(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091958
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】ガス製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/40 20170101AFI20230626BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230626BHJP
B01J 20/06 20060101ALI20230626BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
C01B32/40
B01D53/04 230
B01J20/06 A
B01J20/06 C
B01J20/34 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206860
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 昂嗣
(72)【発明者】
【氏名】ダサナヤケ アルツゲ ラシカ
【テーマコード(参考)】
4D012
4G066
4G146
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012CA03
4D012CB18
4D012CD10
4D012CG01
4G066AA13B
4G066AA16B
4G066AA17B
4G066AA43B
4G066BA07
4G066CA35
4G066DA01
4G066GA06
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC01
4G146JC18
4G146JC20
4G146JC22
4G146JC24
4G146JC34
(57)【要約】
【課題】反応器の下流側に、二酸化炭素を選択的かつ離脱可能に吸着可能な吸着部を設けることにより、より高濃度で炭素有価物を含む生成ガス(合成ガス)を製造し得るガス製造装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ガス製造装置が提供される。このガス製造装置は、少なくとも1つの反応器と、少なくとも1つの吸着部とを有する。反応器は、還元剤を収容し、二酸化炭素を含む酸化ガスと還元物質を含む還元ガスとを切り換えて供給可能に構成される。還元剤は、二酸化炭素を還元することにより炭素有価物を生成する金属単体および金属酸化物の少なくとも一方を含み、二酸化炭素との接触により酸化状態とされた後、還元物質との接触により還元される。吸着部は、反応器に接続されるとともに、吸着剤を収容する。吸着剤は、反応器を通過した酸化ガス中に含まれる二酸化炭素を選択的かつ離脱可能に吸着する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス製造装置であって、
少なくとも1つの反応器と、少なくとも1つの吸着部とを有し、
前記反応器は、還元剤を収容し、二酸化炭素を含む酸化ガスと還元物質を含む還元ガスとを切り換えて供給可能に構成され、
前記還元剤は、前記二酸化炭素を還元することにより炭素有価物を生成する金属単体および金属酸化物の少なくとも一方を含み、前記二酸化炭素との接触により酸化状態とされた後、前記還元物質との接触により還元され、
前記吸着部は、前記反応器に接続されるとともに、吸着剤を収容し、
前記吸着剤は、前記反応器を通過した前記酸化ガス中に含まれる前記二酸化炭素を選択的かつ離脱可能に吸着する、ガス製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス製造装置において、
前記吸着部を通過したガスを、再度、前記反応器に供給するように構成される、ガス製造装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガス製造装置において、
前記少なくとも1つの反応器および前記少なくとも1つの吸着部は、それぞれ複数の前記反応器および複数の前記吸着部を含み、
隣り合う2つの前記反応器は、前記吸着部を介して直列に接続可能である、ガス製造装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記吸着剤は、前記還元ガス、および/または、還元物質を含み、前記還元ガスと異なる第2の還元ガスを供給することにより、吸着された前記二酸化炭素を炭素有価物として離脱させる、ガス製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のガス製造装置において、
前記炭素有価物は、前記吸着剤に吸着された前記二酸化炭素と、前記反応器を通過した前記還元ガス中に含まれる未反応の前記還元物質、および/または、前記第2の還元ガス中に含まれる前記還元物質との反応により生成される、ガス製造装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記吸着剤は、第1族および第2族に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有する炭酸塩、酸化物またはそれらの混合物を含む、ガス製造装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記炭酸塩、酸化物またはそれらの混合物は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムのうちの少なくとも1種を含有する、ガス製造装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記金属単体および金属酸化物の少なくとも一方は、少なくとも1種の遷移金属元素を含む、ガス製造装置。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記炭素有価物は、一酸化炭素、メタンおよびエチレンのうちのいずれかである、ガス製造装置。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記炭素有価物は、一酸化炭素である、ガス製造装置。
【請求項11】
請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のガス製造装置において、
前記還元物質は、水素である、ガス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)は、その大気中の濃度が上昇を続けている。大気中の二酸化炭素の濃度の上昇は、地球温暖化を助長する。したがって、大気中に放出される二酸化炭素を回収することは重要であり、さらに回収した二酸化炭素を炭素有価物に変換して再利用できれば、炭素循環社会を実現することができる。
また、地球規模の施策としても、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書にもあるように、地球温暖化の原因となる二酸化炭素について、先進国における削減率を、1990年を基準として各国別に定め、共同で約束期間内に削減目標値を達成することが定められている。
【0003】
その削減目標を達成するため、製鉄所、精錬所または火力発電所から発生した二酸化炭素を含む排気ガスも対象となっており、これらの業界における二酸化炭素の削減に関して、様々な技術改良が行われている。かかる技術の一例としては、CO2回収・貯留(CCS)が挙げられる。しかしながら、この技術では、貯留という物理的な限界があり、根本的な解決策とはなっていない。
例えば、特許文献1には、ビスマスを含む酸化セリウムまたはビスマスを含む酸化ジルコニウムを用いて、二酸化炭素から一酸化炭素を製造する製造装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、特許文献1には、二酸化炭素を一酸化炭素に効率的に変換する金属酸化物を特定する発明が開示されている。しかしながら、特許文献1には、一酸化炭素の製造条件や製造装置につき、図等を参照すれば判るように、概念的または一般的な情報が開示されるのみである。このため、工業的に一酸化炭素のような炭素有価物を製造するには、更なる技術改良が必要であることが判った。
本発明では上記事情に鑑み、反応器の下流側に、二酸化炭素を選択的かつ離脱可能に吸着可能な吸着部を設けることにより、より高濃度で炭素有価物を含む生成ガス(合成ガス)を製造し得るガス製造装置を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ガス製造装置が提供される。このガス製造装置は、少なくとも1つの反応器と、少なくとも1つの吸着部とを有する。反応器は、還元剤を収容し、二酸化炭素を含む酸化ガスと還元物質を含む還元ガスとを切り換えて供給可能に構成される。還元剤は、二酸化炭素を還元することにより炭素有価物を生成する金属単体および金属酸化物の少なくとも一方を含み、二酸化炭素との接触により酸化状態とされた後、還元物質との接触により還元される。吸着部は、反応器に接続されるとともに、吸着剤を収容する。吸着剤は、反応器を通過した酸化ガス中に含まれる二酸化炭素を選択的かつ離脱可能に吸着する。
【0007】
かかる態様によれば、二酸化炭素を選択的に分離し得るので、より高濃度で炭素有価物を含む生成ガスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のガス製造装置を使用したガス製造システムの全体構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態において反応器に通過させるガスを切り換える方法を示す概略図である。
【
図4】第2実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
【
図5】第3実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
【
図6】第4実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
【
図7】第5実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
【
図8】第5実施形態において反応器に通過させるガスを切り換える方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のガス製造装置について、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本明細書中では、本発明のガス製造装置を使用したガス製造システムを代表に説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、本発明のガス製造装置を使用したガス製造システムの全体構成を示す概略図である。
図2は、第1実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
図3は、第1実施形態において反応器に通過させるガスを切り換える方法を示す概略図である。
図1に示すガス製造システム100は、二酸化炭素を含む排ガス(酸化ガス)を生成する炉20と、接続部2を介して炉20に接続されたガス製造装置1とを備えている。
なお、本明細書中では、ガスの流れ方向に対して上流側を単に「上流側」、下流側を単に「下流側」とも記載する。
【0011】
炉20としては、特に限定されないが、例えば、製鉄所、精錬所または火力発電所に付属する炉であり、好ましくは燃焼炉、高炉、転炉等が挙げられる。炉20では、内容物の燃焼、溶融、精錬等の際に、排ガスが生成(発生)する。
ゴミ焼却場にける燃焼炉(焼却炉)の場合、内容物(廃棄物)としては、例えば、プラスチック廃棄物、生ゴミ、都市廃棄物(MSW)、廃棄タイヤ、バイオマス廃棄物、家庭ゴミ(布団、紙類)、建築部材等が挙げられる。なお、これらの廃棄物は、1種を単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
【0012】
排ガスは、通常、二酸化炭素に加えて、窒素、酸素、一酸化炭素、水蒸気、メタン等の他のガス成分を含む。排ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度は、特に限定されないが、生成ガスの製造コスト(一酸化炭素への変換効率)を考慮すると、1体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましい。
ゴミ焼却場にける燃焼炉からの排ガスの場合、二酸化炭素が5~15体積%、窒素が60~70体積%、酸素が5~10体積%、水蒸気が15~25体積%で含まれる。
【0013】
高炉からの排ガス(高炉ガス)は、高炉において銑鉄を製造する際に発生するガスであり、二酸化炭素が10~15体積%、窒素が55~60体積%、一酸化炭素が25~30体積%、水素が1~5体積%で含まれる。
また、転炉からの排ガス(転炉ガス)は、転炉において鋼を製造する際に発生するガスであり、二酸化炭素が15~20体積%、一酸化炭素が50~60体積%、窒素が15~25体積%、水素が1~5体積%で含まれる。
なお、酸化ガスとしては、排ガスに限らず、二酸化炭素を100体積%で含む純ガスを使用してもよい。
【0014】
ただし、酸化ガスとして排ガスを使用すれば、従来、大気中に排出していた二酸化炭素を有効利用することができ、環境への負荷を低減することができる。これらの中でも、炭素循環という観点からは、製鉄所または精錬所で発生した二酸化炭素を含む排ガスが好ましい。
また、高炉ガスや転炉ガスは、炉から排出された未処理のガスをそのまま使用してもよく、例えば、一酸化炭素等を除去する処理を施した後の処理済みガスを使用してもよい。未処理の高炉ガスおよび転炉ガスは、それぞれ上述のようなガス組成であり、処理済みガスは、燃焼炉からの排ガスで示したガス組成に近いガス組成となる。本明細書では、以上のようなガス(ガス製造装置1に供給される前のガス)をいずれも排ガスと呼ぶ。
【0015】
ガス製造装置1は、炉20から排出され、接続部2を介して供給される排ガス(二酸化炭素を含む酸化ガス)と、排ガス中に含まれる二酸化炭素を還元する還元剤4Rとを接触させて、一酸化炭素を含む生成ガス(合成ガス)を製造する。
なお、本明細書では、炭素有価物の一例として、一酸化炭素を代表に説明する。ただし、炭素有価物としては、一酸化炭素に限定されず、例えば、メタン、メタノール、エチレン等が挙げられ、これらの単独物であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。後述する還元剤の種類に応じて、生成する炭素有価物の種類が異なってくる。なお、炭素有価物は、一酸化炭素、メタンおよびエチレンのうちのいずれかであることが好ましい。これらの物質は、幅広い工業用途での使用が期待できる。
【0016】
ガス製造装置1は、主に、接続部2と、還元ガス供給部3と、1つの反応器4abを備える反応部4と、接続部2と反応部4とを接続するガスラインGL1と、還元ガス供給部3と反応部4とを接続するガスラインGL2と、反応部4に接続されたガスラインGL4とを有している。
本実施形態では、接続部2が、排ガスを反応部4に供給する排ガス供給部(酸化ガス供給部)を構成している。
なお、必要に応じて、ガスラインGL1、ガスラインGL2およびガスラインGL4の途中の所定の箇所には、ガスを移送するためのポンプを配置してもよい。例えば、後述する圧縮部6で排ガスの圧力を比較的低く調整する場合には、ポンプを配置することにより、ガス製造装置1内でガスを円滑に移送することができる。
【0017】
ガスラインGL1は、その一端部において接続部2に接続されている。一方、ガスラインGL1は、その他端部において、
図2に示すように、ガス切換部8およびガスラインGL3を介して、反応器4abの入口ポートに接続されている。
かかる構成により、炉20から接続部2を介して供給された排ガスは、ガスラインGL1を通過して、反応器4abに供給される。
ガス切換部8は、例えば、分岐ガスラインと、この分岐ガスラインの途中に設けられたバルブのような流路開閉機構とを含んで構成することができる。
【0018】
反応器4abは、
図2に示すように、還元剤4Rをそれぞれ充填(収容)した複数の管体41と、複数の管体41を収納したハウジング42とを備える多管式の反応装置(固定層式の反応装置)で構成されている。かかる多管式の反応装置によれば、還元剤4Rと排ガスおよび還元ガスとの接触の機会を十分に確保することができる。その結果、生成ガスの製造効率を高めることができる。
本実施形態の還元剤4Rは、例えば、粒子状(顆粒状)、鱗片状、ペレット状等であることが好ましい。かかる形状の還元剤4Rであれば、管体41への充填効率を高めることができ、管体41内に供給されるガスとの接触面積をより増大させることができる。
【0019】
還元剤4Rが粒子状である場合、その体積平均粒径は、特に限定されないが、1~50mmであることが好ましく、3~30mmであることがより好ましい。この場合、還元剤4Rと排ガス(二酸化炭素)との接触面積をさらに高め、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率をより向上させることができる。同様に、還元物質を含む還元ガスによる還元剤4Rの再生(還元)もより効率よく行うことができる。
粒子状の還元剤4Rは、より球形度が高まることから、転動造粒により製造された成形体であることが好ましい。
【0020】
また、還元剤4Rは、担体に担持させるようにしてもよい。
担体の構成材料としては、排ガス(酸化ガス)との接触や反応条件等により変性し難ければよく、例えば、炭素材料(グラファイト、グラフェン等)、Mo2Cのような炭化物、ゼオライト、モンモリロナイト、ZrO2、TiO2、V2O5、MgO、CeO2、Al2O3、SiO2のような酸化物およびこれらを含む複合酸化物等が挙げられる。
【0021】
これらの中でも、担体の構成材料としては、ゼオライト、モンモリロナイト、ZrO2、TiO2、V2O5、MgO、Al2O3、SiO2およびこれらを含む複合酸化物が好ましい。かかる材料で構成される担体は、還元剤4Rの反応に悪影響を及ぼさず、還元剤4Rの担持能に優れる点で好ましい。ここで、担体は、還元剤4Rの反応には関与せず、還元剤4Rを単に支持(保持)する。
かかる形態の一例としては、担体の表面の少なくとも一部を還元剤4Rで被覆する構成が挙げられる。
【0022】
還元剤4Rは、金属単体および金属酸化物の少なくとも一方(酸素キャリア)を含む。金属単体および金属酸化物の少なくとも一方は、二酸化炭素を還元することができれば、特に限定されないが、少なくとも1種の遷移金属元素を含むことが好ましい。遷移金属元素としては、第3族~第11族に属する金属元素が挙げられ、第4族~第11属に属する金属元素から選択される少なくとも1種が好ましく、チタン、バナジウム、鉄、銅、亜鉛、ニッケル、マンガン、クロムおよびセリウムのうちの少なくとも1種がよりに好ましく、鉄を含有する金属酸化物または複合金属酸化物が特に好ましい。これらの金属酸化物は、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率が特に良好なため有用である。
【0023】
特に、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する金属酸化物としては、酸化鉄、酸化セリウム等が好適である。二酸化炭素をメタンに変換する金属酸化物としては、例えば、ニッケルおよびルテニウムのうちの少なくとも一方を担持または含有するジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ等が好適である。二酸化炭素をメタノールに変換する金属酸化物としては、例えば、銅および亜鉛のうちの少なくとも一方を担持または含有するジルコニア、アルミナ、シリカ等が好適である。
【0024】
また、反応器4abにおいて、還元剤4R(金属単体および金属酸化物のうちの少なくとも一方)自体で管体(円筒状の成形体)41を作製してもよい。さらに、還元剤4Rで、ブロック状、格子状(例えば、網状、ハニカム状)等の成形体を作製し、ハウジング42内に配置するようにしてもよい。これらの場合、充填剤としての還元剤4Rは省略するようにしてもよいし、併用してもよい。
【0025】
これらの中では、還元剤4Rで網状体を作製し、ハウジング42内に配置する構成が好ましい。かかる構成の場合、反応器4ab内で排ガスおよび還元ガスの通過抵抗が高まるのを防止しつつ、還元剤4Rと排ガスおよび還元ガスとの接触の機会を十分に確保することもできる。
なお、反応器4abの容積は、処理する排ガスの量(炉20のサイズやガス製造装置1のサイズ)に応じて、適宜設定される。また、後述するように、複数の反応器を設ける場合、それらの容積は、互いにほぼ等しく設定されてもよく、複数の反応器のうちの少なくとも1つの容積は、排ガスおよび還元ガスの種類、還元剤4Rの性能等に応じて異ならせてもよい。
【0026】
ガスラインGL1の途中には、接続部2側から順に、濃度調整部5と、圧縮部6と、微成分除去部7と、排ガス加熱部(酸化ガス加熱部)10とが設けられている。
濃度調整部5は、排ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度を高める(換言すれば、二酸化炭素を濃縮する)ように調整する。排ガスは、酸素等の不要ガス成分も含む。濃度調整部5で排ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度を高めることにより、排ガス中に含まれる不要ガス成分の濃度を相対的に低くすることができる。このため、還元剤4Rによる二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率に、不要ガス成分が悪影響を及ぼすのを防止または抑制することができる。
【0027】
濃度調整部5は、排ガス中に含まれる酸素を除去する酸素除去装置により構成することが好ましい。これにより、ガス製造装置1に持ち込まれる酸素の量を低減すること(すなわち、排ガス中に含まれる酸素の濃度を低くなるように調整すること)ができる。このため、排ガスのガス組成を爆発範囲から乖離させ、排ガスの引火を未然に防止することができる。なお、ガス製造装置1の中でも、酸素除去装置での電気エネルギーの消費が大きいため、後述するような再生可能エネルギーとしての電力を使用することが有効である。
【0028】
この場合、排ガス中に含まれる酸素の濃度を、排ガス全体に対して1体積%未満に調整することが好ましく、0.5体積%未満に調整することがより好ましく、0.1体積%未満に調整することがさらに好ましい。これにより、排ガス中の酸素と還元ガスによる爆鳴気の形成を確実に防止することができる。
排ガス中に含まれる酸素を除去する酸素除去装置は、低温分離方式(深冷方式)の分離器、圧力スイング吸着(PSA)方式の分離器、膜分離方式の分離器、温度スイング吸着(TSA)方式の分離器、化学吸収方式の分離器、化学吸着方式の分離器等のうちの1種または2種以上を用いて構成することができる。
なお、濃度調整部5では、排ガス中に二酸化炭素を追加することにより、二酸化炭素が高濃度になるように調整してもよい。
【0029】
圧縮部6は、反応器4abに供給する前の排ガスの圧力を上昇させる。これにより、反応器4a、4bで一度に処理可能な排ガスの量を増大させることができる。このため、反応器4abにおける二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率をより向上させることができる。
かかる圧縮部6は、例えば、遠心式圧縮機、軸流式圧縮機のようなターボ圧縮機、往復動圧縮機(レシプロ圧縮機)、ダイアフラム式圧縮機、シングルスクリュー圧縮機、ツインスクリュー圧縮機、スクロール圧縮機、ロータリー圧縮機、ロータリーピストン型圧縮機、スライドベーン型圧縮機のような容積圧縮機、低圧に対応可能なルーツブロワー(二葉送風機)、遠心式のブロワー等で構成することができる。
【0030】
これらの中でも、圧縮部6は、ガス製造システム100の大規模化の容易性の観点からは、遠心式圧縮機で構成することが好ましく、ガス製造システム100の製造コストを低減する観点からは、往復動圧縮機で構成することが好ましい。
圧縮部6を通過した後の排ガスの圧力は、特に限定されないが、0~1MPaGであることが好ましく、0~0.5MPaGであることがより好ましく、0.01~0.5MPaGであることがさらに好ましい。この場合、ガス製造装置1の耐圧性を必要以上に高めることなく、反応器4abにおける二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率をさらに向上させることができる。
【0031】
微成分除去部7は、排ガス中に含まれる微成分(微量な不要ガス成分等)を除去する。
かかる微成分除去部7は、例えば、気液分離器、保護器(ガードリアクター)およびスクラバー(吸収塔)のうちの少なくとも1種の処理器で構成することができる。
複数の処理器を使用する場合、それらの配置順序は任意であるが、気液分離器と保護器とを組み合わせて使用する場合、気液分離器を保護器より上流側に配置するのが好ましい。この場合、排ガス中からの微成分の除去効率をより高めることができるとともに、保護器の使用期間(寿命)を延長することができる。
【0032】
気液分離器は、例えば、圧縮部6で排ガスを圧縮した際に生じる凝縮水(液体)を排ガスから分離する。この場合、凝縮水中には、排ガス中に残存する不要ガス成分等も溶解して除去される。
気液分離器は、例えば、単なる容器、旋回流式分離器、遠心分離器、表面張力式分離器等で構成することができる。これらの中でも、気液分離器は、構成が単純であり、安価であること等から、単なる容器で構成することが好ましい。この場合、容器内の気液界面には、気体の通過は許容するが、液体の通過を阻止するフィルタを配置するようにしてもよい。
【0033】
また、この場合、容器の底部には、液体ラインを接続し、その途中にバルブを設けるようにしてもよい。かかる構成によれば、容器内に貯留された凝縮水は、バルブを開放することにより、液体ラインを介して、ガス製造装置1外に排出することができる。
なお、液体ラインを後述するタンク30に接続して、排出する凝縮水を再利用するようにしてもよい。
【0034】
気液分離器で凝縮水が除去された排ガスは、例えば、保護器に供給するように構成することができる。
かかる保護器は、排ガス中に含まれる微成分であって、還元剤4Rとの接触により還元剤4Rの活性を低下させる成分(不活化成分)を捕捉可能な物質を備えていることが好ましい。
かかる構成によれば、排ガスが保護器を通過する際に、保護器内の物質が不活化成分と反応(捕捉)することにより、反応器4ab内の還元剤4Rに到達するのを阻止または抑制して保護すること(すなわち、活性の低下を防止すること)ができる。このため、還元剤4Rによる二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率が、不活化成分の悪影響により極端に低下するのを防止または抑制することができる。
【0035】
かかる物質には、還元剤4Rに含まれる組成であって、不活化成分との接触により還元剤4Rの活性を低下させる組成を有する物質、具体的には、還元剤4Rに含まれる金属単体および金属酸化物のうちの少なくとも一方と同一または類似の物質を使用することができる。ここで、類似の金属酸化物とは、それに含まれる金属元素は同一であるが、組成が異なる金属酸化物、またはそれに含まれる金属元素の種類は異なるが、元素周期律表における族が同一である金属酸化物のことを言う。
【0036】
また、不活化成分としては、硫黄、水銀、硫黄化合物、ハロゲン化合物、有機シリコーン、有機リンおよび有機金属化合物から選択される少なくとも1種であることが好ましく、硫黄および硫黄化合物から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。かかる不活化成分を予め除去しておけば、還元剤4Rの活性が急激に低下するのを効果的に防止することができる。
なお、上記物質は、還元剤4Rの不活化成分と同一の成分により活性が低下する物質であればよく、酸化鉄、酸化亜鉛のような金属酸化物が上記不活化成分の捕捉能に優れる点で好ましい。
【0037】
保護器は、ハウジング内に網材を配置し、上記物質の粒子を網材上に載置する構成、ハウジング内に、上記物質で構成されたハニカム状のフィルタ部材や、円筒状または粒子状の成形体を配置する構成等とすることができる。
特に、保護器を圧縮部6(気液分離器)と排ガス加熱部10との間に配置する場合には、上記物質の熱による劣化を防止しつつ、不活化成分の除去効率を向上させることができる。
【0038】
排ガス加熱部10は、反応器4abに供給する前の排ガスを加熱する。排ガス加熱部10で反応前(還元前)の排ガスを予め加熱しておくことにより、反応器4abにおいて、還元剤4Rによる二酸化炭素の一酸化炭素への変換(還元)反応をより促進することができる。
排ガス加熱部10は、例えば、電熱器と、熱交換器(エコノマイザ)とで構成することができる。
熱交換器は、反応器4abを通過した後のガス(混合ガス)を排出するガスラインGL4を構成する一部の配管を屈曲させ、ガスラインGL1を構成する配管に接近させて構成される。かかる構成によれば、反応器4abを通過した後の高温のガス(混合ガス)の熱を利用して、反応器4abに供給する前の排ガスを熱交換により加熱するため、熱の有効利用を図ることができる。
【0039】
かかる熱交換器は、例えば、ジャケット式熱交換器、浸漬コイル式熱交換器、二重管式熱交換器、シェル&チューブ式熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル式熱交換器等として構成することができる。
また、排ガス加熱部10では、電熱器および熱交換器のいずれか一方を省略してもよい。
排ガス加熱部10では、電熱器に代えて、燃焼炉等を使用することもできる。ただし、電熱器を使用すれば、その動力源として、再生可能エネルギーとしての電力(電気エネルギー)を使用できるため、環境への負荷を低減することができる。
再生可能エネルギーとしては、太陽光発電、風カ発電、水力発電、波力発電、潮力発電、バイオマス発電、地熱発電、太陽熱および地中熱から選択される少なくとも1つを利用した電気エネルギーが使用可能である。
【0040】
また、排ガス加熱部10の上流側(例えば、微成分除去部7の途中である気液分離器と保護器との間)において、ガスラインGL1から排気ガスラインを分岐させ、その端部にガス製造装置1外に設けられたベント部を接続してもよい。
この場合、排気ガスラインの途中には、好ましくはバルブが設けられる。
仮に、ガス製造装置1(ガスラインGL1)内の圧力が必要以上に上昇した場合には、バルブを開放することにより、排気ガスラインを介してベント部から排ガスの一部を排出(放出)することができる。これにより、ガス製造装置1の圧力の上昇による破損を未然に防止することができる。
【0041】
ガスラインGL2は、その一端部において還元ガス供給部3に接続されている。一方、ガスラインGL2は、ガス切換部8およびガスラインGL3を介して、反応器4abの入口ポートに接続されている。
還元ガス供給部3は、二酸化炭素との接触により酸化された還元剤4Rを還元する還元物質を含む還元ガスを供給する。本実施形態の還元ガス供給部3は、水の電気分解により水素を発生させる水素発生装置で構成され、この水素発生装置に水を貯留したガス製造装置1外のタンク(還元ガス原料貯留部)30が接続されている。かかる構成により、水素発生装置(還元ガス供給部3)から供給された水素(還元物質)を含む還元ガスが、ガスラインGL2を通過して、反応器4abに供給される。
【0042】
水素発生装置によれば、多量の水素を比較的安価かつ簡便に生成することができる。また、ガス製造装置1内で発生する凝縮水を再利用できるという利点もある。なお、ガス製造装置1の中でも、水素発生装置での電気エネルギーの消費が大きいため、上述したような再生可能エネルギーとしての電力を使用することが有効である。
【0043】
なお、水素発生装置には、副生水素を発生する装置を使用することもできる。この場合、副生水素を含む還元ガスが反応器4abに供給される。副生水素を発生する装置としては、例えば、塩化ナトリウム水溶液を電気分解する装置、石油を水蒸気改質する装置、アンモニアを製造する装置等が挙げられる。
また、ガス製造装置1外のコークス炉に接続部を介してガスラインGL2を接続し、コークス炉からの排ガスを還元ガスとして使用するようにしてもよい。この場合、接続部が還元ガス供給部を構成する。コークス炉からの排ガスは、水素およびメタンを主成分とし、水素を50~60体積%で含むためである。
【0044】
ガスラインGL2の途中には、還元ガス加熱部11が設けられている。この還元ガス加熱部11は、反応器4abに供給する前の還元ガスを加熱する。還元ガス加熱部11で反応前(酸化前)の還元ガスを予め加熱しておくことにより、反応器4abにおける還元ガスによる還元剤4Rの還元(再生)反応をより促進することができる。
【0045】
還元ガス加熱部11は、上記排ガス加熱部10と同様にして構成することができる。還元ガス加熱部11は、電熱器のみ、熱交換器のみ、電熱器と熱交換器との組み合わせで構成することが好ましく、熱交換器のみ、電熱器と熱交換器との組み合わせで構成することがより好ましい。
還元ガス加熱部11が熱交換器を備えれば、反応器4abを通過した後の高温のガス(例えば、混合ガス)の熱を利用して、反応器4abに供給する前の還元ガスを熱交換により加熱するため、熱の有効利用を図ることができる。
【0046】
以上のような構成によれば、ガス切換部8においてガスライン(流路)を切り換えることにより、例えば、酸化前の還元剤4Rに対して、ガスラインGL3aを介して排ガスを供給し、酸化後の還元剤4Rに対して、ガスラインGL3bを介して還元ガスを供給することができる。このとき、酸化前の還元剤4Rと排ガスとの間では下記式1の反応が進行し、酸化後の還元剤4Rと還元ガスとの間では下記式2の反応が進行する。
なお、下記式1および式2では、還元剤4Rに酸化鉄(FeOx-1)が含まれる場合を一例として示している。
【0047】
式1: CO2 + FeOx-1 → CO + FeOx
式2: H2 + FeOx → H2O + FeOx-1
すなわち、還元剤4Rは、二酸化炭素を還元することにより一酸化炭素(炭素有価物)を生成する。このとき、還元剤4Rは、二酸化炭素との接触により酸化状態とされるが、その後、水素(還元物質)との接触により還元され、元の状態に戻る。
本明細書中では、還元剤4Rを中心に考え、還元剤4Rが二酸化炭素により酸化される側を「酸化側」と言い、酸化された還元剤4Rが水素により還元される側を「還元側」とも言う。
【0048】
なお、上記式1および式2に示す反応は、いずれも吸熱反応である。このため、ガス製造装置1は、還元剤4Rに排ガスまたは還元ガスを接触させる際(すなわち、排ガスまたは還元ガスと還元剤4Rとの反応の際)に、還元剤4Rを加熱する還元剤加熱部(
図1中、図示せず。)をさらに有することが好ましい。
かかる還元剤加熱部を設けることにより、排ガスまたは還元ガスと還元剤4Rとの反応における温度を高温に維持して、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率の低下を好適に防止または抑制するとともに、還元ガスによる還元剤4Rの再生をさらに促進することができる。
【0049】
ただし、還元剤4Rの種類によっては、上記式1および式2に示す反応が発熱反応となる場合がある。この場合、ガス製造装置1は、還元剤加熱部に代えて、還元剤4Rを冷却する還元剤冷却部を有することが好ましい。かかる還元剤冷却部を設けることにより、排ガスまたは還元ガスと還元剤4Rとの反応の際に、還元剤4Rが劣化するのを好適に阻止して、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率の低下を好適に防止または抑制するとともに、還元ガスによる還元剤4Rの再生をさらに促進することができる。
つまり、ガス製造装置1には、還元剤4Rの種類(発熱反応または吸熱反応)の違いによって、還元剤4Rの温度を調整する還元剤温調部を設けることが好ましい。
【0050】
反応器4abの出口ポートには、ガスラインGL4が接続されている。また、ガスラインGL4の途中には、必要に応じて、それぞれバルブ(図示せず。)が設けられる。
例えば、バルブの開度を調整することにより、反応器4abを通過する排ガスおよび還元ガスの通過速度(すなわち、還元剤4Rによる排ガスの処理速度および還元ガスによる還元剤4Rの処理速度)を設定することができる。
また、ガスラインGL4の途中には、1つの吸着部19が設けられている。すなわち、反応器abには、吸着部19が接続されている。
本実施形態では、主に、反応器4ab、吸着部19およびガス切換部8により、反応部4が構成されている。
【0051】
吸着部19は、吸着剤を収容している。この吸着剤は、反応器4abを通過した排ガス(酸化ガス)中に含まれる二酸化炭素(未反応の二酸化炭素)を選択的かつ離脱可能に吸着することができる。これにより、最終的に得られる生成ガス(合成ガス)中の一酸化炭素の濃度をより高めることができる。
本実施形態では、吸着剤は、上記還元ガスを供給する(接触させる)ことにより、吸着された二酸化炭素を優先的に離脱させ、離脱した二酸化炭素を吸着剤の表面や、ガス(気相)中で一酸化炭素(炭素有価物)に変換させ得る物質で構成されている。また、吸着剤は、吸着された二酸化炭素が上記還元ガスと反応して一酸化炭素(炭素有価物)に変換された後、離脱させ得る物質で構成することもできる。かかる構成により、吸着部19で変換される一酸化炭素をも有効利用することができる。
一酸化炭素(炭素有価物)は、吸着剤に吸着された二酸化炭素と、反応器4abを通過した還元ガス中に含まれる未反応の水素(還元物質)との反応により生成されることが好ましい。この場合、比較的簡便な方法で、二酸化炭素の一酸化炭素への変換が可能である。
【0052】
以上のような特性を有する吸着剤は、第1族および第2族に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有する炭酸塩、酸化物またはそれらの混合物を含むことが好ましい。これらの化合物は、二酸化炭素の吸着力が高く、かつ水素(還元物質)による一酸化炭素(炭素有価物)への変換能が高いことから好ましい。
第1族および第2族に属する金属元素としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。これらの中でも、炭酸塩、酸化物またはそれらの混合物は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムのうちの少なくとも1種を含有することが好ましい。かかる炭酸塩は、上記特性により優れている。
なお、吸着部19および吸着剤の構成(構造)には、それぞれ反応器4abおよび還元剤4Rと同様の構成(構造)を採用することができる。
【0053】
ガスラインGL4の反応器4abの反対側の端部には、生成ガス(合成ガス)をガス製造装置1外に排出する生成ガス排出部40が接続されている。
また、ガスラインGL4の途中には、ガス精製部9が設けられている。
ガス精製部9では、吸着部19を通過したガス(以下、「通過ガス」とも記載する。)から一酸化炭素を精製して、高濃度の一酸化炭素を含む生成ガスを回収することができる。なお、通過ガス中の一酸化炭素濃度が十分に高い場合には、ガス精製部9を省略してもよい。
【0054】
かかるガス精製部9は、例えば、冷却器、気液分離器、ガス分離器、分離膜およびスクラバー(吸収塔)のうちの少なくとも1種の処理器で構成することができる。
複数の処理器を使用する場合、それらの配置順序は任意であるが、冷却器と気液分離器とガス分離器とを組み合わせて使用する場合、この順で配置するのが好ましい。この場合、通過ガスからの一酸化炭素の精製効率をより高めることができる。
【0055】
冷却器は、通過ガスを冷却する。これにより、凝縮水(液体)が生成する。
かかる冷却器は、配管の周囲に冷媒を通過させるためのジャケットを配置したジャケット式の冷却装置、反応器4abと同様の構成(
図2参照)とし、管体41内に通過ガスを、管体41の周囲の空間43に冷媒をそれぞれ通過させる多管式の冷却装置、エアフィンクーラー等を含んで構成することができる。
気液分離器は、冷却器で通過ガスを冷却する際に生じる凝縮水を通過ガスから分離する。このとき、凝縮水には、通過ガス中に残存する不要ガス成分(特に、二酸化炭素)を溶解して除去することができるという利点がある。
【0056】
気液分離器は、微成分除去部7の気液分離器と同様に構成することができ、好ましくは単なる容器で構成することができる。この場合、容器内の気液界面には、気体の通過は許容するが、液体の通過を阻止するフィルタを配置するようにしてもよい。
また、この場合、容器の底部には、液体ラインを接続し、その途中にバルブを設けるようにしてもよい。かかる構成によれば、容器内に貯留された凝縮水は、バルブを開放することにより、液体ラインを介して、ガス製造装置1外に排出(放出)することができる。
【0057】
さらに、液体ラインの途中のバルブより下流側には、ドレイントラップを設けることが好ましい。これにより、仮に、バルブが誤作動して、液体ラインに一酸化炭素や水素が流出しても、ドレイントラップに貯留され、ガス製造装置1外に排出されるのを未然に防止することができる。このドレイントラップに代えて、あるいは、ドレイントラップとともに、バルブの誤作動検知機能、バルブが誤作動した際の冗長化対策を施してもよい。
なお、液体ラインを上述したタンク30に接続して、排出する凝縮水を再利用するようにしてもよい。
【0058】
ガス分離器は、例えば、低温分離方式(深冷方式)の分離器、圧力スイング吸着(PSA)方式の分離器、膜分離方式の分離器、温度スイング吸着(TSA)方式の分離器、金属イオン(例えば、銅イオン)と有機配位子(例えば、5-アジドイソフタル酸)とを複合化した多孔性配位高分子(Porous Coordination Polymer:PCP)を用いた分離器、アミン吸収を利用した分離器等のうちの1種または2種以上を用いて構成することができる。
また、ガスラインGL4の気液分離器とガス分離器との間には、バルブを設けるようにしてもよい。この場合、バルブの開度を調整することにより、通過ガスの処理速度(生成ガスの製造速度)を調節することができる。
【0059】
生成ガスは、例えば、微生物(例えば、クロストリジウム等)による発酵により炭素有価物(例えば、エタノール等)を合成する分野、燃料または還元剤として使用して鉄鋼を製造する分野、電気デバイスを製造する分野、一酸化炭素を合成原料とする化学品(ホスゲン、酢酸等)を合成する分野、燃料として使用する燃料電池の分野等で利用することができる。
【0060】
次に、ガス製造システム100の使用方法(作用)について説明する。
[1]まず、
図3(a)に示すように、ガス切換部8においてガスライン(流路)を切り換えることにより、接続部2と反応器4abとを連通する。
[2]次に、この状態で、炉20から接続部2を介して排ガスの供給を開始する。
[3]次に、排ガスは、酸素除去装置(濃度調整部5)を通過する。これにより、排ガスから酸素が除去され、排ガス中に含まれる二酸化炭素の濃度が上昇する。
【0061】
[4]次に、排ガスは、圧縮部6を通過する。これにより、排ガスの圧力が上昇する。
[5]次に、排ガスは、微成分除去部7を通過する。これにより、圧縮部6で排ガスを圧縮した際に生じる凝縮水や、還元剤4Rの活性を低下させる不活化成分が排ガスから除去される。
[6]次に、排ガスは、排ガス加熱部10を通過する。これにより、排ガスが加熱される。
[7]次に、排ガスは、反応器4abに供給される。反応器4abでは、還元剤4Rにより排ガス中の二酸化炭素が一酸化炭素に還元される。このとき、還元剤4Rは、二酸化炭素との接触により酸化状態とされる。
【0062】
上記工程[7]における反応器4ab(排ガス、還元剤4R)の温度(反応温度)は、600℃以上であることが好ましく、650~1100℃であることがより好ましく、700~1000℃であることがさらに好ましい。反応温度を上記範囲に設定すれば、例えば、二酸化炭素を一酸化炭素へ変換する際の吸熱反応による還元剤4Rの急激な温度低下を防止または抑制することができるため、反応器4abにおける二酸化炭素の還元反応をより円滑に進行させることができる。
【0063】
[8]次に、反応器4abを通過した排ガスは、ガスラインGL4を介して吸着部19に供給される。吸着部19では、未反応の二酸化炭素が吸着剤に吸着される。
[9]次に、吸着部19を通過したガス(通過ガス)は、ガス精製部9を通過する。これにより、例えば、生成された凝縮水および凝縮水に溶解する二酸化炭素等が除去される。その結果、通過ガスから一酸化炭素が精製され、一酸化炭素を高濃度で含む生成ガス(合成ガス)が得られる。
[10]次に、生成ガスは、生成ガス排出部40からガス製造装置1外に排出され、次工程に供される。
【0064】
[11]次に、
図3(b)に示すように、ガス切換部8においてガスライン(流路)を切り換えることにより、還元ガス供給部3と反応器4bとを連通する。
[12]次に、この状態で、タンク30から水(還元ガス原料)を水素発生装置(還元ガス供給部3)に供給し、水から水素を生成する。
[13]次に、水素を含む還元ガスは、還元ガス加熱部11を通過する。これにより、還元ガスが加熱される。
[14]次に、還元ガスは、反応器4abに供給される。反応器4abでは、還元ガス(水素)との接触により酸化状態の還元剤4Rが還元(再生)される。このとき、水が生成される。
【0065】
上記工程[14]における反応器4ab(還元ガス、還元剤4R)の温度(反応温度)は、600℃以上であることが好ましく、650~1100℃であることがより好ましく、700~1000℃であることがさらに好ましい。反応温度を上記範囲に設定すれば、例えば、酸化状態の還元剤4Rを還元(再生)する際の吸熱反応による還元剤4Rの急激な温度低下を防止または抑制することができるため、反応器4abにおける還元剤4Rの還元反応をより円滑に進行させることができる。
【0066】
[15]次に、還元ガスは、ガスラインGL4を介して、吸着部19に供給される。吸着部19では、還元ガス中の未反応の水素と吸着剤に吸着された二酸化炭素とが反応し、一酸化炭素が生成する。
[16]次に、吸着部19を通過したガス(通過ガス)は、ガス精製部9を通過する。これにより、例えば、生成された凝縮水等が除去される。その結果、通過ガスから一酸化炭素が精製され、一酸化炭素を高濃度で含む生成ガス(合成ガス)が得られる。
[17]次に、生成ガスは、生成ガス排出部40からガス製造装置1外に排出され、次工程に供される。
【0067】
なお、上記工程[9]で吸着部19を通過したガス(通過ガス)と上記工程[16]で吸着部19を通過したガス(通過ガス)とは、一旦、合流させた後、後の工程に供するようにしてもよい。
【0068】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の反応部4について説明する。
図4は、第2実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
以下、第2実施形態の反応部4について説明するが、第1実施形態の反応部4との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0069】
第2実施形態の反応部4では、ガスラインGL4の吸着部19より下流側において分岐し、ガスラインGL3の途中に接続される返還ガスラインGL5が設けられている。
かかる構成によれば、吸着部19を通過したガス(排ガスおよび還元ガス)を、再度、反応器4abに供給するように構成されている。すなわち、排ガスおよび還元ガスを反応器4abおよび吸着部19に繰り返して供給し得るように構成されている。このため、未反応の二酸化炭素および未反応の水素を繰り返して利用することができ、よって、より高濃度で一酸化炭素を含む生成ガス(合成ガス)を効率よく製造することができる。
なお、返還ガスラインGL5を介して返還される排ガスおよび還元ガスには、それぞれ、ガスラインGL3を介して新たな排ガスおよび還元ガスを所定のタイミングおよび量で混合するようにしてもよい。
【0070】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態の反応部4について説明する。
図5は、第3実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
以下、第3実施形態の反応部4について説明するが、第1および第2実施形態の反応部4との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0071】
第3実施形態の反応部4では、吸着部19に、上記還元ガスと異なる第2の還元ガスを供給するガスラインGL6と、吸着部19を通過した第2の還元ガスを排出するガスラインGL19が接続されている。
第2の還元ガスも、還元物質を含むが、この還元物質は、上記還元物質と同じ水素でもよく、水素と異なる物質でもよい。
この場合、吸着部19の吸着剤に吸着された二酸化炭素の離脱には、第2の還元ガスを使用してもよく、第2の還元ガスおよび上記還元ガスの双方を使用してもよい。これらの場合、炭化有価物は、吸着剤に吸着された二酸化炭素は、第2の還元ガス中に含まれる還元物質との反応により生成される。
【0072】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態の反応部4について説明する。
図6は、第4実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
以下、第4実施形態の反応部4について説明するが、第1~第3実施形態の反応部4との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態の反応部4では、2つの反応器4a、4bが設けられている。
ガス切換部8は、ガスラインGL3a、GL3bを介して、それぞれ反応器4a、4bの入口ポートに接続されている。
【0073】
反応器4a、4bの出口ポートには、それぞれガスラインGL4a、GL4bが接続され、これらがガス合流部J4において合流して、ガスラインGL4を構成している。
また、吸着部19には、それぞれガスラインGL19a、GL19bが接続され、これらがガス合流部J19において合流して、ガスラインGL19を構成している。
なお、ガスラインGL4a、GL4b、GL19a、GL19bの途中には、必要に応じて、それぞれバルブ(図示せず。)が設けられる。
【0074】
酸化側の反応器4a、4bを通過した排ガスは、ガスラインGL4a、GL4bおよび吸着部19を通過した後、ガス合流部J4でガスラインGL4に合流する。
一方、還元側の反応器4a、4bを通過した還元ガスは、ガスラインGL4a、GL4bおよび吸着部19を通過した後、ガスラインGL19a、GL19bに排出され、ガス合流部J19でガスラインGL19に合流する。
【0075】
かかる構成では、各反応器4a、4bに対して、排ガスと還元ガスとを切り換えて交互に供給することができるので、排ガスおよび還元ガスの一方の反応器4a、4bへの供給を一時的に止める必要がなく、ガス製造システム100を安定的に連続運転することができる。
なお、ガスラインGL19a、GL19b、GL19は、必要に応じて省略することができる。この場合、反応器4a、4bを通過した還元ガスも、ガスラインGL4a、GL4bおよび吸着部19を介して、ガスラインGL4に排出するように構成することができる。
【0076】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態の反応部4について説明する。
図7は、第5実施形態の反応部の構成を示す概略図である。
図8は、第5実施形態において反応器に通過させるガスを切り換える方法を示す概略図である。
以下、第5実施形態の反応部4について説明するが、第1~第4実施形態の反応部4との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0077】
第5実施形態の反応部4は、第1ガス切換部8aと、4つ(複数)の反応器4a~4dと、第2ガス切換部8bとを有する。
第1ガス切換部8aは、ガスラインGL3a~GL3dを介して、それぞれ反応器4a~4dの入口ポートに接続されている。
反応器4a~4dの出口ポートには、それぞれガスラインGL4a~GL4dが接続され、第2ガス切換部8bにおいて合流して、ガスラインGL4を構成している。
また、第1ガス切換部8aと第2ガス切換部8bとの間は、4つの返還ガスラインGL5a~GL5dにより接続されている。
【0078】
そして、ガスラインGL4a~GL4dの途中には、それぞれ吸着部19が設けられている。
かかる構成により、第1ガス切換部8aと第2ガス切換部8bとにおいてガスライン(流路)の切換を行うことにより、例えば、反応器4a~4dの1つの反応器には、排ガス(酸化ガス)を供給して通過させ、一方、反応器4a~4dの残りの3つの反応器には、この順で還元ガスを連続して供給して通過させることができる。
また、反応器4a~4dには、それぞれガスラインGL19a~GL19bが接続されている。
【0079】
すなわち、本実施形態では、3つの反応器が直列に接続され、隣り合う2つの反応器同士の間には、吸着部19が接続されるように構成し得る。換言すれば、隣り合う2つの反応器は、吸着部19を介して直列に接続可能になっている。
本実施形態では、複数の反応器4a~4dのうち、排ガスが供給される1つの反応器が酸化側の第1反応器を構成し、第1反応器に排ガスが供給されるときに、還元ガスが連続して供給される3つの反応器が還元側の第2反応器を構成する。
【0080】
具体的には、
図8(I)に示す1ターン目では、排ガス(二酸化炭素)をガスラインGL3aを介して、反応器(第1反応器)4aに供給し、これを通過した排ガス(一酸化炭素)をガスラインGL4aを介して、排出することができる。
【0081】
一方、残りの反応器4b~4dには、まず、還元ガス(水素)をガスラインGL3bを介して、反応器(1番目の第2反応器)4bに供給し、次いで、これを通過した還元ガス(残水素)をガスラインGL4b、ガスラインGL5cおよびガスラインGL3cを介して、反応器(2番目の第2反応器)4cに供給することができる。このとき、ガスラインGL5cの途中に設けられた吸着部19を通過する還元ガスの一部をガスラインGL19cを介して排出することができる。
その後、反応器4cを通過した還元ガス(残水素)をガスラインGL4c、ガスラインGL5dおよびガスラインGL3dを介して、反応器(3番目の第2反応器)4dに供給し、これを通過した還元ガス(水)をガスラインGL4dを介して、排出することができる。このとき、ガスラインGL5dの途中に設けられた吸着部19を通過する還元ガスの一部をガスラインGL19dを介して排出することができる。
【0082】
次に、
図8(II)に示す2ターン目では、反応器(第1反応器)4bには、排ガスを供給して通過させ、一方、反応器(第2反応器)4c、4d、4aには、この順で還元ガスを連続して供給し、通過させることができる。
次に、
図8(III)に示す3ターン目では、反応器(第1反応器)4cには、排ガスを供給して通過させ、一方、反応器(第2反応器)4d、4a、4bには、この順で還元ガスを連続して供給し、通過させることができる。
次に、
図8(IV)に示す4ターン目では、反応器(第1反応器)4dには、排ガスを供給して通過させ、一方、反応器(第2反応器)4a、4b、4cには、この順で還元ガスを連続して供給し、通過させることができる。
【0083】
本実施形態では、1ターン目~4ターン目の一連の操作を1サイクルとして、複数サイクル繰り返すことにより、二酸化炭素から一酸化炭素への変換を連続かつ安定して行うことができる。
例えば、二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率より、水素(還元物質)による酸化状態の還元剤4Rの還元効率が低い還元剤4Rを使用する場合、還元ガスを1つの反応器に1回のみ通過させると、酸化状態の還元剤4Rの還元に使用しきれなかった水素(残水素)が無駄になる。これに対して、本実施形態では、還元ガスを連続して3つの反応器に通過させること、換言すれば、1つの反応器に3回通過させるができる。このため、水素(還元ガス)が無駄になるのを防止することができる。
【0084】
また、3以上の反応器を使用することにより、排ガスおよび還元ガスを通過させない反応器を設けることができる。このため、生成ガス(一酸化炭素)を製造するための通常運転を継続しつつ、通常運転に使用されていない反応器に対して、他の操作を行うことができる。
例えば、二酸化炭素から一酸化炭素(炭素有価物)に変換する際に、還元剤4Rの表面に炭素が堆積して変換効率が低下する場合がある。このとき、通常運転に使用されていない反応器に酸素を供給する操作を行えば、還元剤4Rの表面に堆積した炭素を燃焼により除去して、還元剤4Rを再生することができる。
【0085】
この場合、反応器に酸素を供給する前後において、反応器内に不活性ガス(例えば、窒素ガス)をパージするようにしてもよい。これにより、還元ガスと酸素とが不本意に接触して爆発的に反応することを防止することができる。
以上説明したようなガス製造装置1(ガス製造システム100)によれば、二酸化炭素を含む酸化ガスと還元物質を含む還元ガスとを使用して、効率よく炭素有価物を生成することができる。
【0086】
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記ガス製造装置において、前記吸着部を通過したガスを、再度、前記反応器に供給するように構成される、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記少なくとも1つの反応器および前記少なくとも1つの吸着部は、それぞれ複数の前記反応器および複数の前記吸着部を含み、隣り合う2つの前記反応器は、前記吸着部を介して直列に接続可能である、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記吸着剤は、前記還元ガス、および/または、還元物質を含み、前記還元ガスと異なる第2の還元ガスを供給することにより、吸着された前記二酸化炭素を炭素有価物として離脱させる、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記炭素有価物は、前記吸着剤に吸着された前記二酸化炭素と、前記反応器を通過した前記還元ガス中に含まれる未反応の前記還元物質、および/または、前記第2の還元ガス中に含まれる前記還元物質との反応により生成される、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記吸着剤は、第1族および第2族に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有する炭酸塩、酸化物またはそれらの混合物を含む、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記炭酸塩、酸化物またはそれらの混合物は、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムおよびバリウムのうちの少なくとも1種を含有する、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記金属単体および金属酸化物の少なくとも一方は、少なくとも1種の遷移金属元素を含む、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記炭素有価物は、一酸化炭素、メタンおよびエチレンのうちのいずれかである、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記炭素有価物は、一酸化炭素である、ガス製造装置。
前記ガス製造装置において、前記還元物質は、水素である、ガス製造装置。
もちろん、この限りではない。
【0087】
既述のとおり、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を何ら限定するものではない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0088】
例えば、本発明のガス製造装置は、上記実施形態に対して、他の任意の追加の構成を有していてもよく、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよく、一部の構成が省略されていてもよい。
また、上記第1~第5実施形態の任意の構成を組み合わせるようにしてもよい。
上記実施形態では、反応器を多管式の反応装置として説明したが、管体41を省略して、ハウジング42に、直接、還元剤4Rを充填して構成してもよい。また、吸着部についても同様である。
上記実施形態では、還元ガスとして水素を含むガスを代表に説明したが、還元ガスには、還元物質として、水素に代えてまたは水素とともに、炭化水素(例えば、メタン、エタン、アセチレン等)およびアンモニアから選択される少なくとも1種を含むガスを使用することもできる。
【実施例0089】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0090】
1.還元剤の製造
(還元剤1)
まず、還元剤の前駆体として、1458gの硝酸鉄(III)九水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、純度:99.9%)と、103gのオキシ硝酸ジルコニウム(II)二水和物(キシダ化学株式会社製、純度:99.0%)と、168gの硝酸セリウム(III)六水和物(シグマアルドリッチ社製、純度:99.0%)とを、それぞれ計量した。
次いで、1103gのクエン酸(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、純度:99.5%)を計量し、8.1Lの脱イオン水に溶解してクエン酸水溶液を得た。その後、上記前駆体(硝酸金属塩)を、攪拌しつつクエン酸水溶液に65℃で添加した。
【0091】
30分経過後、152gのエチレングリコール(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、純度:99.5%)をクエン酸水溶液に添加し、温度を80℃に上昇させた。
粘性のゲルが形成されるまで、連続して撹拌しつつ、80℃の温度を維持した。その後、ゲルを乾燥炉へ移動させた。ゲルの乾燥は、100℃、20時間で行った。
生成された有機および無機化合物の膨潤した塊状物を粉砕し、700℃、4時間、3℃/分の速度で焼成した。
【0092】
焼成した塊状物を機械的に細かく粉砕した後、アルミナバインダー、賦孔材、イオン交換水を加え、球状に造粒した。得られた成型体を120℃で10時間乾燥後、750℃で4時間焼成した。これにより、還元剤1を得た。
得られた還元剤1に対してXRFによる組成定性分析を行ったところ、酸化マグネシウムが14質量%、酸化鉄が45質量%、酸化アルミニウムが2質量%であることが確認された。
【0093】
(還元剤2)
まず、原料として、4150gの硝酸マグネシウム六水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、純度:99.9%)と、9740gの硝酸鉄六水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、純度:99.0%)と、3090gの硝酸アルミニウム九水和物(富士フイルム和光純薬工業株式会社製、純度:99.0%)とを、それぞれ計量した。
次いで、上記前駆体(硝酸金属塩)を、蒸留水に溶解して、原料水溶液を調製した。
この原料水溶液にpHが10となるように、25%アンモニア水を滴下し共沈した。
その後、混合液を60℃に維持しつつ攪拌を継続し、12時間熟成を行った。熟成終了後、沈殿物を濾過により回収し、十分に水洗した。
【0094】
次いで、回収した沈殿物を乾燥機により120℃で12時間乾燥した後、750℃で6時間焼成した。
焼成した塊状物を機械的に細かく粉砕した後、アルミナバインダー、賦孔材、イオン交換水を加え、球状に造粒した。得られた成型体を120℃で10時間乾燥後、750℃で6時間焼成した。これにより、還元剤2を得た。
得られた還元剤2に対してXRFによる組成定性分析を行ったところ、酸化鉄が49質量%、酸化セリウムが12質量%、酸化ジルコニウムが8質量%、酸化アルミニウムが29質量%であることが確認された。
【0095】
2.吸着剤の調製
(吸着剤1)
50質量部の酸化カルシウムと50質量部の酸化アルミニウムとを乳鉢で混合し、直径3mmに打錠成形した後、大気中、850℃で7時間焼成した。これにより、吸着剤を得た。なお、得られた吸着剤には、炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムが含まれていた。
(吸着剤2)
80質量部の酸化カルシウムと20質量部の酸化アルミニウムとを乳鉢で混合し、直径3mmに打錠成形した後、大気中、850℃で7時間焼成した。これにより、吸着剤を得た。なお、得られた吸着剤には、炭酸カルシウムおよび酸化カルシウムが含まれていた。
【0096】
3.二酸化炭素の変換試験
固定床流通式反応装置と、反応装置に直結するガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)とを備える迅速触媒評価システムを用いて測定を行った。内径4mmの石英反応管を用意し、上段に還元剤1または2を充填、下段に吸着剤1、2または酸化アルミニウムを充填した。なお、還元剤1または2と吸着剤1、2または酸化アルミニウムとの充填比率を、質量比で1:2とし、上段の剤と下段の剤とのの間に石英ウールを充填し、両剤の混合が生じないようにした。
【0097】
特性評価を行うにあたり、以下のプロセスを行った。
まず、3mL/分の流量でヘリウムガスを石英反応管に流しつつ、40℃/分の昇温速度で昇温させ、20分間加熱した。次に、石英反応管に、水素ガス(還元ガス)を流量3mL/分で16分間流して、還元剤の還元反応を実施して、還元剤を還元した。このとき、反応装置の排出口から排出されるガスには、水蒸気が含まれていた。
次に、ガス交換のために、ヘリウムガスを流量3mL/分で5分間流した。
【0098】
その後、二酸化炭素ガスを流量3mL/分で4分間流して、二酸化炭素の還元反応を実施して、二酸化炭素ガス(酸化ガス)を還元した。また、未反応の二酸化炭素の吸着剤への吸着が生じた。このとき、反応装置の排出口から排出される生成ガスには、一酸化炭素が含まれていた。
次に、石英反応管に、水素ガス(還元ガス)を流量3mL/分で16分間流して、還元剤の還元反応を実施して、還元剤を還元および、吸着剤からの二酸化炭素の離脱および一酸化炭素への変換反応を行った。このとき、反応装置の排出口から排出されるガスには、一酸化炭素および水蒸気が含まれていた。
【0099】
なお、以上のプロセスでは、いずれのガスを流す際にも、還元剤の温度を650℃で維持するとともに、大気圧条件で行った。
還元剤による二酸化炭素の一酸化炭素への変換効率(以下、「還元剤による変換効率」とも記載する。)は、次の式により計算した。
なお、還元剤による変換効率は、石英反応管内への二酸化炭素ガスの流通を開始した後、1分間の平均比率である。
XCO(%)=nCO,out/(nCO,out+nCO2,out)×100
上記式中、nCO,outは生成ガス中に含まれる単位時間当たりの一酸化炭素生成量(mmol)であり、nCO2,outは生成ガス中に含まれる単位時間当たりの二酸化炭素生成量(mmol)である。
【0100】
なお、ガスクロマトグラフ質量分析計における測定条件は、以下の通りである。
カラム温度:200℃
インジェクション温度:200℃
検出器温度:250℃
カラム:EGAチューブ(L:2.5m、φ(内径):0.15mm、t:0mm)
カラム流量:1.00mL/分
スプリット比:250
パージ流量:3.0mL/分
【0101】
これらの結果を、以下の表1に示す。なお、表1中には、各実施例および各比較例の還元剤による変換効率は、比較例1で測定された値を「1」とした場合の相対値として示す。
【表1】