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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023091976
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】化粧シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20230626BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230626BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20230626BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/20 A
B32B27/10
B32B29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206892
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 彩加
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太郎
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK36A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100CA13A
4F100CA13B
4F100CA13C
4F100DE01A
4F100DE01B
4F100DE01C
4F100DG10A
4F100EJ82
4F100HB01
4F100HB31B
4F100HB31C
4F100JA13
4F100JN22C
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】より意匠性を有する化粧シートを提供可能とすることを目的としている。
【解決手段】基材シート10の上に絵柄層20が形成され、上記絵柄層20の上に光輝層30が形成され、上記絵柄層20は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、上記光輝層30は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含む、化粧シート1である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの上に、絵柄層と光輝層とを備えた化粧シートであって、
上記絵柄層と光輝層とは、少なくとも一部が厚さ方向で積層しており、
上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、
上記光輝層は、平均粒径0.5μm以上100μm以下光輝性顔料を含む、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
基材シートの上に絵柄層が形成され、上記絵柄層の上に光輝層が形成され、
上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、
上記光輝層は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含む、
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項3】
上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキを用い、インクジェット印刷により形成された層であり、
上記光輝層は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキを用い、有版印刷で形成された層である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。
【請求項4】
上記絵柄層は、面積を円に換算して直径1μm以上100μm以下のインキドットにより絵柄が表現されている、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項5】
上記絵柄層の絵柄の位置と、上記光輝層の柄位置とが同調している、
ことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項6】
上記基材シートは、樹脂含浸性のチタン紙からなる、
ことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項7】
上記基材シートは、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキが水性のインキからなる、
ことを特徴とする請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項8】
上記基材シートは、平均粒径0.5μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキが水性のインキからなる、
ことを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項9】
基材シートの上にインクジェット印刷により絵柄層を形成し、
上記絵柄層の上に、光輝性顔料を含んだインキを用い有版印刷により光輝層を形成する、
ことを特徴とする化粧シートの製造方法。
【請求項10】
上記インクジェット印刷には、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキを用い、
上記有版印刷には、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキを用いる、
ことを特徴とする請求項9に記載した化粧シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光輝性を有する意匠性に優れた化粧シートに関する技術である。
【背景技術】
【0002】
化粧シートの意匠性において、金属光沢やきらきらした光輝感のある表現が求められることがある。そのような光輝性を有する化粧シート及びその製造方法としては、例えば特許文献1、2に記載の技術がある。
特許文献1には、基材シートの表面に対し絵柄層と光輝層を並べて形成することで、意匠性に優れた化粧シートを製造することが記載されている。この特許文献1には、絵柄層をインクジェット印刷で形成し、光輝層を、ディスペンサー(無版印刷)を用いて形成することが記載されている。
また、特許文献2には、基材シートの上に、光輝性顔料を含むインキを用いインクジェット印刷にて絵柄印刷層を形成することが記載されている。また、特許文献2には、基材シートとシルバーインキからなる絵柄印刷層の間に、カラー絵柄印刷層を形成することも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-195915号公報
【特許文献2】特開2020-131589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、光輝性の意匠効果を高めるためには、ある程度粒径の大きいアルミニウム顔料やパール顔料を印刷する必要がある。これに対し、発明者は、インクジェット印刷法では、顔料の粒径が大きいなるほど、ノズルの詰まりを生じやすくなり、その結果、意匠性に悪影響が出るとの知見を得た。
このようなことから、特許文献1、2の方法では、絵柄の意匠性が限定されてしまうという課題があった。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、より意匠性を高めた化粧シートを提供可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題解決のために、本発明の一態様は、基材シートの上に絵柄層が形成され、上記絵柄層の上に光輝層が形成され、上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、上記光輝層は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含む、化粧シートである。
上記絵柄層は、例えば、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキを用い、インクジェット印刷などの無版印刷で形成し、上記光輝層は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキを用い、グラビア印刷などの有版印刷で形成する。
【0006】
ここで、絵柄層を上記粒径の顔料を含んだインクジェット印刷で形成し、その上にグラビア印刷などの有版印刷で上記粒径の顔料を含んだ光輝層を構成した積層構造によって、光輝性により優れた化粧シートとなり、その構造は、出願時において物の構造の特性を解析することが技術的に不可能、若しくは、特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることを鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく経済的支出や時間を要するものと思料する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、絵柄層と光輝層に使用しているインキの違いにより、深みのある印刷表現が可能となり、意匠性が向上する。
更に、インクジェット印刷にて絵柄層を形成し、その上に、グラビア印刷等の有版印刷によって光輝層を形成することで、より精度よくパール表現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に基づく第1の実施形態に係る化粧シートを説明する模式的断面図である。
図2】本発明に基づく第1の実施形態に係る他の化粧シートを説明する模式的断面図である。
図3】本発明に基づく第2の実施形態に係る化粧シートを説明する模式的断面図である。
図4】本発明に基づく第2の実施形態に係る他の化粧シートを説明する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
「第1の実施形態」
(構成)
本実施形態の化粧シート1は、図1図2に示すように、基材シート10の上に絵柄層20が形成され、絵柄層20の上に光輝層30が形成された積層構造である。更に、化粧シート1は、光透過性の表面保護層などを有していても良い。また、基材シート10と絵柄層20の間に、密着性を向上させるためのアンカーコート層を設けても良い。
【0010】
<基材シート10>
基材シート10としては、基本的には公知の一般の化粧シート1に使用される基材シート10と同様のものを使用することができる。
紙製の基材シート10としては、薄紙、チタン紙、含浸紙を例示できる。樹脂製の基材シート10としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1、4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル系樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン(登録商標)、6、6-ナイロン、6、10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種類以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することができる点で好適である。
【0011】
上記の各種の熱可塑性樹脂の中でも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の様な塩素(ハロゲン)を含有する樹脂の採用は望ましいものではなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を採用することが望ましい。中でも各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル系樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。これらのうちポリオレフィン系樹脂は、従来からポリ塩化ビニル樹脂を代替する化粧材用材料として採用が行われている。
【0012】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した様に多くの種類のものが知られており、それらの中から化粧材の使用目的等に応じて適宜選択して使用すれば良いが、中でも一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独または共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独または適宜配合したり、それらにさらにアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用したりすることができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1またはオクテン-1、のコモノマーの1種または2種類以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体またはその水素添加物等の改質剤を適宜添加することもできる。
【0013】
基材シート10には、必要に応じて例えば着色剤、充填剤(シリカ、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等)紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤(ステアリン酸、金属石けん等)、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。なお、基材シート10は、化粧シート10を貼り合わせる基板などの表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽するために、隠蔽性の不透明に着色されたものが用いられる場合が多いが、化粧シート10を貼り付ける基板の表面の質感を活かすために、透明や半透明のものが用いられる場合もある。
【0014】
特に、基材シート10としては、熱硬化性樹脂の含浸が可能な吸水性の良い紙等の繊維質シート状体が良く、例えば薄葉紙、チタン紙、上質紙、晒又は未晒クラフト紙等が例示できる。中でも印刷適性と樹脂含浸適性の両面で優れたチタン紙が最も好適である。また、基材シート10の表面の質感を活かしたい場合等には、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂の含浸により透明化する性質を有する所謂透明紙を使用することもできる。
基材シート10の厚さには特に制約はないが、一般的には坪量20~200g/m程度の範囲内のものが使用される。好ましくは80g/mである。
【0015】
以上説明した基材シート10のうちでも、本実施形態では、チタン紙が好ましい。なお、本実施形態では、例えば、チタン紙に印刷をした後、樹脂を含浸することで、樹脂含浸性のチタン紙とする。
【0016】
<絵柄層20>
絵柄層20は、基材シート10の面に形成される。図1は、ベタで絵柄層20を設けた場合である。
絵柄層20の絵柄を、ドットパターンで絵柄模様を構成する場合には、その絵柄模様の種類に特に制約はなく、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学図形、文字、記号等、或いはそれらの2種類以上の組み合わせ等、所望により任意な絵柄を選択できる。
絵柄層20を形成するためのインキは、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキを用いる。この結果、絵柄層20は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、当該顔料によって絵柄が構成される。
【0017】
絵柄層20は、例えば、無版印刷であるインクジェット印刷により形成する。この場合、絵柄層20は、面積を円に換算して直径1μm以上100μm以下のインキドットによるドットパターンで絵柄が表現されていることが好ましい。
もっとも、絵柄層20は、通常の印刷インキを使用して通常の印刷方法で設けることができるが、上述のようにインクジェット印刷により形成することが好ましい。インクジェット印刷を用いることで、簡易且つ高精度で絵柄を形成することが可能である。
【0018】
印刷インキの種類には特に制約はなく、油性インキであっても良いが、樹脂含浸適性を考慮すると水性インキを使用することが望ましい。それは、水性インキの方が、臭気がすくなく、作業環境や作業者の健康への悪影響が少ないことなどが挙げられる。
なお、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料として、平均粒径が小さいに酸化チタンなどの金属粉からなる光輝性顔料を含んでいても良い。
【0019】
上記水性インキの種類にも特に制約はないが、特にそのバインダー樹脂がカゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂を主成分とするものを使用することが最も望ましい。これらのバインダー樹脂は、インキの印刷後に乾燥工程を経ることによって難水溶化する性質を有しており、後の樹脂含浸工程において含浸樹脂の水溶液に再溶解しにくいので、絵柄模様を損なうことがなく、且つ含浸樹脂の汚染のおそれもないからである。
【0020】
上記エマルジョン樹脂としては、例えばアクリル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ウレタン系等、上記ラテックス樹脂としては、例えばスチレン-ブタジエン系、アクリロニトリル-ブタジエン系、メチルメタクリレート-ブタジエン系等を使用することができる。
また、これらカゼイン、エマルジョン樹脂及び/又はラテックス樹脂の他に、インキの安定性の向上を目的として、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド等の水溶性樹脂や、多糖類、セルロース誘導体等の水溶性高分子等を併用したものであっても良い。
【0021】
<光輝層30>
光輝層30は、図1及び図2に示すように、絵柄層20の上に形成される。なお、図2の場合、基材シート10の面に沿って並ぶ各絵柄層の絵柄はそれぞれ、例えば、複数のインキドットで構成され、その複数のインキドットの上に各光輝層30が形成される。
なお、一部の光輝層30の柄が、基材シート10の面の上に直接に形成されていても良い(不図示)。
【0022】
光輝層30は、例えば、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含むインキを用い、例えば有版印刷によって形成する。光輝層30は、パール輝度などの光輝顔料からなる絵柄によって意匠性を付与するために設けられる。
平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料は、例えばパール顔料である。これによって絵柄の上に、パール輝度を有する柄によって更に意匠性が付与される。
パール顔料は、二酸化チタン被覆雲母、金、銀、アルミニウムなどを材料とした、鱗状薄片などの薄片形状からなる。2種類以上のパール顔料が含まれていてもよい。
【0023】
要求されるパール感に応じて、パール顔料の粒径は、1μm以上100μm以下、好ましくは5μm以上60μm以下の範囲に設定する。
ここで、図2のように、絵柄層20の絵柄の位置と、上記光輝層30の柄位置とが同調している方が、意匠性が向上するため好ましい。同調とは、積層方向から見て、絵柄と柄の幅の50%以上が重なっていることを指す。
光輝層30は、例えば、平均粒径1μm以上100μm以下のパール顔料を含むインキで印刷されて、例えば光輝性の絵柄層20を構成する。
【0024】
光輝層30のインキとしては、例えば、油性インキを使用する。絵柄層20の上に、安定して平均粒径5μm以上60μm以下の光輝性顔料からなる柄を精度良く形成するためには、油性インキが好ましい。
光輝層30は、例えば、染料または顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂と共に適当な希釈溶媒中に溶解または分散してなる印刷インキまたは塗料等を使用して、例えばグラビア印刷法またはオフセット印刷法等の有版印刷法や、グラビアコート法またはロールコート法等の各種塗工法などによって形成する。
【0025】
バインダー樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等またはそれらの混合物等がよく使用されるが、勿論これらに限定されるものではない。
光輝層30の柄の種類は、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字または記号、それらの組み合わせ等、所望により任意であり、単色無地であっても良い。
ここで、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を使用するが、光輝性顔料の平均粒径が大きいほど、無版印刷法よりもオフセット印刷やグラビア印刷などの有版印刷法の方がより精度よく光輝性の柄を印刷することができる。ただし、グラビア印刷を適用しても顔料の平均粒径が100μmより大きいと、柄にムラやスジなどの不具合が発生し易くなる。
【0026】
光輝性の層厚は、乾燥後の塗布量で1~15g/mとなるように設ける、特には6g/mが最適である。1g/mより薄いと十分な光輝性が発現されず、15g/mより厚いと抜けなどの不具合が発生し易くなる。
ここで、グラビア版としては鉄芯に銅メッキ層を設け、エッチングにより絵柄を設けたあと、クロムメッキした通常のグラビア版が使える。
【0027】
(動作その他)
本実施形態によれば、絵柄層20と光輝層30に使用しているインキに含有する顔料の違いにより、深みのある印刷表現が可能となり、意匠性が向上する。
更に、インクジェット印刷にて絵柄層20を形成し、その上に、グラビア印刷等の有版印刷によって光輝層30を形成することで、より精度よくパール表現が可能となる。
なお、絵柄層20の形成と光輝層30の形成は、連続したラインで実行すればよい。
以上のように、本実施形態では、インクジェット印刷物においても、その上に光輝性を別途形成することで、パール加飾が可能となり、印刷物の意匠性が向上した。
このとき、絵柄層20の絵柄と光輝層30の柄を同調させて印刷することで、より深みのある意匠を構成可能となる。
【0028】
「第2の実施形態」
第2の実施形態の化粧シートは、図3及び図4のように、基材シート10の上に、有版印刷により光輝層30の柄が形成され、その光輝層30の上に、インクジェット印刷にて絵柄層20の絵柄が形成される構成となっている。
その他の各層の組成や形成方法などについては、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
なお、図4の場合、一部の絵柄層20の絵柄が、基材シート10の面の上に直接に形成されていても良い(不図示)。
第2の実施形態の効果は、第1の実施形態と同じである。
【0029】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)基材シートの上に、絵柄層と光輝層とを備えた化粧シートであって、
上記絵柄層と光輝層とは、少なくとも一部が厚さ方向で積層しており、
上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、
上記光輝層は、平均粒径0.5μm以上100μm以下光輝性顔料を含む。
(2)基材シートの上に絵柄層が形成され、上記絵柄層の上に光輝層が形成され、
上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含み、
上記光輝層は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含む。
【0030】
(3)上記絵柄層は、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキを用い、インクジェット印刷により形成された層であり、
上記光輝層は、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキを用い、有版印刷で形成された層である。
(4)上記絵柄層は、面積を円に換算して直径1μm以上100μm以下のインキドットにより絵柄が表現されている。
(5)上記絵柄層の絵柄の位置と、上記光輝層の柄位置とが同調している。
【0031】
(6)上記基材シートは、樹脂含浸性のチタン紙からなる。
(7)上記基材シートは、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキが水性のインキからなる。
(8)上記基材シートは、平均粒径0.5μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキが水性のインキからなる。
【0032】
(9)基材シートの上にインクジェット印刷により絵柄層を形成し、
上記絵柄層の上に、光輝性顔料を含んだインキを用い有版印刷により光輝層を形成する。
(10)上記インクジェット印刷には、平均粒径10nm以上150nm以下の顔料を含んだインキを用い、
上記有版印刷には、平均粒径1μm以上100μm以下の光輝性顔料を含んだインキを用いる。
【実施例0033】
次に、本実施形態に基づく実施例について説明する。
「第1の実施例」
第1の実施例では、図1又は図2のように、基材シート10の上に、絵柄層20を形成し、絵柄層20の上に光輝性層30を形成して化粧シート1である実施例1~26、比較例1~4について評価した。なお、図1はベタで構成した場合であり、図2は、絵柄層20の絵柄と光輝層30の柄とを同調させた例である。
その化粧シート1の条件及び、評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ここで、表1中、「原反」とは基材シート10を指す。また、「インキの平均粒径」とは、インキに含有する顔料の平均粒径を指す。
<実施例1~12>
実施例1~12では、基材シート10としてチタン紙を用いた。絵柄層20は、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。また、光輝性層30は、水性の光輝性インキを用い、木目柄に同調していないベタ柄をグラビア印刷にて形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
各実施例でのインキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0036】
<実施例13~24>
実施例13~24では、基材シート10として、チタン紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。また光輝層30は、油性の光輝性パールインキを用い、木目柄に同調させた柄をグラビア印刷にて形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
各実施例でのインキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0037】
<実施例25>
実施例25では、基材シート10として、チタン紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。また、光輝層30は、水性の光輝性パールインキを用い、木目柄に同調させた柄をオフセット印刷にて形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0038】
<実施例26>
実施例26は、基材シート10としてコピー用紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。また、光輝層30は、油性の光輝性インキを用い、木目柄に同調させた柄をグラビア印刷にて形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0039】
<比較例1>
比較例1は、基材シート10としてチタン紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。光輝層30には、パール顔料を含む塗工液を用い、ベタ柄をディスペンサーから吐出して形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0040】
<比較例2>
比較例2は、基材シート10としてチタン紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてグラビア印刷機で木目柄を形成した。また、光輝層30は、水性の光輝性インキを用い、木目柄に同調させた柄をグラビア印刷にて形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0041】
<比較例3>
比較例3では、基材シート10として、チタン紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。また、光輝層30は、水性の光輝性パールインキを用い、木目柄に同調させた柄をグラビア印刷にて形成した。
但し、光輝層30のインキが含有する顔料の平均粒径を、表1のように、本件の範囲よりも小さくした。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0042】
<比較例4>
比較例4では、基材シート10として、チタン紙を用いた。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。また、光輝層30は、水性の光輝性パールインキを用い、木目柄に同調させた柄をグラビア印刷にて形成した。
但し、光輝層30のインキが含有する顔料の平均粒径を、表1のように、本件の範囲よりも大きくした。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表1に記載した通りである。
【0043】
(評価方法)
各例について、印刷特性、含浸性、意匠性を評価した。
<印刷適性>
印刷適性として、光輝層30の柄印刷を行った際の印刷状態を目視確認した。
評価は次の通りである。
○:絵柄層20と光輝層30がはっきりとよれることなく印刷されている場合
△:絵柄層20と光輝層30は欠けなく印刷できているものの、ぼやけてしまった場合
×:絵柄層20もしくは光輝層30の一部が欠けたように印刷されている場合
【0044】
<含浸性>
加工適性を確認するものであり、メラミン樹脂含浸の適正を評価したものである。
評価は次の通りである。
○:加工時にメラミン樹脂含浸不良による白化現象がない
×:白化した。
<意匠性>
光輝層30を印刷後に、目視にて意匠性を評価した。
意匠性の評価は次の通りである。
○:深みのある印刷であった。
×:単調な表現になってしまっている
【0045】
表1から分かるように、本開示に基づき実施例1~26では、印刷適性及び意匠性が良好であることが分かった。ただし、実施例20と実施例26との比較から分かるように、含浸性については、基材シート10がコピー用紙よりもチタン紙である方が良いことが分かった。
また、比較例1のように、光輝層30の形成に、無版印刷法であるディスペンサー塗工を採用すると、印刷適性及び意匠性が、本開示に基づく化粧シート1よりも劣ることが分かった。
また、比較例2のように、絵柄層20を粒径の大きな顔料を用いて形成すると、印刷適性は良好であるものの、意匠性が、本開示に基づく化粧シート1よりも劣ることが分かった。
また、比較例3,4のように、光輝層30に使用する顔料の平均粒径を、本開示の範囲から外れると、意匠性が、本開示に基づく化粧シート1よりも劣ることが分かった。
【0046】
「第2の実施例」
第2の実施例では、図3又は図4のように、基材シート10の上に、光輝性層30を形成し、光輝性層30の上に絵柄層20を形成した化粧シート1である、実施例31~56、比較例11~14について評価した。なお、図3はベタで構成した場合であり、図4は、光輝層30の柄と絵柄層20の絵柄とを同調させた例である。
その化粧シート1の条件及び、評価結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
ここで、表2中、「原反」とは基材シート10を指す。また、「インキの平均粒径」とは、インキに含有する顔料の平均粒径を指す。
<実施例31~42>
実施例31~42では、基材シート10としてチタン紙を用いた。光輝性層30は、水性の光輝性インキを用い、ベタ柄をグラビア印刷にて形成した。また、絵柄層20は、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
各実施例でのインキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0049】
<実施例43~54>
実施例43~54では、基材シート10として、チタン紙を用いた。光輝層30は、油性の光輝性パールインキを用い、柄をグラビア印刷にて形成した。また、絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
各実施例でのインキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0050】
<実施例55>
実施例55では、基材シート10として、チタン紙を用いた。光輝層30は、水性の光輝性パールインキを用い、柄をオフセット印刷にて形成した。また、絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0051】
<実施例56>
実施例56は、基材シート10としてコピー用紙を用いた。光輝層30は、油性の光輝性インキを用い、柄をグラビア印刷にて形成した。また、絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0052】
<比較例11>
比較例11は、基材シート10としてチタン紙を用いた。光輝層30には、パール顔料を含む塗工液を用い、ベタ柄をディスペンサーから吐出して形成した。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0053】
<比較例12>
比較例12は、基材シート10としてチタン紙を用いた。光輝層30は、水性の光輝性インキを用い、柄をグラビア印刷にて形成した。また、絵柄層20には、水性インキにてグラビア印刷機で木目柄を形成した。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0054】
<比較例13>
比較例13では、基材シート10として、チタン紙を用いた。光輝層30は、水性の光輝性パールインキを用いグラビア印刷にて形成した絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
但し、光輝層30のインキが含有する顔料の平均粒径を、表2のように、本件の範囲よりも小さくした。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0055】
<比較例14>
比較例14では、基材シート10として、チタン紙を用いた。光輝層30は、水性の光輝性パールインキを用い、柄をグラビア印刷にて形成した。絵柄層20には、水性インキにてインクジェット印刷機で木目柄を形成した。
但し、光輝層30のインキが含有する顔料の平均粒径を、表2のように、本件の範囲よりも大きくした。
そして、形成した化粧シート1についてメラミン樹脂含浸をした。
インキが含有する顔料の平均粒径については、表2に記載した通りである。
【0056】
(評価方法)
各例について、第1の実施例と同様の評価基準にて、印刷特性、含浸性、意匠性を評価した。
表2から分かるように、本開示に基づき実施例31~56では、印刷適性及び意匠性が良好であることが分かった。ただし、実施例40と実施例56との比較から分かるように、含浸性については、基材シート10がコピー用紙よりもチタン紙である方が良いことが分かった。
【0057】
また、比較例11のように、光輝層30の形成に、無版印刷法であるディスペンサー塗工を採用すると、印刷適性及び意匠性が、本開示に基づく化粧シート1よりも劣ることが分かった。
また、比較例12のように、絵柄層20を粒径の大きな顔料を用いて形成すると、印刷適性は良好であるものの、意匠性が、本開示に基づく化粧シート1よりも劣ることが分かった。
また、比較例13,14のように、光輝層30に使用する顔料の平均粒径を、本開示の範囲から外れると、意匠性が、本開示に基づく化粧シート1よりも劣ることが分かった。
【符号の説明】
【0058】
1 化粧シート
10 基材シート
20 絵柄層
30 光輝層
図1
図2
図3
図4