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特開2023-92500インクジェット・プリンタ用のプリント・ヘッド機構
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  • 特開-インクジェット・プリンタ用のプリント・ヘッド機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023092500
(43)【公開日】2023-07-03
(54)【発明の名称】インクジェット・プリンタ用のプリント・ヘッド機構
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230626BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20230626BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20230626BHJP
【FI】
B41J2/01 303
B41J2/18
B41J2/175 501
B41J2/175 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022200912
(22)【出願日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】21216617
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】318008680
【氏名又は名称】アンゲロ シエストル
【氏名又は名称原語表記】Angelo Schiestl
【住所又は居所原語表記】Schmiedestrasse 20,6336 Langkampfen,Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】アンゲロ シエストル
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定した高インク品質を増進する信頼性の高いインク回路を有するプリント・ヘッド機構を提供することである。
【解決手段】本発明は、布地に印刷するインクジェット・ヘッド機構であり、フレームと、フレームに対して移動させることができるキャリッジで、少なくとも1つのインクジェットノズルを有するプリント・ヘッドが配置されたキャリッジと、フレームに配置された少なくとも1つのインクタンクと、インクタンクからプリントヘッドにインクを供給する少なくとも1つの供給ラインと、使用されなかったインクをプリントヘッドからインク・タンクへ戻し返す少なくとも一つのリターンラインと、フレームに配置され、インクを移送する供給ラインまたはリターンラインに配置された少なくとも1つのメインポンプと、を有するプリントヘッド機構に関する。本発明によれば、インクを圧送する少なくとも1つの補助ポンプをキャリッジに配置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に布地に印刷するための、インクジェット・プリンタ用のプリント・ヘッド機構であって、
フレームと、
前記フレームに対して移動させることができるキャリッジであって、インクを放出する少なくとも1つのインクジェット・ノズルを有するプリント・ヘッドが配置されたキャリッジと、
前記フレームに配置された少なくとも1つのインク・タンクと、
前記インク・タンクから前記プリント・ヘッドにインクを供給する少なくとも1つの供給ラインと、
使用されなかったインクを前記プリント・ヘッドから前記インク・タンクへ戻し返す少なくとも1つのリターン・ラインと、
前記フレームに配置され、前記インクを移送する前記少なくとも1つの供給ラインまたは前記少なくとも1つのリターン・ラインに配置された少なくとも1つのメイン・ポンプと、
を有し、
前記インクを圧送する少なくとも1つのさらに別の補助ポンプが、前記キャリッジに配置される、プリント・ヘッド機構。
【請求項2】
複数のインクジェット・ノズルが前記プリント・ヘッドに配置される、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項3】
特に様々なインクのための複数の供給ラインおよび複数のリターン・ラインが設けられる、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項4】
各供給ラインおよび対応する各リターン・ラインが各回路を形成し、前記各回路に前記メイン・ポンプおよび前記補助ポンプが割り当てられる、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項5】
前記メイン・ポンプが、前記プリント・ヘッドへの前記供給ラインに配置される、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項6】
前記補助ポンプが、前記インクジェット・ノズルの下流、かつ前記リターン・ラインの上流または前記リターン・ラインの領域内に配置される、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項7】
前記少なくとも1つのインクジェット・ノズルに割り付けられる少なくとも1つの圧力センサが、前記キャリッジに配置される、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項8】
制御可能なバルブが、前記プリント・ヘッドの上流の前記供給ライン、および/または前記プリント・ヘッドの下流の前記リターン・ラインに配置される、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項9】
ガス抜き装置および/またはフィルタが、前記供給ラインに配置される、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項10】
前記少なくとも1つのインクジェット・ノズル、少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つの圧力センサ、前記メイン・ポンプ、および/または前記補助ポンプに接続された制御部が設けられる、
請求項1に記載のプリント・ヘッド機構。
【請求項11】
フレームと、
布地を支え、搬送するように設計された少なくとも1つの搬送装置と、
を有する布地印刷機であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載のプリント・ヘッド機構が設けられる、
布地印刷機。
【請求項12】
前記搬送装置が、保持装置によって布地を受け取りクランプすることができる少なくとも1つのプレート状のパレットを有する、
請求項11に記載の布地印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文による、特に布地に印刷するための、インクジェット・プリンタ用のプリント・ヘッド機構であり、フレームと、フレームに対して移動させることができるキャリッジであって、インクを放出する少なくとも1つのインクジェット・ノズルを有するプリント・ヘッドが配置されたキャリッジと、フレームに配置された少なくとも1つのインク・タンクと、インク・タンクからプリント・ヘッドにインクを供給する少なくとも1つの供給ラインと、使用されなかったインクをプリント・ヘッドからインク・タンクへ戻し返すリターン・ラインと、フレームに配置され、インクを移送する供給ラインまたはリターン・ラインに配置された少なくとも1つのメイン・ポンプと、を有するプリント・ヘッド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
再循環システムを有するインクジェット・プリンタが、特許文献1により知られており、インク貯槽からそのインク貯槽へのインクの連続的流れがポンプを用いて行われる。ポンプは、インク・タンクとインク・ノズルを有するキャリッジとの間に静止状態で配置される。
【0003】
特に布地印刷などの産業用途の印刷インクの場合、一方で、印刷ノズルにおいて使用可能なインクが常に十分に確保され、他方で、印刷インクの品質が常に一貫して高く確保されることが必要である。それに関して、問題は、従来のように、印刷ノズルを有するキャリッジに直接に、何らかの供給インクを長期間に亘って貯留する場合、溶剤、特に水分が印刷インクから脱離し得ることである。これは、インクの流動性、すなわちインク内の固体構成要素の比率を変化させる。これは、個別または複数のインクジェット・ノズルの誤作動、特にノズルの目詰まりを引き起こし得る。キャリッジや印刷ノズルでのインクの中間貯留を無くすると、装置のフレームの静止インク・タンクと印刷ノズルとの間のインク回路に破綻を生じる恐れがある。印刷ノズルへのインク供給の破綻は、印刷画像に欠陥を生じ、それによって印刷品質が低下し、使用することのできない印刷物を生じる可能性さえある。
【0004】
一般的なタイプのプリント・ヘッド機構が、たとえば特許文献2により知られている。この既知の機構では、インクは、インク・タンクから回路内のメイン・ポンプを経由してキャリッジのプリント・ヘッドへ供給され、さらに、同一の回路によって静止インク・タンクへ導き戻される。
【0005】
ある種の作動状態に応じて、インク回路、特に印刷ノズルでの有用性の破綻が生じることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP0076914A2
【特許文献2】WO2006/030235A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基調をなす目的は、殊に信頼性の高いインク回路を成立させ、それによって安定した高インク品質を増進するプリント・ヘッド機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その目的は、請求項1の特徴を有するプリント・ヘッド機構によって達成される。本発明の好ましい実施形態が、従属請求項に記載される。
【0009】
本発明によるプリント・ヘッド機構は、インクを圧送する少なくとも1つのさらに別の補助ポンプが、キャリッジに配置されることを特徴とする。信頼性の高いインク回路を形成するためには、静止メイン・ポンプのみでなく、さらにキャリッジと共に移動させることができる補助ポンプが有効である。本発明によれば、この補助ポンプは、任意の位置ではなく、移動可能なキャリッジ上に、少なくとも1つのインクジェット・ノズルに近接して配置される。その結果、インク要件が急に変化しても、メイン・ポンプ及び/または補助ポンプによって、十分なインクが確実に供給され、その後の操作で安全なインク回路が確保される。好ましくは、キャリッジは、中間貯留用の中間タンクを無しにすることができる。インク品質の変化に関連する問題も、こうして防止することができる。
【0010】
本発明による機構では、少なくとも1つの補助ポンプが、インクジェット・ノズルと一体に動かされ、その結果、インクジェット・ノズルに対する割当てが常に固定された、信頼性のあるインク回路を提供でき、安全なインク供給も常に保たれる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、複数のインクジェット・ノズルがプリント・ヘッドに配置されることである。インクジェット・ノズルは、同じインク、または様々なインク、特に様々な色を塗るように用意され、および/または接続することができる。
【0012】
本発明の実施形態によれば、複数の供給ラインおよび複数のリターン・ラインが、特に様々なインクについて、設けられることが特に好都合である。本発明の場合のインクは、通常の印刷色だけではなく、他の塗布流体、たとえば布地を前処理、浸漬もしくは下塗りするための前処理液および/またはその後のフロック加工のための接着液でもある。
【0013】
使用されるポンプ、すなわちメイン・ポンプおよび補助ポンプはそれぞれ、原理的に、複数のラインさらにインクジェット・ノズルにインクを供給するために用いることができる。とりわけ信頼性の高いインク供給は、各供給ラインおよび対応する各リターン・ラインが各回路を形成し、その各回路にメイン・ポンプおよび補助ポンプが割り付けられる、本発明のさらに別の発展形態によって達成される。
【0014】
形成された回路では、メイン・ポンプは、一般に、フレーム上の任意の位置に、特にさらにリターン・ラインに静止状態で配置することができる。本発明によるプリント・ヘッド機構の変形実施形態によれば、メイン・ポンプが、プリント・ヘッドへの供給ラインに配置されることが特に好都合である。静止メイン・ポンプをフレーム上でプリント・ヘッドへの供給ラインに設けると、とりわけ信頼性の高いインクジェット・ノズルへのインク供給になる。
【0015】
同様に、補助ポンプは、移動可能なキャリッジの任意の位置でインク回路に接続することができる。本発明の実施形態によれば、補助ポンプが、インクジェット・ノズルの下流、かつリターン・ラインの上流またはリターン・ラインの範囲内に配置されることが、特に好都合である。
【0016】
特に、供給ラインでのメイン・ポンプの配置と連係して、インクジェット・ノズルへの、かつインクジェット・ノズルからのとりわけ信頼性の高いインクの供給および排出を行うことができる。これにより、作動毎に、それぞれのインクジェット・ノズルにおいて十分なインクが確実に使用可能になり、その結果、インクの中間貯留用の中間タンクが、必要なくなり、省略することができる。
【0017】
本発明のさらに別の有利な実施形態は、インクジェット・ノズルに割り付けられた少なくとも1つの圧力センサが、キャリッジに配置されることにある。その圧力センサは、インクジェット・ノズルの上流および/または下流に生じるインク圧力を感知するために使用することができる。圧力センサは、制御部と交信することができ、その結果、十分なインク圧力、したがって十分なインク供給がインクジェット・ノズルにおいて保証されていることを常時監視し確実にすることが可能である。
【0018】
特に、本発明のさらに別の発展形態によれば、制御可能なバルブが、プリント・ヘッドの上流の供給ライン、および/またはプリント・ヘッドの下流のリターン・ラインに配置されることが好都合である。そのバルブは、特にシャットオフ・バルブとすることができ、そのバルブによって、ポンプが停止されたとき、ラインが閉鎖され、インクがプリント・ヘッドから流れ出すのが防止される。可動バルブによって、極めて迅速にインク液の圧力に影響を及ぼし、特定の圧力値または圧力値範囲を堅持することが可能になる。制御部に接続された可動スロットル・バルブを設けることができる。制御部は、圧力バルブを、特に圧力センサによって感知された圧力値の関数として、作動させることができ、それによって、実測値が、所定の圧力設定値にほぼ一致し、または設定される。
【0019】
高印刷品質を達成するために、本発明の変形形態によれば、ガス抜き装置および/またはフィルタが、供給ラインに配置されることが有利である。このようにして、有害な気泡のインクへの混入や粗大粒子のインクジェット・ノズルへの侵入を達成することができ、印刷品質の劣化が対処される。
【0020】
本発明によるプリント機構のさらに別の有利な実施形態は、少なくとも1つのインクジェット・ノズル、少なくとも1つのバルブ、少なくとも1つの圧力センサ、メイン・ポンプ、および/または補助ポンプと交信する制御部が設けられることである。したがって、制御部によって、様々な値を感知することができ、所定の制御プログラムに従って所定の値を設定することができる。制御部によって、好ましくは、圧力プロファイルの監視および/または記憶も可能になる。
【0021】
本発明は、フレームと、布地を受け取って搬送する少なくとも1つの搬送装置とを有する布地印刷機をさらに含み、その布地印刷機は、本発明による上記のプリント・ヘッド機構を使用することを特徴とする。その布地印刷機を使用して、布地の印刷に際し、上記の利点を達成することができる。
【0022】
本発明による布地印刷器のさらに別の発展形態によれば、搬送装置が、保持装置によって布地を受け取り保持することができる少なくとも1つのプレート状のパレットを有することが好ましい。特に、たとえばTシャツを固定するために、固定フレームを有する搬送パレットを設けることができる。他方において、たとえば細片形布地を印刷するために、循環型コンベヤを設けることもできる。
【0023】
本発明が、以降、添付図面に概略的に示される好ましい例示的実施形態に基づいてさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明によるプリント・ヘッド機構10の概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
プリント・ヘッド機構10は、単に概略的に示されているフレーム12を備え、そのフレームにはインク・タンク14が配置されている。任意選択による加熱装置15を用いて、インク・タンク14内のインク5を所定の温度に設定することができる。インク・タンク14には、原理的に知られているように、インク5の温度、充填レベル、およびさらに別の状態または品質/状態特性を感知するための1つまたは複数のセンサを設けることができる。
【0026】
フレーム12に配置されたメイン・ポンプ20を用いて、インク5を、インク・タンク14から供給ライン16を経由してキャリッジ30へ供給することができ、そのキャリッジは、少なくとも1つのインクジェット・ノズル(図示せず)を含むプリント・ヘッド40を有する。
【0027】
供給ライン16には、粗大固体粒子を捕捉するためにフィルタ22を設けることができ、インク5中の気泡を捕捉および/または排出するためにガス抜き装置24を設けることができる。インク5は、メイン・ポンプ20から第1の可動バルブ26およびキャリッジ30を経由してインレット・ライン32へ導かれ、キャリッジ30は、フレーム12に対して移動可能である。
【0028】
インレット・ライン32は、少なくとも1つのインクジェット・ノズルを有するプリント・ヘッド40へインク5を導き、使用されなかったインク5は、移動可能なキャリッジ30に配置された補助ポンプ36を用いて、中間貯留なしに、直接アウトレット・ライン34を経由してキャリッジ30から外へリターン・ライン18に戻され、インク・タンク14へ再び導き戻される。このように形成された回路は、良好なインク品質、したがって良好な加工品質のインク5が、プリント・ヘッド40において常に十分に使用可能であることを確実にする。
【0029】
このために、供給ライン16の第1の可動スロットル・バルブ26に加えて、第2の可動シャットオフ・バルブ28を、補助ポンプ36の下流でリターン・ライン18に設けることができる。キャリッジ30には、圧力センサ38を、補助ポンプ36の上流でプリント・ヘッド40とリターン・ライン18との間に配置することができ、その圧力センサによって、アウトレット・ライン34内のインク5の圧力を測定することができる。さらに別の圧力センサを、プリント・ヘッドの上流および/または補助ポンプ36の下流にさらに設けることができる。
【0030】
圧力センサ38は、制御部(図示せず)とデータ接続することができる。圧力センサ38によって感知された圧力データに基づいて、制御部が、第1のスロットル・バルブ26および/または第2のスロットル・バルブ28を作動させることができ、それによって、プリント・ヘッド40における実際の圧力値が、特定の設定値に一致し、または設定範囲内になる。任意選択で、制御部は、また、プリント・ヘッド40でのインク5の十分な供給を確保するために、メイン・ポンプ20および/または補助ポンプ36を作動させ、特に再調節することもできる。
【0031】
特に、布地に印刷するために用いられる、本発明によるプリント・ヘッド機構10では、中間タンクによる、直接キャリッジ30でのインク5の中間貯留を、無くすことができる。
図1
【外国語明細書】