ガラスでよい。
【0021】
また、光の透過率を制御できる調光フィルム10bも公知であるが、例えば、特開2019-45612号公報に記載されているものが使用できる。すなわち、この調光フィルムは、液晶層を2枚の電極フィルムで挟んだ構造を有している。電極フィルムは、フレキシブルな透明フィルムの片面に透明電極を積層したものであり、その透明電極が液晶層に向き合うように積層されている。また、他方の電極フィルムも同様に、フレキシブルな透明フィルムの片面に透明電極を積層したものであり、その透明電極も液晶層に向き合うように積層されている。そして、これら両電極に電圧を印加することにより、液晶層の光学的性質が変化する。例えば、電圧を印加することで液晶層が白濁し不透明化して光線を遮断し、他方、電圧の印加を止めることで液晶層が透明化して光線を透過する。なお、電圧を印加することで液晶層が透明化して光線を透過し、電圧の印加を止めることで液晶層が不透明化して光線を遮断する調光フィルムも知られている。そのいずれであってもよい。
【0022】
検出部20は利用者Uの顔の表情や仕草を検出する部分である。この実施形態では、検出部20として、動画を撮影できるカメラを使用している。撮影した画像を画像解析することで利用者Uの顔の表情や仕草を検出する。画像解析はカメラ内で行ってもよいし、以下で説明する判定部と同様に、パーソナルコンピュータやサーバーを使用してもよい。
【0023】
この検出部20で検出する表情・仕草は、眩しさと関連する表情・仕草であることが望ましい。例えば、利用者Uが目を細めたり、眉間にしわを寄せたりすれば、利用者Uが眩しさを感じていると推測できる。また、利用者Uがその顔の前に手をかざしたり、窓から逸らしたりすれば、やはり眩しさを感じていると推測できる。そこで、例えば、次の第1から第4の表情・仕草を検出することによって、利用者Uが感じている眩しさの程度を判断することができる。
第1の表情・仕草:利用者の目の細め方。
第2の表情・仕草:利用者の眉間のしわの寄り方。
第3の表情・仕草:利用者がその顔の前に手をかざす仕草。
第4の表情・仕草:利用者がその顔を窓から逸らす仕草。
【0024】
なお、これら第1~4の表情・仕草のうち、どれか一つを検出することもできるが、これら第1から4の表情・仕草のうちの複数を検出することも可能である。
【0025】
次に、判定部30では、検出部20で検出した表情・仕草に基づいて利用者の感じている眩しさの有無を判断する。すなわち、検出部20で検出した表情や仕草に基づいて利用者の感じている眩しさの程度を、まぶしさ評価値として数値化することで利用者の眩しさを判断する。数値化の一例として、利用者が上述の第1から第4のいずれかの表情・仕草をした際に、それをカウントしてもよい。例えば、利用者が目を所定値以上に細めた場合に1とカウントする。あるいは、眩しさ事前に表情や仕草に関する細かな動きと眩しさを細かく関連づけた数値を準備しておき、利用者が眩しさに該当する行動を取った際に当該数値にて数値化してもよい。この場合、利用者の眩しさ度合をより正確に判断することができる。このため、検出部20と判定部30とは、検出部20で検出した表情・仕草に関する情報を判定部30に送るため、互に結び付けられている。
図1中、検出部20と判定部30とを結ぶ破線は、この結び付きを示している。
【0026】
判定部30としてはパーソナルコンピュータやサーバーを使用することができる。判定部30としてパーソナルコンピュータやサーバーを使用する場合には、これらパーソナルコンピュータやサーバーを判定部30として使用すると共に、次に説明する制御部40として使用してもよい。すなわち、パーソナルコンピュータやサーバーは、検出部20における画像解析と、判定部30、制御部40を兼ねることができる。
【0027】
なお、利用者の眩しさを判断するために、あらかじめ利用者の表情や仕草の教師データと眩しさ度合とを関連付けた参照テーブルを判定部30に記憶していてもよい。こうして記憶された表情・仕草の参照テーブルと、算出したまぶしさ評価値とを対比して、眩しさの程度を判断することが可能である。参照テーブルには、次の第1から第4のパラメータのうち、少なくとも1つのパラメータを含む。なお、第1から第4のパラメータはそれぞ
れ検出部20で検出される第1から第4の表情・仕草に対応したパラメータである。
【0028】
第1のパラメータ:利用者の目の細め方。
第2のパラメータ:利用者の眉間のしわの寄り方。
第3のパラメータ:利用者がその顔の前に手をかざす仕草。
【0029】
第4のパラメータ:利用者がその顔を窓から逸らす仕草。
【0030】
さらに、表情・仕草から算出するまぶしさ評価値に関する閾値を記憶しておき、この閾値と対比して、眩しさの程度を判断することも可能である。
【0031】
例えば、閾値を前述の第1から第4のパラメータごとに用意しておき、これら第1から第4のパラメータのうち、2つのパラメータが閾値を超えた場合には、1つのパラメータが閾値を超えた場合より、眩しさの程度が高いと判断することができる。もちろん、3つ以上のパラメータがそれぞれの閾値を超えた場合には、さらに眩しさの程度が高いと判断することができる。
【0032】
ところで、検出部20としてカメラを使用した場合には、このカメラで撮影した画面が、利用者Uの表情・仕草を検出できないほど明るい場合や暗い場合がある。このような場合には、窓10の光透過率を制御して、利用者Uの表情・仕草を検出できるようにすることが望ましい。例えば、利用者Uの表情・仕草を検出できないほど明るい場合には、窓10の光透過率を低下させればよい。逆に、利用者Uの表情・仕草を検出できないほど暗い場合には、窓10の光透過率を増加させればよい。
【0033】
次に、制御部40は、判定部30からの情報に基づいて、窓10の光透過率を制御する部分である。そして、光透過率の制御に必要な情報を判定部30から制御部40に送るため、互に結び付けられている。
図1中、判定部30と制御部40とを結ぶ破線は、この結び付きを示している。
【0034】
光透過率の制御に必要な情報とは、まず、利用者Uの感じている眩しさに関する情報である。例えば、利用者Uが強く眩しさを感じている場合には、この情報に基づいて、制御部40は窓10の光透過率を低下させる。
【0035】
また、前述のように、検出部20としてのカメラで撮影した画面が、利用者Uの表情・仕草を検出できないほど明るい旨の情報や暗い旨の情報も光透過率の制御に必要な情報となる。
【0036】
次に、
図2を参照して、この実施の形態に係る採光制御窓100によって透過する光量を制御する方法を説明する。
図2はその動作を説明するためのフローチャートである。
【0037】
この採光制御窓100によってこれを透過する光量を制御する際には、まず、検出部20としてのカメラで利用者Uの顔の表情や仕草を撮影する(Step1)。そして、その撮影画像をもとに画像解析することで利用者Uの顔の表情や仕草を検出する(Step2)。なお、Step2にて、外光の影響により撮影画像が明るすぎ、あるいは暗すぎる場合は顔の表情や仕草を検出することができない場合がある。その場合は、制御部40を通じて、窓10の光透過率を制御変更してもよい。
【0038】
次に、判定部30にて利用者Uが眩しいと感じているか否かを判断する(Step3)。そして、眩しさを感じていると判断した場合には、その程度に応じて、制御部40を通じて、窓10の光透過率を制御変更する(Step4)。判定部30にて眩しさを感じていないと判断した場合には、窓10の光透過率を維持したまま、カメラによる利用者Uの表情・仕草の撮影を継続する。
【0039】
なお、利用者Uの表情・仕草の撮影を常時続けて、利用者Uが眩しさを感じていると判断した場合には、直ちに窓10の光透過率を変更してもよいし、あらかじめ定めた時刻又は時間間隔ごとに利用者Uの表情・仕草を撮影して、窓10の光透過率を制御してもよい。
【0040】
この採光制御窓100は、例えば、コンビニエンスストアやスーパーのイートインに隣接する窓に配置すれば、顧客の手を煩わせることなく、この窓から差し込む日光の光量を適正に制御して、そのイートインを快適な状態に保つことができる。例えば、午前中は2時間ごとに利用者Uの表情・仕草を撮影して、窓10の光透過率を制御し、気温の上がる午後には1時間ごとに利用者Uの表情・仕草を撮影して、窓10の光透過率を制御することも可能である。
【符号の説明】
【0041】
100:採光制御窓
10:窓 10a:窓本体 10b:調光フィルム
20:検出部
30:判定部
40:制御部
U:利用者