(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092066
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】補助電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20230626BHJP
【FI】
H02M3/28 C
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021207053
(22)【出願日】2021-12-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】馬場 俊之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA17
5H730BB26
5H730BB61
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE57
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H730FG12
5H730XX02
5H730XX13
5H730XX22
5H730XX33
5H730XX50
(57)【要約】 (修正有)
【課題】信頼性の高い補助電源装置を提供する。
【解決手段】補助電源装置は、高周波変圧器22と、直流電源から供給される直流電力を変換するチョッパ回路31と、チョッパ回路31の出力電力を交流電力に変換して高周波変圧器22に供給するインバータS1、S2と、インバータの直流端に接続された直流コンデンサFC1と、インバータのスイッチングに伴って共振動作を発生させる共振コンデンサC1、C2と、高周波変圧器22を介してインバータS1、S2から供給される交流電力を直流電力に変換する整流器23と、インバータS1、S2の直流入力電流の値又は直流入力電流の値を演算するための値を検出する検出部32、33と、検出部32、33から供給される値に基づいて、共振回路の共振周波数を演算し、共振周波数と直流入力電流の値とを用いて共振コンデンサC1、C2の容量低減を検出する制御回路41と、を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波変圧器と、
直流電源から供給される直流電力を変換するチョッパ回路と、
前記チョッパ回路の出力電力を交流電力に変換して前記高周波変圧器に供給するインバータと、
前記インバータの直流端に接続された直流コンデンサと、
前記インバータのスイッチングに伴って共振動作を発生させる共振コンデンサと、
前記高周波変圧器を介して前記インバータから供給される交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記インバータの直流入力電流の値又は前記直流入力電流の値を演算するための値を検出する検出部と、
前記検出部から供給される値に基づいて、前記共振コンデンサを含む共振回路の共振周波数を演算し、前記共振周波数と前記直流入力電流の値とを用いて前記共振コンデンサの容量低減を検出する制御回路と、を具備する補助電源装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記直流コンデンサの電圧を検出する電圧検出器と、前記チョッパ回路の出力電流を検出する電流検出器と、を備え、
前記制御回路は、前記電流検出器で検出された電流値から、前記電圧検出器で検出された電圧値の微分値に前記直流コンデンサの静電容量を乗算して得られる値を引いた差を、前記直流入力電流の値とする、請求項1記載の補助電源装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記インバータの前記直流入力電流の値を検出する電流検出器を備える、請求項1記載の補助電源装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記直流入力電流の値が所定値以下となるタイミングを検出し、前記タイミングの周期に基づいて前記共振周波数を演算する、請求項2又は請求項3記載の補助電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記共振周波数が所定の閾値以上であり、かつ、前記直流入力電流の半周期毎の電流ピーク値の差が所定値以上であるときに、外部へ異常を通知する、請求項1記載の補助電源装置。
【請求項6】
前記インバータは、上アームのスイッチと下アームのスイッチとを備え、
前記制御回路は、前記共振周波数が所定の閾値以上であるとき、前記上アームのスイッチがオンであり前記下アームのスイッチがオフであるときの、前記直流入力電流の電流ピーク値と、前記上アームのスイッチがオフであり前記下アームのスイッチがオンであるときの前記電流ピーク値との差が所定値以上のときに、外部へ異常を通知する、請求項1記載の補助電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、補助電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電気車(移動体)は、高圧の電車線(例えば架空電車線、または第三軌条など)から供給される直流電圧を、負荷に応じた電圧に変換し、直流電圧を負荷に出力する電力変換装置を電源装置として備える。電気車は、電気車用電源装置として、例えば、走行用電動機の駆動用の電源装置と、照明及び空調などの他の機器に電力を供給する補助電源装置とを備える。
【0003】
補助電力変換装置は、インバータと商用周波数変圧器(絶縁トランス)の構成が一般的であるが、システムを小型化するために高周波変圧器(絶縁トランス)の適用が進んでいる。補助電源装置の1つの構成例は、高周波数の交流電流により励磁される高周波変圧器(絶縁トランス)と、電車線からの直流電圧を調整するチョッパ回路と、チョッパ回路の出力を高周波数の交流に変換し、高周波変圧器に供給するインバータと、高周波の交流を直流に変換する整流器と、を備える。以降では、インバータ、高周波変圧器、および整流器を含む構成を高周波絶縁回路と呼ぶ。
また、インバータに共振回路を適用することによって、スイッチング時の損失を大幅に低減でき、インバータの高周波スイッチングが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2015/079528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、共振回路を構成する共振コンデンサが経年劣化によって容量低減した場合、共振回路の共振周波数が上昇することでインバータが出力する交流電流のピーク値や実効値が増加し、インバータ、高周波変圧器、および、整流器における損失増加を引き起こして、温度上昇が許容値を超える恐れがあり、共振コンデンサの劣化が進むと温度異常により装置が停止する原因となり得る。
【0006】
共振インバータが出力する交流電流を監視していれば、電流の変化は検知可能となるが、追加の電流検出器が必要となる。またハーフブリッジ回路を用いた共振インバータにおいては、交流出力の一端を2直列接続した共振コンデンサの中点に接続する構成となるが、どちらの共振コンデンサが容量低減したかについては、交流電流による検出が難しかった。
【0007】
本発明の実施形態は上記事情を鑑みて成されたものであって、信頼性の高い補助電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態による補助電源装置は、高周波変圧器と、直流電源から供給される直流電力を変換するチョッパ回路と、前記チョッパ回路の出力電力を交流電力に変換して前記高周波変圧器に供給するインバータと、前記インバータの直流端に接続された直流コンデンサと、前記インバータのスイッチングに伴って共振動作を発生させる共振コンデンサと、前記高周波変圧器を介して前記インバータから供給される交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記インバータの直流入力電流の値又は前記直流入力電流の値を演算するための値を検出する検出部と、前記検出部から供給される値に基づいて、前記共振コンデンサを含む共振回路の共振周波数を演算し、前記共振周波数と前記直流入力電流の値とを用いて前記共振コンデンサの容量低減を検出する制御回路と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す共振インバータの上アームオン時の電流経路について説明する為の図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す共振インバータの下アームオン時の電流経路について説明する為の図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す電力変換装置において、共振コンデンサの容量低減がない場合の各電流の一例について説明する為の図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す電力変換装置において、共振コンデンサで容量低減があった場合の各電流の一例について説明する為の図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の電力変換装置において共振コンデンサの異常を検出する動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の電力変換装置について図面を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
ここでは、一例として電気車などの移動体に搭載される電力変換装置1について説明する。電気車用の電力変換装置1は、架空電車線または第三軌条などの電車線2から集電器3を介して直流電力を受け取り、受け取った直流電力を出力端子4P、4Nから出力する電気車用の補助電源装置である。
【0011】
本実施形態では、電気車用の電力変換装置1は、電気車の照明及び空調などの負荷に電力を供給する補助電源装置であるとして説明する。なお、電気車は、走行用電動機を駆動する為の図示されない主電源装置を備える。主電源装置は、電車線2から集電器3を介して受け取った直流電力により、走行用電動機を駆動することにより、電気車に線路5上を走行させる。
【0012】
電気車用の補助電源装置としての電力変換装置1には、走行用電動機に比べて低圧で動作する機器が接続される。この為、電気車用の電力変換装置1は、電力が入力される一次側と、電力を出力する二次側とが絶縁されている必要がある。
【0013】
一次側と二次側との絶縁を確保するための構成の一例として、電磁結合する一対の巻線(コイル)を備える変圧器を用いて、一次側と二次側とを絶縁する変圧器がある。変圧器は、励磁周波数が低くなる程大型化する。例えば、商用電源の周波数に対応する励磁周波数が設定された変圧器では、大型になる。そこで、本実施形態の電力変換装置1では、高周波変圧器を用いることにより、一次側と二次側とを絶縁し、且つ小型化を実現している。
【0014】
電力変換装置1は、チョッパ回路31と、電力変換回路(高周波絶縁回路)11と、電流検出器32と、電圧検出器33と、制御回路41と、を備える。
チョッパ回路31は、電車線2から集電器3を介して入力された直流電力を所望の直流電力に変換する。本実施形態では、例えば電車線2が直流電源である。
【0015】
電流検出器32は、チョッパ回路31の出力電流を検出する。電流検出器32の検出結果は制御回路41に供給される。
電圧検出器33は、チョッパ回路31の出力電圧(第1直流コンデンサFC1の電圧)を検出する。電圧検出器33の検出結果は制御回路41に供給される。
【0016】
電力変換回路11は、チョッパ回路31から出力された直流電力を、高周波変圧器22を介して絶縁し、直流負荷用の電力に変換する。電力変換回路11は、例えば、共振インバータ21と、高周波変圧器22と、整流器23と、第2直流コンデンサFC2と、を有する。
【0017】
共振インバータ21は、チョッパ回路31から供給される直流電力を用いて、高周波変圧器22に交流電力を供給するインバータ回路である。共振インバータ21は、例えば、チョッパ回路31に電気的に接続される直流端と、高周波変圧器22の一次側に電気的に接続される交流端と、を備え、共振方式単相ハーフブリッジインバータとして構成される。共振インバータ21は、第1スイッチS1、第2スイッチS2、第1直流コンデンサFC1、第1共振コンデンサC1、及び第2共振コンデンサC2、を備える。共振インバータ21の一方の交流端は、インダクタンスを介して高周波変圧器22の一次側と電気的に接続されている。
第1直流コンデンサFC1は、共振インバータ21の高電位側の直流端と低電位側の直流端との間に接続され、チョッパ回路31から供給された直流電力を平滑化する。
【0018】
第1スイッチS1は、高電位側の直流端と一方の交流端との間の電気的接続を切り替える。第1スイッチS1は、例えばMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistors)であって、ドレインにおいて高電位側の直流端と電気的に接続され、ソースにおいて一方の交流端と電気的に接続されている。
【0019】
第2スイッチS2は、低電位側の直流端と一方の交流端との間の電気的接続を切り替える。第2スイッチS2は、例えばMOSFETであって、ドレインにおいて一方の交流端と電気的に接続され、ソースにおいて低電位側の直流端と電気的に接続されている。
なお、第1スイッチS1と第2スイッチS2とはMOSFETに限定されるものではなく、例えば、バイポーラトランジスタや、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)など、他のパワー半導体素子を用いても構わない。
【0020】
第1共振コンデンサC1は、高電位側の直流端と他方の交流端との間に電気的に接続されている。第2共振コンデンサC2は、低電位側の直流端と他方の交流端との間に電気的に接続されている。
【0021】
すなわち、第1スイッチS1と第2スイッチS2との接続点(一方の交流端)、及び第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との接続点(他方の交流端)には、高周波変圧器22の一次巻線が接続されている。共振インバータ21は、制御回路41により、第1スイッチS1及び第2スイッチS2のオンオフ動作を制御されることにより、高周波変圧器22の一次巻線に交流電力を供給する。なお、以下の説明において、共振インバータ21の第1スイッチS1側を、共振インバータ21の上アーム、共振インバータ21の第2スイッチS2側を、共振インバータ21の下アームと称する。
【0022】
高周波変圧器22は、磁束を発生させる一次側の巻線(一次巻線)と、一次巻線と絶縁され、且つ一次巻線に生じた磁束により励磁される二次側の巻線(二次巻線)とを有する絶縁トランスである。高周波変圧器22の一次巻線に共振インバータ21から交流電流が供給された場合、一次巻線に磁束が生じる。一次巻線に生じた磁束は、二次巻線に誘導電流を発生させる。これにより、高周波変圧器22は、一次側から入力された交流電流に応じて、二次側に電力を供給する。
【0023】
整流器23は、高周波変圧器22の二次巻線に生じた電力を整流する回路であり、例えば、複数のダイオードが組み合わされた整流ブリッジ回路として構成される。
第2直流コンデンサFC2は、整流器23から供給された直流電圧を平滑化する。第3直流コンデンサFC2は、並列に接続された出力端子4P、4Nから、直流電力を出力する。出力端子4P、4Nから出力された直流電力は、図示されないインバータなどの回路により、例えば50Hzまたは60Hzの交流電力に変換される。
【0024】
制御回路41は、電流検出器32の検出値および電圧検出器33の検出値を取得して、チョッパ回路31および電力変換回路11の動作を制御する。制御回路41は、例えば、少なくとも1つのプロセッサと、プロセッサにより実行されるプログラムおよびプログラムにより用いられるデータが記憶されたメモリと、を備えた演算装置である。制御回路41は、ソフトウエアにより、若しくは、ソフトウエアとハードウエアとの組み合わせにより、チョッパ回路31および電力変換回路11を制御するための種々の機能を実現することが出来る。
【0025】
制御回路41は、例えばパルス信号を生成する論理回路として構成され、制御回路41のプロセッサがプログラムを実行することにより、パルス信号を生成するように構成され得る。制御回路41は、パルス信号をチョッパ回路31及び電力変換回路11にそれぞれ入力することにより、チョッパ回路31及び電力変換回路11の半導体素子の動作を制御する。例えば、制御回路41は、パルス信号のオンオフデューティ比を調整するPWM制御を行う。これにより、制御回路41は、チョッパ回路31の出力及び電力変換回路11の出力をそれぞれ調整する。
【0026】
次に、本実施形態の電力変換装置において、制御回路41が第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との容量低減を検出する動作の一例について説明する。
図2は、
図1に示す共振インバータの上アームオン時の電流経路について説明する為の図である。
【0027】
高周波変圧器22に供給される交流電流は、上アームの第1スイッチS1から出力され、整流器23および第2直流コンデンサFC2を経由して、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との接続点に戻り、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2にそれぞれ分流する。共振インバータ21の直流入力部Aには、第2共振コンデンサC2と等しい電流が流れる。
【0028】
図3は、
図1に示す共振インバータの下アームオン時の電流経路について説明する為の図である。
高周波変圧器22には、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との接続点で合流した交流電流が出力される。高周波変圧器22に供給された交流電流は、整流器23および第2直流コンデンサFC2を経由して、下アームの第2スイッチS2に戻り、第2共振コンデンサC2と第1直流コンデンサFC1とに分岐して流れる。共振インバータ21の直流入力部Aには、第1共振コンデンサC1と等しい電流が流れる。
【0029】
図4は、
図1に示す電力変換装置において、共振コンデンサの容量低減がない場合の各電流の一例について説明する為の図である。
共振インバータ21の交流側の共振電流は、第1スイッチS1または第2スイッチS2のオン後に、第1共振コンデンサC1および第2共振コンデンサC2の並列静電容量と主回路の合計インダクタンスで決まる共振周波数の共振現象によって発生する。整流器23のダイオードにより、共振半周期で電流が遮断され、次の対向アームのオンまでは電流値はゼロ近傍(所定値以下)となる。よって、交流電流の値がゼロ近傍(所定値以下)となるタイミングの周期を検出することにより、共振の半周期を推定することができ、第1共振コンデンサC1および第2共振コンデンサC2を含む共振回路の共振周波数を推定することが可能となる。
【0030】
なお、共振コンデンサC1、C2に流れる電流は、容量の低減がない場合は第1共振コンデンサC1および第2共振コンデンサC2に均等に分流する。また、共振インバータ21の直流入力部Aには、
図2および
図3に記載した通り、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2とのいずれかと同じ電流が流れる。そのため、直流入力部Aに流れる電流(直流入力電流)にも交流電流と同様に電流値がゼロ近傍(所定値以下)の期間が現れる。よって、共振インバータ21の直流入力電流の値を検知できれば、又は、直流入力電流に相当する値(例えば演算された直流入力電流値)を取得できれば、第1共振コンデンサC1および第2共振コンデンサC2を含む共振回路の共振周波数を推定することが可能である。
【0031】
図5は、
図1に示す電力変換装置において、共振コンデンサで容量低減があった場合の各電流の一例について説明する為の図である。
上述したように、共振周波数は共振コンデンサC1、C2の並列静電容量により決まるため、容量低減が発生した場合には共振周波数は高くなる。
【0032】
また第1共振コンデンサC1に流れる電流と、第2共振コンデンサC2に流れる電流とは静電容量の比で分流するため、例えば第2共振コンデンサC2が劣化し、容量が低減すると、第1共振コンデンサC1の電流が低減し、第2共振コンデンサC2の電流が増加する。ただし、交流電流は第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との電流の合計のため、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との間の電流アンバランスは交流電流に現れず、交流電流を検出してもどの共振コンデンサが容量低減したか推定することは困難である。
【0033】
一方で、共振インバータ21の直流入力部Aには、
図2および
図3に記載した通り、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2とのいずれかと同じ電流が流れるため、共振インバータ21の直流入力電流を検知または推定できれば、第1共振コンデンサC1および第2共振コンデンサC2を含む共振回路の共振周波数の上昇および電流ピーク値のアンバランスによって、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との個々の容量低減を推定可能となる。
【0034】
図6は、第1実施形態の電力変換装置において共振コンデンサの異常を検出する動作の一例を説明するためのフローチャートである。
本実施形態の電力変換装置では、制御回路41は、電流検出器32および電圧検出器33の検出値を用いて、共振インバータ21の直流入力電流を演算する。すなわち、本実施形態において、電流検出器32および電圧検出器33は、直流入力電流を演算するための値を検出する検出部である。
電流検出器32で検出されるチョッパ出力電流をi
CH(t)、電圧検出器33で検出されるチョッパ出力電圧をv
DC(t)、第1直流コンデンサFC1の静電容量をC
FCとすると、共振インバータ21の直流入力電流i
in(t)は以下の式で求められる。
【数1】
【0035】
制御回路41は、上記数式にて演算される共振インバータ21の直流入力電流の値が、所定値以下となるタイミングの周期に基づいて、共振コンデンサC1、C2を含む共振回路の共振周波数を演算する(ステップS1)。
制御回路41は、共振回路の共振周波数が所定の閾値以上であるときに(ステップS2)、直流入力電流のピーク値を取得する。制御回路41は、直流入力電流の半周期毎のピーク値と、第1スイッチS1と第2スイッチS2のスイッチングの状態とに基づいて、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との個々の容量低減を検出することが出来る(ステップS3)。
【0036】
例えば、インバータ21の上アームがオンしているときには、直流入力部Aには第2共振コンデンサC2と同じ値の電流が流れ、下アームがオンしているときには、直流入力部Aには第1共振コンデンサC1と同じ値の電流が流れる。このことに基づいて、制御回路41は、第1スイッチS1と第2スイッチS2とのスイッチングの状態それぞれにおける、直流入力電流のピーク値を比較し、例えばピーク値の差が所定の閾値以上であるときに、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との個々の容量低減を検出することが可能である。
【0037】
なお、例えば、制御回路41は、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2とのどちらの容量が低減しているのか特定する必要がないときには、第1スイッチS1と第2スイッチS2とのスイッチング状態にかかわらず、半周期毎の直流入力電流のピーク値を比較し、例えばピーク値の差が所定の閾値以上であるときに、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2とのいずれかの容量が低減していることを検出することが出来る。
【0038】
制御回路41は、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との個々の容量低減を検出したとき、若しくは、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2とのいずれかの容量が低減していることを検出ときに異常であるとし(ステップS4)、例えば、図示しない上位制御装置へ異常を通知することができる(ステップS5)。
【0039】
例えば、第1共振コンデンサC1および第2コンデンサC2が経年劣化によって容量低減した場合、共振周波数が上昇することで共振インバータ21が出力する交流電流のピーク値や実効値が増加し、共振インバータ21、高周波変圧器22、および、整流器23における損失増加を引き起こして、温度上昇が許容値を超える恐れがある。すなわち、第1共振コンデンサC1および第2共振コンデンサC2の劣化が進むと、温度異常により装置が停止したり、故障したりする原因となり得る。
【0040】
本実施形態の電力変換装置1では、上記のように、共振インバータ21の共振周波数と、第1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2と個々(若しくはいずれか)の容量低減とを検出することにより、電力変換装置1の温度が許容範囲である間に異常の兆候を検出することが可能であり、電力変換装置1の異常停止や故障を回避することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、信頼性の高い補助電源装置を提供することができる。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、第2実施形態の電力変換装置について図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明において、上述の第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
図7は、第2実施形態に係る電力変換装置の一構成例を概略的に示す図である。
本実施形態の電力変換装置1は、電流検出器32および電圧検出器33に代えて、電流検出器34を備えている点において、上述の第1実施形態と相違している。
【0043】
電流検出器34は、共振インバータ21の直流入力部Aに流れる電流を検出し、検出結果を制御回路41へ供給する。すなわち、本実施形態において、電流検出器34は、直流入力電流値を取得する検出部である。
【0044】
すなわち、本実施形態の電力変換装置1では、上述の第1実施形態にて数式により演算していた直流入力部Aの電流値を、電流検出器34から直接取得することが可能である。制御回路41は、電流検出器34から取得した電流値と、第1スイッチS1および第2スイッチS2のスイッチングの状態とに基づいて、1共振コンデンサC1と第2共振コンデンサC2との個々の容量低減を検出することが出来る。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることが出来、信頼性の高い補助電源装置を提供することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1…電力変換装置(補助電源装置)、2…電車線、3…集電器、4P、4N…出力端子、5…線路、11…電力変換回路(高周波絶縁回路)、21…共振インバータ、22…高周波変圧器、23…整流器、31…チョッパ回路、32…電流検出器、33…電圧検出器、34…電流検出器、41…制御回路、C1…第1共振コンデンサ、C2…第2共振コンデンサ、FC1…第1直流コンデンサ、FC2…第2直流コンデンサ、S1…第1スイッチ、S2…第2スイッチ